特許第5973869号(P5973869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社イノアックコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許5973869-レゾネータ 図000002
  • 特許5973869-レゾネータ 図000003
  • 特許5973869-レゾネータ 図000004
  • 特許5973869-レゾネータ 図000005
  • 特許5973869-レゾネータ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973869
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】レゾネータ
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20160809BHJP
   F02M 35/12 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   F02M35/10 301J
   F02M35/12 B
   F02M35/12 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-233983(P2012-233983)
(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公開番号】特開2014-84782(P2014-84782A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴史
(72)【発明者】
【氏名】牧原 真也
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−154358(JP,U)
【文献】 特開2004−360220(JP,A)
【文献】 特開2004−285663(JP,A)
【文献】 実開昭58−171965(JP,U)
【文献】 実公昭49−042064(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
F02M 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共鳴室の底部に、上下方向に貫通形成された水抜き孔と、
軸部を介して前記共鳴室に対して揺動可能に軸支され、前記水抜き孔を塞ぐ閉成姿勢および該水抜き孔を開放する開放姿勢の間で変位する開閉部材とを備え、
前記開閉部材は、一方の揺動端部が前記軸部を挟む他方の揺動端部よりも重く形成されて該一方の揺動端部の重量により前記閉成姿勢に保持されると共に、他方の揺動端部に、前記共鳴室から流下する水を受容して該一方の揺動端部よりも他方の揺動端部が重くなる量の水を貯留し得る貯水凹部が形成され、
前記貯水凹部は、前記他方の搖動端部の短手方向に亘って上方に開放した凹溝状に形成され、前記開閉部材の閉成姿勢で前記共鳴室の底部よりも凹んでいると共に、該開閉部材の長手辺側の開口した両側縁が、該開閉部材の閉成姿勢で前記水抜き孔を画成する孔壁で封止され、
該貯水凹部に溜まった水により前記開放姿勢に変位して貯水凹部から排水するよう構成された
ことを特徴とするレゾネータ。
【請求項2】
前記水抜き孔の開口縁に、前記開閉部材の一方の揺動端部が前記閉成姿勢から下方変位するのを規制する規制部が設けられた請求項1記載のレゾネータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の吸気系に設けられるレゾネータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載された内燃機関は、吸気ダクトを介して空気を吸い込む際に発生する吸気騒音を低減するために、レゾネータが吸気ダクトの途中に配設されている。レゾネータは、中空の箱状体であり、箱状体の内部に画成された共鳴空間による共鳴作用を利用して吸気音などを低減するようになっている。レゾネータは、吸気ダクトで外部から取り込んだ空気に混ざった水や、結露により生じた水などが、共鳴空間に溜まるので、箱状体の底部に水抜き孔を形成し、この水抜き孔を介して排水するよう構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−27719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記レゾネータは、低減するべき騒音の周波数に応じて共鳴空間の容積が設定される。しかし、水抜き孔を形成することで減音特性が低下するので、同等の減音特性を確保するためには、共鳴空間の容積を大きくする必要があるから、レゾネータの大型化に繋がってしまう難点がある。また、水抜き孔を形成したレゾネータは、減音し得る周波数帯が高い方にずれてしまい、この周波数帯のずれは、簡単な解析では求めることが非常に困難である。このため、製造したレゾネータにおいて、水抜き孔の位置や数や大きさなどを調節して、減音を狙った周波数を合わせる手間がかかり、レゾネータの成形型を修正するコストも無視できない。
【0005】
すなわち本発明は、従来の技術に係るレゾネータに内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、水抜き孔によって減音特性を変化させることなく、水抜き孔を介して排水し得るレゾネータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明のレゾネータは、
共鳴室の底部に、上下方向に貫通形成された水抜き孔と、
軸部を介して前記共鳴室に対して揺動可能に軸支され、前記水抜き孔を塞ぐ閉成姿勢および該水抜き孔を開放する開放姿勢の間で変位する開閉部材とを備え、
前記開閉部材は、一方の揺動端部が前記軸部を挟む他方の揺動端部よりも重く形成されて該一方の揺動端部の重量により前記閉成姿勢に保持されると共に、他方の揺動端部に、前記共鳴室から流下する水を受容して該一方の揺動端部よりも他方の揺動端部が重くなる量の水を貯留し得る貯水凹部が形成され、
前記貯水凹部は、前記他方の搖動端部の短手方向に亘って上方に開放した凹溝状に形成され、前記開閉部材の閉成姿勢で前記共鳴室の底部よりも凹んでいると共に、該開閉部材の長手辺側の開口した両側縁が、該開閉部材の閉成姿勢で前記水抜き孔を画成する孔壁で封止され、
該貯水凹部に溜まった水により前記開放姿勢に変位して貯水凹部から排水するよう構成されたことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、開閉部材で水抜き孔を塞いでいるので、水抜き孔の形成によって減音特性を変化させることはない。また、共鳴室に水が溜まった場合は、開閉部材が水抜き孔を開放するように変位するので、水抜き孔を介して共鳴室に溜まった水を排出し得る。
【0007】
請求項2に係る発明では、前記水抜き孔の開口縁に、前記開閉部材の一方の揺動端部が前記閉成姿勢から下方変位するのを規制する規制部が設けられたことを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、規制部によって開閉部材を閉成姿勢で保持し得る。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るレゾネータによれば、水抜き孔によって減音特性を変化させることなく、水抜き孔を介して排水し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の好適な実施例に係るレゾネータを一部破断して示す正面図である。
図2】実施例のレゾネータの要部を示す説明図であり、(a)は開閉部材が閉成姿勢にある場合を示し、(b)は開閉部材が開放姿勢にある場合を示す。
図3】実施例の開閉部材を示す平面図である。
図4図3のA−A線断面図である。
図5】実施例の開閉部材を示す概略斜視図であり、(a)は水抜き孔から分離した状態を示し、(b)は水抜き孔に取り付けた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係るレゾネータにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、レゾネータを吸気ダクト等の接続対象に接続した設置姿勢を基準として、レゾネータの方向を指称する。
【実施例】
【0011】
図1に示すように、実施例に係るレゾネータ10は、内部に中空の共鳴空間12aを画成した共鳴室12と、この共鳴室12の上部に設けられ、共鳴空間12aに繋がる通路を有する筒状の接続部14とを備え、接続部14の上端部が吸気ダクトなどの接続対象(図示せず)に接続される。実施例のレゾネータ10は、共鳴室12の下側をなす上方に開口する箱状の下半体16と、共鳴室12の上側をなす下方に開口する箱状の上半体18とを、開口縁に延出形成されたフランジ部16a,18bを互いに突き合わせて、爪による係合や接着などで組み付けて構成される。なお、下半体16および上半体18は、射出成形等の合成樹脂の型成形により形成することができる。また、レゾネータ10は、共鳴室12の底部に水抜き孔20が上下方向に貫通形成されると共に、共鳴室12の底部に水抜き孔20を開閉可能な開閉部材30が配設される。水抜き孔20が形成される共鳴室12の底部は、共鳴室12で最下部に位置する部位であり、共鳴室12に入った水が水抜き孔20に集まるようになっている。また、共鳴室12には、矩形状の水抜き孔20の対向する開口縁の間に架け渡すように、丸棒状の軸部22が形成されている(図3および図5参照)。ここで、軸部22は、水抜き孔20における長手側の開口縁の間に、短手方向に延在している。
【0012】
前記開閉部材30は、軸部22を介して共鳴室12に対して揺動可能に軸支され、水抜き孔20を塞ぐ閉成姿勢(図2(a)参照)と、水抜き孔20を開放する開放姿勢(図2(b)参照)との間で変位するよう構成される。開閉部材30は、合成樹脂などからなる板状部材であり、水抜き孔20の開口形状に合わせて平面視で矩形状の外形形状に形成される(図3参照)。開閉部材30には、該開閉部材30の短手方向に亘って延在すると共に下方へ開口するよう形成された軸溝32aを有する軸受部32が、長手方向中間部に設けられる(図5参照)。軸受部32は、軸溝32aの閉塞端が軸部22に合わせて形成される一方、軸溝32aの開放端が軸部22の直径よりも僅かに小さく形成され、軸部22に対して軸溝32aを着脱可能になっている。開閉部材30は、軸部22に軸受部32の軸溝32aを上方(共鳴室12の内側)から嵌め合わせることで、共鳴室12に組み付けられる。そして、実施例の開閉部材30は、閉成姿勢で共鳴室12の底部に揃うように水平に延在し、開放姿勢で共鳴室12の底部と交差するように斜めに傾くように、軸部22を支点として揺動するよう構成される。なお、軸部22または軸受部32は、フッ素樹脂などの摩擦係数が小さい素材をコーティングするなどによって、開閉部材30の姿勢変位を円滑に行い得るようにするとよい。
【0013】
前記開閉部材30は、一方の揺動端部(錘側端部という)34が軸部22を挟む他方の揺動端部(貯水側端部という)36よりも重くなるよう形成され、錘側端部34の重量により閉成姿勢に保持されるようになっている。開閉部材30は、貯水側端部36と比べて錘側端部34が長くなるように揺動支点を設定したり、錘側端部34を肉厚に設定したり、錘を別途配設する等により、軸部22に支持されたもとで錘側端部34側に傾くように力がかけられる。ここで、水抜き孔20における錘側端部34側の開口縁には、段状に下がった規制部24が形成され、この規制部24の上面に開閉部材30の錘側端部34の下面が当接することで、錘側端部34が閉成姿勢から下方変位することが規制される(図2(a)参照)。
【0014】
図2図5に示すように、開閉部材30の貯水側端部36には、閉成姿勢において共鳴室12から流下する水を受容して、錘側端部34よりも貯水側端部36が重くなる量の水を貯留し得る貯水凹部38が形成されている。貯水凹部38は、貯水側端部36の短手方向に亘って上方に開放した凹溝状に形成され、開閉部材30の閉成姿勢で共鳴室12の底部よりも凹んでいる(図4参照)。また、貯水凹部38は、長手辺側の開口した両側縁が、開閉部材30の閉成姿勢で水抜き孔20を画成する孔壁で封止され、閉成姿勢で水を溜めることができるようになっている。貯水凹部38には、開閉部材30の閉成姿勢において、錘側端部34と貯水側端部36との差分の重量よりも重い量の水を貯留することができ、貯水凹部38に水を溜めることで、貯水側端部36が錘側端部34より重くなるよう構成される。そして、開閉部材30は、開放姿勢に傾くことで、貯水凹部38から水を排出し得ると共に、開放した水抜き孔20を介して共鳴室12からの排水を許容し得るようになっている。
【0015】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係るレゾネータ10の作用について説明する。開閉部材30は、貯水凹部38に水が溜まっていない、あるいは貯水凹部38に水が溜まっているものの、貯水側端部36の重量が錘側端部34の重量を超えない通常状態において、閉成姿勢を保って水抜き孔20を塞ぐので、共鳴室12が閉じた空間になるよう維持される(図2(a)参照)。そして、開閉部材30は、貯水凹部38に水が溜まることによって貯水側端部36の重量が錘側端部34の重量を超えると、軸部22を支点として閉成姿勢から開放姿勢に揺動変位する(図2(b)参照)。これにより、開閉部材30の貯水凹部38が斜めに傾いて、水抜き孔20の孔壁による封止状態が解除されて、貯水凹部38に溜まった水が排出される。開閉部材30は、貯水凹部38に溜まった水がなく(少なく)なって貯水側端部36が錘側端部34より軽くなると、開放姿勢から閉成姿勢に変位して水抜き孔20を塞ぎ、通常状態に戻る(図2(a)参照)。
【0016】
前記レゾネータ10は、通常状態において開閉部材30で水抜き孔20が塞がれているので、水抜き孔20の存在によって、設計において設定した低減すべき設定周波数から実際に低減する周波数がずれることはなく、設計において狙った通りの騒音の減衰特性が得られる。このように、レゾネータ10は、設計通りの騒音の減衰特性が得られるから、従来例で説明した開放した水抜き孔がある場合のように、共鳴室12の容積を増やす必要はなく、共鳴室12に水が溜まるのを防止しつつ全体を最小限の大きさとし得る。また、レゾネータ10は、水抜き孔20を開閉部材30により閉じることができるので、共鳴室12を水抜き孔20がない閉じた空間としてみなすことができ、設計に際して簡単な周波数計算式で設定周波数を算出することができ、解析によるモデルと実際の製品との減衰周波数のずれを小さくし得る。そして、設計周波数に合わせるために、水抜き孔20の位置などを調節する手間もかからず、型成形によりレゾネータ10を成形する場合は、成形型の修正にかかるコストも抑えることができる。
【0017】
(変更例)
前述した実施例の構成に限定されず、例えば以下のようにも変更可能である。
(1)軸部を開閉部材に設けて、共鳴室に軸受部を設ける構成であってもよい。
(2)開閉部材の外形は、閉成姿勢で水抜き孔を塞ぐことができればよく、例えば円形の水抜き孔に合わせて開閉部材の外形を円形にしてもよい。
【符号の説明】
【0018】
12 共鳴室,20 水抜き孔,22 軸部,24 規制部,30 開閉部材,
34 錘側端部(一方の揺動端部),36 貯水側端部(他方の揺動端部),38 貯水凹部
図1
図2
図3
図4
図5