特許第5973905号(P5973905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973905
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   B25F5/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-284167(P2012-284167)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-124728(P2014-124728A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤田 幸人
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−025142(JP,U)
【文献】 実開昭58−193521(JP,U)
【文献】 実開昭62−092533(JP,U)
【文献】 特開昭55−083582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
B24B 23/00
B25B 21/00
H01H 13/00
H01H 15/00
H01H 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを内蔵する電動工具本体と、該本体内に設けられた内蔵スイッチと、該内蔵スイッチに連係されて該内蔵スイッチをオンオフ操作する中間部材と、該本体表面に設けられ、該中間部材に連係された操作用のスイッチレバーとを有する電動工具において、
該スイッチレバーの操作力に対応する該内蔵スイッチの操作力を変化させる操作力可変機構が該中間部材に設けられており、
該中間部材は、該スイッチレバーに連係され、該スイッチレバーと同方向にスライド移動するスイッチロッドと、一方が該スイッチロッドに連係され、他方が該内蔵スイッチに連係されて該本体に軸支されており、該スイッチロッドのスライド移動により回動するスイッチリンクとで構成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
該内蔵スイッチは該モータに隣接して設けられており、該内蔵スイッチの該モータとは反対側には該中間部材と連係する連係部が設けられており、該内蔵スイッチのモータ側には該モータと該内蔵スイッチを接続するリード線が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気グラインダ等の電動工具の操作スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気グラインダ等の電動工具は、作業の際に把持される電動工具本体の把持部付近に操作スイッチの操作部分が設けられているものがある。これは、作業しながらオン、オフ操作を容易に行えるようにするためである。具体的には操作部分であるスイッチレバーをスライド操作することにより、これに接続されたスイッチロッドをスライドさせ、内蔵スイッチをオンオフ操作する。例えば、下記特許文献1には、このような操作スイッチを有する電動工具の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−270066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、スイッチレバーの操作移動量とスイッチロッドの移動量が同一であるため、次のような問題があった。すなわち、内蔵スイッチをオンオフさせるのに強い力が必要とされる場合、スイッチレバーをスライドさせにくく、操作性が悪い。また、内蔵スイッチをオンオフさせるストローク量が長い場合、スイッチレバーを大きくスライドさせねばならず、操作性が悪い。よって改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたもので、その目的は、操作性のよい操作スイッチを有する電動工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、モータを内蔵する電動工具本体と、該本体内に設けられた内蔵スイッチと、該内蔵スイッチに連係されて該内蔵スイッチをオンオフ操作する中間部材と、該本体表面に設けられ、該中間部材に連係された操作用のスイッチレバーとを有する電動工具において、該スイッチレバーの操作力に対応する該内蔵スイッチの操作力を変化させる操作力可変機構が該中間部材に設けられており、該中間部材は、該スイッチレバーに連係され、該スイッチレバーと同方向にスライド移動するスイッチロッドと、一方が該スイッチロッドに連係され、他方が該内蔵スイッチに連係されて該本体に軸支されており、該スイッチロッドのスライド移動により回動するスイッチリンクとで構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、該内蔵スイッチは該モータに隣接して設けられており、該内蔵スイッチの該モータとは反対側には該中間部材と連係する連係部が設けられており、該内蔵スイッチのモータ側には該モータと該内蔵スイッチを接続するリード線が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電動工具においては、スイッチ操作の操作性が向上し、作業性のよい電動工具を得ることが可能となる。
【0011】
また、リンク機構という簡単な機構によりスイッチを構成することができ、軽量化と耐久性の向上を図ることができる。
【0012】
また、スライド移動と回動により、スイッチレバーの操作方向と連係部の移動方向が逆方向となり、スライド方向でのコンパクト化を図ることができる。
【0013】
また、リード線を短くすることができ、配線作業がしやすく、耐久性の向上を図った電動工具を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る電動工具のスイッチオフの状態を示す側面図である。
図2図1のB−B線断面図である。
図3】本実施形態に係る電動工具のスイッチオンの状態を示す側面図である。
図4図3のB−B線断面図である。
図5】スイッチロッドを示す平面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図1図5を用いて説明する。なお、以下の実施形態では、本発明を手持ち式電動グラインダに適用する場合を例示して説明する。また、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1、2は本実施形態に係る電動工具のスイッチオフの状態を示し、図3、4はスイッチオンの状態を示す。
【0017】
図1図4に示されるように、本実施形態に係る電動工具である手持ち式電動グラインダは、作業者が把持することができるように略円筒状に形成されたハウジング11と、研削作業を行うための回転工具である円盤状の砥石21とを備えている。
【0018】
ハウジング11は、駆動源となるモータ30を内部に収納するケーシングとしてのモータケース12と、モータ30からの回転駆動力を受けてこの回転駆動力を砥石21に伝達するための複数の歯車群等からなる駆動力伝達手段を収納するギアケース13と、モータ30に対して電力を供給するための電力コードやスイッチボックス等の給電機器が収納されたカバー部材としてのテールカバー14とを主要な構成部材として形成されている。本実施形態においては、ハウジング11が本発明の電動工具本体に該当する。なお、本実施形態においては、砥石21側を前方、テールカバー14側を後方とする。
【0019】
モータケース12は、樹脂又はアルミニウム合金などの金属製の部材によって構成される。モータケース12の外郭形状は、操作者が把持し易いように略円筒状に形成されており、拡径してギアケース13へ接続するが、その拡径する付け根部分が作業者の把持しやすい部分である。
【0020】
モータケース12の前方側にインナーケース16を介在させて連結されるギアケース13は、例えばアルミニウム合金などの金属製の部材により構成されている。そして、このギアケース13の下部には、研削作業を行うこととなる回転工具としての砥石21が配置されており、砥石21の背面側(後側)には、操作者に対して切粉などが飛散しないようにするために、安全カバー22が設置されている。
【0021】
テールカバー14は樹脂によって構成されており、複数のスリットが設けられ、後述する内蔵スイッチ60やスイッチロッド52の後端部などが収納されている。
【0022】
手持ち式電動グラインダの内部構造を描いた図2、4にて示されるように、モータケース12の内部には砥石21を駆動するための駆動源となるモータ30が収納されている。モータ30のモータ軸32は、その前端部がモータケース12内からギアケース13内へと突出し、インナーケース16とギアケース13に装着された前部ベアリング17に支持されている。一方、モータ軸32の後端部は、モータケース12の後部において後部ベアリング18に支持されている。したがって、モータ軸32は、前後部のベアリング17,18により両端部を支持されることで、高速回転できるように構成されている。
【0023】
ギアケース13内には、モータ軸32の前端部に固定される小傘歯車23や図示しない大傘歯車、駆動軸等が収納されており、直交配置されたモータ軸32と駆動軸との間での回転駆動力の伝達が実現されている。したがって、モータ30が回転すると、この回転駆動力がモータ軸32から小傘歯車23等へと伝達され、最終的に駆動軸を介して砥石21が回転することになるので、被加工対象物に対する研削加工が実行可能となる。
【0024】
また、テールカバー14には、内蔵スイッチ60が収納されており、この内蔵スイッチ60のモータ30とは反対側には連係部61が設けられている。また、内蔵スイッチ60のモータ30側には端子63及びリード線62が接続されている。リード線62は整流子31とモータケース12の直径方向で対向して設けられる、図示しないカーボンブラシと接続されている。連係部61は、後述するスイッチリンク53により、内臓スイッチ60内に対して図2中前後方向に摺動、すなわちスライド移動可能であり、前方にスライド移動することで通電してモータ30が駆動し、後方にスライド移動することで通電停止して駆動が停止する。連係部61は図示しないコイルバネにより常時後方に突出するように付勢されている。
【0025】
このような配置とすることにより、内蔵スイッチ60とモータ30とを接続するリード線62を短くすることができ、コンパクト化や組立作業の容易化を図ることができる。
【0026】
テールカバー14には、連係部61に連係してスイッチリンク53が軸Oを中心に回動可能に設けられている。スイッチリンク53の一端は当接部53aとして形成され、連係部61に当接してこれを前方にスライド移動させる。スイッチリンク53の他端にはU字溝53bが形成されている。
【0027】
スイッチリンク53にはスイッチロッド52が連係している。図5にスイッチロッド52の詳細を示しており、(a)は平面図で(b)が側面図である。スイッチロッド52は略直線状の細長い平板形状をしており、前後方向にスライド移動するよう構成されている。スイッチロッド52の一端にはピン52aが設けられており、このピン52aがスイッチリンク53のU字溝53bに係合している。また、スイッチロッド52の他端には開口52bが設けられている。なお、本発明における中間部材とは本実施例においてはスイッチロッド52とスイッチリンク53のことである。
【0028】
スイッチロッド52にはスイッチレバー51が連係している。スイッチレバー51はハウジング11のモータケース12表面に前後方向にスライド移動可能に設けられている。スイッチレバー51には係合片51aが設けられており、係合片51aは前述のスイッチロッド52の開口52bに係合し、かつ、モータケース12の溝12a内をスライド移動するよう構成されている。また、スイッチレバー51にはロック片51bも設けられており、スイッチレバー51のスイッチオン状態でモータケース12のロック溝12bに係合し、スイッチオンの状態が継続する、所謂ロックオン状態が可能に構成されている。また、スイッチレバー51の表面にはセレーション51cも形成されており、スイッチのオンオフ操作がしやすいようになっている。
【0029】
よってスイッチレバー51がスライド移動することにより、スイッチロッド52がスライド移動し、スイッチリンク53が回動し、内蔵スイッチ60の連係部61がスライド移動するというリンク機構が構成されている。
【0030】
次に本発明のスイッチ操作と作用について説明する。まず、図1、2に示すスイッチオフの状態から、操作者はスイッチレバー51を後方にスライド移動させる。すると図4に示すように、スイッチロッド52も同様に後方へスライド移動する。するとピン52aとU字溝53bで係合しているスイッチリンク53が軸Oを中心に時計方向に回動する。そして当接部53aが連係部61に当接して連係部61を図示しないコイルバネの付勢力に抗して前方へスライド移動させる。こうすることにより、スイッチオンの状態となる。
【0031】
この状態からスイッチオフの状態にするには、セレーション51c付近を押してロック片51bとロック溝12bとの係合を解除し、スイッチレバー51を前方にスライドさせることにより、スイッチロッド52も同様に前方にスライド移動させ、スイッチリンク53を軸Oを中心に反時計方向に回動させ、図示しないコイルバネの付勢力により連係部61を図2のように後方へ突出させるのである。
【0032】
ここで図4に示すように、当接部53aから軸Oまでの距離L1に対し、軸Oからピン52aとU字溝53bとの係合部分までの距離L2が長く形成されている。よってスイッチオンへの操作において、てこの原理により、連係部61を前方へスライド移動させる力に対してスイッチレバー51を後方へスライド移動させる力を軽くすることができ、操作性がよい。内蔵スイッチ60の図示しないコイルバネの付勢力は比較的強いものが多いので、スイッチオン操作の操作性がよくなるのである。本実施例においては、この距離L1と距離L2が異なることにより、本発明における操作力可変機構を構成している。
【0033】
また、スイッチレバー51及びスイッチロッド52のスライド移動を、スイッチリンク53の回動に変換していることにより、スイッチレバー51及びスイッチロッド52のスライド移動方向と連係部61のスライド移動方向を反対方向にしている。よって、スイッチレバーの操作方向と連係部の移動方向が逆方向となり、長手方向(軸方向)でのコンパクト化を図った電動工具を得ることができる。さらにスライド移動と回動という簡単な機構によりスイッチを構成しており、軽量化と耐久性の向上を図っている。
【0034】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の技術的範囲に限定されない。前述の距離L1は距離L2よりも短く構成されていたが、これを逆転させて距離L1を距離L2よりも長くしてもよい。このように構成すると、例えば、連係部61のスライド移動距離が長く、図示しないコイルバネの付勢力が軽い場合に、操作者がスイッチレバー51を大きく移動させなくてもスイッチのオンオフ作業ができるので、操作性の向上を図ることができる。この場合は、移動量可変機構であるといえる。
【0035】
また、上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、スイッチロッド52はスイッチレバー51と同様にスライド移動し、スイッチリンク53が回動する構成であったが、スイッチロッド52をスイッチレバー51のスライド移動に連係して回動させ、この回動に連係してスイッチリンク53がスライド移動する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る電動工具は、操作スイッチを有する電動工具において極めて有用である。
【符号の説明】
【0037】
11 ハウジング、12 モータケース、12a 溝、12b ロック溝、13 ギアケース、14 テールカバー、30 モータ、32 モータ軸、51 スイッチレバー、51a 係合片、51b ロック片、51c セレーション、52 スイッチロッド、52a ピン、52b 開口、53 スイッチリンク、53a 当接部、53b U字溝、60 内蔵スイッチ、61 連係部、62 リード線、63 端子、O 軸
図1
図2
図3
図4
図5