特許第5973916号(P5973916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973916
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】機械式ラッシュアジャスタ
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/22 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   F01L1/22
【請求項の数】3
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-536119(P2012-536119)
(86)(22)【出願日】2012年3月16日
(86)【国際出願番号】JP2012056841
(87)【国際公開番号】WO2013136508
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2015年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227157
【氏名又は名称】日鍛バルブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(72)【発明者】
【氏名】久保田 行雄
(72)【発明者】
【氏名】亀田 美千広
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−154852(JP,A)
【文献】 特表昭61−502553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/20−1/255
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブスプリングにより閉弁方向に付勢されたバルブの軸端部と、動弁機構構成部材であるカムとの間に介装されて、バルブクリアランスを調整する機械式ラッシュアジャスタにおいて、
前記ラッシュアジャスタは、カムの押圧力が軸荷重として作用するプランジャと、前記プランジャとねじ係合部を介し軸方向に係合し、前記ねじ係合部の周方向に回転しないように保持されたプランジャ係合部材と、前記バルブスプリングの付勢力作用方向と逆方向に前記プランジャを付勢するプランジャスプリングとを備え、
前記プランジャに伸長・縮小いずれの方向の軸荷重が作用した場合にも、前記プランジャが前記ねじ係合部滑り回転して軸荷重作用方向に移動できるとともに、
前記プランジャの軸荷重伝達部材との摺接面および前記プランジャスプリングとの摺接面に発生する摩擦トルクの総和が、前記プランジャを前記ねじ係合部で滑り回転させる推力トルクを上回った場合に、前記プランジャの前記ねじ係合部での滑り回転が抑制されて該ねじ係合部が相対的に不動となるように、前記ねじ係合部を構成する「ねじ」のねじ山のリード角とフランク角が設定されたことを特徴とする機械式ラッシュアジャスタ。
【請求項2】
前記ねじ係合部を構成する「ねじ」のねじ山の角度は、リード角が10〜40度、フランク角が5〜45度の範囲に設定されたことを特徴とする請求項1に記載の機械式ラッシュアジャスタ。
【請求項3】
前記ねじ係合部を構成する「ねじ」は、多条ねじで構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の機械式ラッシュアジャスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の動弁機構におけるバルブクリアランス(カムとバルブステム間の距離であり、例えば、ロッカアーム型動弁機構では、バルブステムとロッカアームとの隙間、直動型動弁機構では、バルブステムとプランジャとの隙間)を自動調整するために用いられる機械式ラッシュアジャスタに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のエンジンに用いられる吸気バルブや排気バルブをシリンダヘッドの吸気口や排気口に装着するに際して、例えば、バルブステムに連結されたロッカアームが機械式ラッシュアジャスタを支点として揺動するように構成し、バルブクリアランスを機械式ラッシュアジャスタの駆動(伸縮動作)によって自動調整することが広く知られている(例えば、特許文献1,2,非特許文献1参照)。
【0003】
この種の機械式ラッシュアジャスタは、内側に雌ねじを形成した筒形状のハウジング内に、外側に雄ねじを形成したピボット部材下方領域が収容され、ハウジング内に収容したプランジャスプリング(圧縮コイルスプリング)によりピボット部材が上方のロッカアーム側に付勢された構造で、雌ねじと雄ねじで構成する「のこ歯ねじ」の「ねじ山」の角度(リード角およびフランク角)を、軸荷重に対してピボット部材伸長方向にはねじ係合部が滑り回転し、ピボット部材縮小方向には「ねじ」が自立する(ねじ係合部に発生する摩擦によりねじ係合部の滑り回転が抑制される)所定の角度に設定することで、バルブクリアランスを自動調整できる。以下、ねじ係合部に発生する摩擦によりねじ係合部の滑り回転が抑制されることを、「ねじが自立する」という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公表昭61−502553(図1〜5)
【特許文献2】実開平3−1203号公報(図1〜3)
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】NTN TECHNICAL REVIEW No.75(2007)論文「エンドピボット型メカニカルラッシュアジャスタの開発」(第78〜85頁、図1〜4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の機械式ラッシュアジャスタは、バルブクリアランスが増加した場合に、バルブクリアランスを減少させる方向(ピボット部材が伸長する方向)の動作は可能であるが、バルブクリアランスが減少した場合に、バルブクリアランスを増加させる方向(ピボット部材が縮小する方向)の動作については、ねじのガタ分の調整代はあっても、バルブクリアランスを積極的に増加させる(バルブクリアランスを零に調整する)アジャスト構造を有していない。
【0007】
詳しくは、図9は、従来の機械式ラッシュアジャスタを構成するピボット部材の雄ねじ(のこ歯ねじ)の形状を拡大して示す図であるが、ピボット部材の雄ねじの「ねじ山」のリード角α’は、ピボット部材縮小方向(図9下方向)・伸長方向(図9上方向)いずれの方向に作用する軸荷重に対しても、ねじ係合部が滑り回転可能な所定角度に設定されている。
【0008】
また、上側フランク角θ2も、ねじ山のリード角α’との組み合わせで、ピボット部材伸長方向の軸荷重に対し、ねじ係合部が滑り回転可能な所定角度(例えば、15度)に設定されている。一方、下側フランク角θ1は、ねじ山のリード角α’との組み合わせで、ピボット部材縮小方向の軸荷重に対し、ねじ係合部に発生する摩擦トルクによって「ねじが自立する」所定角度(例えば、75度)に設定されている。
【0009】
このため、バルブクリアランスが増加した場合は、ピボット部材は、プランジャスプリングのばね力によりねじ係合部において滑り回転して伸長方向(バルブクリアランスを減少させる方向)に移動できるが、バルブクリアランスが減少した場合は、ねじ係合部に発生する大きな摩擦トルクのために、ピボット部材は、ねじ係合部において滑り回転できず縮小方向(バルブクリアランスを増加させる方向)に移動できない。
【0010】
例えば、機関(エンジン)が暖まった状態で停止した後、急激に冷えるような場合、シリンダヘッド(アルミニウム合金)とバルブ(鉄合金)の熱膨張係数の違いに起因して、ラッシュアジャスタによるアジャスト状態がバルブクリアランス過小(マイナス)状態となって、バルブのフェース面がバルブシートから浮くおそれがある。また、バルブシート面が磨耗した場合にも、同様のこと(バルブクリアランスが過小状態となって、バルブのフェース面のバルブシートからの浮き上がり)が起こる。
【0011】
このような事態に対し、従来のラッシュアジャスタでは、ピボット部材が縮小する方向(バルブクリアランスを増加させる方向)に動作できないため、バルブクリアランス過小(マイナス)状態が放置されて、冷間時に機関(エンジン)が再始動する際、バルブリフト量が過大となったり、バルブのフェース面とバルブシート間のシール性(燃焼室のシール性)が不良になったりすることが危惧される。
【0012】
また、この種の機械式ラッシュアジャスタについては、長年にわたって数多くの提案がされているものの、製品としては未だに実施されていないことからも、前記した課題は依然として解決されていないと考えられる。
【0013】
そこで、発明者は、雄ねじと雌ねじで構成されたねじ係合部に発生する摩擦トルクによって「ねじが自立する」という、従来の「のこ歯ねじ」に代えて、ねじ係合部における滑り回転を阻止するために、ピボット部材のねじ係合部以外の部位、たとえば、ピボット部材のロッカアーム等の軸荷重伝達部材との摺接面に発生する摩擦トルクを利用できないかと考えた。
【0014】
即ち、伸長・縮小いずれの方向の軸荷重がピボット部材に作用しても、「ねじが自立する」ことなくねじ係合部が滑り回転するが、ピボット部材の主に軸荷重伝達部材(例えば、ロッカアーム)との摺接面に発生する摩擦トルクによって、ねじ係合部の滑り回転が抑制される(以下、これを、「ねじ係合部が相対的に不動となる」という)ように、ねじ係合部を構成する「ねじ」の「ねじ山」の角度(リード角およびフランク角)を設定してやれば、ねじ係合部が相対的に不動となる状態(ピボット部材が軸方向に静止した状態)では、ラッシュアジャスタ(のピボット部材)は、カム軸の回転に連係してロッカアームが揺動(バルブが開閉動作)する支点として機能(作用)するとともに、ねじ係合部が相対的に不動となる状態以外では、ピボット部材が伸長する方向(バルブクリアランスを減少させる方向)に動作することは勿論、従来の構造では動作しなかった、ピボット部材が縮小する方向(バルブクリアランスを増加させる方向)にも動作する、と考えた。
【0015】
詳しくは、ロッカアーム式動弁機構におけるラッシュアジャスタのピボット部材には、軸荷重(カムの押圧力=バルブスプリングの反力とプランジャスプリングの反力の合力)が作用する。そして、この軸荷重によって、ねじ係合部には、ピボット部材を滑り回転させる推力トルクと、この滑り回転を抑制する第1の摩擦トルクが発生する。同時に、ピボット部材のロッカアームとの摺接面にも、ねじ係合部の滑り回転を抑制する第2の摩擦トルクが発生する。そして、前記推力トルクが前記第1,第2の摩擦トルクの総和より大きい場合に、ねじ係合部が滑り回転し、逆に前記推力トルクが第1,第2の摩擦トルクの総和より小さい場合に、ねじ係合部の滑り回転が阻止される。
【0016】
そして、ピボット部材に伸長・縮小いずれの方向の軸荷重が作用した場合にもねじ係合部滑り回転できるように、ねじ係合部を構成する「ねじ」のねじ山のリード角およびフランク角を設定してやれば、第1の摩擦トルクを無視できるので、前記推力トルクと第2の摩擦トルクの大小関係だけで、ねじ係合部がで滑り回転できる状態と、滑り回転が阻止される状態(ねじ係合部が相対的に不動状態)になる。即ち、推力トルク≦第2の摩擦トルクでねじ係合部が相対的に不動となるリード角およびフランク角を設定すればよい、と考えた。
【0017】
そして、発明者は、機械式ラッシュアジャスタを試作してその効果を検証したところ、有効であることが確認されたことを受けて、今回の特許出願にいたったものである。
【0018】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、バルブクリアランスを自動的に調整できる、従来とは全く異なる構造の機械式ラッシュアジャスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するために、本発明に係る機械式ラッシュアジャスタにおいては、バルブスプリングにより閉弁方向に付勢されたバルブの軸端部と、動弁機構構成部材であるカムとの間に介装されて、バルブクリアランスを調整する機械式ラッシュアジャスタにおいて、
前記ラッシュアジャスタは、カムの押圧力が軸荷重として作用するプランジャと、前記プランジャとねじ係合部を介し軸方向に係合し、前記ねじ係合部の周方向に回転しないように保持されたプランジャ係合部材と、前記バルブスプリングの付勢力作用方向と逆方向に前記プランジャを付勢するプランジャスプリングとを備え、
前記プランジャに伸長・縮小いずれの方向の軸荷重が作用した場合にも、前記プランジャが前記ねじ係合部滑り回転して軸荷重作用方向に移動できるとともに、前記プランジャ軸荷重伝達部材との摺接面および前記プランジャスプリングとの摺接面に発生する摩擦トルクの総和が、前記プランジャを前記ねじ係合部で滑り回転させる推力トルクを上回った場合に、前記プランジャの前記ねじ係合部の滑り回転が抑制されて該ねじ係合部が相対的に不動となるように、前記ねじ係合部を構成する「ねじ」のねじ山のリード角とフランク角を設定するように構成した。
【0020】
なお、機械式ラッシュアジャスタには、バルブの軸端部とカムとの間に間接的に介装されるロッカアーム式動弁機構仕様と、バルブの軸端部とカムとの間に直接的に介装される直動式動弁機構仕様とがある。
【0021】
即ち、前者(ロッカアーム式動弁機構仕様のラッシュアジャスタ)は、カムの押圧力とバルブスプリングの付勢力がロッカアームを介してラッシュアジャスタ(のプランジャ)に作用するように、バルブの軸端部とカムとの間にロッカアームを介して間接的に介装された構造であるのに対し、後者(直動式動弁機構仕様のラッシュアジャスタ)は、カムの押圧力とバルブスプリングの付勢力がラッシュアジャスタ(のプランジャとプランジャ係合部材)に直接作用するように、バルブの軸端部とカムとの間に直接的に介装された構造である。
【0022】
また、動弁機構に対する仕様とは別に、ねじ係合部を構成する雄ねじ(雌ねじ)を、プランジャとプランジャ係合部材のいずれに形成するかによって、以下の第1の構造と第2の構造が考えられる。
【0023】
即ち、実施例1,2,4に示すように、内側に雌ねじが形成され、周方向に回転しないように保持されたプランジャ係合部材である筒型のハウジングと、前記雌ねじと係合する雄ねじが外側に形成され、前記ハウジングと軸方向にねじ係合するプランジャと、前記ハウジング内に装填されて、前記プランジャをバルブスプリングの付勢力作用方向と逆方向に付勢するプランジャスプリングとを備えた第1の構造(図1,6,8参照)が考えられる。
【0024】
また、実施例3に示すように、外側に雄ねじが形成され、周方向に回転しないように保持されたプランジャ係合部材であるロッド部材と、前記雄ねじと係合する雌ねじが内側に形成され、前記ロッド部材と軸方向にねじ係合するプランジャと、前記ロッド部材と前記プランジャとの間に介装されて、前記プランジャをバルブスプリングの付勢力作用方向と逆方向に付勢するプランジャスプリングとを備えた第2の構造(図7参照)が考えられる。
【0025】
(作用)動弁機構を構成するラッシュアジャスタのプランジャには、軸荷重(カムの押圧力=バルブスプリングの反力とプランジャスプリングの反力の合力)が作用する。そして、この軸荷重によって、雄ねじと雌ねじで構成されたねじ係合部には、プランジャをねじ係合部滑り回転させようとする推力トルクと、この滑り回転を抑制しようとする第1の摩擦トルクが発生し、同時に、プランジャの主に軸荷重伝達部材(例えば、ロッカアーム式動弁機構ではロッカアーム、直動式動弁機構ではバルブ軸端部側)との摺接面にも、ねじ係合部の滑り回転を抑制しようとする第2の摩擦トルクが発生する。
【0026】
そして、エンジンの運転中(バルブ開閉動作中)に、プランジャがねじ係合部滑り回転(プランジャが軸荷重作用方向に移動)するか否かは、前記第1,第2の摩擦トルクの総和と前記推力トルクとの大小関係によって決まる。
【0027】
しかし、プランジャに伸長・縮小いずれの方向の軸荷重が作用した場合にも、プランジャがねじ係合部滑り回転し軸荷重作用方向に移動できることから、バルブ開閉動作中のプランジャとプランジャ係合部材(実施例では、ハウジング22,122;ロッド部材114)間のねじ係合部に発生する摩擦トルク(第1の摩擦トルク)を無視できる。
【0028】
このため、バルブ開閉動作中に、プランジャがねじ係合部滑り回転可能(プランジャが軸荷重作用方向に移動可能)か否(ねじ係合部が相対的に不動となる)かは、プランジャに作用する軸荷重によってねじ係合部に発生する推力トルクTFと、プランジャに作用する軸荷重によってプランジャの主に軸荷重伝達部材との摺接面に発生する第2の摩擦トルク(以下、ブレーキトルクという)TBとの大小関係によって決まる。
【0029】
詳しくは、カムの回動により、バルブのリフト量は、0(閉弁状態)から徐々に増加し、最大値(開弁状態)を経て徐々に減少して0(閉弁状態)となるが、プランジャに作用する軸荷重が徐々に増加する開弁過程(プランジャスプリングの付勢力のみが軸荷重として作用する閉弁状態から最大の軸荷重が作用するリフト量最大の状態まで)、およびプランジャに作用する軸荷重が徐々に減少する閉弁過程(最大の軸荷重が作用するリフト量最大の状態からプランジャスプリングの付勢力のみが軸荷重として作用する閉弁状態まで)のそれぞれにおいて、プランジャに作用する軸荷重によってねじ係合部に発生する推力トルクTFと、同軸荷重によってプランジャの主に軸荷重伝達部材との摺接面に発生する摩擦トルク(ブレーキトルク)TBが、推力トルクTF≦ブレーキトルクTBでは、ねじ係合部が相対的に不動の状態(プランジャが軸方向に静止する状態)となる。この「ねじ係合部が相対的に不動の状態」では、ラッシュアジャスタ(のプランジャ)は、カム軸の回転に連係して例えばロッカアームが揺動(バルブが開閉)する支点として機能(作用)する。一方、ブレーキトルクTB<推力トルクTFでは、プランジャがねじ係合部滑り回転し、軸荷重作用方向に移動できる状態となる。
【0030】
したがって、バルブクリアランスが増加した場合は、バルブ開閉動作の際(例えば、バルブリフト終了直前等のプランジャスプリングの付勢力のみがプランジャに軸荷重として作用する際)に、プランジャがバルブクリアランスを減少させる方向(プランジャが伸長する方向)に移動して、バルブクリアランス増加状態が解消される。
【0031】
一方、バルブクリアランスが減少した場合は、バルブ開閉動作の際(例えば、カムの押圧力が最大値近くの軸荷重としてプランジャに作用する際)に、プランジャがバルブクリアランスを増加させる方向(プランジャが縮小する方向)に移動して、バルブクリアランス減少状態が解消される。
【0032】
例えば、機関(エンジン)が暖まった状態で停止した後、急激に冷えるような場合、シリンダヘッド(アルミニウム合金)とバルブ(鉄合金)の熱膨張係数の違いに起因して、ラッシュアジャスタによるアジャスト状態がバルブクリアランス過小なマイナス)状態となって、機関(エンジン)再始動時にバルブのフェース面がバルブシートから浮くおそれがある。また、バルブシート面が磨耗した場合にも、同様のこと(バルブクリアランスが過小状態となって、機関再始動時にバルブのフェース面のバルブシートからの浮き上がり)が起こる。
【0033】
このような事態に対し、本発明に係るラッシュアジャスタでは、機関再始動時のバルブ開弁動作の際(例えば、カムの押圧力が最大値近くの軸荷重としてプランジャに作用する際)に、プランジャがバルブクリアランスを増加させる方向(プランジャが縮小する方向)に移動して、バルブクリアランス過小(マイナス)状態が解消されるので、冷間時に機関を再始動する際、バルブリフト量が過大となったり、バルブのフェース面とバルブシート間のシール性(燃焼室のシール性)が不良になったりする不具合がない。
【0034】
請求項2においては、請求項1に記載の機械式ラッシュアジャスタにおいて、前記ねじ係合部を構成する「ねじ」のねじ山の角度を、リード角が10〜40度、フランク角が5〜45度の範囲に設定するようにした。
【0035】
なお、ねじ係合部を構成する「ねじ」、即ち、雄ねじ(雌ねじ)としては、台形ねじと三角ねじのいずれであってもよい。また、上側フランクと下側フランクの角度が等しい「等フランクねじ」、あるいは上側フランクと下側フランクの角度が異なる「不等フランクねじ」であってもよい。
【0036】
(作用)ねじ係合部を構成する「ねじ」のねじ山のリード角が10度未満では、摩擦角の影響により、プランジャのねじ係合部のスムーズな滑り回転が困難となり、一方、40度を超えると、プランジャの軸荷重伝達部材との摺接面に発生する摩擦トルクによって、ねじ係合部の滑り回転を抑制しねじ係合部を相対的に不動にすることが困難となる。
【0037】
このため、ねじ係合部を構成する「ねじ」のねじ山のリード角は、プランジャに伸長・縮小いずれの方向の軸荷重が作用した場合にも、ねじ係合部スムーズに滑り回転できるとともに、プランジャの軸荷重伝達部材との摺接面に発生する摩擦トルクによってねじ係合部の滑り回転を抑制(ねじ係合部を相対的に不動に)することができる、10度〜40度の範囲が望ましい。具体的には、プランジャに作用する所定の軸荷重に対しプランジャの主に軸荷重伝達部材との摺接面に発生する摩擦トルクが比較的大きい(小さい)ときは、小さい(大きい)リード角を設定するというように、プランジャの主に軸荷重伝達部材との摺接面に発生する摩擦トルクに対応した大きさのリード角を設定する。
【0038】
また、フランク角が5度未満では、角ねじの範疇となって摩擦角が小さいので、フランク角を変化させる意義が無くなり、リード誤差等の影響を受けない高精度の加工が難しい。一方、フランク角が45度を超えると、「ねじ」の加工はし易いが、摩擦角が非常に大きいため、リード角を変えても「ねじ」は極めて自立し易くなるので、フランク角を調整パラメータとして利用する意義が無くなる。
【0039】
即ち、プランジャの主に軸荷重伝達部材との摺接面に発生する摩擦トルクの大きさに対応して、まずリード角を設定する。次に、フランク角を設定するのであるが、フランク角が大き(小さ)ければ、ねじ係合部滑り易い(難い)ことから、ねじ係合部滑り回転するタイミングや滑動性を微調整するために、適切なフランク角を設定する。
【0040】
請求項3においては、請求項1または2に記載の機械式ラッシュアジャスタにおいて、前記ねじ係合部を構成する「ねじ」を多条ねじで構成するようにした。
【0041】
(作用)らせん状に延びる「ねじ」のリードを軸方向等間隔に複数並設した多条ねじは、「ねじ」のリードが一条である一条ねじと比べて、例えば、「ねじ」のリードのピッチを大きくできる。特に、本発明のように、ねじ係合部を構成する「ねじ」のリード角として、「プランジャに伸長・縮小いずれの方向の軸荷重が作用した場合にも、ねじ係合部滑り回転する」という条件に対応した大きいリード角を採用する場合は、多条ねじとすることで、「ねじ」の径に対応したピッチを設定でき、ねじ山の形状や角度としてJIS等の標準的な設計値を使用できる。
【0042】
したがって、「ねじ」のねじ山の角度(リード角およびフランク角)を設計する際に、「ねじ」の条数を考慮することで、「ねじ」の望ましい角度(リード角およびフランク角)の設定範囲を拡大できる。
【0043】
また、プランジャに作用する軸荷重に対して、ねじ係合部に発生する面圧が下がり、それだけ「ねじ」が摩耗しにくい。
【発明の効果】
【0044】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る機械式ラッシュアジャスタによれば、バルブクリアランスが増加・減少いずれの側に変化しても、バルブ開閉動作中にプランジャがねじ係合部滑り回転し、プランジャがバルブクリアランスの変化を打ち消す方向に移動するので、バルブクリアランスを自動的にかつ確実に調整できる。
【0045】
請求項2によれば、ねじ係合部を構成する「ねじ」のねじ山のリード角およびフランク角がプランジャの軸荷重伝達部材との摺接面に発生する摩擦トルクに対応した角度に設定されて、バルブクリアランスが変化した場合には、プランジャがその変化を打ち消す方向にスムーズに移動するので、バルブクリアランスを自動的にかつ確実にしかもスピーディに調整できる。
【0046】
請求項3によれば、「ねじ」の条数を考慮することで、ねじ山の望ましい角度(リード角およびフランク角)の設定範囲が拡大されて、推力トルク特性およびブレーキトルク特性の異なる機械式ラッシュアジャスタを提供できる。
【0047】
また、プランジャに作用する軸荷重が大きい場合も、「ねじ」が摩耗しにくいので、プランジャに作用する軸荷重が大きい動弁機構に使用可能な機械式ラッシュアジャスタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明をロッカアーム式動弁機構仕様の機械式ラッシュアジャスタに適用した第1の実施例を示し、ロッカアーム式動弁機構全体の断面図である。
図2】第1の実施例に係る機械式ラッシュアジャスタの要部を示し、(a)は、プランジャに形成した雄ねじのねじ山のリード角とフランク角を示す図、(b)は、ハウジングに形成した雌ねじのねじ山のリード角とフランク角を示す図である。
図3】(a)は、ねじ係合部に発生する推力トルク(プランジャに作用する推力トルク)を示す図、(b)は、ねじ係合部の滑り回転を抑制するブレーキトルク(プランジャに作用するブレーキトルク)を示す図、(c)は、軸荷重に対する推力トルクおよびブレーキトルクの変化の様子を示す図である。
図4】エンジンの回転数が低い場合のバルブリフト量,軸荷重およびプランジャの動きを示す図である。
図5】エンジンの回転数が高い場合のバルブリフト量,軸荷重およびプランジャの動きを示す図である。
図6】本発明の第2の実施例である直動式動弁機構仕様の機械式ラッシュアジャスタの縦断面図である。
図7】本発明の第3の実施例である直動式動弁機構仕様の機械式ラッシュアジャスタの縦断面図である。
図8】本発明の第4の実施例であるロッカアーム式動弁機構仕様の機械式ラッシュアジャスタの縦断面図である。
図9】従来の機械式ラッシュアジャスタの要部であるピボット部材の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明をロッカアーム式動弁機構仕様の機械式ラッシュアジャスタに適用した第1の実施例を図1〜5に基づいて説明する。
【0050】
ロッカアーム式動弁機構を示す図1において、符号10は、シリンダヘッド11に設けられた吸気(排気)ポートPを横切るように配設された吸気バルブ(排気バルブ)で、バルブ10の軸端部外周には、コッタ12aおよびスプリングリテーナ12bが装着されている。そして、ばね座面11aとスプリングリテーナ12bとの間にバルブスプリング14が介装されて、バルブ10は閉弁方向(図1上方向)に付勢されている。符号11bは、円筒状のバルブ摺動ガイド、符号10aは、バルブ10の傘部外周に形成されたフェース面、符号11cは、吸気(排気)ポートPの燃焼室Sへの開口周縁部に形成されたバルブシートである。
【0051】
符号16はロッカアームで、その一端側がバルブ10の軸端部に当接するとともに、その他端側に形成されたソケット部18が機械式ラッシュアジャスタ20のプランジャ24先端のピボット部24aに係合している。
【0052】
ロッカアーム16の長手方向中程には、ローラ軸17aに支承されたローラ17bが設けられ、該ローラ17bには、カムシャフト19に設けたカム19aが当接している。
【0053】
機械式ラッシュアジャスタ20は、シリンダヘッド11に設けた上下方向に延びるボア13に挿入された、内側に雌ねじ23が形成されたプランジャ係合部材である筒型のハウジング22と、外側に雄ねじ25が形成され、該雄ねじ25が雌ねじ23と係合するようにハウジング22内に配設されたプランジャ24と、ハウジング22内に装填されて、プランジャ24をハウジング22から伸長する方向(図1上方向)に付勢するプランジャスプリング26とを備えている。符号27aは、ハウジング22内下端部側に収容された円盤形状のばね座面プレート、符号27bは、ばね座面プレート27aをハウジング22に固定するCリングである。
【0054】
即ち、カム19aの押圧力が軸荷重として作用するプランジャ24と、周方向に回転しないように保持されたプランジャ係合部材であるハウジング22が、ねじ係合部(プランジャ24側の雄ねじ25とハウジング22側の雌ねじ23)を介して軸方向に係合している。
【0055】
なお、ハウジング22は、その下端部がボア13の底面に当接するようにボア13に挿入されているものの、ボア13に圧入されていない(積極的なハウジング回り止め手段は設けられていない)。しかし、ロッカアーム16を介してプランジャ24を押し下げる方向の軸荷重がプランジャ24に作用する際に、ハウジング22下端部とボア13の底面間に発生する摩擦トルクが、ハウジング22のボア13に対する回転を阻止する。即ち、ハウジング22は、ボア13の底面との間で発生する摩擦トルクによって、ボア13に対し回転しないように保持されている。
【0056】
また、カム19aのベースサークルがロッカアーム16(のローラ17b)に当接する形態(カムノーズがロッカアーム16のローラ17bに当接しない形態)では、プランジャ24には、プランジャスプリング26の付勢力だけが作用するように構成されている。
【0057】
そして、図2(a),(b)に拡大して示すように、プランジャ24とハウジング22間のねじ係合部を構成するプランジャ24側の雄ねじ25(ハウジング22側の雌ねじ23)は、それぞれ台形ねじで構成され、雄ねじ23(雌ねじ23)のねじ山のリード角αは、例えば30度に、プランジャ24側の雄ねじ25(ハウジング22側の雌ねじ23)のねじ山の上側フランク角θ25a(θ23a)および下側フランク角θ25b(θ23b)は、それぞれ例えば30度に設定されて、プランジャ24に伸長・縮小いずれの方向の軸荷重が作用した場合にも、プランジャ24は、ねじ係合部において滑り回転しながら軸荷重作用方向に移動できるとともに、プランジャ24のロッカアーム16との摺接面(ピボット部24aのソケット部18との摺接面)F2(図1参照)およびプランジャ24のプランジャスプリング26との摺接面F3(図1参照)にそれぞれ発生する摩擦トルクの総和によって、ねじ係合部の滑り回転が抑制されて、ねじ係合部が相対的に不動となる(プランジャ24が静止する)ように構成されている。
【0058】
即ち、ラッシュアジャスタ20は、プランジャ24に伸長・縮小いずれの方向の軸荷重が作用した場合にも、プランジャ24がねじ係合部で滑り回転して荷重作用方向に移動できるとともに、プランジャ24の摺接面F2およびプランジャ24の摺接面F3に発生する摩擦トルクの総和(ねじ係合部のすべり回転を抑制するブレーキトルク)が、プランジャ24に作用する軸荷重によってねじ係合部に発生する、該プランジャ24を滑り回転させる推力トルクを上回った場合に、プランジャ24のねじ係合部の滑り回転が抑制されて(ねじ係合部が不動状態となって)、プランジャ24先端のピボット部24aが、カムシャフト19の回転に連係して揺動するロッカアーム16の揺動支点として機能(作用)するように、ねじ係合部を構成する雄ねじ25(雌ねじ23)のねじ山のリード角が例えば30度に、フランク角が例えば30度にそれぞれ設定されている。
【0059】
詳しくは、ラッシュアジャスタ20のプランジャ24には、軸荷重W(カム19aの押圧力=バルブスプリング14の反力とプランジャスプリング26の反力の合力)が作用し、この軸荷重Wによって、プランジャ24の雄ねじ25とハウジング22の雌ねじ23間のねじ係合部には、プランジャ24を滑り回転させようとする推力トルクTFと、この滑り回転を抑制しようとする第1の摩擦トルクが発生し、同時に、プランジャ24のロッカアーム16との摺接面(ピボット部24aのソケット18との摺接面)F2およびプランジャ24のプランジャスプリング26との摺接面F3にも、プランジャ24のねじ係合部の滑り回転を抑制しようとする第2,第3の摩擦トルクが発生する。
【0060】
そして、エンジンの運転中(バルブ開閉動作中)に、プランジャ24がねじ係合部滑り回転(プランジャ24が軸荷重作用方向に移動)するか否かは、前記第1,第2,第3の摩擦トルクの総和と推力トルクTFとの大小関係によって決まる。
【0061】
しかし、プランジャ24に伸長・縮小いずれの方向の軸荷重が作用した場合にも、プランジャ24は、ねじ係合部で滑り回転して軸荷重作用方向に移動できることから、バルブ開閉動作中のプランジャ24とハウジング22間のねじ係合部に発生する第1の摩擦トルクは無視できる。即ち、プランジャ24の軸力(軸荷重)の分力によるねじの駆動トルクを考えると、「推力トルク=駆動トルク−摩擦トルク」となって、摩擦トルクが顕在化しないため、第1の摩擦トルクは無視できる。
【0062】
このため、バルブ開閉動作中に、プランジャ24がねじ係合部滑り回転可能(プランジャ24が軸荷重作用方向に移動可能)か否(ねじ係合部が相対的に不動となる)かは、ねじ係合部において発生する(プランジャ24をねじ係合部滑り回転させようとする)推力トルクTFと、プランジャ24のロッカアーム16との摺接面(ピボット24aのソケット18との摺接面)F2およびプランジャ24のプランジャスプリング26との摺接面F3にそれぞれ発生する第2,第3の摩擦トルクの総和(ブレーキトルク)TBとの大小関係によって決まる。
【0063】
そして、プランジャ24をねじ係合部滑り回転させようとする推力トルクTFは、バルブスプリング14の反力(付勢力)およびプランジャスプリング26の反力(付勢力)によってそれぞれ発生する推力トルクTFbs,TFpsの総和であって、図3(a)に示すように、軸荷重Wに比例する。
【0064】
また、プランジャ24のねじ係合部の滑り回転を抑制するブレーキトルクTBは、プランジャ24(のピボット部24a)のロッカアーム16との摺接面F2およびプランジャ24のプランジャスプリング26との摺接面F3にそれぞれ発生する第2,第3の摩擦トルクの総和(TB=TB2+TB3)であって、図3(b)に示すように、軸荷重Wに比例する。
【0065】
なお、第3の摩擦トルクTB3は、プランジャスプリング26の反力(付勢力)によって発生する摩擦トルクであるが、ばね定数が小さいプランジャスプリング26の反力(付勢力)は、バルブスプリング14の反力(付勢力)に比べて小さいため、第2の摩擦トルクTB2のように軸荷重Wに比例することなく、軸荷重Wが増加してもほぼ一定である(図3(b)参照)。
【0066】
そして、バルブ10の開閉動作中のプランジャ24に作用する推力トルクTFおよびブレーキトルクTBは、プランジャ24に作用する軸荷重Wを横軸、プランジャ24に作用するトルクを縦軸として、図3(c)における直線TF,TB(+),TB(−)で示すことができる。
【0067】
即ち、バルブ10の開弁動作中のプランジャ24に作用する推力トルクTFは、軸荷重Wの増加に伴って、負(最小値)から正(最大値)まで右肩上がりに増加する直線で示すことができ、一方、バルブ10の閉弁動作中のプランジャ24に作用する推力トルクTFは、正(最大値)から負(最小値)まで左肩下がりに減少する直線で示すことができる。
【0068】
また、推力トルクTFは、ねじのリード角およびフランク角と相関関係があり、例えば、リード角が増えたり(リード角が立ったり)、フランク角が減る(三角ねじ→台形ねじ→角ねじ)と、推力トルクTFの特性(直線)の傾きが急になり、逆にリード角が減少したり(リード角が寝たり)、フランク角が増える(角ねじ→台形ねじ→三角ねじ)と、推力トルクTFの特性(直線)の傾きが緩くなる。
【0069】
一方、ブレーキトルクTBは、推力トルクTFが負(プランジャ伸長方向、図1の上向き)の場合は、右肩下がりの直線TB(−)で示され、推力トルクTFが正(プランジャ縮小方向、図1の下向き)の場合は、右肩上がりの直線TB(+)で示される。
【0070】
プランジャ24に作用する軸荷重Wに対する推力トルクTFおよびブレーキトルクTBの変化の様子を示す図3(c)において、カム19aが1回転(バルブ10が開閉動作)すると、プランジャ24に作用する軸荷重は、カムの押圧力が作用せずプランジャスプリング26の付勢力のみ作用する状態→カムの押圧力が作用しWmax(カムの押圧力最大値)が作用する状態→再びカムの押圧力が作用せずプランジャスプリング26の付勢力のみ作用する状態へと移行するが、バルブ10が開弁方向および閉弁方向のいずれの方向に動作する場合も、ラッシュアジャスタ20がバルブクリアランスをゼロに調整することがわかる。
【0071】
即ち、まず、推力トルクTFが負(図1の上向き)の領域(カムの押圧力が作用せずプランジャスプリングの付勢力だけが作用する領域から、カム19aがロッカアームを押し始めてある程度バルブがリフトするまでの領域)において、推力トルクTFがブレーキトルクTB(−)に一致するP2までは、ブレーキトルクTB(−)の絶対値<推力トルクTFの絶対値であるため、プランジャ24はねじ係合部滑り回転し、軸荷重(プランジャスプリング26の反力)作用方向である伸長方向(図1上方向)に移動できる(図3(c)の(1)の状態)。
【0072】
次に、推力トルクTFがブレーキトルクTB(−)と一致(P2点)した後、正(図1の下向き)の領域においてブレーキトルクTB(+)と一致(P4−1点)するまでは、推力トルクTFが負,正いずれの領域((2)−1,(2)−2)にあっても、推力トルクTFの絶対値≦ブレーキトルクTB(−)またはTB(+)の絶対値であるため、ねじ係合部が相対的に不動となる(図3(c)の(2)の状態)。このため、プランジャ24のピボット部24aは、カムシャフト19の回転に連係して揺動するロッカアーム16の揺動支点として機能する。なお、このP2からP4−1までの間は、図4におけるP3で示す(2)の状態に相当する。
【0073】
また、推力トルクTFがブレーキトルクTB(+)と一致(P4−1)した後、最大軸荷重(リフト量が最大、例えば、図3(c)の右端)になるまでは、ブレーキトルクTB(+)の絶対値<推力トルクTFの絶対値であるため、プランジャ24はねじ係合部滑り回転し、軸荷重(カム19aの押圧力)作用方向である縮小方向に移動できる(図3(c)の(3)の状態)。
【0074】
このように、開弁動作時のプランジャ24に作用する推力トルクTFとブレーキトルクTBは、プランジャ24にカムの押圧力が作用せずプランジャスプリング26の付勢力のみ作用する図3(c)の(1)の状態から、プランジャ24に作用する軸荷重の増加に伴って、(2)の状態((2)-1の状態→(2)-2の状態)→(3)の状態に順次移行する。そして、暫く(3)の状態が維持された後、軸荷重が徐々に減少する閉弁動作に移行するが、閉弁動作時のプランジャ24に作用する推力トルクTFとブレーキトルクTBは、プランジャ24に作用する軸荷重の減少に伴って、図3(c)の(3)の状態→(2)の状態((2)-2 の状態→(2)-1 の状態)→(1)の状態を経て→再び(2)の状態という具合に、順次移行する。
【0075】
詳しくは、P2は、推力トルク直線TFと摩擦トルク直線TB(−)の交点であって、プランジャ24に作用する軸荷重が増加(減少)する場合に図3(c)の(1)の領域から(2)の領域((2)の領域から(1)の領域)に切り替わる点である。また、P4−1(P4−2)は、図3(c)の推力トルク直線TFと摩擦トルク直線TB(+)の交点であって、プランジャ24に作用する軸荷重が増加(減少)する場合に(2)の領域から(3)の領域((3)の領域から(2)の領域)に切り替わる点である。
【0076】
例えば、図3(c)の推力トルク直線TFの右端をリフト量最大(Max Lift)位置とすると、図3(c)の横軸で示される軸荷重は、一旦、リフト量最大(Max Lift)位置まで上がった後、リフト量最大(Max Lift)位置を越えたところで下がり始めるので、トルクと軸荷重の関係は、今度は推力トルク直線TF上を左方向に進む。この最大軸荷重位置を含むP4−1位置からP4−2位置までの間は、図4におけるP4で示す状態である。
【0077】
そして、推力トルク直線TFと摩擦トルク直線TB(+)の交点であるP4−2位置で、(3)の領域から(2)の領域に切り替わり、このP4−2点以降が図4におけるP5の状態になる。さらに、リフト量が減って軸荷重が減ると推力トルクTFは左方向に下がり続け、推力トルク直線TFが摩擦トルク直線TB(−)との交点P2を通過すると、ここから図4におけるP6の状態になる。
【0078】
このP6の状態では、プランジャ24が伸長できる状態なので、P4の領域でプランジャ24が縮んだ分を自動的に補正する。即ち一旦、推力トルクTFが摩擦トルクTB(−)との交点P2を右から左側に通過した後、発生したバルブクリアランスの状況に応じて(反転して)、軸荷重は推力トルク直線TF上を左から右に進む。この状態が(1)である。
【0079】
この結果、バルブクリアランスが調整されて、推力トルク直線TFと摩擦トルク直線TB(−)の交点P2まで軸荷重が増えた(軸荷重の絶対値が下がった)時点で、プランジャ24は伸長方向への移動を停止する。これが(2)の状態、即ち、図4のP1の状態である。
【0080】
このため、バルブクリアランスが増加した場合には、ブレーキトルクTB(−)の絶対値<推力トルクTFの絶対値となる(1)の状態において、プランジャ24がねじ係合部で滑り回転してプランジャ伸長方向(バルブクリアランス減少方向)に移動することで、バルブクリアランスの増加を解消(調整)する。
【0081】
一方、バルブクリアランスが減少した場合には、ブレーキトルクTB(+)の絶対値<推力トルクTFの絶対値となる(3)の状態において、プランジャ24がねじ係合部で滑り回転してプランジャ縮小方向(バルブクリアランス増加方向)に移動することで、バルブクリアランスの減少を解消(調整)する。
【0082】
また、図4(a),(b),(c)は、エンジンの回転数が低い(例えば、毎分3000回転未満)場合のバルブリフト量,軸荷重およびプランジャの動きを示す図であるが、この図4に基づいて、カム19aが回転する場合の機械式ラッシュアジャスタ20の動作をさらに詳しく説明する。
【0083】
まず、ロッカアーム16(のローラ17b)とカム19aとの接触点がカム19aのベースサークル上にあるとき(図4の符号P1で示す範囲)は、プランジャ24には、カム19aによる押圧力が軸荷重として作用せず、プランジャスプリング26の所定の反力(付勢力)だけがプランジャ伸長方向に軸荷重として作用している。
【0084】
そして、動弁機構に正のバルブクリアランスが発生していると、プランジャ24にバルブスプリング14の反力(付勢力)が作用しないため、プランジャ24のロッカアーム16との摺接面F2は圧接されず、摺接面F2に発生する摩擦力は小さい。また、プランジャスプリング26の所定の反力はもともと小さい(図3))ので、摺接面F3に発生する摩擦力も小さい図3(b))。即ち、ブレーキトルクTB(−)の絶対値<推力トルクTFの絶対値(図3(c)の(1)参照)となるため、プランジャ24は、ねじ係合部において滑り回転して伸長方向(図1上方向)に移動する。
【0085】
このため、プランジャ24がロッカアーム16を押し上げ、ロッカアーム16他端側が下がり、バルブクリアランスが減少して0になった時点で、プランジャ24のロッカアーム16との摺接面F2およびプランジャ24のプランジャスプリング26との摺接面F3に摩擦力(第2,第3の摩擦力)が発生する。そして、この摩擦力によるブレーキトルクTBとプランジャスプリング26による推力トルクTFが、推力トルクTF≦ブレーキトルクTBとなると、プランジャ24の伸長方向の移動が止まる(図4のP1で示す範囲の(2)の状態)。
【0086】
このように、ロッカアーム・バルブ軸端部間のバルブブクリアランスが増加した場合は、ロッカアーム16(のローラ17b)とカム19aとの接触点がカム19aのベースサークル上にあるときに、プランジャ24が伸長方向(バルブブクリアランス減少方向)に移動して、プランジャ24がロッカアーム16を押し上げて、ロッカアーム16他端側が下がり、バルブブクリアランスを0に調整する。
【0087】
次に、カム19aが回転し、ロッカアーム16とカム19aとの接触点がベースサークルからランプ部に移行する時(図4の符号P2で示す位置)は、プランジャ24には、カム19aによりロッカアーム16を押し下げる力(ロッカアーム16からの下向きの軸方向荷重)が作用する。この時、プランジャ24は、先ず、ねじのガタ分(数十ミクロンオーダの距離)だけ直線的に押し下げられる。
【0088】
さらに、このプランジャ24を押し下げる力(ロッカアーム16からの下向きの軸方向荷重)によって、プランジャ24がねじ係合部滑り回転しようとするが、プランジャ24のロッカアーム16との摺接面F2およびプランジャ24のプランジャスプリング26との摺接面F3に発生する摩擦力(第2,第3の摩擦力)が、プランジャ24を押し下げる方向の回転の発生(ロッカアーム16から伝達される軸荷重がねじ係合部により推力トルクTFに変換されること)を妨げる。即ち、摺接面F2,F3に発生する摩擦力によるブレーキトルクTBが、ねじ係合部において発生する推力トルク(プランジャ24をねじ係合部で滑り回転させようとする推力トルク)TF以上となる(TF≦TB)ため、プランジャ24は、軸荷重作用方向(図1下方向)にねじ係合部のガタ分だけ直線的に移動した後、プランジャ24の雄ねじ25の下側フランクとハウジング22の雌ねじ23の上側フランクが接触した状態で止まる((2)の状態が継続する)。
【0089】
カム19aがさらに回転し、バルブ10のリフト(図1における下降)が始まると、プランジャ24に作用するロッカアーム16からの軸荷重はさらに増加する。プランジャ24を介してハウジング22に作用する軸荷重も大きくなり、ねじ係合部において発生する推力トルク(プランジャ24をねじ係合部で滑り回転させる推力トルク)TFも大きくなる。しかし、プランジャ24のロッカアーム16やプランジャスプリング26との摺接面F2,F3に発生する摩擦力(ブレーキトルクTB)もプランジャ24に作用する軸荷重に比例して大きくなる(推力トルクTF≦ブレーキトルクTB)ため、ねじ係合部が相対的に不動となって、プランジャ24は軸方向に移動できない状態(図4の符号P3で示す範囲で、(2)の状態)が継続する。
【0090】
カム19aがさらに回転し、ロッカアーム16とカム19aとの接触点がMax Lift近傍(図4の符号P4-1で示す)までくると、ねじ係合部において発生するプランジャ24を回転させようとする推力トルクTFが、摺接面F2,F3に発生する摩擦力によるブレーキトルク(プランジャ24の回転を抑制するブレーキトルク)TBを上回る(TB<TF)ため、プランジャ24が軸荷重作用方向(図1下方向)に移動できる状態((3)の状態)となる。
【0091】
カム19がさらに回転し、ロッカアーム16とカム19との接触点がMax Liftを越えたMax Lift近傍(図4の符号P4-2で示す)までは、ねじ係合部において発生するプランジャ24を回転させようとする推力トルクTFが摺接面F2,F3に発生する摩擦力によるブレーキトルクTBを上回る(TB<TF)ため、プランジャ24が軸荷重作用方向に移動できる状態((3)の状態)が継続する。
【0092】
このロッカアーム16とカム19aとの接触点がMaxLiftを含むMax Lift近傍(図4の符号P4で示す)の(3)の状態では、プランジャ24が軸荷重作用方向に移動できる(ブレーキトルクTB<推力トルクTF)ため、カム19a本来のMax Liftに対して、プランジャ24が縮小方向に僅かに移動してリフト量の減少(リフトロスδ)を招く。即ち、カム19aの押圧力で移動すべきリフト量よりも、プランジャ24が縮小方向に移動する量相当だけリフト量が少なくなることで、リフトロスδが発生する。
【0093】
カム19aがさらに回転し、ロッカアーム16とカム19aとの接触点がMax Liftを越えたMax Lift近傍(図4の符号P4-2で示す)をさらに越える(図4の符号P5で示す)と、プランジャ24に作用する軸荷重が減少することで、プランジャ24の摺接面F2,F3に発生する第2,第3の摩擦力によるブレーキトルクTBが、ねじ係合部に発生する推力トルクTF以上(TF≦TB)となり、ねじ係合部が相対的に不動となって、プランジャ24は軸方向に移動できない状態((2)の状態)となる。
【0094】
カム19aがさらに回転すると、スプリング26,14の付勢力が減少するが、推力トルクTF<ブレーキトルクTBの状態が継続されて、ねじ係合部が相対的に不動となり、プランジャ24が軸方向に移動できない状態((2)の状態)が継続する。即ち、MaxLift近傍(図4の符号P4で示す)で発生したリフトロスδがそのまま維持される。
【0095】
そして、ロッカアーム16とカム19aとの接触点がランプ部からベースサークルに移行する時(図4の符号P6で示す)は、プランジャ24には、バルブスプリング14の反力(付勢力)がほとんど消失し、主にプランジャスププリング26の所定の反力(付勢力)だけが軸荷重として作用する状態となる。この時、プランジャ24は、ねじのガタ分(数十ミクロンオーダの距離)とMax Lift近傍にて縮小した(リフトロスδ)分だけ押し上げられる((1)の状態)。
【0096】
即ち、ロッカアーム16とカム19aの接触点がベースサークルに移行する時(図4の符号P6で示す)は、Max Lift近傍でプランジャ24が縮小方向に移動した分とねじのガタ分(数十ミクロンオーダの距離)相当の正のバルブクリアランスが発生しているが、このバルブクリアランスはリフトロスδで相殺された状態である。そして、プランジャ24のロッカアーム16との摺接面F2に発生する摩擦力は小さく、摺接面F3に発生する摩擦力はもともと小さいので、ロッカアーム16とカム19aの接触点がベースサークルに移行する時(図4の符号P6で示す)は、ブレーキトルクTB(−)の絶対値<推力トルクTFの絶対値となって、プランジャ24は、ねじ係合部において滑り回転して伸長方向(バルブクリアランスを打ち消す方向である、図1上方向)に移動する。
【0097】
そして、プランジャ24が押し上げられることで、バルブクリアランスがなくなると、摺接面F2,F3に摩擦力が発生し、この摩擦力が、プランジャ24を押し上げる方向の回転の発生(プランジャスプリング26から伝達される軸荷重がねじ係合部により推力トルクTFに変換されること)を妨げる。
【0098】
即ち、摺接面F2,F3に発生する摩擦力によるブレーキトルクTBがねじ係合部で発生する推力トルクTF以上(TF≦TB)となるため、プランジャ24は、前記したように(1)の状態において、バルブクリアランス分だけ伸長方向に移動した後、プランジャ24の雄ねじ25の上側フランクとハウジング22の雌ネジ23の下側フランクが接触した状態で止まる((1)の状態から(2)の状態に移行する)。
【0099】
そして、再び、ロッカアーム16とカム19aとの接触点がベースサークル上となる当初の状態(図4の符号P1で示す)になり、カム19aの回動に連係して、(2)の状態→(3)の状態→(2)の状態→(1)の状態→(2)の状態が繰り返される。
【0100】
このように、本実施例のラッシュアジャスタ20では、動弁機構においてバルブクリアランスが増加した場合は、第1には、バルブ開閉動作のバルブリフト終了直前のプランジャスプリング26の付勢力のみがプランジャ24に軸荷重として作用する際(図4の符号P6で示す)に、プランジャ24がバルブクリアランスを減少させる方向(プランジャ24が伸長する方向)に移動して、バルブクリアランス増加状態が解消される。
【0101】
また、第2には、ロッカアーム16(のローラ17b)とカム19aとの接触点がカム19aのベースサークル上にあるとき(図4の符号P1で示す)も、プランジャスプリング26の所定の反力(付勢力)のみがプランジャ24に軸荷重として作用することで、プランジャ24がバルブクリアランスを減少させる方向(プランジャ24が伸長する方向)に移動して、バルブクリアランス増加状態が解消される。
【0102】
また、例えば、機関(エンジン)が暖まった状態で停止した後、急激に冷えるような場合は、シリンダヘッド11とバルブ10の熱膨張係数の違いに起因して、ラッシュアジャスタ20によるアジャスト状態がバルブクリアランス過小(マイナス)状態となって、機関(エンジン)再始動時にバルブ10のフェース面10aがバルブシート11から浮くおそれがある。また、バルブシート11c表面が磨耗した場合にも、同様のこと(バルブクリアランスが過小状態となって、機関再始動時にバルブ10のフェース面10aのバルブシート11cからの浮き上がり)が起こる。
【0103】
このような事態に対し、本実施例に係るラッシュアジャスタ20では、バルブ開閉動作で、カム19aの押圧力が最大値近くの軸荷重としてプランジャ24に作用する際に(図4の符号P4で示す、ブレーキトルクTB<推力トルクTFとなった状態で)、プランジャ24がバルブクリアランスを増加させる方向(プランジャ24が縮小する方向)に移動して、バルブクリアランス過小(マイナス)状態が解消されるので、冷間時に機関を再始動する際、バルブリフト量が過大となったり、バルブ10のフェース面10aとバルブシート11c間のシール性(燃焼室のシール性)が不良になったりする不具合がない。
【0104】
また、図5(a),(b),(c)は、エンジンの回転数が高い場合(例えば、毎分3000回転以上)のバルブリフト量,軸荷重およびプランジャの動きを示す図で、エンジン高回転時は、図4に示すエンジン低回転時のように、バルブスプリング14の反力(付勢力)による軸荷重が支配的ではなく、動弁系を構成する主としてロッカアーム16やバルブ10等の慣性力が支配的となる(動弁系の慣性力の影響を強く受ける)。
【0105】
即ち、ラッシュアジャスタ20のプランジャ24に最大の軸荷重が作用するタインミングは、エンジン低回転時にはMax Lift時であるのに対し、エンジン高回転時には、図5(b)に示すように、バルブ10が開弁し始める時と、閉弁し切る時である。
【0106】
詳しくは、初期状態でバルブクリアランスが調整された(2)の状態から、バルブリフトが始まると、動弁系(ロッカアーム16やバルブ10等)の慣性力により軸荷重が急激に立ち上がる。
【0107】
この軸荷重が急激に立ち上がる状態では、ねじ係合部において発生する、プランジャ24を回転させようとする推力トルクTFが、摺接面F2,F3に発生する摩擦力によるブレーキトルク(プランジャ24の回転を抑制するブレーキトルク)TBを上回る(TB<TF)ため、プランジャ24が軸荷重作用方向(図1下方向、プランジャ縮小方向)に移動できる状態((3)の状態)となる。
【0108】
この軸荷重が急激に立ち上がる(3)の状態では、図4に示す低回転の場合と同様、カム19a本来のMax Liftに対して、プランジャ24が縮小方向に僅かに移動してリフト量の減少(リフトロスδ)を招く。即ち、カム19aの押圧力で移動すべきリフト量よりも、プランジャ24が縮小方向に移動する量相当だけリフト量が少なくなることで、リフトロスδが発生する。
【0109】
そして、軸荷重が(3)の領域を過ぎて(1)の状態に達すると、バルブスプリング14の反力(付勢力)がほとんど消失し、主にプランジャスププリング26の所定の反力(付勢力)だけが軸荷重として作用する状態となることで、(3)の状態でプランジャ24が縮小方向に移動した分(バルブ側で見るとリフトロスδ)とねじのガタ分だけ、プランジャ24が押し上げられる。
【0110】
なお、プランジャ24の動きとしては、エンジンの回転数が高い場合も、(3)の状態から(2)の状態を経て(1)の状態に移行することは、回転数が低い場合(図4参照)と同様であるが、(3)の状態と(2)の状態間における軸荷重の減少速度が速く、(2)の状態をほとんど0時間(無視できる時間)で通過するため、(3)の状態→(1)の状態に直接移行するように見える。
【0111】
そして、(1)の状態で、プランジャ24の移動によりバルブクリアランス(リフトロスδとねじのガタ分の距離)が調整されると、プランジャ24の摺接面F2,F3に発生する第2,第3の摩擦力によるブレーキトルクTBが、ねじ係合部に発生する推力トルクTF以上(TF≦TB)となる((2)の状態)となる。
【0112】
この(2)の状態では、ねじ係合部が相対的に不動となり、次に軸荷重が立ち上がるまで、プランジャ24は移動できない状態に保持される。そして、(2)の状態において、Max Liftを過ぎて、バルブが閉じ切る直前になると、動弁系(ロッカアーム16やバルブ10等)の慣性力により軸荷重が急激に立ち上がる。
【0113】
この時のプランジャ24の動きは、バルブリフトが始まる時の軸荷重が急激に立ち上がる(3)の状態と同様で、プランジャ24が縮小方向に僅かに移動してリフト量の減少(リフトロスδ)を招く。そして、ほとんど無視できる(特性としては顕在化しない)(2)の状態を経て、バルブスプリング14の反力(付勢力)がほとんど消失し、主にプランジャスププリング26の所定の反力(付勢力)だけが軸荷重として作用する(1)の状態となることで、(3)の状態でプランジャ24が縮小方向に移動した分、プランジャ24が押し上げられて、バルブクリアランスが調整された(2)の状態に戻る。
【0114】
次に、本発明の第2の実施例を図6に基づいて説明する。
【0115】
前記した第1実施例では、ロッカアーム式動弁機構仕様の機械式ラッシュアジャスタ20を示すが、この第2の実施例では、直動式動弁機構仕様の機械式ラッシュアジャスタ20Aを示している。
【0116】
符号10は、シリンダヘッド11に設けられた吸気(排気)ポート(図1の符号P参照)を横切るように配設された吸気バルブ(排気バルブ)で、その軸端部には、コッタ12aおよびスプリングリテーナ12bが装着され、ばね座面(図1の符号11a参照)とスプリングリテーナ12bとの間にバルブスプリング14が介装されて、バルブ10は閉弁方向(図6上方向)に付勢されている。
【0117】
一方、バルブ10の真上には、カムシャフト19に設けたカム19aが配置されており、カム19aとバルブ10の軸端部(のコッタ12a)間には、シリンダヘッド11に設けた上下に延びるボア13に挿入された機械式ラッシュアジャスタ20Aが介装されている。
【0118】
即ち、機械式ラッシュアジャスタ20Aは、シリンダヘッド11に設けたボア13に係合する、下方が開口する円筒型のバケット110と、内側に雌ねじ23が形成され、バケット110の天井下面に固定一体化されたプランジャ係合部材である円筒型のハウジング122と、外側に形成された雄ねじ25をハウジング122側の雌ねじ23と係合させることでハウジング122内に配設された、上方が開口するカップ型のプランジャ124と、プランジャ124とバケット110の天井との間に介装されて、プランジャ124をハウジング122から伸長する方向(図6の下方向である、バルブスプリング14の付勢力が作用する方向と反対方向)に付勢するプランジャスプリング26とを備えて構成されている。
【0119】
バケット110の内側には、円盤状に延在する隔壁111が一体化されるとともに、隔壁111中央に形成された垂直円筒部112がハウジング122の外周に固定一体化されて、バケット110とハウジング122との取り付け強度が確保されている。
【0120】
なお、バケット110は、図示しない回り止め手段により、ボア13に対し周方向に回転しないように保持されており、バケット110(ラッシュアジャスタ20A)は、カム19aの回動に連係してボア13の軸方向にのみ摺動動作する。
【0121】
また、プランジャ124の下端面は、バルブ10の軸端部に装着された軸荷重伝達部材であるコッタ12aの上端面に当接することで、プランジャ124のバルブ10との摺接面F4の面積が拡大されて、摺接面F4に発生する第2の摩擦トルクが大きくなるように構成されている。
【0122】
そして、プランジャ124の雄ねじ25(ハウジング122の雌ねじ23)のねじ山の角度(リード角およびフランク角)は、前記した第1の実施例のラッシュアジャスタ20におけるプランジャ24の雄ねじ23(ハウジング22の雌ねじ23)のねじ山の角度(リード角およびフランク角)と同じ角度(例えば、リード角が30度、フランク角が30度)に設定されて、プランジャ124に伸長・縮小いずれの方向の軸荷重が作用した場合にも、プランジャ124がねじ係合部滑り回転して軸荷重作用方向に移動できるとともに、プランジャ124のバルブ10の軸端部(側のコッタ12b)との摺接面F4およびプランジャ124のプランジャスプリング126との摺接面F5に発生する摩擦トルク(ブレーキトルク)によって、ねじ係合部が相対的に不動となる(プランジャ124が静止する)ように構成されている。
【0123】
カム19aが回転する場合のラッシュアジャスタ20Aの動作は、前記した第1の実施例のラッシュアジャスタ20の動作を示す図4,5と同様であるので、その説明は省略する。
【0124】
次に、本発明の第3の実施例を図7に基づいて説明する。
【0125】
この図7に示す機械式ラッシュアジャスタ20Bは、前記した第2実施例と同様、直動式動弁機構仕様の機械式ラッシュアジャスタを示している。
【0126】
前記した第2実施例のラッシュアジャスタ20Aでは、バケット110に一体化されたハウジング122の内周に形成された雌ねじ23と、カップ型プランジャ124の外周に形成された雄ねじ25が軸方向に係合するように配設されている。
【0127】
一方、この第3の実施例の機械式ラッシュアジャスタ20Bでは、バケット110の天上に下方に延出するプランジャ係合部材であるロッド部材114が一体的に形成され、ロッド部材114の外周に雄ねじ25が形成され、一方、上方の開口するカップ型プランジャ124の周壁内周に雌ねじ23が形成され、ロッド部材114の雄ねじ25とプランジャ124の雌ねじ23が軸方向に係合している。
【0128】
また、プランジャ124には、フランジ状のばね受け125が形成され、ばね受け125とバケット110の天井との間には、プランジャスプリング126が介装されて、プランジャ124のプランジャスプリング126との摺接面F5がばね受け125によって構成されている。
【0129】
その他は、前記した第2の実施例のラッシュアジャスタ20Aと同一につき、同一の符号を付すことで、その重複した説明は省略する。
【0130】
この第3の実施例では、プランジャスプリング126の径が第2の実施例におけるプランジャスプリング26の径よりもかなり大きいので、例えば、プランジャスプリング126のばね力を大きくして、摺接面F4に発生する摩擦トルクを大きく設定できるなど、ばね特性の選択肢が拡大されて、たとえば、前記第2の実施例よりも軸方向の大きさをコンパクトにできる。
【0131】
次に、本発明の第4の実施例を図8に基づいて説明する。
【0132】
この図8に示す機械式ラッシュアジャスタ20Cは、前記した第1実施例と同様、ロッカアーム式動弁機構仕様であるが、ハウジング22内に配設されたプランジャ24Aが、雄ねじ25が形成されたプランジャ基端部24A1と、ピボット24aが形成されたプランジャ先端部24A2とに分割された構造となっている。なお、ハウジング22は、第1の実施例と同様、ハウジング22下端部とボア13の底面間に発生する摩擦トルクによって、周方向に回転しないように保持されている。
【0133】
詳しくは、プランジャ基端部24A1は、ハウジング22側の雌ねじ23に係合する雄ねじ25が外側に形成された、下方に開口するカップ型に構成されて、ハウジング22内下方に配設されている。そして、雄ねじ25と雌ねじ23は、等フランク角の三角ねじで構成され、ねじ係合部を構成する雄ねじ25(雌ねじ23)のねじ山の角度は、前記した第1、第2、第3の実施例の場合と同様、リード角が例えば30度、フランク角(上側フランク角、下側フランク角)が例えば30度にそれぞれ設定されている。プランジャ基端部24A1の天井内面24A1aとハウジング22内底面22a間には、プランジャスプリング26が介装されて、プランジャ基端部24A1を上方に付勢している。
【0134】
一方、プランジャ先端部24A2は、上端部にピボット部24aを形成した下方に開口する筒型に構成され、プランジャ先端部24A2の外周に設けた段差部24A2aがハウジング22の上端開口部に装着された円環状キャップ28の内周縁部に係合して、抜け止めされている。このため、プランジャスプリング26によって、プランジャ基端部24A1とプランジャ先端部24A2が軸方向に圧接状態に保持されるとともに、プランジャ24A(プランジャ先端部24A2)がハウジング22から突出する上方向(伸長方向)に付勢保持されている。
【0135】
即ち、ラッシュアジャスタ20Cのプランジャ24Aにカム19aの押圧力が軸荷重として作用すると、プランジャ基端部24A1の雄ねじ25とハウジング22の雌ねじ23間のねじ係合部には、プランジャ24Aを滑り回転させる推力トルクTFが発生するとともに、プランジャ24Aのロッカアーム16との摺接面(ピボット部24aのソケット18との摺接面)F6、プランジャ基端部24A1(の上端面24A1b)におけるプランジャ先端部24A2(の下端面24A2b)との摺接面F7、およびプランジャ基端部24A1(の天上内面24A1a)におけるプランジャスプリング26との摺接面F8には、それぞれねじ係合部の滑り回転を抑制しようとする摩擦トルク(ブレーキトルク) TB6,TB7,TB8が発生する。
【0136】
そして、このラッシュアジャスタ20Cでは、プランジャ基端部24A1の雄ねじ25(ハウジング22の雌ねじ23)のねじ山のリード角が、例えば30度で、雄ねじ25(雌ねじ23)のねじ山の上側(下側)フランク角も30度の等フランク角に設定されて、プランジャ24A(プランジャ基端部24A1)に伸長・縮小いずれの方向の軸荷重が作用した場合にも、プランジャ24A(プランジャ基端部24A1)がねじ係合部において滑り回転しながら軸荷重作用方向に移動できるとともに、摺接面F6,摺接面F7および摺接面F8にそれぞれ発生する摩擦トルク(ブレーキトルク) TB6,TB7,TB8によって、プランジャ24A(プランジャ基端部24A1)のねじ係合部での滑り回転が抑制されて、ねじ係合部が相対的に不動となる(プランジャ24Aが静止する)ように構成されている。
【0137】
詳しくは、摺接面F6,F7,F8に発生する摩擦トルクTB6,TB7,TB8のうちの、摩擦トルクTB6,TB8の総和または摩擦トルクTB7,TB8の総和のいずれか小さい方の摩擦トルク(ブレーキトルク)TBが、推力トルクTF以上となった場合に、プランジャ24A(プランジャ基端部24A1)のねじ係合部での滑り回転が抑制されて、ねじ係合部が相対的に不動となる(プランジャ24Aが静止する)ように構成されている。
【0138】
さらに詳しくは、摺接面F6,F7にはカム19aの押圧力が作用するのに対し、摺接面F8にはプランジャスプリング26の付勢力しか作用しないため、摺接面F8に発生する摩擦トルクTB8は、摺接面F6,F7に発生する摩擦トルクTB6,TB7に比べて著しく小さい。したがって、プランジャ24Aに作用する軸荷重によって、プランジャ基端部24A1がねじ係合部滑り回転する場合は、まず摺接面F8が最初に滑り、続いて摺接面F6,F7のうちの摩擦トルクが小さい摺接面が滑ることになる。
【0139】
このため、本実施例において、例えば、摺接面F6,F7に発生する摩擦トルクTB6,TB7が、TB7<TB6であるとすると、推力トルクTF≦ブレーキトルクTB(摩擦トルクTB7,TB8の総和)で、ねじ係合部が相対的に不動となる(プランジャ24Aが静止する)ように構成されている。換言すれば、推力トルクTF≦ブレーキトルクTB(摩擦トルクTB7,TB8の総和)で、ねじ係合部が相対的に不動となる(プランジャ24Aが静止する)ように、ねじ係合部を構成する雄ねじ25(雌ねじ23)のリード角およびフランク角がそれぞれ30度に設定されている。
【0140】
一方、ブレーキトルクTB<推力トルクTFでは、プランジャ基端部24A1がねじ係合部滑り回転し、プランジャ24A(プランジャ基端部24A1)は軸荷重作用方向に移動できる状態となって、バルブクリアランスが調整される。
【0141】
詳しくは、エンジン駆動時のプランジャ24Aの動作特性は、前記した第1の実施例のラッシュアジャスタにおけるプランジャ24の動作特性(図4,5)と同様で、バルブクリアランスが増加した場合は、バルブ開閉動作の際、例えば、バルブリフト終了直前等のプランジャスプリング26の付勢力のみがプランジャ24Aに軸荷重として作用する際(図4,5の(1)参照)に、プランジャ24Aがバルブクリアランスを減少させる方向(プランジャ24Aが伸長する方向)に移動して、バルブクリアランス増加状態が解消される。
【0142】
また、バルブクリアランスが減少した場合は、バルブ開閉動作の際、例えば、カム19aの押圧力がプランジャ24Aに最大値近くの軸荷重として作用する際(図4,5の(3)参照)に、プランジャ24Aがバルブクリアランスを増加させる方向(プランジャ24Aが縮小する方向)に移動して、バルブクリアランス減少状態が解消される。
【0143】
その他は、前記した第1の実施例のラッシュアジャスタ20と同様であるので、同一の符号を付すことで、その重複した説明は省略する。
【0144】
なお、前記した第1〜第4の実施例では、ねじ係合部を構成する雄ねじ25(雌ねじ23)の角度が、リード角30度、フランク角(上側フランク角、下側フランク角)30度にそれぞれ設定されているが、リード角は10〜40度、フランク角は5〜45度の範囲に設定されていてもよい。
【0145】
即ち、ねじ係合部を構成する「ねじ」のねじ山のリード角が10度未満では、摩擦角の影響により、プランジャのねじ係合部でのスムーズな滑り回転が困難となり、一方、40度を超えると、プランジャの軸荷重伝達部材との摺接面に発生する摩擦トルクによってプランジャのねじ係合部での滑り回転を抑制することが困難となる。
【0146】
このため、ねじ係合部を構成する「ねじ」のねじ山のリード角は、プランジャに伸長・縮小いずれの方向の軸荷重が作用した場合にも、プランジャがねじ係合部スムーズに滑り回転できるとともに、プランジャの軸荷重伝達部材との摺接面に発生する摩擦トルクによってねじ係合部での滑り回転を抑制することができる、10度〜40度の範囲が望ましい。
【0147】
具体的には、プランジャ24、124、24Aに作用する所定の軸荷重に対しプランジャ24、124、24Aの主に軸荷重伝達部材(ロッカアーム16,コッタ12a)との摺接面に発生する摩擦トルクが比較的大きい(小さい)ときは、小さい(大きい)リード角を設定するというように、プランジャ24、124、24Aの主に軸荷重伝達部材(ロッカアーム16,コッタ12a)との摺接面F2,F4,F6に発生する摩擦トルクに対応した大きさのリード角を設定する。
【0148】
また、フランク角が5度未満では、角ねじの範疇となって摩擦角が小さいので、フランク角を変化させる意義が無くなり、リード誤差等の影響を受けない高精度の加工が難しい。一方、フランク角が45度を超えると、「ねじ」の加工はし易いが、摩擦角が非常に大きいため、リード角を変えても「ねじ」は極めて自立し易くなるので、フランク角を調整パラメータとして利用する意義が無くなる。
【0149】
即ち、プランジャ24、124、24Aの主に軸荷重伝達部材(ロッカアーム16,コッタ12a)との摺接面に発生する摩擦トルクの大きさに対応して、まずリード角αを設定する。次に、フランク角を設定するのであるが、フランク角が大き(小さ)ければ、ねじ係合部が滑り易い(難い)ことから、ねじ係合部での滑り回転するタイミングや滑動性を微調整するために、適切なフランク角を設定する。
【0150】
また、前記した第1〜第4の実施例では、雄ねじ25(雌ねじ23)が等フランク角(上側フランク角と下側フランク角が同じ)の台形ねじや三角ねじで構成されているが、雄ねじ25(雌ねじ23)は、上側フランク角と下側フランク角が異なる不等フランク角の台形ねじや三角ねじで構成されていてもよい。
【0151】
また、前記した第1,2,4の実施例では、プランジャ24,124,24A1(24A1)の雄ねじ25およびハウジング22,122の雌ねじ23が、第3の実施例では、ロッド部材114の雄ねじ25およびプランジャ124の雌ねじ23が、それぞれリードが1本である1条ねじで構成されているが、リードが複数本ある2条ねじや3条ねじ等の多条ねじで構成してもよい。
【0152】
リードを軸方向等間隔に複数並設した多条ねじは、リードが一条である一条ねじと比べて、リードのピッチを大きくできる。特に、前記した実施例のように、ねじ係合部を構成する「ねじ」のリード角として、「プランジャに伸長・縮小いずれの方向の軸荷重が作用した場合にも、プランジャがねじ係合部滑り回転する」という条件を満足する大きいリード角(例えば30度)を採用する場合は、多条ねじとすることで、「ねじ」の径に応じたピッチが設定でき、ねじ山の形状や角度としてJIS等の標準的な設計値を使用できる。
【0153】
したがって、多条ねじでは、「ねじ」のねじ山の角度(リード角およびフランク角)を設計する際に、「ねじ」の条数を考慮することで、「ねじ」の望ましい角度(リード角およびフランク角)の設定範囲を拡大することができる。
【0154】
また、多条ねじでは、プランジャに作用する軸荷重に対して、ねじ係合部に発生する面圧が下がり、それだけ「ねじ」が摩耗しにくいので、プランジャに作用する軸荷重が大きい動弁機構に特に有効な機械式ラッシュアジャスタを提供できる。
【符号の説明】
【0155】
10 バルブ(弁体)
11 シリンダヘッド
12a コッタ
14 バルブスプリング
20,20A,20B,20C 機械式ラッシュアジャスタ
22、122 プランジャ係合部材であるハウジング
23 雌ねじ
24、124、24A プランジャ
24a ピボット部
24A1 プランジャ基端部
24A2 プランジャ先端部
25 雄ねじ
26,126 プランジャスプリング
114 プランジャ係合部材であるロッド部材
F2,F6 プランジャの荷重伝達部材であるロッカアームとの摺接面
F3,F5,F8 プランジャのプランジャスプリングとの摺接面
F4 プランジャの荷重伝達部材であるバルブ軸端部(のコッタ)との摺接面
F7 プランジャ基端部におけるプランジャ先端部との摺接面
W プランジャに作用する軸荷重
α ねじ山のリード角
θ23a,θ25a ねじ山の上側フランク角
θ23b,θ25b ねじ山の下側フランク
TF 推力トルク
TB ブレーキトルク(摩擦トルク)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9