(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記集中監視装置は、前記潤滑油劣化センサーの消耗の状態を判断するセンサー消耗状態判断手段と、前記センサー消耗状態判断手段によって判断された前記潤滑油劣化センサーの消耗の状態の通知を前記集中監視装置の外部に送信するセンサー消耗状態送信手段とを備えていることを特徴とする請求項1から請求項5までの何れかに記載の集中監視装置。
前記センサー消耗状態判断手段は、前記発光素子による発光の累積の時間に応じた前記発光素子の消耗の状態を、前記潤滑油劣化センサーの消耗の状態として判断することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の集中監視装置。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0036】
まず、本実施の形態に係るメンテナンスシステムの構成について説明する。
【0037】
図1は、本実施の形態に係るメンテナンスシステム10の構成図である。
【0038】
図1に示すように、メンテナンスシステム10は、複数台の産業用ロボット20と、複数台の産業用ロボット20を纏めて監視する集中監視装置100と、産業用ロボット20に関するサービスを提供するサービス業者によって使用される装置であるサービス業者用装置130と、産業用ロボット20の利用者によって使用される装置である複数台の利用者用装置160とを備えている。産業用ロボット20、集中監視装置100、サービス業者用装置130および利用者用装置160は、インターネットなどのネットワーク11を介して互いに通信可能に接続されている。
【0039】
複数台の産業用ロボット20は、例えば工場12A、工場12Bなど、複数の場所に配置されている。
【0040】
集中監視装置100は、産業用ロボット20が配置されている場所とは離れた場所に配置されている。
【0041】
サービス業者用装置130は、産業用ロボット20が配置されている場所および集中監視装置100が配置されている場所とは離れた場所に配置されていても良い。
【0042】
利用者用装置160は、例えば工場毎、工場を運営する企業毎など、複数台の産業用ロボット20のグループ毎に1台ずつ設けられていれば良い。利用者用装置160は、産業用ロボット20が配置されている場所、集中監視装置100が配置されている場所およびサービス業者用装置130が配置されている場所とは離れた場所に配置されていても良い。
【0043】
図2は、産業用ロボット20の側面図である。
【0044】
図2に示すように、産業用ロボット20は、床、天井などの設置部分90に取り付けられる取付部21と、アーム22、23、24、25および26と、取付部21およびアーム22を接続する関節部31と、アーム22およびアーム23を接続する関節部32と、アーム23およびアーム24を接続する関節部33と、アーム24およびアーム25を接続する関節部34と、アーム25およびアーム26を接続する関節部35と、アーム26および図示していないハンドを接続する関節部36とを備えている。
【0045】
図3は、関節部32の断面図である。なお、以下においては、関節部32について説明するが、関節部31、33〜36についても同様である。
【0046】
図3に示すように、関節部32は、アーム22およびアーム23を接続する減速機40と、ボルト51によってアーム22に固定されたモーター50と、減速機40の可動部に生じる摩擦を軽減するための潤滑油40aの劣化を検出するための潤滑油劣化センサー60と、減速機40に加わる荷重を検出するための荷重センサーとしての歪みゲージ80と、外部の装置と無線によって通信を行う無線通信装置81とを備えている。
【0047】
減速機40は、内歯歯車41aを有していてボルト41bによってアーム22に固定されたケース41と、減速機40の中心軸の周りに等間隔に3個配置された柱42aを有していてボルト42bによってアーム23に固定された支持体42と、モーター50の出力軸に固定された歯車43と、減速機40の中心軸の周りに等間隔に3個配置されていて歯車43と噛み合う歯車44と、減速機40の中心軸の周りに等間隔に3個配置されていて歯車44に固定されたクランク軸45と、ケース41の内歯歯車41aに噛み合う2個の外歯歯車46とを備えている。
【0048】
支持体42は、ケース41に軸受41cを介して回転可能に支持されている。ケース41と、支持体42との間には、潤滑油40aの漏れを防止するためのシール部材41dが設けられている。
【0049】
クランク軸45は、支持体42に軸受42cを介して回転可能に支持されているとともに、外歯歯車46に軸受46aを介して回転可能に支持されている。クランク軸45は、歯車44から入力される回転運動に応じてケース41に対して外歯歯車46を偏心回転させるものである。
【0050】
潤滑油劣化センサー60は、アーム23に固定されている。
【0051】
歪みゲージ80は、支持体42の3個の柱42aのそれぞれに2個ずつ、合計6個取り付けられている。歪みゲージ80は、減速機40に加わる荷重を柱42aに生じる歪みとして検出するものである。ここで、歪みゲージ80には、潤滑油40aから保護するためのコーティングが施されている。また、減速機40およびアーム23には、歪みゲージ80の出力を無線通信装置81に伝達するための電線を通すための図示していない穴が形成されている。この穴は、潤滑油40aが減速機40の外部に漏洩することを防止するために、電線が通された後でエポキシ系樹脂などの樹脂で埋められている。歪みゲージ80は、減速機40の使用状態として減速機40に加わる荷重を検出するようになっており、本発明の減速機使用状態センサーを構成している。
【0052】
無線通信装置81は、無線通信装置81自身に電力を供給する電池を内蔵している。無線通信装置81は、減速機40の使用状態として、歪みゲージ80によって検出された荷重に応じた情報を集中監視装置100に送信するようになっており、本発明の減速機情報送信装置を構成している。
【0053】
図4は、潤滑油劣化センサー60の正面図である。
図5は、アーム23に取り付けられた状態での潤滑油劣化センサー60の正面断面図である。
図6(a)は、潤滑油劣化センサー60の平面図である。
図6(b)は、潤滑油劣化センサー60の底面図である。
【0054】
図4〜
図6に示すように、潤滑油劣化センサー60は、潤滑油劣化センサー60の各部品を支持するアルミニウム合金製の筐体61と、潤滑油40aが侵入するための隙間である油用隙間62aが形成されている隙間形成部材62と、隙間形成部材62を支持する支持部材63と、筐体61およびアーム23の間からの潤滑油40aの漏れを防止するOリング64と、筐体61および支持部材63の間からの潤滑油40aの漏れを防止するOリング65と、筐体61および支持部材63の間に配置されたOリング66と、電子部品群70とを備えている。
【0055】
筐体61は、アーム23のネジ穴23aに固定されるためのネジ部61aと、アーム23のネジ穴23aに対してネジ部61aが回転させられるときにスパナなどの工具によって掴まれるための工具接触部61bとを備えている。なお、アーム23のネジ穴23aは、潤滑油劣化センサー60が取り外されている状態のときに、減速機40への潤滑油40aの供給と、減速機40からの潤滑油40aの廃棄とに利用されても良い。
【0056】
隙間形成部材62は、2つのガラス製の直角プリズム62b、62cによって構成されており、潤滑油40aが侵入するための隙間である油用隙間62aが2つの直角プリズム62b、62cの間に形成されている。直角プリズム62b、62cは、接着剤によって支持部材63に固定されている。
【0057】
支持部材63は、筐体61に六角穴付ボルト67によって固定されている。支持部材63は、アルミニウム合金製のホルダー63aと、ホルダー63aに六角穴付ボルト63bによって固定されたアルミニウム合金製のホルダーキャップ63cとを備えている。
【0058】
電子部品群70は、スペーサー68を介して六角穴付ボルト69によって支持部材63に固定された回路基板71と、白色の光を発する発光素子であって回路基板71に実装された白色LED(Light Emitting Diode)72と、受けた光の色を検出するカラー受光素子であって回路基板71に実装されたRGBセンサー73と、ホルダー63aを介して潤滑油40aの温度(以下「油温度」と言う。)を検出するための潤滑油温度センサーであって回路基板71に実装された温度センサー74と、潤滑油劣化センサー60の外部の装置と無線によって通信を行う無線通信装置75と、白色LED72、RGBセンサー73、温度センサー74および無線通信装置75などの回路基板71上の各電子部品に電力を供給する電池76と、電池76の電力量の残量(以下「電池残量」と言う。)を測定する電池残量センサー77と、白色LED72による発光のタイミングを検出する発光タイミングセンサー78とを備えている。回路基板71には、白色LED72、RGBセンサー73、温度センサー74、無線通信装置75、電池76、電池残量センサー77および発光タイミングセンサー78以外にも複数の電子部品が実装されている。
【0059】
温度センサー74は、減速機40の使用状態として潤滑油40aの温度を検出するようになっており、本発明の減速機使用状態センサーを構成している。
【0060】
無線通信装置75は、RGBセンサー73によって検出された色に応じた情報を集中監視装置100に送信するようになっており、本発明の色情報送信装置を構成している。また、無線通信装置75は、減速機40の使用状態として、温度センサー74によって検出された油温度に応じた情報を集中監視装置100に送信するようになっており、本発明の減速機情報送信装置を構成している。また、無線通信装置75は、電池残量センサー77によって測定された電池残量に応じた情報や、発光タイミングセンサー78によって検出された発光のタイミングに応じた情報を集中監視装置100に送信するようになっている。
【0061】
図7は、白色LED72からRGBセンサー73までの光路72aを示す図である。
【0062】
図7に示すように、隙間形成部材62の油用隙間62aは、白色LED72からRGBセンサー73までの光路72a上に配置されている。
【0063】
ホルダー63aは、白色LED72からRGBセンサー73までの光路72aの少なくとも一部を囲んでいる。ホルダー63aは、例えば艶消しの黒アルマイト処理のように、光の反射を防止する処理が表面に施されている。
【0064】
直角プリズム62b、62cは、白色LED72によって発せられる光を透過させる。白色LED72によって発せられる光の直角プリズム62b、62cにおける入射面および出射面は、光学研磨されている。
【0065】
光路72aは、直角プリズム62bの反射面で90度曲げられていて、直角プリズム62cの反射面でも90度曲げられている。すなわち、光路72aは、隙間形成部材62によって180度曲げられている。白色LED72によって発せられる光の直角プリズム62b、62cにおける反射面は、光学研磨されていて、アルミ蒸着膜が施されている。そして、硬度や密着力が弱いアルミ蒸着膜を保護するために、SiO2膜がアルミ蒸着膜上に更に施されている。
【0066】
白色LED72によって発せられる光の直角プリズム62bにおける出射面と、白色LED72によって発せられる光の直角プリズム62cにおける入射面との距離、すなわち、油用隙間62aの長さは、例えば1mmである。油用隙間62aの長さが短過ぎる場合、潤滑油40a中の汚染物質が油用隙間62aを適切に流通し難いので、潤滑油40a中の汚染物質の色の検出精度が落ちる。一方、油用隙間62aの長さが長過ぎる場合、白色LED72から発せられた光が油用隙間62a内の潤滑油40a中の汚染物質によって吸収され過ぎてRGBセンサー73まで届き難いので、やはり潤滑油40a中の汚染物質の色の検出精度が落ちる。したがって、油用隙間62aの長さは、潤滑油40a中の汚染物質の色の検出精度が高くなるように、適切に設定されることが好ましい。
【0067】
潤滑油劣化センサー60は、白色LED72によって発せられた白色の光のうち油用隙間62aにおいて潤滑油40a中の汚染物質によって吸収されなかった波長の光に対して、RGBセンサー73によって色を検出するので、減速機40の潤滑油40a中の汚染物質の色を即時に検出することができる。そして、集中監視装置100は、RGBセンサー73によって検出された色に基づいて減速機40の潤滑油40a中の汚染物質の種類および量を即時に特定することができる。すなわち、潤滑油劣化センサー60は、潤滑油40a中の汚染物質の色を検出することによって、潤滑油40aの劣化の程度を検出することができる。
【0068】
なお、潤滑油40aの劣化の程度は、RGBセンサー73によって検出された色の所定の色である黒色に対する色差ΔE(以下「黒色色差ΔE」と言う。)で判断されることができる。黒色色差ΔEは、RGBセンサー73によって検出された色のR、G、Bの各値を使用して、次の数1で示す式で計算することができる。
【数1】
【0069】
一般的に、産業用ロボットは、関節部に使用されている減速機の性能によってアームの軌跡の精度などが大きく左右される。したがって、産業用ロボット用の減速機は、性能が落ちた場合に適切に交換されることが大切である。しかしながら、産業用ロボット用の減速機が交換される場合、その減速機を備えている産業用ロボットや、その産業用ロボットが設置されている生産ラインが停止されなければならない。そこで、産業用ロボット用の減速機の交換時期を把握するために、産業用ロボット用の減速機の故障が適切に予知されることは非常に重要である。ここで、産業用ロボット20の各潤滑油劣化センサーは、RGBセンサー73によって検出した色に基づいて減速機40の潤滑油40a中の汚染物質の種類および量を集中監視装置100によって即時に特定することができる。したがって、メンテナンスシステム10は、産業用ロボット用の減速機の故障の即時の予知を可能にすることができる。
【0070】
なお、潤滑油40aには、摩擦面の摩擦を低減するためのモリブデンジチオカルバメート(MoDTC)、モリブデンジチオホスフェート(MoDTP)などの有機モリブデン(Mo)などの摩擦低減剤、摩擦面の焼き付きを抑える性能である極圧性を向上するためのSP系添加剤などの極圧添加剤、スラッジの発生や付着を抑えるためのCaスルフォネートなどの分散剤など、各種の添加剤が添加される場合がある。これらの添加剤は、潤滑油40aの劣化とともに、例えば、産業用ロボット20および減速機の金属表面に付着、結合したり、沈降したりして潤滑油40aから分離される。各潤滑油劣化センサーは、潤滑油40a中の鉄粉の量だけでなく、潤滑油40aに添加されている各種の添加剤の減少に伴う基油の劣化度やスラッジ等の汚染物質の増加を、検出した色に基づいて特定することができる。したがって、メンテナンスシステム10は、鉄粉濃度のみに基づいて減速機の故障を予知する技術と比較して、故障の予知の精度を向上することができる。
【0071】
ここで、潤滑油劣化センサー60の組立方法について説明する。
【0072】
まず、直角プリズム62b、62cおよび白色LED72が接着剤によってホルダー63aに固定される。
【0073】
次いで、RGBセンサー73、温度センサー74、無線通信装置75、電池76、電池残量センサー77および発光タイミングセンサー78が実装された回路基板71がスペーサー68を介してホルダー63aに六角穴付ボルト69によって固定され、白色LED72が回路基板71にハンダによって固定される。
【0074】
次いで、温度センサー74がホルダー63aに接続される。
【0075】
次いで、ホルダーキャップ63cがホルダー63aに六角穴付ボルト63bによって固定される。
【0076】
最後に、ホルダー63aが、Oリング64、Oリング65およびOリング66が取り付けられた筐体61に六角穴付ボルト67によって固定される。
【0077】
また、アーム23への潤滑油劣化センサー60の設置方法について説明する。
【0078】
まず、筐体61の工具接触部61bが工具によって掴まれて、アーム23のネジ穴23aに筐体61のネジ部61aがねじ込まれることによって、アーム23に潤滑油劣化センサー60が固定される。
【0079】
図8は、集中監視装置100のブロック図である。
【0080】
図8に示す集中監視装置100は、PC(Personal Computer)などのコンピューターである。集中監視装置100は、集中監視装置100の利用者による種々の操作が入力されるマウス、キーボードなどの入力デバイスである操作部101と、種々の情報を表示するLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである表示部102と、ネットワーク11(
図1参照。)経由で通信を行うネットワーク通信デバイスであるネットワーク通信部103と、各種のデータを記憶しているHDD(Hard Disk Drive)などの記憶デバイスである記憶部104と、集中監視装置100全体を制御する制御部105とを備えている。
【0081】
記憶部104は、産業用ロボット20の減速機の破損の状態を通知するための集中監視プログラム104aを記憶している。
【0082】
集中監視プログラム104aは、集中監視装置100の製造段階で集中監視装置100にインストールされていても良いし、USB(Universal Serial Bus)メモリー、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などの記憶媒体から集中監視装置100に追加でインストールされても良いし、ネットワーク11上から集中監視装置100に追加でインストールされても良い。
【0083】
記憶部104は、産業用ロボット20の利用者と、その利用者が所有している産業用ロボット20と、その産業用ロボット20が備えている減速機40と、その減速機40に取り付けられている潤滑油劣化センサー60との関係を示す情報である利用者情報104bを記憶している。
【0084】
図9は、利用者情報104bの一例を示す図である。
【0085】
図9に示すように、利用者情報104bにおいては、利用者のID(以下「利用者ID」と言う。)と、その利用者が所有している産業用ロボット20のID(以下「ロボットID」と言う。)と、その産業用ロボット20が備えている減速機40のID(以下「減速機ID」と言う。)と、その減速機40に設置されている潤滑油劣化センサー60のID(以下「センサーID」と言う。)とが対応付けられている。
【0086】
なお、利用者ID、ロボットID、減速機IDおよびセンサーIDは、サービス業者によってサービス業者用装置130を介して入力される情報である。
【0087】
記憶部104は、産業用ロボット20と、その産業用ロボット20の各種の情報との関係を示す情報であるロボット情報104cを記憶している。
【0088】
図10は、ロボット情報104cの一例を示す図である。
【0089】
図10に示すように、ロボット情報104cにおいては、産業用ロボット20のロボットIDと、その産業用ロボット20の温度(以下「ロボット温度」と言う。)と、その産業用ロボット20の負荷(以下「ロボット負荷」と言う。)とが対応付けられている。
【0090】
なお、ロボットIDは、サービス業者によってサービス業者用装置130を介して入力される情報である。
【0091】
また、産業用ロボット20のロボット温度は、この産業用ロボット20が備えている複数の減速機40について後述の減速機情報104dに記憶される油温度の少なくとも1つに基づいて制御部105によって算出される情報である。
【0092】
また、
図11に示すように、ロボット負荷Fは、関節部33の減速機40の回転軸の位置と、負荷Fが加わる荷重点の位置との距離Lと、関節部33の減速機40の後述の減速機負荷トルクTとに基づいて、制御部105によってT/Lとして算出される情報である。すなわち、ロボット負荷は、この産業用ロボット20の関節部33の減速機40について後述の減速機情報104dに記憶される減速機負荷トルクに基づいて制御部105によって算出される情報である。
【0093】
図8に示すように、記憶部104は、減速機40と、その減速機40の各種の情報との関係を示す情報である減速機情報104dを記憶している。
【0094】
図12は、減速機情報104dの一例を示す図である。
【0095】
図12に示すように、減速機情報104dにおいては、減速機IDと、その減速機40の型式と、その減速機40のロットナンバーと、その減速機40に設置されている潤滑油劣化センサー60のRGBセンサー73によって検出された色の黒色に対する色差ΔEである黒色色差ΔEと、その減速機40の潤滑油40aの温度である油温度と、その減速機40のケース41および支持体42が相対的に回転するときの回転軸に直交する軸を中心とした回転方向に減速機40に加わる荷重(以下「減速機負荷モーメント」と言う。)と、その減速機40のケース41および支持体42が相対的に回転するときの回転軸を中心とした回転方向に減速機40に加わる荷重(以下「減速機負荷トルク」と言う。)とが対応付けられている。
【0096】
図12に示す減速機情報104dにおいて、Moとは、減速機40の定格モーメントである。また、Toとは、減速機40の定格トルクである。
【0097】
なお、減速機ID、型式およびロットナンバーは、サービス業者によってサービス業者用装置130を介して入力される情報である。
【0098】
図8に示すように、記憶部104は、潤滑油劣化センサー60と、その潤滑油劣化センサー60の各種の情報との関係を示す情報であるセンサー情報104eを記憶している。
【0099】
図13は、センサー情報104eの一例を示す図である。
【0100】
図13に示すように、センサー情報104eにおいては、潤滑油劣化センサー60のセンサーIDと、その潤滑油劣化センサー60の電池76の電力量の残量である電池残量と、その潤滑油劣化センサー60の白色LED72による発光の累積の時間(以下「累積発光時間」と言う。)とが対応付けられている。
【0101】
なお、センサーIDは、サービス業者によってサービス業者用装置130を介して入力される情報である。
【0102】
図8に示すように、記憶部104は、産業用ロボット20の使用状態の通知のための閾値の情報であるロボット用閾値情報104fを記憶している。
【0103】
図14は、ロボット用閾値情報104fの一例を示す図である。
【0104】
図14に示すように、ロボット用閾値情報104fは、産業用ロボット20に対して推奨されている温度の範囲(以下「推奨温度範囲」と言う。)の上限を示す推奨温度範囲上限閾値と、推奨温度範囲内であるが上限に近いことを警告するための高温警告用閾値と、推奨温度範囲内であるが下限に近いことを警告するための低温警告用閾値と、推奨温度範囲の下限を示す推奨温度範囲下限閾値と、産業用ロボット20に対して推奨されている負荷の範囲(以下「推奨負荷範囲」と言う。)の上限を示す推奨負荷範囲上限閾値と、推奨負荷範囲であるが上限に近いことを警告するための高負荷警告用閾値とを含んでいる。
【0105】
図8に示すように、記憶部104は、減速機40の破損の状態の通知のための閾値を設定するためのテーブルである減速機用閾値テーブル104gを複数記憶しており、本発明の閾値記憶部を構成している。なお、記憶部104が記憶している複数の減速機用閾値テーブル104gは、対応する減速機の型式がそれぞれ異なっており、それぞれIDが付けられている。
【0106】
図15は、減速機用閾値テーブル104gの一例を示す図である。
【0107】
図15に示すように、減速機用閾値テーブル104gにおいては、油温度と、減速機負荷モーメントと、減速機負荷トルクとに対応する閾値が示されている。
【0108】
なお、
図15に示す減速機用閾値テーブル104gにおいては、多数の空欄が存在するが、実際には具体的な閾値が入っている。また、
図15に示す減速機用閾値テーブル104gにおいては、減速機負荷モーメントが0.25Mo未満である場合、0.25Mo以上0.5Mo未満である場合、0.75Mo以上1.0Mo未満である場合、1.0Mo以上1.25Mo未満である場合、および、1.25Mo以上である場合が省略されて描かれているが、実際には、減速機負荷モーメントが0.5Mo以上0.75Mo未満である場合と同様に、減速機負荷トルクの範囲毎に具体的な閾値が入っている。
【0109】
図15に示す減速機用閾値テーブル104gにおいては、閾値の欄に、数値が2段記載されている。上段の数値は、減速機40が破損している可能性が非常に高く、そのために産業用ロボット20の利用者に点検または修理を促すための閾値である点検修理用閾値である。下段の数値は、減速機40が破損している可能性があることを警告するための閾値である警告用閾値である。すなわち、点検修理用閾値および警告用閾値は、減速機40の破損の状態に対応する閾値である。ここで、減速機40の破損の状態とは、減速機40内部の各軸受の転動面と、減速機40内部の各噛み合い部との破損の状態である。
図15に示す減速機用閾値テーブル104gによれば、例えば、油温度が40℃以上50℃未満であり、減速機負荷モーメントが0.5Mo以上0.75Mo未満であり、減速機負荷トルクが1.0To以上1.5To未満である場合、点検修理用閾値、警告用閾値は、それぞれ、350、425である。
【0110】
なお、油温度が−10℃未満である場合と、油温度が80℃以上である場合とは、本実施の形態に係る潤滑油劣化センサーの仕様の範囲外であるので、
図15に示す減速機用閾値テーブル104gにおいては規定されていない。また、減速機負荷トルクが3.0To以上である場合は、本実施の形態に係る減速機の仕様の範囲外であるので、
図15に示す減速機用閾値テーブル104gにおいては規定されていない。
【0111】
図8に示すように、記憶部104は、複数の減速機用閾値テーブル104gから適切な減速機用閾値テーブルを選択するためのテーブルであるテーブル選択用テーブル104hを記憶している。
【0112】
図16は、テーブル選択用テーブル104hの一例を示す図である。
【0113】
図16に示すように、テーブル選択用テーブル104hにおいては、減速機の型式に対応する減速機用閾値テーブル104gのIDが示されている。
図16に示すテーブル選択用テーブル104hによれば、例えば、減速機の型式が“RV−XX1”である場合、複数の減速機用閾値テーブル104gのうちIDが“テーブル1”である減速機用閾値テーブルが選択される。
【0114】
図8に示すように、記憶部104は、潤滑油劣化センサー60の消耗の状態の通知のための閾値の情報であるセンサー用閾値情報104iを記憶している。
【0115】
図17は、センサー用閾値情報104iの一例を示す図である。
【0116】
図17に示すように、センサー用閾値情報104iは、潤滑油劣化センサー60の電池76の交換を促すための閾値である電池交換用閾値と、電池残量が少ないことを警告するための閾値である電池警告用閾値と、白色LED72の交換を促すための閾値であるLED交換用閾値と、累積発光時間が白色LED72の寿命に近付いたことを警告するための閾値であるLED警告用閾値とを含んでいる。
【0117】
図8に示す制御部105は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを予め記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMまたは記憶部104に記憶されているプログラムを実行するようになっている。
【0118】
制御部105は、記憶部104に記憶されている集中監視プログラム104aを実行することによって、産業用ロボット20の使用状態の適切性を判断するロボット状態適切性判断手段としてのロボット状態適切性判断部105a、ロボット状態適切性判断部105aによって判断された産業用ロボット20の使用状態の適切性の通知をサービス業者用装置130および利用者用装置160の少なくとも1つに送信するロボット状態適切性送信手段としてのロボット状態適切性送信部105b、ロボット情報104cをサービス業者用装置130に送信するロボット情報送信部105c、記憶部104の減速機用閾値テーブル104gに記憶されている閾値のうち使用される閾値を設定する閾値設定手段としての閾値設定部105d、減速機40の破損の状態を判断する減速機破損状態判断手段としての減速機破損状態判断部105e、減速機破損状態判断部105eによって判断された減速機40の破損の状態の通知をサービス業者用装置130および利用者用装置160の少なくとも1つに送信する減速機破損状態送信手段としての減速機破損状態送信部105f、減速機情報104dをサービス業者用装置130に送信する減速機情報送信手段としての減速機情報送信部105g、潤滑油劣化センサー60の消耗の状態を判断するセンサー消耗状態判断手段としてのセンサー消耗状態判断部105h、センサー消耗状態判断部105hによって判断された潤滑油劣化センサー60の消耗の状態の通知をサービス業者用装置130および利用者用装置160の少なくとも1つに送信するセンサー消耗状態送信手段としてのセンサー消耗状態送信部105i、および、センサー情報104eをサービス業者用装置130に送信するセンサー情報送信部105jとして機能する。
【0119】
次に、制御部105による減速機負荷モーメントおよび減速機負荷トルクの算出方法について説明する。
【0120】
減速機40の支持体42の3個の柱42aのうち何れか1個の柱42aに取り付けられた2個の歪みゲージ80が貼られた部分に発生する応力をそれぞれσ1、σ2とし、σ1およびσ2に基づいて算出される負荷トルクをT
A1とし、σ1およびσ2に基づいて算出される負荷モーメントをM
A1とし、T
A1に乗じられることでσ1のうち負荷トルクに起因する応力が算出可能である荷重係数をT1とし、T
A1に乗じられることでσ2のうち負荷トルクに起因する応力が算出可能である荷重係数をT2とし、ケース41に対する支持体42の回転軸を中心とした、支持体42に加わる負荷モーメントの作用角をφとし、M
A1に乗じられることでσ1のうち負荷モーメントに起因する応力が算出可能である荷重係数をφの関数であるM1(φ)とし、M
A1に乗じられることでσ2のうち負荷モーメントに起因する応力が算出可能である荷重係数をφの関数であるM2(φ)とすると、σ1、σ2、T
A1、M
A1、T1、T2、M1(φ)およびM2(φ)の間で数2に示す関係が成り立つ。なお、M1(φ)やM2(φ)がφの関数であるのは、σ1のうち負荷モーメントに起因する応力や、σ2のうち負荷モーメントに起因する応力がケース41および支持体42の相対回転に応じて変化するためである。
【数2】
【0121】
ここで、数2から数3および数4に示す関係が成り立つ。
【数3】
【数4】
【0122】
また、減速機40の支持体42の3個の柱42aのうち上述した柱42a以外の何れか1個の柱42aに取り付けられた2個の歪みゲージ80が貼られた部分に発生する応力をそれぞれσ3、σ4とし、σ3およびσ4に基づいて算出される負荷トルクをT
A2とし、σ3およびσ4に基づいて算出される負荷モーメントをM
A2とし、T
A2に乗じられることでσ3のうち負荷トルクに起因する応力が算出可能である荷重係数をT3とし、T
A2に乗じられることでσ4のうち負荷トルクに起因する応力が算出可能である荷重係数をT4とし、M
A2に乗じられることでσ3のうち負荷モーメントに起因する応力が算出可能である荷重係数をφの関数であるM3(φ)とし、M
A2に乗じられることでσ4のうち負荷モーメントに起因する応力が算出可能である荷重係数をφの関数であるM4(φ)とすると、σ3、σ4、T
A2、M
A2、T3、T4、M3(φ)およびM4(φ)の間で数5に示す関係が成り立つ。なお、M3(φ)やM4(φ)がφの関数であるのは、σ3のうち負荷モーメントに起因する応力や、σ4のうち負荷モーメントに起因する応力がケース41および支持体42の相対回転に応じて変化するためである。
【数5】
【0123】
ここで、数5から数6および数7に示す関係が成り立つ。
【数6】
【数7】
【0124】
また、減速機40の支持体42の3個の柱42aのうち上述した2個の柱42a以外の残りの1個の柱42aに取り付けられた2個の歪みゲージ80が貼られた部分に発生する応力をそれぞれσ5、σ6とし、σ5およびσ6に基づいて算出される負荷トルクをT
A3とし、σ5およびσ6に基づいて算出される負荷モーメントをM
A3とし、T
A3に乗じられることでσ5のうち負荷トルクに起因する応力が算出可能である荷重係数をT5とし、T
A3に乗じられることでσ6のうち負荷トルクに起因する応力が算出可能である荷重係数をT6とし、M
A3に乗じられることでσ5のうち負荷モーメントに起因する応力が算出可能である荷重係数をφの関数であるM5(φ)とし、M
A3に乗じられることでσ6のうち負荷モーメントに起因する応力が算出可能である荷重係数をφの関数であるM6(φ)とすると、σ5、σ6、T
A3、M
A3、T5、T6、M5(φ)およびM6(φ)の間で数8に示す関係が成り立つ。なお、M5(φ)やM6(φ)がφの関数であるのは、σ5のうち負荷モーメントに起因する応力や、σ6のうち負荷モーメントに起因する応力がケース41および支持体42の相対回転に応じて変化するためである。
【数8】
【0125】
ここで、数8から数9および数10に示す関係が成り立つ。
【数9】
【数10】
【0126】
なお、T
A1、T
A2、T
A3は理論上同一の値になるので、T
A1、T
A2、T
A3が互いに最も近い値のときのφが、負荷モーメントの実際の作用角に最も近い。同様に、M
A1、M
A2、M
A3は理論上同一の値になるので、M
A1、M
A2、M
A3が互いに最も近い値のときのφが、負荷モーメントの実際の作用角に最も近い。即ち、数11に示す関数δ(φ)が最小値をとるときのφが、負荷モーメントの実際の作用角に最も近い。
【数11】
【0127】
したがって、制御部105は、数3、4、6、7、9、10、11に基づいて関数δ(φ)が最小値をとるときのφを算出することによって、負荷モーメントの実際の作用角に最も近いφを算出するようになっている。ここで、制御部105は、歪みゲージ80の出力に基づいてσ1〜σ6をそれぞれ算出することができる。また、T1〜T6、M1(φ)〜M6(φ)は、それぞれ荷重試験によって予め測定されている。
【0128】
次いで、制御部105は、算出したφに基づいて、数3、4、6、7、9、10からT
A1、T
A2、T
A3、M
A1、M
A2、M
A3を算出するようになっている。
【0129】
最後に、制御部105は、算出したT
A1、T
A2、T
A3、M
A1、M
A2、M
A3に基づいて、減速機負荷トルクであるTと、減速機負荷モーメントであるMとを数12および数13から算出するようになっている。
【数12】
【数13】
【0130】
次に、減速機用閾値テーブル104gの作成方法の一例について説明する。
【0131】
関節部32の構成と同等な構成で作成された実験用の装置に、最大出力回転数が15rpmであるという条件において、ケース41に対して支持体42を正方向に45°回転させた後、逆方向に45°回転させるという往復回転運動を継続させるという実験を行う。この実験において、潤滑油40aは、劣化の程度が少ない新油が使用される。そして、黒色色差ΔEの時間変化を調べる。
【0132】
図18(a)は、油温度が40℃であり、減速機負荷モーメントが0.5Moであり、減速機負荷トルクが1.0Toである場合の黒色色差ΔEの時間変化の実験結果の一例を示すグラフである。
図18(b)は、油温度が60℃であり、減速機負荷モーメントが0.5Moであり、減速機負荷トルクが1.0Toである場合の黒色色差ΔEの時間変化の実験結果の一例を示すグラフである。
図18(c)は、油温度が60℃であり、減速機負荷モーメントが0.5Moであり、減速機負荷トルクが2.0Toである場合の黒色色差ΔEの時間変化の実験結果の一例を示すグラフである。
【0133】
図18において、定格換算時間とは、実験用の装置が実際に駆動させられた場合の減速機40の出力回転数および減速機負荷トルクに基づいて、実験用の装置が実際に駆動させられた時間を、出力回転数が15rpmであり、減速機負荷トルクが減速機40の定格トルクである場合の時間に換算したものである。なお、減速機40の寿命時間は、出力回転数が15rpmであり、減速機負荷トルクが減速機40の定格トルクであるという条件において減速機40が連続駆動された場合に6000時間であると定義されている。
【0134】
図18(a)および(b)に示すように、減速機負荷モーメントおよび減速機負荷トルクが同じであっても、油温度が異なる場合には、定格換算時間が寿命時間である6000時間に達した時点での黒色色差ΔE(以下「定格寿命時色差」と言う。)は異なる。また、
図18(b)および(c)に示すように、油温度および減速機負荷モーメントが同じであっても、減速機負荷トルクが異なる場合には、定格寿命時色差は異なる。同様の実験によって、油温度と、減速機負荷モーメントと、減速機負荷トルクとの何れか1つが異なる場合に定格寿命時色差が異なるということを確認することができる。したがって、減速機40の破損の状態の通知のための閾値は、油温度と、減速機負荷モーメントと、減速機負荷トルクとに対応付けて決定されることが好ましい。
【0135】
なお、複数の実験を行った場合、油温度と、減速機負荷モーメントと、減速機負荷トルクとが各実験において同じであっても、定格寿命時色差には、ばらつきが生じる。したがって、複数の実験での定格寿命時色差のうち、最小値を点検修理用閾値とし、最大値を警告用閾値とする。
【0136】
例えば、
図15に示す減速機用閾値テーブル104gにおいて、油温度が40℃以上50℃未満であり、減速機負荷モーメントが0.5Mo以上0.75Mo未満であり、減速機負荷トルクが1.0To以上1.5To未満である場合の点検修理用閾値である350は、油温度が40℃であり、減速機負荷モーメントが0.5Moであり、減速機負荷トルクが1.0Toである条件で複数の実験が行われた結果、この複数の実験での定格寿命時色差のうち最小値であった数値である。同様に、
図15に示す減速機用閾値テーブル104gにおいて、油温度が40℃以上50℃未満であり、減速機負荷モーメントが0.5Mo以上0.75Mo未満であり、減速機負荷トルクが1.0To以上1.5To未満である場合の警告用閾値である425は、油温度が40℃であり、減速機負荷モーメントが0.5Moであり、減速機負荷トルクが1.0Toである条件で複数の実験が行われた結果、この複数の実験での定格寿命時色差のうち最大値であった数値である。
【0137】
減速機用閾値テーブル104gは、以上のようにして作成される。なお、減速機の型式が異なる条件で実験が行われることによって、複数の減速機用閾値テーブル104gが作成される。
【0138】
図19は、サービス業者用装置130のブロック図である。
【0139】
図19に示すサービス業者用装置130は、PCなどのコンピューターである。サービス業者用装置130は、サービス業者用装置130の利用者による種々の操作が入力されるマウス、キーボードなどの入力デバイスである操作部131と、種々の情報を表示するLCDなどの表示デバイスである表示部132と、種々の情報を音によって出力するスピーカー133と、ネットワーク11(
図1参照。)経由で通信を行うネットワーク通信デバイスであるネットワーク通信部134と、各種のデータを記憶しているHDDなどの記憶デバイスである記憶部135と、集中監視装置100全体を制御する制御部136とを備えている。
【0140】
記憶部135は、利用者情報104bと同一の利用者情報135aと、ロボット情報104cと同一のロボット情報135bと、減速機情報104dと同一の減速機情報135cと、センサー情報104eと同一のセンサー情報135dとを記憶することができるようになっている。利用者情報135a、ロボット情報135b、減速機情報135cおよびセンサー情報135dは、利用者情報104b、ロボット情報104c、減速機情報104dおよびセンサー情報104eに変更がある度に、集中監視装置100から送信されてくる利用者情報104b、ロボット情報104c、減速機情報104dおよびセンサー情報104eに基づいて更新される情報である。
【0141】
サービス業者用装置130は、集中監視装置100の減速機破損状態判断部105eによって判断された減速機40の破損の状態の通知を、表示部132による表示と、スピーカー133による音とによって出力するようになっており、本発明の通知出力装置を構成している。
【0142】
図20は、利用者用装置160のブロック図である。
【0143】
図20に示す利用者用装置160は、PCなどのコンピューターである。利用者用装置160は、利用者用装置160の利用者による種々の操作が入力されるマウス、キーボードなどの入力デバイスである操作部161と、種々の情報を表示するLCDなどの表示デバイスである表示部162と、種々の情報を音によって出力するスピーカー163と、ネットワーク11(
図1参照。)経由で通信を行うネットワーク通信デバイスであるネットワーク通信部164と、各種のデータを記憶しているHDDなどの記憶デバイスである記憶部165と、集中監視装置100全体を制御する制御部166とを備えている。
【0144】
利用者用装置160は、集中監視装置100の減速機破損状態判断部105eによって判断された減速機40の破損の状態の通知を、表示部162による表示と、スピーカー163による音とによって出力するようになっており、本発明の通知出力装置を構成している。
【0145】
次に、メンテナンスシステム10の動作について説明する。
【0146】
まず、産業用ロボット20の動作について説明する。
【0147】
なお、以下においては、複数の産業用ロボット20のうち1つの産業用ロボット20の関節部32について説明するが、この産業用ロボット20の関節部31、33〜36についても同様であるし、他の産業用ロボット20の関節部31〜36についても同様である。
【0148】
関節部32のモーター50の出力軸が回転すると、モーター50の回転力は、減速機40によって減速されて、減速機40のケース41に固定されたアーム22に対して、減速機40の支持体42に固定されたアーム23を動かす。
【0149】
関節部32の潤滑油劣化センサー60は、電池76から供給される電力によって白色LED72から白色の光を発する。そして、潤滑油劣化センサー60は、RGBセンサー73によって受けた光のRGBの各色の光量を、潤滑油劣化センサー60自身のIDとともに、電気信号として無線通信装置75を介して集中監視装置100に送信する。また、潤滑油劣化センサー60は、温度センサー74によって検出された温度と、電池残量センサー77によって測定された電池残量と、発光タイミングセンサー78によって検出された発光のタイミングとについても、潤滑油劣化センサー60自身のIDとともに、電気信号として無線通信装置75を介して集中監視装置100に送信する。
【0150】
また、歪みゲージ80によって検出された歪みも、歪みゲージ80自身が設置されている減速機40の減速機IDとともに、電気信号として無線通信装置81を介して集中監視装置100に送信される。
【0151】
次に、集中監視装置100の動作について説明する。
【0152】
集中監視装置100の制御部105は、RGBセンサー73によって受けた光のRGBの各色の光量を、潤滑油劣化センサー60のセンサーIDとともに、電気信号としてネットワーク通信部103を介して受信すると、受信したセンサーIDと、利用者情報104bとに基づいて、このセンサーIDに対応する減速機IDを判断する。次いで、制御部105は、受信したRGBの各色の光量に基づいて黒色色差ΔEを算出する。そして、制御部105は、算出した黒色色差ΔEを、この減速機IDに対する黒色色差ΔEとして減速機情報104dを更新する。
【0153】
また、制御部105は、温度センサー74によって検出された温度を、センサーIDとともに、電気信号としてネットワーク通信部103を介して受信すると、受信したセンサーIDと、利用者情報104bとに基づいて、このセンサーIDに対応する減速機IDおよびロボットIDを判断する。そして、制御部105は、受信した温度を、この減速機IDに対する油温度として減速機情報104dを更新する。また、制御部105は、この温度に基づいて所定の式に応じてロボット温度を算出する。そして、制御部105は、算出したロボット温度を、このロボットIDに対するロボット温度としてロボット情報104cを更新する。
【0154】
また、制御部105は、歪みゲージ80によって検出された歪みを、減速機IDとともに、電気信号としてネットワーク通信部103を介して受信すると、受信した減速機IDと、利用者情報104bとに基づいて、この減速機IDに対応するロボットIDを判断する。そして、制御部105は、受信した歪みに基づいて上述したように減速機負荷モーメントおよび減速機負荷トルクを算出する。そして、制御部105は、算出した減速機負荷モーメントおよび減速機負荷トルクを、この減速機IDに対する減速機負荷モーメントおよび減速機負荷トルクとして減速機情報104dを更新する。また、制御部105は、この減速機負荷トルクに基づいて上述したようにロボット負荷を算出する。そして、算出したロボット負荷を、このロボットIDに対する負荷としてロボット情報104cを更新する。
【0155】
また、制御部105は、電池残量センサー77によって測定された電池残量を、センサーIDとともに、電気信号としてネットワーク通信部103を介して受信すると、受信した電池残量を、このセンサーIDに対する電池残量としてセンサー情報104eを更新する。
【0156】
また、制御部105は、発光タイミングセンサー78によって検出された発光のタイミングを、センサーIDとともに、電気信号としてネットワーク通信部103を介して受信すると、それまでに受信した発光のタイミングの全てに基づいて白色LED72による累積発光時間を算出する。そして、制御部105は、算出した累積発光時間を、このセンサーIDに対する累積発光時間としてセンサー情報104eを更新する。
【0157】
まず、ロボット情報104cが更新された場合の集中監視装置100の動作について説明する。
【0158】
なお、以下においては、複数の産業用ロボット20のうち1つの産業用ロボット20(以下「対象ロボット」という。)に関するロボット情報104cが更新された場合について説明するが、他の産業用ロボット20に関するロボット情報104cが更新された場合についても同様である。
【0159】
図21は、ロボット情報104cが更新された場合の集中監視装置100の動作のフローチャートである。
【0160】
図21に示すように、集中監視装置100の制御部105のロボット状態適切性判断部105aは、ロボット情報104cのうち対象ロボットのロボットIDに対応付けられているロボット温度が、ロボット用閾値情報104f上の推奨温度範囲上限閾値を超えているか否かを判断する(S201)。
【0161】
ロボット温度が推奨温度範囲上限閾値を超えているとS201においてロボット状態適切性判断部105aが判断すると、制御部105のロボット状態適切性送信部105bは、
図22(a)に示すように、ロボット温度が推奨温度範囲の上限を超えている旨の通知を、サービス業者用装置130と、この産業用ロボット20の利用者の利用者用装置160とに向けてネットワーク通信部103を介して送信する(S202)。サービス業者用装置130の制御部136は、集中監視装置100からネットワーク通信部134を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部132に表示する。また、利用者用装置160の制御部166は、集中監視装置100からネットワーク通信部164を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部162に表示する。したがって、利用者用装置160の利用者は、この通知が表示部162に表示されなくなるように、産業用ロボット20に実行させている動作を見直すことができる。
【0162】
ロボット状態適切性判断部105aは、ロボット温度が推奨温度範囲上限閾値を超えていないとS201において判断すると、ロボット情報104cのうち対象ロボットのロボットIDに対応付けられているロボット温度が、ロボット用閾値情報104f上の推奨温度範囲下限閾値未満であるか否かを判断する(S203)。
【0163】
ロボット温度が推奨温度範囲下限閾値未満であるとS203においてロボット状態適切性判断部105aが判断すると、ロボット状態適切性送信部105bは、
図22(b)に示すように、ロボット温度が推奨温度範囲の下限を下回っている旨の通知を、サービス業者用装置130と、この産業用ロボット20の利用者の利用者用装置160とに向けてネットワーク通信部103を介して送信する(S204)。サービス業者用装置130の制御部136は、集中監視装置100からネットワーク通信部134を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部132に表示する。また、利用者用装置160の制御部166は、集中監視装置100からネットワーク通信部164を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部162に表示する。したがって、利用者用装置160の利用者は、この通知が表示部162に表示されなくなるように、産業用ロボット20に実行させている動作を見直すことができる。
【0164】
ロボット状態適切性判断部105aは、ロボット温度が推奨温度範囲下限閾値未満ではないとS203において判断すると、ロボット情報104cのうち対象ロボットのロボットIDに対応付けられているロボット温度が、ロボット用閾値情報104f上の高温警告用閾値以上であるか否かを判断する(S205)。
【0165】
ロボット温度が高温警告用閾値以上であるとS205においてロボット状態適切性判断部105aが判断すると、ロボット状態適切性送信部105bは、
図22(c)に示すように、ロボット温度が推奨温度範囲内であるが上限に近いことを警告する通知を、サービス業者用装置130と、この産業用ロボット20の利用者の利用者用装置160とに向けてネットワーク通信部103を介して送信する(S206)。サービス業者用装置130の制御部136は、集中監視装置100からネットワーク通信部134を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部132に表示する。また、利用者用装置160の制御部166は、集中監視装置100からネットワーク通信部164を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部162に表示する。したがって、利用者用装置160の利用者は、この通知が表示部162に表示されなくなるように、産業用ロボット20に実行させている動作を見直すことができる。
【0166】
ロボット状態適切性判断部105aは、ロボット温度が高温警告用閾値以上ではないとS205において判断すると、ロボット情報104cのうち対象ロボットのロボットIDに対応付けられているロボット温度が、ロボット用閾値情報104f上の低温警告用閾値以下であるか否かを判断する(S207)。
【0167】
ロボット温度が低温警告用閾値以下であるとS207においてロボット状態適切性判断部105aが判断すると、ロボット状態適切性送信部105bは、
図22(d)に示すように、ロボット温度が推奨温度範囲内であるが下限に近いことを警告する通知を、サービス業者用装置130と、この産業用ロボット20の利用者の利用者用装置160とに向けてネットワーク通信部103を介して送信する(S208)。サービス業者用装置130の制御部136は、集中監視装置100からネットワーク通信部134を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部132に表示する。また、利用者用装置160の制御部166は、集中監視装置100からネットワーク通信部164を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部162に表示する。したがって、利用者用装置160の利用者は、この通知が表示部162に表示されなくなるように、産業用ロボット20に実行させている動作を見直すことができる。
【0168】
ロボット状態適切性判断部105aは、ロボット温度が低温警告用閾値以下ではないとS207において判断するか、S202、S204、S206およびS208の処理が終了すると、ロボット情報104cのうち対象ロボットのロボットIDに対応付けられているロボット負荷が、ロボット用閾値情報104f上の推奨負荷範囲上限閾値を超えているか否かを判断する(S209)。
【0169】
ロボット負荷が推奨負荷範囲上限閾値を超えているとS209においてロボット状態適切性判断部105aが判断すると、ロボット状態適切性送信部105bは、
図23(a)に示すように、ロボット負荷が推奨負荷範囲の上限を超えている旨の通知を、サービス業者用装置130と、この産業用ロボット20の利用者の利用者用装置160とに向けてネットワーク通信部103を介して送信する(S210)。サービス業者用装置130の制御部136は、集中監視装置100からネットワーク通信部134を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部132に表示する。また、利用者用装置160の制御部166は、集中監視装置100からネットワーク通信部164を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部162に表示する。したがって、利用者用装置160の利用者は、この通知が表示部162に表示されなくなるように、産業用ロボット20に実行させている動作を見直すことができる。
【0170】
ロボット状態適切性判断部105aは、ロボット負荷が推奨負荷範囲上限閾値を超えていないとS209において判断すると、ロボット情報104cのうち対象ロボットのロボットIDに対応付けられているロボット負荷が、ロボット用閾値情報104f上の高負荷警告用閾値以上であるか否かを判断する(S211)。
【0171】
ロボット負荷が高負荷警告用閾値以上であるとS211においてロボット状態適切性判断部105aが判断すると、ロボット状態適切性送信部105bは、
図23(b)に示すように、ロボット負荷が推奨負荷範囲内であるが上限に近いことを警告する通知を、サービス業者用装置130と、この産業用ロボット20の利用者の利用者用装置160とに向けてネットワーク通信部103を介して送信する(S212)。サービス業者用装置130の制御部136は、集中監視装置100からネットワーク通信部134を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部132に表示する。また、利用者用装置160の制御部166は、集中監視装置100からネットワーク通信部164を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部162に表示する。したがって、利用者用装置160の利用者は、この通知が表示部162に表示されなくなるように、産業用ロボット20に実行させている動作を見直すことができる。
【0172】
ロボット負荷が高負荷警告用閾値以上ではないとS211においてロボット状態適切性判断部105aが判断するか、S212の処理が終了すると、制御部105のロボット情報送信部105cは、ロボット情報104cのうち対象ロボットのロボットIDに対応付けられている情報を、サービス業者用装置130に向けてネットワーク通信部103を介して送信する(S213)。サービス業者用装置130の制御部136は、ロボット情報104cのうち対象ロボットのロボットIDに対応付けられている情報を、集中監視装置100からネットワーク通信部134を介して受信すると、受信した情報に基づいて、ロボット情報135bを更新する。
【0173】
制御部105は、S213の処理を終了すると、
図21に示す処理を終了する。
【0174】
次に、減速機情報104dが更新された場合の集中監視装置100の動作について説明する。
【0175】
なお、以下においては、複数の産業用ロボット20のうち1つの産業用ロボット20の複数の減速機40のうち1つの減速機40(以下「対象減速機」という。)に関する減速機情報104dが更新された場合について説明するが、他の減速機40に関する減速機情報104dが更新された場合についても同様である。
【0176】
図24は、減速機情報104dが更新された場合の集中監視装置100の動作のフローチャートである。
【0177】
図24に示すように、集中監視装置100の制御部105の閾値設定部105dは、減速機情報104dのうち対象減速機のIDに対応付けられている減速機40の型式と、記憶部104上のテーブル選択用テーブル104hとに基づいて、減速機用閾値テーブル104gのIDを取得し、取得したIDが付けられている減速機用閾値テーブル104gを、以後の処理において使用する減速機用閾値テーブルとして設定する(S231)。
【0178】
次いで、閾値設定部105dは、減速機情報104dのうち対象減速機のIDに対応付けられている油温度、減速機負荷モーメントおよび減速機負荷トルクと、S231において設定した減速機用閾値テーブル104gとに基づいて、減速機40の点検修理用閾値および警告用閾値を、以後の処理において使用する点検修理用閾値および警告用閾値として設定する(S232)。
【0179】
次いで、制御部105の減速機破損状態判断部105eは、減速機情報104dのうち対象減速機のIDに対応付けられている黒色色差ΔEが、S232において設定された点検修理用閾値以下であるか否かを判断する(S233)。
【0180】
黒色色差ΔEが点検修理用閾値以下であるとS233において減速機破損状態判断部105eが判断すると、制御部105の減速機破損状態送信部105fは、
図25(a)に示すように、利用者に減速機40の点検または修理を促す通知を、減速機40の破損の状態の通知として、サービス業者用装置130と、この減速機40を備えている産業用ロボット20の利用者の利用者用装置160とに向けてネットワーク通信部103を介して送信する(S234)。すなわち、減速機破損状態送信部105fは、黒色色差ΔEが点検修理用閾値に達した場合に、点検修理用閾値に対応する減速機40の破損の状態の通知を送信する。サービス業者用装置130の制御部136は、集中監視装置100からネットワーク通信部134を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部132に表示する。また、利用者用装置160の制御部166は、集中監視装置100からネットワーク通信部164を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部162に表示する。したがって、利用者用装置160の利用者は、表示部162に表示された通知に基づいて、例えば、減速機40の点検または修理を実行することができる。
【0181】
減速機破損状態判断部105eは、黒色色差ΔEが点検修理用閾値以下ではないとS233において判断すると、減速機情報104dのうち対象減速機のIDに対応付けられている黒色色差ΔEが、S232において設定された警告用閾値以下であるか否かを判断する(S235)。
【0182】
黒色色差ΔEが警告用閾値以下であるとS235において減速機破損状態判断部105eが判断すると、減速機破損状態送信部105fは、
図25(b)に示すように、減速機40が破損している可能性があることを警告する通知を、減速機40の破損の状態の通知として、サービス業者用装置130と、この減速機40を備えている産業用ロボット20の利用者の利用者用装置160とに向けてネットワーク通信部103を介して送信する(S236)。すなわち、減速機破損状態送信部105fは、黒色色差ΔEが警告用閾値に達した場合に、警告用閾値に対応する減速機40の破損の状態の通知を送信する。サービス業者用装置130の制御部136は、集中監視装置100からネットワーク通信部134を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部132に表示する。したがって、サービス業者用装置130の利用者であるサービス業者は、表示部132に表示された通知に基づいて、例えば、この減速機40を備えている産業用ロボット20の製造業者や利用者に宛てて交換用の減速機40を発送したり、この減速機40を備えている産業用ロボット20が設置されている場所にサービスマンを派遣したり、交換用の減速機40の生産量を調整したりすることができる。また、利用者用装置160の制御部166は、集中監視装置100からネットワーク通信部164を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部162に表示する。したがって、利用者用装置160の利用者は、表示部162に表示された通知に基づいて、例えば、減速機40の点検の準備または修理の準備を実行することができる。
【0183】
黒色色差ΔEが警告用閾値以下ではないとS235において減速機破損状態判断部105eが判断するか、S234またはS236の処理が終了すると、制御部105の減速機情報送信部105gは、減速機情報104dのうち対象減速機のIDに対応付けられている情報を、サービス業者用装置130に向けてネットワーク通信部103を介して送信する(S237)。サービス業者用装置130の制御部136は、減速機情報104dのうち対象減速機のIDに対応付けられている情報を、集中監視装置100からネットワーク通信部134を介して受信すると、受信した情報に基づいて、減速機情報135cを更新する。
【0184】
制御部105は、S237の処理を終了すると、
図24に示す処理を終了する。
【0185】
次に、センサー情報104eが更新された場合の集中監視装置100の動作について説明する。
【0186】
なお、以下においては、複数の産業用ロボット20のうち1つの産業用ロボット20の複数の減速機40のうち1つの減速機40の潤滑油劣化センサー60(以下「対象センサー」という。)に関するセンサー情報104eが更新された場合について説明するが、他の潤滑油劣化センサー60に関するセンサー情報104eが更新された場合についても同様である。
【0187】
図26は、センサー情報104eが更新された場合の集中監視装置100の動作のフローチャートである。
【0188】
図26に示すように、集中監視装置100の制御部105のセンサー消耗状態判断部105hは、センサー情報104eのうち対象センサーのIDに対応付けられている電池残量が、センサー用閾値情報104i上の電池交換用閾値に達しているか否かを判断する(S261)。
【0189】
電池残量が電池交換用閾値に達しているとS261においてセンサー消耗状態判断部105hが判断すると、制御部105のセンサー消耗状態送信部105iは、
図27(a)に示すように、潤滑油劣化センサー60の電池76の交換を促す通知を、サービス業者用装置130と、この潤滑油劣化センサー60を備えている産業用ロボット20の利用者の利用者用装置160とに向けてネットワーク通信部103を介して送信する(S262)。サービス業者用装置130の制御部136は、集中監視装置100からネットワーク通信部134を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部132に表示する。また、利用者用装置160の制御部166は、集中監視装置100からネットワーク通信部164を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部162に表示する。したがって、利用者用装置160の利用者は、表示部162に表示された通知に基づいて、例えば、潤滑油劣化センサー60の電池76の交換を実行することができる。
【0190】
センサー消耗状態判断部105hは、電池残量が電池交換用閾値に達していないとS261において判断すると、センサー情報104eのうち対象センサーのIDに対応付けられている電池残量が、センサー用閾値情報104i上の電池警告用閾値以下であるか否かを判断する(S263)。
【0191】
電池残量が電池警告用閾値以下であるとS263においてセンサー消耗状態判断部105hが判断すると、センサー消耗状態送信部105iは、
図27(b)に示すように、電池残量が少ないことを警告する通知を、サービス業者用装置130と、この潤滑油劣化センサー60を備えている産業用ロボット20の利用者の利用者用装置160とに向けてネットワーク通信部103を介して送信する(S264)。サービス業者用装置130の制御部136は、集中監視装置100からネットワーク通信部134を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部132に表示する。したがって、サービス業者用装置130の利用者であるサービス業者は、表示部132に表示された通知に基づいて、例えば、この潤滑油劣化センサー60を備えている産業用ロボット20の製造業者や利用者に宛てて潤滑油劣化センサー60の交換用の電池76を発送したり、この潤滑油劣化センサー60を備えている産業用ロボット20が設置されている場所にサービスマンを派遣したり、交換用の電池76の生産量を調整したりすることができる。また、利用者用装置160の制御部166は、集中監視装置100からネットワーク通信部164を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部162に表示する。したがって、利用者用装置160の利用者は、表示部162に表示された通知に基づいて、例えば、潤滑油劣化センサー60の電池76の交換の準備を実行することができる。
【0192】
センサー消耗状態判断部105hは、電池残量が電池警告用閾値以下ではないとS263において判断するか、S262およびS264の処理が終了すると、センサー情報104eのうち対象センサーのIDに対応付けられている累積発光時間が、センサー用閾値情報104i上のLED交換用閾値以上であるか否かを判断する(S265)。
【0193】
累積発光時間がLED交換用閾値以上であるとS265においてセンサー消耗状態判断部105hが判断すると、センサー消耗状態送信部105iは、
図28(a)に示すように、白色LED72の交換を促す通知を、サービス業者用装置130と、この潤滑油劣化センサー60を備えている産業用ロボット20の利用者の利用者用装置160とに向けてネットワーク通信部103を介して送信する(S266)。サービス業者用装置130の制御部136は、集中監視装置100からネットワーク通信部134を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部132に表示する。また、利用者用装置160の制御部166は、集中監視装置100からネットワーク通信部164を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部162に表示する。したがって、利用者用装置160の利用者は、表示部162に表示された通知に基づいて、例えば、白色LED72の交換を実行することができる。
【0194】
センサー消耗状態判断部105hは、累積発光時間がLED交換用閾値未満であるとS265において判断すると、センサー情報104eのうち対象センサーのIDに対応付けられている累積発光時間が、センサー用閾値情報104i上のLED警告用閾値以上であるか否かを判断する(S267)。
【0195】
累積発光時間がLED警告用閾値以上であるとS267においてセンサー消耗状態判断部105hが判断すると、センサー消耗状態送信部105iは、
図28(b)に示すように、累積発光時間が白色LED72の寿命に近付いたことを警告する通知を、サービス業者用装置130と、この潤滑油劣化センサー60を備えている産業用ロボット20の利用者の利用者用装置160とに向けてネットワーク通信部103を介して送信する(S268)。サービス業者用装置130の制御部136は、集中監視装置100からネットワーク通信部134を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部132に表示する。したがって、サービス業者用装置130の利用者であるサービス業者は、表示部132に表示された通知に基づいて、例えば、この潤滑油劣化センサー60を備えている産業用ロボット20の製造業者や利用者に宛てて潤滑油劣化センサー60の交換用の白色LED72を発送したり、この潤滑油劣化センサー60を備えている産業用ロボット20が設置されている場所にサービスマンを派遣したり、交換用の白色LED72の生産量を調整したりすることができる。また、利用者用装置160の制御部166は、集中監視装置100からネットワーク通信部164を介して通知を受信すると、受信した通知を表示部162に表示する。したがって、利用者用装置160の利用者は、表示部162に表示された通知に基づいて、例えば、白色LED72の交換の準備を実行することができる。
【0196】
累積発光時間がLED警告用閾値未満であるとS267においてセンサー消耗状態判断部105hが判断するか、S266またはS268の処理が終了すると、制御部105のセンサー情報送信部105jは、センサー情報104eのうち対象センサーのIDに対応付けられている情報を、サービス業者用装置130に向けてネットワーク通信部103を介して送信する(S269)。サービス業者用装置130の制御部136は、センサー情報104eのうち対象センサーのIDに対応付けられている情報を、集中監視装置100からネットワーク通信部134を介して受信すると、受信した情報に基づいて、センサー情報135dを更新する。
【0197】
制御部105は、S269の処理を終了すると、
図26に示す処理を終了する。
【0198】
以上に説明したように、集中監視装置100は、潤滑油劣化センサー60のRGBセンサー73によって検出された色に応じて減速機40の破損の状態を判断するので、減速機40の破損の状態を従来より適切に判断することができる。
【0199】
また、集中監視装置100の減速機破損状態判断部105eは、潤滑油劣化センサー60の無線通信装置75によって送信された情報に基づいて、RGBセンサー73によって検出された色に応じた値である黒色色差ΔEと、記憶部104に記憶されている点検修理用閾値および警告用閾値とを比較し(S233、S235)、この黒色色差ΔEがこの点検修理用閾値、警告用閾値に達した場合に(S233でYES、S235でYES)、この点検修理用閾値、警告用閾値に対応する減速機40の破損の状態を、このRGBセンサー73を備えている潤滑油劣化センサー60が潤滑油40aの劣化を検出する対象の減速機40の破損の状態として判断する(S234、S236)。すなわち、集中監視装置100は、複数台の産業用ロボット20のそれぞれの減速機40の潤滑油劣化センサー60のRGBセンサー73によって検出された色に応じた値に基づいてそれぞれの減速機40の破損の状態を判断し、判断した減速機40の破損の状態の通知を外部に送信するので、複数台の産業用ロボット20のそれぞれの減速機40の破損の状態の通知を外部に送信することができる。
【0200】
したがって、集中監視装置100は、複数台の産業用ロボット20のそれぞれの減速機40の従来より適切な破損の状態の通知を外部に送信することができる。
【0201】
集中監視装置100の閾値設定部105dは、無線通信装置75および無線通信装置81によって送信された情報に基づいて、減速機40の使用状態に応じた点検修理用閾値、警告用閾値を設定する(S232)。すなわち、集中監視装置100は、減速機40の破損の状態を判断するための点検修理用閾値、警告用閾値を減速機40の実際の使用状態に応じて設定するので、減速機40の破損の状態を減速機40の実際の使用状態に応じて精度良く通知することができる。
【0202】
例えば、閾値設定部105dは、無線通信装置75によって送信された情報に基づいて、潤滑油40aの温度に応じた点検修理用閾値、警告用閾値を設定する。すなわち、集中監視装置100は、減速機40の破損の状態を判断するための点検修理用閾値、警告用閾値を潤滑油40aの実際の温度に応じて設定するので、減速機40の破損の状態を潤滑油40aの実際の温度に応じて精度良く通知することができる。なお、集中監視装置100は、温度センサー74によって検出された油温度以外の油温度に応じて警告用閾値および点検修理用閾値を設定するようになっていても良い。例えば、集中監視装置100は、操作部101を介して利用者から入力された油温度に応じて警告用閾値および点検修理用閾値を設定するようになっていても良い。また、集中監視装置100は、
図21に示す処理において使用する油温度として、直前に取得した潤滑油40aの実際の温度のみではなく、直近の例えば10分間などの所定の期間の潤滑油40aの実際の温度の平均値を採用するようになっていても良い。
【0203】
また、閾値設定部105dは、無線通信装置81によって送信された情報に基づいて、減速機40に加わる荷重に応じた点検修理用閾値、警告用閾値を設定する。すなわち、集中監視装置100は、減速機40の破損の状態を判断するための点検修理用閾値、警告用閾値を実際に減速機40に加わる荷重に応じて設定するので、減速機40の破損の状態を実際に減速機40に加わる荷重に応じて精度良く通知することができる。なお、実際に減速機40に加わる荷重の検出方法は、歪みゲージ80以外の方法であっても良い。また、集中監視装置100は、
図21に示す処理において使用する荷重として、直前に取得した荷重のみではなく、直近の例えば10分間などの所定の期間の実際の荷重の平均値を採用するようになっていても良い。
【0204】
また、集中監視装置100は、サービス業者用装置130および利用者用装置160のうちサービス業者用装置130のみに減速機情報104dを送信する(S237)ので、サービス業者用装置130および利用者用装置160それぞれの利用者に応じた適切な情報をサービス業者用装置130および利用者用装置160に送信することができる。例えば、サービス業者用装置130の利用者であるサービス業者は、サービス業者用装置130によって集中監視装置100から受信した減速機情報104dに基づいて集中監視装置100上の減速機用閾値テーブル104gを修正することができる。また、サービス業者用装置130の利用者であるサービス業者は、サービス業者用装置130によって集中監視装置100から受信した減速機情報104dに基づいて、減速機40の実際の使用状態に適した新たな減速機40を開発することもできる。
【0205】
なお、減速機用閾値テーブル104gは、サービス業者用装置130によって集中監視装置100から受信した減速機情報104dに基づいてサービス業者によって手動で修正されても良いし、減速機情報104dに基づいて集中監視装置100によって自動で修正されるようになっていても良い。
【0206】
また、集中監視装置100は、潤滑油劣化センサー60の消耗の状態の通知をサービス業者用装置130および利用者用装置160に通知する(S262、S264、S266、S268)ので、不適切な潤滑油劣化センサー60が使用されることを防止することができ、結果として、減速機40の破損の状態の通知の精度を維持することができる。例えば、集中監視装置100は、潤滑油劣化センサー60の消耗の状態として電池76の消耗の状態の通知をサービス業者用装置130および利用者用装置160に送信する(S262、S264)ので、電池残量がゼロになった不適切な潤滑油劣化センサー60が使用されることを防止することができる。また、集中監視装置100は、潤滑油劣化センサー60の消耗の状態として白色LED72の消耗の状態の通知をサービス業者用装置130および利用者用装置160に送信する(S266、S268)ので、白色LED72が故障した不適切な潤滑油劣化センサー60が使用されることを防止することができる。
【0207】
また、集中監視装置100は、無線通信装置75によって送信された情報に基づいて油温度に応じたロボット温度を取得し、取得したロボット温度に基づいて産業用ロボット20の使用状態の適切性を判断する(S202、S204、S206、S208)ので、ロボット温度が不適切な温度になるような産業用ロボット20の不適切な使用を抑えることができる。
【0208】
また、集中監視装置100は、無線通信装置81によって送信された情報に基づいて減速機40に加わる荷重に応じたロボット負荷を取得し、取得したロボット負荷に基づいて産業用ロボット20の使用状態の適切性を判断する(S210、S212)ので、ロボット負荷が不適切な負荷になるような産業用ロボット20の不適切な使用を抑えることができる。
【0209】
温度センサー74は、ホルダー63aを介して油温度を検出するようになっているが、ホルダー63aなどの他の部材を介さずに油温度を直接検出するようになっていても良い。
【0210】
メンテナンスシステム10は、温度センサー74が潤滑油劣化センサー60に内蔵されているので、温度センサー74が潤滑油劣化センサー60とは別に設けられている構成と比較して、容易に構築されることができる。なお、メンテナンスシステム10は、温度センサー74が潤滑油劣化センサー60とは別に設けられていても良い。
【0211】
集中監視装置100は、減速機40の型式だけでなくロットナンバーを管理しているので、同じ型式の減速機40であっても、他のロットよりも早く破損が生じるロットの減速機40をサービス業者に認識させることができる。したがって、サービス業者は、例えば他のロットよりも早く破損が生じるロットの減速機40の潤滑油40aの交換頻度を高めたり、潤滑油劣化センサー60による潤滑油40aの劣化の検出の周期を短くしたりすることができる。
【0212】
集中監視装置100は、減速機40の破損の状態を通知するための閾値として、減速機40の破損の可能性に対応した2段階の閾値、すなわち、警告用閾値および点検修理用閾値を含んでいるので、減速機40の破損の状態を減速機40の破損の可能性として2段階で通知することができる(S234、S236)。利用者は、減速機40の破損の状態が減速機40の破損の可能性として複数段階で通知される場合、例えば、減速機40が破損している可能性が非常に高いことが突然通知される構成と比較して、余裕を持って減速機40の交換の必要性を判断することができる。なお、集中監視装置100は、減速機40の破損の状態を通知するための閾値が1つの閾値のみであっても良いし、減速機40の破損の状態を通知するための閾値として、減速機40の破損の可能性に対応した3段階以上の閾値を含んでいても良い。
【0213】
潤滑油劣化センサー60は、RGBセンサー73によって受けた光のRGBの各色の光量を集中監視装置100に送信するようになっているが、RGBセンサー73によって受けた光の色に応じた情報であれば、RGBセンサー73によって受けた光のRGBの各色の光量以外の情報を集中監視装置100に送信するようになっていても良い。例えば、潤滑油劣化センサー60は、RGBセンサー73によって受けた光の色に応じた情報として、RGBセンサー73によって受けた光のRGBの各色の光量に基づいて算出した黒色色差ΔEを集中監視装置100に送信するようになっていても良い。RGBセンサー73によって受けた光のRGBの各色の光量に基づいて算出した黒色色差ΔEを滑油劣化センサー60が集中監視装置100に送信するようになっている場合、集中監視装置100の減速機破損状態判断部105eは、RGBセンサー73によって受けた光のRGBの各色の光量に基づいて黒色色差ΔEを算出する必要がない。
【0214】
各潤滑油劣化センサーは、外部の装置との通信方法として、本実施の形態において、内蔵の無線通信装置による無線での通信が採用されているが、例えば、有線による通信が採用されても良い。
【0215】
また、各潤滑油劣化センサーは、電力の供給手段として、本実施の形態において、内蔵の電池が採用されているが、例えば、外部の電源と潤滑油劣化センサーとを電気的に接続するケーブルが採用されても良い。
【0216】
なお、各潤滑油劣化センサーの設置位置は、本実施の形態において示した位置に限らず、産業用ロボットの用途などに合わせて適宜設定されることが好ましい。