(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973969
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】インライン型濃度計及び濃度検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/33 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
G01N21/33
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-159836(P2013-159836)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-31544(P2015-31544A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2015年7月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100082474
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(72)【発明者】
【氏名】出口 祥啓
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 正明
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
(72)【発明者】
【氏名】山路 道雄
【審査官】
比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−142355(JP,A)
【文献】
特開平05−045279(JP,A)
【文献】
特開平10−026584(JP,A)
【文献】
特開2010−203855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED又はレーザダイオードを光源とする位相差を有する少なくとも二つの波長の混成光を発する光源部と,
光源部からの混成光を検出器本体の流体通路内へ入射する光入射部及び流体通路内を透過した混成光を受光する少なくとも二つの光検出部を備えた検出部と,
前記各光検出部の検出信号を夫々周波数解析すると共に、前記各検出信号の少なくとも二つの周波数域での光強度を用いて前記混成光の前記少なくとも二つの波長の光に対する吸光度を演算し、前記吸光度から前記流体通路内の流体濃度を演算する演算処理部と,
前記演算処理部での流体濃度の演算値を記録及び又は表示する記録表示部と,
から構成したことを特徴とするインライン型濃度計。
【請求項2】
前記光源部を、三つの波長の混成光を発する光源部とした請求項1に記載のインライン型濃度計。
【請求項3】
前記光源部を、波長域が200〜400nmの紫外光を発する光源部とした請求項1に記載のインライン型濃度計。
【請求項4】
前記演算処理部を、フーリエ変換又はウエーブレット変換により周波数解析する演算処理部とした請求項1に記載のインライン型濃度計。
【請求項5】
前記流体通路内を流通する流体が有機金属材料ガスである請求項1に記載のインライン型濃度計。
【請求項6】
一つの光入射部と少なくとも二つの前記光検出部を備えた請求項1に記載のインライン型濃度計。
【請求項7】
前記光検出部がフォトダイオードを有する請求項1に記載のインライン型濃度計。
【請求項8】
検出器本体の一側面に光入射部を、また、これと対向する一側面に光検出部を配置するようにした請求項1に記載のインライン型濃度計。
【請求項9】
前記光源部がビームコンバイナーにより混成された混成光を発する光源部とした請求項1に記載のインライン型濃度計。
【請求項10】
流体通路を有する検出器本体に設けた一つの光入射部から流体通路内へ、LED又はレーザダイオードを光源とする位相差を有する少なくとも二つの波長の光が混成された混成光を入射し、流体通路内を透過した前記混成光を光検出部で検出すると共に、光検出部で検出した前記混成光の検出信号を周波数解析し、前記検出信号について少なくとも二つの周波数域での光強度を用いて前記混成光の前記少なくとも二つの波長の光に対する吸光度を演算し、その後、前記演算した吸光度から流体通路内を流通する有機金属材料ガス濃度を演算することを特徴とする濃度検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置の原料流体供給装置等で使用するインライン型濃度計及び濃度検出方法の改良に関するものであり、殊に、濃度計の感度や再現性・測定精度の向上、小型・省スペース化及び低コスト化を可能とした紫外吸収方式のインライン型ガス濃度計及びガス濃度検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置の原料流体供給装置等では、半導体製品の品質向上を図る点から安定した濃度のプロセスガスを処理装置へ供給することが必要とされる。
そのため、従前のこの種原料流体供給装置、例えば
図7のような構成のバブリング方式の原料流体供給装置においては、温度制御された原料タンク21の原料蒸気出口の近傍に赤外吸収方式の濃度計22を設け、当該濃度計22からの濃度検出信号により原料タンク21の温度、キャリアガスCGの流量、タンク内蒸気圧力Po等を調整することにより、反応炉23へ所定の原料濃度のプロセスガス24、例えばトリメチルガリウムTMGa等の有機金属材料蒸気を含んだプロセスガスを供給するようにしている。
尚、
図7において、25はキャリアガスの熱式マスフローコントローラ、26はタンク内圧の圧力調整装置、33はキャリアガス供給ライン、34は排気ガスライン、Gは原料ガスである。また、プロセスガス24内の原料ガス源としては、液体原料だけでなく、昇華性の固体原料が使用されることもある。
【0003】
又、上記赤外吸収方式の濃度計22としては、各種構成の濃度計が実用化されているが、インライン型濃度計22としては、
図8に示すように、原料ガスGが流通する資料用セル30aおよび対照用ガスCが流通する対照用セル30bと、各セル内へ赤外光を照射する光源28と、各セル内を通過した光量の検出器29と、検出器29の検出信号から吸光度を求めて原料濃度を算出する演算装置(図示省略)等から形成されている。尚、Aはプリアンプ、Sは半導体製造装置、SCは光透過窓であり、光源28及び受光器29は一体となって上下方向へ移動し、資料用セル30a及び対照用セル30b内へ光を照射する(特開2000−206045号)。
【0004】
そして、上記
図8の濃度計22においては、資料用セル30a内におけるガスの吸光度を測定すると共に、吸光度の測定結果にランバート・ベール等の法則を適用してガス濃度を演算するようにしている。
又、光源28及び受光器29を一体として上方へスライドさせ、対照用セル30bの吸光度を検出することにより、零点調整等の測定値補正を適宜に行うようにしている。
【0005】
しかし、上記赤外吸収方式の濃度計22には、(イ)光源28の揺らぎが比較的大きく、検出器29の安定性に欠けること、及び(ロ)吸光度の平均化処理をしているため応答性が低く、所謂濃度の検出感度が相対的に悪いと云う難点が存在する。更に、(ハ)比較的長い光路長のセル30a、30bを必要とし、検出器29が大型化する上、製造コストが高くなると云う問題がある。
【0006】
又、安定したガス濃度測定を長期に亘って連続的に行う為には、光透過窓SCの透明度が長期に亘って安定している必要があり、透明度が経時変化をする場合には、安定したガス濃度測定が困難となる。
【0007】
尚、赤外吸収方式の分光光度計に於ける測定速度やS/N比等の向上を図るため、回折格子やスリットを用いる分散型光学系に代えて、干渉計を用いて非分散で全波長を同時に検出するようにした光学系を使い、検出値をフーリエ変換処理して各波長成分毎の光度を夫々演算する構成とした、フーリエ変換型赤外分光(FT-IR)型の分光光度計が開発、利用されている。
【0008】
しかし、当該FT-IR光度計を用いた濃度計であっても、測定波長域が基本的に赤外領域であるため、
光源の揺らぎに起因する測定精度や再現性が悪いと云う問題は、依然として未解決のまま残されている。
【0009】
また、光源やビームスリッター、検出器、光透過窓等を交換することにより、遠赤外から可視光まで測定周波数域を拡大することは可能であるが、交換に要する手数や赤外方式に起因する様様な問題により、現実にはその実用化が困難な状態にある。
【0010】
一方、上記赤外吸収法に於ける応答性や測定感度が悪い等の問題を解決するものとして、紫外光を用いたガス濃度測定装置が開発されている。
図9は、その装置構成の概要を示すものであり、光源28が、200〜400nmの紫外光を放射する紫外光ランプ(重水素ランプやHg−Xeランプ)から成る光源部28aと、分光器28bとから形成されている。
【0011】
即ち、当該ガス濃度測定装置は、
図9に示すように、原料ガスGが流通する資料用セル30a及び対照用ガスCが流通する対照用セル30bと、各セル内へ紫外光を照射する光源部28a及び分光器28bと、各セル内を通過した光量の検出器29と、検出器出力29aの検出信号から吸光度を求めて原料濃度を算出する演算装置(図示省略)等から形成されている。尚、31はガス精製装置、32はポンプ、35は排ガス処理装置、Mはミラー、MPは回折格子、MLはスリット、MSはセクターミラー、MGは格子ミラーである(特開2005−241249号)。
【0012】
上記紫外光方式のガス濃度測定装置は、ダブルビーム方式の分光器28bを用いて対照用セル30bの吸光度を検出し、零点調整等の測定値補正を適宜に行う構成としているものの、光学系の基本的な構成は赤外吸収方式の濃度計の場合と全く同一であるため、光源28の揺らぎが大きいこと、及び応答性や検出感度が相対的に悪いと云う問題点は、依然としてそのまま残されている。
【0013】
上述のように、従前の赤外吸収方式や紫外吸収方式の濃度計を用いた場合には、設備の小型化や設備費の低減が困難なだけでなく、濃度測定の応答性や検出感度、検出精度やその再現性、ガス気密性やガス純度の保持等の点に多くの問題が残されており、その基本的な解決が急がれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−206045号公報
【特許文献2】特開2005−241249公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、従前の原料流体供給装置等で使用する原料ガスの濃度計やこれを用いた濃度測定方法に於ける上述のような問題、即ち、イ.濃度計の構造の簡素化及び小型化並びに製品コストの引下げが容易に図れないこと、及び、ロ.濃度測定の応答性や測定感度が低いこと、ハ、測定の再現性が悪く、安定且つ高精度な原料ガスの濃度測定が出来ないこと、二、光透過窓の透明度の変化により測定精度が低下し易いこと等の問題を解決し、高腐食性の有機原料ガスであっても、長期に亘って高応答性及び高感度、高精度でもって安定した濃度測定が行え、しかも、小型で安価に製造できるようにした紫外光吸収方式のインライン型濃度計及びこれを用いた濃度測定方法を提供することを発明の主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の濃度計は、
LED又はレーザダイオードを光源とする位相差を有する少なくとも二つの波長の混成光を発する光源部と,前記光源部からの混成光を検出器本体の流体通路内へ入射する光入射部及び流体通路内を透過した混成光を受光する少なくとも二つの光検出部を備えた検出部と,
前記各光検出部
の検出信号を夫々周波数解析すると共に、前記各検出信号の少なくとも
二つの周波数域での光強度を用いて前記混成光の前記少なくとも二つの波長の光に対する吸光度を演算し、前記吸光度から
前記流体通路内の流体濃度を演算する演算処理部と,
前記演算処理部での流体濃度の演算値を記録及び又は表示する記録表示部と,を発明の基本構成とするものである。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の発明に於いて、
前記光源部を、三つの波長の混成光を発する光源部としたものである。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1の発明に於いて、
前記光源部を、
波長域が200〜400nmの紫外光を発する光源部としたものである。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1の発明に於いて、
前記演算処理部を、フーリエ変換又はウエーブレット変換により周波数解析する演算処理部としたものである。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1の発明に於いて、
前記流体通路内を流通する流体が有機金属材料ガスであるものである。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1の発明に於いて、
検出器本体の一側面に光入射部を、また、これと対向する一側面に光検出部を配置するようにしたものである。
【0022】
請求項7の発明は、請求項1の発明に於いて、
前記光検出部がフォトダイオードを有するものである。
【0023】
請求項8の発明は、
請求項1の発明に於いて、検出器本体の一側面に光入射部を、また、これと対向する一側面に光検出部を配置するようにしたものである。
【0024】
請求項9の発明は、
請求項1の発明に於いて、前記光源部がビームコンバイナーにより混成された混成光を発する光源部としたものである。
【0025】
請求項10の発明は、
流体通路を有する検出器本体に設けた一つの光入射部から流体通路内へ、LED又はレーザダイオードを光源とする位相差を有する少なくとも二つの波長の光
が混成された混成光を入射し、流体通路内を透過した前記混成光を光検出部で検出すると共に、光検出部で検出した前記混成光の検出信号を周波数解析し、前記検出信号について少なくとも二つの周波数域での光強度を用いて前記混成光の前記少なくとも二つの波長の光に対する吸光度を演算し、その後、前記演算した吸光度から流体通路内を流通する有機金属材料ガス濃度を演算することを発明の基本構成とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、
LED又はレーザダイオードを光源とする位相差を有する少なくとも二つの波長の混成光を発する光源部と,
光源部からの混成光を検出器本体の流体通路内へ入射する光入射部及び流体通路内を透過した混成光を受光する少なくとも二つの光検出部を備えた検出部と,
前記各光検出部
の検出信号を夫々周波数解析すると共に、前記各検出信号の少なくとも
二つの周波数域での光強度を用いて前記混成光の前記少なくとも二つの波長の光に対する吸光度を演算し、前記吸光度から
前記流体通路内の流体濃度を演算する演算処理部と,
前記演算処理部での流体濃度の演算値を記録及び又は表示する記録表示部と,
から濃度計を構成するようにしている。
【0027】
その結果、従前の回折格子やスリット等を用いる分散型光学系に比較して、光学系の構成を大幅に単純且つ簡単化することができ、装置の大幅な小型化が可能となる。
【0028】
また、光源部を、LED又はレーザダイオードを用いた光源部とすることにより、従前の赤外光源の場合に比較して、消費電力が著しく減少すると共に光源寿命が大幅に延伸され、実用上極めて有利となると共に、異なる波長の紫外光を簡単且つ容易に得ることができる。
【0029】
更に、波長の異なる少なくとも二つの位相差を有する紫外光を使用し、且つ少なくとも二つの光検出部を用いて吸光度の測定をするようにしているため、高い測定精度と測定の再現性を得ることが可能となると共に、光源の所謂揺らぎ現象が略皆無となり、安定した濃度測定が可能となる。
【0030】
加えて、検出部を、流体通路を有する検出器本体と、その側面に配置した光入射部及び光検出部とから構成するようにしているため、検出部の大幅な小型化が図れ、配管路への装着や配管路からの取外しが簡単に行える。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態に係る原料流体濃度計の構成の概要図である。
【
図4】有機金属材料ガスの紫外光吸光(透過)特性の一例を示すものである。
【
図5】(a)〜(c)は、演算処理部に於ける検出値処理の説明図である。 (d)は、演算した吸光度マトリックスα、β、γの説明図である。
【
図6】本発明に係るガス濃度計の適用例を示す図である。
【
図7】従前のインライン型ガス濃度計の適用例を示す図である。
【
図8】従前のインライン型ガス濃度計の構成の概要図である。
【
図9】従前の紫外吸収型ガス濃度計の構成の概要図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る原料流体の濃度計の構成概要図である。
本発明の原料ガスの濃度計GDは、LED光源1aを備えた光源部1と、光入射部9と流体通路6aを有する検出器本体6と光検出部10を備えた検出部2と、演算処理部3と記録・表示部4等から構成されており、前記検出部2は後述するように、プロセス配管路内へ挿着可能なインライン型に形成されている。
【0033】
即ち、前記光源部1から波長の異なる三つの紫外光が夫々位相をずらせて放射され、ビームコンバイナー1a
4(
図2)へ入射される。入射された各紫外光はビームコンバイナー1a
4に於いて混成
され、混成光が
光ファイバ5を通して検出部2の光入射部9へ入射される。
また、検出部2の光入射部9へ入射された紫外光は、流体通路6aの原料ガスG内を透過して進行し、少なくとも2箇所の異なる位置に設けられた各光検出部10で夫々検出される。
【0034】
本実施形態では、
図2〜
図5に基づいて後述するように、LED光源1aから、波長がλ
1、λ
2、λ
3の位相差を有する三つの紫外光を発光させ、当該三つの紫外光の混成光を一基の光入射部9へ入射し、当該光入射部9から流体ガスG内へ放射した紫外光を2基の光検出部10により検出することにより、紫外光の所謂吸光度を検出する構成としていおり、第2の光検出部へは、第1の光検出部のサファイア製光透過窓9aからの反射光が入射されることになる。
【0035】
尚、図示されてはいないが、一つの光入射部9から入射光を分散させ、少なくとも二以上の光検出部10へ混成光を直接入射する構成とすることも可能である。
【0036】
また、上記2基の各光検出部10a、10bで検出された波長λ
1、λ
2、λ
3の混成光(合成光)の光検出値(光受光値)は、演算処理部3へ夫々各別に入力され、ここでフーリエ変換等により周波数解析を行なうことにより、3周波数領域成分についての光検出値強度が演算され、合計6種(2光検出部×3周波数領域)の吸光度に対応する演算値が演算される。
【0037】
そして、上記6個の吸光度に対応する演算値のマトリックスから、最終的に流体通路6a内を流通する原料ガスの濃度が演算され、表示される。
【0038】
図2を参照して、光源部1は、マルチLED光源1aとビームコンバイナー1a
4と反射ミラー1bと光ファイバ5等から構成されており、また、前記マルチLED光源1aからは波長がλ
1、λ
2、λ
3の3種類の紫外光が発光され、ビームコンバイナー1a
4で一つの光に混成された後、反射ミラー1b及び光ファイバ5を介して検出部2へ入力される。
【0039】
尚、
図2の実施形態では、各LED光源1a
1、1a
2、1a
3の発光開始時間に差を設け、各紫外光間に位相差Φを設けるようにしているが、各LED発信器1a
1、1a
2、1a
3から同時に紫外光を発光させ、別途に設けた位相調整器(図示省略)を用いて各紫外光間に位相差Φを設けるようにすることも可能である。
【0040】
前記LED光源1aとしては、所謂マルチLEDが使用されており、本実施形態にあっては、波長域が200nm〜400nmの3色小型高輝度LEDを使用している。
尚、
図1や
図2の実施例では、光源としてLED光源を用いているが、LEDの範疇に含まれる所謂LD(レーザダイオード)を光源としても良いことは勿論である。
【0041】
前記検出部2は、
図3に示すように、検出器本体6、1基の光入射部9及び2基の光検出部10a、10b等から形成されている。
また、前記検出器本体6はステンレス鋼製であり、その内部には流体通路6aが設けられている。
更に、検出器本体6の両側部には、ガスケット型シール11を介して入口ブロック7及び出口ブロック8がボルト(図示省略)により気密に固定されている。尚、6bは漏洩検査用孔、6cは光入射部9の取付孔、6dは光検出部10の取付孔である。
【0042】
上記光入射部9は、検出器本体6の上面側に配置されており、また、上記光検出部10a及び10bは、検出器本体6の下面側と上面側に夫々斜め対
向状に配置されており、光源部1から光ファイバ5を経て、位相差Φを有する波長λ
1、λ
2、λ
3の3種の紫外光の混成光が、前記光入射部9内のサファイア製光透過窓9aへ入射される。
【0043】
前記入射された混成光の大部分は、サファイア製光透過窓9aを透過して流体通路6a内へ入射されるが、入射された混成光の一部はサファイア製光透過窓9aにより反射され、この反射光の強度がフォトダイオード12により検出され、光源の所謂揺らぎ等の検出に用いられる。
【0044】
前記光入射部9は、第1の光検出部10aと斜め対向状に設けられており、光入射部9から入射された光の大部分は、流体通路6a内のガス流体G及び第1の光検出部10aのサファイア製光透過窓9aを通して第1の光検出部10a内のフォトダイオード12へ入射され、当該入射光の光強度が検出される。
【0045】
また、第1の光検出部10a内のサファイア製光透過窓9aへ入射された混成光は、そのサファイア製光透過窓9aへ一定の傾斜角度を持って入射されるため、ここで混成光の一部が反射される。そして、この第1の光検出部10a内からの反射光は、流体通路6aを通して上面側の第2の光検出部10bへ入射されることになる。
【0046】
前記各光検出部10a、10bに於いて検出された波長λ
1、λ
2、λ
3の混成光の各光強度は、流体通路6a内を流通する原料流体G(プロセス用流体)の吸光によって変化する、即ち、原料ガスGの濃度等によって各光強度が変化する。
尚、フォトダイオード12により検出された各光強度信号は、後述する演算処理部3へへ入力され、ここで原料流体G内の濃度が自動演算される。
【0047】
前記光入射部9及び各光検出部10a、10bは、構造的には全く同一のものであり、
図3に示すように、中央にフランジ収容孔9bを有する保持固定体9cと、検出器本体6の外表面に設けた第一固定フランジ9dと、第二固定フランジ9eと、両フランジ9d、9e間に気密に挟み込み固定したサファイア製光透過板9aと、光透過板9aの上方に位置して第一固定フランジ9dに固定したフォトダイオード12等から形成されている。
【0048】
即ち、第二固定フランジ9eと第一固定フランジ9dとは、第一固定フランジ9dの突出部を第二固定フランジ9eの凹部内へ圧入することにより、サファイア製光透過板9aを挟み込み固定した状態で気密に一体化されている。
【0049】
そして、この第二固定フランジ9eと第一固定フランジ9dを一体化したものを保持固定体9cのフランジ収容孔9b内へ挿入し、保持固定体9cを固定用ボルト(図示省略)によりガスケット型シール11を介設して検出器本体6へ押圧固定することにより、光入射部9及び各光検出部10a、10bが検出器本体6へ気密に固定されている。
【0050】
尚、
図3において、7b、8bは継手部、6bは漏洩検査用孔、6cは光入射部9の取付孔、6dは光検出部10a、10bの取付孔である。また、光入射部9及び光検出部10a、10bは、固定用ボルト(図示省略)により固定されている。
【0051】
上記
図3の実施形態においては、光入射部9を検出器本体6の上面側に、及び、光検出部10を検出器本体6の上面側と下面側に夫々配置するようにしているが、光入射部9と光検出部10を同一面側に横一列に並置することも可能である。
また、
図3の実施形態においては、光検出部10を2基としているが、当該光検出部を3基であっても、或いは4基であっても良いことは勿論であるが、測定精度や濃度計のコスト等の点から、光検出部10は2〜3基とするのが最適である。
【0052】
前記上面側の各光検出部10a、10bにおいて検出された光強度は、流体通路6a内の光路長さや流通する原料流体Gの濃度等によって変化し、吸光度に対応する検出した光強度信号は演算処理部3へ入力され、ここで原料流体内の原料濃度が演算される。
【0053】
図4は、有機金属材料ガスの紫外光に対する吸光度(透過度)特性の一例を示すものであり、波長200nm〜350nmの紫外光に対するものである。尚、
図4において、曲線E
1は0.10%TMGaガス、E
2は0.01%TMInガス、E
3は0.81%TMAlガスの紫外光透過度を夫々示すものである。
【0054】
上記原料の濃度Cdは、基本的には分光光度計で求めた吸光度Aを基にして、次の(1)式により演算される。
A=log
10(I
0/I)=ε×Cd×
L・・・(1)
但し、1式において、I
0は光入射部からの入射光強度、Iは透過光強度(光検出部10のフォトダイオード12への入射光強度)、εは原料のモル吸光係数、Cdは原料濃度、
Lは光入射部と光検出部間の距離、Aは吸光度である。
【0055】
図5の(a)を参照して、前記光源部1のマルチLED光源1aから発信された波長λ
1、λ
2、λ
3で位相差Φを有する3種の紫外光の混成光は、前記検出部2の光入射部9へ送られ、当該光入射部9から原料ガスG中へ放射される。
【0056】
上記原料ガスG内を透過した波長λ
1、λ
2、λ
3で位相差Φを有する3種の紫外光を強度変調し、ビームコンバイナー1a
4で混成された混成光は、各光検出部10a、10bへ夫々到達する。入射された混成光は、原料ガスG内を透過中に原料ガスGにより特定の波長の光が吸光され、光検出部へ入射した混成光の光強度が各フォトダイオード12により検出される。
図5の(b)は上記検出した光強度の測定値の一例を示すものであり、有機原料ガスによる吸光後の強度の変化が計測される。
尚、各光検出部10a、10bで検出された吸光後の混成光の光強度は、光の検出位置や光の波長、原料ガス濃度や透過光路距離に応じて変化し、その検出値は
図5(b)の曲線Sのようになる。
【0057】
上記各光検出部10a、10bで検出された各光強度の検出値Sは演算処理部3へ入力され、当該演算処理部3において、引き続き高速フーリエ変換による周波数解析及び三つの周波数域に於ける
光強度(即ち吸光度に対応する
光強度)の演算解析が行なわれ、ランベルト・ベールの法則により原料ガス濃度が演算される。
尚、前記演算処理部3に於ける演算解析等は、コンピュータにより自動的に演算処理される。また、
図5の(c)は、前記三つの周波数域中の波長λ
1、波長λ
2、波長λ
3の紫外光の強度変化
量を示すものであり、原料ガス濃度算出の基礎を成す吸光度に対応する
光強度値の一例を示すものである。
【0058】
更に、上記高速FFT(高速フーリエ変換)による周波数解析や各周波数域(本実施形態では3個の周波数域)での吸光度に対応する光強度変化量の演算結果から、前記演算処理部3において
図5(d)に示すような各吸光度のマトリックスα、β、γを
求め、当該吸光度マトリックスα、β、γを基にして、予め作成した原料ガスの濃度の演算アルゴリズムを用いて原料ガスGの濃度を、リアルタイムで連続的に演算する
ようにすることも可能である。
【0059】
加えて、上記
図5(d)の吸光度マトリックスの変化を基にして、濃度計の零点調整や異常の診断、例えばサファイア製光透過窓9aの曇りの発生等
を検知する
ことができ、本発明によれば、従前の紫外光を用いたF
2ガス測定装置に比較して、より高い測定精度や測定の再現性が得られるうえ、濃度測定に必要とする時間の大幅な短縮及び装置コストの引き下げが可能なことが確認されている。
【0060】
図6は、本発明に係る濃度計GDの適用例を示すものであり、濃度計GDの濃度検出値でもってタンク内圧力
制御器13及び又はキャリアガスCGの質量流量
制御器14をフィードバック制御することにより、原料ガスGの濃度を一定値に保持するようにしたものである。
尚、原料ガス発生装置15の構成そのものは
図7に示した従来技術と略同一であるため、ここではその説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本願発明は、光、特に紫外光に対する吸光性を有する原料流体であれば、液体や昇華性固体を問わず如何なる原料であっても、配管路内における流体の濃度を連続的に検出することができ、半導体製造用ガス供給系のみならず、析出性や光反応性、腐食性流体を取り扱うあらゆる流体供給管路や流体使用機器類における流体濃度の連続的検出に使用することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1は光源部
1aはLED光源
1a
1〜1a
3はLED光源
1a
4はビームコンバイナー
1bは反射ミラー
2は検出部
3は演算処理部
3aは流体通路
3bは継手部
4は記録・表示部
5は光ファイバ
6は検出器本体
6aは流体通路
6bは漏洩検査孔
6cは光入射部取付孔
6dは光検出部取付孔
7は入口ブロック
8は出口ブロック
9は光入射部
9aはサファイア製光透過窓
9bはフランジ収容孔
9cは保持固定体
9dは第一固定フランジ
9eは第二固定フランジ
10は光検出部
10a~10bは光検出部
11はガスケット型シール
12はフォトダイオード
13はタンク内圧力制御器
14は質量流量制御器
15はガス発生装置
GDはガス濃度計
Φは位相差
λ1〜λ3は波長
Sは光検出部の検出光強度曲線
E1〜E3は有機原材料に対する紫外光の透過度曲線
A
1〜A
3は波長λ1〜λ3の紫外光の光強度変化特性
α,β,γは吸光度マトリックス