(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複写再現能力に満たない小さい点で形成された図柄本体部、この図柄本体部の背景であって、前記図柄本体部と共通した前記小さい点で、同じ面積率で形成された図柄背景部、光が当たっているように見せることで前記図柄本体部が浮き出ているように感じさせる光当部及び、影であるように見せることで前記図柄本体部が浮き出ているように感じさせる影部から構成され、全体として立体的な図柄が二次元平面で表現されるレリーフ調模様と、
複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群と、を、
前記図柄本体部及び前記図柄背景部の面積率と、前記複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群の面積率とを略一致させ、同一面上で組み合わせて構成する、
ことを特徴とする偽造防止印刷物。
前記同一面上で組み合わせる際に、前記複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群からなる形状が欠落しないように、前記図柄本体部、前記図柄背景部、前記光当部及び前記影部の一部を欠落させている、
ことを特徴とする請求項1に記載の偽造防止印刷物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1や特許文献3で提案されるレリーフ模様の形成技術は万線が応用されるため、複雑なモチーフでレリーフ模様を作成しようとした場合、コピー偽造対策を施しつつ、これを美しく偽造防止印刷物上で見せることに困難性がある。さらに、偽造防止印刷物上でレリーフ模様を美しく見せることに注目しすぎると、コピー偽造対策に影響が及ぶ可能性がある。一方、偽造防止効果を下げることなく、偽造防止印刷物上にきめ細かい再現性で美しくレリーフ模様を表現できれば、偽造防止印刷物に新たな魅力を備えさせることができる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑み提案され、コピー偽造対策による偽造防止効果を下げることなく、彩紋等をはじめとする複雑な模様のモチーフまでをレリーフ調で、網点ならではのきめの細かい再現性により印刷物上に現すことができる偽造防止印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る偽造防止印刷物は、複写再現能力に満たない小さい点で形成された図柄本体部、この図柄本体部の背景であって、前記図柄本体部と共通した前記小さい点で、同じ面積率で形成された図柄背景部、光が当たっているように見せることで前記図柄本体部が浮き出ているように感じさせる光当部及び、影であるように見せることで前記図柄本体部が浮き出ているように感じさせる影部から構成され、全体として立体的な図柄が二次元平面で表現されるレリーフ調模様と、複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群とを、前記図柄本体部及び前記図柄背景部の面積率と、前記複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群の面積率とを略一致させ、同一面上で組み合わせて構成することを特徴とする。
【0008】
特に、本発明は、前記同一面上で組み合わせる際に、前記複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群からなる形状が欠落しないように、前記図柄本体部、前記図柄背景部、前記光当部及び前記影部の一部を欠落させていることを特徴とする。さらに、前記同一面上で組み合わせる際に、前記光当部が欠落しないように、前記複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群の一部を欠落させていることを特徴とする。そして、前記複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群の欠落した形状を網点で復元し、該欠落した形状に所定の濃度を持たせていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記同一面上で組み合わせる際に、前記複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群と、前記図柄本体部及び前記光当部、前記影部とを重ならないように配置していてもよい。
【0010】
このほか、本発明に係る偽造防止印刷物は、上述した偽造防止印刷物を有彩色の第1のインキで形成する偽造防止印刷版と、前記レリーフ調模様と同一形状の第2レリーフ調模様を前記第1のインキと合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキで形成する刷り合わせ版とを、見当を合わせて刷り重ね、目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる前記図柄本体部及び前記図柄背景部、前記影部を印刷物上に形成して構成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、複写再現能力に満たない小さい点で形成された図柄本体部、この図柄本体部の背景であって、図柄本体部と共通した小さい点で、同じ面積率で形成された図柄背景部、光が当たっているように見せることで図柄本体部が浮き出ているように感じさせる光当部及び、影であるように見せることで図柄本体部が浮き出ているように感じさせる影部から構成され、全体として立体的な図柄が二次元平面で表現されるレリーフ調模様と、複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群とを同一面上で組み合わせて構成する偽造防止印刷物に係る。したがって、図柄本体部及び図柄背景部の面積率が同じであるので、立体的な図柄としてのレリーフ調模様を二次元平面で印刷物上に表現することができる。図柄本体部及び図柄背景部の面積率と、複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群の面積率とを略一致させている構成であるので、コピー偽造対策を施した偽造防止印刷物として適用することができる。さらに、図柄本体部及び図柄背景部が複写再現能力に満たない小さい点で構成されるので、きめの細かな再現性で美しくレリーフ調模様を印刷物上に現すことができる。
【0012】
特に、同一面上で組み合わせる際に、複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群からなる形状が欠落しないように、図柄本体部、図柄背景部、光当部及び影部の一部を欠落させている構成とすることで、複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群が複写物上で明確に現れないといった、レリーフ調模様を組み合わせることによって生じかねないコピー偽造対策への悪影響を防ぐことができる。光当部が欠落しないように、複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群の一部を欠落させている構成とすることで、これらを組み合わせてもなお、レリーフ調模様を美しく印刷物上に表現することができる。
【0013】
ここで、上記光当部を欠落させないように複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群の一部を欠落させる構成では、彩紋等の細かなレリーフ調模様により複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群が不均一に削られ、外観上、斑模様に見えてしまう現象が生じる可能性がある。そこで、複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群の欠落した形状を網点で復元し、この欠落した形状に所定の濃度を持たせることにより、そのような外観上の不具合を解消させることができる。そして複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群の欠落した形状が所定の濃度を持って印刷物上で復元されるため、複雑なモチーフのレリーフ調模様を美しく印刷物上に再現することができる効果をそのままに、コピー偽造対策への悪影響を防ぐことができる。なお、複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群の欠落した形状を補う網点は、例えば、一本の万線の線を100%濃度としたときに、これに対して20〜80%の濃度で効果が良好となり、40〜60%の濃度で最適となるが、上記20〜80%の範囲を外れても少なからず、欠落した形状部分の濃度を補うことができる。
【0014】
また、本発明では、同一面上で組み合わせる際に、複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群と、図柄本体部及び光当部、影部とを重ならないように配置している構成によっても、コピー偽造対策に影響を及ぼさないで、かつ、複雑なモチーフであってもレリーフ調模様を美しく印刷物上に表現することができる。
【0015】
このほか、本発明は、上記偽造防止印刷物を有彩色の第1のインキで形成する偽造防止印刷版と、レリーフ調模様と同一形状の第2レリーフ調模様を第1のインキと合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキで形成する刷り合わせ版とを見当を合わせて刷り重ね、目視上、第1のインキの色と第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる図柄本体部及び図柄背景部、影部を印刷物上に形成して構成する偽造防止印刷物に係る。したがって、印刷物上で無彩色により現されている図柄本体部及び図柄背景部、影部の面から、複写物において複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群が第1のインキの有彩色で現れるため、形の変化と共に、色の変化を効果的に活用したコピー偽造対策を構築することができる。そして、偽造防止印刷版と刷り合わせ版とを見当を合わせて刷り重ねる構成であるので、印刷物上に再現されるレリーフ調模様の形状を、より鮮明化することができる。偽造防止印刷版と刷り合わせ版とを見当を合わせて刷り重ねる際に、モアレが出ないように異なる角度で刷り重ねることにより、印刷物上に再現されるレリーフ調模様の形状の鮮明さを更に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る偽造防止印刷物に関し、具現化したいくつかの実施形態について図面とともに説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の構成を具現化した例示に過ぎず、本発明は、特許請求の範囲に記載した事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことができる。
【0018】
本発明に係る偽造防止印刷物は、
図3中の<I>で指し示す画像に示されるように、立体的な図柄が二次元平面で表現されるレリーフ調模様1と、複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群としての、例えば、複写機で再現可能な線群からなる潜像2とが、同一面上で組み合わせられることで構成されている。
【0019】
レリーフ調模様1は、複写再現能力に満たない小さい点で形成された、立体的な図柄の主部となる図柄本体部11と、この図柄本体部11の背景として、図柄本体部11と共通する複写再現能力に満たない小さい点で、同じ面積率で形成された、図柄背景部12と、光が当たっているように見せることで図柄本体部11が浮き出ているように感じさせる光当部13と、影であるように見せることで図柄本体部11が浮き出ているように感じさせる影部14とから構成されている。レリーフ調模様1は、図柄本体部11、図柄背景部12、光当部13及び影部14から全体として、立体的な図柄が二次元平面で表現されているように見えるものとなる。図柄本体部11及び図柄背景部12の面積率が一致することも、レリーフ調模様1の立体的な図柄が二次元平面で表現されるように見える要件となる。
【0020】
図柄本体部11及び図柄背景部12を形成する複写再現能力に満たない小さい点は、100〜300線/インチの網点で構成し、その面積率を5〜25%とすることが好ましい。光当部13は、インキが付されない領域である。影部14は、100〜300線/インチの網点で構成し、その面積率を10〜50%として形成することが好ましい。上述のような線数並びに面積率は、小さい点の集合体が目視において認識可能であるが、各種のカラーコピー機及びモノクロコピー機において再現されない範囲として経験的かつ実験的に得たことに基づいて規定している。
【0021】
潜像2は、上述のとおり複写機で再現可能な線群からなる。具体的には、30〜70線/インチの万線で構成し、その面積率を5〜25%とすることが好ましい。なお30〜70線/インチの網点の潜像であっても本発明を構成することができる。
【0022】
そして、本発明に係る偽造防止印刷物は、図柄本体部11及び図柄背景部12の面積率と、潜像2の面積率とがほぼ一致している。具体的には、図柄本体部11及び図柄背景部12の面積率と、潜像2の面積率との面積率の差異は、5%程度の範囲内に抑えられている。
【0023】
なお、線数とは1インチ中に存在する線の本数を示し、同じ面積率の場合、線数が多いほど形成される点(網点ドット)が小さくなる。線数の差が大きいほど、境界が目立つ傾向がある。また、面積率は、単位面積中に占める網点の面積の割合を示す。
【0024】
本発明に係る偽造防止印刷物を作成するプロセスでは、レリーフ調模様1と潜像2とを同一面上で組み合わせる際に、潜像2の全体形状が欠落しないように、レリーフ調模様1における図柄本体部11、図柄背景部12、光当部13及び影部14の一部を欠落させることが好ましい(
図3中の<C>で指し示す画像、
図1の組合せ用エンボス画像1aも参照)。併せて、潜像2について、レリーフ調模様1と同一面上で組み合わせる際にレリーフ調模様1の光当部13が欠落しないように、潜像2の一部の形状を欠落させることが好ましい(
図3中の<E>で指し示す画像、
図2の組合せ用潜像画像2aを参照)。また、潜像2(組合せ用潜像2a)の欠落させた形状を、復元用網点3(
図3中の<G>で指し示す画像、網点画像3aを参照)で復元し、欠落させた形状に濃度を持たせることがさらに好ましい。なぜなら、斑模様に見えてしまう等の外観上の不具合を解消することができるからである。なお、欠落させるとは、抜いて透明としたり、白を置いたりすることで、印刷されないようにすることを意味する。
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る偽造防止印刷物を作成するプロセスに関し具体的に構成した第1実施形態について、
図1〜
図3に基づいて説明していく。
【0026】
(1)準備工程
まず、
図1に示すようなステップで、同一面上で組み合わせる一方であるレリーフ調模様(組合せ用エンボス画像1a)を用意する。
【0027】
すなわち、所定の図柄について、画像処理ソフトウエアによりエンボス処理をし、元となるエンボス画像を得る。この元となるエンボス画像は、50%前後の面積率で現される無彩色の一様な背景中より上記所定の図柄が浮き出た画像として現れる。そして、この元となるエンボス画像の面積率について、画像処理ソフトウエア上で、偽造防止印刷物として適当な面積率(例えば、潜像2の面積率と一致する面積率)となるまで数値を下げ、同一面上で組み合わせようとするエンボス画像1oを得る(
図1中の<A>で指し示す画像を参照)。続いて、同一面上で組み合わせようとする潜像2の潜像画像2oを用意した上で(
図1中の<B>で指し示す画像を参照)、これらを照らし合わせ、エンボス画像1oと潜像画像2oを重ねたときに重複する領域を抽出する。そして、潜像画像2oを重ねたときに重複する領域となるエンボス画像1o上の図柄本体部11、図柄背景部12、光当部13及び影部14の一部を抜いて透明とし、エンボス画像1oから欠落させる。これにより、同一面上で潜像と組み合わせる組合せ用エンボス画像1aを得ることができる(
図1中の<C>で指し示す画像を参照)。
【0028】
一方、
図2に示すようなステップで、同一面上で組み合わせる他方である複写機で再現可能な線群(組合せ用潜像画像2a)を用意する。
【0029】
すなわち、上述のようにして得られたエンボス画像1oを、面積率を基準にした特定の閾値で2階調化し、図柄本体部11、図柄背景部12及び影部14と、光当部13とを区別可能にした2階調化画像1bを得る(
図2中の<D>で指し示す画像を参照)。続いて、同一面上で組み合わせようとする潜像画像2o(
図2中の<B>で指し示す画像を参照)を用意した上で、これらを照らし合わせ、2階調化画像1bと潜像画像2oを重ねたときに、2階調化画像1bにおける白部分(すなわち光当部13)と重複する潜像画像2o上の領域を抽出する。この白部分と重複する領域となる潜像画像2o上の潜像形状の一部を抜いて透明とし、欠落させる。これにより、同一面上で組合せ用エンボス画像1aと組み合わせる組合せ用潜像画像2aを得ることができる(
図2中の<E>で指し示す画像を参照)。
【0030】
(2)組み合わせ工程
次に、
図3に示すようなステップで、組合せ用エンボス画像1a及び組合せ用潜像画像2aの同一面上での組み合わせを通じて、第1実施形態に係る偽造防止印刷物を得る。
【0031】
すなわち、組合せ用エンボス画像1a及び組合せ用潜像画像2aを同一面上で融合させて、第1実施形態に係る偽造防止印刷物の元となる元画像Xを得る(
図3中の<F>で指し示す画像を参照)。次に、元画像Xを構成する組合せ用潜像画像2aは、レリーフ調模様1(2階調化画像1b)と重ねたときに光当部13と重複する領域の潜像形状が欠落しているので、欠落させた潜像形状を復元するための復元用網点3からなる網点画像3aを用意し(
図3中の<G>で指し示す画像を参照)、これを元画像Xと同一面上で融合する。これにより、組合せ用潜像画像2aと網点画像3aとが組み合わされ、欠落した形状に濃度を持たせて復元した潜像2bを含んだ第1実施形態に係る偽造防止印刷物を作成するための偽造防止印刷画像Yを得ることができる(
図3中の<I>で指し示す画像を参照)。網点画像3aは、データ処理が複雑化しないように、図柄本体部11、図柄背景部12と同じ線数の復元用網点3で形成されることが好ましい。
【0032】
そして、得られた偽造防止印刷画像Yに基づいて偽造防止印刷版Pを作成し、この偽造防止印刷版Pで用紙に印刷することにより、第1実施形態に係る偽造防止印刷物を製造することができる。製造した偽造防止印刷物をコピー機で複写して複写物を得ると、その複写物上には、復元した潜像2bが現れる(
図3中の<H>で指し示す画像を参照)。仮に、元画像Xから印刷物を得て、コピー機で複写して複写物を得ると、その複写物上には、形状の一部が欠落したままの組合せ用潜像画像2aに基づいた潜像が現れることになる。
【0033】
なお、第1実施形態に係る偽造防止印刷物を構成するレリーフ調模様1の図柄本体部11及び図柄背景部12を形成する複写再現能力に満たない小さい点は、175線/インチの網点である。また、その面積率は、15%である。影部14は、175線/インチの網点で、その面積率を10〜50%として形成する。潜像2は、50線/インチの万線で、その面積率を15%として形成する。復元用網点3は、175線/インチの線数であり、その濃度を、潜像2の万線の一本の線の濃度の半分、すなわち、潜像2の万線の一本の線の50%濃度とする。
【0034】
したがって、第1実施形態に係る偽造防止印刷物は、レリーフ調模様1を構成する図柄本体部11及び図柄背景部12の面積率と、潜像2の面積率とが略一致しているので、コピー偽造対策を施した偽造防止印刷物として適用することができる。特に、その作成プロセスにおいて、潜像2の形状が欠落しないように、図柄本体部11、図柄背景部12、光当部13及び影部14の一部を欠落させた構成とすることで、レリーフ調模様1を組み合わせることによって生じかねないコピー偽造対策への悪影響、例えば、複写物上での潜像2の不鮮明化を防ぐことができる。
【0035】
また、図柄本体部11及び図柄背景部12の面積率が同じであるので、立体的な図柄としてのレリーフ調模様1を二次元平面で印刷物上に表現することができる。その作成プロセスにおいて、光当部13が欠落しないように、潜像2の一部を欠落させ(組合せ用潜像画像2a)、かつ、この組合せ用潜像画像2a欠落した潜像形状を所定の濃度を持たせて復元した潜像2bを組合せ用エンボス画像1aと組み合わせて構成したので、レリーフ調模様1がたとえ複雑なモチーフであっても、美しく印刷物上に表現することができるようにしつつ、かつ、コピー偽造対策への悪影響を防ぐことができる。なお、図柄本体部11及び図柄背景部12が複写再現能力に満たない小さい点で構成されているので、印刷物上に現したレリーフ調模様1は、きめ細かに美しく再現されることとなる。
【0036】
ここで、図示を省略したが、レリーフ調模様1と潜像2を同一面上で組み合わせる際に、潜像2と、レリーフ調模様1を構成する図柄本体部11及び光当部13、影部14とが重ならないように配置して偽造防止印刷物を構成しても、コピー偽造対策に影響を及ぼさないで、かつ、複雑なモチーフであってもレリーフ調模様を美しく印刷物上に表現することができる。したがって、このような構成の偽造防止印刷物も本発明の技術的範囲に含まれる。また、画像Xに基づいて偽造防止印刷版を作成し、これを用紙に印刷して製造された構成の偽造防止印刷物も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0037】
なお、本実施形態において偽造防止版を作成するまでのプロセスは、所定の画像処理ソフトの画像処理又は画像加工により実行することができるが、本発明に係る偽造防止印刷物はその構成を満たす限り、画像処理ソフトで実行する方法から得られるものに限定されない。
【0038】
(第2実施形態)
さらに、本発明において具体的に構成した第2実施形態に関し、
図4に基づいて説明していく。
【0039】
第2実施形態に係る偽造防止印刷物は、
図4中の<K>で指し示す画像に示されるように、目視上、無彩色(例えば、グレー)となる合成レリーフ調模様5が印刷物上に形成されて構成されている。
【0040】
第2実施形態に係る偽造防止印刷物を作成するプロセスは以下のとおりである。すなわち、上記偽造防止印刷画像Yに基づいた偽造防止印刷版P(
図4中の<I>で指し示す画像を参照)と、レリーフ調模様1と同一形状の第2レリーフ調模様4に基づいた刷り合わせ版Q(
図4中の<J>で指し示す画像を参照)とをそれぞれ作成する。そして、偽造防止印刷版Pと刷り合わせ版Qとを刷り重ねる。具体的には、偽造防止印刷版Pを有彩色の第1のインキ(例えば、赤)により、刷り合わせ版Qを第1のインキと合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキ(例えば、緑)により、見当を合わせて刷り重ねて第2実施形態に係る偽造防止印刷物を製造するのである。これにより、レリーフ調模様1と第2レリーフ調模様4とが合成された合成レリーフ調模様5としての、図柄本体部51及び図柄背景部52、影部54が印刷物上にグレーで現れる偽造防止印刷物を製造することができる。なお、光当部53は、第1のインキも第2のインキも付されない領域として現れる。また、偽造防止印刷版Pを作成するための偽造防止印刷画像Yを構成していた潜像2bも有彩色の第1のインキで作成されるが、印刷物上では、刷り合わせ版Qによって合成色としての無彩色(グレー)の潜像2cとなって印刷物上に潜むことになる(
図4中の<K>で指し示す画像を参照)。
【0041】
上述したように製造された第2実施形態に係る偽造防止印刷物は、目視上、無彩色となる合成レリーフ調模様5が印刷物上に形成され、コピー機で複写して複写物を得ると、その複写物上には、有彩色の第1のインキの色の潜像2(さらに具体的には、画像Yを構成していた潜像2b)が現れる(
図4中の<L>で指し示す画像を参照)。すなわち、印刷物上で無彩色により現されている図柄本体部51及び図柄背景部52、影部54と、インキの付されていない光当部53とからなる面から、有彩色の第1のインキの色の潜像2bが現れ、形の変化とともに色の変化を効果的に活用したコピー偽造対策を構築することができる。
【0042】
ここで、刷り合わせ版Qに作成される第2レリーフ調模様4は、レリーフ調模様1と同一形状であるから、図柄本体部及び図柄背景部を形成する複写再現能力に満たない小さい点を、175線/インチの網点で構成し、その面積率を15%としている。影部は、175線/インチの網点で構成し、その面積率を10〜50%とした。なお、図柄本体部及び図柄背景部は、複写再現能力に満たない小さい点であればよく、100〜300線/インチの網点で構成し、その面積率を5〜25%とすることが好ましい。影部は、100〜300線/インチの網点で構成し、その面積率を10〜50%とすることが好ましい。上述のような線数並びに面積率は、小さい点の集合体が目視において認識可能であるが、各種のコピー機において再現されない範囲として経験的かつ実験的に得たことに基づいて規定している。
【0043】
そして、偽造防止印刷版Pと刷り合わせ版Qとを、見当を合わせて刷り重ねる際には、モアレが出ないように異なる角度で刷り重ねることにより、印刷物上に再現されるレリーフ調模様の形状が更に鮮明に現れるようになるので好ましい。
【0044】
また、有彩色の第1のインキは、赤であることに限定されず、有彩色の第2のインキは、緑であることに限定されず、第1のインキと第2のインキを合成した合成色が無彩色になる組み合わせの各色を用いることができる。例示すれば、
有彩色のインキの組合せ=合成色
赤 + 緑 =グレー
青 + オレンジ =グレー
紫 + 黄 =グレー
を挙げることができる。
【0045】
したがって、第2実施形態に係る偽造防止印刷物では、印刷物上で無彩色により現されている合成レリーフ調模様5の図柄本体部51及び図柄背景部52、影部54と、インキの付されない光当部53とからなる面から、複写物において潜像2が第1のインキの有彩色で現れるため、色の変化を効果的に活用したコピー偽造対策を構築することができる。合成レリーフ調模様5から潜像2が現れることになるので形の変化もコピー偽造対策として活用することができる。そして、偽造防止印刷版Pと刷り合わせ版Qとを見当を合わせて刷り重ねる構成であるので、印刷物上に再現される合成レリーフ調模様5の形状を、より鮮明化することができる。偽造防止印刷版Pと刷り合わせ版Qとを見当を合わせて刷り重ねる際には、モアレが出ないように異なる角度で刷り重ねることにより、印刷物上に再現される合成レリーフ調模様5の形状の鮮明さを更に向上させることができる。
【0046】
以上、本発明について出願人が最良であると信じる2つの実施形態を詳述したが、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、上記実施形態に限定されることなく、種々の設計変更を行うことが可能である。例えば、本発明に係る偽造防止印刷物に、カモフラージュパターン等の従来のイラスト版や地紋版を重ね刷りすることが可能である。また、これらのイラスト版や地紋版を偽造防止印刷物の版となる偽造防止印刷版に組み込むことが可能であるし、刷り合わせ版にイラスト版や地紋版を組み込んでもよい。
【0047】
また、上述した2つの実施形態では、複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群として潜像が現れる構成の偽造防止印刷物について説明したが、複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群が背景となって潜像が白抜きで複写物上に現れる所謂白抜き潜像を採用した偽造防止印刷物の構成とすることもできる。潜像及び白抜き潜像は複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群であって、形状をなすものであり、その境界を有するものである。
【0048】
このほか、複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群の欠落した形状を復元する復元用網点は、複写物上に現れるものであっても、複写物上に現れなくても本発明の技術的範囲に含まれる。復元用網点は、偽造防止印刷物の外観において、複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群が不均一に削られ、斑模様に見えてしまう現象を防ぐための事項だからである。ただし、例えば、1本の万線を100%濃度としたとき、これに対し20%濃度以上で欠落した形状を補えば、複写物上においても、複写機で再現可能な大きい点の集合体又は線群の形状が復元されて現れるので、このような構成の偽造防止印刷物は好ましい形態といえるものである。