特許第5973997号(P5973997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5973997乾燥した安定な止血用組成物を作製するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973997
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】乾燥した安定な止血用組成物を作製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/46 20060101AFI20160809BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20160809BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20160809BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   A61K37/54
   A61K37/12
   A61K9/14
   A61P7/04
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-512891(P2013-512891)
(86)(22)【出願日】2011年6月1日
(65)【公表番号】特表2013-532139(P2013-532139A)
(43)【公表日】2013年8月15日
(86)【国際出願番号】EP2011059062
(87)【国際公開番号】WO2011151384
(87)【国際公開日】20111208
【審査請求日】2014年5月8日
(31)【優先権主張番号】61/350,266
(32)【優先日】2010年6月1日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(73)【特許権者】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare SA
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ゲッスル, アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】オオサワ, アツシ エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ライク, キャリー ジェイ.
【審査官】 春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−545405(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/123903(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00−45/08
A61K 38/00−38/58
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥した安定な止血用組成物を作製するためのプロセスであって、前記プロセスは:
a)最終容器内にトロンビンの乾燥調製物を含む第1の成分を提供するために、前記最終容器内でトロンビンの水性調製物を凍結乾燥するステップと、
b)前記最終容器内で前記第1の成分と第2の成分の組合せを得るために、凍結乾燥後に、前記最終容器に、止血に使用するのに適した生体適合性ポリマーの乾燥調製物である前記第2の成分を添加するステップであって、止血に使用するのに適した前記生体適合性ポリマーが、架橋ゼラチンである、ステップと、
c)前記最終容器を仕上げて、乾燥した安定な止血用組成物として組み合わされた形態の前記第1の成分および前記第2の成分を含有する、保存可能な薬学的デバイスにするステップと
を包含する、プロセス。
【請求項2】
ステップa)およびb)が、無菌条件下で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップc)が、エチレンオキシド滅菌ステップまたは電離放射線照射による処理を含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記乾燥トロンビン調製物が粒子状形態(particulate form)である、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記乾燥トロンビン調製物が粉末形態である、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
ステップb)が、前記第1の成分および前記第2の成分を組み合わせた後に混合することをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記最終容器として、シリンジが使用される、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記シリンジが、前記乾燥した安定な止血用組成物を再構成するための薬学的に受容可能な希釈剤を含む希釈剤シリンジと一緒に仕上げられたシリンジである、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第1の成分が、ヒトトロンビンを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第1の成分が、組換えヒトトロンビンを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
止血に使用するのに適した前記生体適合性ポリマーが、粒子状材料(particulate material)である、請求項1から10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
止血に使用するのに適した前記生体適合性ポリマーが、粒状材料である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記最終容器が、滅菌放射線に曝露されるときに前記ポリマーの修飾を阻害するのに有効な量の安定剤をさらに含有する、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記滅菌放射線に曝露されるときに前記ポリマーの修飾を阻害するのに有効な前記安定剤が、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸の他の塩または抗酸化剤である、請求項13に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性のある形態の止血用組成物を作製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
生体適合性の、生分解性の乾燥した安定な粒状材料を含む、乾燥した保存安定性のある形態の止血用組成物は、例えば、特許文献1または特許文献2から公知である。これらの生成物は、止血技術分野での適用に成功している。Floseal(登録商標)は、トロンビンを含有する溶液中で膨張して流動性ペーストを形成する粒状ゼラチンマトリックスからなる、多用途の強力な止血剤の一例である。
【0003】
かかる生成物はヒトに適用されなければならないので、最終生成物およびその成分の品質、保存安定性および滅菌性に関して最高の安全標準を提供することが必要である。他方では、製造および取扱いは、可能な限り好都合で効率的に行われるべきである。止血用組成物が、使用にトロンビン成分を必要とする場合、このトロンビン成分を最終生成物で提供することは困難である。トロンビンおよびマトリックス材料は、通常、製造要件に関して異なる特性を有するので、別個に製造し、提供しなければならない。例えば、滅菌要件は、相対的に安定な粒状の(しばしば架橋もされている)マトリックス材料と、トロンビンなどのタンパク質様成分との間で著しく異なり得る。かかるマトリックス材料は、通常、強力な滅菌方法(オートクレービング、γ照射等)によって滅菌され得るのに対して、トロンビン(酵素として)は、さらに注意しながら処理しなければならない。それらの強力な滅菌方法は、かかる過酷な処理によって酵素活性の喪失が引き起こされるため、通常はトロンビンに対して可能ではない。安定性の理由から、かかる生成物(ならびに本発明の生成物)は、通常、乾燥形態で提供され、使用直前に「すぐに使用できる」形態(通常は、(ヒドロ)ゲル、懸濁液または溶液の形態である)にされるが、これには、湿潤剤または溶媒和剤(懸濁剤)を添加し、マトリックス材料の成分を、トロンビン成分と混合することが必要である。トロンビンを再構成し、またはトロンビン溶液を粒状マトリックス材料と混合するステップは、通常、ある程度の時間および取扱いを必要とし、特に集中的な健康管理において問題を引き起こすおそれがあるステップである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第98/008550号
【特許文献2】国際公開第2003/007845号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一目的は、かかる問題を克服し、好都合に提供し使用できる、乾燥した保存安定性のある止血用組成物を作製するための適切な方法を提供することである。これらの方法は、特に取扱いステップの数が可能な限り少なく保たれるべき集中治療用の医薬品において、「すぐに使用できる」止血用組成物を好都合に提供することができる製品フォーマットを提供するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
乾燥した安定な止血用組成物を作製するためのプロセスであって、前記プロセスは:
a)凝固誘発剤の乾燥調製物を含む第1の成分を提供するステップと、
b)止血に使用するのに適した生体適合性ポリマーの乾燥調製物を含む第2の成分を提供するステップと、
c)c1)最終容器内で乾燥混合物を得るために、前記第1の成分および前記第2の成分を前記最終容器に充填することによるか、
c2)または前記最終容器内で前記第1の成分と前記第2の成分の組合せを得るために、前記第1の成分もしくは前記第2の成分を前記最終容器に提供し、前記第2の成分もしくは前記第1の成分を添加することによって、
前記第1の成分および前記第2の成分を、組み合わされた形態で前記最終容器に提供するステップと、
d)前記最終容器を仕上げて、乾燥した安定な止血用組成物として組み合わされた形態の前記第1の成分および前記第2の成分を含有する、保存可能な薬学的デバイスにするステップと
を包含する、プロセス。
(項目2)
ステップc1)またはc2)が、無菌条件下で実施される、項目1に記載のプロセス。
(項目3)
ステップc2)が、前記最終容器内で前記第1の成分を提供するために、前記最終容器内で凝固誘発剤の水性調製物を凍結乾燥し、凍結乾燥後に前記第2の成分を添加することによって実施される、項目1または2に記載のプロセス。
(項目4)
ステップd)が、エチレンオキシド滅菌ステップまたは電離放射線照射による処理を含む、項目1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目5)
前記第1の成分が、好ましくは粒子状形態(particulate form)の、好ましくは粉末形態の乾燥トロンビン調製物である、項目1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目6)
前記第1の成分が、スプレー乾燥、好ましくは無菌スプレー乾燥によって得られたトロンビンを含有する、項目1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目7)
ステップc2)が、前記第1の成分および前記第2の成分を組み合わせた後に混合することによって実施される、項目1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目8)
前記最終容器として、シリンジが使用される、項目1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目9)
前記シリンジが、前記乾燥した安定な止血用組成物を再構成するための薬学的に受容可能な希釈剤を含む希釈剤シリンジと一緒に仕上げられたシリンジである、項目8に記載のプロセス。
(項目10)
前記第1の成分が、ヒトトロンビンを含む、項目1から9のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目11)
前記第1の成分が、組換えヒトトロンビンを含む、項目1から10のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目12)
止血に使用するのに適した前記生体適合性ポリマーが、ゼラチン、可溶性コラーゲン、アルブミン、ヘモグロビン、フィブリノゲン、フィブリン、カゼイン、フィブロネクチン、エラスチン、ケラチンおよびラミニン、またはその誘導体もしくは組合せからなる群より選択されるタンパク質を含有する、項目1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目13)
止血に使用するのに適した前記生体適合性ポリマーが、グリコサミノグリカン、デンプン誘導体、セルロース誘導体、ヘミセルロース誘導体、キシラン、アガロース、アルギネートおよびキトサン、またはその誘導体もしくは組合せからなる群より選択される多糖を含有する、項目1から12のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目14)
止血に使用するのに適した前記生体適合性ポリマーが、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニル樹脂、ポリラクチド−グリコリド、ポリカプロラクトン(polcaprolactone)およびポリオキシエチレン(polyoxyethlene)、ならびにその誘導体および組合せからなる群より選択されるポリマーを含有する、項目1から13のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目15)
止血に使用するのに適した前記生体適合性ポリマーが、架橋多糖、架橋タンパク質もしくは架橋された非生物学的ポリマー、またはその混合物を含有する、項目1から14のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目16)
止血に使用するのに適した前記生体適合性ポリマーが、粒子状材料(particulate material)、好ましくは粒状材料である、項目1から15のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目17)
止血に使用するのに適した前記生体適合性ポリマーが、架橋ゼラチンである、項目1から16のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目18)
前記最終容器が、滅菌放射線に曝露されるときに前記ポリマーの修飾を阻害するのに有効な量の安定剤、好ましくはアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸の他の塩または抗酸化剤をさらに含有する、項目1から17のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目19)
患者の身体の標的部位に止血用組成物を送達するための方法であって、項目1から18のいずれか一項に記載のプロセスによって生成された止血用組成物を前記標的部位に送達するステップを包含する、方法。
(項目20)
前記止血用組成物を薬学的に受容可能な希釈剤と接触させてヒドロゲル形態の止血用組成物を得るステップをさらに包含する、項目19に記載の方法。
(項目21)
項目1から18のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる、仕上げられた最終容器。
(項目22)
すぐに使用できる止血用組成物を提供するための方法であって、項目1から18のいずれか一項に記載のプロセスによって生成された止血用組成物を、薬学的に受容可能な希釈剤と接触させるステップを包含する、方法。
(項目23)
項目21に記載の仕上げられた容器と、薬学的に受容可能な希釈剤を含む容器とを含む、止血用組成物を投与するためのキット。
したがって、本発明は、乾燥した安定な止血用組成物を作製するためのプロセスを提供し、このプロセスは:
a)乾燥トロンビン調製物などの凝固誘発剤の乾燥調製物を含む第1の成分を提供するステップと、
b)止血に使用するのに適した生体適合性ポリマーの乾燥調製物を含む第2の成分を提供するステップと、
c)c1)最終容器内で乾燥混合物を得るために、前記第1の成分および前記第2の成分を前記最終容器に充填することによるか、
c2)または前記最終容器内で前記第1の成分と前記第2の成分の組合せを得るために、前記第1の成分もしくは前記第2の成分を前記最終容器に提供し、前記第2の成分もしくは前記第1の成分を添加することによって、
前記第1の成分および前記第2の成分を、組み合わされた形態で前記最終容器に提供するステップと、
d)前記最終容器を仕上げて、乾燥した安定な止血用組成物として組み合わされた形態の前記第1の成分および前記第2の成分を含有する、保存可能な薬学的デバイスにするステップと
を包含する。
【0007】
本プロセスは、医学的使用のために容易に組成物を再構成し得る好都合な方式で、本発明の乾燥した安定な組成物を提供する。本発明はさらに、患者の身体の標的部位に止血用組成物を送達するための方法であって、本発明のプロセスによって生成された止血用組成物を、前記標的部位に送達するステップを含む方法に関する。もう1つの態様によれば、本発明は、本発明のプロセスによって得られる、仕上げられた最終容器に関する。本発明はまた、すぐに使用できる止血用組成物を提供するための方法であって、本発明のプロセスによって生成された止血用組成物を、薬学的に受容可能な希釈剤と接触させるステップを含む方法、ならびに仕上げられた最終容器と、該組成物を適用するための他の手段(例えば希釈剤容器)とを含むキットに関する。本発明の組成物は、外科手術による出血部位、外傷性出血部位等を含む出血部位において止血を提供するのに特に有用である。組成物の例示的な使用は、血管カテーテル法のために作られた血管貫入部の上の組織路(tissue tract)を密封することであり得る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の具体的な実施形態の説明
本発明は、主に、好都合な単一の組成フォーマットで二成分の生成物を提供することによって、止血用組成物の送達および取扱いを改善することを提供する。本発明の止血用組成物は、乾燥トロンビン調製物などの凝固誘発剤の乾燥調製物を含む第1の成分(「トロンビン成分」)、および止血に使用するのに適した生体適合性ポリマーの乾燥調製物を含む第2の成分(「止血用生体適合性ポリマー成分」)を含有する。さらなる成分が存在することもできる。この種の生成物は、原理として当技術分野では異なるフォーマットで公知であり、通常、その成分は、別々の実体として乾燥形態で提供される。患者に投与するために成分を混合する前に、乾燥した成分を、通常、適切な希釈剤と別個に接触させる。次に、別個に再構成された成分を混合することによって、成分の混合を実施する。例えば、薬学的に受容可能な(水性)希釈剤によって再構成される、乾燥トロンビン成分を提供することができる。次に、再構成の後に得られたトロンビン溶液は、通常は後に患者に適用されるヒドロゲルの形成の下で、ポリマーを湿潤化または可溶化するために使用される。これは、生成物が「すぐに使用できる」状態になる前に少なくとも2つのステップがあるプロセスであることから、生成物がすぐに使用できる状態になる前に1ステップのみしか必要としないのならば、より好都合となる。しかし前述の通り、2つの成分の性質により、主に安定性および活性の喪失に起因して、該生成方法の過程では、成分の単純な混合が妨げられる。
【0009】
本発明では、2つの成分を、すぐに一緒に再構成される組み合わされた乾燥形態であらかじめ提供することができる生成プロセスを提供する。本発明のプロセスは、科学的なベンチ実験に対して可能なだけでなく、産業用医薬品の大量生産にも適している。本発明により、酵素活性の望ましくない分解または喪失の危険を伴わずに、あらかじめ混合されたこの止血用組成物を提供することが可能であった。得られた組成物は、既に公知の生成物に匹敵する保存安定性を有するが、本発明によって得られる生成物では、医学的な投与の前に別々に再構成し、混合する必要がないため、取扱いがより好都合である。すぐに使用できるヒドロゲルを提供することにより、適切な薬学的に受容可能な希釈剤を、最終容器内で単に組成物に添加することによって、1ステップの加工で止血用組成物の懸濁液または溶液が可能になる。最終容器は、好ましくは、希釈剤と接触させた後に、再構成した止血用組成物を直接投与するように設計されたシリンジである。
【0010】
凝固誘発剤は、トロンビン、ヘビ毒、血小板活性化因子、トロンビン受容体活性化ペプチドおよびフィブリノゲン沈殿剤からなる群より選択される物質であり、好ましくはトロンビンである。
【0011】
「乾燥トロンビン調製物」は、ヒトにおける使用に適した(すなわち薬学的に受容可能な)任意のトロンビン調製物から生成され得る。トロンビンの適切な供給源には、ヒトまたはウシの血液、血漿または血清(有害な免疫反応が予測されない場合には、他の動物源のトロンビンも適用され得る)および組換え起源のトロンビン(例えば、ヒト組換えトロンビン)が含まれ、いくつかの適用では自己由来のヒトトロンビンが好ましいことがある。好ましくは、止血用組成物は、10〜100,000国際単位(I.U.)、より好ましくは100〜10,000I.U.、特に500〜5,000I.U.のトロンビンを含有する。「すぐに使用できる」組成物におけるトロンビン濃度は、好ましくは10〜10,000I.U.、より好ましくは50〜5,000I.U.、特に100〜1,000I.U./mlの範囲である。希釈剤は、「すぐに使用できる」組成物において所望の最終濃度を達成する量で使用される。
【0012】
本発明の「生体適合性ポリマーの乾燥調製物」は、例えばWO98/08550Aから公知である。好ましくは、ポリマーは、生体適合性の、生分解性の乾燥した安定な粒状材料である。
【0013】
本発明の「乾燥した」止血用組成物は、Floseal(登録商標)などの比較できる利用可能な生成物の水分含有量におおよそ相当し得る残存水分含有量だけを有する(Flosealは、例えば乾燥生成物として約12%の水分を有する)。通常、本発明の乾燥組成物は、これらの生成物を下回る残存水分含有量、好ましくは10%を下回る水分、より好ましくは5%を下回る水分、特に1%を下回る水分を有する。本発明の止血用組成物は、より低い、例えば0.1%またはそれをさらに下回る水分含有量を有することもできる。本発明の乾燥した止血用組成物の好ましい水分含有量は、0.1〜10%、特に0.5〜5%である。
【0014】
本発明によれば、止血用組成物は、乾燥形態で最終容器に提供される。乾燥形態では、成分を分解または不活化するプロセスが著しく適切に低減されて、保存安定性が可能となる。適切な保存安定性は、トロンビン活性を基にして決定することができる。したがって、本発明の種類の乾燥した止血用組成物は、乾燥形態で室温(25℃)において24カ月間保存してから再構成した後、400I.U./ml以上(500I.U./mlの生成物に対して)がなおも存在する(すなわち、凍結乾燥する前の最初の活性と比較して、80%以上のトロンビン活性が残っている)場合に、保存安定性がある。好ましくは、本発明の組成物は、この24カ月保存した後、より高い保存安定性を有し、すなわち少なくとも90%のトロンビン活性が残り、特に少なくとも95%のトロンビン活性が残る。
【0015】
しかし、トロンビンと生体適合性ポリマーの乾燥混合物を提供することは、この混合物が乾燥形態で作製されなくてはならないことから、並大抵のことではない。可溶性(懸濁)形態の成分を混合し、次に乾燥プロセスを開始すると、許容されない材料の分解が生じる。例えば、トロンビンおよびゼラチンを4℃に保っても、24時間後には明らかな分解が見られる。
【0016】
本発明の「乾燥」ポリマーおよびトロンビンは、通常、0.1〜5,000μmの粒径で提供される。通常、本明細書で使用されるトロンビン粒子は、ポリマー粒子よりも小さくてよく、トロンビン粒子は、好ましくは、1〜100μm、特に5〜50μmの平均粒子直径を有し(「平均粒子直径」は、レーザー回折法によって測定されるメジアンサイズであり、「メジアンサイズ」(または質量メジアン粒子直径)は、度数分布を二等分する粒子直径であり、所与の調製物の粒子の50パーセントは、より大きい直径を有し、粒子の50パーセントは、より小さい直径を有する)、ポリマー粒子は10〜1000μm、特に50〜500μmの平均粒子直径(メジアンサイズ)を有する。より大きい粒子の適用は医学的な必要性に主に依存し、平均粒子直径がより小さい粒子は、生成プロセスにおける取扱いがしばしばより困難である。したがって乾燥ポリマーおよびトロンビンは、粒状形態で、特に粉末形態で提供される。粉末および粒状(または顆粒(granulate))という用語は、時に、別個のクラスの材料を区別するために使用されるが、粉末は、本明細書では粒状材料の特別なサブクラスとして定義される。特に粉末は、より細かい粒度を有し、したがって流れるときに凝集塊を形成する傾向がより高い粒状材料を指す。本発明の乾燥トロンビン粉末は、好ましくは1〜10μmのメジアンサイズを有する。粒状物には、湿潤化するとき以外は凝集塊を形成する傾向がない、より粗い粒状材料が含まれる。
【0017】
したがって、本発明は、この目的に到達するために、原理として2つの実施形態を使用する。第1の原理は、固体状態の2種類の成分を混合した後、最終容器に充填することを含み、あるいは、成分を、逐次的に最終容器に添加することができる。次に、所望に応じて最終容器を撹拌することによって、混合を達成することができる。具体的には、本発明のプロセスでステップc1)を実施するときに、粉末形態の、すなわち好ましくは1〜10μmの媒体直径(medium diameter)(メジアンサイズ)を有する乾燥トロンビンなどの凝固誘発剤の乾燥調製物を使用することが好ましい。トロンビンなどの凝固誘発剤の凍結乾燥調製物は、より大型の粒子を含むことができ、不連続な固体の多孔質相として得ることもできる(また、技術に応じて、トロンビンは凍結乾燥されている)。かかる凍結乾燥物(lyophilizate)を粒子に粉砕する場合、得られる粒子は、広範な粒径分布を有することがある。このような場合には、凍結乾燥したトロンビンなどの凝固誘発剤を製粉して粉末を得ることによって、粒径分布を狭くすることが有利である。かかる製粉では、凍結乾燥したタンパク質様材料を製粉するのに通常適用される製粉技術および装置が適用される。トロンビン粒子(特にスプレー乾燥したトロンビン粒子)などの凝固誘発剤の粒子の好ましい粒径範囲は、0.1〜500μm、より好ましくは0.5〜100μm、特に1〜50μmである。特に好ましい一実施形態によれば、第1の成分は、スプレー乾燥によって、好ましくは無菌スプレー乾燥によって得られたトロンビンを含有する。スプレー乾燥は、特にタンパク質様材料のための任意のスプレー乾燥装置で実施することができ、好ましくはこの装置は、スプレー乾燥のためにトロンビン溶液を入れる直前に滅菌される。好ましくは、スプレー乾燥ステップの後、凝集ステップを行なって、トロンビン粉末を生成する。
【0018】
第2の原理によれば、乾燥成分の1つが、最終容器に提供され、次に第2の成分が添加される。これは、乾燥形態の成分の1つを最終容器に入れ、次に第2の成分を添加することによって実施することができる。しかしこれは、溶液または懸濁液(または他の湿潤調製物)としての成分の1つを最終容器に入れ、成分を好ましくは凍結乾燥によって乾燥し、次に、乾燥プロセスが完了した後に(そのまま最終容器内で)、乾燥形態のその他の成分を添加することによって実施することもできる。好ましくは、トロンビンなどの凝固誘発剤を最終容器に提供し、次に好ましくは凍結乾燥によって乾燥し、次に第2の成分と組み合わせる。したがって、本発明の好ましい一実施形態では、ステップc2)は、前記第1の成分を前記最終容器に提供するために、前記最終容器内で、水性トロンビンを含有する組成物などの水性凝固誘発剤を含有する組成物を凍結乾燥し、凍結乾燥後に前記第2の成分を添加することによって実施される。
【0019】
好ましくは、本発明のプロセスは、無菌環境で実施され、特に最終容器内で組み合わせるステップ(ステップc1)またはc2))は、無菌で実施されるべきである。また、既に適切に滅菌された成分によって本プロセスを開始し、次にすべてのさらなるステップを無菌で実施することが好ましい。
【0020】
本方法の最終ステップは、仕上げステップである。このステップの最中、最終容器は、適切に密封され、保存および/または販売に合わせて準備される。仕上げステップは、最終容器にラベル付けし、パッケージングし、(さらなる)滅菌プロセスを実施する(例えば、最終容器で、またはパッケージされた生成物もしくは最終容器を含むキットで実施される)ことを含み得る。
【0021】
好ましくは、ステップd)は、EO(エチレンオキシド)滅菌を含む。EO滅菌は、本発明の技術分野では一般的である。エチレンオキシドガスは、細菌(およびそれらの内生胞子)、カビおよび真菌を死滅させる。EO滅菌は、低温殺菌またはオートクレービングなどの高温技術によって損傷を受けるおそれがある物質を滅菌するために使用される。
【0022】
滅菌の他の好ましい実施形態は、β照射もしくはγ照射などの電離放射線照射を適用するか、または気化した過酸化水素を使用することである。
【0023】
好ましい一実施形態によれば、最終容器は、滅菌放射線に曝露されるときにポリマーの修飾を阻害するのに有効な量の安定剤、好ましくはアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸の他の塩または抗酸化剤をさらに含有する。
【0024】
最終容器は、薬学的に投与できる化合物を収容(および保存)するのに適した任意の容器であり得る。シリンジ、バイアル、管等を使用することができるが、本発明の止血用組成物をシリンジに入れて提供することが特に好ましい。医療の実施ではシリンジの取扱いが有利であることから、シリンジは、従来技術に開示されている止血用組成物に対しても、好ましい投与手段となっている。次に組成物は、好ましくはシリンジの特定の針または適切なカテーテルを介して適用することができる(再構成した後)。再構成した止血用組成物(好ましくは、ヒドロゲルを形成するために再構成される)は、様々な他の手段によって、例えばヘラ、ブラシ、スプレーによって、圧力によって手動で、または任意の他の従来技術によって適用することもできる。通常、再構成された本発明の止血用組成物は、オリフィス、開口部、針、管または他の通路を介して、再構成された組成物を押し出して、ビーズ、層または類似の材料部分を形成することができる、シリンジまたは類似のアプリケーターを使用して適用されることになる。組成物の機械的な崩壊は、一般に0.01mm〜5.0mm、好ましくは0.5mm〜2.5mmの範囲のサイズを有する、シリンジまたは他のアプリケーターのオリフィスを介して押し出すことによって実施され得る。しかし好ましくは、止血用組成物は、最初に所望の粒径を有する乾燥形態(特に水和によって再構成されると、必須のサイズのサブユニット(例えばヒドロゲルサブユニット)をもたらす)から調製されるか、または最終的な押出しもしくは他の適用ステップの前に、必須のサイズに部分的もしくは完全に機械的に崩壊される。当然のことながら、これらの機械部品は、ヒトに使用するための安全性の要件を満たすために、滅菌形態(内側も外側も)で提供されなければならないことが明らかである。
【0025】
特に、ステップc2)が乾燥ステップと共に適用される場合、最終容器の設計は、好ましくは最終容器内での乾燥プロセスに適合され得る。
【0026】
本発明の乾燥した止血用組成物は、通常、乾燥組成物を適切な希釈剤に接触させることによって、使用前に再構成(再水和)される。本発明の希釈剤は、乾燥組成物を適切に湿潤化させることができる、乾燥した止血用組成物用の任意の適切な再構成媒体であり得る。好ましくは、乾燥した止血用組成物は、「すぐに使用できる」フォーマットとしてヒドロゲルに再構成される。
【0027】
適切な希釈剤は、薬学的に受容可能な水性流体、例えば医薬等級の脱イオン水(すべてのイオン成分または緩衝液成分が、乾燥組成物中に既に提供されている場合;「注射用水」)または特定のイオンおよび/もしくは緩衝剤を含有する医薬等級の水溶液である。これらの水溶液は、賦形剤などの他の構成成分をさらに含むことができる。「賦形剤」は、例えばトロンビンが保存(または滅菌(例えば、照射による))時に、その化学的安定性および生物学的活性を確実に保持するようにするため、または審美的理由、例えば色のために、溶液に添加される不活性物質である。好ましい賦形剤には、ヒトアルブミン、マンニトールおよび酢酸ナトリウムが含まれる。再構成された生成物中のヒトアルブミンの好ましい濃度は、0.1〜100mg/ml、好ましくは1〜10mg/mである。好ましいマンニトール濃度は、0.5〜500mg/ml、特に10〜50mg/mlの濃度範囲であり得る。好ましい酢酸ナトリウム濃度は、1〜10mg/ml、特に2〜5mg/mlの範囲である。
【0028】
例えば、適切な希釈剤は、注射用水、ならびに−互いに独立に−NaCl(好ましくは50〜150mM、特に110mM)、CaCl(好ましくは10〜80mM、特に40mM)、ヒトアルブミン(好ましくは最大2%w/w、特に0.5%w/w)、酢酸ナトリウム(好ましくは0〜50mM、特に20mM)およびマンニトール(好ましくは最大10%w/w、特に2%w/w)を含む。好ましくは、希釈剤は、再構成された乾燥組成物のpHを、好ましくはpH6.4〜7.5、特にpH6.9〜7.1に緩衝するための緩衝剤または緩衝系を含むこともできる。
【0029】
好ましい一実施形態では、希釈剤は、別個の容器で提供される。この容器は、好ましくはシリンジであり得る。シリンジ内の希釈剤は、次に、本発明の乾燥した止血用組成物を再構成するための最終容器に、容易に適用することができる。最終容器もシリンジである場合、両方のシリンジを、包み(pack)内に一緒に入れて仕上げることができる。したがって、本発明の乾燥した止血用組成物をシリンジに入れて提供し、それを、前記乾燥した安定な止血用組成物を再構成するための薬学的に受容可能な希釈剤を含む希釈剤シリンジと共に仕上げることが好ましい。
【0030】
止血に使用するのに適した本発明の生体適合性ポリマーの乾燥調製物(「乾燥した止血用ポリマー」)は、生物学的ポリマーおよび非生物学的ポリマーから形成することができる。適切な生物学的ポリマーには、ゼラチン、可溶性コラーゲン、アルブミン、ヘモグロビン、カゼイン、フィブリノゲン、フィブリン、フィブロネクチン、エラスチン、ケラチンおよびラミニンなどのタンパク質、またはその誘導体もしくは組合せが含まれる。特に好ましいのは、ゼラチンまたは可溶性の非線維性コラーゲン、より好ましくはゼラチンを使用することであり、例示的なゼラチン処方物を、以下に記載する。他の適切な生物学的ポリマーには、グリコサミノグリカン、デンプン誘導体、キシラン、セルロース誘導体、ヘミセルロース誘導体、アガロース、アルギネートおよびキトサンなどの多糖、またはその誘導体もしくは組合せが含まれる。適切な非生物学的ポリマーは、2つの機構、すなわち(1)ポリマー主鎖の断絶、または(2)水溶性をもたらす側鎖の分解のいずれかによって分解可能であるように選択されることになる。例示的な非生物学的ヒドロゲル形成ポリマーには、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニル樹脂、ポリラクチド−グリコリド、ポリカプロラクトンおよびポリオキシエチレンなどの合成物質(synthetics)、またはその誘導体もしくは組合せが含まれる。異なる種類のポリマーの組合せも可能である(例えば、タンパク質と多糖、タンパク質と非生物学的ヒドロゲル形成ポリマー等)。
【0031】
適切な再水和助剤(re−hydration aid)と一緒になった非架橋ポリマーは、再構成するのに適した、例えば適切なヒドロゲルベースを形成するのに適した任意の方式で架橋することができる。例えば、ポリマー分子は、2つ以上のポリマー分子鎖に共有結合によって結合している二官能性または多官能性架橋剤を使用して架橋することができる。例示的な二官能性架橋剤には、アルデヒド、エポキシド、スクシンイミド、カルボジイミド、マレイミド、アジド、カーボネート、イソシアネート、ジビニルスルホン、アルコール、アミン、イミデート、無水物、ハロゲン化物、シラン、ジアゾアセテート、アジリジン等が含まれる。あるいは、架橋は、ポリマーの側鎖または一部が他の側鎖または一部と反応して架橋結合を形成することができるように、ポリマーの側鎖または一部を活性化する、過ヨウ素酸塩などの酸化剤および他の薬剤を使用して達成することができる。さらなる架橋法は、ポリマーを、γ線などの放射線に曝露して、ポリマー鎖を活性化して架橋反応を可能にすることを含む。脱水熱(dehydrothermal)架橋法が適切であることもある。ゼラチン分子を架橋するための好ましい方法を、以下に記載する。
【0032】
したがって、好ましい一実施形態によれば、止血に使用するのに適した生体適合性ポリマーは、架橋多糖、架橋タンパク質もしくは架橋された非生物学的ポリマー、またはその混合物を含有する。
【0033】
好ましくは、止血に使用するのに適した生体適合性ポリマーは、粒状材料である。この粒状材料は、流体(すなわち希釈剤)に曝露すると迅速に膨潤することができ、この膨潤形態では、出血部位に適用され得る流動性ペーストに寄与することができる。生体適合性ポリマー、例えばゼラチンは、フィルムとして提供することができ、次に、このフィルムを製粉して、粒状材料を形成することができる。この粒状材料に含有されている粒子のほとんどは、好ましくは100〜1,000μm、特に300〜500μm(メジアンサイズ)の粒径を有する。
【0034】
好ましい一実施形態によれば、止血に使用するのに適した生体適合性ポリマーは、架橋ゼラチンである。乾燥した架橋ゼラチン粉末は、適切な希釈剤と接触させる場合、迅速に再水和するように調製することができる。ゼラチン粉末は、好ましくは、WO98/08550AおよびWO2003/007845Aに記載の通り、フラグメントまたはサブユニットとも呼ばれる比較的大型の粒子を含む。好ましい(メジアン)粒径は、20〜1,000μm、好ましくは100〜750μm、特に150〜500μmの範囲であるが、この好ましい範囲から外れた粒径も、多くの環境で使用することができる。乾燥組成物はまた、水性の再水和媒体(=希釈剤)に曝露されると、顕著な「平衡状態の膨潤」を示す。好ましくは、膨潤は、400%〜1000%の範囲である。「平衡状態の膨潤」は、ゼラチンヒドロゲル粉末の乾燥重量を、それが完全に水和し、したがって完全に膨潤したときの重量から引くことによって決定することができる。次に、その差異を、乾燥重量で割り、100をかけて、膨潤の尺度を得る。乾燥重量は、実質的にすべての残留水分を除去するのに十分な時間にわたって、例えば120℃で2時間にわたって材料を高温に曝露した後、測定されるべきである。材料の平衡状態の水和は、乾燥材料を、水性の生理食塩水などの適切な希釈剤に、含水量が一定になるのに十分な時間にわたって、一般に室温で18〜24時間にわたって浸漬することによって達成され得る。
【0035】
再水和助剤と一緒になった非架橋ゼラチンは、適切なヒドロゲルベースを形成するのに適した任意の方式で架橋することができる。この好ましい実施形態の乾燥した架橋ゼラチン粉末は、好ましくは、特定の再水和助剤の存在下で粉末を調製することによって得られる。かかる再水和助剤は、粉末の調製中に存在するが、通常は最終生成物から除去されることになる。例えば、全固体含量に対して約20%存在する再水和助剤は、一般に最終生成物の1重量%未満、しばしば0.5重量%未満まで低減されることになる。例示的な再水和助剤には、好ましくは約1000の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)、好ましくは約50,000の平均分子量を有するポリビニルピロリドン(PVP)、および一般に約40,000の平均分子量を有するデキストランが含まれる。本発明の組成物を調製するときに、これらの再水和助剤の少なくとも2種類を用いることが好ましく、より具体的には、3種類すべてを用いることが好ましい。
【0036】
架橋ゼラチンを生成するための例示的な方法を、以下に記載する。ゼラチンを得、水溶液に懸濁して、一般に1重量%〜70重量%、通常3重量%〜10重量%の固体含量を有する非架橋ヒドロゲルを形成する。ゼラチンは、一般に、グルタルアルデヒド(例えば、水性緩衝液中0.01%〜0.05%w/w、終夜0℃〜15℃)、過ヨウ素酸ナトリウム(例えば、0.05M、0℃〜15℃で48時間保持する)もしくは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(「EDC」)(例えば、0.5%〜1.5%w/w、終夜室温)のいずれかに曝露することによって、または約0.3〜3メガラドのγ線もしくは電子ビーム放射線に曝露することによって架橋される。あるいはゼラチン粒子は、アルコール、好ましくはメチルアルコールまたはエチルアルコールに、1重量%〜70重量%、通常3重量%〜10重量%の固体含量で懸濁し、架橋剤、一般にグルタルアルデヒド(例えば、0.01%〜0.1%w/w、終夜室温)に曝露することによって架橋することができる。アルデヒドの場合、pHは、約6〜11、好ましくは7〜10に保持されるべきである。グルタルアルデヒドを用いて架橋する場合、架橋は、シッフ塩基を介して形成され、シッフ塩基は、例えば水素化ホウ素ナトリウムによる処理によって、その後還元することにより安定化することができる。架橋した後、得られた顆粒を水で洗浄し、任意選択によりアルコールですすぎ、乾燥することができる。次に、得られた乾燥粉末を、本明細書に記載の最終容器に提供することができる。
【0037】
架橋した後、再水和助剤の少なくとも50%(w/w)が、得られたヒドロゲルから除去されることになる。通常、再水和助剤は、ヒドロゲルを濾過し、その後、得られたフィルターケーキを洗浄することによって除去される。かかる濾過/洗浄ステップは、生成物を所望のレベルまで清浄にし、再水和助剤の少なくとも50%を除去するために、好ましくは元々存在する再水和助剤の少なくとも90%(w/w)を除去するために、1回またはさらに複数回反復することができる。濾過後、一般に、生成された最終的なフィルターケーキを乾燥することによって、ゼラチンを乾燥する。次に、乾燥したフィルターケーキを、破壊または粉砕して、前述の所望の範囲の粒径を有する架橋された粉末を生成することができる。
【0038】
好ましい一実施形態によれば、最終容器は、滅菌放射線(sterilizing radiation)に曝露されるときにポリマーの修飾を阻害するのに有効な量の安定剤、好ましくはアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸の他の塩または抗酸化剤をさらに含有する。
【0039】
もう1つの態様によれば、本発明はまた、止血用組成物を、患者の身体の標的部位に送達するための方法であって、本発明のプロセスによって生成された止血用組成物を前記標的部位に送達するステップを含む方法を提供する。特定の実施形態では、乾燥組成物を標的部位に直接適用する(任意選択により、必要に応じて標的部位で希釈剤と接触させる)こともできるが、乾燥した止血用組成物を、標的部位に投与する前に薬学的に受容可能な希釈剤と接触させて湿潤形態、特にヒドロゲル形態の止血用組成物を得ることが好ましい。
【0040】
本発明はまた、本発明のプロセスによって得られる、仕上げられた最終容器に言及する。この仕上げられた容器は、組み合わされた成分を、保存安定性がありかつ販売可能な滅菌された形態で含有する。
【0041】
本発明の別の態様は、すぐに使用できる止血用組成物を提供するための方法であって、本発明のプロセスによって生成された止血用組成物を、薬学的に受容可能な希釈剤と接触させるステップを含む方法に関する。
【0042】
本発明はまた、仕上げられた形態の本発明の乾燥した安定な止血用組成物と、適切な希釈剤を含む容器とを含むキットに関する。キットのさらなる成分は、使用のための指示、シリンジ、カテーテル、ブラシなどの投与手段(組成物が、投与手段にあらかじめ含まれていない場合)であってよく、または代用針もしくはカテーテル、予備のバイアルもしくはさらなる創傷被覆手段などの医療(外科)の実施における使用に必要な他の成分であってもよい。好ましくは、本発明のキットは、乾燥した安定な止血用組成物を収容するシリンジと、希釈剤を含有する(または別の希釈剤の容器から希釈剤を取り込むために提供される)シリンジとを含む。好ましくは、これらの2つのシリンジは、希釈剤が、再構成された組成物を投与するための出口ではない別の入口から、乾燥した止血用組成物に送達され得るように、互いに適合される形態で提供される。
【0043】
本発明を、以下の実施例に、それらに限定することなくさらに記載する。
【実施例】
【0044】
1.本発明の乾燥した止血用組成物の調製
材料および方法
すべての変形形態(variant)で、安定な形態のFlosealゼラチンマトリックスおよびトロンビンの両方を含有する1つのシリンジと、適切な液体再構成媒体(例えば、0.9%NaClまたは40mM CaCl)を含有する1つのシリンジとを含むキットを提示する同じスキームを使用する。両方のシリンジの内側および外側は無菌であり、再構成全体を、手術室の手術室看護師側で実施することができる。再構成は、普段通りに2つのシリンジをつなぎ、「噴射(swooshing)」(すなわち、2つのシリンジの間で内容物を繰り返し往復させる)によって2つのシリンジの内容物を混合することによって達成する。
【0045】
変形形態「粉末ミックス(Powder Mix)」(c1)
「粉末ミックス」の変形形態を、乾燥ゼラチンと凍結乾燥したトロンビンを混合することによって作製し、これを単一のシリンジに充填する。適用可能であれば、ゼラチンマトリックスを、照射によってバルク滅菌する(既に市販されている生成物の最終滅菌で使用されている照射と同じ)。
【0046】
変形形態「トロンビンのシリンジ内凍結乾燥(Thrombin in Syringe Lyo)」(c2)
「トロンビンのシリンジ内凍結乾燥」は、まず、Flosealシリンジの内部でトロンビン溶液を凍結乾燥し、次に凍結乾燥したトロンビンの頂部にゼラチン顆粒を充填することによって作製される。適用可能であれば、ゼラチンマトリックスを、照射によってバルク滅菌する(現在の生成物の最終滅菌で使用されている照射と同じ)。
【0047】
トロンビン溶液を処方し、容器を閉鎖するためにシリンジ内を排気することができるストッパー付きの(stoppered)Flosealシリンジに充填する。トロンビン溶液を冷凍し、適切な凍結乾燥プログラムを使用して凍結乾燥する。
【0048】
ゼラチン粉末を後方から充填することができるように、シリンジの後方は栓をしない。必要量のゼラチンを、トロンビン凍結乾燥物上に充填する。次に、シリンジ本体にプランジャーをセットする。シリンジに栓をするために、可動式プレートを備えた排気チャンバーの内側の適切なラックに、シリンジを置く。排気してシリンジを閉鎖した後、プレートをシリンジプランジャーまで押し下げる。これは、凍結乾燥ケーキ(lyo cake)を圧縮するようにも働き、その結果、凍結乾燥ケーキはシリンジ内側でほとんど場所を取らない。ここで生成物は、希釈剤シリンジと一緒になったパッケージング、小袋のEPO滅菌、および保存の準備が整う。
【0049】
希釈剤シリンジ
希釈剤シリンジは、生成物を水和するのに適した再構成媒体を含有する。このシリンジは、Flosealシリンジと直接、またはコネクタを用いてつなぐことができる。希釈剤をFlosealシリンジに移し、水和した生成物を、つないだシリンジ間に繰り返し往復させて、流動性ペーストを生成する。希釈剤シリンジは、例えば、媒体を滅菌濾過し、適切なシリンジ(Toppacシリンジ、Clearshot・・・等)に充填し、必要に応じて照射によって最終的に滅菌するなどのプロセスによって調製することができる。
【0050】
ゼラチン顆粒
ゼラチン顆粒のバルクでの製造を、確立された方法(WO98/08550A、WO2003/00785A等)に従って実施する。顆粒(「Floseal」顆粒、「Floseal」マトリックス)を、γ照射によって直ちに滅菌する。前臨床滅菌のために、Flosealマトリックスを、適切なサイズのSchottガラス瓶に充填する。
【0051】
最終容器内の生成物に必要とされる、現行の最大生物汚染度レベル(1000cfu/試料)における照射線量は、25〜40kGyである。次に、バルク材料を、さらなる製造のために−20℃で保存する。
【0052】
c1:「粉末ミックス」
トロンビン調製物
この実施例の滅菌トロンビン粉末は、2つの異なる方法で製造される:凍結乾燥したトロンビンを無菌方式で製粉することによるか、または無菌スプレー乾燥することによる。
【0053】
バルク凍結乾燥とその後の無菌製粉
500IU/mlのトロンビン、50g/lのHSAおよび4.4g/lのNaClを含む処方したトロンビン溶液を、層流フード内で、適切なサイズの滅菌凍結乾燥トレーに移し、このトレーを、凍結乾燥に移すために、滅菌したアルミニウム箔で覆う。凍結乾燥トレーを、清浄な凍結乾燥機に入れ、適切なプログラムを用いて凍結乾燥を行う。凍結乾燥が完了した後、医療グレードの窒素を使用して凍結乾燥機を換気し、凍結乾燥トレー(lyo tray)を、滅菌したアルミニウム箔で再度覆う。
【0054】
Retsch MM200ボールミルを使用して製粉するために、25mlの製粉用のねじぶた付き(screw−top)容器および適切な製粉ボール(12mm)を、オートクレービングまたはアルコール浸漬によって滅菌し、滅菌した製粉容器を、層流フードに移す。製粉容器に、適量の凍結乾燥したトロンビンを充填し、滅菌した製粉ボールを添加する。次に、容器をねじぶたで閉鎖し、製粉のためにボールミルにかける。製粉した後、容器を層流フードに戻し、そこで滅菌ヘラを用いて滅菌した収集容器(50mlのFalconまたはガラス瓶)に入れて容器を空にし、製粉を反復するために再び充填する。
【0055】
無菌スプレー乾燥
前臨床生成では、スプレー乾燥は、Buechiスプレー乾燥の設定を使用して、担体ガス用に調節したガスを用いて実施する。
【0056】
シリンジへの無菌のトロンビンおよびゼラチン粉末の充填
2種類の滅菌粉末を、分析用の秤の上でFlosealシリンジに逐次的に充填する。Flosealマトリックスの重量を、充填重量(g)=70.4/固体含量(%)として算出して、乾燥Flosealマトリックス704mgが、確実にシリンジに充填されるようにする。Floseal最終生成物5mlに対して2000IUのトロンビンを含有するトロンビン粉末の重量は、4(ml)×55(mg/ml)=220mgである。+/−5%の精度で充填を実施し、Flosealマトリックスの各バッチについて限界値を算出しなければならない。
【0057】
まず、製粉したトロンビン粉末を、適切な滅菌ルアーキャップで閉鎖し、小型ラックを使用して分析用の秤の上に置かれた、滅菌したFlosealシリンジに充填した。秤の風袋を差し引き、適切なアタッチメントを備えた滅菌した手動ヘラまたは振動ヘラを使用して、適量のトロンビン粉末をそのシリンジに充填する。次に、秤の風袋を再度差し引き、適切なアタッチメントを備えた滅菌した手動ヘラまたは振動ヘラを使用して、適量のFlosealマトリックスをシリンジに充填する。次に、必要に応じて、ルアープラグをわずかに開けることによって、必要に応じてFlosealマトリックスの真上の位置に、後方からプランジャーをセットする。
【0058】
あるいは、充填の順序を逆にして、シリンジの後方にトロンビン粉末を入れることができる。
【0059】
あるいは、2種類の粉末を充填の前に混合して、第2の充填ステップを排除することができる。
【0060】
c2:「トロンビンのシリンジ内凍結乾燥」
4.0mlのトロンビン500IU/mlを、凍結乾燥シリンジに充填し、凍結乾燥し、真空下で圧縮した。次に、Flosealゼラチンを秤量して、圧縮したトロンビンの頂部に充填することによって、シリンジに入れた。シリンジを閉鎖し、真空下で再度圧縮した。すべての調製ステップを無菌条件下で実施した。
【0061】
2.ブタ肝臓の擦過傷(abrasion)モデルにおける有効性
この研究の目的は、本発明の乾燥した止血用組成物の有効性を、ブタ肝臓の擦過傷モデルにおいて、確立された標準生成物(Floseal VH S/D;Baxter Healthcare)と比較することである。Floseal VH S/Dは、適用の2分以内にトロンビンを送達して活動性出血を止めるゼラチンマトリックスである。この生成物は、(1)トロンビンを再構成するステップと、(2)ゼラチン粒子を、再構成したトロンビンを用いて水和するステップの2ステップの調製を必要とする。本発明の生成物は、トロンビンでコーティングされたゼラチン粒子を1ステップで再構成するように設計されており、生成物が迅速にまたは多量に必要とされる場合に望ましくない2ステップの調製に対して大きく改善するものである。
【0062】
ブタ肝臓の擦過傷モデル
平均体重55.0kg(52.4〜58.4kgの範囲)の6匹の家畜の雌性ブタを、Oak Hill Genetics(イリノイ州ユーイング)から得、外科手術時に秤量する。動物が到着したら、6日間検疫する。外科手術時、6匹すべてのブタは、臨床疾患の徴候を示していない。耳のタグを使用して動物を識別し、割り当てた識別番号と相互参照する。動物をグループ分けして、囲いに収容する。ブタは、水を自由に摂取し、標準のブタ用の食餌を1日1回摂取する。
【0063】
ブタは、広く受け入れられている心血管モデルであり、このタイプの研究に適している。複数の大型の肝葉は、異なる試験項目を直接比較するために複数の病変を許容した。
【0064】
麻酔剤および輸液療法
ブタに、ミダゾラム(0.3mg/kg、IM)を投薬し、2:1の窒素 対 酸素の担体中、イソフルランで潜在的に誘発する(masked−induce)。ブタに挿管し、1分あたり10〜15回の速度で換気させる。酸素担体中イソフルランで、麻酔を維持する。ブタに、温めた乳酸加リンゲル液を持続性速度注入(continuous rate infusion)を受けさせる。
【0065】
肝臓擦過傷の手順
ブタ肝臓の擦過傷モデルを、この研究で使用する。120カ所の病変(処置群1つあたり40カ所)を評価し、α=0.05および検出力(power)=90%で、比率80パーセント対40パーセントの差異を検出するのに十分となることを目標にして、6匹のブタを準備する。各系列を、中葉、左葉または右葉のいずれかにもたらす。
【0066】
各病変の系列は、紙やすりを固定したハンドドリルを使用して作った、直径1cm、深さ3〜4mmの3カ所の肝臓擦過傷を含有している。出血を評価し、病変を、参照または試験物品を用いて無作為かつ盲検的に処置する。参照および試験物品を、乱数発生を使用して無作為化する。各物品を病変上に置き、湿らせたガーゼを用いて適所に2分間保持し、処置の2、5および10分後に、止血について盲検的に評価する。過剰の参照または試験物品を、5分間の評価後に洗浄する。
【0067】
ヘパリン化プロトコル
ベースラインの活性凝固時間(ACT)を記録し、各ブタに負荷量200IU/kgのヘパリンを投与する。ACTがベースラインの少なくとも2倍になるまで、ACTを10分毎に評価する。ACTがベースラインの2倍未満またはおよそ2倍と測定されたら、ブタを用量75IU/kgのボーラスヘパリンで処置した。
【0068】
ACTがベースラインの2倍を超えると、ACTを20分毎に測定する。ACTが標的のベースラインの2倍未満またはおよそ2倍と測定されたら、ブタに用量40IU/kgのボーラスヘパリンを与える。ACTが標的のベースラインの2倍を超えると測定されたら、ブタを治療せず、または2,000IU/時間以下に制限して、維持(maintence)ボーラス用量のヘパリンを与える。
【0069】
すべてのヘパリンを、末梢静脈カテーテルを介して与える。すべての血液試料を、頸静脈カテーテルから採取する。血圧および心拍の参照値を、ACT測定時に記録する。
【0070】
止血評価
病変系列を作り、処置してから0、2、5および10分後に止血を評価する(0分は、処置前を指す)。0、1、2、3、4および5のスコアを、それぞれ出血なし、漏出、非常に軽度、軽度、中程度および重度に割り当てる。3つのすべての病変を、ほぼ同時に処置して、それぞれ独立の処置から生じ得る位置および凝固の差異を回避する。病変からの血液を、必要に応じて各評価の後に拭き取る。
【0071】
測定および記録
ACT、止血、血圧および心拍を、標準の方法に従って評価する。
【0072】
統計的分析
この研究のためのサンプリング単位は、処置群1つあたり40カ所の病変で合計120カ所の病変を有する肝臓病変部位である。
【0073】
多重ロジスティック回帰(multiple logistic regression)を使用して、処置の2、5および10分後の出血スコア(0=なし、1=漏出、2=非常にわずか、3=わずか、4=中程度および5=重症)に対する処置効果を評価する。独立変数には、処置群、ブタ、肝葉(中央、右または左)および初期の出血スコアが含まれる。FB/FS、Lyo/FS、FB/Lyoの効果およびそれらの信頼区間のオッズ比を、処置後の各時点において計算する。
【0074】
病変の位置は、3つの葉およびブタにわたり均一には分布していない。葉の効果は、有意ではないと見出されており、したがって分析はこの効果なしに再度実施される。結論は、モデルの葉の効果なしに、分析に基づいて行われる。
【0075】
結果
本発明の乾燥した止血用組成物の性能は、すべての時点でFloseal VH S/Dとは著しく異ならない。このことは、本発明の生成方法(c1/c2)および1ステップの再構成様式が、組成物の性能に対して負の影響を与えず、実施上の取扱いにおいて所望の利点を提供し、それによって本発明の目的が解決されることを提供する。
【0076】
さらなる動物実験
前臨床評価を実施して、非常に厳密な(抗凝固性が高い)モデルにおいてFloseal VHに対してFloseal「粉末ミックス」およびFloseal「トロンビンのシリンジ内凍結乾燥」のインビボ効能を比較する。このモデルは、全厚5mmの肝臓穿刺と、交差した様式での穿刺による欠損から放射状に広がる4つのさらなる切開からなる。試験群1つあたり6匹の動物を使用し、これらの動物を4,000I.U./kgまでヘパリン処理する。病変が生じた後、再構成したFlosealを適用し、湿潤ガーゼを用いて2分間軽く圧力をかける。この時間の後、一次止血を評価する。一次止血が達成されない場合、止血が達成されるまで生成物を再度適用し、または生成物(5ml)/時間(15分)を使い果たす。一次エンドポイントは、一次止血の達成(あり/なし)および止血時間(分)である。
【0077】
一次止血が達成されたら、動物を外科手術により縫合した。そして、24後、動物を再出血について評価する。
【0078】
すべての変形形態(c1/c2)で、この特定の前臨床実験セッションにおいて標準のFlosealと等しいか、またはそれより良好な、止血時間に関する結果が得られた。