(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973995
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】フラット導電性トラックを備える電磁コイル構造、磁心および電磁角度センサ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/26 20060101AFI20160809BHJP
G01D 5/20 20060101ALI20160809BHJP
H02K 24/00 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
H02K3/26 D
G01D5/20 110H
H02K24/00
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-511601(P2013-511601)
(86)(22)【出願日】2011年5月12日
(65)【公表番号】特表2013-528345(P2013-528345A)
(43)【公表日】2013年7月8日
(86)【国際出願番号】EP2011057677
(87)【国際公開番号】WO2011147689
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年5月1日
(31)【優先権主張番号】10005569.8
(32)【優先日】2010年5月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503388120
【氏名又は名称】タイコ・エレクトロニクス・ベルギー・イーシー・ビーブイビーエー
【氏名又は名称原語表記】Tyco Electronics Belgium EC BVBA
(74)【代理人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(72)【発明者】
【氏名】オケット,トム
(72)【発明者】
【氏名】メルテンス,ヒュース
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン カウベンバージ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン トンメ,マルク
【審査官】
津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−343938(JP,A)
【文献】
特開平11−325964(JP,A)
【文献】
特開2003−088024(JP,A)
【文献】
特開2006−067756(JP,A)
【文献】
特開2008−042951(JP,A)
【文献】
特開平04−222447(JP,A)
【文献】
特開2010−117225(JP,A)
【文献】
特表2009−532689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/00− 3/28
G01D 5/20
H02K 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の磁心(102)の内周面上に実装されるための電磁コイル構造(106)であって、
前記コイル構造は、フラット導電性トラック(110)として形成された少なくとも1つの導電性巻回と、前記巻回を備えるための少なくとも1つのフレキシブル電気絶縁キャリア(112)とを備え、
前記コイル構造は、前記磁心内に磁束を誘導および/または受容するように前記磁心上に実装可能であり、
前記コイル構造は、前記磁心の磁束案内要素(104)を受容するための少なくとも1つの開口(108)を備え、
前記コイル構造は、前記磁心の前記内周面、並びに該内周面に隣接する前記磁心の上面及び下面に密着するよう、前期内周面の直線状の縁に沿って曲げられることを特徴とする電磁コイル構造。
【請求項2】
実装状態において、前記コイル構造は、ステータまたはロータの磁心をU字状に包むように二度曲げられることを特徴とする請求項1記載の電磁コイル構造。
【請求項3】
前記磁心に前記コイル構造を固定するための接着層および/または機械的固定要素(124)をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2記載の電磁コイル構造。
【請求項4】
前記フラット導電性トラックは、前記開口の周囲に螺旋状に巻かれることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の電磁コイル構造。
【請求項5】
前記コイル構造は、前記フラット導電性トラックを密封するために電気絶縁被覆層またはレジストをさらに含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の電磁コイル構造。
【請求項6】
前記コイル構造は、交互にされた導電層が電気的絶縁層によって近接する導電層から絶縁されている複数層のフレキシブル回路基板組立体を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の電磁コイル構造。
【請求項7】
複数の導電性巻回が同じ前記開口(108)の周りに備えられることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の電磁コイル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁心上への実装用の電磁コイル構造に関する。そのような磁心は、例えば、回転電気機械や電磁角度センサの一部である。さらに、本発明は、本発明の原理により構成されるステータを備える関連の磁心および電磁角度センサ(特にリラクタンスレゾルバ)に関する。さらに、本発明は、角度センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の原理は、磁心上に実装されるコイル構造を用いる幅広い様々なシステムに適用できるが、以下に多く示されるように、リラクタンスレゾルバのアプリケーション分野が期待される。特に、ドイツ国特許出願102010004887.9号明細書やドイツ国特許出願102009021444.5号明細書に示されるようなリラクタンスレゾルバは、本発明の原理を用いることで改善可能である。
【0003】
リラクタンスレゾルバは、少なくとも部分的に軟磁性のステータと少なくとも部分的に軟磁性のロータとを備える。ロータとステータは、互いに反対側にあり、互いの間に空隙を形成する。空隙内のリラクタンスは、外周について変化するロータの特定形態のために、周期的に変化する。
【0004】
角度センサは、少なくとも1つの磁極対を経由して空隙内の所定の磁束分布を生じさせるために、ステータに配置された磁束送信部を備える。さらに、同様のステータ上に、磁束検知部が配置され、所定の角度によって互いにオフセットする少なくとも2つの信号磁極対によって、磁界密度を検知する。両方の検知信号から、角度値は、ステータに対するロータの相対位置によって求める事が可能である。
【0005】
ステータとロータとの間の空隙内の様々に変化する磁束密度の原理に基づくこれらの電磁角度センサは、様々な形態であることが知られている。基本的に、送信部に磁束を生じさせるための幾つかの原理および検知部で磁界を測定するための異なる原理についても知られている。レゾルバや所謂シンクロ装置は、一次および二次巻回の形態で電磁コイルを使用する。
【0006】
そのようなレゾルバやシンクロ装置は、正確な結果を生み、非常に頑強な角度センサを表す利点がある。特には、所謂リラクタンスレゾルバが公知であり、二次巻回だけでなく一次巻回もステータに配置される一方で、ロータには巻回がない。それゆえに、特別に設計された軟磁性部を用いて磁束回路に受動的に影響を与える。例えば突起(lobes)を備えることなどとして、軟磁性ロータの不規則形態とすることによって、ステータ上の一次巻回および二次巻回間の磁束は、異なるように影響され、それゆえに、ロータの角度位置を誘導電圧から求めることが可能となる。
【0007】
幾つかの技術コンセプトは、そのようなリラクタンスレゾルバのステータを製造するためにある。第一に、磁心の1つ以上の歯にコイルを直接的に巻回することが知られている。他方で、例えば米国特許5,300,884号明細書に示されるように、電気的絶縁コイル体上に巻回をし、組立の際、磁心の歯状にこれらコイル体を嵌めることが知られている。
図9から
図11には、ドイツ国特許出願102010004887.9号明細書の原理による配置が示される。
図9に示されるように、積層され連結される金属シートから形成されるステータ202は、コイル206が装着される複数の歯204を備える。
【0008】
各コイルは、プラスチックのような電気的絶縁材料から形成されたコイル体208を備える。このコイル体上に、電気導電性巻線、例えば、ワイヤ210が巻回される。コイル同士の相互接続のために、および、コイルを電源や測定回路のような外部部品に接続するためにも、ワイヤがコンタクト212に固定される。
図11からわかるように、ワイヤのコンタクト212は、電気的接続のために上側を向いている。このことは、例えば相互接続するリード線を備えるプリント回路基板(PCB)が、例えばはんだ接続部216などによってコンタクト212へ接続されることが
図11に示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これら従来の配置では、幾つかの深刻な問題に苦しむことになる。第一に、
図11の従来技術のレゾルバは、幾つかのアプリケーション分野においては厚すぎるものであり、高さはコイルやプリント回路基板接続部の寸法によって大抵決められる。さらに、
図11の配置における多くの数のはんだ接続部216は、過度に高温かつ過度に振動下では、時間が経つと故障してしまう。
【0010】
従来のリラクタンスレゾルバの製造方法は、さらに、多くのコストおよび多くの組立時間を必要とする。最後に、レゾルバがギアボックスからオイル内で作動するアプリケーションがある。しかしながら、
図11に示されるはんだ接続部216を備えるプリント回路基板の組み合わせは、所定の活性オイルと接触する際においては、故障する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
結果的に、本発明は、従来のリラクタンスレゾルバと関連する上述の問題を克服することを目的とする。頑強で信頼性がある改善されたコイル構造、磁心および角度センサ(特に経済的で短時間でできる製造方法で製造可能である)によって問題を解決する。
【0012】
この目的は、独立項の構成要素によって解決される。本発明の好適な実施形態は、従属項の構成要素で表される。
【0013】
本発明は、特に簡易でスペースを節約できる電磁コイル構造を、フレキシブル電気絶縁キャリアとして備えられるフラット導電性トラックとして導電性巻回を形成することによって、および、コイル構造内に磁心の磁束案内要素を受容するための少なくとも1つの開口を形成することによって与えることが可能であるという思想に基づいている。そのようなコイル構造は、よく確立されたフレキシブルプリント回路基板技術によって製造可能である。ワイヤ巻回コイルを備える別体のコイル体を用いる配置と比較して、製造は、特に簡易で経済的である。
【0014】
さらに、一体化されたフラットコイルを備えるフレキシブルプリント回路基板を用いることを発明したことにより、必要とされるスペースのかなりの低減を可能にする。フラット導電性トラックの開口を貫通する磁束案内要素は、発明のシステムの機能が従来のシステムの機能と異ならないように、磁束を案内する。あるいは、磁束案内要素(極や歯としても称される)なしの磁束案内要素であっても、本発明によるフラットバンドコイル構造を用いることで製造可能である。
【0015】
十分な巻回の巻数とし、他方で特にスペースが節約されるようにコイル構造を配置するために、実装状態のコイル構造は、三次元形態を備えるために、少なくとも一度は曲げられる。特にコイル構造は、ステータやロータの磁心を包むようにU字状となるように曲げられる。
【0016】
以下詳述されるように、コイル構造は、2つ以上の巻回を含むことが通常示されるが、このことが特定のアプリケーションのために必要であるならば、唯一のフラット導電性トラックとすることも勿論可能である。さらに、以下に常に示されるように、内周上に歯を備えたステータコアが示される。しかしながら、同様に巻回に備えられるのであれば、当業者においては、本発明の電磁コイル構造をステータの外周に適用しても当然よく、ロータ上に用いられても当然よいことが明らかである。
【0017】
磁心にコイル構造を固定するために、好適には接着層が備えられてもよい。そのような接着層は、フレキシブルプリント回路基板と関連して当業者に知られている。あるいは、または加えて、弾性クリップなどの機械的な固定手段が、同じ場所に保持するために、実装されたコイル構造を押してもよい。
【0018】
従来のワイヤ巻回コイルの磁界特性にほぼ近づけるために、フラット導電性トラックは、開口の周りにおいて螺旋状に巻回される。
【0019】
特に、本発明の電磁コイル構造が苛酷な環境で用いられると、コイル構造は、フラット導電性トラックを密封するための電気的絶縁被覆層をさらに含むと好適である。
【0020】
例えば、ドイツ国特許出願102009021444.5号明細書に示されるリラクタンスレゾルバなどの幾つかの実用的なアプリケーションにおいては、2つ以上のコイルが各歯において備えられなければならない。結果的に、本発明の電磁コイル構造は、複数層のフレキシブル回路基板組立体を含んでもよい。交互にされた導電層が電気的絶縁層によって近接する導電層から絶縁される。それゆえに、特に簡易な方法で、複数のコイルを磁心に装着可能である。あるいは、2つの電磁コイル構造が磁心上に別に組み立てられることであってもよい。
【0021】
一体化されたフレキシブル回路基板内に1つの磁心のために必要となる全てのコイルを連結することによって、複数の開口が磁心の各歯を包むように周囲に配置され、複数の歯を含む磁心の内周または外周に同様に配置することによって、1つの共通の実装工程において単一部材として全てのコイルを実装することができる。このことは、一方で時間を節約するとともに、他方で複数の単一のコイルを蓄えておくためのコストと比較してコストを削減できる。さらに、これら連結コイルは、従来の配置のように別の製造工程において互いに接続される必要性がないが、磁心上にコイルを実装する前に既に相互接続されている。
【0022】
本発明の電磁コイル構造を採用するために、少なくとも1つのコイル構造を備えるための磁心は、多角形形状の周囲面を備える。結果的に、磁心は、曲面が電磁コイル構造にはないことになり、それゆえに、磁心の上面および下面上に部分的に当接するようにコイル構造を曲げることが容易である。特に、磁心は、この多角形形状の横面からそれぞれ突出する配置とされる複数の歯を含んでもよい。
【0023】
そのような磁心を製造することによく用いられる方法は、金属シートから複数の積層および連結積層から磁心を構成することによることである。
【0024】
本発明の好適な実施形態によれば、本発明の原理に基づいた電磁角度センサは、外部部品へ電気的に接続するために、圧着接続、プラグコネクタ、および/または、はんだ接続、または、レーザ接続のような標準的接続法を有する一方で、フラット導電性トラックの巻回は、フレキシブルフラットコイル構造内に一体化された電気リード線を介して少なくとも部分的に互いに接続される。
【0025】
ケーブルを完全に無くすためには、フラット接着コイル構造が対応した形状の接続領域を含むとよい。
【0026】
添付の図面は、本発明の幾つかの実施形態を説明するために、明細書の一部に組み入れられ、明細書の一部を形成する。記載内容と共にこれら図面は、本発明の原理を説明することに有用である。これら図面は、単に好適および代替の本発明の実施および使用方法を説明するためのものであり、図示および記載された実施形態のみに本発明は、限定して解釈されるべきではない。さらに、本発明において、記載された実施形態の幾つかの態様は、個別または異なる組み合わせの解決手段を形成してもよい。さらに特徴や利点は、同様の符号が同様の要素を表す添付の図面に示されるように、本発明の様々な実施形態の以下のさらに特定の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、電磁コイル構造を備える磁心の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、磁心上に実装する前の
図1のコイル構造である。
【
図4】
図4は、曲げ工程が実施される前のコイル構造の実装を説明する図である。
【
図6】
図6は、磁心上に実装されたコイル構造の別の形態を説明する図である。
【
図7】
図7は、磁心に実装される前の
図6のコイル構造を説明する図である。
【
図9】
図9は、従来の磁心および巻線コイルを示す図である。
【
図11】
図11は、PCBにはんだ付けした後の従来のリラクタンスレゾルバを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面を参照すると、
図1は、本発明におけるコイル構造106が実装されたステータ100を示す。ステータ100は、極または磁束案内要素としても称される8個の歯104が備えられた磁心102を含む。コイル構造106は、
歯104がコイル構造106に備えられた開口108を貫通するように、磁心102上に実装される。コイル構造106は、特には、開口の周り(すなわち歯104の周り)に螺旋状に巻回されるように形成されるフラット導電性トラック110やPCBに一体化された巻線コイルを含む。
【0029】
実施形態に示されるように、フラット導電性トラック110は、各歯104の周りに巻回する1つの導電体を形成するように形成される。フラット導電性トラック110は、
図1に示されるように、フレキシブル電気絶縁キャリア112上に形成される。ステータ100を
図9の対応するレゾルバ構造200と比較すると、本発明における配置は、本質的には同程度の機能を維持しながらも、従来の全ての構造よりも著しく低背である。
【0030】
さらには、当業者であればわかることであるが、フレキシブルプリント回路基板(FPCB)技術の原理によれば、コイル構造106は、各歯の位置に2つ以上のコイルを含み、様々なコイル間の相互接続を既成する複層のFPCBとして形成されてもよい。
【0031】
図1に示される実施形態において、標準的な接続技術によって外部部品との接続を可能とするために、唯一の接続領域114が備えられる必要がある。接続領域114は、これら部品(特に電源や電圧計測器)へはんだ、レーザー、圧着のいずれかで接続される幾つかの端子を備える。
【0032】
各歯104の周りの巻回に所望の巻回数を与えるために、コイル構造106は、コイル構造表面の一部において、磁心102の上面および下面に当接するように曲げられる。
【0033】
コイル構造106を上述のように曲げることを容易にするために、磁心102の内周は、直線状の縁116が、その周りに同様に曲げるためにコイル構造に現れるように、円状の断面ではなく多角形の断面とする。
【0034】
図2は、磁心上に実装される前のコイル構造106を示す図である。これは、コイル構造106が在庫として保持され、好適な実施形態においては、コイル構造106が互いに所望のパターンで個別のコイル要素118を相互接続するために全部に必要な既成のリード線を含む。この目的のために、コイル構造106は、金属リード線が埋め込まれた幾つかのフレキシブル絶縁層を備えてもよい。
【0035】
さらに、コイル構造の全ての金属部分は、好適には絶縁層によって密封されている。そのような材料としては、通常の全てのラミネート材料が用いられ、ソルダーレジストなどのレジストだけでなく、導電性のリード線として銅の積層板を備えたポリイミドやポリエステルのフィルムなども適用できる。さらには、コイル構造106を磁心102に装着するために、さらなる加熱接着や他の接着がなされてもよい。
【0036】
外部からアクセス可能とされなければならない全ての端子は、接続領域114において接触可能とされる。開口108は、歯104の断面と合うように、ほぼ長方形形状となるように形成される。勿論、開口108には、その他必要とされる形状が用いられてもよい。
【0037】
さらに、複数層のフレキシブルプリント回路基板構造は、1つ以上の歯104の位置において、2つ以上のコイル要素118を含むように設計されてもよい。あるいは、または付加的に、2つ以上のコイル構造が、本発明のステータ100を形成するために、磁心102に取り付けされてもよい。
【0038】
図3において、磁心102が示される。磁心102は、打ち抜き加工によって製造され、複数の積層された連結金属シートによって形成される。本発明において、磁心102の内周は、各歯104が曲面ではなく平面から延伸できるように、多角形断面とする。それゆえに、直線縁116は、磁心102の内周から上面および下面へ向かって離れるように各コイル要素118の曲げを容易にすることができるようにしている。
【0039】
図4には、磁心102上へのコイル構造106の実装が示される。各磁心要素は、歯104が開口108を貫通可能なように、関連する歯104に配置される。各コイル要素118は、コイル要素118の表面よりも小さい繋ぎ部120によって隣のコイル要素118に接続され、磁心102の多角形形状の内面の角に合うように容易に曲げ可能とされる。
【0040】
コイル構造106が磁心102の内周に嵌められた後、次の形成段階において、コイル要素の上部および下部は、磁心の厚みにわたって延伸し、矢印122で示されるように磁心102の中心から離れる方向に曲げられる。磁心102の表面と接触するようになるこれらの表面には、磁心102上により安定してコイル構造106を固定するために、任意であるが接着剤が塗布されてもよい。
【0041】
本発明の配置は、コイル要素をフレキシブルプリント回路基板に一体化することによって、リラクタンスレゾルバのためのステータの製造および組立に便宜がある。それゆえに、別体のコイルの必要性がなくなり、付加的なプリント回路基板を通じて接続させる必要性もなくなる。歯を取り囲む開口とフレキシブルプリント回路基板とを組み立て、ステータ全体において折り畳むことによって、レゾルバの全厚さを最小限とすることができる。それゆえに、要求されるスペースは、別体のコイルを備えた解決手段と比較しても大きく削減できる。
【0042】
結果的に、デバイスの信頼性は、従来の構造と比較して強化することが可能となる。例えば、8極において4本の端子を備えた配置においては、32個の接続が個別のコイルとプリント回路基板との間に備えられる必要がある。
【0043】
特に、例えば自動車分野などの過度の振動状況下において、信頼性を強化することが可能である。
【0044】
外側に対してコイル構造の全金属部品をシールで密封することによって、油や水に対する保護が強化される。個別のコイルとプリント回路基板との接続を別の製造工程とする必要がないので、生産時間やコストを削減可能である。一体化したコイル要素を備えたフレキシブルプリント回路基板は、上述に説明されるように簡単に組立可能である。
【0045】
さらに、成型段階、巻回段階およびはんだ付け段階において、別体のコイルを準備するための全コストを削減可能である。さらには、ロータの回転軸を横切った平面に延伸するプリント回路基板を製造するのではなく、磁心102の内径の周りに取り付けされるバンド状として革新的なフレキシブルプリント回路基板を生産することによって、材料が廃棄されることを効果的に回避できる。
図10に示される配置においては、プリント回路基板214の全中央領域が切り出され、廃棄物となってしまうが、一方でフレキシブルプリント回路基板は、廃棄材料を出すことなく、磁心の所望の全直径を生産可能である。
【0046】
最後に、ステータ全体に亘って折り曲げ可能な、フレキシブルプリント回路基板に一体化されるコイルを用いることによって、レゾルバの厚みを小さくすることが可能である。さらに薄いレゾルバも可能であり、それゆえに、アプリケーション幅が拡がる。本発明は、既に述べたように、一般的にレゾルバ、シンクロ装置および角度センサと共に用いられてもよい。
【0047】
コイル構造106を固定する別の方法が
図5に概略的に示される。ここで、成型された弾性クリップは、固定手段124として提供される。弾性クリップは、磁心102上に実装された後、コイル構造106に亘って押される。これらクリップ124は、例えば、電気絶縁性プラスチック材料から形成されもよい。
【0048】
図6は、磁心102の歯104の周りに巻回されるフラットバンドコイル構造106の別の形態を示す図である。本実施形態は、従来のワイヤ巻回コイルによって生じたものとよく似た磁界を生じさせる利点があり、特に簡易な方法で製造可能である。
【0049】
図7は、歯104の周りに巻回される前の
図6のコイル構造106を示す図である。
図8は、コイル構造106を巻回する方法の一例を示す図である。当然のことながら、図示の2回巻よりも多いようにまたは少ないように設けてもよい。
【0050】
最後に、本発明におけるコイル構造106は、歯104が備えられない磁心102上にも実装可能であることに言及しなければならない。ステータの極なしで済ます際には、その上にコイル構造102を構成するフレキシブルバンドのみを備えた状態で環状または多角形形状のステータコア102が用いられる。ロータの位置に応じて、巻回が磁界と幾分か接続され、それゆえに、信号を示す所望の角度を生じさせる。
【符号の説明】
【0051】
102・・・磁心
104・・・磁束案内要素
106・・・コイル構造
108・・・開口
110・・・フラット導電性トラック
112・・・電気絶縁キャリア
114・・・接続領域
124・・・機械的固定要素