(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973940
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】タンデム型メカニカルシール装置
(51)【国際特許分類】
F16J 15/34 20060101AFI20160809BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20160809BHJP
F04D 29/08 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
F16J15/34 J
F04B39/00 104A
F04D29/08 C
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-50868(P2013-50868)
(22)【出願日】2013年3月13日
(65)【公開番号】特開2014-177966(P2014-177966A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 良太
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 博之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 直人
【審査官】
長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−012238(JP,A)
【文献】
特開2003−185030(JP,A)
【文献】
特開2012−241784(JP,A)
【文献】
特開2003−074712(JP,A)
【文献】
特開平09−004720(JP,A)
【文献】
特開平09−068284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/34
F04B 39/00
F04D 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと当該ケーシングを貫通する回転軸との間において当該回転軸の軸方向に所定間隔離して互いに並列に配置された一対のメカニカルシールと、これら両メカニカルシールの間に形成された環状の封液室と、前記封液室において前記回転軸側に一体回転可能に外嵌され、前記封液室内の封液を循環させる循環リングとを備え、前記ケーシングに、前記循環リングの外周近傍で開口しており前記封液室に封液を供給する供給口を有する供給路と、前記循環リングの外周近傍で開口しており前記封液室の封液を外部に排出する排出口を有する排出路とが形成されたタンデム型メカニカルシール装置であって、
前記ケーシングには、一端が前記封液室内の前記回転軸の外周近傍で開口し、他端が前記排出口の近傍で開口する吐出孔と、一端が前記封液室内の前記回転軸の外周近傍で開口し、他端が前記供給口の近傍で開口する導入孔とが形成されていることを特徴とするタンデム型メカニカルシール装置。
【請求項2】
前記吐出孔は、前記他端から前記一端側に向かって、前記循環リングの外周に沿って封液が流れる方向と逆方向に延びる逆方向孔部を有している請求項1に記載のタンデム型メカニカルシール装置。
【請求項3】
前記導入孔は、前記他端から前記一端側に向かって、前記循環リングの外周に沿って封液が流れる方向と同じ方向に延びる順方向孔部を有している請求項1又は2に記載のタンデム型メカニカルシール装置。
【請求項4】
前記供給口が、前記循環リングよりも軸方向一方側に形成され、前記導入孔の前記一端の開口が、前記循環リングよりも軸方向他方側に形成されており、
前記循環リングの外周には、軸方向全長に亘って切欠溝が形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のタンデム型メカニカルシール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンデム型メカニカルシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、低沸点液体である被密封液体を扱うポンプ等の回転機器の軸封装置として、被密封液体が大気へ漏洩するのを抑えるために、2組のメカニカルシールが前記回転機器の回転軸の軸方向に所定間隔離して互いに並列に配置されたタンデム型メカニカルシール装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
図5は、従来のタンデム型メカニカルシール装置を示す断面図である。
図5に示すように、従来のタンデム型メカニカルシール装置は、回転機器のケーシング101と回転軸102との間に配置された機内側(図中の右側)の第1メカニカルシール103と、機外側(図中の左側)の第2メカニカルシール104とを備えている。
【0003】
第1及び第2メカニカルシール103,104は、ケーシング101側に取り付けられた静止密封環103a,104aと、回転軸102側に一体回転可能に取り付けられた回転密封環103b,104bとを有しており、回転密封環103b,104bが対応する静止密封環103a,104aに摺接するようになっている。第1メカニカルシール103と第2メカニカルシール104との間には、封液(緩衝液)を溜め込む環状の封液室120が形成されている。
【0004】
ケーシング101には、封液を封液室120に供給する供給路101a、及び封液室120から封液を外部に排出する排出路101bが形成されている。供給路101aから封液室120に供給された封液は、回転軸102に一体回転可能に取り付けられた循環リング105により循環され、排出路101bから外部に排出される。このように封液室120で封液を循環させることにより、第1及び第2メカニカルシール103,104が冷却されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4000324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来のタンデム型メカニカルシール装置にあっては、第1及び第2メカニカルシールの静止密封環が激しく摩耗したり回転側密封環が割れたりすることで、第1及び第2メカニカルシールのシール性能が低下するという問題があった。
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、メカニカルシールのシール性能が低下するのを抑制することができるタンデム型メカニカルシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、メカニカルシールのシール性能が低下する原因について究明したところ、第1メカニカルシールから封液室に漏洩した被密封液体が気化し、この気化したガスが封液室内に充満するためであることを突き止めた。具体的には、封液室に漏洩した被密封液体が気化すると、この気化したガスと封液とが封液室に混在する。しかし、両者には比重差があるため、比重の大きい封液は回転軸の回転に伴う遠心力により径方向外側に移動して排出路から排出されるが、比重の小さいガスは径方向内側、つまり回転軸の外周近傍に滞留し易い。このため、封液室にガスが充満されて封液が不足することにより、第1及び第2メカニカルシールの静止密封環及び回転密封環は互いの摩擦熱によって高温となる。これにより、回転側密封環よりも軟質の材料(カーボン等)からなる静止側密封環が激しく摩耗する。また、その後、何らかの理由で被密封液体の漏洩が止まった場合、封液が封液室に充満することで、第1及び第2メカニカルシールの回転密封環は高温の状態から急冷される。これにより、回転密封環の素材(炭化ケイ素等)が激しい温度差によって割れることが判明した。
【0008】
本発明はかかる知見に基づいてなされたものであり、ケーシングと当該ケーシングを貫通する回転軸との間において当該回転軸の軸方向に所定間隔離して互いに並列に配置された一対のメカニカルシールと、これら両メカニカルシールの間に形成された環状の封液室と、前記封液室において前記回転軸側に一体回転可能に外嵌され、前記封液室内の封液を循環させる循環リングとを備え、前記ケーシングに、前記循環リングの外周近傍で開口しており前記封液室に封液を供給する供給口を有する供給路と、前記循環リングの外周近傍で開口しており前記封液室の封液を外部に排出する排出口を有する排出路とが形成されたタンデム型メカニカルシール装置であって、前記ケーシングには、一端が前記封液室内の前記回転軸の外周近傍で開口し、他端が前記排出口の近傍で開口する吐出孔と、一端が前記封液室内の前記回転軸の外周近傍で開口し、他端が前記供給口の近傍で開口する導入孔とが形成されていることを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、被密封液体が封液室に漏洩して気化したガスを、封液と共に回転軸の外周近傍から吐出孔を通じて排出路の排出口に導くことができる。これにより、封液室で気化したガスを外部へ排出することができる。また、供給路の供給口から循環リングの外周近傍に供給された封液を、導入孔を通じて封液室内の回転軸の外周近傍に、前記吐出口から排出された分だけ補充することができる。これにより、封液室内で封液が不足することに起因してメカニカルシールの温度が上昇するのを抑制することができる。その結果、メカニカルシールが激しく摩耗したり割れたりするのを抑制することができ、ひいてはメカニカルシールのシール性能が低下するのを抑制することができる。
【0010】
前記吐出孔は、前記他端から前記一端側に向かって、前記循環リングの外周に沿って封液が流れる方向と逆方向に延びる逆方向孔部を有していることが好ましい。
この場合、吐出孔の逆方向孔部では封液による動圧が発生し易くなるため、吐出孔の他端(排出口の近傍)における封液の圧力は、吐出孔の一端(回転軸の外周近傍)における封液の圧力よりも低くなる。これにより、封液室で気化したガスは、封液と共に回転軸の外周近傍から吐出孔を通じて排出口に流れ易くなるため、気化したガスを効果的に排出することができる。
【0011】
前記導入孔は、前記他端から前記一端側に向かって、前記循環リングの外周に沿って封液が流れる方向と同じ方向に延びる順方向孔部を有していることが好ましい。
この場合、循環リングの外周に沿って流れる封液は、導入孔に入り易くなるため、供給口から供給された封液を、循環リングの外周から導入孔を通じて回転軸の外周近傍に効果的に補充することができる。
【0012】
前記タンデム型メカニカルシール装置において、前記供給口が、前記循環リングよりも軸方向一方側に形成され、前記導入孔の前記一端の開口が、前記循環リングよりも軸方向他方側に形成されており、前記循環リングの外周には、軸方向全長に亘って切欠溝が形成されていることが好ましい。
この場合、循環リングよりも軸方向一方側において供給口から供給された封液を、循環リングの切欠溝を通過して循環リングよりも軸方向他方側に導入することができるため、封液室の循環リングよりも軸方向他方側において封液が不足するのを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のタンデム型メカニカルシール装置によれば、メカニカルシールのシール性能が低下するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタンデム型メカニカルシール装置を示す断面図である。
【
図5】従来のタンデム型メカニカルシール装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のタンデム型メカニカルシール装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るタンデム型メカニカルシール装置を示す側断面図である。
図1において、このタンデム型メカニカルシール装置Tは、ポンプ等の回転機器の内部に設けられ、低沸点液体である被密封液体(例えば−35℃のエチレン)をシールするものである。タンデム型メカニカルシール装置Tは、回転機器のケーシング1と、当該ケーシング1を貫通する回転軸2との間に配置されている。なお、本明細書において、
図1の左側を機外側、
図1の右側を機内側という。
【0016】
図1に示すように、タンデム型メカニカルシール装置Tは、回転軸2の軸方向に所定間隔離して互いに並列に配置された機内側の第1メカニカルシール3及び機外側の第2メカニカルシール4を備えている。これら第1メカニカルシール3と第2メカニカルシール4との間には、冷却用の封液(例えば60℃のメタノール)を収容する環状の封液室Bが形成されている。第1メカニカルシール3は、前記封液室Bと被密封液体領域Aとの間をシール(一次シール)するものであり、第2メカニカルシール4は、前記封液室Bと大気領域Cとの間をシール(二次次シール)するものである。
【0017】
機内側の第1メカニカルシール3は、ケーシング1側に取り付けられた静止密封環5と、回転軸2に一体回転可能に取り付けられた回転密封環6と、静止密封環5を回転密封環6へと押圧付勢するスプリング7とを備えている。
静止密封環5は、カーボン等の軟質材で作製され、ケーシング1にOリング8でシールした状態で軸方向に摺動自在に取り付けられた摺動リング9の機内側端部に固定されている。静止密封環5の機内側の端部には静止側密封端面5aが形成されている。
【0018】
回転密封環6は、セラミックスや超硬合金等の硬質材で作製され、回転軸2の内スリーブ2aに外嵌された状態で固定されている。回転密封環6の機外側の端部には、前記静止側密封端面5aに摺接する回転側密封端面6aが形成されている。
スプリング7は、後述する固定リング23に保持されており、摺動リング9の機外側端部に固定されたカラー10を機内側に押圧付勢している。これにより、静止密封環5には、カラー10及び摺動リング9を介してスプリング7の付勢力が作用するため、静止密封環5の静止側密封端面5aは、回転密封環6の回転側密封端面6aに押し付けられている。
【0019】
機外側の第2メカニカルシール4は、ケーシング1側に取り付けられた静止密封環11と、回転軸2に一体回転可能に取り付けられた回転密封環12と、静止密封環11を回転密封環12へと押圧付勢するスプリング13とを備えている。
静止密封環11は、カーボン等の軟質材で作製され、その機内側の端部には静止側密封端面11aが形成されている。静止密封環11は、ケーシング1のリテーナ14に対してOリング15でシールした状態で軸方向に摺動自在に取り付けられている。
【0020】
回転密封環12は、セラミックスや超硬合金等の硬質材で作製され、回転軸2の外スリーブ2bに外嵌された状態で固定されている。回転密封環12の機外側の端部には、前記静止側密封端面11aに摺接する回転側密封端面12aが形成されている。
スプリング13は、前記リテーナ14に保持されており、前記静止密封環11を機内側に押圧付勢している。これにより、静止密封環11の静止側密封端面11aは、回転密封環12の回転側密封端面12aに押し付けられている。
【0021】
タンデム型メカニカルシール装置Tは、封液室B内の封液を循環させる循環リング18を備えている。循環リング18は、封液室Bにおいて回転軸2の外スリーブ2bと一体に形成されており、内スリーブ2aにOリング19によりシールした状態で一体回転可能に外嵌されている。循環リング18の機外側の側面には、環状の凹溝18aが形成されており、この凹溝18aに第2メカニカルシール4の回転密封環12がOリング20によりシールした状態で嵌合されている。
【0022】
図2は、循環リング18を機外側から見た側面図である。
図2に示すように、循環リング18の外周には、周方向に所定間隔をあけて複数(ここでは6個)の第1切欠溝18bが形成されている。第1切欠溝18bは、側面視において凹湾曲状に形成されている。また、この第1切欠溝18bは、
図1の断面視において、その径方向の深さが循環リング18の機外側の側面から外周面の機内側端部に向かって漸次浅くなるように形成され、封液室Bの機外側の封液を径方向外方に飛ばすようになっている。
【0023】
循環リング18の外周には、周方向に所定間隔を開けて複数(ここでは2個)の第2切欠溝18cがさらに形成されている。第2切欠溝18cは、第1切欠溝18bと同様に、
図2の側面視において凹湾曲状に形成されている。また、第2切欠溝18cは、
図1の断面視において、その径方向の深さが循環リング18の軸方向全長に亘って同じ深さとなるように形成され、後述する供給路21から循環リング18の機外側に供給された封液が、循環リング18の機内側へ円滑に導入されるようになっている。
【0024】
図1において、ケーシング1には、循環リング18の外周近傍で開口しており封液室Bに封液を供給する供給口21aを有する供給路21が形成されている。供給口21aは、循環リング18よりも若干、機外側(軸方向一方側)にずれた位置に形成されている。
また、ケーシング1には、循環リング18の外周近傍で開口しており封液室B内の封液を外部に排出する排出口22aを有する排出路22が形成されている。この排出路22は、供給路21に対して周方向に約180℃の角度差をもって形成されている。排出口22aは、循環リング18の外周の径方向外方に形成されている。
【0025】
ケーシング1は、循環リング18の機内側に隣接して配置された固定リング23を有している。固定リング23は、その内周面が回転軸2(内スリーブ2a)の外周面に近接するように形成されている。また、固定リング23の機外側の側面には、先端部が循環リング18の径方向外方まで突出する環状の突出部23aが形成されている。
【0026】
固定リング23には、回転軸2の外周近傍の封液を排出口22aに導く吐出孔24が形成されている。吐出孔24の一端24aは封液室B内の回転軸2の外周近傍で開口し、吐出孔24の他端24bは前記排出口22aの近傍で開口している。
また、固定リング23には、供給口21aから供給された封液を回転軸2の外周近傍に導く導入孔25が形成されている。導入孔25の一端25aは封液室B内の回転軸2の外周近傍で開口し、導入孔25の他端25bは前記供給口21aの近傍で開口している。
【0027】
図3は、固定リング23を示す拡大断面図である。また、
図4は、固定リング23を機外側(
図3の左側)から見た側面図である。
図3及び
図4において、固定リング23の突出部23aには、排出口22aの近傍にセキ26が突設されており、循環リング18の外周に沿って図中の矢印a方向に流れる封液を、セキ26の周方向一方側の端面26aに当てることによって、循環リング18の径方向外方に配置された排出口22aに案内するようになっている。前記吐出孔24の他端24bは、セキ26の端面26aの近傍で開口している。
【0028】
図3に示すように、前記吐出孔24は、前記一端24aから径方向外側へ真っ直ぐ延びる直線孔部24cと、この直線孔部24cの径方向外端部から前記他端24bまで固定リング23の軸線方向に対して傾斜して延びる逆方向孔部24dとからなる。この逆方向孔部24dは、
図4に示すように、他端24bから直線孔部24cに向かって、循環リング18の外周に沿って封液が流れる方向(図中の矢印a方向)と逆方向に延びている。
【0029】
図3に示すように、前記導入孔25は、前記一端25aから径方向外側へ真っ直ぐ延びる直線孔部25cと、この直線孔部25cの径方向外端部から前記他端25bまで固定リング23の軸線方向に対して傾斜して延びる順方向孔部25dとからなる。この順方向孔部25dは、
図4に示すように、他端25bから直線孔部25cに向かって、循環リング18の外周に沿って封液が流れる方向(矢印a方向)と同じ方向に延びている。
【0030】
上記のように構成された本実施形態のタンデム型メカニカルシール装置Tによれば、被密封液体が第1メカニカルシール3から封液室Bに漏洩したときに、その被密封液体が気化したガスを、封液と共に回転軸2の外周近傍から吐出孔24を通じて排出路22の排出口22aに導くことができる。これにより、封液室Bで気化したガスを外部へ排出することができる。また、供給路21の供給口21aから循環リング18の外周近傍に供給された封液を、導入孔25を通じて封液室B内の回転軸2の外周近傍に、吐出口24から排出された分だけ補充することができる。これにより、封液室B内で封液が不足することに起因して両メカニカルシール3,4の静止密封環5,11及び回転密封環6,12の温度が上昇するのを抑制することができる。その結果、静止密封環5,11が激しく摩耗したり、回転密封環6,12が割れたりするのを抑制することができ、ひいては両メカニカルシール3,4のシール性能が低下するのを抑制することができる。
【0031】
また、吐出孔24は、他端24bから一端24a側に向かって、循環リング18の外周に沿って封液が流れる方向と逆方向に延びる逆方向孔部24dを有するため、この逆方向孔部24dでは封液による動圧が発生し易くなる。このため、吐出孔24の他端24b(排出口22aの近傍)における封液の圧力は、吐出孔24の一端24a(回転軸2の外周近傍)における封液の圧力よりも低くなる。これにより、封液室Bで気化したガスは、封液と共に回転軸2の外周近傍から吐出孔24を通じて排出口22aに流れ易くなるため、気化したガスを効果的に排出することができる。
【0032】
また、導入孔25は、他端25bから一端25a側に向かって、循環リング18の外周に沿って封液が流れる方向と同じ方向に延びる順方向孔部25dを有するため、循環リング18の外周に沿って流れる封液は、他端25bから導入孔25に入り易くなる。これにより、供給口21aから供給された封液を、循環リング18の外周から導入孔25を通じて回転軸2の外周近傍に効果的に補充することができる。
また、循環リング18よりも機外側において供給口21aから供給された封液を、循環リング18の第2切欠溝18cを通過して循環リング18よりも機内側に導入することができるため、封液室Bの循環リング18よりも機内側において封液が不足するのを効果的に抑制することができる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、吐出孔24の逆方向孔部24d及び導入孔25の順方向孔部25dは、固定リング23の軸線方向に対して傾斜しているが、当該軸線方向に対して平行に形成されていても良い。但し、逆方向孔部24dは、動圧を効果的に発生させるという観点では、固定リング23の軸線方向に対して傾斜して形成されているのが好ましい。また、循環リング18の第1及び第2切欠溝18b,18cの個数は、タンデム型メカニカルシール装置Tの用途及び用いられる条件に応じて、それぞれ任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 ケーシング
2 回転軸
3 第1メカニカルシール
4 第2メカニカルシール
18 循環リング
18c 第2切欠溝(切欠溝)
21 供給路
21a 供給口
22 排出路
22a 排出口
24 吐出孔
24d 逆方向孔部
25 導入孔
25d 順方向孔部
B 封液室
T タンデム型メカニカルシール装置