特許第5973834号(P5973834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973834
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】放射線検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20160809BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20160809BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   G01T7/00 A
   G01T1/20 L
   A61B6/00 300Q
   A61B6/00 333
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-176111(P2012-176111)
(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2014-35249(P2014-35249A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】村松 悟
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 満世志
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−027865(JP,A)
【文献】 特開平03−036744(JP,A)
【文献】 特開昭63−008588(JP,A)
【文献】 特開2004−319601(JP,A)
【文献】 特開2008−286560(JP,A)
【文献】 特開2011−022132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T1/00−1/16、1/167−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の放射線を検出する第1の放射線検出素子と、
前記第1の放射線よりも高エネルギの第2の放射線を検出する第2の放射線検出素子と、
前記第1及び第2の放射線検出素子から出力される電気信号を伝達するための配線パターンを有する配線基板とを備え、
前記第1の放射線検出素子が、前記配線基板の一方の面上の前記配線パターンにバンプ実装されており、前記第2の放射線検出素子が、前記配線基板の他方の面上の前記配線パターンにバンプ実装されており、
前記配線基板の内部であって前記第1の放射線検出素子と前記第2の放射線検出素子との間に位置する領域に、前記第2の放射線を選択的に透過するフィルタとしての複数の金属層が、前記配線基板の厚さ方向に積層され互いに離間して設けられていることを特徴とする、放射線検出器。
【請求項2】
前記配線基板上に実装され、前記配線パターンを介して前記第1及び第2の放射線検出素子と電気的に接続される信号処理チップを更に備え、
前記金属層が、前記信号処理チップの基準電位線と繋がっていることを特徴とする、請求項に記載の放射線検出器。
【請求項3】
第1の放射線を検出する第1の放射線検出素子と、
前記第1の放射線よりも高エネルギの第2の放射線を検出する第2の放射線検出素子と、
前記第1及び第2の放射線検出素子から出力される電気信号を伝達するための配線パターンを有する配線基板と
前記配線基板上に実装され、前記配線パターンを介して前記第1及び第2の放射線検出素子と電気的に接続される信号処理チップとを備え、
前記第1の放射線検出素子が、前記配線基板の一方の面上の前記配線パターンにバンプ実装されており、前記第2の放射線検出素子が、前記配線基板の他方の面上の前記配線パターンにバンプ実装されており、
前記配線基板の内部であって前記第1の放射線検出素子と前記第2の放射線検出素子との間に位置する領域に、前記第2の放射線を選択的に透過するフィルタとしての金属層が設けられており、
前記金属層が、前記信号処理チップの基準電位線と繋がっていることを特徴とする、放射線検出器。
【請求項4】
前記信号処理チップが、前記配線基板の前記他方の面上に実装されていることを特徴とする、請求項3に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記第1及び第2の放射線検出素子が、当該放射線検出素子から前記電気信号を出力する複数の信号出力用電極を有し、
前記複数の信号出力用電極が、前記第1及び第2の放射線検出素子における前記信号処理チップ側の一辺に沿って配列されていることを特徴とする、請求項〜4のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、デュアルエネルギーX線撮像装置が開示されている。このデュアルエネルギーX線撮像装置では、低エネルギX線を検出するためのフォトダイオードアレイ及びシンチレータが配線基板の一方の面上に設けられ、高エネルギX線を検出するためのフォトダイオードアレイ及びシンチレータが配線基板の他方の面上に設けられている。そして、配線基板の一方の面上には、他方の面に向けて高エネルギX線を選択的に通過させるためのフィルタが、低エネルギX線用のフォトダイオードアレイ及びシンチレータと並んで配置されている。
【0003】
特許文献2には、手荷物検査用のCTスキャナが開示されている。このCTスキャナは、X線を検出するための複数の検出部を備えている。各検出部では、低エネルギX線を検出するためのフォトダイオードアレイ及びシンチレータが銅板の一方の面上に配置されており、高エネルギX線を検出するためのフォトダイオードアレイ及びシンチレータが銅板の他方の面上に配置されている。
【0004】
特許文献3には、2枚のシンチレータの間の固体光検出器を積層させて成る放射線検出器が開示されている。固体光検出器は、樹脂からなる基板の両面に、フォトダイオード及び薄膜トランジスタからなる多数の固体光検出素子を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1010021号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/120454号明細書
【特許文献3】特開平7−27865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エネルギの異なる2種類の放射線、例えば軟X線と硬X線とを選択的に検出する放射線検出器が知られている。図7は、このような放射線検出器の構造の一例を示す側断面図である。同図に示される放射線検出器100は、配線基板101と、配線基板101の一方の面101a上に実装された2つの放射線検出素子103及び105とを備えている。放射線検出素子103は、軟X線を検出するための素子であり、軟X線を光に変換するシンチレータ103aと、シンチレータ103aから出射された光を検出する光検出素子103bとによって構成されている。また、放射線検出素子105は、硬X線を検出するための素子であり、硬X線を光に変換するシンチレータ105aと、シンチレータ105aから出射された光を検出する光検出素子105bとによって構成されている。なお、配線基板101の一方の面101a上には、光検出素子103b及び105bからの電気信号を受けるA/Dコンバータ109と、A/Dコンバータ109から出力された信号を処理するコントローラIC111とがバンプ実装されている。
【0007】
2つの放射線検出素子103及び105は、或る位置から到達する軟X線及び硬X線を同じ角度から検出するために、配線基板101上において厚さ方向に重ねて配置されている。これらの放射線検出素子103及び105は、配線基板101上に設けられたソケット113,115に各々の端子が差し込まれることにより配線基板101に固定されている。そして、上側に配置された放射線検出素子103と、下側に配置された放射線検出素子105との間には、軟X線を遮蔽して硬X線を選択的に透過するフィルタが配置される。しかしながら、図7に示された放射線検出器100では、2つの放射線検出素子103及び105を重ねて配置するので、構造が複雑になり工程数も多くなってしまう。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、構造を簡易化して工程数を削減することができる放射線検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明による放射線検出器は、第1の放射線を検出する第1の放射線検出素子と、第1の放射線よりも高エネルギの第2の放射線を検出する第2の放射線検出素子と、第1及び第2の放射線検出素子から出力される電気信号を伝達するための配線パターンを有する配線基板とを備え、第1の放射線検出素子が、配線基板の一方の面上の配線パターンにバンプ実装されており、第2の放射線検出素子が、配線基板の他方の面上の配線パターンにバンプ実装されており、配線基板の内部であって第1の放射線検出素子と第2の放射線検出素子との間に位置する領域に、第2の放射線を選択的に透過するフィルタとしての複数の金属層が、配線基板の厚さ方向に積層され互いに離間して設けられていることを特徴とする。
【0010】
この放射線検出器では、低エネルギの第1の放射線を検出する第1の放射線検出素子が配線基板の一方の面上にバンプ実装されており、高エネルギの第2の放射線を検出する第2の放射線検出素子が配線基板の他方の面上にバンプ実装されている。これにより、放射線検出素子の配線基板への取り付けを他の信号処理チップ等の実装と同時に行うことができるので、図7に示された構造と比較して、構造を簡易化して工程数を削減することができる。また、図7に示された構造では、放射線検出素子の端子がソケットに差し込まれることにより放射線検出素子が配線基板に固定されているが、上記の放射線検出器のように、第1及び第2の放射線検出素子それぞれが配線基板の両面それぞれにバンプ実装されることによって、図7に示された構造と比較して信頼性を高めることができる。
【0011】
更に、この放射線検出器では、第2の放射線を選択的に透過するフィルタとしての金属層が、配線基板の内部に設けられている。このような構造は、配線基板の層間配線層によって好適に実現されるので、フィルタを設ける為の特殊な構造を採用することなく、構造を簡易化して工程数を削減することができる。また、フィルタを配線基板の一方の面上に放射線検出素子と並べて配置する場合(例えば特許文献1を参照)と比較して、フィルタ及び放射線検出素子の配置の自由度を高めることができる。
【0012】
また、この放射線検出器は、複数の金属層が配線基板の厚さ方向に積層されており、複数の金属層が互いに離間しているので、第2の放射線を選択的に透過するフィルタとしての作用をより効果的に奏することができる。また、このような構造は、配線基板の層間配線層を複数設けることによって容易に実現可能であるため、工程数の増加を抑えることができる。また、このように複数の金属層が互いに離間して積層されることにより、複数の金属層の層間部分を含めたフィルタ部分全体の厚みを厚くすることができるため、フィルタが一層の金属層により構成される場合と比較して、フィルタの端縁を回り込んで第2の放射線検出素子に到達する放射線を更に低減することができる。
【0013】
また、本発明による別の放射線検出器は、第1の放射線を検出する第1の放射線検出素子と、第1の放射線よりも高エネルギの第2の放射線を検出する第2の放射線検出素子と、第1及び第2の放射線検出素子から出力される電気信号を伝達するための配線パターンを有する配線基板と、配線基板上に実装され、配線パターンを介して第1及び第2の放射線検出素子と電気的に接続される信号処理チップとを備え、第1の放射線検出素子が、配線基板の一方の面上の配線パターンにバンプ実装されており、第2の放射線検出素子が、配線基板の他方の面上の配線パターンにバンプ実装されており、配線基板の内部であって第1の放射線検出素子と第2の放射線検出素子との間に位置する領域に、第2の放射線を選択的に透過するフィルタとしての金属層が設けられており、金属層が、信号処理チップの基準電位線と繋がっていることを特徴とする。これにより、金属層の電位を安定させ、電気信号に加わるノイズを低減することができる。
【0014】
また、放射線検出器は、信号処理チップが、配線基板の他方の面上に実装されていることを特徴としてもよい。これにより、信号処理チップに到達する第1の放射線を低減することができる。
【0015】
また、放射線検出器は、第1及び第2の放射線検出素子が、当該放射線検出素子から電気信号を出力する複数の信号出力用電極を有し、複数の信号出力用電極が、第1及び第2の放射線検出素子における信号処理チップ側の一辺に沿って配列されていることを特徴としてもよい。これにより、第1及び第2の放射線検出素子から信号処理チップへ電気信号を伝達するための信号配線が第2の放射線検出素子を横断する必要がないので、第2の放射線検出素子への第2の放射線の入射が信号配線に妨げられることを回避することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明による放射線検出器によれば、構造を簡易化して工程数を削減することができるとともに、良好な画質の放射線像を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る放射線検出器の外観を示す斜視図である。
図2図1に示された放射線検出器の分解斜視図である。
図3図1に示された放射線検出器のIII−III線に沿った側断面図である。
図4】(a)光検出素子における電極配置の一例を示す図である。(b)(a)に示された電極配置に対応する、配線基板のランドパターンの配置と、信号配線の形状とを示す図である。(c)光検出素子における電極配置の別の例を示す図である。(d)(c)に示された電極配置に対応する、配線基板のランドパターンの配置と、信号配線の形状とを示す図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る放射線検出器の外観を示す斜視図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る放射線検出器の構成を示す側断面図である。
図7】放射線検出器の構造の一例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明による放射線検出器の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る放射線検出器10Aの外観を示す斜視図である。図2は、図1に示された放射線検出器10Aの分解斜視図である。図3は、図1に示された放射線検出器10AのIII−III線に沿った側断面図である。なお、図3では、理解の容易のため、放射線検出器10Aの断面の要部を拡大して示している。
【0020】
この放射線検出器10Aは、図3に示される第1の放射線X1と、第1の放射線X1よりも高エネルギの第2の放射線X2とを検出する装置である。なお、第1の放射線X1は例えば軟X線であり、第2の放射線X2は例えば硬X線である。図1図3に示されるように、本実施形態の放射線検出器10Aは、配線基板20と、第1の放射線検出素子30と、第2の放射線検出素子40と、信号処理チップ51及び52と、コネクタ53とを備えている。
【0021】
配線基板20は、第1及び第2の放射線検出素子30,40から出力される電気信号を伝達するための金属製の配線パターンを有する回路基板であり、主にガラスエポキシ樹脂といった樹脂材料によって構成されている。本実施形態の配線基板20は、長手方向及び該長手方向と直交する短手方向を有する略長方形状の平面形状を呈している。配線基板20は、板面20aと、該板面20aとは反対側の板面20bとを有する。
【0022】
第1の放射線検出素子30は、配線基板20の一方の板面20a側から入射する第1の放射線X1を検出するための素子である。第1の放射線検出素子30は、所定方向A(本実施形態では配線基板20の短手方向)に沿って並ぶ複数の光検出素子31と、該複数の光検出素子31上に配置されたシンチレータ32とを有する。シンチレータ32は、第1の放射線X1を光に変換する。複数の光検出素子31は、シンチレータ32から出射された光を検出し、その光量に応じた電気信号を出力する。複数の光検出素子31は、配線基板20の一方の板面20a上に形成された配線パターンに含まれるランドパターン21に対し、バンプ電極33を介して実装(バンプ実装)されている。複数の光検出素子31は、例えばフォトダイオードアレイによって実現される。
【0023】
第2の放射線検出素子40は、配線基板20の一方の板面20a側から入射する第2の放射線X2を検出するための素子である。第2の放射線検出素子40は、所定方向Aに沿って並ぶ複数の光検出素子41と、該複数の光検出素子41上に配置されたシンチレータ42とを有する。シンチレータ42は、第2の放射線X2を光に変換する。複数の光検出素子41は、シンチレータ42から出射された光を検出し、その光量に応じた電気信号を出力する。複数の光検出素子41は、配線基板20の他方の板面20b上に形成された配線パターンに含まれるランドパターン22に対し、バンプ電極43を介して実装(バンプ実装)されている。複数の光検出素子41は、例えばフォトダイオードアレイによって実現される。
【0024】
信号処理チップ51及び52は、配線基板20の配線パターンを介して光検出素子31,41と電気的に接続されている。信号処理チップ51は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。信号処理チップ52は、例えばコントローラICである。信号処理チップ51及び52は、光検出素子31,41の駆動を制御するとともに、光検出素子31,41から出力された電気信号を入力し、該電気信号に基づいて放射線X1,X2の検出結果に関するデータを生成する。本実施形態の信号処理チップ51は、配線基板20の一方の板面20a上に形成された配線パターンに含まれるランドパターン23に対し、バンプ電極54を介して実装(バンプ実装)されている。同様に、信号処理チップ52は、配線基板20の一方の板面20a上に形成された配線パターンに含まれるランドパターン24に対し、バンプ電極55を介して実装(バンプ実装)されている。
【0025】
図3に示されるように、本実施形態の配線基板20は、複数の金属層25を含んでいる。金属層25は、例えば銅などの金属からなる薄膜であって、第1の放射線X1を遮断するとともに第2の放射線X2を選択的に透過するフィルタとしての役割を果たす。複数の金属層25は、配線基板20の内部(すなわち、一方の板面20aと他方の板面20bとの間の領域)に設けられており、配線基板20の厚さ方向に積層されている。更に、複数の金属層25は、所定の間隔でもって互いに離間している。互いに隣り合う金属層25の間には、配線基板20の主材料である樹脂材料(例えばガラスエポキシ樹脂)が介在している。
【0026】
複数の金属層25は、第1の放射線検出素子30と第2の放射線検出素子40との間に位置する領域に配置されている。より具体的には、複数の金属層25は、放射線X1,X2の入射方向(すなわち配線基板20の厚さ方向)に沿った投影線でもって放射線検出素子30,40を配線基板20に投影して得られる領域を含む領域に設けられている。換言すれば、複数の金属層25は、放射線X1,X2の入射方向から配線基板20を見て、放射線検出素子30,40を含む領域に設けられている。より好適には、配線基板20において複数の金属層25が占める領域は、配線基板20への放射線検出素子30,40の投影領域よりも十分に広く、該投影領域外にまで延びている。
【0027】
また、本実施形態の配線基板20は、スルーホール26を更に含んでいる。スルーホール26は、配線基板20の厚さ方向に延びる配線要素であって、例えば板面20aから板面20bへ配線基板20を貫通して設けられている。このスルーホール26は、例えば信号処理チップ51,52の基準電位線(グランド配線)の一部を構成する。そして、複数の金属層25は、このスルーホール26を介して信号処理チップ51,52の基準電位線と繋がっている(短絡している)ことが好ましい。
【0028】
ここで、光検出素子31,41の電極配置について説明する。光検出素子31,41は、複数の電極を有しており、これらの電極は、図3に示されたバンプ33,43を介して複数のランドパターン21,22に結合される。そして、これらの電極には、光検出素子31から電気信号を出力するための信号出力用電極(典型的にはアノード)、光検出素子31にバイアス電圧を供給するためのバイアス供給用電極(典型的にはカソード)、及びこれらの何れでもない電極が含まれている。
【0029】
図4(a)は、光検出素子31における信号出力用電極35、バイアス供給用電極36、及びその他の電極37の配置の一例を示す図である。なお、同図に示される光検出素子31は2つのフォトダイオード34を有しており、これらのフォトダイオード34は、配線38を介して、それぞれ2つの信号出力用電極35と接続されている。また、図4(a)は光検出素子31について示しているが、光検出素子41も同様の構成を備えている。
【0030】
また、図4(b)は、図4(a)に示された電極配置に対応する、配線基板20のランドパターン21の配置(信号出力用ランドパターン21a、バイアス供給用ランドパターン21b、及びその他のランドパターン21c)と、信号配線29の形状とを示している。信号配線29は、配線基板20の配線パターンの一部であって、信号出力用ランドパターン21aと、信号処理チップ51,52とを電気的に接続する。
【0031】
この例では、光検出素子31の複数の信号出力用電極35は、光検出素子31において所定方向A(配線基板20の短手方向)に延びる一対の辺のうち、信号処理チップ51,52側の一辺に沿って配列されている。したがって、図4(b)に示されるように、信号配線29は光検出素子31を横断することなく信号処理チップ51,52へ延設されることができる。
【0032】
また、図4(c)は、光検出素子31における信号出力用電極35、バイアス供給用電極36、及びその他の電極37の配置の別の例を示す図である。なお、図4(c)は光検出素子31について示しているが、光検出素子41も同様の構成を備えている。また、図4(d)は、図4(c)に示された電極配置に対応する、配線基板20のランドパターン21の配置(信号出力用ランドパターン21a、バイアス供給用ランドパターン21b、及びその他のランドパターン21c)と、信号配線29の形状とを示している。
【0033】
この例では、光検出素子31の複数の信号出力用電極35は、光検出素子31において所定方向Aに延びる一対の辺に交互に沿うように(千鳥配列状に)配列されている。したがって、図4(d)に示されるように、信号配線29は、信号処理チップ51,52へ延設されるために光検出素子31を横断してしまう。
【0034】
図4(a)に示された光検出素子31の電極配置の例と、図4(c)に示された光検出素子31の電極配置の例とを比較すると、配線基板20の信号配線29が光検出素子31を横断せずに済む点で、図4(a)の電極配置が好適である。信号配線29が光検出素子31を横断しないことによって、放射線検出素子40への第2の放射線X2の入射が信号配線29に妨げられることを回避し、信号配線29の影響を受けずに第2の放射線X2を検出することができるからである。
【0035】
一方、複数の光検出素子31の狭ピッチ化という観点からは、図4(c)の電極配置が好適である。すなわち、複数の信号出力用電極35が千鳥配列状に並ぶことによって、複数の光検出素子31の間隔を狭めることができ、所定方向Aにおけるフォトダイオード34のピッチを短くすることができる。
【0036】
以上の構成を備える放射線検出器10Aによって得られる効果について説明する。本実施形態の放射線検出器10Aでは、第1の放射線検出素子30の光検出素子31が配線基板20の一方の板面20a上にバンプ実装されており、第2の放射線検出素子40の光検出素子41が配線基板20の他方の板面20b上にバンプ実装されている。このように、放射線検出素子30,40が配線基板20にバンプ実装されることにより、放射線検出素子30,40の配線基板20への取り付けを他の信号処理チップ51,52の実装と同時に行うことができるので、図7に示された構造と比較して、構造を簡易化して工程数を削減し、生産コストを低減することができる。
【0037】
また、放射線検出素子30,40が配線基板20にバンプ実装されることによって、図7に示された構造と比較して、電気的な接続を安定して維持することができ、また放射線検出素子30,40の実装位置精度が高まるので、放射線検出器10Aの信頼性を高めることができる。
【0038】
また、放射線検出素子30,40の光検出素子31,41が配線基板20にバンプ実装されることによって、光検出素子31,41の上面(配線基板20と対向する面とは反対側の面)にワイヤボンディング用の電極端子等を設けずに済むので、シンチレータ32,42の実装を容易にできる。
【0039】
また、この放射線検出器10Aでは、第2の放射線X2を選択的に透過するフィルタとしての金属層25が、配線基板20の内部に設けられている。このような構造は、配線基板20の層間配線層によって好適に実現されるので、フィルタを設ける為の特殊な構造を採用することなく、構造を簡易化して工程数を更に削減することができる。従って、本実施形態の放射線検出器10Aによれば、上述した効果と併せて、生産コストを格段に低減することが可能である。なお、金属層25の層数は、配線基板20の層数(例えば8層ないし14層)と同じかそれよりも少ない数であり、任意に設定される。
【0040】
また、例えば特許文献1に記載されたX線撮像装置では、高エネルギX線を選択的に通過させるためのフィルタが、低エネルギX線用の放射線検出素子と並んで配線基板の一方の面上に配置されている。本実施形態の放射線検出器10Aによれば、このような構成と比較して、フィルタ及び放射線検出素子の配置の自由度を高めることができる。また、このような特許文献1の構成では、配線基板の厚みの分だけ、高エネルギX線用の放射線検出素子からフィルタが離れてしまい、高エネルギX線の散乱によって画質が低下してしまう。これに対し、本実施形態の放射線検出器10Aによれば、第2の放射線検出素子40にフィルタをより近づけることができ、良好な画質の放射線像を検出することができる。
【0041】
また、この放射線検出器10Aでは、第1の放射線検出素子30と第2の放射線検出素子40との間隔を配線基板20の厚さのみによって規定できるので、フィルタを別途設ける構造と比較して、これらの間隔を短くすることができる。したがって、放射線X1,X2の入射角の傾斜による、放射線X1の画像と放射線X2の画像とのずれを低減することができる。
【0042】
また、本実施形態のように、複数の金属層25が配線基板20の厚さ方向に積層されており、複数の金属層25が互いに離間していることが好ましい。これにより、金属層25のトータルの厚みをより厚くすることができるので、第2の放射線X2を選択的に透過するフィルタとしての作用をより効果的に奏することができる。また、このような構造は、配線基板20の層間配線層を複数設けることによって容易に実現可能であるため、工程数の増加を抑えることができる。
【0043】
また、本実施形態のように、金属層25は、信号処理チップ51,52の基準電位線と繋がっていることが好ましい。金属層25が電気的に浮いた状態だと、金属層25がアンテナとして作用し、ノイズを発生するおそれがある。本実施形態のように金属層25が基準電位線と繋がっていることにより、金属層25の電位を安定させ、電気信号に加わるノイズを低減することができる。
【0044】
また、本実施形態のように、放射線X1,X2の入射方向から見て金属層25が占める領域は、配線基板20への放射線検出素子30,40の投影領域よりも広いことが好ましい。これにより、金属層25の端縁を回り込んで第2の放射線検出素子40に到達する放射線X1を低減することができる。
【0045】
なお本実施形態では、金属層25が複数層にわたって設けられているが、金属層25は一層のみであってもよい。そのような形態であっても、本実施形態による上述した効果を好適に得ることができる。但し、本実施形態のように複数の金属層25が互いに離間して積層されることにより、複数の金属層25の層間部分を含めたフィルタ部分全体の厚みを厚くすることができるため、フィルタが一層の金属層25により構成される場合と比較して、金属層25の端縁を回り込んで第2の放射線検出素子40に到達する放射線X1を更に低減することができる。
【0046】
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係る放射線検出装置60の外観を示す斜視図である。この放射線検出装置60は、第1実施形態の放射線検出器10Aを複数備えている。複数の放射線検出器10Aは、所定方向A(すなわち配線基板20の短手方向であって、複数の光検出素子31,41の配列方向)に並んで配置されている。互いに隣り合う放射線検出器10Aは、基板間接続ケーブル61によって互いのコネクタ53同士が接続されることにより、互いに電気的に接続される。そして、所定方向Aにおける放射線検出器60の一端に配置される放射線検出器10Aは、ケーブル62を介して信号処理チップ51,52と電気的に接続される。このような構成により、所定方向Aに沿って延びる一次元の放射線像を好適に検出することができる。
【0047】
(第3の実施の形態)
図6は、本発明の第3実施形態に係る放射線検出器10Bの構成を示す側断面図である。本実施形態の放射線検出器10Bと第1実施形態の放射線検出器10A(図3を参照)との相違点は、信号処理チップ51,52の配置、および金属層25の形状である。
【0048】
本実施形態では、信号処理チップ51,52は配線基板20の他方の板面20b上に実装されている。具体的には、信号処理チップ51は、配線基板20の他方の板面20b上に形成された配線パターンに含まれるランドパターン27に対し、バンプ電極54を介して実装(バンプ実装)されている。同様に、信号処理チップ52は、配線基板20の他方の板面20b上に形成された配線パターンに含まれるランドパターン28に対し、バンプ電極55を介して実装(バンプ実装)されている。これにより、信号処理チップ51及び52は、配線基板20の配線パターンを介して光検出素子31,41と電気的に接続される。なお、配線基板20の一方の板面20a上に実装されている光検出素子31と信号処理チップ51及び52との接続は、配線基板20の板面20aから板面20bへ貫通するスルーホールによって好適に行われる。
【0049】
また、本実施形態の金属層25は、第1の放射線検出素子30と第2の放射線検出素子40との間に位置する領域に加えて、信号処理チップ51,52が実装されている領域に亘って配置されている。より具体的には、金属層25は、放射線X1,X2の入射方向(すなわち配線基板20の厚さ方向)に沿った投影線でもって放射線検出素子30,40及び信号処理チップ51,52を配線基板20に投影して得られる領域を含む領域に設けられている。換言すれば、金属層25は、放射線X1,X2の入射方向から配線基板20を見て、放射線検出素子30,40及び信号処理チップ51,52を含む領域に設けられている。より好適には、配線基板20において金属層25が占める領域は、配線基板20への放射線検出素子30,40及び信号処理チップ51,52の投影領域よりも十分に広く、該投影領域外にまで延びている。
【0050】
上述したように、本実施形態では、信号処理チップ51,52が配線基板20の他方の板面20b上に実装されている。これにより、例えば配線基板20の金属層25によって、信号処理チップ51,52に到達する第1の放射線X1を低減することができる。なお、信号処理チップ51,52に到達する第1の放射線X1を低減する手段としては、本実施形態のように配線基板20の金属層25を利用する方式のほか、例えば配線基板の板面20a上に放射線遮蔽体を設ける等、様々な構造を適用することができる。
【0051】
本発明による放射線検出器は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では金属層25の構成材料として銅を例示したが、金属層25の構成材料としては、第2の放射線X2を選択的に透過する様々な材料を用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
10A,10B,100…放射線検出器、20…配線基板、21〜24,27,28…ランドパターン、25…金属層、26…スルーホール、29…信号配線、30…第1の放射線検出素子、31…光検出素子、32…シンチレータ、33…バンプ電極、40…第2の放射線検出素子、41…光検出素子、42…シンチレータ、43…バンプ電極、51,52…信号処理チップ、53…コネクタ、101…配線基板、A…所定方向、X1…第1の放射線、X2…第2の放射線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7