特許第5973752号(P5973752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デルタ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5973752-シートの可動部材の可動機構 図000002
  • 特許5973752-シートの可動部材の可動機構 図000003
  • 特許5973752-シートの可動部材の可動機構 図000004
  • 特許5973752-シートの可動部材の可動機構 図000005
  • 特許5973752-シートの可動部材の可動機構 図000006
  • 特許5973752-シートの可動部材の可動機構 図000007
  • 特許5973752-シートの可動部材の可動機構 図000008
  • 特許5973752-シートの可動部材の可動機構 図000009
  • 特許5973752-シートの可動部材の可動機構 図000010
  • 特許5973752-シートの可動部材の可動機構 図000011
  • 特許5973752-シートの可動部材の可動機構 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973752
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】シートの可動部材の可動機構
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/18 20060101AFI20160809BHJP
   B60N 2/50 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   B60N2/18
   B60N2/50
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-50259(P2012-50259)
(22)【出願日】2012年3月7日
(65)【公開番号】特開2013-184524(P2013-184524A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100097054
【弁理士】
【氏名又は名称】麻野 義夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕二
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−296865(JP,A)
【文献】 特開2000−179347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/72
F16C 17/00−17/26
33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体と、前記シート本体に両端が回動自在に保持された長尺状の回動軸とを備え、前記回動軸の回動に伴って、前記シート本体に付設された可動部材が可動するように構成されたシートの可動部材の可動機構であって、
前記回動軸と前記シート本体とを連結した連結部材を備え、
前記連結部材は、その一端側が前記シート本体の一部に固定的に連結され、その他端側が前記回動軸の両端の中間部に、前記回動軸の軸方向に垂直な方向に力をかけた状態で、回動自在に連結されるように構成されており、
前記シート本体は、互いに距離を持つようにしてシートクッションを支持可能に配設された一対のシートクッション支持部材と、前記一対のシートクッション支持部材同士間にかけ渡されるようにして前記一対のシートクッション支持部材同士を連結した長尺状の懸架部材とを備え、
前記回動軸は、前記懸架部材と並べられるようにして前記一対のシートクッション支持部材同士間にかけ渡され、
前記シート本体の一部は、前記懸架部材から構成され、
前記懸架部材は、外周形状が断面円形状のものから構成され、
前記連結部材は、前記一端側に、前記懸架部材を受容する受容凹部と、前記受容凹部に前記懸架部材をガイドする湾曲状のガイド部とを備えていることを特徴とするシートの可動部材の可動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシートのシートクッションを昇降させるシート昇降機構等のシートの可動部材の可動機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シートのシートクッションを昇降させるシート昇降機構は広く知られている。このシート昇降機構として、例えば特許文献1に提案されたものがある。このシート昇降機構は、左右のシートクッション支持部材(シートレッグ)に回動自在に保持されてシートクッションにリンク結合される回動軸(リンクジョイントシャフト)に固定的に設けたラバーカムを、シートクッションの下面に設けた荷重プレートに当接するように取り付けたものである。これにより、回動軸に設けたセクタギアとそのセクタギアに噛み合わされるピニオンギアとのギア間の遊びや回動軸とシートクッション支持部材等との連結部に生じた遊びを吸収できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−49161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1においては、ラバーカムに加えてラバーカムを当接させる荷重プレートを設けなければならず、部品点数が多くなり、荷重プレートの設置作業等の工程も必要になる。又、ラバーカムの弾性変形によって上記ガタを吸収するようにしているため、長期の使用によりラバーカムがへたり等を起こして吸収し難くなってしまう。
【0005】
又、上記特許文献1においては、例えばシートのシートバックが後傾又は前傾されるような力がかかってそれに連結したシートクッションの前部が後部を軸に上昇又は下降するような回動力がかかると回動軸にねじり力がかかる。このようなねじり力がかかると回動軸が撓み変形しながらねじられる。その結果、シートクッションの前部が後部を軸に、上記ねじられた分だけ上昇又は下降してしまう。
【0006】
本発明は、長期の使用でも回動軸とシート本体等との連結部のガタが生じるおそれが少なく、しかも、回動軸にねじり力がかかった場合でも回動軸がねじり変形し難いシートの可動部材の可動機構の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、シート本体と、前記シート本体に両端が回動自在に保持された長尺状の回動軸とを備え、前記回動軸の回動に伴って、前記シート本体に付設された可動部材が可動するように構成されたシートの可動部材の可動機構であって、前記回動軸と前記シート本体とを連結した連結部材を備え、前記連結部材は、その一端側が前記シート本体の一部に固定的に連結され、その他端側が前記回動軸の両端の中間部に、前記回動軸の軸方向に垂直な方向に力をかけた状態で、回動自在に連結されるように構成されており、前記シート本体は、互いに距離を持つようにしてシートクッションを支持可能に配設された一対のシートクッション支持部材と、前記一対のシートクッション支持部材同士間にかけ渡されるようにして前記一対のシートクッション支持部材同士を連結した長尺状の懸架部材とを備え、前記回動軸は、前記懸架部材と並べられるようにして前記一対のシートクッション支持部材同士間にかけ渡され、前記シート本体の一部は、前記懸架部材から構成され、前記懸架部材は、外周形状が断面円形状のものから構成され、前記連結部材は、前記一端側に、前記懸架部材を受容する受容凹部と、前記受容凹部に前記懸架部材をガイドする湾曲状のガイド部とを備えていることを特徴とするシートの可動部材の可動機構を提供する。
【0008】
これによれば、連結部材によって、回動軸を撓み難くねじれ難いものにできる。従って、回動軸にねじり力がかかった場合でも回動軸がねじり変形し難く、例えばシート本体に支持された可動部材としてのシートクッションが回動軸のねじり変形によって上昇又下降するのを抑えることができる。
【0009】
又、連結部材によって、回動軸を軸方向に垂直な方向に力をかけた状態にしているため、回動軸とシート本体及び可動部材としてのシートクッションとの連結部に製作公差等により生じた遊び(クリアランス)を一方向に寄せて両者を常時当接状態にでき、遊びにより生じる両者間のガタを無くすことができる。又、回動軸を軸方向に垂直な方向に力をかけた状態にしているため、長期の使用でもガタが生じるおそれの少ないものにできる。
【0010】
又、回動軸とシート本体の一部とのそれぞれに連結部材が連結されるだけのため、従来のように荷重プレート等を必要とせず、簡単な構成にでき、低コストで製作できる。
【0012】
また、例えば回動軸の中央部を連結部材によって懸架部材に連結でき、回動軸の撓み変形を効率よく抑えることができる。又、懸架部材は回動軸の近傍にほぼ平行に配設されている場合が多く、容易に回動軸の中央部を連結部材によって懸架部材に連結できる。
【0014】
また、連結部材を回動軸に連結させた状態で、連結部材の受容凹部に懸架部材を、ガイド部から滑らすようにガイドして受容凹部に受容させることができる。従って、連結部材を回動軸と懸架部材とに、例えば回動軸に軸方向に垂直な方向に力をかけた状態にして容易に連結でき、製作容易なものにできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシートの可動部材の可動機構は、長期の使用でも回動軸とシート本体等との連結部のガタが生じるおそれが少なく、しかも、回動軸にねじり力がかかった場合でも回動軸がねじり変形し難いものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のシートの可動部材の可動機構としての第1実施形態のシート昇降機構を有するシートの要部の分解斜視図である。
図2図1の第1実施形態のシート昇降機構を有するシートの要部の斜視図である。
図3図1の第1実施形態のシート昇降機構を有するシートの要部の側面図である。
図4図3のIV−IV線断面図である。
図5図4のV−V線断面図である。
図6図1のシート昇降機構を有するシートのシートクッションの前部を上昇させた状態の側面図である。
図7】本発明の第2実施形態のシート昇降機構を有するシートの要部の分解斜視図である。
図8】第2実施形態のシート昇降機構を有するシートの要部の斜視図である。
図9】第2実施形態のシート昇降機構を有するシートの要部の側面図である。
図10図9のX−X線断面図である。
図11】第2実施形態のシート昇降機構を有するシートのシートクッションの後部を上昇させた状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明のシートの可動部材の可動機構としての第1実施形態のシート昇降機構を有するシートの要部の分解斜視図、図2は、図1の第1実施形態のシート昇降機構を有するシートの要部の斜視図、図3は、図1の第1実施形態のシート昇降機構を有するシートの要部の側面図である。
【0018】
この実施形態では、可動部材の可動機構は、自動車用のシートに適応され、シートのシートクッション(可動部材)2を昇降させるシート昇降機構10から構成されている。第1実施形態のシート昇降機構10は、シート本体1と、シート昇降操作部3とを備えている。
【0019】
シート本体1は、シートクッション2を下方側から支持したシートクッション支持部材としてのロアレール11及びアッパーレール12を備えている。
【0020】
ロアレール11は、左右一対の長尺状のものから構成されている。これらは、互いに左右方向に、シートクッション2の幅寸法と同程度の距離を持って配設され、自動車の床面に固定される。
【0021】
アッパーレール12は、ロアレール11と略同長さの左右一対の長尺状のものから構成されている。これらのアッパーレール12は、それぞれ、各ロアレール11の上部側に長手方向に沿って摺動可能に配設されている。
【0022】
尚、ロアレール11とアッパーレール12とには、図示しないが互いにロック及びロック解除するスライド装置が付設されており、そのスライド装置によってアッパーレール12がロアレール11に対して任意の位置でロックできるとともに、適宜ロック解除してアッパーレール12がロアレール11に対して摺動できるようになっている。
【0023】
又、一対のアッパーレール12は、懸架部材13によって互いに連結されている。この懸架部材13は、パイプから構成されており、左右方向に沿って延ばされて一対のアッパーレール12にかけ渡されるようにして、懸架部材13の両端がアッパーレール12の夫々に設けられた前部ブラケット14に固定的に連結されている。これにより、一対のアッパーレール12は、互いに連動して一緒にロアレール11の長手方向である前後方向に摺動できるようになっている。
【0024】
そして、これらの一対のアッパーレール12の上方側にシートクッション2が配設され、シートクッション2が一対のアッパーレール12に下方側から支持されている。
【0025】
詳しくは、シートクッション2は、後部の左右両側のそれぞれが各アッパーレール12に後部ブラケット15を介して回動自在に連結され、これにより、アッパーレール12に下方側から支持されている。又、シートクッション2の前部の左右両側のそれぞれは、後述するシート昇降操作部3の昇降操作軸31及びリンク35、36を介してアッパーレール12に下方側から支持されている。
【0026】
尚、このシートクッション2の後端は、シート本体に付設されてシートの一部をなす図示しないシートバックに互いに回動自在に連結される。
【0027】
シート昇降操作部3は、この実施形態では、シートクッション2の前部を昇降させる前部昇降操作部30から構成されている。前部昇降操作部30は、昇降操作軸(回動軸)31と、リンク35、36と、連結部材37とを備えている。
【0028】
昇降操作軸31は、シートクッション2を昇降操作するもので、懸架部材13とほぼ同長さで懸架部材13よりも径小な長尺状のパイプから構成されている。この昇降操作軸31は、懸架部材13と所定距離だけ離れた前方側に懸架部材13と略平行に配設されるようにして、その両端のそれぞれが各アッパーレール12の前部ブラケット14に設けられた支持孔14aに挿通されるようにして前部ブラケット14に回動自在に保持されている。
【0029】
又、昇降操作軸31は、この昇降操作軸31に駆動モータ32からの駆動力の伝達を受けるための駆動力伝達部31aを備えている。
【0030】
この駆動力伝達部31aは、昇降操作軸31の左端部(図1では、右側)における外周から径外側に突出するようにして外周に固定的に配設されている。
【0031】
そして、この駆動力伝達部31aは、駆動モータ32と回転伝達可能に連結されている。詳しくは、駆動モータ32は懸架部材13に支持されている。そして、駆動力伝達部31aは、突出先端部にモータ連結部31bを備えており、そのモータ連結部31bが駆動モータ32に設けられた駆動軸連結スクリュー33に連結されている。
【0032】
これにより、駆動モータ32の作動による駆動軸連結スクリュー33の正回転または逆回転に伴い駆動力伝達部31aが図3の時計方向又は反時計方向に回動して、昇降操作軸31が時計方向又は反時計方向に回動する。
【0033】
リンクは、昇降操作軸31の左端部に連結された左リンク35と、昇降操作軸31の右端部に連結された右リンク36とから構成されている。
【0034】
左リンク35は、第1リンク片35aと、第2リンク片35bとの2つから構成されている。
【0035】
第1リンク片35aは、板状のものから構成され、その基端部が昇降操作軸31の左端部に固定的に連結されている。
【0036】
第2リンク片35bは、板状のものから構成され、その基端部が第1リンク片35aの先端に回動自在に連結され、その先端部がシートクッション2の左前部に回動自在に連結されている。
【0037】
右リンク36は、上記左リンク35の第1リンク片35aと第2リンク片35bとのそれぞれと同構成を採る第1リンク片36aと第2リンク片36bとから構成されており、上記左リンク35と左右一対をなすように配設されている。
【0038】
このように構成されたリンク35、36は、昇降操作軸31の図3の時計方向側への回動に伴い第1リンク片35a、36aの先端が昇降操作軸31と共に同方向に回動する。そして、その回動に伴い、第2リンク片35b、36bの先端が上側に移動してシートクッション2の前部を押し上げるようになっている。
【0039】
一方、昇降操作軸31の図3の反時計方向側への回動に伴い第1リンク片35a、36aの先端が昇降操作軸31と共に同方向に回動し、それに伴い、第2リンク片35b、36bの先端が下側に移動してシートクッション2の前部を引き下げる。このように、シートクッション2は、昇降操作軸31の回動に伴ってリンク35、36を介して昇降(可動)する。
【0040】
連結部材37は、厚さが3mm程度の金属製板状体から構成され、昇降操作軸31の左右方向(長手方向)のほぼ中央に配設されている。連結部材37は、図4図5に示すようにその後端側(一端側)に、懸架部材13と連結されるシート本体連結部38を備え、その前端側(他端側)に、昇降操作軸31と回動自在に連結された操作軸連結部39を備えている。
【0041】
シート本体連結部38は、懸架部材13を受容する受容凹部38aと、懸架部材13を受容凹部38aに受容する際に懸架部材13を受容凹部38aに案内するガイド部38bとを備えている。受容凹部38aは、懸架部材13の外周形状と略同形状の略半円弧状に上面から凹まされるようにして形成され、懸架部材13の外周の下部を受容できるようになっている。
【0042】
そして、受容凹部38aは、懸架部材13の長手方向の中央部を受容した状態で懸架部材13と溶接等の固定手段によって固定されている。
【0043】
ガイド部38bは、湾曲状(この実施形態では、曲率半径が25.4mm程度の円弧状)に形成され、受容凹部38aの前方側に受容凹部38aと隣接するように配設されている。
【0044】
操作軸連結部39は、昇降操作軸31が回動自在に挿通可能な側面視で円形状の孔から構成されている。又、この実施形態では、操作軸連結部39は、その操作軸連結部39に挿通した昇降操作軸31との間に介在するように配設された樹脂製ブッシュ39aを備えており、樹脂製ブッシュ39aによって昇降操作軸31が操作軸連結部39内を円滑に回動できるようになっている。
【0045】
又、この実施形態では、操作軸連結部39は、シート本体連結部38が懸架部材13と固定的に連結した図5に示す状態で、その中心軸O1から懸架部材13の中心軸O3までの距離L1が、連結部材37と連結していない通常状態の昇降操作軸31(図5に一点鎖線で示す)の中心軸O2から懸架部材13の中心軸O3までの距離L2よりも大きくなるように設定されている。
【0046】
この実施形態では、上記距離L1は、上記距離L2よりも0.5mm〜1.0mm程度大きいものに設定されている。
【0047】
従って、シート本体連結部38が懸架部材13と連結するとともに、操作軸連結部39が昇降操作軸31と連結した図5に示す状態で、連結部材37は、昇降操作軸31の中央部を昇降操作軸31の軸方向に垂直な方向(この実施形態では図のW方向の前方側)に押圧している。
【0048】
そして、この押圧によって昇降操作軸31の両端のそれぞれが前部ブラケット14の支持孔14aの内周壁に押し付けられ、その結果、昇降操作軸31と支持孔14aとのクリアランスによる遊び、更には、第1リンク片35a、36aと第2リンク片35b、36bとのクリアランスによる遊び及び第2リンク片35b、36bとシートクッション2に設けられたリンク連結孔とのクリアランスによる遊びのそれぞれがなくなった状態になっている。又、上記押圧によって昇降操作軸31の中央部が両端よりも前方側に位置して湾曲状に撓んだ状態になっている。
【0049】
次に、このシート昇降機構10の動作について説明する。シートクッション2の前部が下降した図2図3に示す状態から説明する。この状態では、連結部材37によって、昇降操作軸31と支持孔14aとのクリアランスによる遊び、更には第1リンク片35a、36aと第2リンク片35b、36bとのクリアランスによる遊び及び第2リンク片35b、36bとシートクッション2のリンク連結孔とのクリアランスによる遊びのそれぞれがなくなった状態になっているため、シートクッション2と昇降操作軸31との連結部、及び昇降操作軸31とシート本体1との連結部にガタが生じていない。
【0050】
又、例えばシートバックの後傾に伴いシートクッション2にその後部を中心として前部が上げられるような回動力がかかって昇降操作軸31にねじれ力がかかったような場合でも、連結部材37によって昇降操作軸31の中央部が懸架部材13と連結されているため、昇降操作軸31が撓み難く、ねじり変形するおそれが少ないものにでき、昇降操作軸31のねじり変形によるシートクッション2の前部の上昇を抑えることができる。
【0051】
図2図3に示す状態から、シートクッション2の側方側に設けた図示しない前部上昇スイッチボタンを押圧操作により、駆動モータ32が作動して駆動軸連結スクリュー33が図3の時計方向に回動する。そして、その回動により駆動力伝達部31aが共に同方向に回動して昇降操作軸31が同方向に回動する。
【0052】
そして、その昇降操作軸31の回動によって、図6に示すようにリンク35、36を介してシートクッション2の前部が押し上げられる。そして、前部上昇スイッチボタンの押圧操作の停止によって、あるいは、駆動軸連結スクリュー33の回動停止によって、昇降操作軸31の回動が止まり、シートクッション2の前部の上昇が止まる。
【0053】
この状態においても、連結部材37によって、昇降操作軸31と支持孔14aとのクリアランスによる遊び、第1リンク片35a、36aと第2リンク片35b、36bとのクリアランスによる遊び及び第2リンク片35b、36bとシートクッション2のリンク連結孔21片とのクリアランスによる遊びのそれぞれがなくなった状態になっているため、シートクッション2と昇降操作軸31との連結部、及び昇降操作軸31とシート本体との連結部にガタが生じるおそれの少ないものにできる。
【0054】
又、例えばシートバックの後傾に伴いシートクッション2にその後部を中心として前部が上げられ又は下げられるような回動力がかかって昇降操作軸31にねじれ力がかかったような場合でも、連結部材37によって昇降操作軸31の中央部が懸架部材13と連結されているため、昇降操作軸31が撓み難く、ねじり変形するおそれが少なく、昇降操作軸31のねじり変形によるシートクッション2の前部の上昇及び下降を抑えることができる。
【0055】
一方、この状態から、シートクッション2の前部を下げる場合は、シートクッション2の側方側に設けた図示しない前部下降スイッチボタンを押圧操作することにより、駆動モータ32が作動して駆動軸連結スクリュー33が上記とは反対に図6の反時計方向に回動する。そして、その回動により駆動力伝達部31aが共に同方向に回動して昇降操作軸31が同方向に回動する。
【0056】
そして、その昇降操作軸31の回動によって、リンク35、36を介してシートクッション2の前部が引き下げられる。そして、下降スイッチボタンの押圧操作の停止によってあるいは、駆動軸連結スクリュー33の回動停止によって昇降操作軸31の回動が止まり、シートクッション2の前部の下降が止まる。
【0057】
次に、第2実施形態のシート昇降機構100について、図7図11に基づいて説明する。第2実施形態のシート昇降機構100のシート昇降操作部103は、シートクッション2の前部を昇降させる前部昇降操作部130を備えているとともに、それに加えて更に、シートクッション2の後部を昇降させる後部昇降操作部230を備えている。
【0058】
前部昇降操作部130は、先の第1実施形態の前部昇降操作部30と同構成を採っている。詳しくは、前部昇降操作部130は、先の第1実施形態の昇降操作軸31、リンク35、36、及び連結部材37のそれぞれと同構成を採る前昇降操作軸131、前リンク135、136及び前連結部材137とを備えている。
【0059】
そして、前昇降操作軸131は、前昇降操作軸用の駆動モータ132に回転伝達可能に接続されてその駆動モータ132の駆動力によって回転するようになっている。尚、この前昇降操作軸用の駆動モータ132も先の第1実施形態の駆動モータ32と同構成を採っている。
【0060】
後部昇降操作部230は、前部昇降操作部130とほぼ同様に、後昇降操作軸231と、後リンク235、236と、後連結部材237とを備えている。
【0061】
後昇降操作軸231は、懸架部材13の後方側に、懸架部材13に対して前昇降操作軸131と前後対称位置に配設され、前昇降操作軸131を駆動する前昇降操作軸用の駆動モータ132と別途に設けられた後昇降操作軸用の駆動モータ232と回転伝達可能に接続されている。後昇降操作軸231のその他は、前昇降操作軸131と同構成を採っている。又、後昇降操作軸用の駆動モータ232も前昇降操作軸用の駆動モータ132と同構成を採っている。
【0062】
後部リンクは、後昇降操作軸231の左端部に連結された左後部リンク235と、後昇降操作軸231の右端部に連結された右後部リンク236とから構成されている。
【0063】
左後リンク235は、第1後部リンク片235aと、第2後部リンク片235b(図9に図示)との2つから構成されている。
【0064】
第1後部リンク片235aは、板状のものから構成され、その基端部が後昇降操作軸231の左端部に固定的に連結されている。
【0065】
第2後部リンク片235bは、長尺板状のものから構成され、その基端部が第1後部リンク片235aの先端と回動自在に連結され、その先端部がシートクッション2の左後部に回動自在に連結されている。
【0066】
右後部リンク236は、上記左後部リンク235の第1後部リンク片235aと第2後部リンク片235bとのそれぞれと同構成を採る第1後部リンク片236cと第2後部リンク片(図示せず)とから構成されて、上記左後部リンク235と左右一対をなすように配設されている。
【0067】
このように構成された後部リンク235、236は、後昇降操作軸231の図9の反時計方向側への回動に伴い第1後部リンク片235a、236cの先端が昇降操作軸31と共に同方向に回動する。そして、その回動に伴い、第2後部リンク片235bの先端が前方側に移動し、その移動によって、シートクッション2の後部を、後部ブラケット15との連結部を回動の中心にして同方向に回動させる。
【0068】
一方、後昇降操作軸231の図9の時計方向側への回動に伴い第1後部リンク片235aの先端が後昇降操作軸231と共に同方向に回動し、それに伴い、第2後部リンク片235bの先端が後方側に移動し、その移動によって、シートクッション2の後部を、後部ブラケット15との連結部を回動の中心にして上記とは反対方向の時計方向に回動させる。
【0069】
後連結部材237は、前連結部材137と同構成を採っている。ただし、この後連結部材237は、前連結部材137と前後逆に配設されており、前部側が懸架部材13に固定的に連結され、前部側が後昇降操作軸231の略中央部を、後昇降操作軸231の軸方向に垂直な図10のY方向の後方側に押圧している。
【0070】
そして、この押圧によって後昇降操作軸231の両端のそれぞれが前部ブラケット14の支持孔14bの内周壁に押し付けられ、その結果、後昇降操作軸231と支持孔14bとのクリアランスによる遊び、更には、第1後部リンク片235aと第2後部リンク片235bとのクリアランスによる遊びのそれぞれがなくなった状態になっている。又、上記押圧によって後昇降操作軸231の中央部が両端よりも後方側に位置して湾曲状に撓んだ状態になっている。第2実施形態のその他は、先の第1実施形態のものと同構成を採っている。
【0071】
次に、第2実施形態のシート昇降機構100の動作について説明する。シートクッション2の前部及び後部が下降した図9に示す状態から説明する。この状態では、前部昇降操作部130及び後部昇降操作部230は、前連結部材137と後連結部材237とのそれぞれによって、連結部の遊びがなくなった状態になっているため、シートクッション2と昇降操作軸131、231との連結部、及び昇降操作軸131,231とシート本体との連結部にガタが生じない状態になっている。
【0072】
又、シートクッション2にその後部を中心として前部が上昇又は下降するような回動力がかかって前昇降操作軸131及び後昇降操作軸232にねじれ力がかかったような場合でも、前連結部材137と後連結部材237とのそれぞれによって前昇降操作軸131、後昇降操作軸231の略中央部が懸架部材13と連結されているため、前昇降操作軸131及び後昇降操作軸231が撓み難く、ねじり変形するおそれが少なく、前昇降操作軸131及び後昇降操作軸231のねじり変形によるシートクッション2の前部又は後部の上昇又は下降を抑えることができる。
【0073】
この状態から、シートクッション2の後部を上昇させる場合は、シートクッション2の側方側に設けられた図示しない後部上昇スイッチボタンを押圧操作により、後昇降操作軸用の駆動モータ232が作動して駆動軸連結スクリュー(図示せず)が図9の反時計方向に回動する。そして、その回動により後昇降操作軸231の駆動力伝達部(図示せず)が共に回動して後昇降操作軸231が同方向に回動する。
【0074】
そして、その後昇降操作軸231の回動によって、図11に示すように後部リンク235、236を介してシートクッション2の後部が後部ブラケット15との連結部を回動の中心にして同方向に回動し、これにより、シートクッション2の後部が上昇する。
【0075】
そして、後部上昇スイッチボタンの押圧操作の停止によって、あるいは、駆動軸連結スクリューの回動停止によって、後昇降操作軸231の回動が止まり、シートクッション2の後部の上昇が止まる。
【0076】
この状態においても、前連結部材137と後連結部材237とのそれぞれによって、連結部の遊びがなくなった状態になっているため、シートクッション2と昇降操作軸131、231との連結部、及び昇降操作軸131,231とシート本体との連結部にガタが生じるおそれの少ないものにできる。
【0077】
又、シートクッション2にその後部を中心として前部が上昇又は下降するような回動力がかかって前昇降操作軸131及び後昇降操作軸232にねじれ力がかかったような場合でも、前連結部材137と後連結部材237とのそれぞれによって前昇降操作軸131、後昇降操作軸231の略中央部が懸架部材と連結されているため、前昇降操作軸131及び後昇降操作軸231が撓み難く、ねじり変形するおそれが少なく、前昇降操作軸131及び後昇降操作軸231のねじり変形によるシートクッション2の前部の上昇又は下降を抑えることができる。
【0078】
この状態から、シートクッション2の後部を下げる場合は、シートクッション2の側方側に設けた図示しない後部下降スイッチボタンを押圧操作することにより、駆動モータ232が作動して昇降操作軸31が上記とは反対に図11の時計方向に回動する。
【0079】
そして、その後昇降操作軸231の回動によって、後部リンク235、236を介してシートクッション2の後部が、後部ブラケット15との連結部を回動の中心にして上記とは反対方向の時計方向に回動し、これにより、シートクッション2の後部が下がる。
【0080】
そして、後部下降スイッチボタンの押圧操作の停止によって、あるいは、駆動軸連結スクリューの回動停止によって後昇降操作軸231の回動が止まり、シートクッション2の後部の下降が止まる。
【0081】
尚、シートクッション2の前部を昇降する場合は、先の第1実施形態で説明したと同様にして行うことができる。
【0082】
尚、上記第1実施形態のものは、前部昇降操作部だけを備えたものとされ、上記第2実施形態のものは、前部昇降操作部と後部昇降操作部とを備えたものとされているが、この形態のものに限らず、適宜変更できる。例えば前部昇降操作部を有さずに後部昇降操作部だけを備えたものとしてもよく、適宜変更できる。
【0083】
又、上記実施形態では、連結部材を昇降操作軸の長手方向のほぼ中央に連結させているが、この形態のものに限らず、昇降操作軸への連結部材の連結位置は、昇降操作軸の長手方向の両端の中間部のいずれの位置でもよく、適宜変更できる。
【0084】
又、上記実施形態では、連結部材は1つから構成されているが、この形態のものに限らず、連結部材は複数から構成されてもよく、適宜変更できる。
【0085】
又、上記実施形態では、昇降操作軸を駆動モータの駆動力によって駆動させているが、この形態のものに限らず、例えば昇降操作軸を手で回動操作するものでもよく、適宜変更できる。
【0086】
又、上記実施形態では、シートの可動部材の可動機構は、シート本体に支持されたシートクッションが昇降するシート昇降機構から構成されたが、この形態のものに限らず、適宜変更できる。
【0087】
例えばシートの可動部材の可動機構は、シートの緩衝装置であるシートサスペンションの一部として使用することもできる。詳しくは、例えばシートサスペンションは、床面に固定される下部フレーム及び可動部材としてのシートクッショが載置(付設)される上部フレームを有するシート本体と、上部フレームを下部フレームに対し弾性的に支持するための磁気ばねと、軸部及びリンク片を有する第1サスペンションリンクと、軸部及びリンク片を有する第2サスペンションリンクとを備えている。又、第1サスペンションリンクの軸部の両端が上部フレームに回動自在に保持され第1サスペンションリンクのリンク片が下部フレームに回動自在に連結され、第2サスペンションリンクの軸部の両端が下部フレームに回動自在に保持され第2サスペンションリンクのリンク片が上部フレームに回動自在に連結されるようにして両者でリンク機構を構成する。そして、例えば着座者の着座によりシートクッションに荷重がかかると、第1サスペンションリンクの軸部と第2サスペンションリンクの軸部とがシート本体に対して回動して上部フレームがリンク機構により下部フレームに対して下降するように構成されている。
【0088】
そして、このように構成されるシートサスペンションにおける第1サスペンションリンクの軸部及び第2サスペンションリンクの軸部を本発明の回動軸とし、シートクッショを可動部材として適応できる。
【符号の説明】
【0089】
1 シート本体
2 シートクッション(可動部材)
3、103 シート昇降操作部
10、100 シート昇降機構(シートの可動部材の可動機構)
13 懸架部材
31、131、231 昇降操作軸(回動軸)
37、137、237 連結部材
38a 受容凹部
38b ガイド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11