特許第5973856号(P5973856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5973856電動パワーステアリング装置および電動パワーステアリング装置の制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973856
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置および電動パワーステアリング装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/10 20060101AFI20160809BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20160809BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20160809BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   H02P6/10
   H02M7/48 F
   B62D5/04
   B62D6/00
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-203868(P2012-203868)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-60842(P2014-60842A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
(72)【発明者】
【氏名】加島 督己
(72)【発明者】
【氏名】吉武 敦
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−327173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/10
H02M 7/48
B62D 5/04
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールの操舵操作に伴い転舵輪を転舵させる操舵機構と、
前記操舵機構に操舵力を付与する三相ブラシレスモータと、
車両の運転状態に基づき、前記三相ブラシレスモータを駆動制御する制御装置と、
前記制御装置に設けられ、車両の運転状況に応じて前記三相ブラシレスモータへの制御指令値を演算する電流制御部と、
前記制御装置に設けられ、前記制御指令値に応じて前記三相ブラシレスモータのu、v、w各相へのPWMデューティ信号を出力するPWM制御部と、
前記制御装置に設けられ、前記PWMデューティ信号によって駆動制御されるスイッチング回路によって構成され、前記三相ブラシレスモータを駆動制御するブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路に接続された直流母線に設けられ、前記直流母線に流れる直流母線電流を検出する電流センサと、
前記制御装置に設けられ、前記三相ブラシレスモータのu、v、w各相へのPWMデューティ信号のうち、通電時間が最も長い最大相のPWMデューティ信号がオンかつ通電時間が最も短い最小相および中間相のPWMデューティ信号がオフのときの前記直流母線電流および前記最大相のPWMデューティ信号がオンかつ前記中間相のPWMデューティ信号がオンのときの前記直流母線電流に基づき、前記u、v、w各相の電流値を推定する相電流演算部と、
前記制御装置に設けられ、前記最大相のPWMデューティ信号のオンタイミングと前記中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差が第1所定値より小さくなったとき、前記最大相と中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差が前記第1所定値より大きい第2所定値以上となるように前記最大相または中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの位相を補正すると共に、前記中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングと前記最小相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差が前記第1所定値より小さくなったとき、前記中間相と最小相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差が前記第2所定値以上となるように前記中間相または最小相のPWMデューティ信号のオンタイミングの位相を補正するパルスシフト制御を行うパルスシフト制御回路と、
記パルスシフト制御回路に設けられ、前記中間相の前記補正前オン区間が、前記最小相の前記補正前オン区間よりも短くかつその差が前記第3所定値以上となったとき、前記最小相の前記パルスシフト制御による位相の補正を中止すると共に、前記最小相と前記中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差が前記第2所定値以上となるように前記中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの位相を補正することにより、前記u、v、w相のうち前記中間相であった相を最小相に切り替え前記最小相であった相を前記中間相に切り替えて前記パルスシフト制御による位相の補正を行う相切り替え制御回路と、
を有することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記パルスシフト制御回路による前記位相の補正量は、前記電流センサが直流母線電流を検出する検出タイミングの最大誤差量である検出最短時間に第3所定値を加えた値であることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記パルスシフト制御回路は、前記最大相と中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差または前記中間相と最小相のオンタイミングの差が前記検出最短時間に前記第3所定値を加えた時間より短くなったとき、前記パルスシフト制御を行うことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
ステアリングホイールの操舵操作に伴い三相ブラシレスモータによって転舵輪に操舵力を付与する電動パワーステアリング装置の制御装置であって、
車両の運転状況に応じて前記三相ブラシレスモータへの制御指令値を演算する電流制御部と、
前記制御指令値に応じて前記三相ブラシレスモータのu、v、w各相へのPWMデューティ信号を出力するPWM制御部と、
前記PWMデューティ信号によって駆動制御されるスイッチング回路によって構成され、前記三相ブラシレスモータを駆動制御するブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路に接続された直流母線に設けられ、前記直流母線に流れる直流母線電流を検出する電流センサと、
前記三相ブラシレスモータのu、v、w各相へのPWMデューティ信号のうち、通電時間が最も長い最大相のPWMデューティ信号がオンかつ通電時間が最も短い最小相および中間相のPWMデューティ信号がオフのときの前記直流母線電流および前記最大相のPWMデューティ信号がオンかつ前記中間相のPWMデューティ信号がオンのときの前記直流母線電流に基づき、前記u、v、w各相の電流値を推定する相電流演算部と、
前記最大相のPWMデューティ信号のオンタイミングと前記中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差が第1所定値より小さくなったとき、前記最大相と中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差が前記第1所定値より大きい第2所定値以上となるように前記最大相または中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの位相を補正すると共に、前記中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングと前記最小相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差が前記第1所定値より小さくなったとき、前記中間相と最小相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差が前記第2所定値以上となるように前記中間相または最小相のPWMデューティ信号のオンタイミングの位相を補正するパルスシフト制御を行うパルスシフト制御回路と、
前記パルスシフト制御回路に設けられ、前記中間相の前記補正前オン区間が、前記最小相の前記補正前オン区間よりも短くかつその差が前記第3所定値以上となったとき、前記最小相の前記パルスシフト制御による位相の補正を中止すると共に、前記最小相と前記中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差が前記第2所定値以上となるように前記中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの位相を補正することにより、前記u、v、w相のうち前記中間相であった相を最小相に切り替え前記最小相であった相を前記中間相に切り替えて前記パルスシフト制御による位相の補正を行う相切り替え制御回路と、
を有することを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置および電動パワーステアリング装置の制御装置。
【背景技術】
【0002】
電動パワーステアリング装置では、モータの相電流を用いてモータ電流をフィードバック制御している。従来、各相の相電流を1つの電流センサを用いて検出する方法として、特許文献1,2には、三相の電圧指令値の大きい順に最大相、中間相、最小相としたとき、中間相のPWMスイッチングタイミングに対して最大相と最小相のPWMパルスの位相をずらす位相補正により、検出に必要な時間を確保することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-327173号公報
【特許文献2】特開2008-131770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電圧指令値が各相間で近接している状況では、検出誤差やPWMパルスの位相補正で発生する電流リプルにより、電圧指令値が振れ、電圧指令値が近接している相間で、PWMパルスの位相補正を行う相が頻繁に切り替わることで、磁歪音のノイズ化による騒音が発生するという問題があった。
本発明の目的は、磁歪音のノイズ化による騒音の発生を低減できる電動パワーステアリング装置および電動パワーステアリング装置の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、最大相のパルスシフト制御による補正前のPWMデューティ信号の通電時間である補正前オン区間が、中間相の補正前オン区間よりも短くかつその差が第3所定値以上となったとき、三相のうち最大相であった相を中間相に切り替え中間相であった相を最大相に切り替えると共に、中間相の補正前オン区間が、最小相の補正前オン区間よりも短くかつその差が第3所定値以上となったとき、三相のうち中間相であった相を最小相に切り替え最小相であった相を中間相に切り替える。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明によれば、磁歪音のノイズ化による騒音の発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電動パワーステアリング装置の全体構成図である。
図2】パワーステアリングモータの制御構成図である。
図3】電圧指令補正部11の制御ブロック図である。
図4】ヒステリシス補正部13と電圧大中小相判断部14の動作を示す三角波キャリアと電圧指令およびPWMパルスである。
図5】PWMパルス操作量算出部15の動作を示す三角波キャリアと電圧指令およびPWMパルスである。
図6】実施例1の騒音レベル低減作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の電動パワーステアリング装置およびその制御装置を実施するための形態を、図面に基づく実施例により説明する。
【0009】
〔実施例1〕
まず、構成を説明する。
図1は、電動パワーステアリング装置100の全体構成図である。
電動パワーステアリング装置100は、運転者による操舵操作が入力されるステアリングホイール101と、ステアリングホイール101に接続される転舵軸102と、転舵軸102と一体に回転するピニオン103と、ピニオン103を噛み合いピニオン103の回転運動を直線運動に変換するラック104と、ラック104の運動を転舵輪112,113に伝達するタイロッド105とを有している。これらはステアリングホイール101の操舵操作を転舵輪112,113に伝達する操舵機構106を構成している。また転舵軸102には、ステアリングホイール101に入力された操舵トルクを検出するトルクセンサ107、転舵軸102と一体に回転するウォームホイール108が設けられている。ウォームホイール108には、ウォームシャフト109が噛み合っている。ウォームシャフト109の一端側には操舵機構106の操舵力を付与するパワーステアリングモータ110が設けられている。パワーステアリングモータ110は、三相ブラシレスモータであり、電子コントロールユニット111により制御され、電子コントロールユニット(制御装置)111はトルクセンサ107が検出した操舵トルクや車速等の車両の運転状態に応じてパワーステアリングモータ110が付与する操舵力を制御する。
【0010】
図2は、パワーステアリングモータの制御構成図であり、モータ6(パワーステアリングモータ110)は、6個のスイッチング素子(スイッチング回路)3からなる三相ブリッジ回路4を介して直流電源1と接続されている。直流電源1は、例えば、車両に搭載されたバッテリとする。直流電源1には、平滑コンデンサ2が並列に接続されている。平滑コンデンサ2と三相ブリッジ回路4との間の下流側、すなわち、直流母線の下流側には、シャント抵抗(電流センサ)5が設けられている。モータ6は回転子角度センサ7を備える。
コントローラ8は、電流検出部(相電流演算部)9と、電流制御部10と、電圧指令補正部(パルスシフト制御回路)11と、PWM制御部12とを備える。電流検出部9は、シャント抵抗5に流れる下流側直流母線電流IDCを入力とし、IDCを基に三相に流れる電流iu,iv,iwを検出する。電流制御部10は、外部から与えられる指令電流値Id*,Iq*と回転子角度センサ7により検出されたモータ回転子角度θを入力とし、ベクトル制御により指令電流値Id*,Iq*がモータ6に流れるように第1の三相電圧指令値Vu1*,Vv1*,Vw1*を出力して三相の電流iu,iv,iwを制御する。電圧指令補正部11は、第1の電圧指令値Vu1*,Vv1*,Vw1*を入力として電流検出用に電圧を補正して第2の電圧指令値Vu2*,Vv2*,Vw2*を出力する(パルスシフト制御)。PWM制御部12は、第2の電圧指令値Vu2*,Vv2*,Vw2*と三角波キャリア信号を比較することでスイッチング信号を生成する。
シャント抵抗5に流れる電流IDCは、三相ブリッジ回路4のスイッチングによって直流電源1から交流電圧が生成されてモータ6に三相の電流iu,iv,iwが流れ、この三相ブリッジ回路4のスイッチングタイミングの差で生じる瞬間電圧によってシャント抵抗5に瞬間電流IDCが流れる。よって、電流IDCは第2の電圧指令値Vu2*,Vv2*,Vw2*の信号を基にADタイミングと電流IDCが三相のうちどの相の電流であったかを導き出す。
図2において、直流電源1とモータ6を除く構成は全て図1の電子コントロールユニット111の内部に設けられている。
【0011】
図3は、電圧指令補正部11の制御ブロック図である。
電圧指令補正部11は、ヒステリシス補正部13と、電圧大中小相判断部14と、PWMパルス操作量算出部(相切り替え制御回路)15とを備える。ヒステリシス補正部13は、第1の電圧指令値Vu1*,Vv1*,Vw1*をヒステリシスThys(第3所定値)分の電圧V(Thys)で補正した仮想電圧指令値Vu*im,Vv*im,Vw*imを出力する。電圧大中小相判断部14は、仮想電圧指令値Vu*im,Vv*im,Vw*imを入力として今回の仮想電圧指令値の大中小相を判断した結果を出力する。PWMパルス操作量算出部15は、今回の大中小相情報と第1の電圧指令値Vu1*,Vv1*,Vw1*を入力として電圧大−電圧中相の相間電圧差から電圧中相を基準に電圧大相のPWMパルス操作量ΔVmaxcを演算すると共に、電圧中−電圧小相の相間電圧差から電圧中相を基準に電圧小相のPWMパルス操作量ΔVmincを演算し、今回大中小相情報によりU相V相W相のPWMパルス操作量ΔVu*,ΔVv*,ΔVw*に振分けてこれを出力する。また第1の電圧指令値Vu1*,Vv1*,Vw1*とPWMパルス操作量ΔVu*,ΔVv*,ΔVw*とを加算して第2の電圧指令値Vu2*,Vv2*,Vw2*を出力する。
ここで、ヒステリシス補正部13では、今回の大中小相情報をバッファして前回の大中小相情報として出力された信号を基にヒステリシス分の電圧を補正する相と補正の方向を決定する。
【0012】
図4は、ヒステリシス補正部13と電圧大中小相判断部14の動作を示す三角波キャリアと電圧指令およびPWMパルスであり、図4では、第1の電圧指令値Vu1*,Vv1*,Vw1*がVu1*>Vv1*>Vw1*の状態から電圧小相だけが電圧中相に近づいてVu1*>Vw1*>Vv1*へ電圧指令値の状態が遷移する状況を示している。
図4(a)では、電圧大相がVu1*で電圧中相がVv1*で電圧小相がVw1*となっている。ヒステリシス補正部13は、ヒステリシス分の時間Thysを実現するPWMパルスに相当する電圧V(Thys)を電圧大相に加算すると共に電圧小相から減算し、仮想電圧指令値Vu*im,Vv*im,Vw*imを出力する。すなわち、
Vu*im = Vu1* + V(Thys)
Vu*im = Vv1* + 0
Vu*im = Vw1* - V(Thys)
となる。
電圧大中小相判断部14では、この仮想電圧指令値を基に電圧大中小相判断を行うため、図4(b)では電圧指令値の状態がVu1*>Vw1*>Vv1*となっているが、電圧大相がU相で電圧中相がV相で電圧小相がW相に大中小相情報が固定される。電圧大中小相判断部14は、図4(c)その瞬間後の図4(d)のように仮想電圧指令値がVu*im>Vv*im>Vw*imからVu*im>Vw*im>Vv*imに遷移したとき、電圧大中小相情報を更新する。よって、電流制御で出力された電圧指令値が各相間で近接している状況で、検出誤差やPWMパルス操作で発生する電流リプルによって電流制御部10により出力される第1の電圧指令値Vu1*,Vv1*,Vw1*が振れても、PWMパルス操作を行う相が頻繁に切り替わることがない。
【0013】
図5は、PWMパルス操作量算出部15の動作を示す三角波キャリアと電圧指令およびPWMパルスである。
PWMパルス操作量は電圧大−電圧中相と電圧中−電圧小相の各々の相間電圧差に対してIDCの瞬間電流を最低限検出するのに必要な時間が確保できるように設計する。すなわち、IDCの瞬間電流を検出するために最低限必要な時間(検出最短時間)をTdctとしてこれを実現するPWMパルスに相当する電圧をV(Tdct)とし、またヒステリシス分の時間をThysとしてこれを実現するPWMパルスに相当する電圧をV(Thys)としたとき、PWMパルス操作量の最大値Vpmaxは、
Vpmax = V(Tdct) + V(Thys)
ただし、V(Tdct) > 0 , V(Thys) > 0
となる。
また、各相のPWMパルス操作量は仮想電圧指令値Vu*im,Vv*im,Vw*imがVu*im>Vv*im>Vw*imであった場合に、
ΔVu* = ΔVmaxc = Vpmax - (Vu1* - Vv1*)
ΔVv* = 0
ΔVw* = ΔVminc = -(Vpmax - (Vv1* - Vw1*))
ただし、0 < ΔVmaxc < Vpmax , -Vpmax < ΔVminc < 0
となる。
この状態を示したのが図5である。図5では図4と同じような第1の電圧指令値Vu1*,Vv1*,Vw1*がVu1*>Vv1*>Vw1*の状態から電圧小相だけが電圧中相に近づいてVu1*>Vw1*>Vv1*へ電圧指令値の状態が遷移するときのPWMパルス操作量を示している。図5に示すように、PWMパルス操作量をV(Tdct) + V(Thys)としたことで、ヒステリシスThysを設けた場合であっても、IDCの瞬間電流を検出するために最低限必要な時間Tdctを確保できる。
ここで、上述したパルスシフト制御は、最大相と中間相間、または中間相と最小相間のPWMデューティ信号のONタイミングの差がTdct + Thysよりも短くなったときに開始し、最大相と中間相間、または中間相と最小相間のPWMデューティ信号のオンタイミングの差がTdctより長くなったとき終了するものとする。
また、PWMパルス操作量は、PWMパルス操作量算出部15による切り替え前はTdctとし、切り替え後はTdct + Thysとする。さらに、モータ6の回転数が所定値以上の場合はPWMパルス操作量をTdctとし、所定値未満の場合はPWMパルス操作量をTdct + Thysとする。加えて、PWM制御部12が発生する三相交流電圧の実効値が所定値以上の場合はPWMパルス操作量をTdctとし、所定値未満の場合はPWMパルス操作量をTdct + Thysとする。
【0014】
次に、作用を説明する。
[従来のパルスシフト制御の問題点]
近年では、電流制御により三相の電圧指令値を出力し、これに基づいてPWMパルスを生成してインバータを駆動させてモータを制御する装置において、電流制御に用いる相電流を直流母線電流から検出する技法が用いられている(1シャント電流制御)。この技法は、PWM周期の半周期中に各相間で電圧差(PWMパルスの時間差)が生じた際に直流母線に流れる瞬間電流を検出することで各相の電流を再現するものである。
しかし、電流制御で出力される電圧指令値が各相で近接する場合には、検出するための十分なPWMパルスの時間差がないため、精度よく電流を検出できない。
特開2001−327173号公報には、電流制御で出力される電圧指令値が各相で近接する場合においても確実に検出できるよう、電流制御で出力される電圧指令値に基づいて生成されたPWMパルスに対し、各相間の電圧差(PWMパルスの時間差)を監視し、検出に必要な時間が最低限確保できるように、PWMキャリア周期の半周期中で電圧差を拡げるようにPWMパルスを操作し、次の半周期では拡げた分を相殺する方向にPWMパルスを操作する技術が開示されている(以下、パルスシフト制御と称す。)。すなわち、三相の電圧指令値の大きい順に最大相、中間相、最小相としたとき、検出に必要なPWMパルスの操作は、中間相のPWMスイッチングタイミングから検出時間を最低限確保する方向に最大相と最小相のPWMパルスの位相をずらす操作となる。このパルスシフト制御により、検出時には拡げられた電圧差により確実に直流母線電流を検出できると共に、さらに拡げた分を相殺するようにPWMパルスを操作することで平均指令電圧を電流制御で出力した電圧指令と同等にしてモータを精度よく制御できる。
一方、上記従来技術では、PWMキャリア周期の前半(PWMタイマの上り)と後半(PWMタイマの下り)の期間に分割し、常に前半か後半かの一方でしか電流の検出ができないという課題がある。実際、インバータを駆動させるFETスイッチはONとOFFの作動速度に差があり、これらを要因として電流リプルの値がPWMキャリア周期の前半と後半とで異なるため、一方のみの期間で電流を検出すれば偏りが生じてしまう。
上記課題に対し、特開2008−131770号公報には、PWMパルスの操作をPWM周期の(2n+1)/2周期(n:自然数)で1サイクルとすることで、検出期間をPWMタイマの上りと下りで交互に取り、偏りなく高精度に電流を検出することが開示されている。
【0015】
上記2つの従来技術は、PWMパルスの操作サイクルまたは操作パターンは異なるものの、どちらも電流制御で出力された電圧指令値を基に各相間の電圧差を監視してパルス操作を行う相とパルス操作量を算定している。ここで、パルスシフト制御を行うと、電圧差を拡げる分だけ電流が瞬間的に増え、拡げた分を相殺する分だけ電流が瞬間的に減る。すなわちPWMパルス操作の1サイクルを1周期とした電流リプルが発生し、電流リプルの大きさはPWMパルス操作量と直流電圧量とモータ電気特性により決まる。さらに電流リプルはPWMパルス操作を行う相が一定の場合、PWMパルス操作1サイクルの周波数音(磁歪音)を発生させ、レベルは電流リプルに依存する。
電流制御で出力された電圧指令値が各相間で近接している状況(例えば、モータ無回転近傍時且つ電流指令0[A]近傍時や、三相交流電圧のクロスポイント)では、検出誤差やPWMパルス操作で発生する電流リプルにより、電流制御により出力される電圧指令値が振れ、電圧指令値が近接している相間で、PWMパルス操作を行う相が頻繁に切り替わる。このため、PWMパルス操作を行う相が一定の場合とは異なり、磁歪音が一定の周波数ではなく、PWMパルス操作を行う相が頻繁に切り替わることで様々な周波数音(ノイズ)が発生する。特に、実施例1のように電動パワーステアリング装置に使用されるモータ制御装置は、インバータのFETスイッチング音を聴こえにくくするため、PWM周波数を15kHz〜20kHzに設定している(可聴域200Hz〜20kHz)。PWMパルス操作周期がPWMキャリア周期のm周期で1サイクルの場合、PWMパルス操作を行う相が一定であれば磁歪音の周波数はPWMキャリア周波数/mとなるが、PWMパルス操作を行う相が頻繁に切り替わると、磁歪音がノイズ化して騒音となる。
【0016】
[騒音低減作用]
これに対し、実施例1のパルスシフト制御では、三相の第1の電圧指令値のうち電圧大相の電圧指令値にヒステリシス分の時間Thysを実現するPWMパルスに相当する電圧V(Thys)を加算すると共に電圧小相の電圧指令値から電圧V(Thys)を減算して仮想電圧指令値を求め、仮想電圧指令値を比較して電圧大中小相判断を行う。よって、三相の第1の電圧指令値の大小が頻繁に切り替わった場合であっても、電圧差がヒステリシス分の電圧V(Thys)以上となるまでは、ヒステリシスの機能によって大中小相判断結果が切り替わるのを抑制できるため、磁歪音のノイズ化による騒音の発生を低減できる。図6は、実施例1の騒音レベル低減作用を示す図であり、実施例1では、従来技術に対して可聴領域におけるノイズの騒音レベルを大幅に改善している。
また、PWMパルス操作量は、シャント抵抗5がIDCの瞬間電流を検出するために最低限必要な時間Tdctを実現するPWMパルスに相当する電圧V(Tdct)に、ヒステリシスThys分の電圧V(Thys)を加えた電圧(V(Tdct) + V(Thys))とする。実施例1では、実際に大中小相が切り替わっている場合でも、ヒステリシスThysを設けて大中小相判断を行うため、仮にPWMパルス操作量を従来技術と同じV(Tdct)とした場合、IDCの瞬間電流を確保するために最低限必要な時間Tdctを確保できない場合があり、検出精度が低下する。PWMパルス操作量をV(Tdct) + V(Thys)とすることで、ヒステリシスThysを設けた場合であってもTdctを確保でき、検出精度を高めることができる。さらに、パルス操作量を常に一定(V(Tdct) + V(Thys))としているため、制御を簡素化できる。
【0017】
実施例1では、パルスシフト制御は、最大相と中間相間、または中間相と最小相間のPWMデューティ信号のONタイミングの差がTdct + Thysよりも短くなったときに行う。つまり、Tdctを確保できる場合は、パルスシフト制御を開始しないことで、ヒステリシスThysを加えたことにより検出誤差が生じるリスクを低減できる。
また、最大相と中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差または中間相と最小相のオンタイミングの差が検出最短時間Tdctより長くなったとき、パルスシフト制御を終了する。つまり、パルスシフト制御が不要となった場合には、パルスシフト制御を終了し、通常タイミングのPWM制御に戻すことにより、パルスシフト制御による影響を低減できる。
PWMパルス操作量は、PWMパルス操作量算出部15による切り替え前はTdctとし、切り替え後はTdct + Thysとする。つまり、相切り替え前のパルスシフト量を抑制することにより、ノイズの低減化を図ることができる。
また、PWMパルス操作量は、モータ6の回転数が所定値以上の場合はTdctとし、所定値未満の場合はTdct + Thysとする。すなわち、モータ回転数が所定値以上のときは、相切り替えによるノイズの影響が小さいため、位相の補正量にヒステリシスThysを加えないことにより、Thysを加えた場合におけるデューティの使用可能範囲の減少を抑制できる。
さらに、PWM制御部12が発生する三相交流電圧の実効値が所定値以上の場合はPWMパルス操作量をTdctとし、所定値未満の場合はPWMパルス操作量をTdct + Thysとする。すなわち、三相交流電圧の実効値が所定値以上のときは、位相変化量に対する電圧変化量が大きいため、PWMパルス操作量を小さくしても検出精度を確保することができ、その結果、デューティの使用可能範囲の減少を抑制できる。
【0018】
実施例1にあっては、以下に列挙する効果を奏する。
(1) ステアリングホイール101の操舵操作に伴い転舵輪112,113を転舵させる操舵機構106と、操舵機構106に操舵力を付与するパワーステアリングモータ110と、車両の運転状態に基づき、パワーステアリングモータ110を駆動制御する電子コントロールユニット111と、電子コントロールユニット111に設けられ、車両の運転状況に応じてパワーステアリングモータ110への制御指令値を演算する電流制御部10と、電子コントロールユニット111に設けられ、制御指令値に応じてパワーステアリングモータ110のu、v、w各相へのPWMデューティ信号を出力するPWM制御部12と、電子コントロールユニット111に設けられ、PWMデューティ信号によって駆動制御されるスイッチング素子3によって構成され、パワーステアリングモータ110を駆動制御する三相ブリッジ回路4と、三相ブリッジ回路4に接続された直流母線に設けられ、直流母線に流れる直流母線電流を検出するシャント抵抗5と、電子コントロールユニット111に設けられ、パワーステアリングモータ110のu、v、w各相へのPWMデューティ信号のうち、通電時間が最も長い最大相のPWMデューティ信号がオンかつ通電時間が最も短い最小相および中間相のPWMデューティ信号がオフのときの直流母線電流および最大相のPWMデューティ信号がオンかつ中間相のPWMデューティ信号がオンのときの直流母線電流に基づき、u、v、w各相の電流値を推定する電流検出部9と、電子コントロールユニット111に設けられ、最大相のPWMデューティ信号のオンタイミングと中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差が第1所定値(例えば、IDCの瞬間電流を検出するために最低限必要な時間Tdct)より小さくなったとき、最大相と中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差が第1所定値より大きい第2所定値(Tdct+α)以上となるように最大相または中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの位相を補正すると共に、中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングと最小相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差が第1所定値より小さくなったとき、中間相と最小相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差が第2所定値以上となるように中間相または最小相のPWMデューティ信号のオンタイミングの位相を補正するパルスシフト制御を行う電圧指令補正部11と、電子コントロールユニット111に設けられ、電圧指令補正部11に設けられ、最大相のパルスシフト制御による補正前のPWMデューティ信号の通電時間である補正前オン区間が、中間相の補正前オン区間よりも短くかつその差がヒステリシスThys以上となったとき、パルスシフト制御による位相の補正を中止することによりu、v、w相のうち最大相であった相を中間相に切り替え中間相であった相を最大相に切り替えると共に、中間相の補正前オン区間が、最小相の補正前オン区間よりも短くかつその差がヒステリシスThys以上となったとき、パルスシフト制御による位相の補正を中止することによりu、v、w相のうち中間相であった相を最小相に切り替え最小相であった相を中間相に切り替えるPWMパルス操作量算出部15と、を有する。
よって、パルスシフト制御を行う相の切り替えにヒステリシスThysを設けることにより、頻繁な相切り替えが抑制され、磁歪音のノイズ化による騒音の発生を低減できる。
【0019】
(2) PWMパルス操作量算出部15による位相の補正量は、シャント抵抗5が直流母線電流を検出する検出タイミングの最大誤差量である検出最短時間TdctにヒステリシスThysを加えた値である。
よって、直流母線電流の検出に最低限必要な検出タイミングの最大誤差量に、ヒステリシスThysを加えた値を位相補正量とすることにより、直流母線電流の検出精度を高めることができる。
(3) 電圧指令補正部11は、最大相と中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差または中間相と最小相のオンタイミングの差が検出最短時間TdctにヒステリシスThysを加えた時間より短くなったとき、パルスシフト制御を行う。
よって、パルスシフト制御開始タイミングを上記のように構成することにより、ヒステリシスThysを加えない場合に比べ、検出誤差が生じるリスクを低減できる。
【0020】
(4) ステアリングホイール101の操舵操作に伴いパワーステアリングモータ110によって転舵輪112,113に操舵力を付与する電動パワーステアリング装置の制御装置であって、車両の運転状況に応じてパワーステアリングモータ110への制御指令値を演算する電流制御部10と、記制御指令値に応じてパワーステアリングモータ110のu、v、w各相へのPWMデューティ信号を出力するPWM制御部12と、PWMデューティ信号によって駆動制御されるスイッチング素子3によって構成され、パワーステアリングモータ110を駆動制御する三相ブリッジ回路4と、三相ブリッジ回路4に接続された直流母線に設けられ、直流母線に流れる直流母線電流を検出するシャント抵抗5と、パワーステアリングモータ110のu、v、w各相へのPWMデューティ信号のうち、通電時間が最も長い最大相のPWMデューティ信号がオンかつ通電時間が最も短い最小相および中間相のPWMデューティ信号がオフのときの直流母線電流および最大相のPWMデューティ信号がオンかつ中間相のPWMデューティ信号がオンのときの直流母線電流に基づき、u、v、w各相の電流値を推定する電流検出部9と、最大相のPWMデューティ信号のオンタイミングと中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差が第1所定値より小さくなったとき、最大相と中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差が第1所定値より大きい第2所定値以上となるように最大相または中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの位相を補正すると共に、中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングと最小相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差が第1所定値より小さくなったとき、中間相と最小相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差が第2所定値以上となるように中間相または最小相のPWMデューティ信号のオンタイミングの位相を補正するパルスシフト制御を行う電圧指令補正部11と、電圧指令補正部11に設けられ、最大相のパルスシフト制御による補正前のPWMデューティ信号の通電時間である補正前オン区間が、中間相の補正前オン区間よりも短くかつその差がヒステリシスThys以上となったとき、パルスシフト制御による位相の補正を中止することによりu、v、w相のうち最大相であった相を中間相に切り替え中間相であった相を最大相に切り替えると共に、中間相の補正前オン区間が、最小相の補正前オン区間よりも短くかつその差がヒステリシスThys以上となったとき、パルスシフト制御による位相の補正を中止することによりu、v、w相のうち中間相であった相を最小相に切り替え最小相であった相を中間相に切り替えるPWMパルス操作量算出部15と、を有する。
よって、パルスシフト制御を行う相の切り替えにヒステリシスThysを設けることにより、頻繁な相切り替えが抑制され、磁歪音のノイズ化による騒音の発生を低減できる。
【0021】
(他の実施例)
以上、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例に示した構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施例では、直流母線の下流側に電流センサ(シャント抵抗5)を設けた構成としたが、直流母線の上流側に電流センサを設けた構成としても良い。
【0022】
以下に、実施例から把握される特許請求の範囲に記載した発明以外の技術的思想について説明する。
(a) 請求項2に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記パルスシフト制御回路は、前記最大相と中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差または前記中間相と最小相のオンタイミングの差が前記検出最短時間より長くなったとき、前記パルスシフト制御を終了することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
よって、パルスシフト制御が不要となったとき、パルスシフト制御を終了し、通常タイミングのPWM制御に戻すことにより、パルスシフト制御による影響を低減できる。
(b) 請求項2に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記パルスシフト制御回路による前記位相の補正量は、常に前記検出最短時間に前記第3所定値を加えた値であることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
よって、補正量を一定値とすることにより、制御を簡素化できる。
(c) 請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記パルスシフト制御回路による前記位相の補正量は、前記相切り替え制御回路による切り替え前は前記検出最短時間とし、切り替え後は前記検出最短時間に前記第3所定値を加えた値とすることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
よって、相切り替え制御前のパルスシフト量を抑制することにより、ノイズの低減化を図ることができる。
【0023】
(d) 請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記パルスシフト制御回路は、前記三相ブラシレスモータの回転数が所定値以上のとき、前記位相の補正量を前記検出最短時間とすることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
よって、モータ回転数が所定値以上のときは、相切り替えによるノイズの影響が小さいため、位相の補正量に第3所定値を加えないことにより、第3所定値を加えた場合におけるデューティの使用可能範囲の減少を抑制できる。
(e) 請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記パルスシフト制御回路は、前記PWM制御部が発生する三相交流電圧の実効値が所定値以上のとき、前記位相の補正量を前記検出最短時間に前記第3所定値を加えた値よりも小さい値とすることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
よって、三相交流電圧の実効値が所定値以上のときは、位相変化量に対する電圧変化量が大きいため、位相の補正量を小さくしても検出精度を確保することができ、その結果、デューティの使用可能範囲の減少を抑制できる。
(f) 請求項4に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置において、
前記パルスシフト制御回路による前記位相の補正量は、前記電流センサが直流母線電流を検出する検出タイミングの最大誤差量である検出最短時間に第3所定値を加えた値であることを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
よって、直流母線電流の検出に最低限必要な検出タイミングの最大誤差量に、第3所定値を加えた値を位相補正量とすることにより、直流母線電流の検出精度を高めることができる。
【0024】
(g) (f)に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置において、
前記パルスシフト制御回路は、前記最大相と中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差または前記中間相と最小相のオンタイミングの差が前記検出最短時間に前記第3所定値を加えた時間より短くなったとき、前記パルスシフト制御を行うことを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
よって、パルスシフト制御開始タイミングを上記のように構成することにより、第3所定値を加えない場合に比べ、検出誤差が生じるリスクを低減できる。
(h) (f)に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置において、
前記パルスシフト制御回路は、前記最大相と中間相のPWMデューティ信号のオンタイミングの差または前記中間相と最小相のオンタイミングの差が前記検出最短時間より長くなったとき、前記パルスシフト制御を終了することを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
よって、パルスシフト制御が不要となったとき、パルスシフト制御を終了し、通常タイミングのPWM制御に戻すことにより、パルスシフト制御による影響を低減できる。
(i) (f)に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置において、
前記パルスシフト制御回路による前記位相の補正量は、常に前記検出最短時間に前記第3所定値を加えた値であることを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
よって、補正量を一定値とすることにより、制御を簡素化できる。
【0025】
(j) 請求項4に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置において、
前記パルスシフト制御回路による前記位相の補正量は、前記相切り替え制御回路による切り替え前は前記検出最短時間とし、切り替え後は前記検出最短時間に前記第3所定値を加えた値とすることを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
よって、相切り替え制御前のパルスシフト量を抑制することにより、ノイズの低減化を図ることができる。
(k) 請求項4に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置において、
前記パルスシフト制御回路は、前記三相ブラシレスモータの回転数が所定値以上のとき、前記位相の補正量を前記検出最短時間とすることを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
よって、モータ回転数が所定値以上のときは、相切り替えによるノイズの影響が小さいため、位相の補正量に第3所定値を加えないことにより、第3所定値を加えた場合におけるデューティの使用可能範囲の減少を抑制できる。
(l) 請求項4に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置において、
前記パルスシフト制御回路は、前記PWM制御部が発生する三相交流電圧の実効値が所定値以上のとき、前記位相の補正量を前記検出最短時間に前記第3所定値を加えた値よりも小さい値とすることを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
よって、三相交流電圧の実効値が所定値以上のときは、位相変化量に対する電圧変化量が大きいため、位相の補正量を小さくしても検出精度を確保することができ、その結果、デューティの使用可能範囲の減少を抑制できる。
【符号の説明】
【0026】
3 スイッチング素子(スイッチング回路)
4 三相ブリッジ回路
5 シャント抵抗(電流センサ)
6 モータ(三相ブラシレスモータ)
9 電流検出部(相電流演算部)
10 電流制御部
11 電圧指令補正部(パルスシフト制御回路)
12 PWM制御部
15 パルス操作量算出部
100 電動パワーステアリング装置
101 ステアリングホイール
106 操舵機構
110 パワーステアリングモータ(三相ブラシレスモータ)
111 電子コントロールユニット(制御装置)
112,113 転舵輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6