(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
医療機関によって行われた診療行為に対する診療報酬を請求するための複数のレセプトに関する仮レセプト点検結果情報であって、前記診療行為に対する診療報酬金額を特定するための診療報酬金額情報と、前記診療行為に対する診療報酬を請求するための各レセプトに不備が存在する可能性があるか否かの点検結果を当該不備の種類と共に特定する不備可能性情報とを、相互に関連付けて構成された仮レセプト点検結果情報の入力を受け付ける入力受付け手段と、
前記入力受付け手段にて受け付けられた前記仮レセプト点検結果情報に基づいて、所定種類の不備が存在する可能性があることを特定する前記不備可能性情報に関連付けられた前記診療報酬金額情報を抽出し、当該抽出した診療報酬金額情報によって特定される診療報酬金額を参照することにより、前記レセプトに不備が存在するために当該レセプトが返戻又は査定されることにより前記医療機関への支払いが行われない可能性がある診療報酬金額である疑義金額を特定する特定手段と、
前記特定手段にて特定された疑義金額を含む情報を、所定方法で特定された形式で所定の出力手段を介して出力する出力制御手段と、を備え、
前記特定手段は、前記入力受付け手段にて受け付けられた前記仮レセプト点検結果情報のうち返戻又は査定の疑義があるレコードであり、且つ点検レベルが適応点検に該当しないレコードに対応する前記仮レセプト点検結果情報に基づいて算定された診療報酬金額であって、前記レセプトが返戻又は査定された場合には前記医療機関への支払いが請求困難であると予測される診療報酬金額を請求困難疑義金額として特定する、
レセプト分析装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、この発明に係るレセプト分析装置及びレセプト分析プログラムの実施の形態について詳細に説明する。最初に、レセプト分析装置の概要について説明し、次に、レセプト分析装置の構成を説明し、このレセプト分析装置によって実行される処理(レセプト分析プログラム及びレセプト分析方法に含まれる手順)について説明し、最後に、レセプト分析装置及びレセプト分析プログラムの変形例を説明する。
【0023】
〔概要〕
この実施の形態に係るレセプト分析装置及びレセプト分析プログラムは、「返戻」や「査定」の原因となるレセプトの不備に関する分析を行うことを可能とする装置である。これら「返戻」と「査定」は、特に相互に区別する必要がない場合には、「不備」と総称する。また、返戻と査定を判定するための所定基準を「ルール」と称する。ただし、以下に示す不備やルールの例は、変更することができる。また、実際には、医療機関は、レセプトによる診療報酬の請求は各月単位で行うことになっており、より具体的には、各月のレセプトを翌月の所定日(例えば10日)までに作成して審査支払機関に提出する。以下では、レセプトの対象となっている月を「対象月」と称する。また、医療機関によって作成されたが未だ審査支払機関には提出されていないレセプトを「仮レセプト」、医療機関によって作成された審査支払機関に提出されたレセプトを「本レセプト」と称する。
【0024】
このレセプト分析装置及びレセプト分析プログラムは、複数の医療機関の各々で作成されたレセプトを対象として横断的な分析を行うことも可能であり、あるいは一つの医療機関で作成されたレセプトを対象として分析を行うことも可能である。また、レセプト分析プログラムの利用形態としては、複数の医療機関の各々に配置されたコンピュータにレセプト分析プログラムをインストールすることでレセプト分析装置を構成し、このレセプト分析装置を他のレセプト分析装置とは切り離してスタンドアローン型で利用することが可能であり、あるいは、サーバ装置にレセプト分析プログラムをインストールすることでレセプト分析装置を構成し、このレセプト分析装置を複数の医療機関がネットワーク経由で利用するASP(アプリケーションサービスプロバイダ)型で利用することも可能である。本実施の形態では、スタンドアローン型の利用を行う場合を例示する。なお、レセプト分析装置及びレセプト分析プログラムを利用する医療機関を「ユーザ医療機関」と称する。
【0025】
〔構成〕
図1は、本実施の形態に係るレセプト分析装置を含んで構成されたレセプト統合システムの全体構成を概念的に示す説明図である。このレセプト統合システム1は、ユーザ医療機関2の内部に配置されて、ユーザ医療機関2のレセプトに関連する情報を統合的に処理するシステムである。このレセプト統合システム1は、電子カルテ装置10、レセプト作成装置20、レセプト点検装置30、及びレセプト分析装置40を備えており、これら各装置はネットワーク50を介して通信可能に接続されている。
【0026】
〔構成−電子カルテ装置〕
電子カルテ装置10は、カルテを電子データとして記録及び管理するための装置である。この電子カルテ装置10としては、公知の装置を利用することができるため、その詳細な説明は省略するが、概略的には、電子カルテ装置10に対して、ユーザ医療機関2に勤務する医師や看護師等の医療行為従事者が、患者の氏名、診療行為が行われた年月日、診療行為の種類の名称、及び診療行為の名称等の各種情報を入力すると、これらの情報が電子カルテデータとして電子カルテ装置10のデータベースに蓄積される。
【0027】
〔構成−レセプト作成装置〕
レセプト作成装置20は、後述する仮レセプト情報もしくは本レセプト情報を作成するための装置である。このレセプト作成装置20としては、公知の装置を利用することができるため、その詳細な説明は省略するが、概略的には、レセプト作成装置20には、診療行為の名称と各診療行為に対する診療報酬金額とが相互に関連付けて格納されている。そして、レセプト作成装置20は、電子カルテ装置10から電子カルテデータを受信し、この電子カルテデータに含まれる診療行為の名称に対応する診療報酬金額を特定し、当該特定した診療報酬金額と、この電子カルテデータに含まれる他の情報とに基づいて、仮レセプト情報もしくは本レセプト情報を生成する。
【0028】
〔構成−レセプト点検装置〕
レセプト点検装置30は、レセプト作成装置20にて作成された仮レセプト情報もしくは本レセプト情報を、審査支払機関への提出に先立って点検するための装置である。このレセプト点検装置30としては、特許文献1の如き公知の装置を利用することができるため、その詳細な説明は省略するが、概略的には、レセプト点検装置30には、診療行為の名称とルールとが相互に関連付けて格納されている。そして、レセプト点検装置30は、レセプト作成装置20から仮レセプト情報もしくは本レセプト情報を受信し、この仮レセプト情報に含まれる診療行為の名称に対応するルールを特定し、当該特定したルールに基づいて、仮レセプト情報もしくは本レセプト情報に不備が存在する可能性があるか否かを公知のアルゴリズムにより判定する。そして、当該判定した結果である不備可能性情報と、仮レセプト情報に含まれる他の情報とに基づいて、後述する仮レセプト点検結果情報もしくは本レセプト点検結果情報を生成する。
【0029】
〔構成−レセプト分析装置〕
レセプト分析装置40は、レセプトを分析するための装置であり、機能概念的に、記憶部41、制御部42、入力部43、出力部44、及び入出力インターフェース(以下、インターフェースは「IF」)45を、バスにて相互に通信可能に接続して構成されている。例えば、レセプト分析装置40は、公知のパーソナルコンピュータ、サーバ装置、PDA(Personal Digital Assistant)、パッド、スマートフォン等により構成することができる。
【0030】
〔構成−レセプト分析装置−記憶部〕
記憶部41は、各種処理に必要な情報やパラメータを不揮発的に格納する格納手段であり、例えば、HD(Hard Disk)にて構成される。具体的には、この記憶部41は、機能概念的に、仮レセプト情報データベース(以下、データベースは「DB」)41a、仮レセプト点検結果情報DB41b、対応病名情報DB41c、及び疑義金額履歴情報DB41dを備える。これら各DBに格納される情報については後述する。
【0031】
〔構成−レセプト分析装置−制御部〕
制御部42は、レセプト分析装置40の各部を制御する制御手段であり、機能概念的に、特定部42a及び出力制御部42bを備える。特定部42aは、入力部43にて受け付けられた仮レセプト点検結果情報に基づいて、所定種類の不備が存在する可能性があることを特定する不備可能性情報に関連付けられた診療報酬金額情報を抽出し、当該抽出した診療報酬金額情報によって特定される診療報酬金額を参照することにより、レセプトに不備が存在するために当該レセプトが返戻又は査定されることにより医療機関への支払いが行われない可能性がある診療報酬金額である疑義金額を特定する特定手段である。出力制御部42bは、特定部42aにて特定された疑義金額を含む情報を、所定方法で特定された形式で所定の出力手段(ここでは出力部44)を介して出力する出力制御手段である。これら各部による具体的処理については後述する。
【0032】
この制御部42は、具体的には、CPU(Central Processing Unit)や、このCPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの制御プログラムや、各種の処理手順などを規定したプログラム)、及び、所要プログラムや所要データを格納するためのキャッシュメモリを備えて構成される。このCPU上で解釈実行される各種のプログラムにはレセプト分析プログラムが含まれ、このレセプト分析プログラムは、例えば、CD−ROMやDVDを含む任意の記憶媒体に記憶された後、インストールされて記憶部41に不揮発的に記憶され、CPUにて解釈実行されることで制御部42の実質的機能を構成する。
【0033】
〔構成−レセプト分析装置−入力部〕
入力部43は、レセプト分析装置40に対する各種の情報の入力を受け付ける入力受付け手段であり、ここでは、図示しないキーボード及びマウスを含んで構成されている。
【0034】
〔構成−レセプト分析装置−出力部〕
出力部44は、レセプト分析装置40から各種の情報を出力する出力手段であり、ここでは、図示しないモニタを含んで構成されている。
【0035】
〔構成−レセプト分析装置−入出力IF〕
入出力IF45は、インターネットやLANの如きネットワーク50を介した通信を行うための通信手段であり、例えばネットワークボードとして構成される。この入出力IF45を介して所定のサーバからの情報入力の受け付けが行われることから、当該入出力IF45は、入力部43と同様に、入力受付け手段を構成する。また、この入出力IF45を介して各種の情報の出力が行われることから、当該入出力IF45は、出力部44と同様に、出力手段を構成する。特に、本実施の形態では、入出力IF45は、医療機関によって行われた診療行為に対する診療報酬を請求するための複数のレセプトに関する仮レセプト点検結果情報であって、診療行為に対する診療報酬金額を特定するための診療報酬金額情報と、診療行為に対する診療報酬を請求するための各レセプトに不備が存在する可能性があるか否かの点検結果を当該不備の種類と共に特定する不備可能性情報とを、相互に関連付けて構成された仮レセプト点検結果情報の入力を受け付ける入力受付け手段として機能する。
【0036】
〔構成−レセプト分析装置−各DB〕
次に、レセプト分析装置40の各DBに格納される情報の具体的内容について説明する。ただし、以下の構成例では本実施の形態に係る情報のみを格納する例を示し、実際には以下に説明する情報以外の任意の情報を各DBに格納することができ、あるいは一部の情報については適宜省略することもある。また、各DBに格納される情報のうち、同一名称の情報については、特記する場合を除いて相互に同一の内容であるものとし、重複説明は行わないものとする。
【0037】
〔構成−レセプト分析装置−仮レセプト情報DB〕
仮レセプト情報DB41aは、仮レセプト情報を格納する仮レセプト情報格納手段である。この仮レセプト情報は、
図2に例示するように、項目「レセプト共通コード」、項目「医師コード」、項目「患者属性」、項目「診療行為属性」、及び項目「診療報酬金額」と、これら各項目に対応する情報を相互に関連付けて構成されている。なお、図示の便宜上、仮レセプト情報を分割して図示しているが、実際には一連の情報として構成することができる(
図3において同じ)。
【0038】
項目「レセプト共通コード」は、各レセプトを一意に識別するためのレセプト識別情報である。項目「医師コード」は、診療行為を行った医師を特定する医師特定情報である。
【0039】
項目「患者属性」は、診療行為が行われた患者の属性を特定する患者属性情報であり、小項目として、項目「患者氏名」、項目「患者コード」、及び項目「入院年月日」を含んで構成されている。
【0040】
項目「患者氏名」に対応する情報は、診療行為の対象となった患者を特定するための患者特定情報であり、具体的には、患者の氏名である。項目「患者コード」に対応する情報は、診療行為の対象となった患者を特定するための患者特定情報であり、具体的には、患者を一意に識別するための患者コードである。項目「入院年月日」に対応する情報は、診療行為を受けた年日付を特定するための日付特定情報であり、具体的には、診療行為を受けるために入院した年月日である。
【0041】
項目「診療行為属性」は、診療行為の属性を特定する診療行為属性情報であり、小項目として、項目「診療科」、項目「診療識別」、項目「診療行為コード」、項目「行為名称」、項目「数量」、項目「回数」、項目「診療行為点数」、項目「医薬品金額」、項目「特定器材金額」、及び項目「診療報酬金額」と、これら各項目に対応する情報を相互に関連付けて構成されている。
【0042】
項目「診療科」に対応する情報は、診療行為を行った診療科を特定するための診療科特定情報であり、具体的には、診療科の名称である。項目「診療識別」に対応する情報は、診療行為の種類を特定するための診療行為種類情報であり、具体的には、診療行為の種類の名称である。項目「診療行為コード」に対応する情報は、診療行為を一意に識別するための診療行為識別情報であり、具体的には、診療行為コードである。項目「行為名称」に対応する情報は、診療行為を特定するための診療行為特定情報であり、具体的には、診療行為の名称である。
【0043】
項目「数量」に対応する情報は、診療行為の数量を特定する診療行為数量特定情報であり、例えば、薬剤の投薬量である。項目「回数」に対応する情報は、診療行為の回数を特定する診療行為回数特定情報であり、例えば、注射の回数である。項目「診療行為点数」に対応する情報は、診療行為毎に予め決められた診療報酬算定用の点数である。項目「医薬品金額」は、診療行為で使用された医薬品の金額である。項目「特定器材金額」は、診療行為で使用された特定器材の金額である。なお、この他にも、実際には、仮レセプトには、DPCコード等が含まれているが、図示を省略する(仮レセプト点検結果情報においても同じ)。
【0044】
項目「診療報酬金額」に対応する情報は、診療行為に対する診療報酬金額を特定するための診療報酬金額情報であり、小項目として、項目「外来」と項目「入院」を含んで構成されている。項目「外来」に対応する情報は、外来患者に対する診療報酬金額を示している。項目「入院」に対応する情報は、入院患者に対する診療報酬金額を示している。これら項目「外来」と項目「入院」の各々は、さらに項目「国保」と項目「社保」に分かれている。項目「国保」に対応する情報は、国民健康保険に加入している患者に対する診療報酬金額を示しており、項目「社保」に対応する情報は、社会保険に加入している患者に対する診療報酬金額を示している。なお、この他にも、実際には、仮レセプトには、管理料等が含まれているが、図示を省略する(仮レセプト点検結果情報においても同じ)。
【0045】
このように構成された仮レセプト情報は、各患者毎かつ各日付毎に生成され、仮レセプト情報DB41aに格納される。この仮レセプト情報を生成するための具体的方法は任意であるが、例えば、上述のようにレセプト作成装置20にて作成された仮レセプト情報が、ネットワーク50を介して入出力IF45において受信され仮レセプト情報DB41aに格納される。ただし、この仮レセプト情報は、必要に応じてレセプト作成装置20から取得してもよい。
【0046】
〔構成−レセプト分析装置−仮レセプト点検結果情報DB〕
図1の仮レセプト点検結果情報DB41bは、仮レセプト点検結果情報を格納する仮レセプト点検結果情報格納手段である。この仮レセプト点検結果情報は、
図3に例示するように、
図2の仮レセプト情報に対して、項目「点検結果」と、この項目に対応する情報を、付加して構成されている。
【0047】
項目「点検結果」は、仮レセプトの点検結果に関する点検結果情報であり、小項目として、項目「ルール番号」、項目「ルール名称」、項目「疑義レベル」、及び項目「点検レベル」を含んでいる。項目「ルール番号」に対応する情報は、レセプトに不備が存在する可能性があるか否かを判定するためのルールを特定するルール特定情報であって、具体的には、ルールを一意に識別するためのルール識別番号である。項目「ルール名称」に対応する情報は、レセプトに不備が存在する可能性があるか否かを判定するためのルールを特定するルール特定情報であって、具体的には、ルールの名称である。
【0048】
項目「疑義レベル」に対応する情報は、診療行為に対する診療報酬を請求するためのレセプトに不備が存在する可能性があるか否かを特定する不備可能性情報であり、具体的には、「疑義なし」、「返戻可能性高」、「査定可能性高」、「都道府県バラツキあり」のいずれかの情報である。「疑義なし」は返戻や査定される可能性が低いこと(返戻や査定の疑義がないこと)を示し、「返戻可能性高」は、返戻される可能性が高いことを示し、「査定可能性高」は、査定される可能性が高いことを示し、「都道府県バラツキあり」は、審査支払機関が設置された都道府県によって返戻される可能性や査定される可能性が異なる可能性が高いことを示している。なお、以下の説明では、「返戻可能性高」、「査定可能性高」、「都道府県バラツキあり」のいずれかに該当した場合には、「疑義あり」とし、これらのいずれにも該当しなかった場合には「疑義なし」とする。ただし、「都道府県バラツキあり」に該当した場合には、「疑義なし」に含めてもよい。あるいは、都道府県毎の詳細なルール情報を参照して、さらに明確に判定するようにしてもよい。
【0049】
項目「点検レベル」に対応する情報は、仮レセプトの点検レベルを特定するための点検レベル特定情報である。点検レベルとは、レセプト点検装置30において、仮レセプトに含まれる各診療行為に対する診療報酬計算上の不備を点検する際に、点検の基準となる所定の複数のルールのそれぞれに対応して設定されたレベルであって、各ルールに対して、「回数制限」、「適応点検」、「用量又は日数」、「併算定」、「管理料加算漏れ」、又は「その他」のいずれかが対応する。例えば、特定の診療行為を複数のルールに基づいて点検した際、ルールに合致する(ルールに照らして不備がある)ものと判定された場合には、当該ルールに対応する点検レベルが、項目「点検レベル」に対応する情報として記録される。ここで、「回数制限」とは、所定期間内に適用できる薬剤や検査の回数に関するルールに対応する点検レベルである。「適応点検」とは、適用傷病名と薬剤の対応関係に関するルールに対応する点検レベルである。「用量又は日数」とは、処方できる薬剤や検査の用量又は日数に関するルールに対応する点検レベルである。「併算定」とは、所定期間内に実施できる複数の診療行為の相互関係に関するルールに対応する点検レベルである。「管理料加算漏れ」とは、糖尿病患者に対する食事管理等の医学管理を行ったにも関わらず、この管理に対する管理料を仮レセプトに記載漏れしたことに関するルールに対応する点検レベルである。「その他」とは、他のルールに含まれないルールに対応する点検レベルである。
【0050】
このように構成された仮レセプト点検結果情報は、各患者毎かつ各日付毎に生成され、仮レセプト点検結果情報DB41bに格納される。この仮レセプト点検結果情報を生成するための具体的方法は任意であるが、例えば、上述のようにレセプト点検装置30にて仮レセプト情報に基づいて作成された仮レセプト点検結果情報が、ネットワーク50を介して入出力IF45において受信され仮レセプト点検結果情報DB41bに格納される。ただし、この仮レセプト点検結果情報は、必要に応じてレセプト点検装置30から取得してもよい。
【0051】
〔構成−レセプト分析装置−対応病名情報DB〕
図1の対応病名情報DB41cは、診療行為の属性と、当該属性に対応する病名とを、相互に関連付けて構成された対応病名情報を格納する対応病名情報格納手段である。この対応病名情報は、
図4に例示するように、項目「診療行為属性」及び項目「病名」と、これら各項目に対応する情報を相互に関連付けて構成されている。項目「診療行為属性」は、
図2の仮レセプト情報における項目「診療行為属性」とほぼ同様であるが、小項目として、項目「診療科」、項目「診療識別」、項目「診療行為コード」、及び項目「行為名称」のみを含んで構成されている。項目「病名」は、診療行為に対応する病名を特定する病名特定情報であり、具体的には病気の名称である。
【0052】
このように構成された対応病名情報は、行政機関や医師等によって事前に生成され対応病名情報DB41cに格納される。
【0053】
〔構成−レセプト分析装置−疑義金額履歴情報DB〕
図1の疑義金額履歴情報DB41dは、疑義金額の履歴に関する疑義金額履歴情報を格納する疑義金額履歴情報格納手段である。また、疑義金額履歴情報DB41dは、診療行為を行った医師を特定する医師特定情報と、特定部にて特定された疑義金額とを、相互に関連付けて構成された医師実績情報を格納する医師実績情報格納手段に該当する。この疑義金額履歴情報は、
図5に例示するように、項目「レセプト共通コード」、項目「医師コード」、項目「患者コード」、項目「入院年月日」、項目「病名漏れ疑義金額」、項目「請求困難疑義金額」、項目「管理料加算漏れ疑義金額」、及び項目「DPCコーディングミス疑義金額」と、これら各項目に対応する情報を相互に関連付けて構成されている。
【0054】
項目「レセプト共通コード」、項目「医師コード」、項目「患者コード」、及び項目「入院年月日」に対応する情報は、それぞれ
図2の仮レセプト情報における同一項目名の項目に対応する情報と同じである。
【0055】
項目「病名漏れ疑義金額」、項目「管理料加算漏れ疑義金額」、及び項目「DPCコーディングミス疑義金額」に対応する情報は、疑義金額の中で、所定種類の不備が存在する疑義金額である。ここで、「所定種類の不備」としては、任意の種類の不備を設定することができるが、本実施の形態においては、「レセプトの不備を改善することで疑義金額を低減するために効率的な種類の不備」を設定している。つまり、不備を改善することによりある程度の大きな疑義金額の低減を見込むことができ、かつ、不備を改善する作業が比較的容易である不備の種類を、「所定種類の不備」としている。このような所定種類の不備を、以下では、「改善対象不備」と称する。この改善対象不備として、本実施の形態においては、具体的には、「病名漏れ」、「管理料加算漏れ」、及び「DPCコーディングミス」を設定している。「病名漏れ」とは、仮レセプトに診療行為属性が記録されているにも関わらず、この診療行為属性に対応する病名が仮レセプトに記載されていない不備である。「管理料加算漏れ」とは、糖尿病患者に対する食事管理等の医学管理を行ったにも関わらず、この管理に対する管理料等が仮レセプトに記載されていない不備である。「DPCコーディングミス」とは、医療行為を一意に識別するための統一コードであるDPCコードが、仮レセプトに正しく記載されていない不備である。そして、項目「病名漏れ疑義金額」に対応する情報は、病名漏れに起因する疑義金額であり、項目「管理料加算漏れ疑義金額」に対応する情報は、管理料加算漏れに起因する疑義金額であり、項目「DPCコーディングミス疑義金額」に対応する情報は、DPCコーディングミスに起因する疑義金額である。また、項目「請求困難疑義金額」に対応する情報は、改善対象不備以外の不備に対応する疑義金額であり、保険者に請求することが困難であると予想される疑義金額である。
【0056】
このように構成された疑義金額履歴情報は、後述する疑義金額算定処理により生成され疑義金額履歴情報DB41dに格納される。
【0057】
〔処理〕
次に、
図1のレセプト分析装置40においてレセプト分析プログラムを実行すること等によって行われるレセプト分析処理について説明する。以下の本処理の説明において、制御主体を特記しない処理については、レセプト分析装置40の制御部42にて実行されるものとし、情報の取得元や取得経路を特記しない場合については、公知のタイミング及び公知の方法にて、レセプト分析装置40の記憶部41に予め格納されており、あるいは、入力部43を介してレセプト分析装置40の提供者やユーザ医療機関2の担当者によって入力されるものとする。なお、各処理の「ステップ」は「S」と略記する。
【0058】
例えば、レセプト分析装置40に対して、担当者が入力部43を介した所定方法によりレセプト分析プログラムの起動を指示すると、以下の処理が起動される。
【0059】
〔処理−疑義金額算定処理〕
最初に、疑義金額算定処理が起動される。この疑義金額算定処理は、改善対象不備の疑義金額を算定するための処理である。
【0060】
この処理において、制御部42の特定部42aは、分析対象特定画面を生成してモニタに表示させる。この分析対象特定画面において、担当者は、分析対象としたい仮レセプトを特定する。この特定は、例えば、分析対象としたい診療科の範囲と、分析対象としたい患者の範囲とを特定することで行われる。
【0061】
例えば、分析対象特定画面には、分析対象としたい診療科の範囲を特定するために、「病院全体」、「内科」、「外科」、「精神科」、「神経科」等のテキストと、各テキストに対応するチェックボックスが表示されている。「病院全体」はユーザ医療機関2の全ての診療科を分析対象とし、「内科」はユーザ医療機関2の内科のみを分析対象とし、「外科」はユーザ医療機関2の外科のみを分析対象とし、「精神科」や「神経科」は内科や外科に属するこれら各分科のみを分析対象とすることをそれぞれ意味する。このような分析対象特定画面において、これらチェックボックスのいずれかを担当者が入力部43を介して選択することにより、当該選択されたチェックボックスに対応する診療科や分科が分析対象として特定される。以下、このように特定された診療科を「対象診療科」と称する。なお、これら各診療科や各分科の具体例あるいはチェックボックスを用いた特定方法は一例に過ぎず、この他の任意の各診療科や各分科を対象に、公知の任意の方法により、対象診療科を特定するようにしてもよい。
【0062】
また、例えば、分析対象特定画面には、分析対象としたい患者の範囲を特定するために、「外来」、「国保外来」、「社保外来」、「入院」、「国保入院」、「社保入院」等のテキストと、各テキストに対応するチェックボックスが表示されている。「外来」は外来患者のみを分析対象とし、「国保外来」は外来患者の中でも国民健康保険に加入している患者のみを分析対象とし、「社保外来」は外来患者の中でも社会保険に加入している患者のみを分析対象とし、「入院」は入院患者のみを分析対象とし、「国保入院」は入院患者の中でも国民健康保険に加入している患者のみを分析対象とし、「社保入院」は入院患者の中でも社会健康保険に加入している患者のみを分析対象とすることをそれぞれ意味する。このような分析対象特定画面において、これらチェックボックスのいずれかを担当者が入力部43を介して選択することにより、当該選択されたチェックボックスに対応する患者が分析対象として特定される。以下、このように特定された患者を「対象患者」と称する。なお、これら患者の区分の具体例あるいはチェックボックスを用いた特定方法は一例に過ぎず、この他の任意の区分を対象に、公知の任意の方法により、対象患者を特定するようにしてもよい。
【0063】
このように対象診療科と対象患者を特定した後、担当者が入力部43を介して所定操作を行うと、特定部42aは、仮レセプト点検結果情報DB41bに格納された仮レセプト点検結果情報の中から、これら対象診療科と対象患者の組み合わせに合致する仮レセプト点検結果情報を取得する。以下、このように取得された仮レセプト点検結果情報を「対象仮レセプト点検結果情報」と称する。
【0064】
そして、特定部42aは、対象仮レセプト点検結果情報に基づいて、疑義金額を特定するための疑義金額特定処理を起動する。
図6は、疑義金額特定処理のフローチャートである。まず、特定部42aは、対象仮レセプト点検結果情報に含まれる各レコードを、「返戻又は査定疑義」のレコードと、「管理料加算漏れ疑義」のレコードに区別する(SA1)。この区別は、例えば、項目「点検レベル」に対応する情報に基づいて行われ、この情報が「管理料加算漏れ」であるレコードについては「管理料加算漏れ疑義」のレコードとし、この情報が「管理料加算漏れ」以外であるレコードについては「返戻又は査定疑義」のレコードとする。
【0065】
次いで、特定部42aは、SA1で「返戻又は査定疑義」のレコードとされた各レコードを対象に、SA2〜SA7を行う。具体的には、特定部42aは、「返戻又は査定疑義」のレコードが一意であるか否かを判定する(SA2)。すなわち、レセプト点検装置30によってレセプトが点検される際には、同一の患者への同一の診療行為に対する同一のレセプトにおける同一のレコードに関しても、ルール毎に点検が行われるため、同一のレコードにおける同一の診療報酬金額情報に対して、レセプト点検結果のレコードが複数生成される場合がある。しかし、このように複数レコードが生成された場合であっても、保険者に実際に請求が可能になるのは、一つのレコードのみであるため、疑義金額を正確に特定するためには、重複するレコードを除外する必要がある。本実施の形態では、同一の患者への同一の診療行為に対する同一のレセプトにおける同一のレコードに関して、同一の診療報酬金額情報に対して、重複していないレコードを「一意」のレコードであると称し、重複しているレコードを「一意」でないレコードであると称する。レコードが「一意」であるか否かは、患者属性情報又は診療行為属性情報に基づいて判定する。具体的には、SA1で「返戻又は査定疑義」のレコードとされた各レコードから、患者属性情報として「患者コード」及び「入院年月日」を取得し、診療行為属性情報として「診療行為コード」、「数量」、及び「回数」を取得し、さらに「レセプト共通コード」を取得する。そして、SA1で「返戻又は査定疑義」のレコードの中で、当該取得した情報の組み合わせに合致するレコードが、複数存在するか否かを判定し、複数存在しない場合には、当該レコードが「一意」であると判定し(SA2、Yes)、複数存在する場合には、当該レコードが「一意」でないと判定する(SA2、No)。ただし、「一意」であるか否かの判定は、判定が可能である場合には、これら患者属性情報又は診療行為属性情報の一部の情報を省略して行ってもよく、あるいは、他の情報をさらに考慮して行ってもよい。
【0066】
次いで、特定部42aは、SA2で「一意」であると判定されたレコードを対象に、疑義金額を算定する(SA3)。具体的には、当該レコードから、診療行為点数、医薬品金額、特定器材金額、数量、及び回数を取得し、疑義金額=(診療行為点数×10+医薬品金額+特定器材金額)×数量×回数として算定する。なお、診療行為点数を10で乗算するのは、行政により、診療行為点数は1点当たり10円と定められているためである(後述する各種の疑義金額や現在の請求金額の算定においても同じ)。
【0067】
あるいは、特定部42aは、SA2で「一意」ではないと判定されたレコードを対象に、疑義金額を算定する(SA4)。具体的には、当該レコードから、診療行為点数、医薬品金額、特定器材金額、数量、及び回数を取得し、疑義金額=((診療行為点数×10+医薬品金額+特定器材金額)×数量×回数)/重複回数として算定する。重複回数とは、「返戻又は査定疑義」のレコードが一意ではないために重複している回数であり、SA2の判定基準に基づいて算定される。
【0068】
次いで、特定部42aは、SA2で「一意」であると判定されたレコード及び「一意」ではないと判定されたレコードを対象に、点検レベル=適応点検であるか否かを判定する(SA5)。すなわち、点検レベル=適応点検である場合には、適用傷病名と薬剤の対応関係に関するルールに基づいて不備が発見されたレコードであることが判り、このような不備に関する疑義金額は病名漏れ疑義金額となる可能性が高いため、点検レベル=適応点検であるレコードを特定して病名漏れ疑義金額を算定するために、当該判定を行う。ただし、この判定基準は、点検レベルの設定に応じて変えることができ、例えば、複数の点検レベルに対応するレコードを、病名漏れ疑義金額に対応するレコードであると判定してもよい。あるいは、病名漏れ疑義金額に対応する点検レベルがより厳密に設定された場合には、当該点検レベルに対応するレコードのみを、病名漏れ疑義金額に対応するレコードであると判定してもよい。
【0069】
次いで、特定部42aは、SA5で点検レベル=適応点検である(Yes)と判定された全てのレコードを対象に、SA3又はSA4で算定した疑義金額を総計することで、病名漏れ疑義金額を算定する(SA6)。また、特定部42aは、SA5で点検レベル=適応点検ではない(No)と判定された全てのレコードを対象に、SA3又はSA4で算定した疑義金額を総計することで、請求困難疑義金額を算定する(SA7)。
【0070】
一方、特定部42aは、SA1で「管理料加算漏れ疑義」のレコードとされた各レコードを対象に、SA8〜SA9を行う。具体的には、特定部42aは、「管理料加算漏れ疑義」のレコードを対象に、疑義金額を算定する(SA8)。つまり、当該レコードから、診療行為点数、医薬品金額、特定器材金額、数量、及び回数を取得し、疑義金額=(診療行為点数×10+医薬品金額+特定器材金額)×数量×回数として算定する。
【0071】
次いで、特定部42aは、SA1で「管理料加算漏れ疑義」のレコードとされた全てのレコードを対象に、SA8で算定した疑義金額を総計することで、管理料加算漏れ疑義金額を算定する(SA9)。
【0072】
その後、特定部42aは、対象仮レセプト点検結果情報に基づいて、DPCコーディングミス疑義金額を算定する(SA10)。ただし、この算定は、公知の方法で行うことができるので、その詳細な説明を省略する。
【0073】
そして、特定部42aは、これまでに算定した病名漏れ疑義金額、請求困難疑義金額、管理料加算漏れ疑義金額、及びDPCコーディングミス疑義金額を、仮レセプト毎に集計し、当該仮レセプトのレセプト共通コード、医師コード、患者コード、及び入院年月日を仮レセプト点検結果情報DB41bから取得し、これらの情報を相互に関連付けて疑義金額履歴情報DB41dに蓄積する(SA11)。これにて疑義金額特定処理を終了する。
【0074】
〔処理−出力制御処理〕
次に、出力制御処理が起動される。この出力制御処理は、各種の情報を出力制御するための処理である。この処理では、特定部42aは、出力制御方法特定画面を生成してモニタに表示させる。この出力制御方法特定画面において、担当者は、所定の出力制御方法の中から使用したい方法を特定する。この所定の出力制御方法として、本実施の形態では、ダッシュボード分析、優先順位分析、不備改善、及び医師別実績分析が設定されている。各出力制御方法の具体的内容については後述する。例えば、出力制御方法特定画面には、「ダッシュボード分析」、「優先順位分析」、「不備改善」、及び「医師別実績分析」等のテキストと、各テキストに対応するチェックボックスが表示されている。このような出力制御方法特定画面において、これらチェックボックスのいずれかを担当者が入力部43を介して選択することにより、当該選択されたチェックボックスに対応する方法が出力制御方法として特定される。以下、このように特定された出力制御方法を「対象出力制御方法」と称する。なお、これら出力制御方法の具体例あるいはチェックボックスを用いた特定方法は一例に過ぎず、この他の任意の出力制御方法を対象に、公知の任意の方法により、対象出力制御方法を特定するようにしてもよい。
【0075】
〔処理−出力制御処理−ダッシュボード分析処理〕
出力制御方法特定画面においてダッシュボード分析が特定された場合には、ダッシュボード分析処理が起動される。このダッシュボード分析処理は、改善対象不備の疑義金額を一覧的に表示するためのダッシュボード分析図を生成して出力する処理である。
図7は、ダッシュボード分析処理のフローチャートである。
【0076】
この処理において、制御部42の特定部42aは、現在の請求金額を算定する(SB1)。現在の請求金額とは、仮レセプトに基づいて算定した場合の請求金額(仮レセプトに記載された事項に不備が存在するか否かや、疑義金額が存在するか否かを考慮することなく算定した場合の請求金額)である。具体的には、現在の請求金額は、(各診療行為の点数×回数)の総計×10と、DPC合計調整×10とを加算することで算定される。
【0077】
次いで、特定部42aは、実施可能性金額を算定する(SB2)。実施可能性金額とは、仮レセプトに記載された診療行為に基づいて判断した場合に、現在の請求金額に対して、さらに請求できる可能性があると推定される金額を加えた金額である。具体的には、実施可能性金額は、先に算定した現在の請求金額+
図6のSA9で算定した管理料加算漏れ疑義金額の総計−
図6のSA7で算定した請求困難疑義金額の総計として算定する。
【0078】
次いで、特定部42aは、返戻又は査定後シミュレーション金額を算定する(SB3)。返戻又は査定後シミュレーション金額とは、仮レセプトを不備を改善することなく審査支払機関に提出した場合に、支払を受けることができると考えられる金額である。具体的には、返戻又は査定後シミュレーション金額は、先に算定した現在の請求金額−
図6のSA6で算定した病名漏れ疑義金額の総計−
図6のSA7で算定した請求困難疑義金額の総計として算定する。
【0079】
その後、出力制御部42bは、これまでに算定した各疑義金額に基づいて、所定形式のダッシュボード分析図を生成してモニタに出力する(SB4)。これにてダッシュボード分析処理が終了する。
【0080】
図8は、ダッシュボード分析図の表示例である。このダッシュボード分析図は、第1軸(
図8の左側の縦軸)を疑義金額(単位=千円)とすると共に、第2軸(
図8の右側の縦軸)を請求金額(単位=千円)とするグラフであり、第1軸及び第2軸と直交する第3軸(
図8の横軸)における左から右に至る順に、前々月、前月、及び今月(対象月)の各種の金額が表示されている。各種の金額としては、病名漏れ疑義金額、管理料加算漏れ疑義金額、及びDPCコーディングミス疑義金額が、正の棒グラフで表示され、請求困難金額が負の棒グラフで表示され、実施可能性金額、現在の請求金額、及び返戻又は査定後シミュレーション金額が折れ線グラフとして表示されている。このようなダッシュボード分析図を見ることで、担当者は、各金額の絶対値や推移を容易かつ正確に把握することが可能になる。特に、請求可能金額と請求困難疑義金額が特定されるので、レセプトの不備による影響を、請求可能金額と請求困難疑義金額の観点から区別して把握することができ、レセプトの不備が経営に与える影響を把握することを、容易かつ正確に行うことが可能になる。なお、前々月や前月の各種の金額は、対象月の各種の金額を算定した後、当該算定した金額を月毎に記憶部41に記憶させておき必要により呼び出して利用する。ただし、対象月の各種の金額のみを表示するようにしてもよい。また、各棒グラフや折れ線グラフには、金額を数値で表示するようにしてもよい。
【0081】
〔処理−出力制御処理−優先順位分析処理〕
出力制御方法特定画面において優先順位分析が特定された場合には、優先順位分析処理が起動される。この優先順位分析処理は、改善対象不備の疑義金額を優先順位の高い順に表示するための優先順位分析図を生成して出力する処理である。
図9は、優先順位分析処理のフローチャートである。
【0082】
この処理において、制御部42の特定部42aは、対象仮レセプト点検結果情報によって特定される各レセプトについて、疑義金額算定処理で算定した各種の疑義金額の総計を算定する(SC1)。例えば、1つの仮レセプトに対して、疑義金額算定処理において、病名漏れ疑義金額、管理料加算漏れ疑義金額、及びDPCコーディングミス疑義金額が算定された場合には、当該仮レセプトの疑義金額の総計=病名漏れ疑義金額+管理料加算漏れ疑義金額+DPCコーディングミス疑義金額とする。
【0083】
そして、特定部42aは、各レセプトの疑義金額の総計を積算して、全てのレセプトの疑義金額の総計を算定する(SC2)。次いで、特定部42aは、当該算定した全てのレセプトの疑義金額の総計に対する、各レセプトの疑義金額の総計の占有率を算定する(SC3)。例えば、全てのレセプトの疑義金額の総計=2,000百万円であり、ある一つのレセプトの疑義金額の総計=20百万円である場合、当該レセプトの疑義金額の総計の占有率=(20/2,000)×100=1%が特定される。
【0084】
そして、特定部42aは、占有率の大きい順にレセプトを整列し(SC4)、この占有率を当該整列した順に順次加算することで、占有率の累積値(以下、累積率)を算定する(SC5)。例えば、整列された1番目のレセプトの占有率が10%、2番目のレセプトの占有率が8%である場合、1番目のレセプトの累積率=10%、2番目のレセプトの累積率=10%+8%=18%となる。
【0085】
その後、出力制御部42bは、これまでに算定した各数値に基づいて、所定形式の優先順位分析表を生成してモニタに出力する(SC6)。これにて優先順位分析処理が終了する。
【0086】
図10は、優先順位分析表の表示例である。この優先順位分析表は、項目「診療年月日」、項目「診療科」、項目「医師コード」、項目「患者コード」、項目「疑義金額」、及び項目「累積率」と、これら各項目に対応する情報を相互に関連付けて構成されている。項目「診療年月日」、項目「診療科」、項目「医師コード」、及び項目「患者コード」に対応する情報は、
図2の同一項目名の項目に対応する情報と同じである。項目「疑義金額」に対応する情報は、SC1で算定した疑義金額である。項目「累積率」に対応する情報は、SC5で算定した累積率である。このような優先順位分析表を見ることで、担当者は、各仮レセプトの疑義金額の絶対値と累積率を知ることができ、改善することにより大きな効果が得られる仮レセプトを容易かつ正確に把握することが可能になる。
【0087】
〔処理−出力制御処理−不備改善処理〕
出力制御方法特定画面において不備改善が特定された場合には、不備改善処理が起動される。この不備改善処理は、仮レセプトの不備を改善するための処理である。
図11は、不備改善処理のフローチャートである。
【0088】
特定部42aは、改善したい不備がある仮レセプトを特定する(SD1)。例えば、
図10の優先順位分析表において、担当者により入力部43を介していずれか一つの仮レセプトが選択された場合には、当該選択された仮レセプトを、改善したい不備がある仮レセプトとして特定する。あるいは、仮レセプトを特定するための仮レセプト特定画面を生成してモニタに表示させ、この仮レセプト特定画面において、不備の種類、患者属性情報、あるいは診療行為属性情報等が担当者により入力部43を介して入力された場合に、この入力内容に基づいて仮レセプトを特定してもよい。
【0089】
次いで、特定部42aは、SD1で特定された仮レセプトに記載されている診療行為の属性に対応する病名を特定する(SD2)。具体的には、SD1で特定された仮レセプトの仮レセプト点検結果情報を仮レセプト点検結果情報DB41bから取得し、当該取得した仮レセプト点検結果情報の中から診療行為属性を取得し、当該取得した診療行為属性に対応する病名を対応病名情報DB41cを参照して特定する。
【0090】
そして、出力制御部42bは、不備改善提案画面を生成してモニタに表示させる(SD3)。具体的には、SD1で特定された仮レセプトに対応する仮レセプト情報を仮レセプト情報DB41aから取得し、当該取得した仮レセプト情報に、SD2で特定した病名等を付加することにより、不備改善提案画面を生成する。これにて不備改善処理が終了する。
【0091】
この修正提案レセプト画面は、例えば、公知の形式の仮レセプトに対して、診療行為属性から見て正しいと考えられる病名(修正候補病名、適応病名)と、修正候補病名への修正を行うべき理由(例えば、「現在の仮レセプトに記載されている病名である○○○○は、傷病名等から判断して適応と認められないのではないでしょうか?適応病名としては△△△△等があります」というテキストコメント)が付加されている。このような修正提案レセプト画面を見ることで、担当者(この場合には、仮レセプトの不備を改善する医師)は、レセプトの不備を改善する際に修正提案レセプトを参照することで、診療行為の属性に対応する病名を容易かつ正確に把握することが可能になり、レセプト不備の改善作業を簡易かつ正確に行うことが可能になる。
【0092】
〔処理−出力制御処理−医師別実績分析処理〕
出力制御方法特定画面において医師別実績分析が特定された場合には、医師別実績分析処理が起動される。この医師別実績分析処理は、医師毎の疑義金額に関する情報を分析するための処理である。
図12は、医師別実績分析処理のフローチャートである。
【0093】
特定部42aは、分析したい医師を特定する(SE1)。例えば、
図10の優先順位分析表において、担当者により入力部43を介していずれか一つの仮レセプトが選択された場合には、当該選択された仮レセプトに対応する医師を、分析したい医師として特定する。あるいは、医師を特定するための医師特定画面を生成してモニタに表示させ、この医師特定画面において、不備の種類、患者属性情報、あるいは医師コード等が担当者により入力部43を介して入力された場合に、この入力内容に基づいて医師を特定してもよい。
【0094】
次いで、特定部42aは、SE1で特定された医師の医師コードに対応する全ての疑義金額履歴情報を疑義金額履歴情報DB41dから取得し(SE2)、出力制御部42bは、医師別実績分析画面を生成してモニタに表示させる(SE3)。この医師別実績分析画面の具体的な構成は任意であるが、例えば、時間を表す横軸と、疑義金額を表す縦軸とを備えた折れ線グラフとして構成され、病名漏れ疑義金額、請求困難疑義金額、管理料加算漏れ疑義金額、及びDPCコーディングミス疑義金額を、それぞれ入院年月日にプロットし、これらプロットを疑義金額の種類に線で接続することで、構成される。このような医師別実績分析画面を見ることで、担当者(医師や経営者)は、医師毎の疑義金額の大小等の各種の傾向を容易かつ正確に把握することが可能になり、レセプト不備の発生源である医師によるレセプト記載ミスの改善策を医師毎に立案等することが容易になる。なお、医師別実績分析画面は、この他にも様々な形式で出力することができ、例えば、SE1において複数の医師が選択された場合には、当該複数の医師の上記各種の疑義金額を対比可能なように、同一の画面に折れ線グラフや棒グラフで出力したり、ユーザ医療機関の疑義金額の総額に占める各医師の疑義金額の占有率を算定したりして、占有率の高い順に、医師、疑義金額、及び占有率を表示すること等ができる。
【0095】
〔変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良できる。以下、このような変形例について説明する。
【0096】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0097】
(構成及び制御について)
また、上記実施の形態で自動的に行われるものとして説明した制御の全部または任意の一部を手動で行っても良く、逆に、手動で行われるものとして説明した制御の全部または任意の一部を公知技術または上述した思想に基づいて自動化しても良い。また、上記実施の形態において示した各構成要素の各機能ブロックの一部又は全部を、ハードワイヤードロジックにて構成しても良い。
【0098】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散や統合して構成できる。例えば、レセプト分析装置40を、複数のサーバ装置や端末装置に分散して構成してもよく、あるいは、レセプト点検装置30とレセプト分析装置40を1台のサーバ装置に統合してもよい。
【0099】
(データ処理の対象について)
上記実施の形態では、レセプト点検装置30にて点検された後の仮レセプトを対象として、各種の処理を行ったが、例えば、初期の仮レセプトに対して不備が改善された後の仮レセプトを対象として各種の処理を行ったり、審査機関に提出した後の本レセプトを対象として各種の処理を行ったりしてもよい。