(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下部架台と、前記下部架台上に設置された防振部材と、前記防振部材上に載置された上部架台と、前記下部架台と上部架台の間に装着される減震ストッパ構造に備えられる隙間管理具であって、
前記上部架台または下部架台の何れか一方から横方向に延び、貫通孔が形成された跳ね出し板部と、
前記上部架台または下部架台の何れか他方に一端が固定されるとともに、他端が上記貫通孔内に挿通されるストッパボルトと、
前記ストッパボルトに螺入され前記跳ね出し板部を介して上下に配置されたナットと、
前記ストッパボルトに挿通され貫通孔と前記上下のナットとの間にそれぞれ介在するワッシャと、からなる減震ストッパ構造において、
切欠部が形成され対向して配置された1対のプレートと、
前記1対のプレートにおいて、前記切欠部の開口側と反対側の一端を接続する接続板部と、を備え、
前記1対のプレートのうち上のプレートを、前記跳ね出し板部の上側に配置されたワッシャの上面に沿わせ、前記1対のプレートのうち下のプレートを、前記跳ね出し板部の下側に配置されたワッシャの下面に沿わせるように挿入することにより、前記ワッシャ同士の上下方向距離を制限することを特徴とする隙間管理具。
前記1対のプレート間の上下方向中央に位置し、当該位置が前記1対のプレート間の上下方向中央であることを明示する明示手段を備えることを特徴とする請求項1記載の隙間管理具。
前記明示手段が、前記接続板部の両脇端部のうち少なくとも一方の上下方向中央に形成され、開口部に傾斜を有する凹部であることを特徴とする請求項2又は3記載の隙間管理具。
【背景技術】
【0002】
従来から、発電設備又は屋外空調機等の機器(以下、「設備機器」という。)を載置することにより、当該設備機器の稼動による振動が設置面に伝わることを抑制する除振架台が種々提案されている。
一般的な除振架台は、設備機器を設置する上部架台と、床スラブ等の設置面に固定する下部架台と、両架台間に介装された防振部材を備えており、設備機器の稼動により発生する振動を防振部材で吸収することで、設置面に振動が伝わることを抑制する。
しかしながら、地震や強風などが発生した場合には、設備機器が所定以上の振幅で揺れ、転倒する危険性が生じる。そこで、設備機器が所定以上の振幅で揺れることを防ぐ目的で、除振架台には種々のストッパ構造を備えている。
【0003】
例えば、
図16に示す除振架台100には、水平方向の振幅を制限することを目的として、当該除振架台100の周囲の床スラブ101上に、L型耐震ストッパ金具105が備えられている。
この除振架台100は、床スラブ101に設置された下部架台104と、設備機器を設置する上部架台102と、下部架台104と上部架台102との間に介装され、振動を吸収する防振部材103とを備えている。
また、係る構成を有する除振架台100の周囲の床スラブ101には、L型耐震ストッパ金具105がアンカーボルト106によって固定されている。
【0004】
地震や強風などによって、下部架台104に対して上部架台102が、所定以上の振幅で揺れた場合に、L型耐震ストッパ金具105の鉛直部材105aが、上部架台102の周縁部102aと衝突する。これにより、上部架台102の所定以上の振幅での揺れを抑制することができる。
しかしながら、L型耐震ストッパ金具105は、衝突により上部架台102の所定以上の振幅を抑制するため、上部架台102の周縁部102a及びL型耐震ストッパ金具105の変形を招く虞がある。
また、L型耐震ストッパ金具105は、水平方向の所定以上の振幅での揺れを防ぐことはできるが、下部架台104と上部架台102間の距離を離間させたり、上部架台102を傾斜させたりする力(以下、「上下引き抜き力」)に抵抗しないため、上部架台102に設置される設備機器が転倒する虞があった。
【0005】
特許文献1には、
図17(a)に示す、耐震ストッパ構造120を備え、上下引き抜き力に抵抗する除振架台110の構成が開示されている。
この除振架台110は、床スラブ111に設置された下部架台114上に防振部材113を介して上部架台112が備えられる。
【0006】
図17(b)に除振架台110の耐震ストッパ構造120を拡大し、一部を断面として示す。
この耐震ストッパ構造120は、上部架台112から垂設されるストッパボルト121を備え、このストッパボルト121を下部架台114に設けられた耐震枠116の貫通孔116aに挿通させた構成を有している。
【0007】
さらに、耐震枠116を挟んで上下に、ストッパボルト121に挿通されて耐震用弾性部材115、115が配設されている。耐震枠116はコの字型の枠材からなり、その上部壁116Aに形成されている貫通孔116aを挿通してストッパボルト121が垂直に設けられている。耐震用弾性部材115は、円筒部115aとフランジ部115bとからなり、円筒部115aにストッパボルト121を挿通して耐震用弾性部材115、115が上部壁116Aの上下を挟むように配置されている。フランジ部115bの外周縁には、その周方向に複数の突部115cが形成されている。耐震用弾性部材115、115は、突部115c、115cを上部壁116A側に向けて、上下逆向きに配置されている。貫通孔116aと各耐震用弾性部材115、115の円筒部115a、115aとの間には、水平方向に一定の隙間Eが設けられている。また、上部壁116Aと上下の耐震用弾性部材115、115との間には、鉛直方向に一定の隙間D、Dが設けられている。
【0008】
この除振架台110において、防振機能と耐震機能とは互いに独立して機能する。即ち、設備機器の稼動により発生する振動を防振部材113で吸収する機能(防振機能)は、上部架台112と下部架台114との間に介装された防振部材113によって果たされ、地震や強風によって設備機器が転倒することを防ぐ機能(耐震機能)は、上述の耐震ストッパ構造120によって果たされる。
平時において、防振機能を発揮するために、耐震ストッパ構造120は、耐震枠116と水平方向の隙間E及び鉛直方向の隙間Dを設け、上部架台112と下部架台114とを絶縁する構造となっている。
【0009】
この耐震ストッパ構造120によれば、大きな揺れが発生した際に耐震用弾性部材115、115が耐震枠116に衝突し、上部架台112が所定以上の振幅で振動することを防止し、また、所定角度以上傾くことを防止する。加えて、平時においては、水平方向の隙間E及び鉛直方向の隙間Dによって、上部架台112と下部架台114が絶縁されており、防振機能を発揮することができる。
しかしながら、M7を超す様な大きな地震では、揺れが長時間続き、耐震用弾性部材115、115が何度も耐震枠116に衝突することになる。さらに、その衝突は水平方向に限定されるものではなく、上下方向、回転方向の力も加わり、耐震用弾性部材115、115には、圧縮に加え、こじり、こすりなどの複雑な力が加わる。したがって、耐震用弾性部材115、115は、破損の虞があった。
【0010】
そこで、本発明者は、
図18に示す減震ストッパ構造290を検討した。なお、
図18は、減震ストッパ構造290の中央に位置するストッパボルト232の中心より右側を断面図として示す。
当該減震ストッパ構造290は、床スラブ(図示略)に設置された下部架台214上に防振部材(図示略)を介して上部架台212が備えられた除振架台の上部架台212と下部架台214の間に備えられる。また、上部架台212には、設備機器291が設置される。
【0011】
減震ストッパ構造290は、上部架台212の跳ね出し板部212aに形成された貫通孔234と、下部架台214に一端が固定されるとともに、他端が前記貫通孔234内に挿通されるストッパボルト232を有している。
当該ストッパボルト232には、すべり材よりなる外側層238bと減衰材よりなる内側層238aとからなる減震用弾性管238が挿通されており、当該減震用弾性管238は、貫通孔234の縁部と水平方向に一定の隙間e
1を持って配置されている。
【0012】
したがって、地震による衝撃を受けた際に、前記隙間e
1以上の振幅で、水平方向に上部架台212と下部架台214とが相対運動した際には、まず減震用弾性管238の外側層238bが貫通孔234の縁部に衝突し、そのすべり効果によって、こじりやこすれの力が分散されるとともに、減震用弾性管238の内側層238aに対して圧縮力が緩和される。このため減震用弾性管238の寿命を向上させることが可能となる。
【0013】
また、減震用弾性管238には、貫通孔234を介して上方には第1の減震ワッシャ250が挿通され、下方には第2の減震ワッシャ256が挿通されている。さらに、第1の減震ワッシャ250の上方には、第1のワッシャ248を介して上ナット252、252が取り付けられ、第2の減震ワッシャ256の下方には第2のワッシャ258を介して下ナット260が取り付けられている。上ナット252、252及び下ナット260により、第1及び第2の減震ワッシャ250、256並びに減震用弾性管238の位置が固定される。
【0014】
第1及び第2の減震ワッシャ250、256と上部架台212の跳ね出し板部212aとの間には、鉛直方向に一定の隙間d
1が設けられている。
したがって上部架台212が前記隙間d
1以上の振幅で、上下方向に振動した場合又は上部架台212が下部架台214に対して傾斜した場合に、上部架台212の貫通孔234が備えられた跳ね出し板部212aと当接し、振動エネルギーを減衰する効果を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
図18を基に説明した、減震ストッパ構造290を備えた除振架台は、水平方向の隙間e
1と鉛直方向の隙間d
1とを有しており、当該隙間を有することによって、平時においては、設備機器291の振動を床スラブに伝わることを阻害する防振機能を奏することができる。したがってこの隙間e
1、d
1が狭すぎると、前記防振機能を果たすことができなくなる。
【0017】
一方、隙間e
1、d
1が広すぎる場合においては、地震などの大きな揺れによって、上部架台212と下部架台214とが、大きな振幅をもって相対運動をする。
したがって、水平方向においては、衝突時に、減震用弾性管238と貫通孔234との間に大きな衝撃力が発生する。同様に、鉛直方向においては、衝突時に、上部架台212の跳ね出し板部212aと第1及び第2の減震ワッシャ250、256との間に大きな衝撃力が発生する。
これらの衝撃力によって、減震ストッパ構造290の構成部材が破損したり、また場合によっては、上部架台212に設置された設備機器291が破損する虞がある。
【0018】
したがって、隙間e
1、d
1は、適切に設定する必要がある。本発明者らは、水平方向の隙間e
1、鉛直方向の隙間d
1ともに、1mm程度であることが、前記防振機能を果たしつつ、耐震機能を果たす場合においては、衝撃力を抑えることができるという知見を得た。
従来、減震用弾性管238並びに第1及び第2の減震ワッシャ250、256のないストッパ構造においては、鉛直方向の隙間は3〜5mmとされており、地震によって、上部架台が大きく傾き、設備機器が転倒する虞があった。
減震ストッパ構造290では、鉛直方向の隙間を1mmとすることによって、地震によって上部架台212が大きく傾くことがなく、設備機器291の転倒を防止することができる。
【0019】
減震ストッパ構造290において、水平方向の隙間e
1及び鉛直方向の隙間d
1を適切に設定するために、適切な設置工程によって設置する必要がある。この設置工程を、
図19(a)〜(c)を基に説明する。
【0020】
図19(a)に工場からの出荷段階での減震ストッパ構造290を示す。下部架台214にストッパボルト232を倒立させて固定ナット266によって固定し、当該ストッパボルト232に下ナット260、第2のワッシャ258、第2の減震ワッシャ256、減震用弾性管238を順次挿通する。次に上部架台212を防振部材(図示略)に設置するとともに、跳ね出し板部212aの貫通孔234に減震用弾性管238を挿通させる。さらに、第1の減震ワッシャ250、第1のワッシャ248、上ナット252、252を順次挿通する。
【0021】
ただし、下ナット260の螺入は、固定ナット266と接触するまで、また、上ナット252、252は、ストッパボルト232から外れない程度の仮止めにとどめておく。
また、上部架台212を防振部材(図示略)に設置する際に、減震用弾性管238と跳ね出し板部212aに設けられた貫通孔234との水平方向の隙間e
1を全周にわたり1mm程度となるように調整する。
【0022】
次に、現場に搬入し、下部架台214を設置面の床スラブ(図示略)に固定する。さらに、
図19(b)に示すように設備機器291を上部架台212に設置する。これにより、上部架台212と下部架台214に介装されている防振部材(図示略)が設備機器291の重量により沈み込み、これにともない、上部架台212と下部架台214とが近接する。即ち、跳ね出し板部212aも下方に下がる。
次に、
図19(c)に示すように、第1及び第2の減震ワッシャ250、256と、跳ね出し板部212aとの隙間d
1、d
1が1mm程度となるように、下ナット260及び、上ナット252によって調節し、締結する。
以上の工程によって、減震ストッパ構造290を備えた除振架台の設置が完了する。
【0023】
当該工程において、減震用弾性管238と跳ね出し板部212aに設けられた貫通孔234との水平方向の隙間e
1は、工場内での調整であるため、比較的容易に調整が可能である。
しかしながら、第1及び第2の減震ワッシャ250、256と跳ね出し板部212aとの隙間d
1、d
1の調整は現場にて、作業者が目視で行う必要がある。除振架台の設置場所は、例えば壁際などの作業しづらい場所であることが多く、隙間d
1、d
1の調整は困難であった。
【0024】
そこで、本発明は、除振架台の減震ストッパにおいて、減震ワッシャと架台の跳ね出し板部との隙間を、設置現場において、容易に調整可能となる隙間管理具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するため、本発明の隙間管理具は、下部架台と、前記下部架台上に設置された防振部材と、前記防振部材上に載置された上部架台と、前記下部架台と上部架台の間に装着される減震ストッパ構造に備えられる隙間管理具であって、前記上部架台または下部架台の何れか一方から横方向に延び、貫通孔が形成された跳ね出し板部と、前記上部架台または下部架台の何れか他方に一端が固定されるとともに、他端が上記貫通孔内に挿通されるストッパボルトと、前記ストッパボルトに螺入され前記跳ね出し板部を介して上下に配置されたナットと、前記ストッパボルトに挿通され貫通孔と前記上下のナットとの間にそれぞれ介在するワッシャと、からなる減震ストッパ構造において、切欠部が形成され対向して配置
された1対のプレートと、前記1対のプレートにおいて、前記切
欠部の開口側と反対側の一端を接続する接続板部と、を備え、前記1対のプレートのうち上のプレートを、前記跳ね出し板部の上側に配置されたワッシャの上面に沿わせ、前記1対のプレートのうち下のプレートを、前記跳ね出し板部の下側に配置された前記ワッシャの下面に沿わせるように挿入することにより、ワッシャ同士の上下方向距離を制限することを特徴とする。
【0026】
また、前記隙間管理具であって、前記1対のプレート間の上下方向中央に位置し、当該位置が前記1対のプレート間の上下方向中央であることを明示する明示手段とを備えることを特徴とする。
また、前記隙間管理具であって、前記明示手段が、前記接続板部の外側の面の上下方向中央にマーキングされた目印であることを特徴とする。
また、前記隙間管理具であって、前記明示手段が、前記接続板部の両脇端部のうち少なくとも一方の上下方向中央に形成され、開口部に傾斜を有する凹部であることを特徴とする。
【0027】
また、前記隙間管理具であって、前記明示手段が、前記接続板部の両脇端部のうち少なくとも一方の上下方向中央に形成された凸部であることを特徴とする。
また、前記隙間管理具であって、前記減震ストッパ構造における上下のワッシャのう
ち一方の外形に直線部を設け、前記1対のプレートのうち、前記直線部を設けたワッシャと当接するプレートにおいて、接続板部と反対側の端部の先端に屈曲部を形成し、前記ワッシャの直線部に前記屈曲部を係止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、減震ストッパ構造において隙間管理具を、跳ね出し板部の上側に配置されたワッシャの上面と、前記跳ね出し板部の下側に配置されたワッシャの下面とを上下方向から挟み込むように挿入することによって、上下のワッシャの距離を1対のプレートによって、所定の間隔以上に離間しないように制限することができる。
【0029】
また、前記1対のプレート間の上下方向中央に位置し、当該位置が上下方向中央であることを明示する明示手段を有する場合においては、隙間管理具を、跳ね出し板部の上側に配置されたワッシャの上面と、跳ね出し板部の下側に配置されたワッシャの下面とを上下方向から挟み込むように挿入する構成を有する。したがって、当該明示手段を、跳ね出し板部の高さと合わせるように減震ストッパ構造を設定することで、上下方向の隙間を容易に調整することができる。
【0030】
また、当該明示手段が、接続板部の上下中央にマーキングされた目印である場合においては、視覚的に、跳ね出し板部を接続板部の中央に位置合わせすることが可能となる。
【0031】
さらに、当該明示手段が、接続板部の両脇端部に形成された凹部である場合においては、当該凹部を、跳ね出し板部にはめ込んだ状態で、前記上下のナットを締結することで、例えば作業スペースが狭く、視覚的に跳ね出し板部を接続板部中央に位置合わせすることが困難であっても、作業者の指先感覚を基に容易に跳ね出し板部を接続板部の中央に位置合わせすることが可能となる。
【0032】
加えて、当該明示手段が、接続板部の両脇端部に形成された凸部である場合においては、作業者が当該凸部と跳ね出し板部とを手で確認しながら、跳ね出し板部を当該凸部の位置と合わせることで、作業者の指先感覚を基に容易に、跳ね出し板部を接続板部の中央に位置合わせすることが可能となる。
【0033】
上下のワッシャのう
ち一方の外形に直線部を設け、隙間管理具の屈曲部を、当該直線部に係止する構成を有することで、隙間管理具は抜け止めされる。これによって、組み立て工程を行う工場から、設置現場までの運送途中で隙間管理具が抜けることがない。また、設置後も、設備機器等の振動によって、隙間管理具が外れることがないため、設備機器の入れ替えの際等において、当該隙間管理具を用いて隙間の調整を行うことができる。加えて、メンテナンスの際に前記明示手段を基に容易に調整可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を適用した一実施形態である脱落防止具について図面を用いて詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0036】
(第1実施形態)
図1は、本発明の隙間管理具3が適用される除振架台1の構造を示す斜視図であり、
図2は、正面図、
図3は平面図を示す。
除振架台1は、建築物等の床スラブ18にアンカーボルト(図示略)などで固定された下部架台14と、下部架台14と所定の間隙を隔てて対向配置された上部架台12とを備えている。
【0037】
図1及び
図2に示すように、上部架台12と下部架台14との間には、防振部材16が複数(
図1の形態では6個)介装されており、これらの防振部材16によって上部架台12は下部架台14上に弾性支持されている。防振部材16は、上部部材16a及び下部部材16b並びに内部に収納されたバネ材(図示せず)とを有しており、下部架台14と上部架台12との間に配設され、上部架台12上に設置された設備機器の荷重を担持するとともに、設備機器から発生する振動を吸収・緩衝する働きをもつ。
防振部材16は上部架台12上に設置される設備機器の重心位置を考慮し、下部架台14と上部架台12の間の適所に複数箇所設置される。
【0038】
図1及び
図3に示すように、上部架台12は、4本の上部フレーム部材20a、20b、20c、20dを、4個の上部コーナー金物22を介して矩形状に連結した形状を有している。
また、第1の上部フレーム部材20a及び第2の上部フレーム部材20cには、それぞれ2つの取付片部24が設けられている。各取付片部24には設備機器固定用の取付孔26が形成されており、上部架台12に設備機器を載置した後、当該取付孔26にボルトを挿通し、設備機器と螺合することにより、設備機器を固定することができる。
同様に、下部架台14も、
図1に示すように、4本の下部フレーム部材29a、29b、29c、29dを4個の下部コーナー金物28を介して矩形状に連結した形状を有している。
上部架台12及び下部架台14を構成するフレーム部材は、防錆処理型鋼やFRP材を矩形に枠組みして形成されたものからなる。
【0039】
図1に示すように、上部コーナー金物22と下部コーナー金物28との間には、それぞれ減震ストッパ構造30が設けられている。
図4(a)に、当該減震ストッパ構造30の詳細な構造を示し、
図4(b)にその断面構造を示す。また、
図4(c)に
図4(a)における矢印Zからの矢視図を示す。
【0040】
減震ストッパ構造30は、上部架台12から水平方向に延び、貫通孔34が形成された跳ね出し板部22aと、下部架台14に一端が固定されるとともに、他端が前記貫通孔34に挿通されるストッパボルト32と、当該ストッパボルト32に挿通または螺入される上ナット52、52、矩形ワッシャ4、第1の減震ワッシャ50、減震用弾性管38、第2の減震ワッシャ56、ワッシャ58、下ナット60とを備えている。また、本発明の隙間管理具3が、前記矩形ワッシャ4、第1の減震ワッシャ50、跳ね出し板部22a、第2の減震ワッシャ56、ワッシャ58を挟み込むように水平方向から装着され概略構成されている。
【0041】
下部架台14の下部コーナー金物28には、跳ね出し板部28aが形成されている。また、当該跳ね出し板部28aには、貫通孔35が形成されている。
ストッパボルト32は、ボルト頭部を下にして軸の先端を上にして倒立させて貫通孔35に挿通し、ストッパボルト32のボルト頭部と固定ナット66により下部コーナー金物28を挟み固定される。また、当該ストッパボルト32の先端側は、上部コーナー金物22の跳ね出し板部22aに形成された貫通孔34に挿通されている。
【0042】
上部コーナー金物22の跳ね出し板部22aに形成された貫通孔34は、ストッパボルト32のボルト部の外径A(
図4(a)参照)に比べて十分に大きな径を備えている。この貫通孔34の縁部と、ストッパボルト32の外周面との間には、管状であり外径B(
図4(a)参照)を有する減震用弾性管38が介装されている。
【0043】
この減震用弾性管38は、
図4(b)に示すように、内側層38aと外側層38bとからなる二層構造を備えている。
内側層38aは、弾性と減衰性を合わせ持つ材料からなる。例えば、径方向に5mm程度の厚みとし、硬度30〜40度で且つ動的粘弾性特性tanδが0.5以上となるブチルゴム等の減衰ゴムや、高減衰性スチレン系エラストマー等の材料によって形成することができる。また、外側層38bは、径方向に1〜2mm程度の厚みを有し、硬度70度以上で硬く且つ摩擦係数μ=0.4程度の材料により形成することができる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂材料が好適である。
【0044】
また、減震用弾性管38と、貫通孔34の縁部との間には、水平方向に隙間e
2が確保されている。当該隙間e
2は、1mm程度であることが望ましい。この隙間e
2は、想定される地震の最大震度の大きさ等に応じて設定され、1mmに限らず、設計段階で想定した大きさに形成すればよい。
【0045】
上記減震用弾性管38の上端側には、第1の減震ワッシャ50が備えられている。第1の減震ワッシャ50は、弾性と減衰性を合わせ持つ材料からなるワッシャであり、その内径は前記減震用弾性管38の外径B(
図4(a)参照)と略同径か、若干小さく形成されており、減震用弾性管38の外径Bに、第1の減震ワッシャ50の内径をはめ込むことにより、第1の減震ワッシャ50の緊迫力によって、減震用弾性管38に保持される。
第1の減震ワッシャ50の材料として、例えば硬度30〜40度で且つ動的粘弾性特性tanδが0.5以上となるブチルゴム等の損失係数の大きな高減衰ゴムや、高減衰性スチレン系エラストマー等を用いる事ができる。
【0046】
さらに第1の減震ワッシャ50の上方には、矩形ワッシャ4が備えられている。矩形ワッシャ4の平面図を
図6に示す。
矩形ワッシャ4はその外形が矩形状となっており、4つ角のうち、片側の2つの角には段部4a、4aが形成されている。段部4a、4aは、当該段部4a、4aと反対側の辺4cに対向する直線部4a
1を有している。
矩形ワッシャ4は鉄鋼材料などからなり、中央に前記ストッパボルト32が挿通する孔4bが形成されている。この孔4bはストッパボルト32の外径A(
図4(a)参照)より大きく、減震用弾性管38の外径B(
図4(a)参照)より小さく形成されている。
【0047】
前記減震用弾性管38の下側には、第2の減震ワッシャ56が備えられている。第2の減震ワッシャ56は、第1の減震ワッシャ50と同形状のものであり、即ち、減震用弾性管38の外径Bに、第2の減震ワッシャ56の内径をはめ込むことにより、第2の減震ワッシャ56の緊迫力によって減震用弾性管38に保持される。
【0048】
さらに第2の減震ワッシャ56の下方には、ワッシャ58が備えられている。ワッシャ58は、鉄鋼材料などからなり、その内径は、ストッパボルト32の外径A(
図4(a)参照)より大きく、減震用弾性管38の外径B(
図4(a)参照)より小さく形成されている。
【0049】
図4(a)、
図4(b)に示すように、減震ストッパ構造30には、隙間管理具3が挿入されている。
図5(a)に本実施形態における隙間管理具3の斜視図を示す。また、
図5(b)に、
図5(a)に示す隙間管理具3を展開した展開隙間管理具93を示す。
隙間管理具3は、平行に対向する第1及び第2の水平プレート(プレート)3c、3dと、これらの一端を接続する接続板部3eとにより、略コの字形状を形成する。
隙間管理具3の材質は、特に限定されるものではないが、一例として鉄鋼材料などを用いる事ができる。また、アルミニウムなどの金属材料または樹脂材料からなるものであっても良い。
【0050】
隙間管理具3は第1の水平プレート3cを前記矩形ワッシャ4の上面に挿入し、第2の水平プレート3dをワッシャ58の下面に挿入することで、跳ね出し板部22a、第1及び第2の減震ワッシャ50、56、矩形ワッシャ4並びにワッシャ58を挟み込むように備えられている。
【0051】
本実施形態においては、矩形ワッシャ4とワッシャ58の鉛直方向距離は、減震用弾性管38の高さによって決定されるが、減震用弾性管38を備えていない減震ストッパ構造であっても、矩形ワッシャ4とワッシャ58の鉛直方向距離を第1及び第2の水平プレート3c、3dの鉛直方向距離が接続板部3eによって制限されるため、所定の間隔に決定することができる。これによって、第1及び第2の減震ワッシャ50、56の鉛直方向の隙間d
2、d
2(
図4(a)参照)の調整を行うにあたって、その調整が容易となる。
【0052】
図5(a)、(b)に示すように、第1及び第2の水平プレート3c、3dには、接続板部3eと反対側に開口部を有する切欠部3h、3hが形成されている。当該切欠部3h、3hの幅は、ストッパボルト32の外径A(
図4(a)参照)より大きく形成されているため、ストッパボルト32を当該切欠部3h、3hで跨ぐように挿入することができる。
【0053】
また、第1の水平プレート3cには、接続板部3eと反対側の端部の先端を第2の水平プレート3d側に傾斜させて曲げた屈曲部3b、3bが形成されている。
図4(c)に示すように、当該屈曲部3b、3bは、上述した矩形ワッシャ4の段部4a、4a内に挿入されており、隙間管理具3の抜け止めの役割を果たしている。
【0054】
図4又は
図5(a)に示すように第1及び第2の水平プレート3c、3dを水平にして隙間管理具3をコの字状に配置した場合の接続板部3eの鉛直方向中央部には、当該位置が第1及び第2の水平プレート3c、3dの鉛直方向中央部であることを明示する明示手段が設けられている。本実施形態の隙間管理具3には、3種の明示手段が設けられている。
【0055】
即ち、接続板部3eの外側面の鉛直方向中央にマーキングされた直線(目印)3a、接続板部3eの端部の一方の鉛直方向中央に形成され、開口部に傾斜を有する凹部3f、接続板部3eの端部の一方の鉛直方向中央に形成された凸部3gである。
これらの明示手段たる直線3a、凹部3f、凸部3gは、接続板部3eに1つだけ設けられていても2つ以上を組み合わせて設けられていても良い。
【0056】
直線3aは、跳ね出し板部22aの厚みと略同一太さで、接続板部3eの外側面にマーキングされている。また、当該直線3aは赤色等の作業者が識別しやすい色でマーキングされることが望ましい。
凹部3fは、当該凹部3fの内側壁に傾斜面3faを有し、凹形状の底部が平坦となっており、底部3fbの幅(鉛直方向の幅)は、跳ね出し板部22aの厚みと略同幅となっている。
凸部3gの凸形状の突出部分の幅(鉛直方向の幅)は、跳ね出し板部22aの厚みとほぼ同じか、わずかに大きくなっている。
【0057】
これらの明示手段は、視覚的、触覚的に接続板部3eの中央部分を明示するものであり、作業者は、これらの明示手段を基に、減震ストッパ構造30を設置する工程において、跳ね出し板部22aと第1及び第2の減震ワッシャ50、56の鉛直方向の隙間d
2、d
2の調整を行う。各明示手段による調整方法は、後述する設置手順において説明する。
【0058】
図4(a)に示すように、隙間管理具3の上方には、上ナット52、52が締結されている。同様に、隙間管理具3の下方には下ナット60が締結されている。これらによって、隙間管理具3の位置が固定される。
なお、上ナット52、52はダブルナット機構とすることで緩みが発生することを防いでいる。下ナット60も、同様にダブルナット機構としても良いが、
図4(a)に示すように、下ナット60をダブルナット機構とするスペースが十分でない場合は、ワッシャ58側に強固に締結することで略すことができる。
【0059】
次に
図7(a)、(b)、(c)を基に、減震ストッパ構造30を備えた除振架台1の設置手順を示す。
図7(a)に工場からの出荷段階での減震ストッパ構造30を示す。
図7(a)に至るまでの工場での組み立て工程を以下に説明する。
【0060】
下部コーナー金物28の跳ね出し板部28aにストッパボルト32を倒立させて固定ナット66によって固定し、当該ストッパボルト32に下ナット60を螺入し、ワッシャ58、第2の減震ワッシャ56、減震用弾性管38を順次挿通する。次に上部架台12を防振部材(図示略)に設置するとともに、上部コーナー金物22の跳ね出し板部22aに形成された貫通孔34に前記減震用弾性管38を挿通する。さらに、ストッパボルト32に、第1の減震ワッシャ50、矩形ワッシャ4を順次挿通し、最後に上ナット52、52を螺入する。
【0061】
ただし、下ナット60の螺入は、固定ナット66と接触するまで、また、上ナット52、52は、ストッパボルト32から外れない程度の仮止めにとどめておく。
また、上部架台12を防振部材(図示略)に設置する際に、減震用弾性管38と跳ね出し板部22aに設けられた貫通孔34との水平方向の隙間e
2を全周にわたり1mm程度となるように調整する。
減震用弾性管38と貫通孔34との水平方向の隙間e
2の調整は、工場内での調整であるため、比較的容易に調整が可能である。
【0062】
次に、隙間管理具3を挿入する。隙間管理具3の第1の水平プレート3cを前記矩形ワッシャ4の上面に挿入するにあたって、矩形ワッシャ4における段部4a、4aの直線部4a
1に、第1の水平プレート3cにおける屈曲部3b、3bを挿入し、抜け止めする。
【0063】
次に、現場に搬入し、下部架台14を設置面の床スラブ(図示略)に固定する。さらに、
図7(b)に示すように設備機器91を上部架台12に設置する。これにより、上部架台12と下部架台14に介装されている防振部材(図示略)が沈み込み、これにともない、上部架台12と下部架台14とが近接する。即ち、跳ね出し板部22aも下方に下がる。
【0064】
次に、
図7(c)に示すように、第1及び第2の減震ワッシャ50、56と、跳ね出し板部22aとの隙間d
2、d
2が1mm程度となるように、下ナット60及び、上ナット52によって調節し、締結する。
【0065】
隙間d
2、d
2を調整するにあたって、跳ね出し板部22aと隙間管理具3の鉛直方向の相対的な位置を前記明示手段を基に調整する。
明示手段としての直線3aを用いて調整を行う場合においては、隙間管理具3における接続板部3eの直線3aを上部コーナー金物22の跳ね出し板部22aと一致するように、水平方向から目視にて確認しながら、上ナット52及び下ナット60の位置を調整し、接続板部3eの鉛直方向中央を跳ね出し板部22aに一致させる。
【0066】
また、明示手段としての凹部3fを用いて調整を行う場合においては、隙間管理具3を、矩形ワッシャ4とともに回転し、隙間管理具3の接続板部3eにおいて、凹部3fが形成された側の端部を、跳ね出し板部22aの縁に押し当てる。その際、前記凹部3fの中心を跳ね出し板部22aに一致させる。この状態で上ナット52及び下ナット60の位置を調整し、接続板部3eの鉛直方向中央を跳ね出し板部22aに一致させる。
換言すると、凹部3fの底部3fbと跳ね出し板部22aの上下方向を合わせることにより、跳ね出し板部22aの上下位置を合わせることができる。
【0067】
明示手段としての凸部3gを用いて調整を行う場合においては、隙間管理具3における凸部3gと跳ね出し板部22aを作業者が指先で確認しながら調整を行う。具体的には、凸部3gの上部と跳ね出し板部22a及び凸部3gの下部と跳ね出し板部22aの下面を指先で触れて、上下において凸部3gと跳ね出し板部22aとの段差が同じになるように、上ナット52及び下ナット60の位置を調整し、接続板部3eの鉛直方向中央を跳ね出し板部22aに一致させる。
この作業は、設置場所が暗い場所であっても指先で凸部3gと跳ね出し板部22aをなぞることによって実施することができる。
【0068】
以上の手順のいうち何れかを経て、上ナット52及び下ナット60の位置を決定した後、上ナット52、52をダブルナット締めし、下ナット60を上方に締結する。
この様に、接続板部3eの鉛直方向中央部を、上部コーナー金物22の跳ね出し板部22aと一致させることで、跳ね出し板部22aに対して鉛直方向上方の隙間d
2と鉛直方向下方の隙間d
2とが一致する。
【0069】
隙間管理具3において、第1の水平プレート3cと第2の水平プレート3dの間隔、即ち接続板部3eの高さは、第1の水平プレート3cと第2の水平プレート3dによって挟み込まれる矩形ワッシャ4、第1の減震ワッシャ50、跳ね出し板部22a、第2の減震ワッシャ56、ワッシャ58の厚みの合計に対して2mm大きく形成されている。
つまり、跳ね出し板部22aに対して鉛直方向上方の隙間d
2と鉛直方向下方の隙間d
2の隙間の合計は、2mmとなっている。
したがって、隙間管理具3の明示手段によって、跳ね出し板部22aに対して鉛直方向上方の隙間d
2と鉛直方向下方の隙間d
2とを一致させることによって、隙間d
2、d
2は、ともに1mmとすることができる。
【0070】
以上の工程によって、減震ストッパ構造30を備えた除振架台の設置が完了する。
隙間管理具3は、屈曲部3bを、矩形ワッシャ4の段部4aに挿入する構成を有し、設置後も取り付けられた状態のまま保持される。屈曲部3bが矩形ワッシャ4に係止されることによって、設備機器91の振動等が加わっても隙間管理具3が外れることはなく、設備機器91の入れ替えを行う場合において、当該隙間管理具3を用いて隙間d
2、d
2の調整を行うことができる。加えて、メンテナンスの際に前記明示手段を基に隙間d
2、d
2を容易に調整が可能となる。
【0071】
(第1実施形態の変形例1)
図8(a)、(b)は、本発明の第1実施形態の変形例1である隙間管理具5を示し、第1実施形態の隙間管理具3を示す
図5(a)、(b)に対応する。また、
図9は、隙間管理具5を装着した減震ストッパ構造41の平面図であり、
図4(c)に対応する。
なお、上述の第1実施形態と同一の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。隙間管理具5は、第1実施形態の隙間管理具3と比較すると、切欠部5hの幅と、明示手段の構成において異なっている。
【0072】
図8(a)に隙間管理具5の斜視図を示し、
図8(b)に、
図8(a)に示す隙間管理具5を展開した展開隙間管理具95を示す。
隙間管理具5は、平行に対向する第1及び第2の水平プレート(プレート)5c、5dと、これらの一端を接続する接続板部5eとにより、略コの字形状を形成する。
【0073】
第1及び第2の水平プレート5c、5dには、接続板部5eと反対側に開口部を有する切欠部5h、5hが形成されている。
図9に示すように、当該切欠部5h、5hの幅は、上ナット52及び下ナット60の最外径より大きく、また深く形成されている。したがって、上ナット52及び下ナット60を当該切欠部5h、5hで跨ぐように挿入することができる。
この様に、第1及び第2の水平プレート5c、5dは、上ナット52と矩形ワッシャ4並びに下ナット60とワッシャ58の間に必ずしも介装される必要はない。
【0074】
また、
図8(a)、(b)に示すように、第1の水平プレート5cには、接続板部5eと反対側の端部の先端を曲げて屈曲部5b、5bが形成されている。当該屈曲部5b、5bは、
図4(a)に示す第1実施形態の減震ストッパ構造30と同様に、矩形ワッシャ4の段部4a、4aに挿入され、隙間管理具5の抜け止めの役割を果たす。
【0075】
図8(a)に示す如く配置した隙間管理具5の接続板部5eの鉛直方向中央部には、当該位置が鉛直方向を中央部であることを明示する明示手段が設けられている。隙間管理具5には、2種の明示手段が設けられている。
即ち、接続板部5eの外側面の鉛直方向中央にマーキングされた直線(目印)5a並びに接続板部5eの両端部の鉛直方向中央に形成され、開口部に傾斜を有する凹部5f、5fである。
【0076】
直線5aは、跳ね出し板部22aの厚みと略同一太さで、接続板部5eの外側面にマーキングされている。直線5aを用いて調整を行う場合においては、隙間管理具5における接続板部5eの直線5aを上部コーナー金物22の跳ね出し板部22aと一致するように、水平方向から目視にて確認しながら、上ナット52及び下ナット60の位置を調整し、接続板部5eの鉛直方向中央を跳ね出し板部22aに一致させる。
【0077】
凹部5fの開口部に渡る傾斜は、接続板部5eの両端部全体にV字状に形成されている。したがって、隙間管理具5を、跳ね出し板部22aの縁に押し当てると、隙間管理具5は、当該傾斜に沿って滑動し接続板部5eの中心位置に跳ね出し板部22aが一致する。即ち、容易に鉛直方向の位置合わせを行うことができる。
これらの明示手段は、視覚的、触覚的に接続板部5eの鉛直方向中央、即ち第1及び第2の水平プレート5c、5dの間の鉛直方向中央を明示するものであり、作業者は、これらの明示手段を基に、第1実施形態の減震ストッパ構造30と同様に、減震ストッパ構造41においても、跳ね出し板部22aと第1及び第2の減震ワッシャ50、56の鉛直方向の隙間d
2、d
2の調整を行うことができる。
【0078】
(第1実施形態の変形例2)
図10(a)、(b)は、本発明の第1実施形態の変形例2である隙間管理具6を示し、第1実施形態の隙間管理具3を示す
図5(a)、(b)に対応する。
図10(a)に隙間管理具6の斜視図を示し、
図10(b)に、
図10(a)に示す隙間管理具6を展開した展開隙間管理具96を示す。隙間管理具6は、第1実施形態の隙間管理具3と比較すると、折曲板部6iが設けられている点と、明示手段の構成において異なっている。
【0079】
隙間管理具6は、平行に対向する第1及び第2の水平プレート(プレート)6c、6dと、これらの一端を接続する接続板部6eとにより、略コの字形状を形成する。
第1及び第2の水平プレート6c、6dには、接続板部6eと反対側に開口部を有する切欠部6h、6hが形成されている。当該切欠部6h、6hの幅は、ストッパボルト32の外径A(
図4(a)参照)より大きく形成されているため、ストッパボルト32を当該切欠部6h、6hで跨ぐように挿入することができる。
また、第1の水平プレート6cには、接続板部6eと反対側の端部の先端に屈曲部6b、6bが形成されている。当該屈曲部6b、6bは、
図4(a)に示す第1実施形態の減震ストッパ構造30と同様に、矩形ワッシャ4の段部4a、4aに挿入され、隙間管理具6の抜け止めの役割を果たす。
【0080】
さらに、第1の水平プレート6cには、接続板部6e側の縁部に、1対の折曲板部6i、6iが形成されている。隙間管理具6は、当該折曲板部6i、6iによって、矩形ワッシャ4を保持する。これによって、矩形ワッシャ4と隙間管理具6が相対的に回転することを防ぐことができる。
【0081】
隙間管理具6の接続板部6eの鉛直方向中央部には、当該位置が鉛直方向を中央部であることを明示する明示手段が設けられている。隙間管理具6には、2種の明示手段が設けられている。
即ち、接続板部6eの外側面の鉛直方向中央にマーキングされた直線(目印)6a、接続板部6eの端部の一方の鉛直方向中央に形成された凸部6gである。
【0082】
直線6aは、跳ね出し板部22aの厚みと略同一太さで、接続板部6eの外側面にマーキングされている。
凸部6gの凸形状の幅(鉛直方向の幅)は、跳ね出し板部22aの厚さと略同幅となっている。明示手段としての凸部6gを用いて調整を行う場合においては、隙間管理具6における凸部6gと跳ね出し板部22aを作業者が指先で確認し、凸部6gの上部と跳ね出し板部22aの上面が一致するように、または、凸部6gの下部と跳ね出し板部22aの下面とが一致するように、上ナット52及び下ナット60の位置を調整し、接続板部6eの鉛直方向中央を跳ね出し板部22aに一致させる。
この作業は、設置場所が暗い場所であっても指先で凸部6gと跳ね出し板部22aをなぞることによって実施することができる。
【0083】
これらの明示手段は、視覚的、触覚的に接続板部6eの鉛直方向中央、即ち第1及び第2の水平プレート6c、6dの間の鉛直方向中央を明示するものであり、作業者は、これらの明示手段を基に、第1実施形態の減震ストッパ構造30と同様に、跳ね出し板部22aと第1及び第2の減震ワッシャ50、56の鉛直方向の隙間d
2、d
2の調整を行うことができる。
【0084】
(第1実施形態の変形例3)
図11(a)、(b)は、本発明の第1実施形態の変形例3である隙間管理具7を示し、第1実施形態の隙間管理具3を示す
図5(a)、(b)に対応する。
図11(a)に隙間管理具7の斜視図を示し、
図11(b)に、
図11(a)に示す隙間管理具7を展開した展開隙間管理具97を示す。隙間管理具7は、第1実施形態の隙間管理具3と比較すると、折曲板部7iが設けられている点、明示手段の構成において異なっている。
【0085】
隙間管理具7は、平行に対向する第1及び第2の水平プレート(プレート)7c、7dと、これらの一端を接続する接続板部7eとにより、略コの字形状を形成する。
第1及び第2の水平プレート7c、7dには、接続板部7eと反対側に開口部を有する切欠部7h、7hが形成されている。当該切欠部7h、7hの幅は、ストッパボルト32の外径A(
図4(a)参照)より大きく形成されているため、ストッパボルト32を当該切欠部7h、7hで跨ぐように挿入することができる。
【0086】
さらに、第1の水平プレート7cには、接続板部7e側の縁部に、1対の折曲板部7i、7iが形成されている。隙間管理具7は、当該折曲板部7i、7iによって、矩形ワッシャ4を保持する。これによって、矩形ワッシャ4と隙間管理具7が相対的に回転することを防ぐことができる。
【0087】
隙間管理具7の接続板部7eの鉛直方向中央部には、当該位置が鉛直方向を中央部であることを明示する明示手段が設けられている。本実施形態の隙間管理具7は、明示手段として接続板部7eの外側面の鉛直方向中央にマーキングされた直線(目印)7aを備える。
【0088】
直線7aは、跳ね出し板部22aの厚みと略同太さで、接続板部7eの外側面にマーキングされている。明示手段としての直線7aを用いて調整を行う場合においては、隙間管理具7における接続板部7eの直線7aを上部コーナー金物22の跳ね出し板部22aと一致するように、水平方向から目視にて確認しながら、上ナット52及び下ナット60の位置を調整し、接続板部7eの鉛直方向中央を跳ね出し板部22aに一致させる。
【0089】
直線7aは、視覚的に接続板部7eの鉛直方向中央、即ち第1及び第2の水平プレート7c、7dの間の鉛直方向中央を明示するものであり、作業者は、直線7aを基に、第1実施形態の減震ストッパ構造30と同様に、跳ね出し板部22aと第1及び第2の減震ワッシャ50、56の鉛直方向の隙間d
2、d
2の調整を行うことができる。
【0090】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、
図7(c)を基に説明したように、上方に上ナット52、52によって、ダブルナット機構を構成し、下方に下ナット60によって、強固に締結して緩みを防ぐ構成を示した。
【0091】
しかしながら、ダブルナット機構を採用する場合においては、上ナット52、52をスパナなどを用いてダブルナット締めする必要がある。また、下ナット60の締結においても同様にスパナなどの締結具を用いる必要があり、壁際などの狭所においては、作業が困難となる。
【0092】
そこで、以下に説明するゴム付ナット53を適用することで、手締めにより緩みを防止する減震ストッパ構造31を構成することができる。
図12にゴム付ナット53の構成を示す。ゴム付ナット53は、ねじ穴が設けられた金属製のリング53aと、該リング53aの少なくとも1方の面に接着剤等によって取り付けられたゴム板53bとからなる。
また、該ゴム板53bの中心部には貫通孔53cが設けられており、該貫通孔53cの径R
2は前記リング53aのねじ穴の山径R
1よりも小さく形成されている。
【0093】
この貫通孔53cの径R
2は、リング53aに設けられているねじ穴の径R
1よりも小さく形成されることで、ゴム付ナット53をストッパボルト32に取り付けると、ゴム板53bの貫通孔53cの周囲とストッパボルト32とが接触し、ゴム板53bがストッパボルト32を周囲から締め付けるように保持することが可能となる。
そのため、振動等によってゴム付ナット53は取り付けられた位置から移動するがない。
【0094】
また、
図12中の矢印K方向にストッパボルト32を螺入するにあったっては、ゴム板53bが、螺入方向に逃げるように変形するため、スパナ等の締結部材を使用することなく手で回すことで挿入することが可能である。
しかしながら、いったんゴム付ナット53に挿入したストッパボルト32を、
図12中の矢印J方向に螺出しようとすると、ゴム板53bが、螺出方向に変形し、リング53aのねじ山とストッパボルト32のねじ山の間に挟まれ、ストッパボルト32に対してゴム付ナット53を容易に回すことができなくなる。即ち、当該方向には緩み止めが施されたと同様の効果を得ることができる。
【0095】
図13にゴム付ナット53、53を適用した減震ストッパ構造31を示す。
当該構成は、
図4(a)に示す減震ストッパ構造30に対応し、減震ストッパ構造30の上ナット52、52及び下ナット60の代わりに、隙間管理具3を挟み込むように、ゴム付ナット53、53を採用している。
【0096】
隙間管理具3の下方に設置されたゴム付ナット53は、ゴム板53bを下方にして用いられている。このように設置することで、当該ゴム付ナット53は、上方へは手回しによって容易に移動可能であるが、下方へは移動しづらく、振動などがかかっても下方へは緩むことがない。
一方、隙間管理具3の上方に設置されたゴム付ナット53は、ゴム板53bを上方にして用いられており、下方ヘは手回しによって移動可能であるが、上方へは移動しづらく、振動などがかかっても上方へは緩むことがない。
【0097】
したがって、これらのゴム付ナット53、53を用いる事で、減震ストッパ構造31の設置工程において、壁際などの狭所であっても手回しによって容易に施工作業を行うことができるばかりでなく、振動時にも緩むことのない、減震ストッパ構造31を構成することができる。
【0098】
(第2実施形態の変形例)
その他にも、以下に説明するクサビナット54を用いる事によって、壁際などの狭所であっても、スパナなどの締結工具を使うことなく、施工可能な減震ストッパ構造33を構成することができる。
図14に示すように、クサビナット54は、ナット部材55と、クサビ部材57とから構成される。ナット部材55は、円筒状のナットであり、その内径面には、ストッパボルト32に対応するめねじが形成されている。
ナット部材55の円筒形状の一部は、分断部55bが設けられている。また、ナット部材55の分断部55bと反対側には切欠55aが形成されている。
【0099】
分断部55bには、クサビ部材57が挿入され、これによって切欠55aを中心として、ナット部材55の内径が広げられる。また、クサビ部材57を引き抜くことにより、ナット部材55の応力が解放され、分断部55bが閉じるとともに、内径が狭まる。
ナット部材55の内径は、クサビ部材57を挿入することにより、当該内径に形成されるめねじの谷と山の高さの差以上広げられる。したがって、クサビ部材57を挿入した状態でクサビナット54をストッパボルト32に挿通することでストッパボルト32のおねじとナット部材55のめねじはかみ合うことがない。即ち、上方からクサビナット54をストッパボルトに入れるだけで(螺子を回すことなく)挿通することができる。
【0100】
図15にクサビナット54、54を適用した減震ストッパ構造33示す。
当該構成は、
図4(a)に示す減震ストッパ構造30に対応し、減震ストッパ構造30とは、上ナット52、52及び下ナット60の代わりに、隙間管理具3を挟み込むように、クサビナット54、54が装着されている。この状態において、クサビ部材57を引き抜くことでナット部材55の内径が狭まり、ストッパボルト32のおねじとナット部材55のめねじがかみ合うとともに、ストッパボルト32に締め付け力が加わる。即ち、クサビ部材57はストッパボルト32に強固に固定される。
クサビ部材57には、ストッパボルト32に締め付け力を加えて強固に固定されているため、振動などが加わっても容易に緩むことがない。
【0101】
したがって、これらのクサビナット54、54を用いる事で、減震ストッパ構造33の設置工程において、壁際などの狭所であっても手回しによって容易に施工作業を行うことができるばかりでなく、振動時にも緩むことのない、減震ストッパ構造33を構成することができる。
【0102】
以上に、本発明の様々な実施形態を説明したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。