(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
デジタル制御部とデジタル・アナログ変換器とドライバ出力部と駆動電流検出増幅器とアナログ・デジタル変換器と逆起電圧検出部とを具備するモータ駆動制御装置の動作方法であって、
前記ドライバ出力部の出力端子には、モータと検出抵抗との直列接続が接続可能とされ、
前記デジタル制御部は、デジタル駆動電圧指令信号を生成して前記デジタル・アナログ変換器の入力端子に供給して、
前記デジタル・アナログ変換器は、前記デジタル制御部から生成される前記デジタル駆動電圧指令信号に応答して、アナログ駆動電圧指令信号を生成して、
前記ドライバ出力部は、前記デジタル・アナログ変換器から生成される前記アナログ駆動電圧指令信号に応答して、前記モータと前記検出抵抗との前記直列接続を駆動する駆動出力信号を生成して、
前記駆動電流検出増幅器は、前記検出抵抗に流れる駆動電流に応答して、駆動電流アナログ増幅信号を生成して、
前記アナログ・デジタル変換器は、前記駆動電流検出増幅器から生成される前記駆動電流アナログ増幅信号に応答して、デジタル駆動電流検出信号を生成して、
前記逆起電圧検出部は、第1デジタル乗算器とデジタル減算器と第2デジタル乗算器と第1レジスタと第2レジスタとを含み、
前記第1デジタル乗算器は前記アナログ・デジタル変換器から生成される前記デジタル駆動電流検出信号と前記第1レジスタに格納され、前記モータの速度および逆起電圧が実質的にゼロに維持される条件において、前記第2デジタル乗算器から生成されるデジタル逆起電圧情報の値を実質的にゼロとする第1ゲイン情報との乗算を実行することによって、第1乗算結果を生成して、
前記デジタル減算器は前記デジタル制御部から生成される前記デジタル駆動電圧指令信号と前記第1デジタル乗算器から生成される前記第1乗算結果との減算を実行することによって、減算結果Nを生成して、
前記第2デジタル乗算器は、前記デジタル減算器から生成される前記減算結果と前記第2レジスタに格納され逆起電圧検出感度を決定する第2ゲイン情報との乗算を実行することによって、第2乗算結果の情報としての前記デジタル逆起電圧情報を生成し、
前記条件は、前記デジタル制御部から生成される前記デジタル駆動電圧指令信号を所定の値に設定して生成される、
モータ駆動制御装置の動作方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者等は本発明に先立ち、ハードディスク装置(HDD)において磁気ヘッドを移動するボイスコイルモータ(VCM)を駆動するためのボイスコイルモータドライバICと呼ばれる半導体集積回路の開発に従事した。具体的には、このドライバICは、磁気ディスクを高速回転するスピンドルモータを駆動するためのスピンドルモータドライバとボイスコイルモータを駆動するためのボイスコイルモータドライバとを集積化したコンボ(COMBO)ドライバと呼ばれる高集積密度の半導体集積回路である。
【0010】
一方、このコンボドライバと呼ばれる高集積密度の半導体集積回路のコストを低減することが要求されたため、ボイスコイルモータドライバのチップ占有面積の低減が必要となった。
【0011】
図8は、本発明に先立って本発明者等によって検討された半導体集積回路のボイスコイルモータドライバの逆起検出部の構成を示す図である。
【0012】
すなわち、
図8に示した逆起検出部は、磁気ヘッドのロード時の速度制御のための磁気ヘッドの移動速度検出のために移動時のボイスコイルモータに発生する逆起電圧を検出するものである。
【0013】
図8に示すように、逆起検出部は、逆起電圧増幅部900とPWMキャリアリップル除去フィルタ901とアナログ・デジタル変換器902と調整シーケンサ903と複数のレジスタ904〜907とシリアルI/Oインターフェース908とを含んでいる。尚、
図8において、破線ICの内部の回路は、モノリシック半導体集積回路の半導体チップの内部に集積化されたものである。
【0014】
逆起電圧増幅部900の入力は、第1VCMドライバ出力端子VCMPとVCMドライバ電流センス端子RSINNと第2VCMドライバ出力端子VCMNとに接続されている。第2VCMドライバ出力端子VCMNとVCMドライバ電流センス端子RSINNとの間にはボイスコイルモータ(VCM)のコイルLと寄生抵抗RLとが直列接続され、第1VCMドライバ出力端子VCMPとVCMドライバ電流センス端子RSINNとの間にはボイスコイルモータ(VCM)の電流を検出するための検出抵抗Rsが接続されている。また、第1VCMドライバ出力端子VCMPにボイスコイルモータドライバの第1駆動出力回路の出力端子が接続されて、第2VCMドライバ出力端子VCMNにボイスコイルモータドライバの第2駆動出力回路の出力端子が接続されて、第1駆動出力回路の出力信号と第2駆動出力回路の出力信号とは逆相となる。
【0015】
逆起電圧増幅部900は、半導体集積回路の半導体チップに集積化された6個の抵抗R1〜R6と2個の差動増幅器A1、A2とを含む2段の帰還増幅器によって構成されている。第1差動増幅器A1の反転入力端子−は抵抗R1を介して第1VCMドライバ出力端子VCMPに接続されるとともに抵抗R2を介して第1差動増幅器A1の出力端子に接続されて、第1差動増幅器A1の非反転入力端子+はVCMドライバ電流センス端子RSINNに接続される。第2差動増幅器A2の反転入力端子−は、抵抗R3を介して第1差動増幅器A1の出力端子に接続されるとともに抵抗R4を介して第2差動増幅器A2の出力端子に接続される。第2差動増幅器A2の非反転入力端子+は、抵抗R5を介して第2VCMドライバ出力端子VCMNに接続されるとともに抵抗R6を介して基準電圧V
REFが供給される。このように、
図8に示した逆起検出部の逆起電圧増幅部900は、上記特許文献1の
図13とそれに関係する開示に記載されたように、ボイスコイルモータのコイルの両端子間電圧とこのコイルと直列接続されたセンス抵抗の両端子間電圧とを2段の帰還型差動増幅器によって増幅することでボイスコイルモータの逆起電圧を検出するものである。
【0016】
逆起電圧増幅部900の第2差動増幅器A2の出力端子は、PWMキャリアリップル除去フィルタ901の入力端子に接続される。すなわち、第1VCMドライバ出力端子VCMPを駆動する第1駆動出力回路と第2VCMドライバ出力端子VCMNを駆動する第2駆動出力回路が、上記特許文献4に記載されたようにパルス駆動モードのPWM動作を実行する際のPWMキャリア信号のリップル成分を除去するためにPWMキャリアリップル除去フィルタ901が使用される。このパルス駆動モードのPWM動作は、磁気ヘッドの移動駆動量が大きい場合に使用されるものである。
【0017】
従って、PWMキャリアリップル除去フィルタ901の出力端子においてPWMキャリア信号のリップル成分が抑圧されたボイスコイルモータの逆起電圧のアナログ増幅信号ABEMFはアナログ・デジタル変換器902によってデジタル信号に変換され、このデジタル逆起電圧情報はシリアルI/Oインターフェース908に供給される。シリアルI/Oインターフェース908に供給されたデジタル逆起電圧情報は、図示されていないマイクロコンピュータ等のコントローラに転送される。コントローラの内部で、デジタル逆起電圧情報と磁気ヘッドの速度指令値との差分が算出され、算出された差分に基づき磁気ヘッド駆動電流指示情報が生成される。コントローラによって生成された電流指示情報はシリアルI/Oインターフェース908を介してボイスコイルモータドライバのデジタル制御回路に供給され、デジタル制御回路のデジタル処理結果はデジタル・アナログ変換器によってアナログ駆動電圧情報に変換される。このアナログ駆動電圧情報に応答して、第1駆動出力回路と第2駆動出力回路とは、ボイスコイルモータのコイルの両端を逆相に駆動するものとなる。
【0018】
しかしながら、
図8に示した逆起検出部の逆起電圧増幅部900は、ボイスコイルモータドライバの第1駆動出力回路と第2駆動出力回路とから数Vの駆動出力信号が生成されると言う動作条件において、数10mVの逆起電圧を増幅すると言う繊細で高精度のアナログ電圧増幅が要求されるものである。従って、このアナログ電圧増幅に際しては、増幅ゲインを高精度に設定するとともに2個の差動増幅器A1、A2のオフセット電圧を正確に補償することが必要となった。
【0019】
一方、ボイスコイルモータ(VCM)のコイルLに流れる電流をIvcmとして、逆起電圧をVbemfとして、R3=R5、R4=R6とすると、逆起電圧増幅部900の逆起電圧増幅電圧Voutは、下記(1式)で与えられる。
【0020】
【数1】
【0021】
従って、上記(1式)より、R2/R1=RL/Rsの関係に設定することによって、逆起電圧Vbemfを2個の抵抗R4、R3の比R4/R3である増幅ゲインによって増幅した出力電圧が逆起電圧増幅電圧Voutであることが理解される。寄生抵抗RLと電流検出抵抗Rsの比RL/Rsはボイスコイルモータ(VCM)によりばらつきがあり、また周囲温度でも変化するものである。
【0022】
一方、モノリシック半導体集積回路の半導体チップICの内部に集積化された6個の抵抗R1〜R6と2個の差動増幅器A1、A2には、製造誤差を有するものである。半導体チップの内部に集積化された2個の半導体抵抗器の抵抗値の比の相対精度は1個の半導体抵抗器の抵抗値の絶対精度よりも高いものであるが、集積化された2個の半導体抵抗器の抵抗値の比の相対精度の誤差が無視できるものではない。更に、集積化された2個の差動増幅器A1、A2に関しても、差動増幅器の非反転入力端子+と反転入力端子−との間の入力オフセット電圧も無視できるものではない。
【0023】
従って、逆起電圧増幅部900の逆起電圧増幅電圧Voutを使用して速度検出を実行しながら磁気ヘッドをロードする以前に、抵抗比R4/R3である増幅ゲインと2個の差動増幅器A1、A2の入力オフセット電圧の各誤差を無視可能なレベルまで低下するためのキャリブレーション(校正動作)を実行する必要がある。
【0024】
図8の逆起電圧増幅部900において、レジスタ904は抵抗R1の抵抗値を校正して、レジスタ905は抵抗R3、R5の抵抗値を校正して、レジスタ906は差動増幅器A1の入力オフセット電圧を校正して、レジスタ907は差動増幅器A2の入力オフセット電圧を校正する。従って、調整シーケンサ903は4個のレジスタ904〜907に、シリアルI/Oインターフェース908を介してマイクロコンピュータ等のコントローラからキャリブレーション設定値を格納することによって、増幅ゲインと入力オフセット電圧のキャリブレーション動作を実行するものである。
【0025】
しかし、実用レベルで高精度の逆起電圧増幅電圧Voutを得るためには、4個のレジスタ904〜907はそれぞれ10ビット程度の分解能が必要で、デジタル制御の可変抵抗器として構成される必要のある3個の抵抗R1、R3、R5のチップ占有面積が極めて大きいと言う問題が本発明者等の検討により明らかとされた。一方、2個の差動増幅器A1、A2の入力オフセット電圧を無視可能なレベルまでに低下するためには、差動対トランジスタのバイアスを調整する抵抗器及び電流源回路が必要であり、この抵抗器及び電流源回路のチップ占有面積が極めて大きいと言う問題が本発明者等の検討により明らかとされた。
【0026】
一方、ボイスコイルモータ(VCM)の逆起電圧の検出に、上記特許文献1の
図1および
図2とそれに関係する開示に記載のようにアナログ/デジタル変換器(ADC)とCPUとを使用する方式を採用しても、上述した寄生抵抗RLと電流検出抵抗Rsの比RL/Rsのボイスコイルモータ(VCM)によるばらつきや周囲温度の変化による変動分を補償することが必要となる。しかし、このためにはCPUに補償のためのキャリブレーションプログラムを実行する必要があるが、CPUは上記特許文献1の
図13の専用のハードウェア回路と同等の逆起電圧の演算プログラムも実行する必要があるので、CPUのデータ処理の負担が増大すると言う問題が本発明者等の検討により明らかとされた。
【0027】
更に、下記特許文献2と下記特許文献3に記載のように、ΣΔ変調器の入力の駆動電圧指令信号とコイルの電流とコイルの寄生抵抗とから逆起電圧を演算する逆起電圧推定回路を、コイルの寄生抵抗値や制御回路の電源電圧値を保持するレジスタと乗算器と加減算器とによって構成することが可能である。しかしこの方式だけでは、上述した寄生抵抗RLと電流検出抵抗Rsの比RL/Rsのボイスコイルモータ(VCM)によるばらつきや周囲温度の変化による変動分を補償することは不可能である。
【0028】
また更に
図8に示した本発明者等によって本発明に先立って検討された半導体集積回路の第1および第2VCMドライバ出力端子VCMP、VCMNを駆動する第1および第2駆動出力回路が上述したパルス駆動モードのPWM動作を実行する場合には、PWMリャリア信号のリップル成分を除去するためのPWMキャリアリップル除去フィルタ901が必要となる。
【0029】
しかしこのPWMキャリアリップル除去フィルタ901は、PWMリャリア信号のリップル成分を大きな減衰量で抑圧するためのアナログフィルタで構成される。例えば、PWMリャリア信号のリップル成分の基本波周波数成分が100KHzで、−60dB以上の減衰量を実現するためには、極めて大きなチップ占有面積のアナログフィルタによってPWMキャリアリップル除去フィルタ901を構成しなければならないと言う問題が本発明者等の検討により明らかとされた。
【0030】
また更に、上記特許文献2と上記特許文献3とに記載されたハードディスク装置(HDD)のボイスコイルモータのコイル駆動電流をフィードバック制御する方式では、コントローラ等からの駆動電流指令値に比例する電流値を有するコイル駆動電流を流すことの可能な正常範囲を超過すると、コイル駆動電流の変化量が減少すると言う問題が本発明者等の検討によって明らかとされた。しかし、フィードバック制御によって、コイル駆動電流の変化量の減少分を補償するようにフィードバック差分補正情報が増加するので、上述した逆起電圧推定回路により演算される逆起電圧の誤差が増大して、磁気ヘッドの正確な移動速度検出が不可能となると言う大きな問題が本発明者等の検討によって明らかとされた。
【0031】
この問題が発生するメカニズムを本発明に先立って本発明者等が検討したところ、以下に説明するような問題の発生原因が明らかとされたものである。
【0032】
まず半導体集積回路の第1および第2VCMドライバ出力端子VCMP、VCMNを駆動する第1および第2駆動出力回路が上述したアナログ制御によるリニア駆動で動作する場合には、第1および第2駆動出力回路の出力電圧レベルが飽和することが問題の発生原因である。すなわち、アナログ制御によるリニア駆動で動作する第1および第2駆動出力回路の出力電圧の最大値と最小値とは電源電圧レベルと接地電圧レベルでそれぞれ決定されるので、出力電圧レベルが飽和することになる。このように、第1および第2駆動出力回路の出力電圧レベルが飽和することで、コイル駆動電流の変化量も飽和することになる。
【0033】
次に半導体集積回路の第1および第2VCMドライバ出力端子VCMP、VCMNを駆動する第1および第2駆動出力回路が上述したパルス駆動モードのPWM動作を実行する場合には、第1および第2駆動出力回路の出力パルス幅が飽和することが問題の発生原因である。すなわち、パルス駆動モードのPWM動作で動作する第1および第2駆動出力回路の出力パルス幅の最大値と最小値とはそれぞれPWMキャリア信号の周期とゼロ・パルス幅とで決定されるので、出力電圧レベルが飽和する。このように、第1および第2駆動出力回路の出力電圧レベルが飽和することで、コイル駆動電流の変化量も飽和する。
【0034】
図9は、本発明に先立って本発明者等によって検討された半導体集積回路のボイスコイルモータドライバの特性を説明する波形を示す図である。
【0035】
図9の1番目には、コントローラ等からの駆動電流指令値VCMCRNTの変化に対するハードディスク装置(HDD)のボイスコイルモータ(VCM)のコイル駆動電流Ivcmの変化が示されている。正常範囲では、コントローラ等からの駆動電流指令値VCMCRNTに比例する電流値を有するコイル駆動電流Ivcmが流れることが理解される。しかし、正常範囲を超過すると、駆動電流指令値VCMCRNTの変化に対してのコイル駆動電流Ivcmの変化量が減少するものである。
【0036】
図9の2番目には、駆動電流指令値VCMCRNTの変化に対しての半導体集積回路の第1および第2VCMドライバ出力端子VCMP、VCMNの端子間電圧VCMP−VCMNの変化が示されている。正常範囲では、コントローラ等からの駆動電流指令値VCMCRNTに比例する電圧値の端子間電圧VCMP−VCMNがボイスコイルモータ(VCM)のコイルの両端子間に供給されることが理解される。しかし、正常範囲を超過すると、駆動電流指令値VCMCRNTの変化に対しての端子間電圧VCMP−VCMNの変化量が減少するものである。この端子間電圧VCMP−VCMNは、第1および第2VCMドライバ出力端子VCMP、VCMNを駆動する第1および第2駆動出力回路がリニア駆動で動作する場合の出力電圧である。
【0037】
図9の2番目には、図示されていないが、第1および第2VCMドライバ出力端子VCMP、VCMNを駆動する第1および第2駆動出力回路が上述したパルス駆動モードのPWM動作を実行する場合には、正常範囲では、コントローラ等からの駆動電流指令値VCMCRNTに比例するパルス幅を有する出力パルスが第1および第2駆動出力回路から生成されることが理解される。しかし正常範囲を超過すると、第1および第2駆動出力回路の出力パルス幅の最大値と最小値とはそれぞれPWMキャリア信号の周期とゼロ・パルス幅とで飽和するものである。
【0038】
図9の3番目には、駆動電流指令値VCMCRNTの変化に対してのフィードバック制御によるデジタル駆動電圧指令信号DDRVの変化が示されている。ここで示されたデジタル駆動電圧指令信号DDRVは、駆動電流指令値VCMCRNTとボイスコイルモータ(VCM)の電流検出抵抗Rsによって検出されるコイル駆動電流Ivcmの情報との差分から算出される。正常範囲では、コントローラ等からの駆動電流指令値VCMCRNTに比例する値を有するデジタル駆動電圧指令信号DDRVが生成されていることが理解される。それに対して、正常範囲を超過すると、コイル駆動電流Ivcmの変化量の減少分を補償するようにデジタル駆動電圧指令信号DDRVの変化量が増加することが理解される。
【0039】
図9の4番目には、駆動電流指令値VCMCRNTの変化に対する上述した逆起電圧推定回路により演算される逆起電圧DBEMFの変化が示されている。正常範囲では、駆動電流指令値VCMCRNTと実質的に無関係に略一定の値を有する逆起電圧DBEMF、すなわち磁気ヘッドの一定速の移動速度が検出されている。しかし正常範囲を超過すると、上述のようにデジタル駆動電圧指令信号DDRVが増加するので、逆起電圧DBEMFの誤差が増大して、磁気ヘッドの正確な移動速度検出が不可能となることが理解される。
【0040】
このような課題を解決するための手段等を以下に説明するが、その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本願において開示される代表的な実施の形態の概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
【0042】
すなわち、代表的な実施の形態のモータ駆動制御装置の逆起電圧検出部(108)は、第1デジタル乗算器(1081)とデジタル減算器(1082)と第2デジタル乗算器(1083)と第1レジスタ(1084)と第2レジスタ(1085)とを含む。
【0043】
第1デジタル乗算器(1081)はアナログ・デジタル変換器(104)から生成されるデジタル駆動電流検出信号(DIVCM)と前記第1レジスタ(1084)に格納される第1ゲイン情報(GAIN1)との乗算を実行することによって、第1乗算結果(GAIN1・DIVCM)を生成する。
【0044】
デジタル減算器(1082)はデジタル制御部(100)から生成されるデジタル駆動電圧指令信号(DDRV)と第1デジタル乗算器(1081)から生成される第1乗算結果(GAIN1・DIVCM)との減算を実行することによって、減算結果(DDRV−GAIN1・DIVCM)を生成する。
【0045】
第2デジタル乗算器(1083)は、デジタル減算器(1082)から生成される減算結果と第2レジスタ(1085)に格納される第2ゲイン情報(GAIN2)との乗算を実行することによって、第2乗算結果(GAIN2・(DDRV−GAIN1・DIVCM))の情報としてのデジタル逆起電圧情報(DBIN)を生成する。
【0046】
デジタル制御部(100)から生成されるデジタル駆動電圧指令信号(DDRV)を所定の値に設定して、モータの速度および逆起電圧(Vb-emf)が実質的にゼロに維持される条件が生成可能とされる。
【0047】
この条件において、第2デジタル乗算器(1083)から生成されるデジタル逆起電圧情報(DBIN)の値を実質的にゼロとする第1ゲイン情報(GAIN1)を第1レジスタ(1084)に格納可能とされることを特徴とするものである(
図1参照)。
【発明の効果】
【0048】
本願において開示される実施の形態のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
【0049】
すなわち、本モータ駆動制御装置によれば、小さなチップ面積の半導体集積回路に集積化する際にモータの速度検出のための逆起電圧の検出精度を向上するためのキャリブレーションを可能とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0051】
1.実施の形態の概要
まず、本願において開示される代表的な実施の形態についてその概要を説明する。代表的な実施の形態の概要説明で括弧を付して参照する図面の参照符号は、それが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0052】
〔1〕代表的な実施の形態によるモータ駆動制御装置は、デジタル制御部(100)とデジタル・アナログ変換器(101)とドライバ出力部(102)と駆動電流検出増幅器(103)とアナログ・デジタル変換器(104)と逆起電圧検出部(108)とを具備する。
【0053】
前記ドライバ出力部(102)の出力端子には、モータ(VCM)と検出抵抗(Rs)との直列接続が接続可能とされる。
【0054】
前記デジタル制御部(100)は、デジタル駆動電圧指令信号(DDRV)を生成して前記デジタル・アナログ変換器(101)の入力端子に供給する。
【0055】
前記デジタル・アナログ変換器(101)は、前記デジタル制御部(100)から生成される前記デジタル駆動電圧指令信号(DDRV)に応答して、アナログ駆動電圧指令信号(ADRV)を生成する。
【0056】
前記ドライバ出力部(102)は、前記デジタル・アナログ変換器(101)から生成される前記アナログ駆動電圧指令信号(ADRV)に応答して、前記モータ(VCM)と前記検出抵抗(Rs)との前記直列接続を駆動する駆動出力信号を生成する。
【0057】
前記駆動電流検出増幅器(103)は、前記検出抵抗(Rs)に流れる駆動電流(Ivcm)に応答して、駆動電流アナログ増幅信号を生成する。
【0058】
前記アナログ・デジタル変換器(104)は、前記駆動電流検出増幅器(103)から生成される前記駆動電流アナログ増幅信号に応答して、デジタル駆動電流検出信号(DIVCM)を生成する。
【0059】
前記逆起電圧検出部(108)は、第1デジタル乗算器(1081)とデジタル減算器(1082)と第2デジタル乗算器(1083)と第1レジスタ(1084)と第2レジスタ(1085)とを含む。
【0060】
前記第1デジタル乗算器(1081)は前記アナログ・デジタル変換器(104)から生成される前記デジタル駆動電流検出信号(DIVCM)と前記第1レジスタ(1084)に格納される第1ゲイン情報(GAIN1)との乗算を実行することによって、第1乗算結果(GAIN1・DIVCM)を生成する。
【0061】
前記デジタル減算器(1082)は前記デジタル制御部(100)から生成される前記デジタル駆動電圧指令信号(DDRV)と前記第1デジタル乗算器(1081)から生成される前記第1乗算結果(GAIN1・DIVCM)との減算を実行することによって、減算結果(DDRV−GAIN1・DIVCM)を生成する。
【0062】
前記第2デジタル乗算器(1083)は、前記デジタル減算器(1082)から生成される前記減算結果と前記第2レジスタ(1085)に格納される第2ゲイン情報(GAIN2)との乗算を実行することによって、第2乗算結果(GAIN2・(DDRV−GAIN1・DIVCM))の情報としてのデジタル逆起電圧情報(DBIN)を生成する。
【0063】
前記デジタル制御部(100)から生成される前記デジタル駆動電圧指令信号(DDRV)を所定の値に設定して、前記モータの速度および逆起電圧(Vb-emf)が実質的にゼロに維持される条件が生成可能とされる。
【0064】
前記条件において、前記第2デジタル乗算器(1083)から生成される前記デジタル逆起電圧情報(DBIN)の値を実質的にゼロとする前記第1ゲイン情報(GAIN1)を前記第1レジスタ(1084)に格納可能とされることを特徴とするものである(
図1参照)。
【0065】
前記実施の形態によれば、小さなチップ面積の半導体集積回路に集積化する際にモータの速度検出のための逆起電圧の検出精度を向上するためのキャリブレーションを可能とすることができる。
【0066】
好適な実施の形態によれば、所定のサーチアルゴリズムに従って、前記デジタル逆起電圧情報(DBIN)の値を実質的にゼロとする前記第1ゲイン情報(GAIN1)が前記第1レジスタ(1084)に格納可能とされることを特徴とするものである(
図3参照)。
【0067】
他の好適な実施の形態では、前記所定のサーチアルゴリズムは、バイナリー・サーチであることを特徴とするものである(
図3参照)。
【0068】
更に他の好適な実施の形態によれば、前記デジタル制御部(100)は、デジタル減算回路(1002)とクランプ回路(1007)を含む。
【0069】
前記デジタル減算回路(1002)は、外部から供給されるデジタル駆動電流指令値(VCMCRNT)と前記アナログ・デジタル変換器(104)から生成される前記デジタル駆動電流検出信号(DIVCM)との差分情報を生成するものである。
【0070】
前記クランプ回路(1007)は、前記デジタル減算回路(1002)から生成される前記差分情報に応答して前記デジタル駆動電圧指令信号(DDRV)を生成する。
【0071】
前記クランプ回路(1007)は、前記デジタル駆動電圧指令信号の生成の際に前記デジタル駆動電流指令値(VCMCRNT)の変化に対する前記駆動電流(Ivcm)の変化量の減少に起因する前記デジタル駆動電圧指令信号(DDRV)の増大と減少とを所定の最大値(Vmax)と所定の最小値(Vmini)とでそれぞれクランプすることを特徴とする(
図4参照)。
【0072】
より好適な実施の形態は、前記ドライバ出力部(102)は、PWM変調器(1024)から生成されるPWMキャリア信号に応答して前記駆動出力信号を生成するPWM制御によるパルス駆動動作モードを実行する。
【0073】
前記逆起電圧検出部(108)は、前記第2デジタル乗算器(1083)の出力端子に接続されたデジタルフィルタ(1087)を更に含む。
【0074】
前記デジタルフィルタ(1087)は、前記第2デジタル乗算器(1083)の前記出力端子から生成される前記デジタル逆起電圧情報(DBIN)に含まれる前記PWMキャリア信号のリップル成分を所定の減衰量で抑圧したデジタル逆起電圧信号(DBEMF)を生成するPWMキャリアリップル除去フィルタとして機能することを特徴とする(
図5参照)。
【0075】
他のより好適な実施の形態では、前記PWMキャリアリップル除去フィルタとして機能する前記デジタルフィルタ(1087)は、デジタルローパスフィルタ(10871、10872)と、ダウンサンプラー(10873)と、サンプリングパルス生成器(10874)とを含む。
【0076】
前記デジタルローパスフィルタ(10871、10872)の入力端子に前記デジタル逆起電圧情報(DBIN)が供給され、前記デジタルローパスフィルタの出力端子は前記ダウンサンプラー(10873)の入力端子に接続される。
【0077】
前記サンプリングパルス生成器(10874)の入力端子に前記PWMキャリア信号を生成するベース信号としてのPWMクロック信号(PWMCLK)が前記PWM変調器(1024)から供給されることで、前記サンプリングパルス生成器(10874)は前記PWMクロック信号に同期したサンプリングクロック(SCLK)を生成する。
【0078】
前記ダウンサンプラー(10873)のサンプリング制御端子に前記サンプリングパルス生成器(10874)から生成される前記サンプリングクロック(SCLK)が供給されることによって、前記ダウンサンプラーの出力端子から前記デジタル逆起電圧信号(DBEMF)が生成されることを特徴とする(
図5参照)。
【0079】
更に他のより好適な実施の形態では、前記デジタルフィルタ(1087)の前記デジタルローパスフィルタ(10871、10872)は、時系列で供給される複数の入力データの加算平均によってデジタルローパス出力信号を生成する移動平均フィルタ(10872)を含むことを特徴とするものである(
図5参照)。
【0080】
別のより好適な実施の形態では、前記ドライバ出力部(102)は、プリドライバ(1021)と第1ドライバ出力増幅器(1025)と第2ドライバ出力増幅器(1026)とを含む。
【0081】
前記プリドライバ(1021)の入力端子には、前記デジタル・アナログ変換器(101)から生成される前記アナログ駆動電圧指令信号(ADRV)が供給される。
【0082】
前記プリドライバ(1021)の出力端子は前記第1ドライバ出力増幅器(1025)の入力端子と前記第2ドライバ出力増幅器(1026)の入力端子に接続され、前記第1ドライバ出力増幅器(1025)の出力端子と前記第2ドライバ出力増幅器(1026)の出力端子とは前記モータ(VCM)と前記検出抵抗(Rs)の前記直列接続の一端と他端とにそれぞれ接続可能とされる。
【0083】
前記パルス駆動動作モードでは、前記第1ドライバ出力増幅器(1025)と前記第2ドライバ出力増幅器(1026)とは、前記プリドライバ(1021)の前記出力端子の電圧レベルに比例するパルス幅を有する駆動パルスを生成する。
【0084】
前記パルス駆動動作モードと異なったリニア駆動モードでは、前記第1ドライバ出力増幅器(1025)と前記第2ドライバ出力増幅器(1026)とは、前記プリドライバ(1021)の前記出力端子の電圧レベルに比例する増幅出力信号を生成することを特徴とするものである(
図1参照)。
【0085】
更に別のより好適な実施の形態によれば、前記パルス駆動動作モードでは、前記第1ドライバ出力増幅器(1025)と前記第2ドライバ出力増幅器(1026)とがD級増幅動作を実行するように前記第1ドライバ出力増幅器(1025)と前記第2ドライバ出力増幅器(1026)の各トランジスタには所定のバイアス電圧が供給される。
【0086】
前記リニア駆動モードでは、前記第1ドライバ出力増幅器(1025)と前記第2ドライバ出力増幅器(1026)とがAB級増幅動作を実行するように前記第1ドライバ出力増幅器(1025)と前記第2ドライバ出力増幅器(1026)の前記各トランジスタには前記所定のバイアス電圧よりも大きなバイアス電圧が供給されることを特徴とする(
図1参照)。
【0087】
具体的な実施の形態では、前記デジタル制御部(100)は、デジタル乗算器によって構成されたデジタル増幅器(1001)と、第3デジタル乗算器(1003)と、第4デジタル乗算器(1004)と、デジタル積分器(1005)と、デジタル加算器(1006)とを含む。
【0088】
前記デジタル増幅器(1001)は、前記デジタル駆動電流指令値(VCMCRNT)をデジタル増幅して前記デジタル減算回路(1002)に供給する。
【0089】
前記第3デジタル乗算器(1003)は、前記デジタル減算回路(1002)から生成される前記差分情報と積分ゲイン情報(IGAIN)との乗算を実行することによって第3乗算結果を生成して前記デジタル積分器(1005)に供給する。
【0090】
前記第4デジタル乗算器(1004)は、前記デジタル減算回路(1002)から生成される前記差分情報と比例ゲイン情報(PGAIN)との乗算を実行することによって、第4乗算結果を生成する。
【0091】
前記デジタル加算器(1006)は、前記デジタル積分器(1005)の出力信号と前記第4デジタル乗算器(1004)から生成される前記第4乗算結果との加算を実行することによってデジタル差分駆動電流比例積分情報が生成して前記クランプ回路(1007)の入力端子に供給することを特徴とする(
図1参照)。
【0092】
他の具体的な実施の形態は、前記デジタル・アナログ変換器(101)は、ΣΔ型デジタル・アナログ変換器であることを特徴とするものである(
図1参照)。
【0093】
より具体的な実施の形態では、前記アナログ・デジタル変換器(104)は、オーバー・サンプリングΣΔ型アナログ・デジタル変換器であることを特徴とするものである(
図1参照)。
【0094】
他のより具体的な実施の形態によるモータ制御装置は、前記オーバー・サンプリングΣΔ型アナログ・デジタル変換器(104)の出力端子と前記デジタル制御部(100)の前記デジタル減算回路(1002)および前記逆起電圧検出部(108)の前記第1デジタル乗算器(1081)との間に接続されたデシメーションフィルタ(105)を更に具備する。
【0095】
前記デシメーションフィルタ(105)は、前記オーバー・サンプリングΣΔ型アナログ・デジタル変換器の変換出力信号の間引き処理と前記オーバー・サンプリングΣΔ型アナログ・デジタル変換器の高周波領域の量子化雑音を抑圧するローパスフィルタ処理とを実行することを特徴とするものである(
図1参照)。
【0096】
最も具体的な実施の形態によるモータ制御装置は、前記オーバー・サンプリングΣΔ型アナログ・デジタル変換器(104)の前記出力端子と前記デジタル制御部(100)の前記デジタル減算回路(1002)および前記逆起電圧検出部(108)の前記第1デジタル乗算器(1081)との間に接続されたオフセットキャリブレーション部(106)を更に具備する。
【0097】
前記オフセットキャリブレーション部(106)は、校正レジスタ(1061)とオフセットデジタル減算器(1062)とを含む。
【0098】
前記検出抵抗(Rs)の前記駆動電流(Ivcm)が実質的にゼロに設定された状態で、前記駆動電流検出増幅器(103)と前記アナログ・デジタル変換器(104)と前記デシメーションフィルタ(105)との誤差情報が、前記校正レジスタ(1061)に格納される。
【0099】
通常動作では、前記オフセットデジタル減算器(1062)は、前記デシメーションフィルタ(105)の出力信号から前記校正レジスタ(1061)に格納された前記誤差情報を減算することで、前記デジタル駆動電流検出信号(DIVCM)を生成することを特徴とするものである(
図1参照)。
【0100】
他の最も具体的な実施の形態では、前記モータは、ハードディスク装置(HDD)の磁気ヘッドを移動するボイスコイルモータ(VCM)であることを特徴とするものである(
図1参照)。
【0101】
更に他の最も具体的な実施の形態では、前記デジタル制御部と前記デジタル・アナログ変換器と前記ドライバ出力部と前記駆動電流検出増幅器と前記アナログ・デジタル変換器と前記デシメーションフィルタと前記オフセットキャリブレーション部と前記逆起電圧検出部とは、半導体集積回路の半導体チップに集積化されたことを特徴とする(
図1参照)。
【0102】
〔2〕別の観点の代表的な実施の形態は、デジタル制御部(100)とデジタル・アナログ変換器(101)とドライバ出力部(102)と駆動電流検出増幅器(103)とアナログ・デジタル変換器(104)と逆起電圧検出部(108)とを具備するモータ駆動制御装置の動作方法である。
【0103】
前記ドライバ出力部(102)の出力端子には、モータ(VCM)と検出抵抗(Rs)との直列接続が接続可能とされる。
【0104】
前記デジタル制御部(100)は、デジタル駆動電圧指令信号(DDRV)を生成して前記デジタル・アナログ変換器(101)の入力端子に供給する。
【0105】
前記デジタル・アナログ変換器(101)は、前記デジタル制御部(100)から生成される前記デジタル駆動電圧指令信号(DDRV)に応答して、アナログ駆動電圧指令信号(ADRV)を生成する。
【0106】
前記ドライバ出力部(102)は、前記デジタル・アナログ変換器(101)から生成される前記アナログ駆動電圧指令信号(ADRV)に応答して、前記モータ(VCM)と前記検出抵抗(Rs)との前記直列接続を駆動する駆動出力信号を生成する。
【0107】
前記駆動電流検出増幅器(103)は、前記検出抵抗(Rs)に流れる駆動電流(Ivcm)に応答して、駆動電流アナログ増幅信号を生成する。
【0108】
前記アナログ・デジタル変換器(104)は、前記駆動電流検出増幅器(103)から生成される前記駆動電流アナログ増幅信号に応答して、デジタル駆動電流検出信号(DIVCM)を生成する。
【0109】
前記逆起電圧検出部(108)は、第1デジタル乗算器(1081)とデジタル減算器(1082)と第2デジタル乗算器(1083)と第1レジスタ(1084)と第2レジスタ(1085)とを含む。
【0110】
前記第1デジタル乗算器(1081)は前記アナログ・デジタル変換器(104)から生成される前記デジタル駆動電流検出信号(DIVCM)と前記第1レジスタ(1084)に格納される第1ゲイン情報(GAIN1)との乗算を実行することによって、第1乗算結果(GAIN1・DIVCM)を生成する。
【0111】
前記デジタル減算器(1082)は前記デジタル制御部(100)から生成される前記デジタル駆動電圧指令信号(DDRV)と前記第1デジタル乗算器(1081)から生成される前記第1乗算結果(GAIN1・DIVCM)との減算を実行することによって、減算結果(DDRV−GAIN・DIVCM)を生成する。
【0112】
前記第2デジタル乗算器(1083)は、前記デジタル減算器(1082)から生成される前記減算結果と前記第2レジスタ(1085)に格納される第2ゲイン情報(GAIN2)との乗算を実行することによって、第2乗算結果(GAIN2・(DDRV−GAIN・DIVCM))の情報としてのデジタル逆起電圧情報(DBIN)を生成する。
【0113】
前記デジタル制御部(100)から生成される前記デジタル駆動電圧指令信号(DDRV)を所定の値に設定して、前記モータの速度および逆起電圧(Vb-emf)が実質的にゼロに維持される条件が生成される。
【0114】
前記条件において、前記第2デジタル乗算器(1083)から生成される前記デジタル逆起電圧情報(DBIN)の値を実質的にゼロとする前記第1ゲイン情報(GAIN1)を前記第1レジスタ(1084)に格納されることを特徴とするものである(
図1参照)。
【0115】
前記実施の形態によれば、小さなチップ面積の半導体集積回路に集積化する際にモータの速度検出のための逆起電圧の検出精度を向上するためのキャリブレーションを可能とすることができる。
【0116】
2.実施の形態の詳細
次に、実施の形態について更に詳述する。尚、発明を実施するための最良の形態を説明するための全図において、前記の図と同一の機能を有する部品には同一の符号を付して、その繰り返しの説明は省略する。
【0117】
[実施の形態1]
《半導体集積回路の構成の概要》
図1は、ハードディスク装置(HDD)の磁気ヘッドを移動するボイスコイルモータ(VCM)を駆動するためのボイスコイルモータドライバICと呼ばれる実施の形態1による半導体集積回路ICの構成を示した図である。具体的には、
図1に示すドライバICは、磁気ディスクを高速回転するスピンドルモータを駆動するためのスピンドルモータドライバとボイスコイルモータを駆動するためのボイスコイルモータドライバとを集積化したコンボ(COMBO)ドライバと呼ばれる高集積密度の半導体集積回路である。
【0118】
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICの半導体チップには、デジタル差分生成・位相補償制御部100とデジタル・アナログ変換器101とドライバ出力部102と駆動電流検出増幅器103とアナログ・デジタル変換器104とデシメーションフィルタ105とオフセットキャリブレーション部106とシリアル入出力インターフェース107とが集積化されている。
【0119】
《逆起電圧検出部および校正動作の概要》
特に、
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICの半導体チップには、磁気ヘッドのロード時の移動速度検出のためボイスコイルモータ(VCM)に発生する逆起電圧を検出する逆起電圧検出部108が配置されている。
【0120】
逆起電圧検出部108は、デジタル駆動電圧指令信号DDRVと、デジタル駆動電流検出信号DIVCMと、電流検出抵抗Rsとボイスコイルモータ(VCM)のコイルLの寄生抵抗RLとの加算値に対応する第1ゲインGAIN1と、逆起電圧検出感度を決定する第2ゲインGAIN2とから、下記(2式)に従ってデジタル逆起電圧情報DBINを算出する。
【0122】
逆起電圧検出感度を決定する第2ゲインGAIN2は
図1の逆起電圧検出部108の内部の第2レジスタ1085のレジスタ設定値で設定可能であり、抵抗の加算値に対応する第1ゲインGAIN1も
図1の逆起電圧検出部108の内部の第1レジスタ1084のレジスタ設定値で設定可能である。更に、デジタル駆動電圧指令信号DDRVはデジタル差分生成・位相補償制御部100の出力端子から生成され、デジタル駆動電流検出信号DIVCMは電流検出抵抗Rsと駆動電流検出増幅器103とアナログ・デジタル変換器104とデシメーションフィルタ105とオフセットキャリブレーション部106とによって生成される。
【0123】
上記(2式)は、下記(3式)に示すように、実際のボイスコイルモータ(VCM)に実際に発生する実際の逆起電圧Vb-emfが、ドライバ出力部102の出力駆動電圧Vdriveと電流検出抵抗Rsと寄生抵抗RLとボイスコイルモータ(VCM)の駆動電流Ivcmとにより決定されることから算出されたものである。
【0125】
更に
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICにおいては、電流検出抵抗Rsおよび寄生抵抗RLの抵抗値のボイスコイルモータ(VCM)によるバラツキや周囲温度の変化等による変動によるデジタル逆起電圧情報DBINの変動を補償するためのキャリブレーション(校正)動作が磁気ヘッドのロード動作に先行して実行される。その結果、
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICによれば、磁気ヘッドの速度検出のための逆起電圧の検出精度が向上されるものである。
【0126】
一方、上記(3式)において、ドライバ出力部102が所定の出力駆動電圧Vdriveを出力してボイスコイルモータ(VCM)の電流検出抵抗Rsと寄生抵抗RLに駆動電流Ivcmが流れている状態で、第1項の大きさと第2項の大きさとが等しくなり、ボイスコイルモータ(VCM)の逆起電圧Vb-emfがゼロとなる条件が成立する。また反対に、ボイスコイルモータ(VCM)の逆起電圧Vb-emfがゼロの条件では、上記(3式)の第1項の大きさと第2項の大きさとが等しくなる。
【0127】
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICのために、コイルLと寄生抵抗RLを有するボイスコイルモータ(VCM)と電流検出抵抗Rsとが、実際にドライバ出力部102の第1および第2VCMドライバ出力端子VCMP、VCMNに接続される。
【0128】
キャリブレーション動作の期間に、上記(2式)のデジタル逆起電圧情報DBINを反映したデジタル逆起電圧信号DBEMFの値は、シリアル入出力インターフェース107を介して
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICの外部のマイクロコンピュータ等のコントローラにより観測される。一方、ボイスコイルモータ(VCM)の逆起電圧Vb-emfがゼロの条件、すなわち、磁気ヘッドの移動速度がゼロの条件は、磁気ヘッドをランプ機構に退避・停止することで実現する。磁気ヘッドがランプ機構に退避・停止した状態において、ドライバ出力部102からの出力駆動電圧Vdriveが電流検出抵抗Rsと寄生抵抗RLとボイスコイルモータ(VCM)の直列接続に印加され、この直列接続には駆動電流Ivcmが流れるものとなる。ドライバ出力部102が所定の出力駆動電圧Vdriveを出力している条件で、電流検出抵抗Rsと寄生抵抗RLの抵抗値の変動に無関係に上記(3式)の逆起電圧Vb-emfがゼロに維持される理由は、次の通りである。すなわち、電流検出抵抗Rsとボイスコイルモータ(VCM)のコイルLの寄生抵抗RLの抵抗加算値と駆動電流Ivcmとが反比例の関係にあり、抵抗加算値と駆動電流Ivcmとの乗算値が所定の出力駆動電圧Vdriveの一定値に維持されるものである。
【0129】
このように磁気ヘッドがランプ機構に退避・停止した状態のボイスコイルモータ(VCM)の駆動電流Ivcmが、
図1の実施の形態1による半導体集積回路ICの電流検出抵抗Rsと駆動電流検出増幅器103とアナログ・デジタル変換器104とデシメーションフィルタ105とオフセットキャリブレーション部106とによって検出される。駆動電流Ivcmの検出結果であるデジタル駆動電流検出信号DIVCMは、オフセットキャリブレーション部106から逆起電圧検出部108に供給される。一方、デジタル駆動電圧指令信号DDRVは、デジタル差分生成・位相補償制御部100から逆起電圧検出部108に供給される。従って、逆起電圧検出部108は、デジタル駆動電圧指令信号DDRVとデジタル駆動電流検出信号DIVCMとを使用して、上記(2式)に従ってデジタル逆起電圧情報DBINを算出する。
図1の実施の形態1による半導体集積回路ICの外部のマイクロコンピュータ等のコントローラは、逆起電圧検出部108により算出されるデジタル逆起電圧信号DBEMFの値をシリアル入出力インターフェース107から観測している。すなわち、観測されるデジタル逆起電圧信号DBEMFの値が略ゼロとなるように、
図1の逆起電圧検出部108の内部の第1レジスタ1084に抵抗の加算値に対応する第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値を設定する。一方、デジタル差分生成・位相補償制御部100から生成されるデジタル駆動電圧指令信号DDRVは、ドライバ出力部102が出力する所定の出力駆動電圧Vdriveを決定するための所定のデジタル値を有している。
【0130】
従って、上記(2式)のデジタル逆起電圧信号DBEMFの値が略ゼロに維持されるように、加算値に対応する第1ゲインGAIN1とデジタル駆動電流検出信号DIVCMとが反比例の関係にあり、第1ゲインGAIN1とデジタル駆動電流検出信号DIVCMとの乗算値が所定のデジタル駆動電圧指令信号DDRVの一定値に維持されるものである。
【0131】
以上のキャリブレーション動作によってボイスコイルモータ(VCM)の電流検出抵抗Rsと寄生抵抗RLの抵抗値のバラツキや周囲温度の変化による変動が駆動電流Ivcmの変化とデジタル駆動電流検出信号DIVCMの変化に反映されて、デジタル駆動電流検出信号DIVCMの変化による影響を相殺するように第1ゲインGAIN1を設定可能となるものである。
【0132】
このようにして、
図1の逆起電圧検出部108の内部の第1レジスタ1084の第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値のキャリブレーション動作が完了した後、
図1の逆起電圧検出部108の内部の第2レジスタ1085の第2ゲインGAIN2のレジスタ設定値のキャリブレーション動作を実行する。第2ゲインGAIN2のレジスタ設定値は逆起電圧検出感度を決定するものであり、シリアル入出力インターフェース107を介してデジタル逆起電圧信号DBEMFが供給される外部のマイクロコンピュータ等のコントローラの入力ダイナミックレンジ等を考慮して設定される。
【0133】
更に、
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICでは、上述した逆起電圧検出部108の第1ゲインGAIN1および第2ゲインGAIN2のキャリブレーション動作に先行して、駆動電流検出増幅器103とアナログ・デジタル変換器104とデシメーションフィルタ105の誤差を低減するためのキャリブレーション動作が実行される。この動作を実行するためにボイスコイルモータ(VCM)の駆動電流Ivcmの電流値がゼロに制御され、電流検出抵抗Rsの両端子間電圧が2個の電流検出端子RSINP、RSINNを介して駆動電流検出増幅器103の差動入力端子に供給される。この状態における駆動電流検出増幅器103の誤差増幅出力信号とアナログ・デジタル変換器104の誤差A/D変換信号とデシメーションフィルタ105の誤差デジタルフィルタ出力信号の全ての誤差情報は、オフセットキャリブレーション部106の校正レジスタ1061に格納可能とされる。キャリブレーションイネーブル信号CALENAに応答して、上述の全ての誤差情報はデシメーションフィルタ105からオフセットキャリブレーション部106の校正レジスタ1061に格納され保持される。
【0134】
その後の駆動電流検出動作において、オフセットキャリブレーション部106の校正レジスタ1061に保持された誤差情報がデジタル減算器1062に供給されて、デジタル減算器1062において全ての通常検出情報から校正レジスタ1061の誤差情報が減算される。この全ての通常検出情報は、駆動電流検出増幅器103の通常増幅出力信号とアナログ・デジタル変換器104の通常A/D変換信号とデシメーションフィルタ105の通常デジタルフィルタ出力信号の全てを含むものである。オフセットキャリブレーション部106のデジタル減算器1062の減算出力信号は、デジタル乗算器によって構成されたデジタル増幅器1063によってデジタル増幅されることによって、デジタル増幅器1063の出力からデジタル駆動電流検出信号DIVCMが生成される。従って、オフセットキャリブレーション部106のデジタル増幅器1063の出力から生成されるデジタル駆動電流検出信号DIVCMに含まれる誤差成分を、十分に低減することが可能となる。
【0135】
《半導体集積回路の詳細な構成》
以下に、
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICの詳細な構成について、説明する。
【0136】
《デジタル差分生成・位相補償制御部》
デジタル差分生成・位相補償制御部100は、デジタル乗算器により構成されたデジタル増幅器1001と、デジタル減算器1002と、2個のデジタル乗算器1003、1004と、デジタル積分器1005と、デジタル加算器1006と、デジタルクランプ回路1007とを含んでいる。
【0137】
このデジタル差分生成・位相補償制御部100は、コントローラから供給されるデジタル駆動電流指令値VCMCRNTの指令情報と駆動電流検出増幅器103のボイスコイルモータ駆動電流情報から生成されるデジタル駆動電流検出信号DIVCMのフィードバック情報との差分情報を生成して、ドライバ出力部102の入力に供給される駆動電圧指令信号DDRV、ADRVを生成する。
【0138】
デジタル乗算器により構成されたデジタル増幅器1001は、シリアル入出力インターフェース107を介して外部のマイクロコンピュータ等のコントローラから供給されるデジタル駆動電流指令値VCMCRNTをデジタル増幅する。デジタル増幅器1001によってデジタル増幅されたデジタル駆動電流指令値VCMCRNTはデジタル減算器1002の一方の入力端子に供給され、オフセットキャリブレーション部106のデジタル増幅器1063から生成されるデジタル駆動電流検出信号DIVCMはデジタル減算器1002の他方の入力端子に供給される。その結果、デジタル減算器1002の出力端子から生成されるデジタル差分駆動電流情報が、デジタル乗算器1003の一方の入力端子とデジタル乗算器1004の一方の入力端子とに供給される。
【0139】
シリアル入出力インターフェース107の2個の制御レジスタには外部のマイクロコンピュータ等のコントローラから積分ゲイン情報IGAINと比例ゲイン情報PGAINとが事前に格納されている。従って、シリアル入出力インターフェース107からデジタル乗算器1003の他方の入力端子とデジタル乗算器1004の他方の入力端子とには、積分ゲイン情報IGAINと比例ゲイン情報PGAINとがそれぞれ供給される。その結果、デジタル乗算器1003はデジタル減算器1002のデジタル差分駆動電流情報とシリアル入出力インターフェース107の積分ゲイン情報IGAINとの乗算を実行して、その乗算結果をデジタル積分器1005の入力端子に供給する。更にデジタル乗算器1004はデジタル減算器1002のデジタル差分駆動電流情報とシリアル入出力インターフェース107の比例ゲイン情報PGAINの乗算を実行して、その乗算結果をデジタル加算器1006の一方の入力端子に供給する。またデジタル加算器1006の他方の入力端子にはデジタル積分器1005の出力端子からデジタル差分駆動電流積分情報が供給され、デジタル加算器1006の一方の入力端子にデジタル乗算器1004の出力端子からデジタル差分駆動電流比例情報が供給されている。従って、デジタル加算器1006の出力端子からはデジタル差分駆動電流比例積分情報が生成され、この比例積分情報はデジタルクランプ回路1007の入力端子に供給される。
【0140】
デジタルクランプ回路1007は、
図9で説明した正常範囲からの逸脱に起因するデジタル駆動電圧指令信号DDRVの増大によって逆起電圧検出部108で算出されるデジタル逆起電圧信号DBEMFの誤差の増大を軽減する機能を有する。すなわち、デジタルクランプ回路1007は、シリアル入出力インターフェース107を介して外部のマイクロコンピュータ等のコントローラから供給されるクランプイネーブル信号CLMPENに応答して、デジタル駆動電圧指令信号DDRVの増大を防止するためのクランプ動作を実行する。デジタルクランプ回路1007によるクランプ動作の実行によって、デジタルクランプ回路1007から生成されるデジタル駆動電圧指令信号DDRVの増大と減少とはそれぞれ所定の最大値と所定の最小値でクランプされる。このデジタルクランプ回路1007のクランプ動作の所定の最大値と所定の最小値とは、それぞれデジタルクランプ回路1007の正常範囲のリニア動作特性で得られるデジタル駆動電圧指令信号DDRVの最大値と最小値とである。
【0141】
デジタル差分生成・位相補償制御部100のデジタルクランプ回路1007から生成されるデジタル駆動電圧指令信号DDRVは、デジタル・アナログ変換器101の入力端子と逆起電圧検出部108のデジタル減算器1082に供給される。
【0142】
《デジタル・アナログ変換器》
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICでは、デジタル差分生成・位相補償制御部100のデジタルクランプ回路1007から生成されるデジタル駆動電圧指令信号DDRVは、デジタル・アナログ変換器101によってアナログ駆動電圧指令信号ADRVに変換されてドライバ出力部102の入力端子に供給される。
【0143】
このデジタル・アナログ変換器101には、高速で高分解能のD/A変換が可能なΣΔ型デジタル・アナログ変換器が使用されている。ΣΔ型デジタル・アナログ変換器の構成回路の大部分がデジタル回路であるので、半導体集積回路ICの微細化半導体製造プロセスによって、低消費電力と高速化とを実現することが可能である。更に、ΣΔ型デジタル・アナログ変換器では、ΣΔ変調によって変換出力信号と入力信号の差分が生成され、この差分が積分され、この積分値が最小となるようにフィードバック処理が実行される。その結果、ノイズ・シェーピング効果と呼ばれるように、ΣΔ型デジタル・アナログ変換器の比較器の出力に含まれる量子化雑音は高周波数へシフトするので、高いS/N比を実現することが可能である。
【0144】
《ドライバ出力部》
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICでは、ドライバ出力部102はデジタル・アナログ変換器101からのアナログ駆動電圧指令信号ADRVに応答して、第1VCMドライバ出力端子VCMPと第2VCMドライバ出力端子VCMNの間に接続された電流検出抵抗Rsとボイスコイルモータ(VCM)とを駆動するものである。尚、ボイスコイルモータ(VCM)は、コイルLと寄生抵抗RLとを直列に含んだものである。
【0145】
図1に示すように、ドライバ出力部102は、プリドライバ1021と帰還容量1022と帰還抵抗1023とPWM変調器1024と第1VCMドライバ出力増幅器1025と第2VCMドライバ出力増幅器1026と帰還増幅器1027とによって構成されている。
【0146】
プリドライバ1021の非反転入力端子+にはデジタル・アナログ変換器101からのアナログ駆動電圧指令信号ADRVが供給されて、プリドライバ1021の反転入力端子−には帰還容量1022と帰還抵抗1023とを介して帰還増幅器1027の帰還出力信号が供給される。プリドライバ1021の出力信号はPWM変調器1024の入力端子に接続され、PWM変調器1024の出力端子は第1VCMドライバ出力増幅器1025の第1入力端子In1と第2VCMドライバ出力増幅器1026の第1入力端子In1とに接続されている。更にプリドライバ1021の出力信号は、第1VCMドライバ出力増幅器1025の第2入力端子In2と第2VCMドライバ出力増幅器1026の第2入力端子In2とに供給される。
【0147】
また、第1VCMドライバ出力増幅器1025の出力端子は第1VCMドライバ出力端子VCMPと帰還増幅器1027の反転入力端子−とに接続され、第2VCMドライバ出力増幅器1026の出力端子は第2VCMドライバ出力端子VCMNと帰還増幅器1027の非反転入力端子+に接続されている。
【0148】
更に、第1VCMドライバ出力増幅器1025と第2VCMドライバ出力増幅器1026には、シリアル入出力インターフェース107を介して外部のマイクロコンピュータ等のコントローラからPWM動作イネーブル信号PWMENAが供給される。
【0149】
ハイレベルのPWM動作イネーブル信号PWMENAが供給される場合に、第1VCMドライバ出力増幅器1025と第2VCMドライバ出力増幅器1026とは、PWM変調器1024から第1入力端子In1に供給される三角波PWMキャリア信号とプリドライバ1021から第2入力端子In2に供給されるプリドライバ出力信号に応答する。従って、第1VCMドライバ出力増幅器1025と第2VCMドライバ出力増幅器1026とは、プリドライバ1021のプリドライバ出力信号の電圧レベルに比例するパルス幅を有する駆動パルス出力信号を生成する。その際に、第1VCMドライバ出力増幅器1025と第2VCMドライバ出力増幅器1026の増幅トランジスタにハイレベルのPWM動作イネーブル信号PWMENAに応答して小さなバイアス電圧が供給されるので、増幅トランジスタはD級増幅動作を実行して増幅トランジスタの消費電力が低減されることが可能となる。
【0150】
尚、第1VCMドライバ出力増幅器1025と第2VCMドライバ出力増幅器1026とから逆位相の駆動パルス出力信号が生成され、ボイスコイルモータ(VCM)の両端子はこの逆位相の駆動パルス出力信号により駆動される。この駆動パルス幅が変化するPWM制御によるパルス駆動モードは、磁気ヘッドの移動駆動量の大きい場合に好適なものとなる。
【0151】
ローレベルのPWM動作イネーブル信号PWMENAが供給される場合には、第1VCMドライバ出力増幅器1025と第2VCMドライバ出力増幅器1026とは、プリドライバ1021のプリドライバ出力信号の電圧レベルに比例する増幅出力信号を生成するリニア駆動モードを実行する。従って、この場合には、第1VCMドライバ出力増幅器1025と第2VCMドライバ出力増幅器1026とは、PWM変調器1024から第1入力端子In1に供給される三角波PWMキャリア信号に対して、非応答となる。その際に、第1VCMドライバ出力増幅器1025と第2VCMドライバ出力増幅器1026の増幅トランジスタにはローレベルのPWM動作イネーブル信号PWMENAに応答して大きなバイアス電圧が供給され、増幅トランジスタはAB級増幅動作を実行して増幅トランジスタの増幅信号歪みが低減されることが可能となる。
【0152】
尚、第1VCMドライバ出力増幅器1025と第2VCMドライバ出力増幅器1026とからは逆位相の線形増幅出力信号が生成されて、ボイスコイルモータ(VCM)の両端子はこの逆位相の線形増幅出力信号によって駆動される。この増幅振幅が変化するアナログ制御によるリニア駆動モードは、磁気ヘッドの移動駆動量の小さい場合に好適なものとなる。
【0153】
図1に示したドライバ出力部102に含まれたプリドライバ1021と帰還容量1022と帰還抵抗1023と帰還増幅器1027とは、ドライバ出力部102の増幅精度を向上する負帰還ループとして機能する。第1VCMドライバ出力増幅器1025と第2VCMドライバ出力増幅器1026とがパルス駆動モードとリニア駆動モードとのいずれで動作する場合も、この負帰還ループが機能する。すなわち、帰還増幅器1027は第1VCMドライバ出力増幅器1025の出力端子と第2VCMドライバ出力増幅器1026の出力端子との間の端子間増幅電圧を検出して、検出した端子間増幅電圧をプリドライバ1021の反転入力端子−に供給する。プリドライバ1021の非反転入力端子+にはデジタル・アナログ変換器101からのアナログ駆動電圧指令信号ADRVが供給されているので、プリドライバ1021の反転入力端子−の電圧情報はプリドライバ1021の非反転入力端子+の電圧情報と一致するように負帰還ループが機能する。従って、プリドライバ1021の非反転入力端子+のアナログ駆動電圧指令信号ADRVとプリドライバ1021の反転入力端子−に伝達される第1および第2のVCMドライバ出力増幅器1025、1026の両出力端子間増幅電圧とが一致するものとなる。尚、帰還容量1022と帰還抵抗1023とは、負帰還ループの安定性を向上するための位相補償回路として機能する。
【0154】
《駆動電流検出増幅部》
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICでは、駆動電流検出増幅器103の差動入力端子に2個の電流検出端子RSINP、RSINNを介して電流検出抵抗Rsの両端子間電圧が供給される。一方の電流検出端子RSINPは抵抗1032を介して駆動電流検出増幅部103の差動増幅器1031の非反転入力端子+に接続され、この非反転入力端子+には抵抗1033を介して基準電圧V
REFが供給される。他方の電流検出端子RSINNは抵抗1034を介して駆動電流検出増幅部103の差動増幅器1031の反転入力端子−に接続され、この反転入力端子−は抵抗1035を介して差動増幅器1031の出力端子に接続される。
【0155】
従って、駆動電流検出増幅器103は、ボイスコイルモータ(VCM)に直列接続された電流検出抵抗Rsに流れるコイル駆動電流Ivcmの電流値を検出する。このボイスコイルモータ(VCM)の駆動電流情報は、デジタル差分生成・位相補償制御部100へのデジタル駆動電流検出信号DIVCMのフィードバック情報として使用される一方、逆起電圧検出部108でのデジタル逆起電圧情報DBINの算出にも使用されるものである。
【0156】
《アナログ・デジタル変換器》
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICでは、駆動電流検出増幅器103の出力端子からのアナログ増幅出力信号はアナログ・デジタル変換器104によってデジタル電流検出信号に変換されてデシメーションフィルタ105の入力端子に供給される。
【0157】
このアナログ・デジタル変換器104には、折り返し雑音と量子化雑音とを低減でき、更に回路規模の小さいと言う特徴を持ったオーバー・サンプリングΣΔ型アナログ・デジタル変換器が使用されている。このΣΔ型アナログ・デジタル変換器は、アナログ減算器とアナログ積分器と比較器と遅延回路と1ビットローカルデジタル・アナログ変換器によって構成できるので、回路規模を低減することが可能となる。更にΣΔ型アナログ・デジタル変換器でも、差分生成と差分積分と積分値フィードバック処理とが実行されるので、ノイズ・シェーピング効果によって高いS/N比を実現することが可能である。
【0158】
《デシメーションフィルタ》
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICのデシメーションフィルタ105は、上述したオーバー・サンプリングΣΔ型アナログ・デジタル変換器104によって高くなったサンプリングレートを適度なサンプリングレートまで落とすための間引き処理を実行する。またこのデシメーションフィルタ105は、ΣΔ型アナログ・デジタル変換器104によるノイズ・シェーピング効果により低周波領域の量子化雑音が減少した分、増大した高周波領域の量子化雑音を抑圧するためのローパスフィルタとして機能する。従って、このデシメーションフィルタ105は、デジタルフィルタによって構成されるが、ローパスフィルタと間引き回路とから構成される。
【0159】
《オフセットキャリブレーション部》
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICのオフセットキャリブレーション部106は、上述した逆起電圧検出部108のキャリブレーション動作に先行して、駆動電流検出増幅器103とアナログ・デジタル変換器104とデシメーションフィルタ105の誤差を低減するためのキャリブレーション動作を実行する。この動作を実行するためにボイスコイルモータ(VCM)の駆動電流Ivcmの電流値がゼロに制御されて、電流検出抵抗Rsの両端子間電圧が2個の電流検出端子RSINP、RSINNを介して駆動電流検出増幅器103の差動入力端子に供給される。この状態の駆動電流検出増幅器103の誤差とアナログ・デジタル変換器104の誤差とデシメーションフィルタ105の誤差の全誤差情報は、オフセットキャリブレーション部106の校正レジスタ1061に格納される。キャリブレーションイネーブル信号CALENAに応答して、上述の全誤差情報はデシメーションフィルタ105からオフセットキャリブレーション部106の校正レジスタ1061に格納され保持される。
【0160】
その後の駆動電流検出動作では、オフセットキャリブレーション部106の校正レジスタ1061に保持された誤差情報がデジタル減算器1062に供給されて、デジタル減算器1062において全ての通常検出情報から校正レジスタ1061の誤差情報が減算される。この全ての通常検出情報は、駆動電流検出増幅器103の通常出力信号とアナログ・デジタル変換器104の通常変換信号とデシメーションフィルタ105の通常出力信号の全てを含んでいる。オフセットキャリブレーション部106のデジタル減算器1062の減算出力信号は、デジタル乗算器によって構成されたデジタル増幅器1063によってデジタル増幅されることによって、デジタル増幅器1063の出力からデジタル駆動電流検出信号DIVCMが生成される。従って、オフセットキャリブレーション部106のデジタル増幅器1063の出力から生成されるデジタル駆動電流検出信号DIVCMに含まれる誤差成分を、十分に低減することが可能となる。
【0161】
《逆起電圧検出部》
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICに含まれた逆起電圧検出部108は、第1デジタル乗算器1081とデジタル減算器1082と第2デジタル乗算器1083と第1レジスタ1084と第2レジスタ1085と調整シーケンサ1086とデジタルフィルタ1087とを含んでいる。
【0162】
第1デジタル乗算器1081の一方の入力端子にはオフセットキャリブレーション部106のデジタル増幅器1063からデジタル駆動電流検出信号DIVCMが供給され、第1デジタル乗算器1081の他方の入力端子には第1レジスタ1084に格納された第1ゲインGAIN1の情報が供給される。従って、第1デジタル乗算器1081の出力からは第1乗算結果GAIN1・DIVCMが生成されて、デジタル減算器1082の一方の入力端子に供給される。デジタル減算器1082の他方の入力端子にデジタル差分生成・位相補償制御部100のデジタルクランプ回路1007から生成されるデジタル駆動電圧指令信号DDRVが供給されているので、デジタル減算器1082の出力からは減算結果(DDRV−GAIN1・DIVCM)の情報が生成され第2デジタル乗算器1083の一方の入力端子に供給される。一方、第2デジタル乗算器1083の他方の入力端子に第2レジスタ1085に格納された第2ゲインGAIN2の情報が供給されるので、第2デジタル乗算器1083の出力から乗算結果GAIN2・(DDRV−GAIN1・DIVCM)の情報であるデジタル逆起電圧情報DBINが生成される。従って、上述のように逆起電圧検出部108は、デジタル駆動電圧指令信号DDRVと、第1ゲインGAIN1と、デジタル駆動電流検出信号DIVCMと、第2ゲインGAIN2とから、上記(2式)に従ってデジタル逆起電圧情報DBINを算出するものである。
【0163】
調整シーケンサ1086は、上述したように逆起電圧検出部108の内部の第1レジスタ1084の第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値G1CALと第2レジスタ1085の第2ゲインGAIN2のレジスタ設定値G2CALとを設定するものである。具体的には、シリアル入出力インターフェース107を介しての外部のマイクロコンピュータ等のコントローラによる制御に従って、調整シーケンサ1086はレジスタ設定値G1CAL、G2CALをレジスタ1084、1085に格納するものである。
【0164】
デジタルフィルタ1087は、デジタル逆起電圧情報DBINに基づきデジタル逆起電圧信号DBEMFを生成する際に、PWMキャリアリップル除去フィルタとして機能する。すなわち、ドライバ出力部102のVCMドライバ出力増幅器1025、1026がPWM制御パルス駆動モードで動作する際に使用されるPWMキャリア信号のリップル成分を除去するPWMキャリアリップル除去フィルタとして、デジタルフィルタ1087が機能するものである。このデジタルフィルタ1087の構成と動作に関しては、
図5と
図6とを使用して後述する。
【0165】
《シリアル入出力インターフェースおよびコントローラ》
図2は、
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICのシリアル入出力インターフェース107が外部のマイクロコンピュータ等のコントローラ2と接続される様子を示す図である。
【0166】
図2に示すように、
図1の実施の形態1による半導体集積回路ICは、シリアル入出力インターフェース107と、逆起電圧検出部108と、ボイスコイルモータドライバ100〜106とを含んでいる。ボイスコイルモータドライバ100〜106は、上述したデジタル差分生成・位相補償制御部100とデジタル・アナログ変換器101とドライバ出力部102と駆動電流検出増幅器103とアナログ・デジタル変換器104とデシメーションフィルタ105とオフセットキャリブレーション部106によって構成されている。
【0167】
シリアル入出力インターフェース107は複数の制御レジスタを含んでおり、外部のコントローラ2から転送された情報が複数の制御レジスタに格納される。
【0168】
従って、シリアル入出力インターフェース107は、外部のコントローラ2から供給されるデジタル駆動電流指令値VCMCRNTと比例ゲイン情報PGAINと積分ゲイン情報IGAINとPWM動作イネーブル信号PWMENAとキャリブレーションイネーブル信号CALENAとクランプイネーブル信号CLMPENとをボイスコイルモータドライバ100〜106に供給する。
【0169】
更に、シリアル入出力インターフェース107は、外部のコントローラ2から供給される第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値G1CALと第2ゲインGAIN2のレジスタ設定値G2CALとを逆起電圧検出部108に供給する。
【0170】
また更に、シリアル入出力インターフェース107は、逆起電圧検出部108により算出されるデジタル逆起電圧信号DBEMFを外部のコントローラ2に供給するものである。従って、シリアル入出力インターフェース107は、デジタル逆起電圧信号DBEMFの情報を格納する制御レジスタを含むものである。
【0171】
図2に示すように、外部のコントローラ2は、サーボコントローラ21とデジタル減算器22と比例積分コントローラ23とセレクタ24とシリアル入出力インターフェース25とを含んでいる。
【0172】
サーボコントローラ21は、ハードディスク装置(HDD)のリード・ライトのために所望の記憶トラックに追従させるトラックフォロー動作を実行する情報と磁気ヘッドを所望の記憶トラックまで移動するシーク動作を実行する情報とを生成してセレクタ24の一方の入力端子に供給する。
【0173】
磁気ヘッドをランプ機構の退避位置からディスク媒体表面に移動するロード動作と磁気ヘッドを反対にディスク媒体表面からランプ機構の退避位置に移動するアンロード動作とを実行するための磁気ヘッドの速度指令情報Speedが、デジタル減算器22の一方の入力端子に供給される。デジタル減算器22の他方の入力端子には、シリアル入出力インターフェース25とシリアル入出力インターフェース107とを介して、
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICの逆起電圧検出部108から生成されるデジタル逆起電圧信号DBEMFの情報が供給される。従って、デジタル減算器22の出力からは磁気ヘッドの速度指令情報Speedとデジタル逆起電圧信号DBEMFの情報との差分が生成され、比例積分コントローラ23に供給される。比例積分コントローラ23はデジタル減算器22の出力から生成される差分情報に基づき、デジタル駆動電流指令値VCMCRNTを生成する。
【0174】
トラックフォロー動作またはシーク動作を実行する場合には、ローレベルのロードイネーブル信号LDENAに応答して、セレクタ24はサーボコントローラ21から一方の入力端子に供給される制御情報を選択してデジタル駆動電流指令値VCMCRNTとしてシリアル入出力インターフェース25に供給する。
【0175】
ロード動作またはアンロード動作を実行する場合には、ハイレベルのロードイネーブル信号LDENAに応答して、セレクタ24は比例積分コントローラ23から他方の入力端子に供給される差分情報に基づいたデジタル駆動電流指令値VCMCRNTをシリアル入出力インターフェース25に供給する。
【0176】
《逆起電圧検出部のキャリブレーション動作》
図3は、
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICに含まれた逆起電圧検出部108の内部の第1レジスタ1084の第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値G1CALを設定するキャリブレーション動作を説明する図である。
【0177】
図3のステップS100で逆起電圧検出部108の第1ゲインGAIN1を設定するキャリブレーション動作が開始されると、次のステップS101ではデジタル駆動電流指令値VCMCRNTを所定の値に設定する。この所定の値は、ボイスコイルモータ(VCM)の逆起電圧Vb-emfがゼロの条件、すなわち、磁気ヘッドの移動速度がゼロの条件、言い換えると磁気ヘッドをランプ機構に退避・停止する条件を満足するものとする。具体的な一例では、磁気ヘッドが磁気ディスクの外周の外側のランプ機構に退避している状態で磁気ヘッドを更に退避方向に移動させるようなデジタル駆動電流指令値VCMCRNTを所定の値としてキャリブレーション動作を実施する。
【0178】
次のステップS102では、ドライバ出力部102によってボイスコイルモータ(VCM)を駆動して駆動電流検出増幅器103により検出される駆動電流Ivcmの電流値が安定化されるのをウェイトするものである。安定化した駆動電流Ivcmは、電流検出抵抗Rsとボイスコイルモータ(VCM)のコイルLの寄生抵抗RLとの抵抗加算値と反比例の関係にあり、この抵抗加算値と駆動電流Ivcmとの乗算値が所定の出力駆動電圧Vdriveの一定値に一致するものである。
【0179】
次のステップS103では、第1ゲインGAIN1の最大値“1111”の略中間値“1000”を
図1の逆起電圧検出部108の第1レジスタ1084に第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値として設定する。このステップS103で設定した第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が電流検出抵抗RsとコイルLの寄生抵抗RLの抵抗加算値に正確に対応する場合は、上述したようにデジタル逆起電圧情報DBINおよびデジタル逆起電圧信号DBEMFの値は略ゼロとなる。ステップS103で設定した第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が適正値より過大の場合にはデジタル逆起電圧信号DBEMFは負の値となり、ステップS103で設定した第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が適正値より過小の場合にはデジタル逆起電圧信号DBEMFは正の値となる。
【0180】
次のステップS104では、ステップS103で設定した第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が適正値より過大であるか、またはこのレジスタ設定値が適正値より過小であるかが判定される。第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が適正値より過大であり、デジタル逆起電圧信号DBEMFは負の値となるとデジタル逆起電圧信号DBEMFの最上位ビットが“1”となる。このように、ステップS104で第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が適正値より過大であると判定された場合には、次のステップS105では、第1ゲインGAIN1の最大値“1111”の略1/4の値“0100”を
図1の逆起電圧検出部108の第1レジスタ1084に第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値として設定する。反対にステップS104で第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が適正値よりも過小であると判定された場合には、別のステップS120では、第1ゲインGAIN1の最大値“1111”の略3/4の値“1100”を
図1の逆起電圧検出部108の第1レジスタ1084に第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値として設定する。
【0181】
ステップS105において最大値の略1/4の値“0100”を
図1の逆起電圧検出部108の第1レジスタ1084に第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値として設定した後、次のステップS106でもステップS105で設定した第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が適正値よりも過大であるか、またはこのレジスタ設定値が適正値よりも過小であるかが判定される。
【0182】
ステップS106で第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が適正値より過大であると判定された場合には、次のステップS107では第1ゲインGAIN1の最大値“1111”の略1/8の値“0010”を
図1の逆起電圧検出部108の第1レジスタ1084に第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値として設定する。反対にステップS106で第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が適正値よりも過小であると判定された場合には、別のステップS117では、第1ゲインGAIN1の最大値“1111”の略3/8の値“0110”を
図1の逆起電圧検出部108の第1レジスタ1084に第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値として設定する。
【0183】
ステップS107において第1ゲインGAIN1の最大値の略1/8の値“0010”を
図1の逆起電圧検出部108の第1レジスタ1084にレジスタ設定値として設定した後、次のステップS108でもステップS107で設定した第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が適正値よりも過大であるか、またはこのレジスタ設定値が適正値よりも過小であるかが判定される。
【0184】
ステップS108で第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が適正値より過大であると判定された場合には、次のステップS109で第1ゲインGAIN1の最大値“1111”の略1/16の値“0001”を
図1の逆起電圧検出部108の第1レジスタ1084に第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値として設定する。反対に、ステップS108で第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が適正値よりも過小であると判定された場合には、別のステップS113では第1ゲインGAIN1の最大値“1111”の略3/16の値“0011”を
図1の逆起電圧検出部108の第1レジスタ1084に第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値として設定する。
【0185】
ステップS109で第1ゲインGAIN1の最大値の略1/16の値“0001”を
図1の逆起電圧検出部108の第1レジスタ1084にレジスタ設定値として設定した後、次のステップS110でもステップS109で設定した第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が適正値よりも過大であるか、またはこのレジスタ設定値が適正値よりも過小であるかが判定される。
【0186】
ステップS110で第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が適正値より過大であると判定された場合には、次のステップS111で第1ゲインGAIN1の最小値“0000”を
図1の逆起電圧検出部108の第1レジスタ1084に第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値として設定する。反対にステップS110で第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が適正値よりも過小であると判定された場合には、別のステップS112で上述のステップS109で設定した第1ゲインGAIN1の最大値の略1/16の値“0001”を再度、
図1の逆起電圧検出部108の第1レジスタ1084に第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値として設定する。
【0187】
ステップS113で第1ゲインGAIN1の最大値の略3/16の値“0011”を
図1の逆起電圧検出部108の第1レジスタ1084にレジスタ設定値として設定した後、次のステップS114でもステップS113で設定した第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が適正値よりも過大であるか、またはこのレジスタ設定値が適正値よりも過小であるかが判定される。
【0188】
ステップS114で第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が適正値より過大であると判定された場合には、次のステップS115では上述のステップS107で設定した第1ゲインGAIN1の最大値の略1/8の値“0010”を再度、
図1の逆起電圧検出部108の第1レジスタ1084に第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値として設定する。反対に、ステップS114で第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値が適正値よりも過小であると判定された場合には、別のステップS116では上述のステップS113で設定した第1ゲインGAIN1の最大値の略3/16の値“0011”を再度、
図1の逆起電圧検出部108の第1レジスタ1084に第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値として設定する。
【0189】
上述したステップS117のその次のステップS118では、第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値の第3ビットのデータと第4ビットのデータとの下位ビットを決定する判定処理が実行される。従って、次のステップS119で、第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値の第3ビットのデータと第4ビットのデータとの下位ビットが決定される。
【0190】
上述したステップS120のその次のステップS121では、第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値の第2ビットのデータと第3ビットのデータと第4ビットのデータとの下位ビットを決定する判定処理が実行される。従って、次のステップS122で、第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値の第2ビットのデータと第3ビットのデータと第4ビットのデータとの下位ビットが決定される。
【0191】
上述したステップS100からステップS122へのいずれかの経路を経由するキャリブレーション動作を実行した後、ステップS123において
図1の逆起電圧検出部108の内部の第1レジスタ1084の第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値G1CALを設定するキャリブレーション動作を終了する。
【0192】
上述したステップS100からステップS122へのいずれかの経路を経由するキャリブレーション動作は、バイナリー・サーチと呼ばれるサーチアルゴリズムを使用して第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値G1CALを設定するものであった。しかし、本発明はこのサーチアルゴリズムにのみ限定されるものではなく、リニア・サーチ等のその他のサーチアルゴリズムを使用することが可能である。
【0193】
更に、
図3で説明したキャリブレーション動作は、第1レジスタ1084の第1ゲインGAIN1のレジスタ設定値G1CALを4ビットのデータを例にして説明したものである。しかし、本発明はこの4ビットのキャリブレーション動作にのみ限定されるものではなく、10ビット程度の分解能が必要である場合には、
図3で説明したキャリブレーション動作と同様に10ビット程度の分解能のレジスタ設定値G1CALをキャリブレーションすることが可能である。
【0194】
《デジタルクランプのクランプ動作》
図4は、
図1に示した実施の形態1の半導体集積回路ICのデジタル差分生成・位相補償制御部100に含まれたデジタルクランプ回路1007によるクランプ動作の効果を説明する図である。
【0195】
図9の1番目と同様に、
図4の1番目には、コントローラ等からの駆動電流指令値VCMCRNTの変化に対するハードディスク装置(HDD)のボイスコイルモータ(VCM)のコイル駆動電流Ivcmの変化が示されている。正常範囲では、コントローラ2からの駆動電流指令値VCMCRNTに比例する電流値を有するコイル駆動電流Ivcmが流れることが理解される。しかし、正常範囲を超過すると、駆動電流指令値VCMCRNTの変化に対してのコイル駆動電流Ivcmの変化量が減少する。
【0196】
図9の2番目と同様に、
図4の2番目には、駆動電流指令値VCMCRNTの変化に対しての半導体集積回路の第1および第2VCMドライバ出力端子VCMP、VCMNの端子間電圧VCMP−VCMNの変化が示されている。正常範囲では、コントローラ等からの駆動電流指令値VCMCRNTに比例する電圧値の端子間電圧VCMP−VCMNがボイスコイルモータ(VCM)のコイルの両端子間に供給される。しかし、正常範囲を超過すると、駆動電流指令値VCMCRNTの変化に対しての端子間電圧VCMP−VCMNの変化量が減少する。この端子間電圧VCMP−VCMNは、第1および第2VCMドライバ出力端子VCMP、VCMNを駆動する第1および第2駆動出力回路がリニア駆動で動作する場合の出力電圧である。
【0197】
図4の2番目には、図示されていないが、第1および第2VCMドライバ出力端子VCMP、VCMNを駆動する第1および第2駆動出力回路が上述したパルス駆動モードのPWM動作を実行する場合には、正常範囲では、コントローラ等からの駆動電流指令値VCMCRNTに比例するパルス幅を有する出力パルスが第1および第2駆動出力回路から生成される。しかし正常範囲を超過すると、第1および第2駆動出力回路の出力パルス幅の最大値と最小値とは、それぞれPWMキャリア信号の周期とゼロ・パルス幅とで飽和する。
【0198】
図9の3番目と同様に、
図4の3番目には、駆動電流指令値VCMCRNTの変化に対してのフィードバック制御によるデジタル駆動電圧指令信号DDRVの変化が示されている。ここで示されたデジタル駆動電圧指令信号DDRVは、駆動電流指令値VCMCRNTとボイスコイルモータ(VCM)の電流検出抵抗Rsによって検出されるコイル駆動電流Ivcmの情報との差分から算出される。正常範囲では、コントローラ2からの駆動電流指令値VCMCRNTに比例する値を有するデジタル駆動電圧指令信号DDRVが生成されていることが理解される。それに対して、正常範囲を超過すると、本発明に先立って本発明者等により検討された半導体集積回路では、コイル駆動電流Ivcmの変化量の減少分を補償するように、デジタル駆動電圧指令信号DDRVの変化量が
図4の3番目の破線に示すように増加するものであった。一方、
図1に示した実施の形態1の半導体集積回路ICのデジタルクランプ回路1007のクランプ動作により、デジタル駆動電圧指令信号DDRVの変化量が
図4の3番目の実線に示すようにクランプされるものである。すなわち、デジタルクランプ回路1007によるクランプ動作の実行により、デジタルクランプ回路1007から生成されるデジタル駆動電圧指令信号DDRVの増大と減少とは
図4の3番目に示すように所定の最大値Vmaxと所定の最小値Vminiとでクランプされる。このデジタルクランプ回路1007のクランプ動作の最大値Vmaxと最小値Vminiとは、それぞれデジタルクランプ回路1007の正常範囲のリニア動作特性LOCで得られるデジタル駆動電圧指令信号DDRVの最大値と最小値とである。
【0199】
図9の4番目と同様に、
図4の4番目には、駆動電流指令値VCMCRNTの変化に対する上述した逆起電圧推定回路により演算される逆起電圧DBEMFの変化が示されている。正常範囲では、駆動電流指令値VCMCRNTと実質的に無関係に略一定の値を有する逆起電圧DBEMF、すなわち磁気ヘッドの一定速の移動速度が検出される。しかし正常範囲を超過すると、本発明に先立って本発明者等によって検討された半導体集積回路では、上述のようにデジタル駆動電圧指令信号DDRVが増加するので、逆起電圧DBEMFの誤差が
図4の4番目の破線に示したように増大して磁気ヘッドの正確な移動速度検出が不可能となるものであった。一方、
図1に示した実施の形態1の半導体集積回路ICのデジタルクランプ回路1007のクランプ動作により、
図4の3番目の実線に示したようにデジタル駆動電圧指令信号DDRVの増大と減少とは所定の最大値Vmaxと所定の最小値Vminiとでクランプされるものである。その結果、
図1に示した実施の形態1の半導体集積回路ICの逆起電圧検出部108から生成される逆起電圧DBEMFが
図4の4番目の実線に示したように安定化されて磁気ヘッドの正確な移動速度検出が可能となるものである。
【0200】
《PWMキャリアリップル除去フィルタとしてのデジタルフィルタ》
図1の実施の形態1による半導体集積回路ICの逆起電圧検出部108に含まれたデジタルフィルタ1087は、デジタル逆起電圧情報DBINに基づきデジタル逆起電圧信号DBEMFを生成する際に、PWMキャリアリップル除去フィルタとして機能するものである。
【0201】
図5は、
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICの逆起電圧検出部108に含まれたPWMキャリアリップル除去フィルタとして機能するデジタルフィルタ1087の構成を示す図である。
【0202】
図5に示したように、デジタルフィルタ1087は、デジタル積分フィルタ10871と、デジタルローパスフィルタの一種である移動平均フィルタ10872と、ダウンサンプラー10873と、サンプリングパルス生成器10874とによって構成されている。
【0203】
デジタル積分フィルタ10871は、デジタル加算器108711とワンサンプル遅延素子108712とのループにより入力信号であるデジタル逆起電圧情報DBINの累積加算を実行するので、その出力からデジタルローパス出力信号を生成する。
【0204】
デジタルローパスフィルタの一種である移動平均フィルタ10872は、一例として、16回平均による移動平均フィルタ出力信号を生成するために16サンプル遅延素子108721とデジタル加算器108722とによって構成される。より詳細に、移動平均フィルタ10872の構成を説明すると、
図5の下部に示すように移動平均フィルタ10872は16個のワンサンプル遅延素子1087211、1087212…1087216と16個のデジタル加算器1087221、1087222…10872216によって構成されている。
【0205】
時系列で供給される16個の入力データD[x−16]…D[x−3]、D[x−2]、D[x−1]、D[x]が加算され、16個の加算結果が後に説明するダウンサンプラー10873のデジタル乗算器108733により定数“16”で除算されることで、移動平均が算出されるものである。その結果、時系列で供給される16個の入力データD[x−16]…D[x−3]、D[x−2]、D[x−1]、D[x]が時間的に大きな変動を有しても、加算平均により変動が抑圧されるので、デジタルローパス出力を生成することが可能となる。
【0206】
ダウンサンプラー10873は、サンプリングパルス生成器10874から生成されるサンプリングクロックSCLKに応答して移動平均フィルタ10872の出力信号をサンプリングしてホールドする機能を有するものである。ダウンサンプラー10873は、セレクタ108731とワンサンプル遅延素子108732と上述した定数“16”の除算を実行するデジタル乗算器108733とによって構成されている。
【0207】
セレクタ108731の一方の入力端子と他方の入力端子は、移動平均フィルタ10872の出力であるデジタル加算器108722の出力端子とワンサンプル遅延素子108732の出力端子とにそれぞれ接続されている。セレクタ108731の制御入力端子に供給されるサンプリングクロックSCLKがハイレベルの際には、セレクタ108731の一方の入力端子に供給される移動平均フィルタ10872の出力信号がワンサンプル遅延素子108732の入力端子にサンプリングされる。セレクタ108731の制御入力端子に供給されるサンプリングクロックSCLKがローレベルの際には、セレクタ108731の他方の入力端子に供給されるワンサンプル遅延素子108732の出力信号がワンサンプル遅延素子108732の入力端子に正帰還されるので、移動平均フィルタ10872の出力信号がダウンサンプラー10873によってホールドされる。
【0208】
サンプリングパルス生成器10874は、2個のワンサンプル遅延素子108741、108742と、インバータ108743とアンド論理回路108744とによって構成されている。
【0209】
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICのドライバ出力部102の内部のPWM変調器1024から生成されるPWMクロック信号PWMCLKが、ワンサンプル遅延素子108741の入力端子に供給される。このPWMクロック信号PWMCLKは、PWM変調器1024から第1VCMドライバ出力増幅器1025と第2VCMドライバ出力増幅器1026の第1入力端子In1に供給される三角波PWMキャリア信号を生成するためのベース信号である。従って、PWMクロック信号PWMCLKの位相および周波数は、三角波PWMキャリア信号の位相および周波数と一致するものである。
【0210】
従って、ワンサンプル遅延素子108741はPWMクロック信号PWMCLKがをワンサンプル遅延時間分遅延された第1遅延クロックを生成してワンサンプル遅延素子108742の入力端子に供給して、ワンサンプル遅延素子108742は第1遅延クロックが更にワンサンプル遅延時間分遅延された第2遅延クロックを生成する。インバータ108743の遅延時間はワンサンプル遅延素子108741、108742でのワンサンプル遅延時間と比較して無視できるので、インバータ108743は第1遅延クロックの反転信号を生成してアンド論理回路108744の一方の入力端子に供給する。アンド論理回路108744の他方の入力端子にはワンサンプル遅延素子108742から生成された第2遅延クロックが供給されているので、アンド論理回路108744は第1遅延クロックの反転信号と第2遅延クロックのアンド論理に基づいてダウンサンプラー10873に供給されるサンプリングクロックSCLKを生成する。
【0211】
図6は、
図5に示した実施の形態1によるPWMキャリアリップル除去フィルタとして機能するデジタルフィルタ1087の動作を説明する波形を示す図である。
【0212】
図6の第1番目には、デジタルフィルタ1087の入力端子に供給されるデジタル逆起電圧情報DBINの波形とデジタルフィルタ1087の移動平均フィルタ10872の出力OUTPUT 10872の波形とが、破線と実線によってそれぞれ示されている。2個の波形とも、PWM変調器1024から生成される三角波PWMキャリア信号の影響によって、PWMキャリアリップル成分を含むものである。
【0213】
図6の第2番目には、サンプリングパルス生成器10874の入力端子に供給されるPWMクロック信号PWMCLKの波形が示されている。
図6の第2番目に示すPWMクロック信号PWMCLKの位相および周波数は、
図6の第1番目に示すデジタル逆起電圧情報DBINおよび移動平均フィルタ10872の出力OUTPUT 10872に含まれる三角波PWMキャリアリップルの位相および周波数と一致している。
【0214】
図6の第3番目には、ワンサンプル遅延素子108741の出力信号OUTPUT 108741である第1遅延クロックの波形が示されている。第1遅延クロックは、PWMクロック信号PWMCLKをワンサンプル遅延時間分遅延することで形成されたものである。
【0215】
図6の第4番目には、ワンサンプル遅延素子108742の出力信号OUTPUT 108742である第2遅延クロックの波形が示されている。第2遅延クロックは、第1遅延クロックを更にワンサンプル遅延時間分遅延することで形成されたものである。
【0216】
図6の第5番目には、インバータ108743の出力信号OUTPUT 108743としての第1遅延クロックの反転信号の波形が示されている。第1遅延クロックの反転信号は、遅延時間を実質的に含むことなく、第1遅延クロックを反転することで形成されたものである。
【0217】
図6の第6番目には、アンド論理回路108744の出力信号OUTPUT 108744であるサンプリングクロックSCLKの波形が示されている。サンプリングクロックSCLKは、ワンサンプル遅延素子108742の出力信号OUTPUT 108742とインバータ108743の出力信号OUTPUT 108743とのアンド論理により形成されたものである。従って、両方の出力信号OUTPUT 108742、OUTPUT 108743がハイレベルの期間に、サンプリングクロックSCLKがハイレベルとなり、それ以外の期間においては、サンプリングクロックSCLKがローレベルとなっている。
【0218】
図6の第7番目には、
図6の第6番目に示したハイレベルのサンプリングクロックSCLKによりサンプリングされローレベルのサンプリングクロックSCLKによりホールドされるダウンサンプラー10873の出力信号であるデジタル逆起電圧信号DBEMFの波形が示されている。
【0219】
サンプリングクロックSCLKのハイレベルパルス幅が極めて狭いと想定すると、サンプリングクロックSCLKのローレベルからハイレベルの立ち上がりエッジでのタイミングのサンプリングポイントSPで、デジタルフィルタ1087の移動平均フィルタ10872の出力OUTPUT 10872の波形がダウンサンプラー10873にサンプリングされホールドされる。その結果、ダウンサンプラー10873の出力信号であるデジタル逆起電圧信号DBEMFは、PWMキャリアリップル成分を実質的に含まない直流成分および低周波成分のみとなる。このデジタル逆起電圧信号DBEMFの直流成分および低周波成分は、デジタルフィルタ1087の入力端子に供給されるデジタル逆起電圧情報DBINの直流成分および低周波成に対応したものである。
【0220】
図7は、
図5に示した実施の形態1によるPWMキャリアリップル除去フィルタとして機能するデジタルフィルタ1087の周波数特性を示す図である。
【0221】
図7の横軸は周波数を示し、
図7の縦軸はゲイン(gain=|DBEMF|/|DBIN|)を示す。尚、
図5に示した実施の形態1のデジタルフィルタ1087では、ワンサンプル遅延素子108712、1087211〜10872116、108721、108741、108742に使用する遅延型フリップフロップの動作クロックは、その周期を240nsecとしたものである。
【0222】
図7に示した
図5のデジタルフィルタ1087の周波数特性は、略20KHz以下の周波数でゲインが略0dBであり、それ以上の周波数ではゲインが小さなローパスフィルタ特性を実現するものである。また、この周波数特性は、略100KHz間隔でヌル点と呼ばれる低ゲイン周波数を持ったいわゆる「くし型フィルタ」の特性となっている。従って、PWMクロック信号PWMCLKの周波数である100KHzの周波数において略−60dBの低ゲインを実現しているので、100KHzの周波数のPWMキャリアリップル成分を十分抑圧することが可能なものである。
【0223】
以上説明したように、
図5に示した実施の形態1によるPWMキャリアリップル除去フィルタとして機能するデジタルフィルタ1087によれば、本発明者等により本発明に先立って検討された
図8の半導体集積回路のPWMキャリアリップル除去フィルタ901のように、大きなチップ占有面積のアナログフィルタを使用する必要がなくなるものである。
【0224】
上述した
図5のデジタルフィルタ1087のサンプリングパルス生成器10874では、アンド論理回路108744による第1遅延クロックの反転信号と第2遅延クロックのアンド論理に基づきダウンサンプラー10873に供給されるサンプリングクロックSCLKを生成するものであった。しかし、本発明はこのサンプリングクロック生成方式にのみ限定されるものではなく、その他のサンプリングクロック生成方式を使用することも可能である。例えば、ワンサンプル遅延素子108742の出力信号OUTPUT 108742のローレベル期間とインバータ108743の出力信号OUTPUT 108743のローレベル期間とのアンド論理に基づき、ダウンサンプラー10873に供給されるサンプリングクロックSCLKを生成することも可能である。
【0225】
以上、本発明者によってなされた発明を種々の実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0226】
例えば、
図3で説明したキャリブレーション動作において逆起電圧Vb-emfがゼロの条件を満足するために、磁気ヘッドが磁気ディスクの外周の外側のランプ機構に退避している状態で磁気ヘッドを更に退避方向に移動するものであった。しかし、本発明はこの磁気ヘッド制御方式にのみ限定されるものではなく、その他の磁気ヘッド制御方式を使用することも可能である。例えば、逆起電圧Vb-emfがゼロの条件を満足するために、磁気ヘッドが磁気ディスクの外周の外側のランプ機構に退避している状態で磁気ヘッドを退避位置からディスク媒体表面に移動する方向にデジタル駆動電流指令値VCMCRNTを所定の値として設定するものである。しかし、その際に、デジタル駆動電流指令値VCMCRNTの所定の値を十分小さな値に設定することにより、キャリブレーション動作中に磁気ヘッドがランプ機構から開放されることなくランプ機構に拘束されるようにするものである。
【0227】
また更に、
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICの逆起電圧検出部108では、逆起電圧Vb-emfがゼロの条件を満足しながら、デジタル駆動電流検出信号DIVCMによりデジタル駆動電圧指令信号DDRVを除算するデジタル除算器を使用することで上記(2式)に従ってワンステップで第1レジスタ1084に設定する第1ゲインGAIN1を算出可能となる。
【0228】
デジタル駆動電圧指令信号DDRVをデジタル駆動電流検出信号DIVCMにより除算するデジタル除算器を
図1に示した実施の形態1による半導体集積回路ICの半導体チップに内蔵することで、半導体チップの面積は増大するが、半導体集積回路ICの半導体チップの内部で第1レジスタ1084に設定される第1ゲインGAIN1をキャリブレーションすることが可能となる。
【0229】
デジタル駆動電圧指令信号DDRVをデジタル駆動電流検出信号DIVCMにより除算するデジタル除算器を、
図1に示した半導体集積回路ICの外部のマイクロコンピュータ等のコントローラ2に内蔵することも可能である。コントローラ2に内蔵したデジタル除算器での除算処理のためにデジタル駆動電圧指令信号DDRVとデジタル駆動電流検出信号DIVCMと除算結果とを半導体集積回路ICとコントローラ2との間でデータ転送する必要があるが、半導体集積回路ICの半導体チップの面積の増大を解消することが可能となる。
【0230】
更に本発明によるモータ駆動制御装置は、ハードディスク装置(HDD)で使用されるボイスコイルモータ(VCM)を駆動するボイスコイルモータドライバにのみ限定されるものではない。例えば、超精密加工作業を行うための工業用ロボットのアームを駆動するためのモータドライバにも、本発明を適用することが可能である。