(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記評価工程は、成形状態が良好と判断された前記中子組立体のみを、前記生タイヤを加硫する加硫金型に搬出する搬出工程を含む請求項1又は2記載の中子組立体の検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の中子組立体の検査方法(以下、単に「検査方法」ということがある)では、中子2の外表面に生タイヤ3が形成された中子組立体4の輪郭形状を測定する測定装置1が用いられる。この測定装置1は、例えば、タイヤの連続生産ラインMに配置されている。
【0018】
タイヤの連続生産ラインMは、
図1に示されるように、例えば、中子組立体4を形成する生タイヤ成形装置(図示省略)、生タイヤ成形装置(図示省略)から測定装置1まで中子組立体4を搬送する搬入装置7、測定装置1で測定された中子組立体4を加硫金型(図示省略)に搬送する搬出装置8、及び、生タイヤ3を加硫する加硫金型を含んでいる。搬入装置7、及び、搬出装置8は、床面53に支持されている各レール7a、8aに沿って案内される。
【0019】
図3及び
図4に示されるように、中子2は、外表面11sにタイヤ成形面を有する環状の中子本体11と、この中子本体11の中心孔11hに内挿されるコア12と、中子本体11の軸心方向の両側に配される一対の側壁体13L、13Uとが設けられている。
【0020】
中子本体11は、タイヤ周方向に分割された大きさの異なる複数のセグメント11A、11Bから構成されている。また、コア12は、円筒状に形成されている。このコア12は、中子本体11の中心孔11hに内挿されている。また、コア12の外周面、及び、セグメント11A、11Bの内周面には、軸心方向にのび、かつ、互いに係合する蟻溝19a、又は、蟻ほぞ19bがそれぞれ形成されている。これにより、コア12、及び、セグメント11A、11Bは、軸心方向にのみ相対移動可能に連結されている。
【0021】
また、コア12の軸心方向の一方側には、一方の側壁体13Lが固着されている。さらに、コア12の軸心方向の他方側には、他方の側壁体13Uが固着されている。この他方の側壁体13Uは、コア12の中心孔12hに設けられる内ネジ部14を介して、着脱自在に螺合されている。このような一対の側壁体13L、13Uは、コア12の軸心方向への移動を阻止して、中子本体11と、コア12とを一体に保持することができる。
【0022】
さらに、各側壁体13L、13Uには、それらの外側面に、軸心方向の外側に突出する支持軸部15が設けられている。この支持軸部15には、外端部に同心に凹設された連結孔部16と、該連結孔部16の内周面に沿ってのびる周溝16Aとが設けられている。このような支持軸部15は、中子支持部5等に設けられるチャック部17に、連結手段18を介して着脱自在に自動連結される。
【0023】
図5に拡大して示されるように、チャック部17は、連結孔部16が挿入される連結筒部21と、該連結筒部21の内方に配置されるシリンダ室22とが設けられている。これらの連結筒部21及びシリンダ室22は、中子2(
図2に示す)の軸心方向で連通している。
【0024】
連結手段18は、支持軸部15の連結孔部16、チャック部17の連結筒部21、及び、連結孔部16と連結筒部21との間をロックするボールロック手段23を含んで構成されている。このボールロック手段23は、連結筒部21を内外に貫通する複数の貫通孔24と、該各貫通孔24に保持されるボール25と、シリンダ室22内に収納されるピストン片26と、連結筒部21の中心孔21h内に収納されるプランジャ27とが含まれる。ピストン片26、及び、プランジャ27は、シリンダ室22へ高圧空気が給排されることにより、一体移動可能に連結されている。また、プランジャ27の外周面は、軸心方向の外側に向かって先細状となるコーン面を有している。
【0025】
このような連結手段18は、先ず、チャック部17の連結筒部21が、支持軸部15の連結孔部16に挿入された状態において、プランジャ27を外側へ移動させる。このプランジャ27の移動により、ボール25が、外方へ押し出される。これにより、ボール25が連結孔部16の周溝16Aに押し付けられ、支持軸部15とチャック部17とを連結することができる。また、連結手段18は、プランジャ27を内側へ移動させることにより、ボール25の押し出しが解除される。これにより、支持軸部15とチャック部17との連結が解除される。
【0026】
図4に示されるように、生タイヤ3は、例えば、カーカスプライ、サイドウォールゴム、及び、トレッドゴム等を含むタイヤ部材を含んで構成される。これらのタイヤ部材が、中子2の外表面11s上に順次貼り付けられることにより、生タイヤ3を有する中子組立体4が形成される。
【0027】
図1及び
図2に示されるように、測定装置1は、中子組立体4を保持する中子支持部5、及び、中子組立体4の輪郭位置までの距離を測定する測定部6を含んで構成されている。これらの中子支持部5及び測定部6は、隣接して配置されている。
【0028】
図6に示されるように、中子支持部5は、中子2の支持軸部15を着脱自在に連結するチャック部17、チャック部17が一端に固着される回転軸36、及び、回転軸36を支持するフレーム37を含んで構成されている。
【0029】
チャック部17は、その軸心が水平に維持された状態で、回転軸36の一端に固着されている。これにより、中子支持部5は、中子組立体4の軸心が水平となる縦置き状態で、中子組立体4を保持することができる。また、フレーム37は、回転軸36を水平軸回りに回転可能に枢支する軸受部38と、回転軸36を水平軸回りに回転させる回転手段39とを含んで構成されている。
【0030】
回転手段39は、回転軸36の下方でフレーム37に固着される電動機41、電動機41のモーター軸41aに固着される下のプーリ42、回転軸36の他端に固着される上のプーリ43、及び、下のプーリ42と上のプーリ43との間を継ぐベルト44を含んで構成されている。下のプーリ42、及び、上のプーリ43は、水平軸回りに回転可能に配置されている。このような回転手段39は、電動機41が正転、又は、逆転することにより、回転軸36及びチャック部17を介して、中子組立体4を、
図2に示されるように、水平軸回り(中子組立体4の軸心4c回り)に正転、又は、逆転させることができる。
【0031】
図6に示されるように、本実施形態の中子支持部5は、フレーム37の下方に設けられる支持台46を介して設置されている。この支持台46は、水平にのびる基板47、基板47の上部で、中子支持部5を水平に移動させる水平移動手段48、及び、基板47を垂直軸回りに回転させて支持する回転支持手段49を含んでいる。
【0032】
水平移動手段48は、基板47の上面で水平にのびるガイドレール51と、このガイドレール51に係合するスライド機構52と、中子支持部5をガイドレール51に沿って水平に移動させる駆動手段(図示省略)とを含んでいる。また、ガイドレール51は、基板47の水平方向の両端間に亘って、中子組立体4の軸心方向にのびている。さらに、スライド機構52は、中子支持部5のフレーム37の下面に固着されている。
【0033】
このような水平移動手段48は、中子支持部5を軸心方向に移動させることができる。これにより、中子支持部5は、水平方向において、中子組立体4を、支持台46の内外に配置することができる。このような水平移動手段48は、例えば、測定部6、搬入装置7及び、搬出装置8に、中子組立体4が干渉するのを防ぎつつ、中子組立体4の測定や受け渡しをスムーズに行うのに役立つ。
【0034】
回転支持手段49は、床面53に固着される基台54と、基板47を垂直軸回りに回転可能に枢支する支持軸部55と、基板47を回転させる電動機(図示省略)とを含んで構成されている。この支持軸部55は、基板47の中央に配置されている。このような回転支持手段49は、電動機が正転、又は、逆転することにより、中子支持部5を、垂直軸回りに正転、又は、逆転させることができる。これにより、回転支持手段49は、
図1に示されるように、測定部6や搬入装置7が配置される搬入・測定位置P1と、搬出装置8が配置される搬出位置P2との間で、中子組立体4を、垂直軸回りに旋回させることができる。
【0035】
図1に示されるように、測定部6は、搬入・測定位置P1に配置される中子組立体4の軸心4cに対して、水平方向の一方側に設けられている。
図2及び
図7に示されるように、測定部6は、中子組立体4の輪郭位置4sまでの距離Lsを測定するセンサー56と、センサー56を移動させるセンサー移動手段57とを含んで構成されている。
【0036】
センサー56は、所謂レーザー式変位センサーからなる。このセンサー56は、
図7に示されるように、中子組立体4にレーザー光Raを照射する照射部56a、中子組立体4からのレーザー光Raの反射光Rbを受光する受光部56b、及び、照射部56aと受光部56bとを内蔵する一つの筺体56cに内蔵されている。また、センサー56の出力値は、筺体56cに取り付けられているケーブル(図示省略)を介して、例えば、測定装置1を制御するコンピュータ(図示省略)等に伝達される。
【0037】
本実施形態のセンサー移動手段57は、垂直軸回りに旋回移動可能なアーム62と、アーム62から下方にのびるブラケット63とを含んで構成されている。このセンサー移動手段57は、
図2に示されるように、床面53に固着される基台61によって支持されている。基台61は、床面53に沿って水平にのびる基板61aと、基板61aの上面から上方へのびる複数の縦枠61bと、縦枠61bの上端を水平に継ぐ横枠61cとを含んでいる。
【0038】
アーム62は、水平にのびる板状体からなる。このアーム62には、
図7において、中子組立体4を向く一端側に、上方にのびる垂直軸64が設けられている。また、本実施形態のアーム62は、垂直軸64を回転可能に枢支するアーム支持部65を介して、基台61に支持されている。
【0039】
アーム支持部65は、基台61の横枠61cの上方で水平にのびる支持板66、支持板66を垂直方向に貫通する孔部67、支持板66の上面に固着される筒部68、及び、支持板66の下面に固着される軸受69を含んで構成されている。
【0040】
図8に示されるように、支持板66は、平面視において、略横長矩形状に形成されている。また、支持板66は、
図7に示されるように、中子組立体4側を向く一端側が、基台61から水平方向に突出して配置されている。さらに、支持板66の他端側は、基台61の横枠61cに支持されている。これにより、支持板66は、基台61に片持ち状に支持される。
【0041】
孔部67、筒部68、及び、軸受69は、支持板66の一端側に設けられている。これらの孔部67、筒部68の孔、及び、軸受69の孔に、垂直軸64が挿通される。これにより、アーム支持部65は、
図8に示されるように、中子組立体4側を向く一端側で、垂直軸64を、垂直軸回りに回転可能に枢支することができる。この垂直軸64の回転により、アーム62は、垂直軸64を中心として、垂直軸回りに旋回することができる。
【0042】
図7及び
図8に示されるように、本実施形態のセンサー移動手段57は、アーム62を回転させるアーム駆動手段71が設けられている。このアーム駆動手段71は、支持板66に固着される電動機72、電動機72のモーター軸72aに固着される他端側プーリ73、垂直軸64の上端に固着される一端側プーリ74、及び、他端側プーリ73と一端側プーリ74とを連結するベルト75を含んで構成されている。
【0043】
このようなアーム駆動手段71は、電動機72が正転、又は、逆転することにより、
図8に示される平面視において、アーム62を正転、又は、逆転させることができる。また、一端側プーリ74の径は、筒部68の径よりも大に設定される。これにより、一端側プーリ74は、垂直軸64の抜け止めとして構成することができる。
【0044】
図7に示されるように、ブラケット63は、アーム62の下面から下方に垂下する垂下部77、及び、垂下部77とセンサー56とを連結する継部78を含んで構成されている。
【0045】
垂下部77は、
図7において、中子組立体4を向く一方側の縁77sに、アーム62から下方に向かって、他方側に傾斜する傾斜部79が形成される。このような傾斜部79は、垂下部77のアーム62側での強度を維持しつつ、中子組立体4との干渉を防ぐのに役立つ。また、継部78は、側面視略矩形の板状に形成されている。この継部78は、垂下部77の下端側とセンサー56上端側との間に固着されている。これにより、センサー移動手段57は、
図8に示されるように、アーム62の垂直軸回りの旋回により、センサー56を、水平面上で旋回させることができる。
【0046】
本実施形態の継部78は、
図9に示されるように、レーザー光Raが、垂直軸64の軸心64cに向かって水平に照射されるように、センサー56を保持している。これにより、センサー移動手段57は、アーム62(
図8に示す)の垂直軸回りの旋回により、平面視において、垂直軸64の軸心64cを中心とする放射方向に、レーザー光Raを照射させることができる。さらに、
図2に示されるように、継部78は、縦置きされた中子組立体4の外周面と、該中子組立体4の軸心4cを通る水平面58とが交差する輪郭位置59に、レーザー光Raが照射されるように、センサー56を保持している。これにより、
図9に示されるように、センサー56は、アーム62(
図8に示す)の旋回により、レーザー光Raを輪郭位置59に順次に照射させることができる。
【0047】
図10に示されるように、測定装置1は、輪郭位置59、即ち、軸心4c(
図2に示す)を含む中子組立体4の子午線断面での輪郭形状(
図9に示す)を、正確に測定することができる。また、
図2に示されるように、センサー移動手段57は、センサー56を、上下方向に移動させる必要がない。このため、本発明の測定装置1は、例えば、センサー56を水平軸回り旋回させて、上下方向に移動させていたものに比べて、回転に要するトルクを小さくすることができる。従って、本実施形態では、測定装置1の構造を簡素化することができる。
【0048】
また、本実施形態では、
図2に示されるように、中子支持部5の回転手段39(
図6に示す)によって、中子組立体4を水平軸回りに回転させることができる。これにより、測定装置1は、中子組立体4の周方向の任意の位置で、該中子組立体4の輪郭形状を測定することができる。
【0049】
垂直軸64は、縦置きされた中子組立体4を上方に投影した中子上方領域Uに配置されるのが望ましい。これにより、
図9に示されるように、センサー移動手段57は、中子組立体4の半径方向の広範囲に亘って、レーザー光Raを照射させることができる。また、垂直軸64は、平面視において、中子組立体4の赤道Cを通るように配置されるのが望ましい。これにより、センサー移動手段57は、赤道Cを対称軸として、中子組立体4の輪郭位置4sに、レーザー光Raを照射させることができ、測定誤差を防ぐことができる。
【0050】
さらに、垂直軸64は、水平面内において、生タイヤ3の一対のビード部3a、3bの間の軸心方向中央部に配置されるのが望ましい。これにより、センサー移動手段57は、ビード部3a、3bの輪郭位置4sに、レーザー光Raを確実に照射させることができ、ビード部3a、3b、サイドウォール部3c、3d、及び、トレッド部3eを含む生タイヤ3の輪郭位置59の全域を正確に測定することができる。
【0051】
また、本実施形態のセンサー移動手段57は、
図11に示されるように、垂直軸64を、中子組立体に対して、水平方向、かつ、中子組立体4の軸心4c(
図1に示す)と直交する向きで接近、又は、離間させる水平移動手段81が含まれている。
【0052】
本実施形態の水平移動手段81は、基台61の横枠61cに沿ってのびるガイドレール82、このガイドレール82に係合するスライド機構83、電動機84、電動機84のモーター軸84aに固着されるネジ軸85、及び、ネジ軸85に螺合されるボールナット86を含んで構成されている。ガイドレール82は、横枠61cの上面に、中子組立体4の軸心4c(
図1に示す)に直交する方向で、水平にのびている。また、スライド機構83は、アーム支持部65の支持板66の下面に配置されている。
【0053】
このような水平移動手段81は、電動機84が正転、又は、逆転することにより、アーム支持部65の支持板66を、中子組立体4(
図2に示す)に、接近、又は、離間させることができる。この支持板66の接近、又は、離間により、垂直軸64を、中子組立体4に対して、接近、又は、離間させることができる。従って、水平移動手段81は、
図9に示されるように、サイズの異なる中子組立体4に対しても、垂直軸64を、生タイヤ3の一対のビード部3a、3bの間に確実に位置させることができる。
【0054】
次に、上記のような測定装置1を用いた検査方法について説明する。
図1に示されるように、本実施形態の検査方法では、先ず、連続生産ラインMにおいて、中子組立体4の輪郭形状を、測定装置1を用いて測定する工程S1が行われる。
【0055】
本実施形態の工程S1では、先ず、中子組立体4を、中子支持部5に保持させる工程S11が行われる。この工程S11では、先ず、搬入装置7によって、中子組立体4を搬入・測定位置P1に搬入させる。次に、中子支持部5を、搬入・測定位置P1に配置する。次に、中子組立体4の支持軸部15に、中子支持部5のチャック部17を連結する。そして、搬入装置7のチャック部17と中子組立体4の支持軸部15との連結を解除する。これにより、中子支持部5は、搬入・測定位置P1において、中子組立体4を保持することができる。なお、中子組立体4は、中子支持部5に、縦置き状態で保持されている。
【0056】
図2に示されるように、アーム62の垂直軸64を、中子上方領域Uに位置させる工程S12が行われる。この工程S12では、
図11に示される測定部6の水平移動手段81によって、アーム62の垂直軸64を、中子組立体4(
図2に示す)側に接近させる。これにより、垂直軸64を、中子上方領域Uに配置することができる。さらに、本実施形態では、
図9に示されるように、水平面内において、垂直軸64を、生タイヤ3の一対のビード部3a、3b間の軸心方向中央部に位置させている。また、垂直軸64は、平面視において、中子組立体4の赤道Cを通るように位置合わせされる。このような位置合わせは、
図6に示されるように、中子支持部5の水平移動手段48によって行われる。
【0057】
次に、
図9に示されるように、センサー56のレーザー光Raを、中子組立体4の外周面と、該中子組立体4の軸心4cを通る水平面58(
図2に示す)とが交差する輪郭位置59に照射する工程S13が行われる。この工程S13では、先ず、レーザー光Raを、輪郭位置59の任意の位置に照射する。次に、
図8及び
図9に示されるように、センサー56を、一方のビード部3aと、他方のビード部3bとの間で垂直軸回りに旋回させる。
【0058】
これにより、センサー56は、ビード部3a、3b間の輪郭位置59の全域に亘って、レーザー光Raを順次照射することができる。このようなレーザー光Raの照射により、センサー56は、
図10に示されるように、複数の測定点Sa(i)(本実施形態では、i=1〜71)において、輪郭位置59を測定することができる。なお、測定点Sa(i)の個数は、タイヤサイズ等により適宜設定することができるが、例えば、50〜100個程度が望ましい。なお、測定点Sa(i)の個数が50個未満であると、測定精度を維持するのが難しくなる。逆に、測定点Sa(i)の個数が100個を超えると、計算時間が増大するおそれがある。
【0059】
次に、中子組立体4の輪郭形状(
図12に示す)と、評価基準データD(
図13に示す)とを比較して、中子組立体4の成形状態を評価する評価工程S2が行われる。
【0060】
評価基準データDは、生タイヤ3の成形状態が良好な中子組立体(以下、単に「良好な中子組立体」ということがある)4の輪郭形状を定めるものである。このような評価基準データDは、輪郭形状が予め測定された中子組立体4のうち、生タイヤ3の加硫後の成形状態が良好と評価された中子組立体4の輪郭形状から求められる。また、評価基準データDは、複数の中子組立体4の輪郭形状を平均して計算されるのが望ましい。これにより、複数の輪郭形状間のバラツキを小さくすることができる。
【0061】
本実施形態の評価工程S2では、先ず、
図12に示されるように、中子組立体4の輪郭形状と、予め既知である中子2の輪郭形状との差に基づいて、生タイヤ3の各部の厚さWe(i)を計算する工程S21が行われる。この工程S21では、中子組立体4の輪郭形状の測定点Sa(i)での距離と、該測定点Sa(i)に対応する中子2の輪郭形状の測定点Sb(i)での距離との差を計算している。これにより、中子組立体4の測定点Sa(i)での生タイヤ3の厚さWe(i)を求めることができる。このような厚さWe(i)は、生タイヤ3の各部のゴムボリュームを、正確に把握するのに役立つ。
【0062】
生タイヤ3の厚さWe(i)の計算は、全ての測定点Sa(i)を対象に求められるのが望ましいが、例えば、任意の測定点Sa(i)のみを対象に厚さWe(i)を求めても良い。なお、中子2の輪郭形状は、工程S1の手順に従って、中子2の輪郭形状を予め測定することによって得ることができる。
【0063】
次に、
図13に示されるように、評価基準データDと、中子2の輪郭形状との差に基づいて、良好な中子組立体4Aの生タイヤ(以下、単に「良好な生タイヤ」ということがある)3Aの各部の厚さWs(i)を計算する工程S22が行われる。この工程S22では、工程S21と同様に、評価基準データD(良好な中子組立体4Aの輪郭形状)の測定点Sa(i)での距離と、該測定点Sa(i)に対応する中子2の輪郭形状の測定点Sb(i)での距離との差を計算している。
【0064】
次に、
図12に示される生タイヤ3の各部の厚さWe(i)と、
図13に示される良好な生タイヤ3Aの各部の厚さWs(i)との差(We(i)−Ws(i))に基づいて、標準偏差σを求める工程S23が行われる。この工程S23では、先ず、生タイヤ3の測定点Sa(i)での厚さWe(i)と、測定点Sa(i)に対応する良好な生タイヤの厚さWs(i)との差(We(i)−Ws(i))を、測定点Sa(i)毎に求める。次に、それぞれの差(We(i)−Ws(i))を二乗して、それらを平均することにより、差(We(i)−Ws(i))の分散σ
2が求められる。さらに、分散σ
2の平方根を求めることにより、差(We(i)−Ws(i))の標準偏差σを求めることができる。
【0065】
次に、差(We(i)−Ws(i))が、標準偏差σの±2倍未満である場合に、中子組立体4の成形状態を良好と判断する工程S24が行われる。この工程S24では、各測定点Sa(i)において、生タイヤ3の厚さWe(i)が、標準偏差σの±2倍未満であるか否かが判断される。
【0066】
生タイヤ3の厚さWe(i)が、標準偏差σの±2倍以上の測定点Sa(i)がある場合は、その測定点Sa(i)において、生タイヤ3の輪郭形状と、良好な生タイヤの輪郭形状とに大きな差があると判断することができる。従って、生タイヤ3の成形状態が不良であると評価することができる。この場合、中子組立体4は、加硫工程において、成形不良が発生するおそれがあるため、廃棄される。
【0067】
一方、全ての測定点Sa(i)の厚さWe(i)が標準偏差σの±2倍未満である場合は、生タイヤ3の輪郭形状と、良好な生タイヤ3Aの輪郭形状とに大きな差がない。このため、この工程S24では、中子組立体4の成形状態が良好であると評価している。本実施形態では、中子組立体4の成形状態が良好と判断された場合、
図2に示されるように、中子支持部5の回転手段39(
図6に示す)によって、中子組立体4を周方向に回転させて、各工程S21〜S24が行われる。これにより、タイヤ周方向の複数の輪郭形状において、中子組立体4の成形状態を評価することができる。
【0068】
そして、タイヤ周方向の複数の輪郭形状において、中子組立体4の成形状態が良好と判断された場合は、
図1に示されるように、回転支持手段49によって、中子組立体4を、搬入・測定位置P1から、搬出位置P2に向き変えする工程S25が行われる。次に、搬出装置8のチャック部17と、中子組立体4の支持軸部15とを連結する工程S26が行われる。さらに、中子支持部5のチャック部17と、中子組立体4の支持軸部15との連結を解除する工程S27が行われる。これにより、搬出装置8は、中子組立体4を保持することができる。しかる後、中子組立体4を、加硫金型(図示省略)に搬出する搬出工程S28が行われる。
【0069】
このように、本実施形態の検査方法では、生タイヤ3の成形状態を正確に評価することができるため、成形状態が良好な生タイヤ3のみを加硫成形することができる。従って、本実施形態の検査方法は、タイヤの成形不良や、加硫金型の破損等を効果的に防ぐのに役立つ。また、本実施形態の検査方法は、中子組立体4の成形状態を定量的に評価できるため、例えば、コンピュータ(図示省略)によって自動的に評価することができる。
【0070】
そして、本実施形態の検査方法では、
図1に示す連続生産ラインMに、
図14に示すマスターモデル88を供給する工程S3が行われる。
【0071】
マスターモデル88は、環状の本体部88Aと、本体部88Aの軸心方向両側に配置される支持軸部88Bとを含んでいる。これらの本体部88A、及び、支持軸部88Bは、中子2(
図3に示す)と同様に、剛性を有している。
【0072】
本実施形態の本体部88Aは、その外表面89に、中子組立体4(
図4に示す)に近似した輪郭形状を有している。この外表面89には、例えば、中子組立体4の生タイヤ3のビード部3a、3bの外面に近似するビード面89a、89bと、サイドウォール部3c、3dの外面に近似するサイドウォール面89c、89dと、トレッド部3eの外面に近似するトレッド面89eとを含んでいる。また、本実施形態の本体部88Aは、
図3に示される中子本体11とは異なり、タイヤ周方向に分割されていない。これにより、本体部88Aの外表面89には、例えば、タイヤ周方向で隣り合うセグメント11A、11B間の溝11d(
図3に示す)が形成されることがない。
【0073】
また、本体部88Aは、
図15に示されるように、その輪郭形状88kが予め定められている。この輪郭形状88kは、測定装置1を制御するコンピュータ(図示省略)等に記憶されている。なお、本体部88Aは剛性を有しているため、輪郭形状88kの変化を防ぐことができる。
【0074】
図14に示されるように、支持軸部88Bは、本体部88Aの軸心方向両側に突出して設けられている。この支持軸部88Bには、
図3に示される中子2と同様に、外端部に同心に凹設された連結孔部92と、該連結孔部92の内周面に沿ってのびる周溝92Aとが設けられている。このような支持軸部88Bは、中子支持部5等に設けられるチャック部17(
図3に示す)に、連結手段18を介して着脱自在に自動連結される。したがって、マスターモデル88は、
図1に示される連続生産ラインMにおいて、中子組立体4と同様に、中子支持部5、搬入装置7、及び、搬出装置8等によって把持される。
【0075】
本実施形態の工程S3では、
図1に示されるように、生タイヤ成形装置(図示省略)と測定装置1との間のレール7aにおいて、マスターモデル88(
図14に示す)を搬入装置7に把持させる。これにより、マスターモデル88は、中子組立体4と同様に、搬入装置7によって、搬入・測定位置P1に案内される。
【0076】
次に、マスターモデル88の輪郭形状を測定するマスターモデル測定工程S4が行われる。このマスターモデル測定工程S4では、工程S1と同様の手順で、測定部6が、マスターモデル88の輪郭形状を測定する。これにより、測定部6は、
図15に示されるように、軸心88d(
図14に示す)を含むマスターモデル88の子午線断面での輪郭形状88vを測定することができる。また、本実施形態のマスターモデル88は、中子組立体4に近似した輪郭形状を有するため、その輪郭形状を容易に測定することができる。
【0077】
次に、マスターモデル測定工程S4で得られたマスターモデル88の輪郭形状88vと、マスターモデル88の既知の輪郭形状88kとの差から、測定装置1の測定誤差を求める測定誤差計算工程S5が行われる。本実施形態の測定誤差は、マスターモデル88の赤道88c(
図14に示す)に位置する測定点Sa(36)において、測定された輪郭形状88vと、マスターモデル88の既知の輪郭形状88kとの軸心方向の離間距離L1、半径方向の離間距離L2、及び、アーム62の垂直軸64(
図9に示す)を中心とする水平面上でのずれ角θから求められている。これらの離間距離L1、L2、及び、ずれ角θにより、既知の輪郭形状88kに対する、測定された輪郭形状88vの位置ずれ量を求めることができる。
【0078】
測定誤差計算工程S5において、測定装置1が測定誤差を有さない場合は、測定装置1の測定精度が維持されていると判断できる。従って、マスターモデル88の後に供給される中子組立体4の成形状態が、測定装置1によって、引き続き評価される。
【0079】
一方、測定誤差計算工程S5において、測定装置1が測定誤差を有する場合は、測定装置1の測定精度が維持されていないと判断できる。従って、測定誤差に基づいて、評価基準データDを補正する補正工程S6が行われる。本実施形態の補正工程S6では、
図16に示されるように、評価基準データDの各測定点Sa(i)を、離間距離L1、L2、及び、ずれ角θに基づいて移動させている。これにより、補正工程S6では、評価基準データDを、測定誤差に基づいて補正した補正評価基準データDrを求めることができる。さらに、本実施形態では、
図13に示される中子2の輪郭形状も、同様に補正される。なお、このような補正は、コンピュータ(図示省略)によって、自動で行われる。
【0080】
このように、本実施形態の検査方法では、測定装置1の測定誤差から評価基準データDを容易に補正することができる。このため、本実施形態の検査方法では、マスターモデル88の後に供給される中子組立体4の成形状態を、測定装置1を用いて正確に評価することができる。しかも、本実施形態の検査方法では、連続生産ラインMを止めることなく、マスターモデル88の輪郭形状が測定されるため、タイヤの生産性を低下させることもない。
【0081】
また、マスターモデル88の供給は、測定装置1の測定誤差が発生するタイミングで投入されるのが望ましい。本実施形態では、1回/1日〜1回/7日程度が望ましい。なお、マスターモデル88が1日に複数回投入されると、タイヤの生産性が低下するおそれがある。逆に、マスターモデル88が1回/7日より少なくなると、測定精度を十分に維持できないおそれがある。
【0082】
さらに、測定装置1が測定誤差を有する場合には、補正評価基準データDrを更新する更新工程S7が行われるのが望ましい。本実施形態の更新工程S7では、前述と同様の手順に従い、誤差を有する測定装置1が測定した中子組立体4のうち、生タイヤ3の加硫後の成形状態が良好と評価された中子組立体4の輪郭形状から、
図17に示される更新後の評価基準データDnが求められる。このように、更新工程S7では、補正評価基準データDrが、誤差を有する現在の測定装置1を正とする評価基準データDnに更新されるため、中子組立体4の評価精度を向上させることができる。また、更新工程S7では、
図13に示される中子2の輪郭形状も、同様に更新されるのが望ましい。
【0083】
また、本実施形態の更新後の評価基準データDnは、複数の中子組立体4の輪郭形状を平均して求められる。このため、補正工程S6の直後においては、所定個数の輪郭形状を取得できていない場合がある。このような場合、更新工程S7を直ちに実施することができないため、所定個数の輪郭形状を取得できるまでの間、補正評価基準データDrを用いて、中子組立体4の成形状態が評価される。
【0084】
マスターモデル88の輪郭形状を測定後は、工程S25〜S27と同様の手順で、マスターモデル88を搬出装置8(
図1に示す)に保持させる工程S8が行われる。そして、測定装置1と加硫金型(図示省略)との間のレール8aにおいて、マスターモデル88を搬出装置8から回収する工程S9が行われる。
【0085】
本実施形態の検査方法では、補正工程S6において、評価基準データDを、測定誤差に基づいて補正するものが示されたが、このような態様に限定されるわけではない。例えば、この実施形態の補正工程S6では、
図18に示されるように、センサー56の出力値Vを補正してもよい。本実施形態では、センサー56の出力値Vの各測定点Sa(i)を、離間距離L1、L2、及び、ずれ角θに基づいて変換することにより、補正後の出力値Vrを求めることができる。これにより、測定装置1は、
図13に示される評価基準データDや、中子2の輪郭形状を補正することなく、中子組立体4の成形状態を正確に評価することができる。なお、センサー56の出力値Vの変換は、コンピュータ(図示省略)において、自動的に変換されている。
【0086】
また、この実施形態においても、評価基準データDを更新する更新工程S7が行われるのが望ましい。評価基準データDは、補正後のセンサー56によって測定された中子組立体4のうち、生タイヤ3の加硫後の成形状態が良好と評価された中子組立体4の輪郭形状を用いて更新される。このように、更新工程S7では、評価基準データDが、補正後のセンサー56の測定結果に基づく評価基準データDn(
図17に示す)に更新されるため、中子組立体4の評価精度を向上させることができる。また、この更新工程S7でも、
図13に示される中子2の輪郭形状も、同様に更新されるのが望ましい。
【0087】
なお、補正工程S6の直後においては、補正後のセンサー56によって輪郭形状が測定された中子組立体4が存在しない。このため、所定個数の輪郭形状が取得されるまでの間、更新前の評価基準データDを用いて、中子組立体4の成形状態が評価される。
【0088】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。