特許第5973988号(P5973988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5973988-粘着剤組成物、及び粘着シート 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973988
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 121/00 20060101AFI20160809BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160809BHJP
   C09J 123/22 20060101ALI20160809BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   C09J121/00
   C09J11/06
   C09J123/22
   C09J7/02 Z
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-501077(P2013-501077)
(86)(22)【出願日】2012年2月21日
(86)【国際出願番号】JP2012054165
(87)【国際公開番号】WO2012115116
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2015年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2011-36421(P2011-36421)
(32)【優先日】2011年2月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】網野 由美子
(72)【発明者】
【氏名】上村 和恵
(72)【発明者】
【氏名】小野 義友
【審査官】 村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−330708(JP,A)
【文献】 特開平09−227845(JP,A)
【文献】 特開平02−000686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム系樹脂を70〜95質量%含有する粘着剤と、少なくともオキサジン系化合物及びナフトピラン系化合物よりなる群から選ばれるフォトクロミック性染料を含有する粘着剤組成物であって、
前記フォトクロミック性染料の含有量が、前記粘着剤100質量部に対して、0.40〜2.50質量部である、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記ゴム系樹脂としてポリイソブチレン系樹脂を含み、当該ポリイソブチレン系樹脂の含有量が、前記ゴム系樹脂中、60〜100質量%である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記ポリイソブチレン系樹脂が、重量平均分子量が30万〜50万のポリイソブチレン系樹脂(A)と、重量平均分子量が1000〜28万のポリイソブチレン系樹脂(B)とを含む、請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
ポリイソブチレン系樹脂(B)の含有量が、ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して、2〜100質量部である、請求項3に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記粘着剤は、さらに粘着付与剤を含有し、当該粘着付与剤の含有量が、前記粘着剤の全成分に対して、5〜30質量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記フォトクロミック性染料が、1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、6’−インドリノ−1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、5−クロル−1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、6’−ピペリジノ−1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、1−ベンジル−3,3−ジメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、1,3,5,6−テトラメチル−3−エチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、1,3,3,5,6−ペンタメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、及び、1,3,5,6−テトラメチル−3−エチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ピリド−(3,2−f)(1,4)−ベンゾオキサジン]、
2,2−ジフェニルナフト−(2,1−b)−ピラン、2,2−ジ(p−メトキシフェニル)ナフト−(2,1−b)−ピラン、1,3,3−トリフェニルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)−ピラン]、1−(2,3,4,5,6−ペンタメチルベンジル)−3,3−ジメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)−ピラン]、及び、1−(2−ニトロベンジル)−3,3−ジメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)−ピラン]から選ばれる1種以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
遮光シートに用いられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する、粘着シート。
【請求項9】
紫外線を5秒間照射し発色後に、紫外線照射前の状態まで色が戻り消色するまでに要する時間が10秒未満である、請求項8に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可逆的に色調が変化する光透過性のある粘着剤組成物、及びこの粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、窓ガラスや壁面、間仕切り用ガラスや透明樹脂板、自動車、バス、電車等の車輌、サングラス、眼鏡等のレンズにおいて使用され、光の透過性を調節する目的で使用される遮光シートが提案されている。
しかしながら、このような遮光シートは、特に、自動車、バス、電車等の車輌のウィンドーに貼って使用すると、屋内、雨天又は曇天、夜間又はトンネルの中では、光の透過性が低いために十分な視野が確保できず、安全性の面において問題があった。
【0003】
近年、このような問題を解決するため、フォトクロミック性染料を使用した遮光シートが提案されている(特許文献1〜4参照)。フォトクロミック性染料は、光照射により可逆的に色調が変化する。つまり、フォトクロミック性染料は、日光等の紫外線を照射することで着色する一方、紫外線が照射されない環境下では無色に戻るという特性を有している。
特許文献1〜4に開示された遮光シートは、このようなフォトクロミック性染料を遮光シートに使用しているため、紫外線が照射されている環境下でのみ遮光性を示し、それ以外の環境下では透明性を示すとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−33002号公報
【特許文献2】特開平9−32439号公報
【特許文献3】特開平10−39134号公報
【特許文献4】実公平6−36236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜4に開示された遮光シートは、有色から無色への色調変化の速度が遅い点が問題となる。つまり、これらの遮光シートを自動車、バス、電車等の車輌のウィンドーに貼付して使用した場合、日中の屋外走行では紫外線の量が十分であるため、ある程度の遮光効果が得られるものの、トンネル内等の紫外線が遮断される環境下へ入った直後は、無色に戻る速度が遅いため、ウィンドーの視野が確保されず、交通事故等の原因を誘発する可能性がある。
また、これらの遮光シートは、長時間使用した場合、含有する染料のフォトクロミック性能(発色性)が低下することや、本来無色であるべき紫外線非照射の環境下でも変色する点等の問題も有する。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、有色から無色への色調変化の速度が速く、長時間の使用に耐え得る優れた耐候性を有し、且つ剥離シートからの剥離性にも優れた粘着剤組成物及び粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定量のゴム系樹脂を含む粘着剤に対して、特定のフォトクロミック性染料を、所定の割合で含有した粘着剤組成物が上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[4]を提供するものである。
[1]ゴム系樹脂を70〜95質量%含有する粘着剤と、少なくともオキサジン系化合物及びナフトピラン系化合物よりなる群から選ばれるフォトクロミック性染料を含有する粘着剤組成物であって、前記フォトクロミック性染料の含有量が、前記粘着剤100質量部に対して、0.40〜2.50質量部である、粘着剤組成物。
[2]前記ゴム系樹脂としてポリイソブチレン系樹脂を含み、当該ポリイソブチレン系樹脂の含有量が、前記ゴム系樹脂中、60〜100質量%である、上記[1]に記載の粘着剤組成物。
[3]前記粘着剤は、さらに粘着付与剤を含有し、当該粘着付与剤の含有量が、前記粘着剤の全成分に対して、5〜30質量%である、上記[1]又は[2]に記載の粘着剤組成物。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する、粘着シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粘着剤組成物及び粘着シートは、有色から無色への色調変化の速度が速く、長時間の使用に耐え得る優れた耐候性を有し、且つ剥離シートからの剥離性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の粘着シートの構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[粘着剤組成物]
本発明の粘着剤組成物は、ゴム系樹脂を70〜90質量%含有する特定の粘着剤と、少なくともオキサジン系染料及びナフトピラン系染料よりなる群から選ばれるフォトクロミック性染料とを、所定の割合で含有することで、上記効果を奏する粘着剤組成物とすることができる。
また、本発明の粘着剤組成物は、さらに酸化防止剤や、紫外線吸収剤等のその他の添加剤を含有することができる。
以下、本発明の粘着剤組成物に含まれる、粘着剤、フォトクロミック性染料、酸化防止剤、及びその他の添加剤について詳述する。
【0011】
〔粘着剤〕
本発明の粘着剤組成物は、粘着剤として、ゴム系樹脂を含有する。ゴム系樹脂を含有することで、フォトクロミック性染料が水分に触れることによるフォトクロミック性能の低下を抑制することができる。
本発明において、ゴム系樹脂の含有量が、粘着剤の全成分に対して、70〜95質量%であるが、好ましくは73〜90質量%、より好ましくは75〜85質量%である。70質量%未満であると、ジッピングが発生するため好ましくない。また、95質量%を超えると、粘着力が低下する傾向にあるため好ましくない。
【0012】
(ゴム系樹脂)
ゴム系樹脂としては、ポリイソブチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体系樹脂、ポリブチル系樹脂等の合成ゴムや、天然ゴムを用いることができるが、ポリイソブチレン系樹脂が好ましい。
ポリイソブチレン系樹脂としては、イソブチレンの単独重合体であるポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレン、イソブチレンとn−ブテン、イソブチレンとブタジエンの共重合体、これら共重合体を臭素化又は塩素化したハロゲン化共重合体等が挙げられる。なお、共重合体の場合、イソブチレンからなる構成単位が、全モノマーの中で一番多く含まれているものとする。これらの中でも、ポリイソブチレンが好ましい。
ポリイソブチレン系樹脂の含有量は、ゴム系樹脂中、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%、より更に好ましくは実質100質量%である。
【0013】
ゴム系樹脂の重量平均分子量としては、粘着剤組成物の凝集力を向上させ、被着体への汚染を防止する観点から、好ましくは2万以上、より好ましくは5万〜600万、更に好ましくは15万〜50万である。
なお、本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されるポリスチレン換算の値を意味する。
【0014】
また、ゴム系樹脂として、ポリイソブチレン系樹脂を用いる場合、重量平均分子量が大きいポリイソブチレン系樹脂(以下、「PIB系樹脂(A)」ともいう)と、このPIB系樹脂(A)よりも、重量平均分子量が小さいポリイソブチレン系樹脂(以下、「PIB系樹脂(B)」ともいう)とを併用することが好ましい。
重量平均分子量の異なるPIB系樹脂(A)とPIB系樹脂(B)とを併用することで、PIB系樹脂(A)とPIB系樹脂(B)とが良好に相溶し、適度にPIB系樹脂(A)を可塑化させることができ、その結果、得られる粘着剤の被着体に対する濡れ性を高め、粘着物性、柔軟性、保持力等を向上させることができると考えられる。
【0015】
PIB系樹脂(A)の重量平均分子量としては、粘着剤組成物の凝集力と柔軟性及び流動性とのバランスの観点から、好ましくは30万〜50万、より好ましくは32万〜48万、更に好ましくは33万〜45万である。
重量平均分子量が30万以上であれば、粘着剤組成物の凝集力を十分であり、粘着剤の被着体への汚染を防止できる。また、50万以下であれば、粘着剤組成物が適度な柔軟性と流動性を兼ね備えることができる。また、PIB系樹脂(A)の溶媒に対する溶解性も良好となる。
【0016】
PIB系樹脂(B)の重量平均分子量としては、PIB系樹脂(A)と良好に相溶し、適度にPIB系樹脂(A)を可塑化させる観点から、好ましくは1000〜28万、より好ましくは5000〜25万、更に好ましくは1万〜22万である。
重量平均分子量が1000以上であれば、PIB系樹脂(B)が低分子量成分として分離することによる被着体への汚染を防止できる。また、28万以下であれば、PIB系樹脂(A)を十分に可塑化させることができ、得られる粘着剤の粘着物性、柔軟性、保持力等を向上させることができる。
【0017】
PIB系樹脂(B)の含有量は、粘着力及び凝集力のバランスの観点から、PIB系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは2〜100質量部、より好ましくは6〜100質量部、更に好ましくは10〜100質量部である。
PIB系樹脂(B)の含有量が2質量部以上であれば、PIB系樹脂(A)を十分に可塑化させることができ、得られる粘着剤の被着体に対する濡れ性を高め、粘着物性、柔軟性、保持力等を向上させることができる。また、100質量部以下であれば、粘着剤組成物の凝集力が十分であり、被着体への汚染を防止できる。
【0018】
(粘着付与剤)
また、本発明で用いる粘着剤は、得られる粘着剤組成物の粘着力を向上させる観点から、さらに粘着付与剤を含有することが好ましい。
粘着付与剤としては、公知の粘着付与剤が挙げられるが、粘着性組成物の耐候性を良好とし、フォトクロミック性能を維持する観点から、水素化石油樹脂が好ましい。
本発明において、水素化石油樹脂とは、水素化触媒を使用して、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、シクロペンタジエン系石油樹脂等の石油樹脂を水素化したものを意味する。
【0019】
水素化石油樹脂としては、例えば、水添テルペン系樹脂、水添ロジン及び水添ロジンエステル系樹脂、不均化ロジン、不均化ロジンエステル系樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1.3−ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂の水添加樹脂である水添ジシクロペンタジエン系樹脂、部分水添芳香族変性ジシクロペンタジエン系樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン、α−又はβ−メチルスチレン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂を水添した樹脂、上記したC5留分とC9留分の共重合石油樹脂を水添した樹脂等が挙げられる。
【0020】
粘着付与剤の含有量は、粘着剤の全成分に対して、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは10〜28質量%、更に好ましくは15〜25質量%である。5質量%以上であれば、得られる粘着剤組成物に十分な粘着力を付与することができる。また、30質量%以下であれば、十分な柔軟性を有する粘着剤組成物が得られ、ジッピングの発生を抑制することができる。
【0021】
(その他の添加剤)
また、本発明で用いる粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加剤を含有することができる。その他の添加剤としては、流動パラフィン、植物性油(例えばオリーブ油、大豆油、牛油、豚脂)、ポリブテン、低級イソプレン、ワックス等の粘着力・保持力調整剤、紫外線吸収剤、赤外線/近赤外線吸収剤、防腐・防かび剤、凍結融解安定剤、防錆剤、可塑剤、高沸点溶剤、顔料、充填剤等が挙げられる。
【0022】
〔フォトクロミック性染料〕
本発明の粘着剤組成物は、フォトクロミック性染料を含有する。
本発明で用いるフォトクロミック性染料は、フォトクロミック性性能を有し、少なくともオキサジン系化合物及びナフトピラン系化合物よりなる群から選択される染料である。
なお、本発明において、オキサジン系化合物とは、酸素原子、窒素原子をそれぞれ1原子ずつ含む6員環複素環を少なくとも含む化合物を意味する。
オキサジン系化合物としては、例えば、ナフトスピロオキサジン等が挙げられる。
ナフトスピロオキサジンとしては、例えば、1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、6’−インドリノ−1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、5−クロル−1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、6’−ピペリジノ−1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、1−ベンジル−3,3−ジメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、1,3,5,6−テトラメチル−3−エチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、1,3,3,5,6−ペンタメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、1,3,5,6−テトラメチル−3−エチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ピリド−(3,2−f)(1,4)−ベンゾオキサジン]等が挙げられる。
また、市販品としては、例えば、「T1259(製品名、東京化成工業社製)」等が挙げられる。
【0023】
一方、本発明において、ナフトピラン系化合物とは、ナフタレン環と、1個の酸素原子を有する6員環複素環とを含む化合物を意味する。
ナフトピラン系化合物としては、例えば、2,2−ジフェニルナフト−(2,1−b)−ピラン、2,2−ジ(p−メトキシフェニル)ナフト−(2,1−b)−ピラン、1,3,3−トリフェニルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)−ピラン]、1−(2,3,4,5,6−ペンタメチルベンジル)−3,3−ジメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)−ピラン]、1−(2−ニトロベンジル)−3,3−ジメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)−ピラン]等が挙げられる。
また、市販品としては、例えば、「D3197(製品名、東京化成工業社製)」等が挙げられる。
【0024】
これらのフォトクロミック性染料は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の粘着性組成物におけるフォトクロミック性染料の含有量は、前記粘着剤100質量部に対して、0.40〜2.50質量部であるが、好ましくは0.50〜2.20質量部、より好ましくは0.60〜1.80質量部、更に好ましくは0.65〜1.50である。0.40質量部未満であると、得られる粘着剤組成物に対して、十分なフォトクロミック性能を発現させることができない。また、2.50質量部を超えると、得られる粘着剤組成物及び粘着シートの耐候性が低下する。また、用いる染料の種類によっては、剥離シート付き粘着シートを作製した場合に、剥離シートからの剥離が困難となる傾向にある。
【0025】
〔酸化防止剤〕
本発明の粘着剤組成物は、さらに酸化防止剤を含むことができる。本発明の粘着剤組成物は、酸化防止剤を添加しても、フォトクロミック性能等を損なうことがなく、高湿熱に対する耐久性に優れた粘着剤組成物とすることができる。
【0026】
酸化防止剤としては、粘着剤組成物の高湿熱に対する耐久性を向上させる観点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロキシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、イソオクチル(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロキシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)1,3,5−トリアジン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、イソオクチル(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。
【0027】
これらの中でも、粘着剤組成物の高湿熱に対する耐久性を向上させるという観点から、分岐状のアルキル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、ヒンダードフェノール基のベータ位が2つともt−ブチル基であるヒンダードフェノール系酸化防止剤がより好ましい。
【0028】
ヒンダードフェノール基のベータ位が2つともt−ブチル基であるヒンダードフェノール系酸化防止剤は、長時間の駆動や屋外での駆動環境下で用いる場合において、特に耐久性の向上という酸化防止剤としての性能に優れている。
このような酸化防止剤としては、例えば、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロキシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)1,3,5−トリアジン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、イソオクチル(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。
なお、酸化防止剤の市販品としては、ヨシノックスBHT(吉富ファインケミカル社製)、IRGANOX565(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)、IRGANOX1010(BASF社製)等が挙げられる。
【0029】
本発明の粘着性組成物における酸化防止剤の含有量は、粘着剤組成物の高湿熱に対する耐久性を向上させる観点から、粘着剤100質量部に対して、好ましくは0.01〜1.0質量部、より好ましくは0.03〜0.5質量部、更に好ましくは0.04〜0.3質量部である。0.01質量部以上であれば、得られる粘着剤組成物の耐久性を十分に向上させることができる。一方、1.0質量部以下であれば、他の成分と分離して析出してしまう現象を抑制することができる。
【0030】
〔その他の添加剤〕
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわず、粘着力等の特性を阻害しない範囲で、さらにその他の添加剤を含有してもよい。
その他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、樹脂安定剤、充てん剤、顔料、増量剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
紫外線吸収剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、オキサゾリアックアシッドアミド化合物、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。市販品としては、Tinuvin765(BASS社製、ヒンダードアミン系化合物)等が挙げられる。
本発明の粘着性組成物における紫外線吸収剤の含有量は、粘着剤100質量部に対して、好ましくは0.01〜3.0質量部、より好ましくは0.03〜2.0質量部、更に好ましくは0.04〜1.0質量部である。
【0032】
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾフェノン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤等が挙げられる。
本発明の粘着性組成物における光安定剤の含有量は、粘着剤100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部である。
【0033】
樹脂安定剤としては、例えば、イミダゾール系樹脂安定剤、ジチオカルバミン酸塩系樹脂安定剤、リン系樹脂安定剤、硫黄エステル系樹脂安定剤等が挙げられる。
本発明の粘着性組成物における樹脂安定剤の含有量は、粘着剤100質量部に対して、好ましくは0.01〜3質量部である。
【0034】
[粘着シート]
本発明の粘着シートは、基材上に、上述の本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有するものである。本発明の粘着シートの構成は、特に限定されず、図1(a)に示された粘着シート1aのように、基材11上に粘着剤層12を形成した粘着シートに限られない。
例えば、図1(b)示された粘着シート1bのように、基材11上に形成した粘着剤層12上に、更に別の基材11’が形成された粘着シートや、図1(c)に示された粘着シート1cのように、基材11上に形成した粘着剤層12上に、剥離可能な剥離材13を形成した粘着シート等が挙げられる。
また、図1(d)に示された粘着シート1dのように、基材を用いずに、粘着剤層12を、剥離材13と別の剥離材13’とで挟持した粘着シートとしてもよい。なお、粘着シート1dにおいて、剥離材13と剥離材13’とは、同じ種類の剥離材を用いてもよく、互いに異なる種類の剥離材を用いてもよいが、剥離材13と剥離材13’との剥離力差が異なるように調整することが好ましい。
【0035】
粘着シートの粘着剤層の厚さとしては、用途等に応じて適宜選定されるが、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1〜60μm、更に好ましくは3〜40μmである。粘着剤層の厚さが0.5μm以上であれば、被着体に対し良好な粘着力が得られる。一方、100μm以下であれば、生産性の面で有利であり、取り扱い易い粘着シートとなり得る。
【0036】
(基材)
基材としては、特に限定されず、粘着シートの使用目的に応じて適宜選定される。
基材としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、グラシン紙等の紙基材、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等の各種紙類;各種合成紙;アルミニウム箔、銅箔、鉄箔等の金属箔;不織布等の多孔質材料からなる基材;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂、これらの混合物又は積層物からなるプラスチックフィルム又はプラスチックシート等が挙げられる。なお、プラスチックフィルム及びプラスチックシート等は、未延伸でもよいし、縦又は横等の一軸方向あるいは二軸方向に延伸されていてもよい。
用いる基材の着色の有無については問わないが、紫外線を十分に透過する基材が好ましく、可視光領域においても無色透明である基材がより好ましい。
【0037】
なお、基材には、更に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等が含有されていてもよい。
また、基材の表面又は裏面には、印刷、印字等を施してもよい。そのために、基材には、感熱記録層、熱転写、インクジェット、レーザー印字等が可能な印字受像層、印刷性向上層等が設けられてもよい。なお、不透明な基材に印刷・印字等された基材を用いた粘着シートは、該粘着シートの粘着剤層越しに印刷面を観察するような用途に使ってもよい。
【0038】
基材としてプラスチック系材料を用いる場合、基材と粘着剤層との密着性を向上させるために、必要に応じて、基材表面に対し酸化法や凹凸化法等の表面処理を施すことが好ましい。
酸化法としては、特に限定されず、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、クロム酸酸化(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。
また、凹凸化法としては、特には限定されず、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選定されるが、粘着剤層との密着性の向上効果や操作性の観点から、コロナ放電処理法が好ましい。また、プライマー処理を施すこともできる。
【0039】
また、基材に種類によっては、基材と粘着剤層との間に、所望により目止め層を設けてもよい。この目止め層は、粘着剤の基材への浸透防止の他に、基材と粘着剤層との密着性を更に向上させるために、もしくは、基材が紙類で柔軟すぎる場合には、剛性を付与するために設けられる。
目止め層としては、特には限定されないが、例えは、スチレンーブタジエン共重合体、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等を主成分として、必要に応じ、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等のフィラーを添加したもの等からなる層が挙げられる。
目止め層の厚さは、特には制限されないが、通常0.1〜30μmの範囲である。
【0040】
基材の厚さは、特に制限はないが、取り扱い易さの観点から、通常10〜250μm、好ましくは15〜200μm、より好ましくは20〜150μmである。
【0041】
(剥離材)
剥離材としては、剥離材用基材上に剥離剤を塗布して製造したものが挙げられ、両面剥離処理をされた剥離シートや、片面剥離処理された剥離シート等を用いることができる。
剥離材用基材としては、例えば、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材;これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0042】
剥離材の厚さは、特に制限ないが、通常20〜200μm、好ましくは25〜150μmである。
【0043】
(粘着シートの製造方法)
本発明の粘着シートの製造方法としては、特に制限は無く、例えば、本発明の粘着剤組成物に対して、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の有機溶媒を配合して、粘着剤組成物の溶液を調整し、基材上又は剥離材の剥離処理面上に、公知の塗布方法により、当該溶液を塗布及び乾燥し、粘着剤層を形成させて、粘着シートを得る方法等が挙げられる。
また、基材上に上記の方法で形成した粘着剤層と、別の基材とを貼り合わせれば、図1(b)に示された粘着シート1bを作製することができる。他に、基材又は剥離材上に上記の方法で形成した粘着剤層と、上述の剥離材の剥離処理面とを貼り合わせれば、図1(c)に示された粘着シート1cや、図1(d)に示された粘着シート1dとすることができる。
【0044】
粘着剤組成物の溶液の固形分濃度としては、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは10〜45質量%、更に好ましくは15〜30質量%である。当該固形分濃度が10質量%以上であれば、塗布性が良好となる。一方、60質量%以下であれば、適度な粘度となり、優れた塗工作業性を有する粘着性組成物の溶液とすることができる。
【0045】
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の方法が挙げられる。また、基材や剥離材の剥離層面に粘着剤組成物を有機溶媒に溶解した溶液を塗布した後、形成される粘着剤層中に溶媒や低沸点成分が残留することを防ぐために、80〜150℃の温度で30秒〜5分間加熱し乾燥させることが好ましい。
【実施例】
【0046】
[実施例1]
(1)粘着剤の調製
粘着剤中のゴム系樹脂として、PIB系樹脂(A)(BASF社製、製品名「Oppanol B50」、重量平均分子量35万)70質量部(固形分比)、及びPIB系樹脂(B)(BASF社製、製品名「Oppanol B30」、重量平均分子量20万)7質量部(固形分比)を用い、粘着付与剤として、水素化石油樹脂(荒川化学工業社製、製品名「アルコン P−100」、分子量500〜1000)23質量部(固形分比)を用い、これらをトルエンに溶解し、固形分濃度約25質量%の粘着剤の溶液を調製した。
(2)粘着剤組成物の調製
上記の粘着剤の固形分100質量部に対して、フォトクロミック性染料として、下記式(1)で表されるオキサジン系染料(東京化成工業社製、製品名「T1259」)0.96質量部(固形分比)を、上記の粘着剤の溶液に添加混合し、粘着剤組成物の溶液(固形分濃度:約25質量%)を得た。
(3)粘着シートの作製
基材として厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ株式会社製、製品名「ルミラー」)を用い、当該PETフィルム上に、上記の粘着剤組成物の溶液を乾燥後の厚さが20μmになるように塗工し、120℃で2分間加熱し、厚さ20μmの粘着剤層を形成させた。次いで、この粘着剤層の表面に、剥離シート(剥離材)として、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製、製品名「SP−PET380101」)の剥離処理面を貼付して、粘着シートを作製した。
【0047】
【化1】
【0048】
[実施例2]
実施例1の粘着剤組成物において、フォトクロミック性染料として用いた上記式(1)で表されるオキサジン系染料(東京化成工業社製、製品名「T1259」)の添加量を0.70質量部(固形分比)とした以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
[実施例3]
実施例1の粘着剤組成物において、粘着剤の固形分100質量部に対し、更に、紫外線吸収剤(BASF社製、製品名「Tinuvin765」、ヒンダードアミン系)0.06質量部(固形分比)と、酸化防止剤(BASF社製、製品名「IRGANOX1010」)0.06質量部(固形分比)とを添加した以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0049】
[実施例4]
実施例1の粘着剤組成物において、フォトクロミック性染料として、下記式(2)で表されるナフトピラン系染料(東京化成工業社製、製品名「D3197」)を0.96質量部(固形分比)添加した以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0050】
【化2】
【0051】
[実施例5]
実施例4の粘着剤組成物において、粘着剤の固形分100質量部に対し、更に、紫外線吸収剤(BASF社製、製品名「Tinuvin765」、ヒンダードアミン系)0.06質量部(固形分比)と、酸化防止剤(BASF社製、製品名「IRGANOX1010」)0.06質量部(固形分比)とを添加した以外は、実施例4と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0052】
[比較例1]
実施例1の粘着剤組成物において、フォトクロミック性染料として用いた上記式(1)で表されるオキサジン系染料(東京化成工業社製、製品名「T1259」)の添加量を0.32質量部(固形分比)とした以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
[比較例2]
実施例1の粘着剤組成物において、フォトクロミック性染料として用いた上記式(1)で表されるオキサジン系染料(東京化成工業社製、製品名「T1259」)の添加量を2.88質量部(固形分比)とした以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
[比較例3]
比較例2の粘着剤組成物において、粘着剤の固形分100質量部に対し、更に、紫外線吸収剤(BASF社製、製品名「Tinuvin765」、ヒンダードアミン系)0.06質量部(固形分比)と、酸化防止剤(BASF社製、製品名「IRGANOX1010」)0.06質量部(固形分比)とを添加した以外は、比較例2と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0053】
[比較例4]
実施例4の粘着剤組成物において、フォトクロミック性染料として用いた上記式(2)で表されるナフトピラン系染料(東京化成工業社製、製品名「D3197」)の添加量を2.88質量部(固形分比)とした以外は、実施例4と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
[比較例5]
比較例4の粘着剤組成物において、粘着剤の固形分100質量部に対し、更に、紫外線吸収剤(BASF社製、製品名「Tinuvin765」、ヒンダードアミン系)0.06質量部(固形分比)と、酸化防止剤(BASF社製、製品名「IRGANOX1010」)0.06質量部(固形分比)とを添加した以外は、比較例4と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0054】
[比較例6]
実施例1の粘着剤組成物において、フォトクロミック性染料として、下記式(3)で表されるスピロピラン系染料(東京化成工業社製、製品名「T0366」)を0.96質量部(固形分比)添加した以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0055】
【化3】
[比較例7]
比較例6の粘着剤組成物において、粘着剤の固形分100質量部に対し、更に、紫外線吸収剤(BASF社製、製品名「Tinuvin765」、ヒンダードアミン系)0.06質量部(固形分比)と、酸化防止剤(BASF社製、製品名「IRGANOX1010」)0.06質量部(固形分比)とを添加した以外は、比較例6と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
[比較例8]
比較例6の粘着剤組成物において、フォトクロミック性染料として用いたスピロピラン系染料(東京化成工業社製、製品名「T0366」)の添加量を2.88質量部(固形分比)とした以外は、比較例6と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
[比較例9]
比較例8の粘着剤組成物において、更に、粘着剤の固形分100質量部に対し、紫外線吸収剤(BASF社製、製品名「Tinuvin765」、ヒンダードアミン系)0.06質量部(固形分比)と、酸化防止剤(BASF社製、製品名「IRGANOX1010」)0.06質量部(固形分比)とを添加した以外は、比較例8と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0056】
[比較例10]
実施例1の粘着剤組成物において、フォトクロミック性染料として、下記式(4)で表されるヘキサアリールビスイミダゾール(HABI)系染料(関東化学社製、製品名「Pseudogem−ビス(3,3’,4,4’−テトラメトキシジフェニルイミダゾール)[2.2]パラシクロフェン」)を0.96質量部(固形分比)添加した以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0057】
【化4】
【0058】
[比較例11]
比較例10の粘着剤組成物において、フォトクロミック性染料として用いた上記式(4)で表されるヘキサアリールビスイミダゾール(HABI)系染料(関東化学社製、製品名「Pseudogem−ビス(3,3’,4,4’−テトラメトキシジフェニルイミダゾール)[2.2]パラシクロフェン」)の添加量を2.88質量部(固形分比)とし、更に、粘着剤固形分100質量部に対し、紫外線吸収剤(BASF社製、製品名「Tinuvin765」、ヒンダードアミン系)0.06質量部(固形分比)と、酸化防止剤(BASF社製、製品名「IRGANOX1010」)0.06質量部(固形分比)とを添加した以外は、比較例10と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0059】
[比較例12]
実施例1の粘着剤組成物において、粘着剤として、ブチルアクリレート(BA)及びアクリル酸(AA)からなるアクリル系共重合体(BA/AA=91.0/9.0(質量%)、重量平均分子量80万、固形分濃度34質量%)を用い、該粘着剤の固形分100質量部に対し、架橋剤として、トリレンジイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、製品名「コロネートL」、固形分濃度75質量%)を2.21質量部(固形分比)、及びフォトクロミック性染料として、上記式(1)で表されるオキサジン系染料(東京化成工業社製、製品名「T1259」)を0.96質量部(固形分比)添加した以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0060】
[比較例13]
比較例12の粘着剤組成物において、フォトクロミック性染料として用いた上記式(1)で表されるオキサジン系染料(東京化成工業社製、製品名「T1259」)の添加量を2.88質量部(固形分比)とした以外は、比較例12と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0061】
[比較例14]
比較例12の粘着剤組成物において、粘着剤として、ブチルアクリレート(BA)及びアクリル酸(AA)からなるアクリル系共重合体(BA/AA=94.0/6.0(質量%)、重量平均分子量80万、固形分濃度34質量%)を添加した以外は、比較例12と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0062】
[比較例15]
比較例14の粘着剤組成物において、フォトクロミック性染料として用いた上記式(1)で表されるオキサジン系染料(東京化成工業社製、製品名「T1259」)の添加量を2.88質量部(固形分比)とした以外は、比較例14と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0063】
[比較例16]
比較例12の粘着剤組成物において、粘着剤として、ブチルアクリレート(BA)及びアクリル酸(AA)からなるアクリル系共重合体(BA/AA=96.0/4.0(質量%)、重量平均分子量80万、固形分濃度34質量%)を添加した以外は、比較例12と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0064】
[比較例17]
比較例16の粘着剤組成物において、フォトクロミック性染料として用いた上記式(1)で表されるオキサジン系染料(東京化成工業社製、製品名「T1259」)の添加量を2.88質量部(固形分比)とした以外は、比較例16と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0065】
[比較例18]
実施例1の粘着剤組成物において、粘着剤として、ブチルアクリレート(BA)、イソブチルアクリレート(iBA)、酢酸ビニル(VAc)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、及びメタクリル酸(MAA)からなるアクリル系共重合体(BA/iBA/VAc/HEMA/MAA=44.0/44.0/5.76/6.20/0.04(質量%)、重量平均分子量80万、固形分濃度37質量%)を用い、該粘着剤の固形分100質量部に対し、架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、製品名「コロネートHL」、固形分濃度75質量%)を0.39質量部(固形分比)、及びフォトクロミック性染料として、上記式(3)で表されるスピロピラン系染料(東京化成工業社製、製品名「T0366」)を0.96質量部(固形分比)添加した以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0066】
[比較例19]
比較例18の粘着剤組成物において、フォトクロミック性染料として用いた上記式(3)で表されるスピロピラン系染料(東京化成工業社製、製品名「T1259」)の添加量を2.88質量部(固形分比)とした以外は、比較例18と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0067】
[比較例20]
実施例1の粘着剤組成物において、粘着剤として、ブチルアクリレート(BA)、エチルアクリレート(EA)、酢酸ビニル(VAc)、及びアクリルアミド(AAm)からなるアクリル系共重合体(BA/EA/VAc/AAm=56.0/27.0/17.0/2.0(質量%)、重量平均分子量100万、固形分濃度24.6質量%)を用い、該粘着剤の固形分100質量部に対し、架橋剤として、トリレンジイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、製品名「コロネートL」、固形分濃度75質量%)を3.05質量部(固形分比)、及びフォトクロミック性染料として、上記式(3)で表されるスピロピラン系染料(東京化成工業社製、製品名「T0366」)を0.96質量部(固形分比)添加した以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0068】
[比較例21]
比較例20の粘着剤組成物において、フォトクロミック性染料として用いた上記式(3)で表されるスピロピラン系染料(東京化成工業社製、製品名「T1259」)の添加量を2.88質量部(固形分比)とした以外は、比較例20と同様にして、粘着剤組成物を調製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。
【0069】
上記のようにして作製した粘着シートの評価方法は以下の通りである。これらの評価結果を表1及び2に示す。
(1)外観の評価
実施例及び比較例で作製した粘着シートを20mm×20mmの大きさに裁断し、剥離シートを除去し、表出した粘着剤面とガラス板(エヌ・エス・ジー・プレシジョン社製、製品名「コーニングガラス イーグルXG」、150mm×70mm×2mm)とをスキージーを用いて貼り合わせ、外観の評価用サンプルを作製した。
初めに、紫外線を照射していない状態において、当該評価用サンプルを目視で確認し、下記基準に基づき、着色されているか否かの評価を行った。なお、当該評価結果は、表1及び2中の「作製直後」の欄に記載している。
さらに耐光性試験機(スガ試験機社製、製品名「紫外線フェードメーターU48」、光源:カーボンアークランプ(以下、「FOM」ともいう))を用いて、当該評価用サンプルを75時間照射し、当該評価用サンプルを目視で確認し、下記基準に基づき、着色されているか否かの評価を行った。なお、当該評価結果は、表1及び2中の「FOM75h」の欄に記載している。
(外観の評価基準)
A:着色が認められず、無色である。
B:淡黄、淡赤、淡茶等の淡色の着色が若干認められる。
C:黄、赤、茶等の着色がはっきりと認められる。
D:粘着剤層の白化が認められる。
【0070】
(2)長時間の耐候性の評価
上述の通り、作製した評価用サンプルに対して、紫外線照射装置(アズワン社製、製品名「Handy UV Lamp SLUV−4」)を用いて、紫外線(波長365nm)を5秒間照射し、当該評価用サンプルを目視で確認し、下記基準に基づき、発色するか否かの評価を行った。なお、当該評価結果は、表1及び2中の「作製直後」の欄に記載している。
さらに耐光性試験機(スガ試験機社製、製品名「フェードメーターU48」、光源:カーボンアークランプ)を用いて、当該評価用サンプルを25時間、50時間、75時間照射した後のサンプルについても同様に評価した。なお、当該評価結果は、それぞれ表1及び2中の「FOM25h」「FOM50h」及び「FOM75h」の欄に記載している。
(長時間の耐候性の評価基準)
A:発色する。
F:発色しない(変化なし)。
【0071】
(3)消色時間の評価
上述の通り、作製した評価用サンプルに対して、紫外線照射装置(アズワン社製、製品名「Handy UV Lamp SLUV−4」)を用いて、紫外線(波長365nm)を5秒間照射し、当該評価用サンプルが、紫外線照射前の状態まで色が戻るのに要した時間を測定した。測定時間に応じて、以下基準に基づき、評価をした。
(消色時間の評価基準)
A:10秒未満で消色する。
B:10秒以上1分未満で消色する。
F:1分以上経っても消色しない。
【0072】
(4)剥離シートの剥離性の評価
実施例及び比較例で得られた粘着シートの剥離シートを除去する際に、剥離シートを剥離することが可能か否かを、下記基準に基づき、評価した。
(剥離シートの剥離性の評価基準)
A:剥離することが可能である。
F:重剥離により、剥離が困難である。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
実施例1〜5の粘着シートは、紫外線を75時間照射した後でも着色が抑えられ、外観は良好であった。また、消色時間も10秒未満であり、有色から無色への色調変化の速度が速いことがわかる。更に、剥離シートからの剥離性も問題がない。また、長時間の耐候性についても優れた結果が出ており、特に実施例1〜3のオキサジン系染料を用いた場合に、その効果は顕著に現れた。
一方、比較例1〜21の粘着シートは、表1及び2に示すように、外観、耐候性、消色時間、及び剥離シートからの剥離性のいずれかの点で劣る結果となった。
なお、比較例1の粘着シートは、フォトクロミック性能が発揮されてないことを確認したため、その時点で他の評価をせずに終了した。また、比較例10の粘着シートは、粘着シートの作製直後、粘着剤層が白化し透明性を有さないことを確認したため、同様に、他の評価をせずに終了した。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の粘着剤組成物、及び粘着シートは、有色から無色への色調変化の速度が速く、長時間の使用に耐え得る優れた耐候性を有し、且つ剥離シートからの剥離性にも優れている。
そのため、本発明の粘着シートは、窓ガラスや壁面、間仕切り用ガラスや透明樹脂板、自動車、バス、電車等の車輌、サングラス、眼鏡等のレンズにおいて、光の透過性を調節する目的で貼付される遮光シートの用途として好適である。
【符号の説明】
【0077】
1a、1b、1c 粘着シート
11、11’ 基材
12 粘着剤層
13、13’ 剥離材
図1