特許第5973667号(P5973667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973667
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/02 20120101AFI20160809BHJP
   B60W 50/04 20060101ALI20160809BHJP
   B60W 40/114 20120101ALI20160809BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20160809BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20160809BHJP
   B62D 103/00 20060101ALN20160809BHJP
   B62D 111/00 20060101ALN20160809BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20160809BHJP
   B62D 137/00 20060101ALN20160809BHJP
【FI】
   B60W50/02
   B60W50/04
   B60W40/114
   B62D6/00ZYW
   B62D101:00
   B62D103:00
   B62D111:00
   B62D113:00
   B62D137:00
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-527317(P2015-527317)
(86)(22)【出願日】2014年7月16日
(86)【国際出願番号】JP2014068901
(87)【国際公開番号】WO2015008786
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2015年11月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-148678(P2013-148678)
(32)【優先日】2013年7月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
(72)【発明者】
【氏名】山口 直
【審査官】 ▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−289244(JP,A)
【文献】 特開2010−221944(JP,A)
【文献】 特開平11−189151(JP,A)
【文献】 特開平10−044954(JP,A)
【文献】 特開2008−273280(JP,A)
【文献】 特開平03−046505(JP,A)
【文献】 特開昭61−244669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 − 50/16
B62D 6/00
B60R 16/00 − 16/06
B60T 7/12 − 8/1769
B60T 8/32 − 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたステアリングホイールの操作に応じた操舵角を検出する操舵角センサと、
前記車両に作用するヨーレイトを検出するヨーレイトセンサと、
前記操舵角センサが検出した操舵角から算出した操舵角換算ヨーレイトに対する前記ヨーレイトセンサが検出した検出ヨーレイトのゲインの変動量が所定量以下のときに、前記ヨーレイトセンサの出力ゲイン異常検出が可能であると判定し、前記ヨーレイトセンサの出力ゲイン異常検出が可能であると判定したときに、前記ヨーレイトセンサの出力ゲイン異常検出を行うヨーレイトセンサ出力ゲイン異常検出部と、
を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
車両が旋回中か否か判断する旋回方向判定部を備え、
前記ヨーレイトセンサ出力ゲイン異常検出部は、前記旋回方向判定部により車両旋回中と判定したときに前記ヨーレイトセンサの出力ゲイン異常検出を実施することを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記ヨーレイトセンサ出力ゲイン異常検出部は、前記車両旋回中の前記舵角換算ヨーレイトの値を前記検出ヨーレイトと比較する基準値として設定することを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両制御装置において、
前記ヨーレイトセンサ出力ゲイン異常検出部は、前記車両旋回時に、前記基準値に対する前記検出ヨーレイトのゲインが所定ゲイン以上または所定ゲイン以下のときに前記ヨーレイトセンサの出力ゲイン異常を検出することを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記車両の前後進方向を検出する前後進検出部を設け、
前記ヨーレイトセンサ出力ゲイン異常検出部は、検出された前記前後進方向に対応して前記出力ゲインの異常の検出方法を補正する検出方法補正部を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【請求項6】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記車両に作用する横加速度を検出する横加速度センサを設け、
前記操舵角換算ヨーレイトに対する前記横加速度センサが検出した横加速度から算出した横加速度換算ヨーレイトのゲインの変動量が所定量以下のときに、前記横加速度センサの出力ゲイン異常検出が可能であると判定し、
前記横加速度センサの出力ゲイン異常検出が可能であると判定したときに、前記横加速度センサの出力ゲイン異常検出を行う横加速度センサ出力ゲイン異常検出部を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両制御装置において、
前記横加速度センサ出力ゲイン異常検出部は、前記旋回中の前記舵角換算ヨーレイトの値を前記横加速度換算ヨーレイトと比較する基準値として設定することを特徴とする車両制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両制御装置において、
前記横加速度センサ出力ゲイン異常検出部は、前記基準値に対する前記横加速度換算ヨーレイトのゲインが所定ゲイン以上または所定ゲイン以下のときに前記横加速度センサの出力ゲイン異常を検出することを特徴とする車両制御装置。
【請求項9】
車両に搭載されたステアリングホイールの操作に応じた操舵角を検出する操舵角センサと、
前記車両に作用する横加速度を検出する横加速度センサと、
前記車両に作用するヨーレイトを検出するヨーレイトセンサと、
車両旋回時に、前記操舵角センサが検出した操舵角から算出した操舵角換算ヨーレイトに対する前記ヨーレイトセンサが検出した検出ヨーレイトのゲインの変動量が所定量以下のときに、前記ヨーレイトセンサの出力ゲイン異常検出が可能であると判定し、前記操舵角換算ヨーレイトに対する前記横加速度センサが検出した横加速度から算出した横加速度換算ヨーレイトのゲインの変動量が所定量以下のときに、前記横加速度センサの出力ゲイン異常検出が可能であると判定する検出判定部と、
前記ヨーレイトセンサの出力ゲイン異常検出が可能であると判定したときに、前記ヨーレイトセンサの出力ゲイン異常検出を行い、前記横加速度センサの出力ゲイン異常検出が可能であると判定したときに、前記横加速度センサの出力ゲイン異常検出処理を行う出力ゲイン異常検出部と、
を設けたことを特徴とする車両制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車両制御装置において、
前記出力ゲイン異常検出部は、前記旋回中の前記舵角換算ヨーレイトの値を前記検出ヨーレイトと比較する第一の基準値として設定し、前記舵角換算ヨーレイトの値を前記横加速度換算ヨーレイトと比較する第二の基準値として設定することを特徴とする車両制御装置。
【請求項11】
請求項9に記載の車両制御装置において、
前記出力ゲイン異常検出部は、前記車両旋回時に、前記第一の基準値に対する前記検出ヨーレイトのゲインが所定ゲイン以上または所定ゲイン以下のときに前記ヨーレイトセンサの出力ゲイン異常を検出し、前記第二の基準値に対する前記横加速度換算ヨーレイトのゲインが所定ゲイン以上または所定ゲイン以下のときに前記横加速度センサの出力ゲイン異常を検出することを特徴とする車両制御装置。
【請求項12】
請求項9に記載の車両制御装置において、
前記車両の前後進方向を検出する前後進検出部を設け、
前記出力ゲイン異常検出部は、検出された前記前後進方向に対応して前記出力ゲインの異常の検出方法を補正する検出方法補正部を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【請求項13】
車両に搭載されたステアリングホイールの操作に応じた操舵角を検出する操舵角センサと、
前記車両に作用するヨーレイトを検出するヨーレイトセンサと、
車両旋回時に、前記操舵角センサが検出した操舵角から操舵角換算ヨーレイトを算出し、前記算出した操舵角換算ヨーレイトを基準値とし、前記基準値と前記ヨーレイトセンサが検出した検出ヨーレイトの割合の変動量を算出し、前記変動量が所定量以下のときに、前記ヨーレイトセンサの出力ゲイン異常検出を行うヨーレイトセンサ出力ゲイン異常検出部と、
を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【請求項14】
請求項13に記載の車両制御装置において、
前記車両に作用する横加速度を検出する横加速度センサと、
前記基準値に対する前記横加速度センサが検出した横加速度から算出した横加速度換算ヨーレイトの割合の変動量を算出し、前記変動量が所定量以下のときに、前記横加速度センサの出力ゲイン異常検出を行う横加速度センサ出力ゲイン異常検出部と、
を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【請求項15】
請求項14に記載の車両制御装置において、
前記ヨーレイトセンサ出力ゲイン異常検出部は、前記基準値に対する前記検出ヨーレイトの割合が所定割合以上または所定割合以下のときに前記ヨーレイトセンサの出力ゲイン異常を検出することを特徴とする車両制御装置。
【請求項16】
請求項15に記載の車両制御装置において、
前記横加速度センサ出力ゲイン異常検出部は、前記基準値に対する前記横加速度換算ヨーレイトの割合が所定割合以上または所定割合以下のときに前記横加速度センサの出力ゲイン異常を検出することを特徴とする車両制御装置。
【請求項17】
請求項16に記載の車両制御装置において、
前記車両の前後進方向を検出する前後進検出部を設け、
前記ヨーレイトセンサ出力ゲイン異常検出部は、検出された前記前後進方向に対応して前記ヨーレイトセンサの出力ゲインの異常の検出方法を補正する検出方法補正部を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、下記の特許文献1に記載の技術が開示されている。特許文献1には、タイヤのグリップ力が線形領域の範囲で走行しているときに、各センサの故障の有無を検出するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-053024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、タイヤのグリップ力が線形領域における走行中に相関性を各センサの出力に基づくヨーレイトの差分から判断している。そのため、タイヤのグリップ力が非線形領域を走行中に一時的に線形領域と区別できない走行状態が発生すると、誤ってセンサの故障と検出してしまう虞があった。
本発明は、上記問題に着目されたもので、その目的とするところは、センサの異常診断において、低μ路旋回に代表されるタイヤのグリップ力が非線形領域における走行中またはバンク路を走行中のセンサ異常の誤検出を抑制する車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の車両制御装置では、操舵角センサが検出した操舵角から算出した操舵角換算ヨーレイトに対するヨーレイトセンサが検出した検出ヨーレイトのゲインの変動量が所定量以下のときに、ヨーレイトセンサの出力ゲイン異常検出が可能であると判定し、ヨーレイトセンサの出力ゲイン異常検出が可能であると判定したときに、ヨーレイトセンサの出力ゲイン異常検出を行うようにした。
【発明の効果】
【0006】
よって、タイヤのグリップ力が非線形領域における走行中のセンサ異常の誤検出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1のゲイン異常判定処理部のブロック図である。
図2】実施例1の進行方向判定部の状態遷移図である。
図3】実施例1の旋回方向判定部の状態遷移図である。
図4】実施例1のゲイン基準値算出部の状態遷移図である。
図5】実施例1のゲイン異常判定処理部の状態遷移図である。
図6】実施例1の操舵角換算ヨーレイトに対する検出ヨーレイトのゲインのタイムチャートである。
図7】実施例1の操舵角換算ヨーレイトに対する検出ヨーレイトのゲインのタイムチャートである。
図8】実施例1の操舵角換算ヨーレイト、検出ヨーレイト、横加速度換算ヨーレイトのタイムチャートである。
図9】実施例1の操舵角換算ヨーレイトに対する検出ヨーレイトの変化を示すグラフである。
図10】実施例1の操舵角換算ヨーレイトに対する横加速度換算ヨーレイトの変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0008】
2 操舵角センサ
3 横加速度センサ
7 ヨーレイトセンサ
9 進行方向判定部(前後進検出部)
10 旋回方向判定部
12 ゲイン異常判定部(ヨーレイトセンサ出力ゲイン異常検出部、横加速度出力ゲイン異常検出部、検出判定部、出力ゲイン異常検出部)
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施例1〕
図1は、ゲイン異常判定処理部1のブロック図である。ゲイン異常判定処理部1は、車両が低μ路旋回に代表されるタイヤのグリップ力が非線形領域で走行しているか、またバンク路走行しているか否かを判定する。そして、車両がタイヤのグリップ力が非線形領域で走行しているか、またバンク路走行しているときには、横加速度センサ3とヨーレイトセンサ7のゲイン異常診断を禁止するようにしている。
ゲイン異常判定処理部1は、ヨーレイト換算部8と、進行方向判定部9と、旋回方向判定部10と、ゲイン基準値算出部11と、ゲイン異常判定部12とを有している。
【0010】
[ヨーレイト換算部]
ヨーレイト換算部8は、例えば、操舵角センサ2が検出したステアリングホイールの操舵角と、横加速度センサ3が検出した車両に作用する横加速度と、車輪速センサ6が検出した検出値を基に算出された車体速とを入力する。操舵角と車体速から車両に作用しているヨーレイト(操舵角換算ヨーレイト)を算出し、横加速度から車両に作用しているヨーレイト(横加速度換算ヨーレイト)を算出する。
【0011】
[進行方向判定部]
進行方向判定部9は、例えば、前後加速度センサ5から車両に作用する前後加速度と、車輪速センサ6から車輪速とを入力する。図2は進行方向判定部9の状態遷移図である。
車両が停止しているときには、ステートS0からステートS1に移行する。ステートS1では、車両が停止しているときに、各変数のリセットし、安定して車両停止していることを判定する。診断許可判定時間T1および傾斜加速度をリセットする。診断許可判定時間T1をインクリメントする。
診断許可判定時間T1が停止判定閾値TR2より大きくなったときは、ステートS2に移行する。停止判定閾値TR2は、車両停止後、車両の揺れが収まる程度の時間に設定する。
ステートS2では、路面傾斜の判定を行う。車両が停止しているときの前後加速度を傾斜加速度として記憶する。なお、診断許可判定時間T1が停止判定閾値TR2未満のときは、ステートS0に移行する。
車両が走行し始めるとステートS3に移行する。ステートS3では、車両の進行方向の判定を行う。車両走行にともない車両に作用する前後加速度から進行方向を判定する。
【0012】
[旋回方向判定部]
旋回方向判定部10は、ヨーレイト換算部8から操舵角換算ヨーレイトと、進行方向判定部9から進行方向の情報を入力する。図3は旋回方向判定部10の状態遷移図である。
操舵角換算ヨーレイトが旋回方向判定閾値TR1以下であって、旋回方向判定閾値-TR1以上のときにはステートS11に移行する。ステートS11では、旋回モードを「中立」と記録する。
操舵角換算ヨーレイトが旋回方向判定閾値-TR1より小さくとなると、ステートS12に移行する。ステートS12では、旋回モードを「左」と記録する。なお、車両が後進しているときには、操舵角換算ヨーレイトが旋回方向判定閾値TR1より大きくとなると、ステートS12に移行する。
操舵角換算ヨーレイトが旋回方向判定閾値TR1より大きくなると、ステートS13に移行する。ステートS13では、旋回モードを「右」と記録する。なお、車両が後進しているときには、操舵角換算ヨーレイトが旋回方向判定閾値-TR1より小さくなると、ステートS12に移行する。
旋回方向判定閾値TR1は、車両の旋回方向が確実に変化する程度のヨーレイトに設定する。旋回方向判定閾値TR1を小さな値に設定すると車両の旋回方向を誤検出するおそれがある。旋回方向判定閾値TR1を大きな値に設定すると後述するゲイン異常判定処理の可能領域を狭めることとなる。
【0013】
[ゲイン基準値算出部]
ゲイン基準値算出部11は、ヨーレイト換算部8から操舵角換算ヨーレイトおよび横加速度換算ヨーレイトと、旋回方向判定部10から旋回モードと、ヨーレイトセンサ7が検出したヨーレイト(検出ヨーレイト)を入力する。図4はゲイン基準値算出部11の状態遷移図である。
旋回モードが「中立」のときには、ステートS21に移行する。ステートS21では、旋回モードが「左」または「右」となるまで待機を行う。
旋回モードが「左」または「右」となり、かつ、操舵角換算ヨーレイトが第一閾値TH1以上となると、ステートS22に移行する。ステートS22では、操舵角換算ヨーレイトが第一閾値TH1以上となったときの値をサンプリングする。このときサンプリングした値を第一サンプリング値とする。操舵角換算ヨーレイトが第一閾値TH1よりも大きな閾値である第二閾値TH2以上となるまで待機する。操舵角換算ヨーレイトが第二閾値TH2以上となったときの値をサンプリングする。このときサンプリングした値を第二サンプリング値とする。操舵角換算ヨーレイトが第二閾値TH2よりも大きな閾値である第三閾値TH3以上となるまで待機する。操舵角換算ヨーレイトが第三閾値TH3以上となったときの値をサンプリングする。このときサンプリングした値を第三サンプリング値とする。
【0014】
第一サンプリング値に対する第二サンプリング値の割合(ゲイン)から、第二サンプリング値に対する第三サンプリング値の割合(ゲイン)への変動がゲイン基準値算出中止閾値TR4以下であるときには、第三サンプリング値を基準値として算出する。その後、ステートS23へ移行する。ステートS23では、算出した基準値をセットする。
第一サンプリング値に対する第二サンプリング値の割合(ゲイン)から、第二サンプリング値に対する第三サンプリング値の割合(ゲイン)への変動がゲイン基準値算出中止閾値TR4より大きいときには、ステートS24へ移行する。
タイヤのグリップ力が線形領域の範囲で車両が旋回走行していても、2つのサンプリング値のゲインは多少変動する。ゲイン基準値算出中止閾値TR4は、タイヤのグリップ力が線形領域の範囲で車両が旋回走行しているときのゲインの変動を許容できる値に設定する。ステートS24では、基準値をリセットする。
ステートS23に移行後、旋回モードが「中立」となったときには、ステートS24へ移行する。またステートS23に移行後、比較信号YAW1と比較信号YAW2との差の絶対値が相関不良検出閾値TR7より大きいときには、ステートS24に移行する。比較信号YAW1と比較信号YAW2は、操舵角換算ヨーレイト、横加速度換算ヨーレイト、検出ヨーレイトのうちいずれか二つの値を用いれば良い。
ステートS24に移行後、旋回モードが「中立」となったときには、ステートS21へ移行する。
【0015】
[ゲイン異常判定処理部]
ゲイン異常判定部12は、ヨーレイト換算部8から操舵角換算ヨーレイトおよび横加速度換算ヨーレイトと、ゲイン基準値算出部11から基準値と、旋回方向判定部10から旋回モードと、ヨーレイトセンサ7が検出した検出ヨーレイトとを入力する。図5はゲイン異常判定部12の状態遷移図である。
基準値がセットされるとステートS31に移行する。ステートS31では、異常判定時間FC1を「0」にする。
基準値に対する検出ヨーレイトのゲインの絶対値、または基準値に対する横加速度換算ヨーレイトのゲインの絶対値が異常判定閾値TR3より大きいときにはステートS32に移行する。ステートS32では、異常判定時間FC1をインクリメントする。
ステートS32に移行後、基準値に対する検出ヨーレイトのゲインの絶対値、または基準値に対する横加速度換算ヨーレイトのゲインの絶対値が異常判定閾値TR3以下のときにはステートS31に戻る。
【0016】
異常判定閾値TR3は、タイヤのグリップ力が線形領域の範囲で車両が旋回走行しているときに、基準値に対する検出ヨーレイトのゲインの絶対値、または基準値に対する横加速度換算ヨーレイトのゲインの絶対値が異常判定閾値TR3以下となるような誤検出を行わない程度に設定すれば良い。
異常判定時間FC1が異常確定閾値TR5より大きくなるとステートS33に移行する。ステートS33では、横加速度センサ3またはヨーレイトセンサ7が故障していること確定し、診断を終了する。
ステートS32に移行後、基準値がリセットされたときにはステートS34に移行する。ステートS34では、異常判定時間FC1を「0」にする。
基準値に対する検出ヨーレイトのゲインの変動量、または基準値に対する横加速度換算ヨーレイトのゲインの変動量が診断中止閾値TR6より大きいときにはステートS35に移行する。ステートS35では、出力ゲイン異常診断を中断する。基準値に対する検出ヨーレイトのゲインの変動量、または基準値に対する横加速度換算ヨーレイトのゲインの変動量が診断中止閾値TR6以下となると、ステートS32に戻る。
タイヤのグリップ力が線形領域の範囲で車両が旋回走行していても、基準値に対する検出ヨーレイトのゲインは多少変動する。同じく、基準値に対する横加速度換算ヨーレイトのゲインは多少変動する。診断中止閾値TR6は、タイヤのグリップ力が線形領域の範囲で車両が旋回走行しているときのゲインの変動を許容できる値に設定する。診断中止閾値TR6は、前述のゲイン基準値算出中止閾値TR4と同一の値か、多少大きめの値に設定すれば良い。
【0017】
[作用]
低μ路走行時やバンク路走行時には、操舵角センサ2、横加速度センサ3、ヨーレイトセンサ7のそれぞれの検出値の相関性が低くなる。低μ路ではタイヤと路面の摩擦係数が小さい。そのため、操舵角が大きいにも関わらず横加速度やヨーレイトが小さく検出されることがある。また、バンク路では車両横方向に重力が作用する。そのため操舵角が小さいにも関わらわず横加速度やヨーレイトが大きく検出されることがある。つまり、各センサの検出値の相関性の有無でセンサの異常を検出してしまうと、センサが正常であるにも関わらず異常と誤判定するおそれがあった。
車両が安定した状態で走行している(高μ路や非バンク路を走行している)か否かは、タイヤのスリップ角と車体速との関係から判定できる。また、横加速度と車体速との関係からも判定できる。しかし、検出値を出力するセンサが故障しているときには、上記の判定を行うことができない。例えば、タイヤのスリップ角に基づいて上記判定する場合には、操舵角が必要である。そのため、操舵角センサ2が故障しているときには判定を行えない。また、横加速度に基づいて上記判定する場合には、横加速度センサ3が故障しているときには上記判定を行えない。
【0018】
そこで実施例1では、操舵角換算ヨーレイトに対する検出ヨーレイトのゲインの変動量が所定量以下のとき、または操舵角換算ヨーレイトに対する横加速度換算ヨーレイトのゲインの変動量が所定量以下のときに、センサの出力ゲイン異常を検出するようにした。
図6および図7は、操舵角換算ヨーレイトおよび検出ヨーレイトのタイムチャート(図6(a) 図7(a))と、操舵角換算ヨーレイトに対する検出ヨーレイトのゲインのタイムチャート(図6(b) 図7(b))である。図6は、ヨーレイトセンサ7は正常であるが、タイヤのグリップ力が非線形領域の範囲で車両が旋回走行しているため、操舵角換算ヨーレイトと検出ヨーレイトの位相がずれているものを示している。図7は、タイヤのグリップ力が線形領域の範囲で車両が旋回走行しているが、ヨーレイトセンサ7に出力ゲイン異常が発生しているものを示している。
タイヤのグリップ力が非線形領域の範囲で車両が旋回走行しているときには、操舵角換算ヨーレイトに対して検出ヨーレイトの位相は乱れる。そのため、操舵角換算ヨーレイトに対する検出ヨーレイトのゲインは常に変動することとなる(図6)。一方、タイヤのグリップ力が線形領域の範囲で車両が旋回走行しているときに、ヨーレイトセンサ7の出力ゲイン異常が発生したときには、操舵角換算ヨーレイトに対して検出ヨーレイトの位相はほとんど乱れない。そのため、操舵角換算ヨーレイトに対する検出ヨーレイトのゲインは小さくなるものの、ほぼ一定となる(図7)。
したがって、ゲインの大きさに関わらず、ゲインの変動量に着目すれば車両の走行状態を把握することができる。ゲインの変動量が大きいときにはタイヤのグリップ力が非線形領域の範囲で車両が旋回走行していると判断できる。このとき、ヨーレイトセンサ7または横加速度センサ3の出力ゲイン異常診断を禁止する。これにより、出力異常診断によるセンサ異常の誤検出を抑制することができる。
【0019】
タイヤのグリップ力が非線形領域の範囲で車両が旋回走行しているか否かは、操舵角換算ヨーレイトと検出ヨーレイトの偏差、または操舵角換算ヨーレイトと横加速度換算ヨーレイトの偏差からも判定することができる。以下、偏差を用いて出力ゲイン異常診断の禁止を判断したときと、ゲインを用いて出力ゲイン異常診断の禁止を判断したときを比較しながら説明する。
図8は、操舵角換算ヨーレイト、検出ヨーレイト、横加速度換算ヨーレイトのタイムチャートである。図8では、低μ路における車両旋回時の状態を示している。
車両旋回開始直後、横加速度換算ヨーレイトは舵角換算ヨーレイトに近い値を取るが、徐々に頭打ちとなる。検出ヨーレイトは横加速度換算ヨーレイトに比べて早い段階から舵角換算ヨーレイトについていけなくなっている。
操舵を切り返すとタイヤのグリップ力が回復傾向となる。しかし、横加速度換算ヨーレイトおよび検出ヨーレイトは、操舵角換算ヨーレイトの変化に遅れて追従している。
図9は、操舵角換算ヨーレイトに対する検出ヨーレイトの変化を示すグラフである。図9(a)は、操舵角換算ヨーレイトと検出ヨーレイトの偏差の絶対値を示すグラフである。図9(b)は、操舵角換算ヨーレイトに対する検出ヨーレイトのゲインの絶対値を示すグラフである。図9においてハッチング箇所は、出力ゲイン異常診断の禁止する領域を示す。
偏差を用いて出力ゲイン異常診断の禁止をする場合、偏差の絶対値が診断中断閾値TR8以上となる範囲を出力ゲイン異常診断の禁止と判断する。
前述のように、低μ路における車両旋回時には、検出ヨーレイトは横加速度換算ヨーレイトに比べて早い段階から舵角換算ヨーレイトについていけなくなっている。そのため、偏差の立ち上がりが早く、比較的早い段階から出力ゲイン異常診断の禁止を行うことができている。しかし、操舵角を切り返したときに、操舵角換算ヨーレイトと検出ヨーレイトとの偏差の絶対値が一時的に小さくなるときがある。そのため、操舵角換算ヨーレイトと検出ヨーレイトとの偏差の絶対値が診断中断閾値TR8を下回り、出力ゲイン異常診断の禁止が途中で解除されることがある。
【0020】
一方、低μ路における車両旋回時には、操舵角換算ヨーレイトと検出ヨーレイトの位相があっていないためゲインは常に変動している。そのため、低μ路における車両旋回時には、常に出力ゲイン異常診断を禁止することができる。
なお図9(b)では、ゲインの絶対値が一端上昇した後、下降し始めたときから出力ゲイン異常診断の禁止している。これは図4のステートS22で、操舵角換算ヨーレイトの3点をサンプリングしているためである。この間は出力ゲイン異常診断の禁止は行われないが、基準値が設定されていないため、実際には出力ゲイン異常診断は行われていない。
図10は、操舵角換算ヨーレイトに対する横加速度換算ヨーレイトの変化を示すグラフである。図10(a)は、操舵角換算ヨーレイトと横加速度換算ヨーレイトの偏差の絶対値を示すグラフである。図10(b)は、操舵角換算ヨーレイトに対する横加速度換算ヨーレイトのゲインの絶対値を示すグラフである。図10においてハッチング箇所は、出力ゲイン異常診断の禁止する領域を示す。
前述のように、低μ路における車両旋回開始時には、旋回直後は横加速度換算ヨーレイトは舵角換算ヨーレイトに近い値を取るが、徐々に頭打ちとなる。そのため、偏差の立ち上がりが遅く、出力ゲイン異常診断の禁止が遅れてしまう。また、操舵角を切り返したときに、操舵角換算ヨーレイトと横加速度換算ヨーレイトとの偏差の絶対値が一時的に小さくなるときがある。そのため、操舵角換算ヨーレイトと横加速度換算ヨーレイトとの偏差の絶対値が診断中断閾値TR8を下回り、出力ゲイン異常診断の禁止が途中で解除されることがある。
一方、低μ路における車両旋回時には、操舵角換算ヨーレイトと検出ヨーレイトの位相があっていないため、旋回直後からゲインの変動が生じる。そのため、低μ路における車両旋回直後から出力ゲイン異常診断を禁止することができる。また、低μ路における車両旋回時には、操舵角換算ヨーレイトと横加速度換算ヨーレイトのゲインは常に変動している。そのため、低μ路における車両旋回時には、常に出力ゲイン異常診断を禁止することができる。
上記のように、操舵角換算ヨーレイトと検出ヨーレイトの位相があっていない状態は、車両がバンク路を走行していないときにも生じる。同じく、操舵角換算ヨーレイトと横加速度換算ヨーレイトの位相があっていない状態は、車両がバンク路を走行していないときにも生じる。
【0021】
また実施例1では、車両旋回中にヨーレイトセンサ7、横加速度センサ3の出力ゲイン異常検出を行うようにした。
車両旋回中には、検出ヨーレイト、横加速度換算ヨーレイト、操舵角換算ヨーレイトの値が大きく出力されるため、診断を実施するのに適した状態である。
また実施例1では、出力ゲイン異常検出を行う際に、車両旋回中の操舵角換算ヨーレイトを検出ヨーレイト、横加速度換算ヨーレイトと比較する基準値として設定するようにした。
操舵角センサ2は、ヨーレイトセンサ7や横加速度センサ3に比べて信頼度が高い。信頼度の高い操舵角センサ2の検出値から求めた操舵角換算ヨーレイトを基準値とすることで、検出ヨーレイト、横加速度換算ヨーレイトの出力ゲイン異常検出の精度を高めることができる。
実施例1では、操舵角換算ヨーレイトの基準値に対する検出ヨーレイトのゲインが所定ゲイン以上または所定ゲイン以下のときには、ヨーレイトセンサ7に出力ゲイン異常が発生していると判断するようにした。また、操舵角換算ヨーレイトの基準値に対する横加速度換算ヨーレイトのゲインが所定ゲイン以上または所定ゲイン以下のときに横加速度センサ3に出力ゲイン異常が発生していると判断するようにした。
ヨーレイトセンサ7に出力ゲイン異常が発生すると、検出ヨーレイトは基準値に対して大きい値を示すか、小さい値を示すこととなる。同じく、横加速度センサ3に出力ゲイン異常が発生すると、検出ヨーレイトは基準値に対して大きい値を示すか、小さい値を示すこととなる。これにより、センサの出力ゲイン異常を簡便な方法で検出することができる。
実施例1では、進行方向判定部9が検出した車両の進行方向に対応して出力ゲイン異常の検出方法を補正するようにした。
車両が前進しているときと後進しているときでは、ヨーレイトは反対に作用する。例えば、左に操舵しているときに前進すればヨーレイトは左回転方向に作用するが、後進すればヨーレイトは右回転方向に作用することとなる。これにより車両の進行方向に関わらず出力異常検出を行うことができる。
【0022】
[効果]
(1) 車両に搭載されたステアリングホイールの操作に応じた操舵角を検出する操舵角センサ2と、車両に作用するヨーレイトを検出するヨーレイトセンサ7と、操舵角センサ2が検出した操舵角から算出した操舵角換算ヨーレイトに対するヨーレイトセンサ7が検出した検出ヨーレイトのゲインの変動量が所定量以下のときに、ヨーレイトセンサ7の出力ゲイン異常検出が可能であると判定し、ヨーレイトセンサの出力ゲイン異常検出が可能であると判定したときに、ヨーレイトセンサ7の出力ゲイン異常検出を行うゲイン異常判定部12(ヨーレイトセンサ出力ゲイン異常検出部)と、を備えた。
よって、タイヤのグリップ力が線形領域の範囲で車両が走行しているときにヨーレイトセンサ7の出力ゲイン異常検出を行うことができる。これにより、ヨーレイトセンサ7の出力ゲイン異常の誤検出を抑制することができる。
【0023】
(2) 車両が旋回中か否か判断する旋回方向判定部10を備え、ゲイン異常判定部12は、旋回方向判定部10により旋回中と判定したときにヨーレイトセンサ7の出力ゲイン異常検出を実施するようにした。
よって、ヨーレイトセンサ7の出力ゲイン異常の誤検出を抑制することができる。
(3) ゲイン異常判定部12は、旋回中の操舵角換算ヨーレイトの値を検出ヨーレイトと比較する基準値として設定するようにした。
よって、ヨーレイトセンサ7の出力ゲイン異常検出の精度を高めることができる。
(4)ゲイン異常判定部12は、車両旋回時に、基準値に対する検出ヨーレイトのゲインが所定ゲイン以上または所定ゲイン以下のときにヨーレイトセンサ7の出力ゲイン異常を検出するようにした。
よって、ヨーレイトセンサ7の出力ゲイン異常を簡便な方法で検出することができる。
(5) 車両の前後進方向を検出する進行方向判定部9(前後進検出部)を設け、ゲイン異常判定部12は、検出された前後進方向に対応して出力ゲインの異常の検出方法を補正するようにした。
よって、車両の進行方向に関わらず、ヨーレイトセンサ7の出力ゲイン異常検出を精度良く行うことができる。
【0024】
(6) 車両に作用する横加速度を検出する横加速度センサ3を設け、操舵角換算ヨーレイトに対する横加速度センサが検出した横加速度から算出した横加速度換算ヨーレイトのゲインの変動量が所定量以下のときに、横加速度センサ3の出力ゲイン異常検出が可能であると判定し、横加速度センサ3の出力ゲイン異常検出が可能であると判定したときに、横加速度センサ3の出力ゲイン異常検出処理を行うゲイン異常判定部12(横加速度センサ出力ゲイン異常検出部)を備えた。
よって、横加速度センサ3の出力ゲイン異常を簡便な方法で検出することができる。
(7) ゲイン異常判定部12は、旋回中の舵角換算ヨーレイトの値を横加速度換算ヨーレイトと比較する基準値として設定するようにした。
よって、横加速度センサ3の出力ゲイン異常検出の精度を高めることができる。
(8) ゲイン異常判定部12は、基準値に対する横加速度換算ヨーレイトのゲインが所定ゲイン以上または所定ゲイン以下のときに横加速度センサ3の出力ゲイン異常を検出するようにした。
よって、横加速度センサ3の出力ゲイン異常を簡便な方法で検出することができる。
【0025】
(9) 車両に搭載されたステアリングホイールの操作に応じた操舵角を検出する操舵角センサ2と、車両に作用する横加速度を検出する横加速度センサ3と、車両に作用するヨーレイトを検出するヨーレイトセンサ7と、車両旋回時に、操舵角センサ2が検出した操舵角から算出した操舵角換算ヨーレイトに対するヨーレイトセンサ7が検出した検出ヨーレイトのゲインの変動量が所定量以下のときに、ヨーレイトセンサ7の出力ゲイン異常検出が可能であると判定し、操舵角換算ヨーレイトに対する横加速度センサ3が検出した横加速度から算出した横加速度換算ヨーレイトのゲインの変動量が所定量以下のときに、横加速度センサ3の出力ゲイン異常検出が可能であると判定し、ヨーレイトセンサの出力ゲイン異常検出が可能であると判定したときに、ヨーレイトセンサの出力ゲイン異常検出を行い、横加速度センサの出力ゲイン異常検出が可能であると判定したときに、横加速度センサの出力ゲイン異常検出処理を行うゲイン異常判定部12(検出判定部、出力ゲイン異常検出部)を設けた。
よって、タイヤのグリップ力が線形領域の範囲で車両が走行しているときにヨーレイトセンサ7、横加速度センサ3の出力ゲイン異常検出を行うことができる。これにより、ヨーレイトセンサ7、横加速度センサ3の出力ゲイン異常の誤検出を抑制することができる。
(10) ゲイン異常判定部12は、旋回中の舵角換算ヨーレイトの値を検出ヨーレイトと比較する第一の基準値として設定し、舵角換算ヨーレイトの値を横加速度換算ヨーレイトと比較する第二の基準値として設定するようにした。
よって、ヨーレイトセンサ7、横加速度センサ3の出力ゲイン異常検出の精度を高めることができる。
【0026】
(11) ゲイン異常判定部12は、車両旋回時に、第一の基準値に対する検出ヨーレイトのゲインが所定ゲイン以上または所定ゲイン以下のときにヨーレイトセンサの出力ゲイン異常を検出し、第二の基準値に対する横加速度換算ヨーレイトのゲインが所定ゲイン以上または所定ゲイン以下のときに横加速度センサの出力ゲイン異常を検出するようにした。
よって、ヨーレイトセンサ7および横加速度センサ3の出力ゲイン異常を簡便な方法で検出することができる。
(12) 車両の前後進方向を検出する進行方向判定部9(前後進検出部)を設け、ゲイン異常判定部12は、検出された前後進方向に対応して出力ゲインの異常の検出方法を補正するようにした。
よって、車両の進行方向に関わらず、ヨーレイトセンサ7の出力ゲイン異常検出を精度良く行うことができる。
(13) 車両に搭載されたステアリングホイールの操作に応じた操舵角を検出する操舵角センサ2と、車両に作用するヨーレイトを検出するヨーレイトセンサ7と、車両旋回時に、操舵角センサ2が検出した操舵角から操舵角換算ヨーレイトを算出し、算出した操舵角換算ヨーレイトを基準値とし、基準値とヨーレイトセンサ7が検出した検出ヨーレイトの割合の変動量を算出し、変動量が所定量以下のときに、ヨーレイトセンサ7の出力ゲイン異常検出を行うゲイン異常判定部12(ヨーレイトセンサ出力ゲイン異常検出部)と、を備えた。
よって、タイヤのグリップ力が線形領域の範囲で車両が走行しているときにヨーレイトセンサ7の出力ゲイン異常検出を行うことができる。これにより、ヨーレイトセンサ7の出力ゲイン異常の誤検出を抑制することができる。
【0027】
(14) 車両に作用する横加速度を検出する横加速度センサ3と、基準値に対する横加速度センサ3が検出した横加速度から算出した横加速度換算ヨーレイトの割合の変動量を算出し、変動量が所定量以下のときに、横加速度センサ3の出力ゲイン異常検出を行うゲイン異常判定部12(横加速度出力ゲイン異常検出部)と、を備えた。
よって、タイヤのグリップ力が線形領域の範囲で車両が走行しているときに横加速度センサ3の出力ゲイン異常検出を行うことができる。これにより、横加速度センサ3の出力ゲイン異常の誤検出を抑制することができる。
(15) ゲイン異常判定部12は、基準値に対する検出ヨーレイトの割合が所定割合以上または所定割合以下のときにヨーレイトセンサの出力ゲイン異常を検出するようにした。
よって、ヨーレイトセンサ7の出力ゲイン異常を簡便な方法で検出することができる。
(16) ゲイン異常判定部12は、基準値に対する横加速度換算ヨーレイトの割合が所定割合以上または所定割合以下のときに横加速度センサの出力ゲイン異常を検出するようにした。
よって、横加速度センサ3の出力ゲイン異常を簡便な方法で検出することができる。
(17) 車両の前後進方向を検出する進行方向判定部9(前後進検出部)を設け、ゲイン異常判定部12は、検出された前後進方向に対応してヨーレイトセンサ7の出力ゲインの異常の検出方法を補正するようにした。
よって、車両の進行方向に関わらず、ヨーレイトセンサ7、横加速度センサ3の出力ゲイン異常検出を精度良く行うことができる。
【0028】
〔他の実施例〕
以上、本発明を実施例1に基づいて説明してきたが、各発明の具体的な構成は実施例1に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
実施例1では、センサの出力ゲイン異常検出を行う際の基準値に操舵角換算ヨーレイトを用いた。これを基準値として、車輪速から算出したヨーレイトである車輪速換算ヨーレイトを用いても良い。よって、基準値を冗長して設定することがきる。これにより、操舵角センサ2と車輪速センサ6のいずれか一方が故障しても、ヨーレイトセンサ7、横加速度センサ3の出力ゲイン異常検出を継続することができる。
実施例1では、基準値に対する検出ヨーレイト、横加速度換算ヨーレイトのゲインの変動量が診断中止閾値TR6より大きいときに、ヨーレイトセンサ7、横加速度センサ3の出力ゲイン異常診断を中止するようにしていた。ゲインの変動量に加え、ゲインの変動の勾配が所定値よりも大きいときには、ヨーレイトセンサ7、横加速度センサ3の出力ゲイン異常診断を中止するようにしても良い。
車両特性上、タイヤのグリップ力が線形領域の範囲で車両が旋回走行しているときでも、基準値に対する検出ヨーレイト、横加速度換算ヨーレイトのゲインの変動量が比較的大きい車両もある。この場合、診断中止閾値TR6を大きめに設定する必要がある。そのため、出力ゲイン異常診断の中止が遅れるおそれがある。ゲインの変動量が診断中止閾値TR6以下であるときであっても、ゲインの変動の勾配が所定値よりも大きいときにはヨーレイトセンサ7、横加速度センサ3の出力ゲイン異常診断を中止することにより、早期に出力ゲイン異常診断を中止することができる。
図1
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図10