(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
開口部に装着されるルーフパネルと、前記ルーフパネルの下面に取り付けられるパネル支持ステーと、前記パネル支持ステーに設けられる第1リフトガイドピンおよび第2リフトガイドピンと、前記第1リフトガイドピン、第2リフトガイドピンにそれぞれ係合する第1リフトガイド溝および第2リフトガイド溝が形成され、プッシュプルケーブルにより車両の前後方向に移動するスライダと、前記スライダの移動をガイドするガイドフレームと、を備え、前記駆動スライダの移動に伴い前記パネル支持ステーが傾動して後方に移動することにより、前記ルーフパネルがチルトアップして後方にスライド移動するサンルーフ装置において、
前記スライダを、前記第1リフトガイド溝が形成された第1スライダと、前記第2リフトガイド溝が形成された第2スライダとに分割構成し、
前記第1スライダと前記第2スライダとを、前記ガイドフレームのガイドレール溝内をスライドするシューを備えた樹脂製のスライダ連結部材により一体に連結したことを特徴とするサンルーフ装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すように、本発明に係るサンルーフ装置1は、車両の固定ルーフ2の開口部3に対して開閉自在に設けられ、開時にはチルトアップして後方に移動するアウタスライド式のルーフパネル4を備える。ルーフパネル4は例えばガラス製や樹脂製のパネルからなる。
【0012】
開口部3は、固定ルーフ2のルーフ外板の前縁を矩形状に切り欠いた構造からなる。従来ではルーフ外板の後方に閉時のルーフパネルが連なる構造であるのに対し、
図1に示す閉時のルーフパネル4は、その左右縁と後縁は固定ルーフ2のルーフ外板に連なるものの、前縁はルーフ外板を挟むことなくフロントウインドウ5の上縁に直接に連なる。厳密には、ルーフパネル4の前縁に取り付けられたゴム材等からなるウェザストリップ6とフロントウインドウ5の上縁に取り付けられたゴム材等からなるウェザストリップ7とが
図2に示すように軽く当接し合うことで、ルーフパネル4の前縁がフロントウインドウ5の上縁と面一状に連なる。
図5に示すように、ウェザストリップ6は、ルーフパネル4の前縁に取り付けられる基部6aと、基部6aの前端から前方に延びる薄肉舌状のリップ部6bとを備えた形状からなり、リップ部6bの先端がウェザストリップ7の後部上面に軽く当接する構造となっている。
【0013】
図2において、ルーフパネル4の前縁、両縁、後縁の各下面には、ルーフパネル4の補強を主目的として、フロントパネルホルダ8、サイドパネルホルダ9、リアパネルホルダ10が接着剤等により取り付けられている。フロントパネルホルダ8、サイドパネルホルダ9およびリアパネルホルダ10は、例えばメッキ鋼板等の金属製部材からなる。
【0014】
図5に示すように、フロントパネルホルダ8は、ルーフパネル4の前縁の傾斜に沿うように若干後上がりに延びる上面部8aと、上面部8aの後端からルーフパネル4のパネル面と略直交する下方向に延びる後面部8bと、後面部8bの下端から前方に略水平状に延びる下面部8cと、下面部8cの前端からルーフパネル4のパネル面と略直交する上方向に延びてその上端周りがウェザストリップ6の基部6aに埋設される前面部8dと、を有した断面形状からなる。上面部8aの前端周りは、下方に向けて突状となるように略U字形に屈曲形成されており、ウェザストリップ6の基部6aの一部と係合している。以上のようにフロントパネルホルダ8はウェザストリップ6を介してルーフパネル4の下面に取り付けられるが、これに加えてまたは代えて、上面部8aをルーフパネル4の下面に接着剤により接着する構造としてもよい。
【0015】
図4に示すように、サイドパネルホルダ9は、ルーフパネル4の側縁の下面に接着剤11により取り付けられる第1上面部9aと、第1上面部9aの車幅方向中央寄りの端部からルーフパネル4のパネル面と略直交する下方向に延びる第1側面部9bと、第1側面部9bの下端からルーフパネル4のパネル面と略平行となるように車幅方向中央側に向け若干上方に傾斜しつつ延びる下面部9cと、下面部9cの車幅方向中央寄りの端部から上方に延びる第2側面部9dと、第2側面部9dの上端から車幅方向中央に向けて延び、ルーフパネル4の下面に接着剤12により取り付けられる第2上面部9eと、第2上面部9eの車幅方向中央寄りの端部から下方に延びる略鉛直板状のブラケット部9fと、を有した断面形状からなる。ルーフパネル4の下面を閉塞するように形成された第1側面部9bと下面部9cと第2側面部9dとによって、補強機能としての閉断面空間が構成される。ブラケット部9fには後記するようにパネル支持ステー38が連結される。
【0016】
図7に示すように、リアパネルホルダ10は、ルーフパネル4の後縁の下面に接着剤13により取り付けられる上面部10aと、上面部10aの前端から下方に延びる前面部10bと、前面部10bの下端からルーフパネル4のパネル面と略平行に後方に延びる下面部10cと、下面部10cの後端から上方に延びて上面部10aの後端につながる後面部10dと、を有した断面形状からなり、これら4面によって略矩形状の閉断面空間が形成される。リアパネルホルダ10はルーフパネル4の後縁のきわから若干前方寄りの下面に取り付けられている。
【0017】
図11に示すように、フロントパネルホルダ8の両端部とサイドパネルホルダ9の前端部とは前部ジョイント部材29により連結され、リアパネルホルダ10の両端部とサイドパネルホルダ9の後端部とは後部ジョイント部材30により連結される。前部ジョイント部材29および後部ジョイント部材30の各上面も、ルーフパネル4の四隅の下面に適宜に接着剤等により接着される。前部ジョイント部材29、後部ジョイント部材30は例えば樹脂製部材から構成される。
【0018】
図2に示すように、フロントウインドウ5の上縁の内面には接着剤14によりフロントルーフレール15が取り付けられている。フロントルーフレール15はフロントウインドウ5の強度を確保するための車幅方向に延設される部材であり、略閉断面構造を呈している。フロントルーフレール15は1枚の金属板、例えばメッキ鋼板をロールフォーミング等の曲げ加工により成形したものからなる。
【0019】
フロントルーフレール15は、
図5に示すように、フロントウインドウ5の上縁の内面に接着剤14を介して取り付けられる取付面部15aと、取付面部15aの後端からフロントウインドウ5のウインドウ面と略直交する下方向に延びる上後面部15bと、上後面部15bの下端から後方側にかつ上方に向けて凹状となるように、円弧状に若干量上方に折り返される凹面部15cと、凹面部15cの後端から後方に略水平状に延びる支持面部15dと、支持面部15dの後端から下方に略鉛直状に延びる下後面部15eと、下後面部15eの下端から前方に向かって斜め下方に傾斜して延びる下面部15fと、下面部15fの前端から前方に向かって斜め上方に傾斜して延びる傾斜面15gと、を有した断面形状からなる。傾斜面15gの上端は、フロントルーフレール15の最前端位置となる部位であり、上方に折り返されたうえで取付面部15aの前端と連なっている。
【0020】
以上のフロントルーフレール15の外郭形状により、フロントルーフレール15の閉断面空間16は、凹面部15cと傾斜面15gとが近接して形成される狭隘部16cを概ねの境として、主に取付面部15aと上後面部15bと傾斜面15gとにより囲まれる前方空間16aと、主に支持面部15dと下後面部15eと下面部15fとにより囲まれる後方空間16bとに画成される。前方空間16aは、フロントウインドウ5との取り付け部である取付面部15aの直下に位置する。後方空間16bは、前方空間16aにおける下部後方に連なり、閉時のルーフパネル4の前縁の直下すなわちフロントパネルホルダ8の直下に位置する。
【0021】
前記したようにフロントルーフレール15は1枚の金属板を曲げ加工した部材であるため、板の継ぎ目部17が形成されることとなる。
図5に示すフロントルーフレール15はこの継ぎ目部17が取付面部15aに位置するように成形された場合を示しており、継ぎ目部17を接着剤14で閉塞することによりフロントルーフレール15の剛性を上げている。また、他の例としては、
図6に示すように、継ぎ目部17を閉塞するように別部材である継ぎ当て部材18を溶接により取り付ける構造にしてもよい。なお、その場合には接着剤14による閉塞は必要ないので、継ぎ目部17が取付面部15a以外の部位に位置するようにフロントルーフレール15を成形して差し支えない。
【0022】
次に、ルーフパネル4の縁部全周の下方には雨水等を排水するためのドレン溝が配設される。先ず
図5に示すように、フロントルーフレール15の上方には車幅方向に延びるフロントルーフスチフナ19が配設されている。フロントルーフスチフナ19は、フロントウインドウ5の上縁とフロントルーフレール15の取付面部15aとの間に位置する基板部19aと、基板部19aの後端からフロントウインドウ5のウインドウ面と略直交する下方向に延びる側板部19bと、側板部19bの下端から後方に略水平状に延びる底板部19cと、底板部19cの後端から若干上方に折り曲げ加工されたうえで後方に略水平状に延びるシール取付板部19dと、を有した断面形状からなる。フロントルーフスチフナ19は、基板部19aの前端が接着剤14によりフロントウインドウ5およびフロントルーフレール15の取付面部15aに固定され、底板部19cの後方寄りとシール取付板部19dの各下面が接着剤20によりフロントルーフレール15の支持面部15dに固定されている。
【0023】
シール取付板部19dの上面には、車幅方向に延びるシール部材21が接着剤等により固設されている。シール部材21は例えば中空閉断面形状を呈したゴム材からなる。閉時にはフロントパネルホルダ8の下面部8cがシール部材21に圧接されることでルーフパネル4の前縁周りが水密状態となり車内への浸水が防止される。つまり、ルーフパネル4の前縁はフロントルーフスチフナ19を介してフロントルーフレール15の後方空間16b上に載置されることとなる。そして、側板部19bと底板部19cとシール部材21の前寄りの側面21aとによってドレン溝22が形成される。ドレン溝22で受けた水は、ドレン溝22の車幅方向両端部周りに形成した排水孔(図示せず)を通してフロントピラー経由で排水される。
【0024】
図4に示すように、ルーフパネル4の側縁の下方には車両前後方向に延びるサイドルーフスチフナ23が配設される。サイドルーフスチフナ23は、図示しない車体側のフレームに連結される略水平状の連結板部23aと、連結板部23aの車幅方向中央寄りの端部から下方に略鉛直状に延びる第1側板部23bと、第1側板部23bの下端から車幅方向中央側に略水平状に延びる底板部23cと、底板部23cの車幅方向中央寄りの端部から上方に略鉛直状に延びる第2側板部23dと、第2側板部23dの上端から車幅方向中央側に向け若干上方に傾斜しつつ延びるシール取付板部23eと、を有した断面形状からなる。
【0025】
シール取付板部23eの上面には、車両前後方向に延びるシール部材24が接着剤等により固設されている。なお、このシール部材24と前記シール部材21と後記するシール部材27とは四角枠形状として一体に成形された部材である。閉時にはサイドパネルホルダ9の下面部9cがシール部材24に圧接されることでルーフパネル4の側縁周りが水密状態となり車内への浸水が防止される。そして、第1側板部23bと底板部23cと第2側板部23dとによってドレン溝25が形成される。ドレン溝25で受けた水は、排水孔(図示せず)を通してフロントピラーやセンターピラー等を経由して排水される。
【0026】
図7に示すように、ルーフパネル4の後縁の下方には車幅方向に延びるリアルーフスチフナ26が配設される。なお、このリアルーフスチフナ26と前記フロントルーフスチフナ19とサイドルーフスチフナ23とは四角枠形状として一体に連結された部材である。リアルーフスチフナ26は、図示しない車体側のフレームに連結される略水平状の連結板部26aと、連結板部26aの前端から下方に延びる側板部26bと、側板部26bの下端から前方に略水平状に延びる底板部26cと、底板部26cの前端から若干上方に折り曲げ加工されたうえで前方に略水平状に延びるシール取付板部26dと、を有した断面形状からなる。
【0027】
シール取付板部26dの上面には、車幅方向に延びるシール部材27が接着剤等により固設されている。ルーフパネル4の閉時において、ルーフパネル4の前縁と側縁に関しては前記したようにフロントパネルホルダ8、サイドパネルホルダ9がそれぞれシール部材21、24に圧接されるようになっているが、ルーフパネル4の後縁に関してはリアパネルホルダ10がシール部材27に圧接されるのではなく、ルーフパネル4の後縁の下面がシール部材27に圧接されることでルーフパネル4の後縁周りが水密状態となり車内への浸水が防止されるようになっている。そして、側板部26bと底板部26cとシール部材27の後寄りの側面27aとによってドレン溝28が形成される。ドレン溝28で受けた水は、ドレン溝28の車幅方向両端部周りに形成した排水孔(図示せず)を通してセンターピラー経由で排水される。
【0028】
ここで、ルーフパネル4の後縁について、リアパネルホルダ10を介することなくルーフパネル4の下面をシール部材27に直に圧接する構造としたことにより、次のような問題がある。
図4に示すように、ルーフパネル4の側縁についてはサイドパネルホルダ9をシール部材24に圧接していることから、ルーフパネル4とシール部材24との間にはサイドパネルホルダ9の高さ分の距離が存在している。一方、
図7に示すようにルーフパネル4とシール部材27との距離はゼロとなることから、
図12(a)に示すように、サイドルーフスチフナ23のシール取付板部23eの後部周りは後方に向かうにしたがい漸次ルーフパネル4に近づく傾斜面23fとして形成されている。したがって、この傾斜面23f上で傾斜状に配設されたシール部材24に圧接されるように、サイドパネルホルダ9の下面部9cの後部周りも後方に向かうにしたがい漸次ルーフパネル4に近づく傾斜面9g(
図11も参照)として形成されている。
【0029】
仮に
図12(b)に示すようにサイドパネルホルダ9をそのまま後方まで延設する構造とした場合、下面部9cの後端とルーフパネル4とシール部材24との間には必ず下面部9cの板厚寸法に起因する隙間Gが形成されることとなり、充分な水密状態を得られなくなるおそれがある。これに対し
図12(a)に示すようにサイドパネルホルダ9の後部に後部ジョイント部材30を介在させることで前記隙間Gの形成を防ぐことができる。後部ジョイント部材30の下面はサイドパネルホルダ9の傾斜面9gと面一に連なるように傾斜状に形成されており、その傾斜面30bはルーフパネル4の下面に略突き当たる位置まで形成されている(
図11も参照)。これにより隙間Gが形成されることもなくなり、所定の水密機能が確保される。サイドパネルホルダ9は板金部材であるため下面部9cの後端を隙間Gが形成されないように鋭角に切断加工することは実質的に無理であるのに対し、後部ジョイント部材30を成形性に優れる樹脂製部材とした場合、後部ジョイント部材30の後端部30aを容易に点状の鋭角として成形できるものである。
【0030】
次にルーフパネル4の開閉機構について説明する。
図4において、ルーフパネル4の両側縁の下方には、車両の前後方向に延設するガイドフレーム31が配設される。ガイドフレーム31は、図示しない駆動モータにより前後移動するプッシュプルケーブル32を挿通させるためのケーブル溝33と、プッシュプルケーブル32と連結したスライダ34(両者の連結部は図示せず)の前後方向のスライドをガイドするガイドレール溝35とを有した断面形状からなり、例えばアルミニウム合金の押出形材から構成される。
【0031】
図2および
図13に示すように、スライダ34は、車両前方寄りの第1スライダ51と車両後方寄りの第2スライダ52とに分割して構成される。第1スライダ51および第2スライダ52は共にルーフパネル4のリフトアップとリフトダウンの機能を担う部材であり、強度確保の点から金属製からなる。プッシュプルケーブル32との連結部は、第1スライダ51および第2スライダ52の内の一方のみに形成される。
【0032】
第1スライダ51は、ガイドフレーム31に沿って起立する鉛直板状の本体部51Aと、本体部51Aの前後端の下部から左右に突設されたシュー取付部51Bとを有する。前端寄りの左右一対のシュー取付部51Bには、ガイドレール溝35(
図4)をスライドするシュー53が嵌合により取り付けられる。シュー53は樹脂製の部材である。本体部51Aには第1リフトガイド溝36が本体部51Aを左右に貫通する溝形状として形成されている。
【0033】
第1リフトガイド溝36は、略水平に延設される第1水平ストローク36Aと、第1水平ストローク36Aの前端から前上がりに緩傾斜する第1傾斜ストローク36Bと、第1傾斜ストローク36Bの上端から前方に略水平に延設される第2水平ストローク36Cと、第2水平ストローク36Cの前端から前上がりに傾斜する第2傾斜ストローク36Dとを有する形状からなる。
【0034】
第2スライダ52は、ガイドフレーム31に沿って起立する鉛直板状の本体部52Aと、本体部52Aの前後端の下部から左右に突設されたシュー取付部52Bとを有する。後端寄りの左右一対のシュー取付部52Bにはシュー53が嵌合により取り付けられる。本体部52Aには第2リフトガイド溝37が本体部52Aを左右に貫通する溝形状として形成されている。
【0035】
第2リフトガイド溝37は、略水平に延設される第1水平ストローク37Aと、第1水平ストローク37Aの前端から前上がりに傾斜する傾斜ストローク37Bと、傾斜ストローク37Bの上端から前方に略水平に延設される第2水平ストローク37Cとを有する形状からなる。
【0036】
第1スライダ51と第2スライダ52とは、前記したガイドレール溝35(
図4)をスライドするシュー54を備えた樹脂製のスライダ連結部材55により一体に連結される。スライダ連結部材55は、車両前後方向に延設される連結アーム56と、連結アーム56の前後端に形成される前記シュー54とを有した形状からなる。スライダ連結部材55は、前端側のシュー54が第1スライダ51の後端寄りのシュー取付部51Bに嵌合により取り付けられ、後端側のシュー54が第2スライダ52の前端寄りのシュー取付部52Bに嵌合により取り付けられる。具体的には、スライダ連結部材55は左右一対からなり、右側のスライダ連結部材55が、第1スライダ51の後端右側のシュー取付部51Bと第2スライダ52の前端右側のシュー取付部52Bとを連結し、左側のスライダ連結部材55が、第1スライダ51の後端左側のシュー取付部51Bと第2スライダ52の前端左側のシュー取付部52Bとを連結する。
左側の
【0037】
シュー54に加えて連結アーム56までガイドレール溝35に接触させると第1スライダ51および第2スライダ52の摺動抵抗が大きくなってしまう。そのため、車両前後方向から見た連結アーム56の断面外郭形状はシュー54のそれよりも一回り小さく形成されており、連結アーム56がガイドレール溝35に接触しないようになっている。
【0038】
以上のように、金属製からなるスライダ34を、第1リフトガイド溝36を有する第1スライダ51と第2リフトガイド溝37を有する第2スライダ52とに分割構成することで、両溝間に存在する無駄な金属部位を省くことができ、その分、スライダ34の重量を低減することができる。そして、第1スライダ51と第2スライダ52とを、ガイドレール溝35(
図4)をスライドするシュー54を備えた樹脂製のスライダ連結部材55により一体に連結することにより、スライダ34とプッシュプルケーブル32とを連結するに当たっては、第1スライダ51および第2スライダ52の内の一方のみに連結構造を形成すれば済む。したがって、スライダ34とプッシュプルケーブル32との連結作業に手間がかからずサンルーフ装置1の組み付け性が向上する。スライダ連結部材55は樹脂製であるため、重量増加の問題はさほど生じない。
【0039】
また、第1スライダ51、第2スライダ52において、スライドの安定性の確保のためにそれぞれ四隅に樹脂製のシュー53,54を取り付けることが求められるところ、本発明では、第1スライダ51と第2スライダ52とをスライダ連結部材55で連結する組み付け作業がそのままシュー54の取付作業となる。したがって、連結作業とは別に第1スライダ51および第2スライダ52にシュー54を取り付けるという手間も生じない。
【0040】
ルーフパネル4とスライダ34との間にはパネル支持ステー38が介設される。
図2および
図3を参照して、パネル支持ステー38は、鉛直状に配設される板状部材であって、前寄りに形成される基板部39と、後寄りに形成される二又形状部40とを有した形状からなる。二又形状部40は、ルーフパネル4に連結される上辺部41とスライダ34に係合される下辺部42とが後方に開口するように二又状に形成されている。上辺部41はルーフパネル4の下面に沿って略前後方向に延設されており、その後端には複数の連結ピン43の内の1つが連結固定される。下辺部42も略前後方向に延設されており、その後端には後記するように第2リフトガイドピン45が取り付けられている。
【0041】
図4において、前記したようにサイドパネルホルダ9の一部は鉛直板状のブラケット部9fとして形成されており、このブラケット部9fに対し
図2に示すようにパネル支持ステー38の基板部39の上縁周りおよび上辺部41が複数の連結ピン43により連結固定される。また、パネル支持ステー38の基板部39の下縁前端と下辺部42の後端とにはそれぞれ第1リフトガイドピン44、第2リフトガイドピン45が取り付けられている。第1リフトガイドピン44、第2リフトガイドピン45はそれぞれ第1スライダ51の第1リフトガイド溝36、第2スライダ52の第2リフトガイド溝37に摺動自在に係合している。
【0042】
なお、パネル支持ステー38については、サイドパネルホルダ9と一体に成形したものとしてもよいし、或いはサイドパネルホルダ9に関係無く、ルーフパネル4の下面に接着剤等により直接取り付ける構造にしてもよい。
【0043】
「作用」
主に
図8、
図9を参照してサンルーフ装置1の動作を説明する。なお、
図8、
図9ではサイドパネルホルダ9のブラケット部9fは省略してある。
図8(a)はルーフパネル4が全閉となった状態を示しており、このときスライダ34(第1スライダ51および第2スライダ52)は最前方位置にある。第1リフトガイドピン44は第1リフトガイド溝36の第1水平ストローク36Aに位置し、第2リフトガイドピン45は第2リフトガイド溝37の第1水平ストローク37Aに位置している。ルーフパネル4の前縁においてはフロントパネルホルダ8がシール部材21に圧接され、ルーフパネル4の側縁においてはサイドパネルホルダ9がシール部材24に圧接され(
図4参照)、ルーフパネル4の後縁においてはルーフパネル4の下面がシール部材27に圧接されることで、ルーフパネル4の水密状態が確保される。
【0044】
図8(a)の状態から、図示しないモータの駆動によりプッシュプルケーブル32(
図4)を介して、スライダ連結部材55により連結された第1スライダ51と第2スライダ52とが一体に後方に移動すると、第1リフトガイド溝36の第1傾斜ストローク36Bの内壁が第1リフトガイドピン44を上方に押し上げるとともに、第2リフトガイド溝37の傾斜ストローク37Bの内壁が第2リフトガイドピン45を上方に押し上げることによりルーフパネル4が若干後方に移動してチルトアップされる。
図8(b)はチルトアップが完了した状態を示しており、第1リフトガイドピン44が第1リフトガイド溝36の第2水平ストローク36Cに位置し、第2リフトガイドピン45が第2リフトガイド溝37の第2水平ストローク37Cに位置する。
【0045】
図8(b)の状態から第1スライダ51と第2スライダ52とがさらに後方に移動すると、
図9(a)に示すように、第1リフトガイド溝36の第2傾斜ストローク36Dの内壁が第1リフトガイドピン44を後方に押すことで、ルーフパネル4が後方にスライドする。
【0046】
図9(b)はルーフパネル4が最後方位置まで移動して開口部3が全開となった状態を示しており、パネル支持ステー38の上辺部41が開口部3の後方の固定ルーフ2よりも上方に位置し、下辺部42が同固定ルーフ2よりも下方に位置する。すなわち、パネル支持ステー38の二又形状部40が開口部3の後方の固定ルーフ2を上下に挟むように位置する。そして、第2リフトガイドピン45の位置は
図9(b)から明らかなように開口部3の後縁よりも後方に位置する。
【0047】
特開2005−41345号公報にも示される従来構造では、開口部が全開状態のとき、パネル支持ステーとスライダとを連結する2つのピンはいずれも開口部の後縁よりも前方に位置する。この従来構造では、ガイドレールの前端部を前方に延長するなどして前寄りのピンを前方にレイアウトさせない限り、2つのピン間の距離、すなわちスライダで受けるルーフパネルの重量の支持スパンを大きくとることは難しい。また、この従来構造では、2つのピンの位置がルーフパネルの重心よりも前方に偏り過ぎるため、モーメントが大きくなりパネル支持ステーに負荷がかかりやすくなる。
【0048】
これに対し、開口部3が全開状態のとき、第2リフトガイドピン45が開口部3の後縁よりも後方に位置する構造、すなわちルーフパネル4の重量支持部の一部であるところのパネル支持ステー38と駆動スライダ34との係合部の一部が開口部3の後縁よりも後方に位置する構造としたことにより、ガイドフレーム31の前端部を前方に延長するなどの措置を講ずることなく、開口部3の開放量を確保しつつルーフパネル4の支持スパンS(
図3)を大きくとることができる。また、従来に比してルーフパネル4の重量の支持部が後方寄りとなってルーフパネル4の重心位置に近くなるので、パネル支持ステー38にかかる負荷も低減される。
【0049】
また、パネル支持ステー38の形状として、ルーフパネル4に連結される上辺部41と駆動スライダ34に係合される下辺部42とが後方に開口するように二又状に形成された二又形状部40を有する形状とし、
図9(b)に示すように開口部3が全開状態のとき、二又形状部40が開口部3の後方の固定ルーフ2を上下に挟むように位置する構造とすれば、パネル支持ステー38を簡単な構造としつつルーフパネル4の支持スパンSを大きくとることが可能となる。
【0050】
以上のように、フロントウインドウ5の上縁に可動のルーフパネル4の前縁が固定ルーフ2のルーフ外板を挟むことなく連なることによりルーフの開口部3が閉じる構成のサンルーフ装置1とすることで、フロントウインドウ5とルーフパネル4との間にルーフ外板が存在しなくなる分、前方斜め上の視界を広げることができる。また、従来技術(例えば特開2010−163112号公報)にあってはフロントルーフレールが上下2つの部材に分割構成され両者を溶接接合するためのフランジ部がさらに視界の妨げになりやすかったところ、本実施形態のフロントルーフレール15は、略閉断面構造となるように1枚の金属板を曲げ加工した構成であるため、フランジ部を要することもなくなり、その分、前方斜め上の視界を一層広げることができる。フロントルーフレール15は、フロントウインドウ5との取り付け部の直下に閉断面空間16の少なくとも一部(前方空間16a)が位置する構造のため、フロントウインドウ5の補強機能が充分に確保される。
【0051】
フロントルーフレール15の板の継ぎ目部17を継ぎ当て部材18により閉塞すれば、フロントルーフレール15の剛性(主に捻り剛性)を一層高めることができる。また、本実施形態のように、フロントルーフレール15を接着剤14によりフロントウインドウ5に接着する場合において、継ぎ目部17を接着剤14により閉塞する構成とすれば、簡単な構造でフロントルーフレール15の剛性を高めることができる。
【0052】
また、開口部3の閉時に、フロントルーフレール15の閉断面空間16の上方、具体的には後方空間16bの上方にルーフパネル4の前縁を載置させる構成とすれば、ルーフパネル4からの荷重を閉断面空間16の剛性機能により効果的に受けることができる。ルーフパネル4の前縁を載置させるフランジ部等を別途に形成する必要もないので載置スペース周りもコンパクトなものとなり、
図10に示すように、視線V1と視線V2との交差角度θが小さなものとなって、前方斜め上の視界を広げることができる。
【0053】
また、フロントウインドウ5との取り付け部の直下に閉断面空間16の少なくとも一部(前方空間16a)が位置する構造のフロントルーフレール15を備えた場合において、フロントルーフレール15の前寄り下部に、前方に向かって斜め上方に傾斜しその傾斜上端がフロントルーフレール15の最前端位置となる傾斜面15gを形成すれば、
図10に示すように、着座した乗員からの視線V1を傾斜面15gの表面に沿って確保できるため、フロントウインドウ5の視界を大きく確保できる。
【0054】
また、開口部3の閉時に、ルーフパネル4の前縁においてはフロントパネルホルダ8をシール部材21に圧接させ、ルーフパネル4の後縁においてはルーフパネル4の下面を直にシール部材27に圧接させる構成とすれば、リアパネルホルダ10をシール部材27に圧接させる場合に比して、ルーフパネル4の後縁周りのシール構造の上下方向スペースを薄型化できるので、その分、ヘッドクリアランスを大きく確保できる。
【0055】
また、
図12(a)に示したように、後端部30aがルーフパネル4の下面に略突き当たるまで後方に向かうにしたがい上方に傾斜する傾斜面30bが形成された樹脂製の後部ジョイント部材30を設け、サイドパネルホルダ9との圧接部位からルーフパネル4の後縁の下面との圧接部位までに至るシール部材24に対して後部ジョイント部材30の傾斜面30bを圧接させる構成とすれば、ルーフパネル4とシール部材24との間に
図12(b)に示すような隙間Gの発生を防止でき、シール部材24の水密性が高まる。
【0056】
また、フロントルーフスチフナ19、リアルーフスチフナ26に各々ドレン溝22、28が形成され、シール部材21、27をドレン溝22、28の溝壁の一部とする構成にすれば、ドレン機能とルーフパネルの水密機能とが一部兼用される構造となって、ドレン溝22、28周りの構造がコンパクトになる。また、フロントルーフスチフナ19、リアルーフスチフナ26の断面形状も簡易形状で済む。勿論、サイドルーフスチフナ23においてもシール部材24をドレン溝25の溝壁の一部として構成してもよい。