(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レール固定部材が、異なる剛性を有する複数の路盤に跨って設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプレストレスト・バラスト軌道。
前記拘束部材が、前記軌道の延在方向に離間して配置された少なくとも二つの前記レール固定部材にわたって配置されたバネ部材であることを特徴とする請求項5に記載のプレストレスト・バラスト軌道。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2のプレストレスト・バラスト軌道は、バラストを拘束することによる軌道沈下抑制効果を得ることができるものの、プレストレスが時間の経過とともに低下してしまい、その結果、軌道沈下抑制効果が消失してしまう。即ち、上記プレストレスト・バラスト軌道では、プレストレス部材によるまくらぎやレールの拘束構造の剛性が高すぎるため、列車の走行に伴ってバラストに塑性変形が生じた場合には該塑性変形に追従して拘束を継続することができず、バラストへの拘束力が消失してしまう。
【0006】
さらに、これら方式では、局所的な変形による軌道のずれを防ぐために、全てのまくらぎを支持することが好ましいが、プレストレス部材を設置する数が多くなるという問題を有していた。
【0007】
この発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、少ないプレストレス部材で軌道沈下抑制効果を長期間にわたって維持することが可能なプレストレスト・バラスト軌道を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の一態様に係るプレストレスト・バラスト軌道は、軌道における路盤と前記軌道に沿って延在するレール固定部材とにわたって配された
複数のプレストレス部材によって、前記レール固定部材と前記路盤との間のバラストにプレストレスを付与するプレストレスト・バラスト軌道において、前記
複数のプレストレス部材が、前記プレストレスを付与する方向に弾性を有し、前記
軌道の長手方向に沿って
互いに間隔をおいて配置されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、プレストレス部材がその弾性によりバラストの塑性変形に追従してバラストを拘束する。即ち、プレストレス部材がレール固定部材と路盤との間においてバラストを弾性拘束した構造とされているため、バラストが塑性変形した場合であってもバラストに対するプレストレスの急激な消失を回避することができる。
そして、軌道に沿って延在するレール固定部材の長手方向に沿ってプレストレス部材を配置することで、プレストレス部材を設置していない部分ではレール固定部材によって軌道沈下を抑え、レール固定部材で対応することができない部分をプレストレス部材でバラストを拘束することで軌道沈下を抑える。
これらにより、プレストレス部材の設置数量を抑え、少ないプレストレス部材で軌道沈下抑制効果を長時間にわたって維持することが可能となる。
【0010】
また、本発明の他の態様に係るプレストレスト・バラスト軌道は、前記レール固定部材が、前記軌道に沿って延在して一対のレールを前記軌道の延在方向の複数箇所で締結し支持する縦梁部と、一対の前記縦梁部を前記軌道の延在方向の所定間隔毎に複数箇所で互いに連結する連結部とを有することを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、レール固定部材である一対の縦梁部が軌道に沿って延在しており、それぞれの縦梁部にレールが締結され、これらが連結部で連結されている。そのため、左右一対の縦梁部が連結部で連結された剛性の高い構造となることで、曲げ剛性を高めて上側に配置されたレールを列車が通過し荷重の局所的な集中を受けてもレール固定部材によって緩和することができ、軌道沈下をより小さくすることができる。これにより、プレストレス部材の設置数量を抑え、少ないプレストレス部材でより軌道沈下抑制効果を長時間にわたって維持することが可能となる。
【0012】
さらに、本発明の他の態様に係るプレストレスト・バラスト軌道は、前記レール固定部材が、前記軌道の延在方向に隣接して複数配置されており、前記プレストレス部材が、隣接する前記レール固定部材
の連結部にまたがって配置される拘束部材と、この拘束部材に上部が固定され、前記路盤に下部が固定された緊張部材とによって、前記レール固定部材に対して前記プレストレスを共に付与することを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、隣接する異なるレール固定部材に対して一つのプレストレス部材によって共にプレストレスを付与することで、隣接するレール固定部材のバラストが拘束され、ずれを抑制することができる。さらに、隣接するレール固定部材が連結部を介して鉛直方向に拘束されることで、水平方向の抵抗量も向上し耐震性を向上させることが可能となる。
【0014】
また、本発明の他の態様に係るプレストレスト・バラスト軌道は、前記レール固定部材が、異なる剛性を有する複数の路盤に跨って設けられていることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、レール固定部材が異なる剛性を有する路盤に跨って配置されていることで、レール固定部材の剛性によって異なる路盤の境界における軌道の沈下を抑えることができ、剛性の異なる路盤間であって軌道を安定させることができる。また、地震が発生し路盤が大きく振動した場合に、路盤の剛性が異なることで振動に対する応答変位特性の違いが生じ不同沈下が発生するがレール固定部材の剛性によって不同沈下による影響を抑えることができ、軌道上を走行する列車の安定性を向上させることが可能となる。
【0016】
さらに、本発明の他の態様に係るプレストレスト・バラスト軌道は、前記プレストレス部材が、下端が前記路盤に固定された緊張部材と、該緊張部材の上端側に接続され、上下方向に弾性変位可能とされるとともに前記レール固定部材を下方に向かって押圧する拘束部材とを備えることを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、プレストレス部材が弾性変形可能にレール固定部材を下方に向かって押圧することによって、バラストの塑性変形に適切に追従しながらバラストを拘束することができる。
【0018】
また、本発明の他の態様に係るプレストレスト・バラスト軌道は、前記拘束部材が、前記軌道の延在方向に離間して配置された少なくとも二つの前記レール固定部材にわたって配置されたバネ部材であることを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、バネ部材の付勢力によってプレストレス部材がプレストレスを付与する方向に弾性を有した構造となる。したがって、簡易な構造でもってバラストの塑性変形に適切に追従しながらバラストを拘束することができ、設置コストやメンテナンスコストを低く抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のプレストレスト・バラスト軌道によれば、弾性を有するプレストレス部材がバラストの塑性変形に追従しバラストを固定し、レール固定部材がプレストレス部材のない部分での軌道沈下を抑えることで、少ないプレストレス部材で軌道沈下抑制効果を長期間にわたって維持することが可能なプレストレスト・バラスト軌道を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る第一実施形態について
図1から
図5を参照して説明する。
図1、
図2に示すように、第一実施形態のプレストレスト・バラスト軌道100は、盛り土によって構成された路盤1上に敷かれたバラスト3上に、軌道の延在方向に隣接して配置されるレール固定部材4と、軌道に沿って延在しレール固定部材4上に複数箇所で固定されるレール5とを有している。そして、このプレストレスト・バラスト軌道100には、レール固定部材4が隣接する部分であるつなぎ目にレール固定部材4の長手方向に沿って離間して配置されるプレストレス部材10と、プレストレス部材10を路盤1に対して固定するアンカー部60とが設けられている。
ここで、本実施形態のプレストレスト・バラスト軌道100においては、レール固定部材4に対してレール5を敷設させる側を上側(
図2紙面上方向)とし、その反対側でありレール固定部材4に対して路盤1がある側を下側(
図2紙面下方向)とする。
【0023】
レール固定部材4は、軌道に沿って延在する一対の縦梁部4aと、縦梁部4aの両端部で縦梁部4aを軌道の幅方向にわたって連結する連結部4bとを有している。即ち、レール固定部材45としては、一対の縦梁部4a及び連結部4bを有して軌道に沿って延在するラダーまくらぎを採用している。そして、複数のレール固定部材4は軌道の延在方向に隣接しており、一対のレール5を縦梁部4aで下側から支持するように配置されている。
縦梁部4aは、例えば、コンクリートで構成され、断面矩形状をなして軌道に沿って延在しており、一対の縦梁部4aが軌道の延在方向と平行に配置されている。そして、一対の縦梁部4aは上側にレール5をそれぞれ一本ずつ配置しており、レール5と縦梁部4aとは一定の間隔を開けて軌道の延在方向に沿って複数箇所で締結されている。
【0024】
連結部4bは、例えば、鋼管で構成され、断面矩形状の角柱形状をなしている。そして、連結部4bは、軌道の延在方向と直角をなす方向である軌道の幅方向に沿って、縦梁部4aの両端部で一対の縦梁部4aを連結している。
なお、レール固定部材4に用いられる連結部4bは縦梁部4aの両端部のみであることに限定されるものではなく、軌道の延在方向に所定間隔を開けて複数配置され、所定間隔毎に縦梁部4aを連結する構造としてよい。
【0025】
プレストレス部材10は、
図2から
図5に示すように、ロッド(緊張部材)20及び拘束部材30を有しており、隣接するレール固定部材4の連結部4bと路盤1との間において上下方向(
図2紙面上下方向)にわたるように複数が設けられている。本実施形態においては、隣接するレール固定部材4の連結部4bに一つのプレストレス部材10が対応するように複数のプレストレス部材10がレール固定部材4に沿って離間して設けられている。つまり、プレストレス部材10は、軌道の延在方向に隣接して配置されたレール固定部材4の間であるつなぎ目に設けられている。
【0026】
ロッド20は、例えば金属やカーボン等からなる棒状の部材であって、隣接するレール固定部材4の連結部4bの中間の位置における軌道の幅方向中央において、隣接するレール固定部材4の連結部4bと路盤1との間とにわたって上下方向に延在するように設けられている。そして、ロッド20は、その下端がアンカー部60を介して路盤1に固定されるとともに、この下端からバラスト3内を通過するように上方に向かって延在し、その上端は隣接するレール固定部材4の連結部4bの上面よりも上方に突出するように配置されている。
【0027】
また、ロッド20の上端側の外周面には雄ネジ(図示省略)が形成されており、雄ネジには内周面に雌ネジを有するロックナット21が螺合されている。これによって、ロックナット21はロッド20の上端側においてロッド20の外周面から外周側に張り出すように固定されている。そして、ロックナット21は、ロッド20に対して相対回転させた際のみロッド20に対して上下方向に相対移動可能とされている。
【0028】
拘束部材30は、ロッド20の上端側に接続されて連結部4bを下方に向かって押圧する役割を有しており、詳しくは
図4及び
図5に示すように、水平面に沿って延びる矩形板状をなすバネ部材31から構成されている。そして、拘束部材30は、軌道の延在方向にバネ部材31の長手方向、即ち、拘束部材30の長手方向を沿わせて配置されている。これによって、拘束部材30はその長手方向の両端側が隣接するレール固定部材4の連結部4bの上面に接触するようにして、これら連結部4bの上面にわたって配置されている。
【0029】
バネ部材31は、それぞれ水平面に沿って延びる矩形板状をなしており、上下方向に撓むように弾性変形可能とされている。また、これらバネ部材31の長手方向の中央には上下方向に貫通してロッド20の外径よりも大きい内径を有する孔部31aがそれぞれ形成されている。このバネ部材31の各孔部31aは、互いに上下方向に連通状態とされており、上方から下方に向かってロッド20が挿通されている。これによって、バネ部材31の上面にはロックナット21が当接しており、ロックナット21によってバネ部材31からなる拘束部材30のロッド20に対する上方向への相対移動が規制されている。そして、バネ部材31は、付与される押圧力によって設定値以内で変位するバネ定数を有している。
【0030】
また、バネ部材31は、バネ部材31の下面における長手方向両端側、即ち、当該下面における連結部4bに対向する部分には、
図4に示すように、下方に向かって円筒面状に突出する円筒座32がそれぞれ設けられている。これら一対の円筒座32は連結部4bの上面に接触しており、即ち、拘束部材30は円筒座32を介して連結部4bに接触している。
【0031】
このようなプレストレス部材10の拘束部材30は、ロッド20との接続箇所となるバネ部材31の長手方向中央を支点として、長手方向両側の部分が上下方向に弾性変位可能とされている。即ち、プレストレス部材10は、拘束部材30が弾性変位可能とされることによって、プレストレス部材10自体が上下方向への弾性を有した構造をなしている。
【0032】
また、拘束部材30は、連結部4bとの接触箇所を介して連結部4bを下方に向かって押圧している。即ち、拘束部材30は、ロックナット21によってロッド20に対する上方向への移動が規制されることによって、ロッド20との接続箇所となるバネ部材31の長手方向中央に比べて長手方向両端側の部分が上方に向かって弾性変形している。これにより、ロックナット21から拘束部材30に加えられる押圧力と拘束部材30自体の弾性力によって、連結部4bが下方に向かって押圧されている。
【0033】
アンカー部60は、
図2及び
図3に示すように、路盤1に形成された凹部2内に設けられている。即ち、路盤1の上面における軌道の幅方向中央には下方に向かって窪む凹部2が軌道の延在方向に間隔をあけて複数形成されており、これら凹部2のそれぞれにアンカー部60が設けられている。そして、アンカー部60は、凹部2に敷設された板部材61と、凹部2に充填されたコンクリート体62とから構成されており、これによってロッド20の下端が路盤1に対して強固に固定されている。なお、本実施形態においては一つのプレストレス部材10に対応する隣接するレール固定部材4の連結部4bの下方に一つの凹部2が形成されており、即ち、隣接するレール固定部材4の連結部4bの直下に凹部2が形成されている。
【0034】
板部材61は、凹部2の底面に敷設されている。この板部材61は、例えば繊維強化プラスチック(FRP)によって構成される平板状の部材であって、凹部2の底面の幅方向中央に敷設されている。また、板部材61は、プレストレス部材10のロッド20の下端と互いに固定されている。
【0035】
なお、ロッド20と板部材61との固定は、板部材61に設けられた凹部2にロッド20の下端が嵌合することによるものであってもよいし、ロッド20の下端外周面に形成された雄ネジが板部材61に形成された凹孔の雌ネジに螺合することによるものであってもよい。また、ロッド20と板部材61とは必ずしも互いに固定されている必要はなく、ロッド20と板部材61とが互いに当接することにより接続された構成であってもよい。
【0036】
コンクリート体62は、凹部2内における板部材61の上方には、凹部2内全域を埋めるようにコンクリートが充填されて形成されており、コンクリート体62にロッド20及び板部材61が一体に固定されている。コンクリート体62に使用されるコンクリートとしては、例えば砕石又は発生材と急硬性モルタルとの混合体から構成されていることが好ましい。
【0037】
上記のようなプレストレスト・バラスト軌道100によれば、アンカー部60を介して路盤1に固定されたロッド20の上端に接続された拘束部材30が、拘束部材30に接触する連結部4bを下方に向かって押圧をする。この際、連結部4bからバラスト3に与えられる押圧力はバラスト3を上下方向に圧縮する拘束力として作用し、これによって、バラスト3に対してプレストレスが付与される。そして、このプレストレスによってバラスト3が鉛直方向に拘束されることにより、軌道沈下を抑制することができる。
【0038】
また、プレストレス部材10における拘束部材30が上下方向、即ち、プレストレスが付与される方向に弾性変位可能とされているため、列車の走行によりバラスト3に塑性変形が生じた場合であっても拘束部材30が当該塑性変形に追従して弾性変形する。
【0039】
即ち、バラスト3に塑性変形が生じた場合であっても、拘束部材30のバネ部材31の長手方向両端側の弾性変位が緩むもののバネ部材31によるレール固定部材4である連結部4bの下方に向かっての押圧は継続される。
このように、プレストレス部材10がレール固定部材4である連結部4bと路盤1との間においてバラスト3を弾性拘束するため、バラスト3が塑性変形した場合であってもバラスト3に対するプレストレスの急激な消失を回避することができる。
【0040】
ところで、プレストレスト・バラスト軌道100に横まくらぎを用いた場合は、バラスト3への拘束力を確保し安定して軌道沈下を抑えるために、原則としてすべての横まくらぎを拘束する必要があり、大量のプレストレス部材10が必要である。
しかしながら、軌道に沿って延在するレール固定部材4の隣接する部分にプレストレス部材10がくるようレール固定部材4の長手方向に沿ってプレストレス部材10が配置されることでプレストレス部材10の設置数量を低減することができる。さらに、プレストレス部材10を設置していない部分ではレール固定部材4の剛性によって軌道沈下を抑え、レール固定部材4で対応することができないレール固定部材4の隣接する部分をプレストレス部材10でバラスト3を拘束することで軌道沈下を抑えることができる。
これらにより、プレストレス部材10の設置数量を抑え、少ないプレストレス部材10で軌道沈下抑制効果を長時間にわたって継続することが可能となる。
【0041】
さらに、レール固定部材4である一対の縦梁部4aが軌道に沿って延在しており、それぞれの縦梁部4aの上面にレール5が締結され、これらが連結部4bで連結されることでラダーまくらぎが形成されている。そのため、左右一対の縦梁部4aが連結部4bで連結された剛性の高い構造となることで、曲げ剛性を高めて上側に配置されたレール5を列車が通過し荷重の局所的な集中を受けてもレール固定部材4によって緩和することができ、横まくらぎや縦梁部4aだけでレール固定部材4が構成されている場合に比べて軌道沈下をより小さくすることができる。これにより、プレストレス部材10の設置数量を抑え、少ないプレストレス部材10でより軌道沈下抑制効果を長時間に亘って維持することが可能となる。
【0042】
また、レール固定部材4の隣接する部分であるつなぎ目では縦梁部4aが不連続となっているため、路盤1条件等によってバラスト3の局所的な変形が生じ軌道にずれが発生する恐れがある。しかしながら、隣接するレール固定部材4の一対の連結部4bに対して一つのプレストレス部材10によって共にプレストレスを付与することで、レール固定部材4の隣接するつなぎ目部分のバラスト3が拘束され、ずれを抑制することができる。さらに、隣接するレール固定部材4が連結部4bを介して下方である鉛直方向に拘束されることで、水平方向である軌道の延在方向と幅方向との抵抗量も向上し耐震性を向上させることが可能となる。
【0043】
さらに、拘束部材30として隣接するレール固定部材4の連結部4bにわたって配置されるバネ部材31を採用していることにより、簡易な構造でもってバラスト3の塑性変形に適切に追従しながらバラスト3を拘束することができる。これにより、設置コストやメンテナンスコストを低く抑えることができる。
【0044】
また、凹部2に敷設された板部材61と該板部材61上に充填されたコンクリートとから構成されているため、ロッド20の下端を路盤1に対して確実に固定することができる。
【0045】
さらに、押圧力が作用する隣接するレール固定部材4の連結部4bの直下に板部材61が配置されているため、拘束部材30から連結部4bに付与される押圧力の反力は、ロッド20を介して板部材61に伝達される。このように板部材61に伝達された反力は、コンクリートを介してバラスト3に上方向への力として付与される。これによって、バラスト3に付与される拘束力を向上させることができ、即ち、プレストレス部材10によるプレストレスをバラスト3に対して確実かつ効果的に付与することができる。よって、軌道沈下をより効果的に抑制することができる。
【0046】
また、アンカー部60の板部材61の材料として繊維強化プラスチックを用いているため、例えば鋼材等を用いる場合に比べて板部材61の重量を軽減することができ、重機の使用が困難な現場での施工性を向上させることができる。
【0047】
次に、
図6を参照して第二実施形態のプレストレスト・バラスト軌道100について説明する。
第二実施形態においては第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を伏して詳細な説明を省略する。この第二実施形態のプレストレスト・バラスト軌道100は、設置される路盤1が異なる剛性を有する点について、第一実施形態と相違する。
【0048】
即ち、第二実施形態では、バラスト3が第一実施形態と同様に盛り土によって構成された路盤1と、コンクリートで構成された橋梁路盤1aとに跨ってレール固定部材4が設けられている。例えば、レール5が橋梁上を通過しており、橋梁と地面との境にレール固定部材4が設けられている場合である。つまり、路盤1と橋梁路盤1aとの境界部分の上側をレール固定部材4が通過するよう配置されている。
また、橋梁路盤1aに設置されるプレストレス部材10には、アンカー部60が設けられず直接ロッド20が橋梁路盤1a自体に固定されている。
【0049】
次に、上記第二実施形態のプレストレスト・バラスト軌道100の作用について説明する。
上記のようなプレストレスト・バラスト軌道100によれば、レール固定部材4が盛り土で構成された路盤1とコンクリートで構成された橋梁路盤1aとの異なる剛性を有する路盤1間の境界部分に跨って配置されていることで、レール固定部材4の剛性によって境界部分の軌道沈下を抑えることができる。これによって、剛性の異なる路盤1間における軌道を安定させることができる。また、地震が発生し路盤1が大きく振動した場合に、盛り土で構成された路盤1とコンクリートで構成された橋梁路盤1aとでは、路盤1の剛性が異なることで振動に対する応答変位特性の違いが生じ不同沈下が発生し軌道が傾くことをレール固定部材4の剛性によって抑えることができ、軌道上を走行する列車の安定性を向上させることが可能となる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
【0051】
なお、本実施形態では、凹部2の軌道の幅方向の寸法が、連結部4bの軌道の幅方向の寸法と略同一に設定されているが、凹部2の軌道の幅方向の寸法は任意に設定することができる。例えば、凹部2の軌道の幅方向の寸法は、例えば一対のレール5の間隔よりも小さく設定されていてもよい。この場合は、アンカー部60の板部材61は、例えば凹部2の底面全域を覆うように該底面に敷設される。
また、凹部2の軌道の延在方向の寸法は、平面視にて隣接するレール固定部材4の連結部4bが凹部2の範囲内に収容される程度の大きさに設定されていることが好ましい。
【0052】
さらに、この他、例えば路盤1に形成された凹部2が、軌道の幅方向外側に向かうに従って漸次上方に傾斜する傾斜面を有していてもよい。これによって、凹部2内のコンクリートは、凹部2の傾斜面に従って、上方に向かうに従って軌道の幅方向外側に広がるように充填される。この場合、板部材61に与えられる反力を、コンクリートを介して軌道幅方向の広範囲にわたって下方からバラスト3に作用させることができる。よって、バラスト3に対してプレストレス部材10に基づくプレストレスを広範囲にわたって付与することができる。
【0053】
また、プレストレスト・バラスト軌道100において、例えば、軟弱地盤改良の改良体をアンカー部60として使用してもよい。即ち、凹部2が実施形態で示した場合に比べて深く形成されており、当該凹部2内に満たされた攪拌混合杭にロッド20が直接的に固定されている。
さらに、凹部2を形成することなく、路盤1の内部に空間を形成し、当該空間にロッド20を挿入するととともに該空間に薬液注入固化体が充填されていても良い。即ち、ロッド20は、薬液注入固化体によって固定されている。
これらの場合であっても実施形態と同様、ロッド20を確実に固定することができる。
【0054】
また、実施形態においてはロッド20の上端側の外周面にロックナット21を設けた構成としたが、拘束部材30の少なくとも上方向への相対移動を規制することができるならばロックナット21に限られず、他の部材であってもよい。
【0055】
さらに、拘束部材30による連結部4bの押圧力を増加させるには、ロックナット21を回転させて下方に変位させればよい。これにより、ロックナット21から拘束部材30に付与される押圧力の増加に加えて、拘束部材30の長手方向両端側の部分がさらに上方に向かって弾性変形することによる弾性力の増加によって、連結部4bへの押圧力を増加させることができる。
【0056】
また、バネ部材31は、板バネを用いることが好ましい。また、複数枚の板バネを締着シート等によってまとめることで、一つのバネ部材31として用いてもよい。