(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973717
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】アルミニウム合金複合材及びその製造方法、アルミニウム合金鍛造品
(51)【国際特許分類】
B21C 23/22 20060101AFI20160809BHJP
C22C 21/00 20060101ALI20160809BHJP
C22F 1/04 20060101ALI20160809BHJP
B23K 20/00 20060101ALI20160809BHJP
B21J 5/00 20060101ALI20160809BHJP
B21C 37/00 20060101ALI20160809BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20160809BHJP
【FI】
B21C23/22 Z
C22C21/00 E
C22F1/04 H
B23K20/00 310H
B21J5/00 D
B21C37/00 B
!C22F1/00 612
!C22F1/00 627
!C22F1/00 683
!C22F1/00 685Z
!C22F1/00 691B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-276505(P2011-276505)
(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公開番号】特開2013-126672(P2013-126672A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2014年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】若栗 聡史
(72)【発明者】
【氏名】三部 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】中西 栄三郎
(72)【発明者】
【氏名】檜室 義幸
【審査官】
川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−162318(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/097085(WO,A1)
【文献】
特開平06−207255(JP,A)
【文献】
特開昭63−235018(JP,A)
【文献】
特開2011−195912(JP,A)
【文献】
特開2011−106011(JP,A)
【文献】
特開2011−225988(JP,A)
【文献】
特開2010−221244(JP,A)
【文献】
特開2010−142811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 23/00−35/06
B21J 1/00−13/14,17/00−19/04
B21K 1/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塊状または円柱形状のアルミニウム合金Aと、その外周面の一部または全周を覆うアルミニウム合金Bで構成されるアルミニウム合金複合材において、アルミニウム合金Aとアルミニウム合金Bが拡散接合されており、アルミニウム合金AのFe量(質量%)をFeA、アルミニウム合金BのFe量をFeBとしたとき、0.2≦FeA≦1.0かつFeA/FeB>1であり、アルミニウム合金Bが複合材の断面積の5%以上であり、前記アルミニウム合金AがSi:4.0〜8.0%(質量%、以下同じ)、Mg:0.2〜0.5%、Fe:0.2〜1.0を含有し、残部Alと不可避的不純物からなるAl−Si−Mg系合金、前記アルミニウム合金BがSi:0.2〜1.0%、Mg:0.4〜1.2%、Fe:0.1〜0.9%を含有し、残部Alと不可避的不純物からなるAl−Mg−Si系合金であることを特徴とするアルミニウム合金複合材。
【請求項2】
前記アルミニウム合金Aの硬度HAとアルミニウム合金Bの硬度HBが、0.8≦HA/HBであることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金複合材。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアルミニウム合金複合材の製造方法であって、前記アルミニウム合金Aからなる芯材ビレットを前記アルミニウム合金Bからなる皮材中空ビレットの内径部に挿入してクラッドビレットを作成する工程と、前記クラッドビレットを間接押出する工程を備える、アルミニウム合金複合材の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のアルミニウム合金複合材を用いるアルミニウム合金熱間鍛造品またはアルミニウム合金冷間鍛造品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金複合材及びその製造方法、及びアルミニウム合金鍛造品に関し、特に、延性に優れたアルミニウム合金複合材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からアルミニウム合金は、押出、鍛造等の加工によって複雑形状の成形が可能であるため、軽量化素材として、主に構造部材を中心に様々な用途で使用されている。
【0003】
これらのアルミニウム合金の中でも、JIS規格合金であるAC4C等のAl−Si−Mg系合金は、鋳造時の湯流れ性が良いこと、人工時効処理によって強度を高くすることが可能なこと等の理由から、鋳物用合金として既に幅広く利用されている。
【0004】
また、これらの鋳物用合金は不純物の多い2次合金(再生塊)を用いて製造することが可能であるため、1次合金(新塊)を多く使用する一般的な展伸材と比較して低コストで製造が可能であり、さらなる利用の拡大が期待されている。
【0005】
一方、2次合金原料は不純物元素であるFeを多く含有する場合がある。Al中にFeが0.2質量%以上含有された場合、鋳造時に粗大な針状のAl−Si−Fe系の化合物が形成されやすくなるため、材料の延性を低下させる。
【0006】
Al−Si−Mg系合金のT6材としての伸びは、Feが0.5%以下(組成の%は質量%を表す、以下同じ)に規制されているJIS合金のAC4C−T6で一般に10%以下であり、部品によってはその要求特性に対し十分な延性が得られないため、用途拡大の妨げとなっていた。
【0007】
Al−Si−Mg系合金の延性を改善する手段として、不純物元素であるFeの含有量を低くする方法がある。Fe含有量を0.2%まで抑えたJIS合金としてはAC4CHが規定されており、この合金のT6処理後の伸びは一般に10%を超えるが、Fe含有量を抑えるため新塊が主原料となり、2次合金を使用する比率が小さくなるためコストが高くなるという問題点があった。
【0008】
さらに、Al−Si−Mg系合金の延性を改善する手段として、アルミニウム合金で既に一般的に使用されているクラッド材とする方法が考えられる。しかし、アルミニウム合金で用いられるクラッド材は主に耐食性改善が主目的であり、犠牲層として皮材にZnを添加した合金を用いられるのが一般的であり、延性の改善を目的としたクラッド材が検討された前例は無い。
【0009】
アルミニウム合金複合材の代表例として、特許文献1が挙げられるが、複合材の疲労強度及び耐食性向上の手段として、芯材を高強度合金、皮材を芯材と比較して耐食性に優れた合金を用いているため、本特許とは異なる。また、耐食性を向上させるためだけに皮材があるため、延性に関する記述は無く、皮材の厚さの規定も無い。さらに複合材の製造方法が摩擦接合によるものであるため、低コストで製造することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−221244号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこれらの課題を解決するためのものであり、高Feを含有する材料においても低コストで製造可能で、かつ延性に優れたアルミニウム合金を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは様々な検討を行った結果、芯材よりFe量の少ない延性に優れた合金をクラッドさせた複合材とすることにより、強度及び延性に優れた材料が提供可能なことを見出した。
【0013】
さらに、本発明の複合材の製造方法として間接押出を用いることにより、様々なサイズ及び芯材、皮材の比率に対応可能な複合材を低コストで提供することが可能となる。
【0014】
本願記載の第一の発明は、塊状または円柱形状のアルミニウム合金Aと、その外周面の一部または全周を覆うアルミニウム合金Bで構成されるアルミニウム合金複合材において、アルミニウム合金Aとアルミニウム合金Bが拡散接合されており、アルミニウム合金AのFe量(質量%)をFe
A、アルミニウム合金BのFe量をFe
Bとしたとき、0.2≦Fe
A≦1.0かつFe
A/Fe
B>1であり、アルミニウム合金Bが複合材の断面積の5%以上であることを特徴とする強度及び延性に優れたアルミニウム合金複合材である。
【0015】
また、本願記載の第二の発明は、前記アルミニウム合金Aの硬度をH
A、アルミニウム合金Bの硬度をH
Bとした場合、0.8≦H
A/H
Bであることを特徴とする強度及び延性に優れたアルミニウム合金複合材である。
【0016】
本願記載の第三の発明は、前記アルミニウム合金AがSi:4.0〜8.0%(質量%、以下同じ)、Mg:0.2〜0.5%、Fe:0.2〜1.0%を含有し、残部Alと不可避的不純物からなるAl−Si−Mg系合金、前記アルミニウム合金BがSi:0.2〜1.0%、Mg:0.4〜1.2%、Fe:0.1〜0.9%を含有し、残部Alと不可避的不純物からなるAl−Mg−Si系合金であることを特徴とする強度及び延性に優れたアルミニウム合金複合材である。
【0017】
本願記載の第四の発明は、前記アルミニウム合金複合材の製造方法であって、前記アルミニウム合金Aからなる芯材ビレットを前記アルミニウム合金Bからなる皮材中空ビレットの内径部に挿入してクラッドビレットを作成する工程と、前記クラッドビレットを間接押出する工程を備える、アルミニウム合金複合材の製造方法である。
【0018】
本願記載の第五の発明は、前記アルミニウム合金複合材を熱間または冷間鍛造により加工したアルミニウム合金鍛造品である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るアルミニウム合金複合材によれば、延性に優れたアルミニウム合金を低コストで提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明によるアルミニウム合金複合材の詳細について説明する。
【0021】
本発明のアルミニウム複合材の組み合わせに関しては、皮材のアルミニウム合金Bは、芯材のアルミニウム合金Aに比べてFe量の低い材料という条件を満足するものであればアルミニウム合金の選定に規定は無い。
【0022】
しかし、より好ましくは、アルミニウム合金AはAl−Si−Mg系合金、前記アルミニウム合金BはAl−Mg−Si系合金が望ましい。これは、低コストで製造が可能であることと、芯材、皮材ともにMg、Siを含有することにより、複合材を人工時効処理によってMg
2Siによる析出強化を図ることが出来るためである。
【0023】
複合材の芯材となるアルミニウム合金Aに関しては、鋳物用合金であるAl−Si−Mg系合金(JIS規格AC4C等)が望ましい。これは複合材の元になる鋳塊作製時に多くの2次合金を使用することが可能な組成であり、それによって低コストで製造可能なためである。また、芯材のFe量が0.2%未満の場合は製造時のコストが高くなるため、アルミニウム合金AのFe量(Fe
A)は、0.2%以上とし、好ましくは0.4%以上とする。また、Fe
Aの上限は、Fe
Aが多すぎると、アルミニウム合金Bとのクラッド材にした場合でも十分な延性が得られないので、Fe
Aは、1.0%以下とし、望ましくは0.7%以下とする。Fe
Aは、具体的には例えば、0.20、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
また、複合材の皮材となるアルミニウム合金Bに関しては、展伸用合金であるAl−Mg−Si系合金(JIS規格6061、6063等)が望ましい。これは、芯材と比較して延性が高いこととともに、芯材と皮材を同等の強度にすることによって、複合材としての鍛造等の成形加工時の成形性向上を図ることが可能となるためである。アルミニウム合金BのFe量(Fe
B)は、Fe
A/Fe
B>1であれば特に限定されないが、例えば、0.1〜0.9%であり、好ましくは0.1〜0.4%であり、具体的には例えば0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。Fe
A/Fe
Bの値は、1より大きければよく、例えば、1.1〜5であり、具体的には例えば1.1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
複合材の成形性を低下させないための強度範囲としては、アルミニウム合金Aの硬さH
Aとアルミニウム合金Bの硬さH
Bの比が、0.8≦H
A/H
Bであることが望ましい。H
A/H
B<0.8の場合、芯材と比較して皮材の変形抵抗が高くなるため、鍛造等の成形加工時に割れが発生しやすくなる。一方、上限は特に限定しないが、芯材と皮材の均一な加工のための好ましい範囲として、H
A/H
B≦1.2であることが望ましい。H
A/H
Bの値は、例えば、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.05、1.1、1.15、1.2であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0026】
また、アルミニウム合金Bは、複合材の断面積の5%以上の面積率であることが必要である。ここで、面積率は、複合材の任意の断面とそれに直交する2断面の計3断面の平均値で定義する。断面積比率が5%未満の場合、複合材として十分な延性が得られない。なお、断面積比率のより好ましい範囲としては、10%以上70%以下である。一方、断面積比率が70%より大きい場合、伸びの上昇が小さいが、アルミニウム合金Aを使用する割合が小さくなり、コストが上昇してしまう。断面積比率は、具体的には例えば5、10、15、20、30、40、50、60、70%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0027】
次に本実施形態におけるアルミニウム合金Aの成分限定理由について説明する。
Siは、Mgと反応してMg
2Si化合物を形成し、人工時効処理において強度を増大させる元素である。Siの含有量は、4.0〜8.0%の範囲であり、4.0%未満では2次合金を使用する比率が低くなるため、低コストで製造することが出来ない。一方、8.0%を超えると押出性が低下する。
【0028】
Mgは、上述したように、Siと反応してMg
2Si化合物を形成することで、押出成形後の人工時効処理において強度を増大させる効果がある。Mgの含有量は、0.2〜0.5%であり、0.2%未満ではその効果が小さく、0.5%を超えると成形性が低下する。
【0029】
Fe以外の不純物として、Ti、Cr、Zrは鋳塊組織を均一微細化する効果があるので含有しても良いが0.2%を超えると巨大金属間化合物を形成したり押出性が低下したりするので、その含有量は0.2%以下であることが好ましい。
【0030】
次に本実施形態におけるアルミニウム合金Bの成分限定理由について説明する。
SiはMgと反応してMg
2Si化合物を形成し、人工時効処理において強度を増大させる元素である。Siの含有量は、0.2〜1.0%(組成の%は質量%を表す、以下同じ)の範囲であり、0.2%未満ではその効果が小さく、1.0%を超えるとその効果が飽和するほか、延性が低下するため押出性が低下する。
【0031】
Mgは上述したように、Siと反応してMg
2Si化合物を形成することで、人工時効処理において強度を増大させる効果がある。Mgの含有量は、0.4〜1.2%であり、0.4%未満ではその効果が小さく、1.2%を超えると成形性が低下する。
【0032】
Fe以外の不純物としてはCu、Znなどがあるが、Cu0.8%以下、Zn0.5%以下であれば本発明の効果を阻害するものではない。
【0033】
またTi、Cr、Zrは鋳塊組織を均一微細化する効果があるので含有しても良いが0.2%を超えると巨大金属間化合物を形成したり押出性が低下したりするので、その含有量は0.2%以下であることが好ましい。
【実施例】
【0034】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。これらの実施例は、本発明の一実施態様を示すものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
連続鋳造により、表1に示す組成の芯材用合金、表2に示す皮材用合金を作製した。均質化処理後、皮材用合金のビレットに穴を開け、皮材中空ビレットを500℃に加熱後、常温の芯材ビレットを皮材中空ビレットの内径部に挿入し、冷却することによって焼嵌めを行い、表3に示す合金及びクラッド率の組み合わせでクラッドビレットを作製した。焼嵌めされたクラッドビレットを450℃で間接押出しすることにより皮材と芯材を拡散接合させ、外径60mmのクラッド丸棒を作製した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
次に、得られた丸棒を用いて以下に示す各種の評価を行った。
【0039】
1.押出性
押出性の評価として、製品表面に割れが生じない限界押出速度を調査した。
【0040】
2.据え込み鍛造試験
得られた丸棒を500℃に加熱後、熱間据え込み鍛造を行い、表面に割れが発生する限界圧下率の調査を行った。なお、圧下率は、{(60−据え込み後の製品高さ)/60}×100(%)で定義した。
【0041】
3.引張試験
据え込み鍛造によって作製した平板は、C1〜C26及びC30〜C38は530℃×1hの溶体化処理を行い、水焼入れ後、180℃×6hの人工時効処理を行った。なお、芯材が2000系合金のC27は溶体化処理を500℃×1h、人工時効処理を120℃×24hとした。また、芯材が7000系合金のC28は溶体化処理条件を470℃×1h、人工時効処理を120℃×24hとした。また、C29は芯材、皮材ともに非熱処理合金であるため、据え込み鍛造後の熱処理は実施しなかった。これらのサンプルからJIS5号引張試験片を切り出し、JISZ2201に基づき、引張試験を行った。
【0042】
4.硬度測定
間接押出によって得られた丸棒を上記同様の熱処理を行った後、丸棒の断面を研磨後、芯材、皮材それぞれの硬さをビッカース硬度計により測定した。なお測定荷重は1kgfとした。これらの評価結果を表3に示す。表3中のTS、YS、ELの意味は、それぞれ、引張強さ、降伏応力、伸び率を意味する。
【0043】
【表3】
【0044】
表3に示す結果について説明する。なお、総合評価は据え込み鍛造品の延性と製造時のコスト及び成形品の強度を考慮して◎、○、△、×の4段階で評価を行った。製造コストに影響する因子としては、芯材及び皮材のFe量、クラッド率、限界押出速度がある。
クラッド材C1〜C12、C16、C18、C20〜21は請求項1〜3全てを満足するものであり、延性に優れ、かつ低コストで製造可能な合金であるため、総合評価は◎となる。
クラッド材C13、C17、C19、C26、C27、C33は請求項1の範囲外のものであるため、総合評価が×となり、以下に示す問題点がある。
クラッド材C13はクラッド面積率が請求項1の範囲外であるため、成形品の延性が不十分である。
クラッド材C17、C19、C33は、Fe
A/Fe
Bが1より小さく、成形品の延性が不十分である。
クラッド材C26は、芯材のFe量が少ないため延性は高いが、コストが高くなるという問題点がある。
クラッド材C27は、芯材のFe量が多すぎたため、成形品の延性が低くなるという問題がある。
その他のクラッド材において、総合評価が○または△となった理由について以下に説明する。
クラッド材C14及びC15は、クラッド面積率が高いため、成形品の延性は向上するが製造コストが若干高くなる。
クラッド材C22は、芯材のSiが少ないため皮材の強度差が大きくなり、限界圧下率がやや低くなることと、芯材のSiが少ないため製造コストが若干高くなる。
クラッド材C23は、芯材のSi量が多いために限界押出速度が低く、製造コストが若干高くなり、鍛造品の伸びも低めである。
クラッド材C24は、芯材のMg量が少ないため、成形品の強度が低めである。
クラッド材C25は、芯材のMg量が多いために限界押出速度が低く、製造コストが若干高くなる。
クラッド材C28は、皮材のSi量が少ないため、成形品の強度が低めである。
クラッド材C29は、皮材のSi量が多いために限界押出速度が低く、製造コストが若干高くなる。
クラッド材C30は、皮材のMg量が少ないため、成形品の強度が低めである。
クラッド材C31は、H
A/H
Bが0.8より小さいため延性が低めであり、また、皮材のMg量が多いために限界押出速度が低く、製造コストも若干高くなる。
クラッド材C32は、芯材、皮材のFe量が少ないため、製造コストが若干高くなる。
クラッド材C34〜C38は、皮材が時効硬化型の合金ではないため、成形品の強度が低めである。