特許第5973906号(P5973906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5973906装飾層を備える管状体および管状体に装飾層を形成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973906
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】装飾層を備える管状体および管状体に装飾層を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/00 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   A01K87/00 630N
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-285613(P2012-285613)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-124177(P2014-124177A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕司
(72)【発明者】
【氏名】西川 太
(72)【発明者】
【氏名】山田 直祐
(72)【発明者】
【氏名】及川 勝広
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 英二
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−206415(JP,A)
【文献】 特開2007−106049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の素材本体と、該素材本体の表面の所定の部位に周方向にわたってインクジェットにより形成される装飾層とを備え、
前記装飾層は、周方向に分けて形成される複数の分割着色層を有し、前記各分割着色層は、隣接する分割着色層とその境界部で重なり合う重合部を有し、
前記各分割着色層は、それぞれが前記素材本体の略軸方向に沿って延びる複数の軸方向延在層から成り、各軸方向延在層同士が素材本体の周方向で部分的に重なり合うことを特徴とする管状体。
【請求項2】
前記装飾層が素材本体の全周にわたって形成されることを特徴とする請求項1に記載の管状体。
【請求項3】
前記各分割着色層は、その両側の各重合部の周方向角度範囲の半分をそれぞれ除く部位が、前記素材本体の周方向に(360/n)°の角度範囲にわたって延在し、nが3以上の整数であることを特徴とする請求項2に記載の管状体。
【請求項4】
前記各重合部が前記素材本体の周方向に(360/n)°×sの角度範囲にわたって延在し、0.01≦s≦0.2であることを特徴とする請求項3に記載の管状体。
【請求項5】
前記装飾層が格子模様を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の管状体。
【請求項6】
前記重合部がぼかし模様を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の管状体。
【請求項7】
前記素材本体が釣竿の竿杆であることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の管状体。
【請求項8】
管状体の外表面の所定部位に周方向に沿ってインクジェットにより装飾層を形成する方法であって、前記装飾層は、周方向に分けて形成される複数の分割着色層を有する方法において、
管状の素材本体を回転可能に支持するステップと、
インクを噴射する複数のノズルを備えるプリンタヘッドを前記素材本体の略軸方向に沿って移動させることにより、前記素材本体の周方向の所定の角度範囲にわたって前記素材本体の外表面上にインクを噴き付けて第1の分割着色層を形成するステップと、
前記素材本体を前記所定の角度範囲よりも小さい角度にわたって回転させるステップと、
前記プリンタヘッドを再び前記素材本体の略軸方向に沿って移動させることにより、前記素材本体の周方向の前記所定の角度範囲にわたって前記素材本体の外表面上にインクを噴き付けて、前記第1の分割着色層とその周方向端部が重なり合う第2の分割着色層を形成するステップと、
を含み、
前記各分割着色層は、それぞれが前記素材本体の略軸方向に沿って延びる複数の軸方向延在層から成り、前記各軸方向延在層は、軸方向延在層同士が素材本体の周方向で部分的に重なり合うように、前記素材本体の略軸方向に沿って移動されるプリンタヘッドを所定の幅ずつ周方向にずらすことにより形成されることを特徴とする方法。
【請求項9】
管状体の外表面の所定部位に全周にわたってインクジェットにより装飾層を形成する方法であって、前記装飾層は、周方向に分けて形成される複数の分割着色層を有する方法において、
管状の素材本体を回転可能に支持する第1のステップと、
インクを噴射するプリンタヘッドを前記素材本体の略軸方向に沿って移動させることにより、前記素材本体の周方向の(360/n)°+α°(nは3以上の整数;α=(360/n)°×s;0.01≦s≦0.2)の角度範囲にわたって前記素材本体の外表面上にインクを噴き付けて第1の分割着色層を形成する第2のステップと、
前記素材本体を(360/n)°の角度にわたって回転させる第3のステップと、
前記プリンタヘッドを再び前記素材本体の略軸方向に沿って移動させることにより、前記素材本体の周方向の(360/n)°+α°の角度範囲にわたって前記素材本体の外表面上にインクを噴き付けて、前記第1の分割着色層とその周方向でα°の角度範囲にわたって重なり合う第2の分割着色層を形成する第4のステップと、
前記第3および第4のステップを更に(n−2)回繰り返して全部でn個の分割着色層を形成する第5のステップと、
を含み、
前記各分割着色層は、それぞれが前記素材本体の略軸方向に沿って延びる複数の軸方向延在層から成り、前記各軸方向延在層は、軸方向延在層同士が素材本体の周方向で部分的に重なり合うように、前記素材本体の略軸方向に沿って移動されるプリンタヘッドを所定の幅ずつ周方向にずらすことにより形成されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾層を表面に備える管状体、および、管状体に装飾層を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市場に出回る各種製品には様々な装飾が施される。そのような装飾は、例えばインクジェットにより装飾層を製品の表面に印刷することによりなされる場合がある。例えば、市場に出回る製品の1つである釣竿の中には、ユーザの様々な好みに対応できるように、あるいは、購買意欲を喚起するために、インクジェット印刷により装飾層がその表面に施されるものがある(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。また、釣竿以外の他の管状製品に対してインクジェットにより装飾を施す技術も多数提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−206415号公報
【特許文献2】特開平9−23789号公報
【特許文献3】特開2010−143200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述したインクジェット印刷は、プリンタの印刷方式の1つであり、液状のインク粒子を飛ばして用紙に点を描き、その集まりで文字や図形を印字するものであるが、このようなインクジェットにより管状体に対して装飾層を印刷する場合には、管状体特有の様々な問題が生じる。
【0005】
例えば、前述したように管状体の一例である釣竿の竿杆の表面上にインクジェットにより装飾層を印刷する場合には、管状体の湾曲する表面に対してプリンタヘッドの水平面状のインクノズル噴射面からインクを噴射するため、竿杆をその周方向(竿杆の軸方向に対して垂直な方向)で横切るプリンタヘッドの幅方向の両側にいけばいくほど、インクノズルと竿杆の表面との間の距離が大きくなり、そのため、インクを受ける竿杆の湾曲状の塗装領域(装飾領域)の周方向端部(インクノズルから最も離れた竿杆の表面部位)では、インクが飛んであちこちへ散り、したがって、インクが広がって全体のインク濃度が薄くなる(装飾層の厚さが薄くなる)傾向がある。
【0006】
また、このような現象は、特に竿杆の周方向で数段階に分けてインクジェット印刷する場合に、各段階で印刷される装飾層同士の周方向の境界(各段階の装飾層のインク濃度が薄い部位が隣接する領域)にインク濃度が薄い筋(竿杆の周方向の一部に生じるインクの濃度ムラによる継ぎ目)をもたらし、装飾外観を損ねる。また、このような周方向の筋(継ぎ目)は、特に釣竿のように長い管状体が曲げ力を頻繁に受ける製品にあっては、装飾層の剥離や破損を誘発させる。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、インクジェットにより形成される装飾層の外観が良好で、外力によって装飾層が破損し難い管状体を提供するとともに、そのような装飾層を管状体に形成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明の管状体は、管状の素材本体と、該素材本体の表面の所定の部位に周方向にわたってインクジェットにより形成される装飾層とを備え、前記装飾層は、周方向に分けて形成される複数の分割着色層を有し、前記各分割着色層は、隣接する分割着色層とその境界部で重なり合う重合部を有し、前記各分割着色層は、それぞれが前記素材本体の略軸方向に沿って延びる複数の軸方向延在層から成り、各軸方向延在層同士が素材本体の周方向で部分的に重なり合うことを特徴とする
【0009】
上記した構成の管状体によれば、周方向に分けて形成される複数の各分割着色層が、隣接する分割着色層とその境界部で重なり合う重合部を有するため、管状体のインクジェット印刷に特有の各分割着色層の周方向端部におけるインク濃度が薄い領域同士が互いに重なり合い、その重なり領域部位のインク濃度を装飾層の他の部位におけるインク濃度とほぼ一致させることが可能になる。そのため、装飾層の全体の外観を良好にすることができる。また、これにより、分割着色層同士の境界にインク濃度が薄い筋(管状体の周方向の一部に生じるインクの濃度ムラによる継ぎ目)も形成されないため、外力によって装飾層が破損することもない。これは、特に曲げ力を頻繁に受ける釣竿などの製品において有益である。特に、上記構成において、各分割着色層は、それぞれが素材本体の略軸方向に沿って延びる複数の軸方向延在層から成り、各軸方向延在層同士が素材本体の周方向で部分的に重なり合うため、仮に周方向の一部に(分割着色層同士の境界に)インクの濃度ムラによる継ぎ目が残っている場合でも、(着色層が軸方向に延びているため)外力により破損し難い。
【0011】
また、上記した目的を達成するために、本発明は、管状体の外表面の所定部位に周方向に沿ってインクジェットにより装飾層を形成する方法であって、前記装飾層は、周方向に分けて形成される複数の分割着色層を有する方法において、管状の素材本体を回転可能に支持するステップと、インクを噴射する複数のノズルを備えるプリンタヘッドを前記素材本体の略軸方向に沿って移動させることにより、前記素材本体の周方向の所定の角度範囲にわたって前記素材本体の外表面上にインクを噴き付けて第1の分割着色層を形成するステップと、前記素材本体を前記所定の角度範囲よりも小さい角度にわたって回転させるステップと、前記プリンタヘッドを再び前記素材本体の略軸方向に沿って移動させることにより、前記素材本体の周方向の前記所定の角度範囲にわたって前記素材本体の外表面上にインクを噴き付けて、前記第1の分割着色層とその周方向端部が重なり合う第2の分割着色層を形成するステップとを含み、前記各分割着色層は、それぞれが前記素材本体の略軸方向に沿って延びる複数の軸方向延在層から成り、前記各軸方向延在層は、軸方向延在層同士が素材本体の周方向で部分的に重なり合うように、前記素材本体の略軸方向に沿って移動されるプリンタヘッドを所定の幅ずつ周方向にずらすことにより形成されることを特徴とする方法も提供する。
【0012】
また、本発明は、更に、管状体の外表面の所定部位に全周にわたってインクジェットにより装飾層を形成する方法であって、前記装飾層は、周方向に分けて形成される複数の分割着色層を有する方法において、管状の素材本体を回転可能に支持する第1のステップと、インクを噴射するプリンタヘッドを前記素材本体の略軸方向に沿って移動させることにより、前記素材本体の周方向の(360/n)°+α°(nは3以上の整数;α=(360/n)°×s;0.01≦s≦0.2)の角度範囲にわたって前記素材本体の外表面上にインクを噴き付けて第1の分割着色層を形成する第2のステップと、前記素材本体を(360/n)°の角度にわたって回転させる第3のステップと、前記プリンタヘッドを再び前記素材本体の略軸方向に沿って移動させることにより、前記素材本体の周方向の(360/n)°+α°の角度範囲にわたって前記素材本体の外表面上にインクを噴き付けて、前記第1の分割着色層とその周方向でα°の角度範囲にわたって重なり合う第2の分割着色層を形成する第4のステップと、前記第3および第4のステップを更に(n−2)回繰り返して全部でn個の分割着色層を形成する第5のステップとを含み、前記各分割着色層は、それぞれが前記素材本体の略軸方向に沿って延びる複数の軸方向延在層から成り、前記各軸方向延在層は、軸方向延在層同士が素材本体の周方向で部分的に重なり合うように、前記素材本体の略軸方向に沿って移動されるプリンタヘッドを所定の幅ずつ周方向にずらすことにより形成されることを特徴とする方法も提供する。
【0013】
これらの方法においても、周方向に分けて形成される複数の各分割着色層が、隣接する分割着色層とその境界部で重なり合う重合部を有することとなるため、管状体のインクジェット印刷に特有の各分割着色層の周方向端部におけるインク濃度が薄い領域同士が互いに重なり合い、その重なり領域部位のインク濃度を装飾層の他の部位におけるインク濃度とほぼ一致させることが可能になる。そのため、装飾層の全体の外観を良好にすることができる。また、これにより、分割着色層同士の境界にインク濃度が薄い筋(管状体の周方向の一部に生じるインクの濃度ムラによる継ぎ目)も形成されないため、外力によって装飾層が破損することもない。特に、上記構成において、前記各分割着色層は、それぞれが前記素材本体の略軸方向に沿って延びる複数の軸方向延在層から成り、前記各軸方向延在層は、軸方向延在層同士が素材本体の周方向で部分的に重なり合うように、前記素材本体の略軸方向に沿って移動されるプリンタヘッドを所定の幅ずつ周方向にずらすことにより形成されるため、仮に周方向の一部に(分割着色層同士の境界に)インクの濃度ムラによる継ぎ目が残っている場合でも、(着色層が軸方向に延びているため)外力により破損し難い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の管状体および方法によれば、周方向に分けて形成される複数の各分割着色層が、隣接する分割着色層とその境界部で重なり合う重合部を有するため、インクジェットにより形成される装飾層の外観が良好となり、また、外力によって装飾層が破損することもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の管状体の一例としての釣竿の側面図である。
図2図1の釣竿の竿杆の表面に施される装飾層の例を示す部分斜視図である。
図3】装飾層を備える図2の竿杆の部分断面図である。
図4図3の部分拡大断面図である。
図5】装飾層の分割着色層を周方向で段階的に分けて形成する方法を説明するための説明図である。
図6】分割着色層の重合部付近の部分拡大断面図である。
図7図1の釣竿の表面に装飾層を形成するためのインクジェットプリンタの概略構成図である。
図8】格子模様を形成する装飾層の一例を示す部分平面図である。
図9】互いに隣接する分割着色層の周方向端部付近を分離して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る装飾層を備える管状体、および、管状体に装飾層を形成する方法の一実施形態について説明する。
【0018】
図1には、本発明の管状体の一例として釣竿1が示されている。図示のように、この釣竿1は、複数の管状体としての竿杆、具体的には、グリップ3aを有する元竿3と、第1中竿5と、第2中竿7と、釣糸締結具9aを有する穂先竿9とによって構成される。この場合、各竿杆3,5,7は、振出し式または並継ぎ式に構成されており、各竿杆3,5,7を構成する竿本体(素材本体20;図3参照)は、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを巻回することで形成され(スチール等の金属によって形成されてもよい)、各竿杆3,5,7には装飾部Aが形成されている。
【0019】
装飾部Aは、後述するようにインクジェットにより形成され、竿杆3,5,7の周方向の少なくとも一部(本実施形態では全周)にわたって線状に延びる線模様A1、竿杆3,5,7の周方向の少なくとも一部(本実施形態では全周)にわたって延在する格子模様A2、および、ぼかし模様A3を含む。ここで、ぼかし模様A3とは、例えばインクの濃度が他の部位よりも薄い領域から成るぼかし部A3’(例えば軸方向に線状に延び且つ周方向に所定の幅を有する)を周方向に間隔を隔てて有する模様のことであり、ぼかし部A3’は、例えば周方向または軸方向に沿って段階的に濃度が変化してもよい。あるいは、ぼかし部A3’は、インクの色の配合が徐々に変化するものであってもよい。
【0020】
また、装飾部A(A1,A2,A3)は、図3に示されるように、各竿杆3,5,7を構成する素材本体20上に形成される装飾層50から成る。具体的に、装飾層50は、素材本体20上に形成される第1の下地層(例えば、厚さが5〜20μm)30と、第1の下地層30上に形成される第2の下地層31(例えば、厚さが5〜20μm)と、第2の下地層31上に形成される着色層32(例えば、厚さが10〜60μm)と、着色層32上に形成される透明な保護層33(例えば、厚さが15〜25μm)とを積層することによって構成される。
【0021】
第1の下地層30は、素材本体20の外表面を平滑化するために設けられるものであり、例えば、エポキシ、ウレタン、アクリル、アクリルシリコン、シリコン等の合成樹脂から成り、吹き付け塗装、シゴキ塗装、刷毛塗り塗装等の各種の塗装方法によって形成される。また、第1の下地層30は、顔料等を混入して着色したものであっても良い。
【0022】
また、第2の下地層31は、下地の隠ぺい、着色層32の明度、色調などの調整を目的としており、光反射層、白色層から成る。光反射層は、光輝性のある材料、例えば、所定の合成樹脂(アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニール系樹脂等)に、光輝性を有する複数の粒子(以下、光輝性粒子と称する)を、所望の密度で且つ均一に混入したものを、塗装することで形成することが可能である。
【0023】
前記所定の合成樹脂に混入される光輝性粒子は、例えば、Al,Cu,Ag,Mg,In,Cr,Si,Ni,Ti,Au,Rh,Pt等、光輝性があり各種の色彩を有する金属材料を用いることが可能である。この場合、各粒子の大きさは、2μm以下、好ましくは、0.3μm〜1μmに設定するのが良く、且つ、その厚さは、1μm以下、好ましくは、0.03μm〜0.5μmに設定するのが良い。すなわち、この範囲以外に粒子本体の大きさ及び厚さを設定すると、光輝性粒子を合成樹脂中に所望の密度で、かつ均一に配置できなくなると共に、光輝性粒子の境界が目立つようになったり、光の反射方向が一定しなくなって均一な光輝性外観を発揮できなくなってしまうからである。
【0024】
このような光輝性粒子の形成方法は、例えば、テフロン(登録商標)やシリコン樹脂等から成るフィルム状の支持基板上に、上記金属材料を蒸着又はスパッタリングして金属層を形成した後、この金属層を支持基板から剥離して粉砕することによって形成することが可能である。このようにして形成された複数の光輝性粒子は、その光輝性を充分に発揮すると共に、所望の色彩を生じる程度の密度で、かつ均一に配置されることが好ましい。具体的には、合成樹脂中に混入される光輝性粒子の密度は、単位面積当たりの光輝性粒子の個数が、5万〜2000万個/mmとなるように設定することが好ましい。このようにして形成される光反射層によれば、均一で所望の色に着色された光輝性外観を呈示することが可能となる。
【0025】
また、前述した構成以外にも、光反射層は、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、コバルト、ニッケル、鉄、亜鉛等の金属片、或いは顔料等の粒子を単体として、或いはこれらを任意に組み合わせ、これを微量の合成樹脂に混入すると共に、多量の溶剤で希釈し、これをガン吹き塗装等により吹き付け、その後、溶剤を除去(揮発)することによって形成することも可能である。なお、金属片や顔料等の粒子のサイズ、組み合わせ等を変えることにより、様々な外観を形成することが可能である。
【0026】
あるいは、前述した構成以外にも、光反射層は、Cr,Ni,Ti,Al,Ag,Be等の金属、TiN,TiCN,CrN,Fe−Cr−Ni等の合金類、TiO,SiC等のセラミックスを主要材料として形成することが可能であり、これによっても外観を向上することが可能である。このような金属やセラミックスを用いた光反射層は、イオンプレーティング、スパッタリング、蒸着等の物理的蒸着、化学的蒸着、真空蒸着等のドライプレーティングや、湿式メッキ等を用いて形成することが可能である。なお、白色層は、所定の合成樹脂の塗装により形成されてもよいが、インクジェットにより形成されてもよい。この場合、下地を隠蔽し、着色層の明度調整をし易くするのがよい。
【0027】
第2の下地層31上に形成される着色層32は、例えば光透過性を有しており、後述するようにインクジェットにより形成される。着色層32を構成する材料は、例えば、顔料や染料等の着色材を、エポキシやウレタン等の透明、又は半透明の合成樹脂に混入した主材に、硬化剤を含有させることで形成することも可能であるが、本実施形態では、硬化用光線である紫外線の照射により硬化される紫外線硬化形のインクが使用される。光硬化形インクには、アクリル系、エポキシカチオン系のものなどが使用されるが、特に紫外線硬化形のインクには、多官能モノマー及びアクリレートオリゴマーに増感剤を配合したものが用いられる。このようなインクでは、増感剤がラジカルを形成し、オリゴマー、モノマーの連鎖反応を起こすことが利用される。また、インクは、熱硬化型、溶剤(水、有機材)乾燥型、二液反応型等のものが使用されてもよい。
【0028】
なお、着色層32上に形成される保護層33は、エポキシ、ウレタン、アクリル、アクリルシリコン等の透明または半透明の合成樹脂によって形成される。
【0029】
ところで、装飾層50を構成する着色層32は、素材本体20の周方向X(図4,5,9の矢印参照)に分けて形成される複数の分割着色層から成る。例えば装飾層50が竿杆3,5,7の全周にわたって形成される本実施形態では、着色層32は、素材本体20の周方向Xに4回に分けて形成される4つの分割着色層32A,32B,32C,32D(図5参照)から成る。この場合、各分割着色層32A,32B,32C,32Dは、隣接する分割着色層とその境界部で重なり合う重合部40(図4,5,9参照)を有する。
【0030】
また、各分割着色層は、その両側の各重合部の周方向の1/2の範囲を除き、素材本体20の周方向Xに(360/n)°の角度範囲にわたって延在する(nは3以上の整数)。すなわち、各分割着色層は全て同じ角度範囲にわたって周方向に延在する。無論、各分割着色層の周方向の延在角度範囲が異なっていても構わない。具体的に、着色層32が4つの分割着色層32A,32B,32C,32Dから成る(n=4の場合)本実施形態において、各分割着色層32A,32B,32C,32Dは、図5に明確に示されるように、その両側の各重合部40の周方向の1/2の範囲(α/2の角度範囲)を除き、素材本体20の周方向Xにθ=(360/4)°=90の角度範囲にわたって延在する。この場合、各分割着色層32A,32B,32C,32Dの両側に存在する各重合部40の素材本体20の周方向に沿う延在角度範囲αは、好ましくは(360/n)°×0.05(n=4の本実施形態では、α=4.5°)に設定される。
【0031】
なお、各重合部40の素材本体20の周方向に沿う延在角度範囲αは、必ずしも(360/n)°×0.05である必要はなく、一般的には、α=(360/n)°×s(0.01≦s≦0.2)である。この場合、nが大きければ大きいほど、sは小さくて済む。すなわち、着色層の分割数が多ければ多いほど(分割着色層の数が多ければ多いほど)、重合部40の延在角度範囲αは小さくて済む。
【0032】
また、本実施形態において、各分割着色層32A,32B,32C,32Dは、図4に明確に示されるように、それぞれが素材本体20の略軸方向に沿って延びる複数(例えば8つ)の軸方向延在層60,61,62,63,64,・・・から成り、各軸方向延在層60,61,62,63,64,・・・同士が素材本体20の周方向Xで部分的に重なり合うことにより形成されている(各軸方向延在層同士の周方向の重なり部分が図4にZで示されている)。なお、各軸方向延在層60,61,62,63,64,・・・は、本実施形態では素材本体20の長手方向中心軸線に沿って軸方向に真っ直ぐに延びているが、素材本体20の長手方向中心軸線に対して所定の角度を成して斜めに延びていても構わない(あるいは、斜めと軸方向との組み合わせ(例えば波型)でもよい)。本明細書中において、「略軸方向」とは、そのような意味に解釈されるべきである。
【0033】
図7には、着色層32(装飾層50)を形成するためのインクジェットプリンタ80が概略的に示されている。図示のように、インクジェットプリンタ80は、竿杆3,5,7(素材本体20)を回転可能に支持するための支持装置81を備える。支持装置81は、図示しない制御部に対して電気的および機械的に結合されており、この制御部により回転駆動が制御される。本実施形態では、前記制御部により、支持装置81に支持される竿杆3,5,7を任意の一定の速度で回転できるようになっている。
【0034】
また、インクジェットプリンタ80は、走査方向V(本実施形態では、支持装置81に支持される竿杆3,5,7の軸方向)に沿って往復移動可能なプリンタヘッド83を備えており、プリンタヘッド83には、素材本体20の外表面に対してインクを噴射する多数のインクノズル(図示せず)が、水平面状のノズル噴射面内に所定の配列を成して設けられている。なお、図示しないが、インクジェットプリンタ80には、素材本体20の表面上に噴き付けられたインクを紫外線硬化させるための紫外線照射装置も設けられる。
【0035】
具体的に、プリンタヘッド83は、支持装置81により支持される素材本体20の上方においてガイドレール84により保持されており、ガイドレール84に沿って走査方向Vで往復移動可能となっている。また、ガイドレール84は、プリンタハウジング90に設けられた例えばガイド溝92に沿って走査方向Vに対して垂直な方向W(素材本体20の周方向を横切る方向)に移動できるようになっている。
【0036】
なお、プリンタヘッド83、ガイドレール84、および、前記紫外線照射装置の駆動に加えて、インクノズルからのインクの噴射、すなわち、噴射量や噴射タイミング等は、支持装置81の駆動を制御する前記制御部により行なわれる。このようなインクジェットプリンタ80によれば、プリンタヘッド83のインクノズルから噴射されたインクが素材本体20の外表面上に付着すると同時に前記紫外線照射装置から紫外線が照射され、素材本体20の外表面上に付着したインクが即座に硬化される。
【0037】
続いて、このようなインクジェットプリンタ80を用いて着色層32を形成する方法について特に図5を参照して説明する。なお、ここでは、着色層32が形成されるが、着色層32を含む任意の装飾層が以下の方法で形成されても構わない。
【0038】
まず、支持装置81に竿杆3,5,7(素材本体20)を支持させた状態で、ガイドレール84をW方向に移動させるとともにプリンタヘッド83をV方向に移動させて、着色層32が施されるべき素材本体20の外表面部位の上方にプリンタヘッド83を位置させる。そして、その状態で、プリンタヘッド83を走査方向V(素材本体20の軸方向)に沿って(着色層32が形成されるべき軸方向長さに対応する距離だけ)移動させることにより、素材本体20の周方向の所定の角度範囲Sにわたって素材本体20の外表面上にインクを噴き付けて、第1の分割着色層32A(装飾層)を形成する(図5参照)。
【0039】
なお、着色層32が4つの分割着色層32A,32B,32C,32Dから成る(n=4の場合)全周装飾の本実施形態では、プリンタヘッド83を走査方向Vに沿って移動させることにより、素材本体20の周方向の(360/4=θ=90)°+α°(例えば、α=(360/4)°×0.05)の角度範囲(R1の着色範囲)にわたって素材本体20の外表面上にインクを噴き付けて、第1の分割着色層32Aを形成する。
【0040】
ここで、第1の分割着色層32Aは、プリンタヘッド83の1回の走査方向Vに沿う移動だけで一度に形成されてもよいが、図4に示されるように各分割着色層32A,32B,32C,32Dが複数の軸方向延在層60,61,62,63,64,・・・から成る本実施形態の場合には、ガイドレール84のW方向の移動を介して所定の幅ずつ例えば8つの軸方向延在層が軸方向に形成されてもよい。これについては、以後の分割着色層の形成においても同様である。具体的には、各軸方向延在層60,61,62,63,64,・・・は、軸方向延在層60,61,62,63,64,・・・同士が素材本体20の周方向Xで部分的に重なり合うように(図4のZ参照)、素材本体20の略軸方向に沿って移動されるプリンタヘッド83を所定の幅ずつ周方向X(図7ではW方向)にずらすことにより形成される(例えば、「所定の幅」は、インクノズル噴射面のインク噴射幅を調整して形成され、所定の幅より少ないヘッドの周方向の移動により軸方向延在層同士の重なりが形成される)。
【0041】
次に、支持装置81を駆動させて素材本体20を前記所定の角度範囲Sよりも小さい角度にわたって回転させる。着色層32が4つの分割着色層32A,32B,32C,32Dから成る(n=4の場合)全周装飾の本実施形態では、支持装置81により素材本体20を(360/4)=90°の角度にわたって回転させる。これにより、第1の分割着色層32Aが形成されるべき素材本体20の外表面部位がプリンタヘッド83のインク噴射面と対向する。
【0042】
その後、再び、プリンタヘッド83を走査方向V(素材本体20の軸方向)に沿って(着色層32が形成されるべき軸方向長さに対応する距離だけ)移動させることにより、素材本体20の周方向の前記所定の角度範囲Sにわたって素材本体20の外表面上にインクを噴き付けて、第2の分割着色層32B(装飾層)を形成する。着色層32が4つの分割着色層32A,32B,32C,32Dから成る(n=4の場合)全周装飾の本実施形態では、プリンタヘッド83を走査方向Vに沿って移動させることにより、素材本体20の周方向の(360/4=θ=90)°+α°(例えば、α=(360/4)°×0.05)の角度範囲(R2の着色範囲)にわたって素材本体20の外表面上にインクを噴き付けて、第1の分割着色層32Aとその周方向でα°の角度範囲にわたって重なり合う第2の分割着色層32Bを形成する。このとき、着色層32(装飾部A)が図8に示されるような格子模様A2を形成する場合には、図9に示されるように、第1の着色分割層32Aの周方向端部32Aaと第2の分割着色層32Bの周方向端部32Baとが周方向にαの角度範囲にわたって重なり合う重合部40が形成される。
【0043】
その後、以上の作業を繰り返して、例えば、着色層32が4つの分割着色層32A,32B,32C,32Dから成る(n=4の場合)全周装飾の本実施形態では以上の作業を更に2回繰り返して、第3および第4の分割着色層32C,32Dを素材本体20の周方向の(360/4=θ=90)°+α°(例えば、α=(360/4)°×0.05)の角度範囲(R3,R4の着色範囲)にわたって形成することにより、4つの重合部40を有する4つの分割着色層32A,32B,32C,32Dから成る着色層32全体が形成される。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、周方向に分けて形成される複数の各分割着色層32A,32B,32C,32Dが、隣接する分割着色層とその境界部で重なり合う重合部40を有するため、管状体のインクジェット印刷に特有の各分割着色層32A,32B,32C,32Dの周方向端部におけるインク濃度が薄い領域同士が互いに重なり合い、その重なり領域部位(重合部40)のインク濃度を着色層32(装飾層)の他の部位におけるインク濃度とほぼ一致させることが可能になる。そのため、装飾層50の全体の外観を良好にすることができる。また、これにより、分割着色層同士の境界に(周方向に)インク濃度が薄い筋(管状体の周方向の一部に生じるインクの濃度ムラによる継ぎ目)も形成されないため、外力によって装飾層50が破損することもない。特に、本実施形態では、各分割着色層は、それぞれが素材本体の略軸方向に沿って延びる複数の軸方向延在層から成り、各軸方向延在層同士が素材本体の周方向で部分的に重なり合うことにより形成されている。したがって、仮に周方向の一部に(分割着色層同士の境界に)インクの濃度ムラによる継ぎ目が残っている場合でも、着色層が軸方向に延びているため、外力により破損し難い。
【0045】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、前述した実施形態では、重合部40の厚さが分割着色層の他の部位の厚さとほぼ同じであるが、図6に示されるように分割着色層の周方向端部の積層構造によって重合部40の厚さが分割着色層の他の部位の厚さより大きくなってもよい。この場合、保護層33を図6に破線で示すように重合部40(着色層32)の外面に沿うように形成してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 釣竿
3,5,7 竿杆
20 素材本体
32 着色層
32A,32B,32C,32D 分割着色層
40 重合部
50 装飾層
83 プリンタヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9