特許第5974009号(P5974009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974009
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】改良超音波洗浄方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20160809BHJP
   B08B 3/12 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   H01L21/304 642E
   B08B3/12 A
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-529756(P2013-529756)
(86)(22)【出願日】2011年9月23日
(65)【公表番号】特表2013-543653(P2013-543653A)
(43)【公表日】2013年12月5日
(86)【国際出願番号】IB2011054195
(87)【国際公開番号】WO2012038933
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2014年9月22日
(31)【優先権主張番号】12/889,975
(32)【優先日】2010年9月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510141648
【氏名又は名称】ラム・リサーチ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113527
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 研一
(72)【発明者】
【氏名】ホルステインズ・フランク・ルートヴィヒ
(72)【発明者】
【氏名】リッパート・アレクサンダー
【審査官】 井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−021672(JP,A)
【文献】 特開2001−110773(JP,A)
【文献】 特開2007−150172(JP,A)
【文献】 特開2009−055024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の表面を流体で処理するための装置であって、
物品を所定の向きに配置するよう構成されたホルダと、
前記物品に隣接する流体媒体を振動させるために配置された超音波またはメガソニックエネルギ源と、
前記流体としての液体に予め溶解された気体が気泡の形態で溶液から出てくるように、処理流体の圧力を低下させた後に前記超音波またはメガソニックエネルギ源の近くに前記処理流体を放出するよう構成された処理流体生成器と、を備え、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源は、前記処理流体および前記物品の界面に圧力振幅最小および最大の領域を含む前記処理流体の干渉パターンを生成するよう構成されており、
前記処理流体生成器は、さらに、前記圧力振幅最小および最大の領域に平行に、または最大60度の角度で、前記処理流体を注入するように構成されており、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源は、約0.1mmから約10mmの幅wを有するギャップが形成されるように、前記物品が占めるべき空間に隣接して配置された共振器を備え
前記処理流体生成器は、
流入口を設けられた本体ハウジングと、
前記本体ハウジングに設けられた複数の注入口であって、それぞれ50μmから500μmの直径を有し、前記本体ハウジング内のチャンバ内の流体媒体と、前記本体ハウジングが浸漬される周囲の流体媒体と、の間において、前記圧力の低下を生じさせるように設計された、複数の注入口と、
前記流入口に結合された外部の液体媒体供給ユニットと、を備える、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源は、前記超音波またはメガソニックエネルギを方向付けて前記干渉パターンを生成する一連の三角溝を有する共振器を備える、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源は、モノリシックの本体上に取り付けられた複数の圧電素子を有すると共に、前記ホルダに載置された物品に対して斜めに向くように配置された共振器を備える、装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源は、前記処理流体とインピーダンスの異なる液体を含む少なくとも1つの内部空間を有する共振器を備える、装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって、
前記装置は、半導体ウエハを処理するための枚葉式ウエハウェット処理ステーションである、装置。
【請求項6】
物品の表面を流体で処理するための装置であって、
所定の向きに前記物品を配置するよう構成されたホルダと、
前記物品に隣接する流体媒体を振動させるために配置された超音波またはメガソニックエネルギ源と、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源の近くに、処理液体中に分散した気泡を含む処理流体を放出するように構成された処理流体生成器と、を備え、
前記気泡は1バール未満の音圧で生成され、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源は、前記処理流体および前記物品の界面に圧力振幅最小および最大の領域を含む前記処理流体の干渉パターンを生成するよう構成されており、
前記処理流体生成器は、さらに、前記圧力振幅最小および最大の領域に平行に、または最大60度の角度で、前記処理流体を注入するように構成されており、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源は、約0.1mmから約10mmの幅wを有するギャップが形成されるように、前記物品が占めるべき空間に隣接して配置された共振器を備え
前記処理流体生成器は、
流入口を設けられた本体ハウジングと、
前記本体ハウジングに設けられた複数の注入口であって、それぞれ50μmから500μmの直径を有し、前記液体に予め溶解された気体が気泡の形態で流体媒体から出てくるように、前記本体ハウジング内のチャンバ内の流体媒体と、前記本体ハウジングが浸漬される周囲の流体媒体と、の間において、圧力の低下を生じさせるように設計された、複数の注入口と、
前記流入口に結合された外部の液体媒体供給ユニットと、を備える、装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置であって、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源は、前記超音波またはメガソニックエネルギを方向付けて前記干渉パターンを生成する一連の三角溝を有する共振器を備える、装置。
【請求項8】
請求項6に記載の装置であって、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源は、モノリシックの本体上に取り付けられた複数の圧電素子を有すると共に、前記ホルダに載置された物品に対して斜めに向くように配置された共振器を備える、装置。
【請求項9】
請求項6に記載の装置であって、
前記装置は、半導体ウエハを処理するための枚葉式ウエハウェット処理ステーションである、装置。
【請求項10】
物品の表面を流体で処理するための方法であって、
処理装置で処理される物品を所定の向きに配置する工程と、
前記物品に隣接する流体媒体を振動させるために超音波またはメガソニックエネルギを供給する工程と、
処理液体中に分散した気泡を含む処理流体を前記物品の表面の近くに供給する工程であって、前記気泡は1バール未満の音圧で生成される、工程と、を備え、
前記超音波またはメガソニックエネルギは、前記処理流体および前記物品の界面に圧力振幅最小および最大の領域を含む前記処理流体の干渉パターンを生成するように供給され、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源は、約0.1mmから約10mmの幅wを有するギャップが形成されるように、前記物品が占めるべき空間に隣接して配置された共振器を備え
前記処理流体を前記物品の表面の近くに供給する工程は、
流入口を設けられた本体ハウジングと、
前記本体ハウジングに設けられた複数の注入口であって、それぞれ50μmから500μmの直径を有する複数の注入口と、
前記流入口に結合された外部の液体媒体供給ユニットと、を備える処理流体生成器において、
前記液体に予め溶解された気体が気泡の形態で流体媒体から出てくるように、前記本体ハウジング内のチャンバ内の流体媒体と、前記本体ハウジングが浸漬される周囲の流体媒体と、の間において、圧力の低下を生じさせる工程を含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記処理装置は、半導体ウエハを処理するための枚葉式ウエハウェット処理ステーションである、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、
前記超音波またはメガソニックエネルギは、処理される前記物品の表面に対して斜めになった一連の傾斜面を有する共振器によって供給され、前記共振器の前記傾斜面は、前記共振器によって生成された音波を互いに干渉させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面の超音波洗浄(メガソニック洗浄を含む)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板由来の粒子状汚染物質の除去は、超音波洗浄によって達成できる。超音波の周波数がほぼ1,000kHz(1MHz)以上の場合、しばしば、「メガソニック」と呼ばれる。
【0003】
任意の液体−表面の界面に近接する音響的に活性化された気泡が、(a)表面からの粒子状汚染物質の除去を引き起こしうる表面のせん断応力、(b)電気化学蒸着処理、エッチング、リンス、および、混合に有効な拡散律速反応の促進を引き起こしうるマイクロストリーミング、ならびに、(c)酸化処理およびエッチングなどの化学反応に影響を及ぼす表面付近の活性成分(フリーラジカル、オゾンおよび、プラズマなど)の局所的なリッチ化を引き起こす。
【0004】
しかしながら、従来の超音波およびメガソニック洗浄方法は、ナノ粒子状汚染物質の除去中に基板への損害を最小化し、洗浄パターン(すなわち、不均一な除去)を回避することに関しては、十分に満足できるものではない。
【0005】
したがって、最小限の基板への損傷で効果的に処理または洗浄を行う処理および洗浄技術が求められている。
【発明の概要】
【0006】
よって、本発明の課題は、従来技術の欠点を少なくとも部分的に克服する物品処理方法および装置を提供することである。
【0007】
本発明は、一実施形態において、物品を処理するための装置に関し、その装置は、物品を保持するためのホルダと、超音波エネルギまたはメガソニックエネルギを物品に供給するための共振器と、好ましくは物品が処理される圧力よりも高い少なくとも約1バールの圧力で気体が溶解された処理流体を生成するための生成器と、処理流体を物品に供給するための流体供給器と、を備えており、処理流体は、圧力が下げられた時に処理流体内にガス分散を引き起こすガス含有流体である。これらの分散された気泡は、サイズ分布および内容物(気体、蒸気、化学物質)が調整されうる。
【0008】
共振器は、さらに、液体に干渉パターンを導入するよう構成されており、その結果、圧力振幅最小および圧力振動最大の明確な領域が、固体−液体界面に生成される。ガス分散処理流体の生成に併せて、多くの気泡が固体−液体界面に存在し活性を有しているため、処理時間が改善し、洗浄の均一性の最適化が可能になる。
【0009】
上述の概要および以下の詳細な説明は両方とも説明のための例示であって、請求されている本発明のさらなる説明を提供するよう意図されたものであり、添付の特許請求の範囲によって提供される保護範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明をさらに理解できるように、図面が添付されている。図面は、本発明の実施形態を図示しており、明細書の記載と共に、本発明の実施形態の原理をより完全に説明するよう機能する。
【0011】
図1a】固体の構造要素を備え、液体中および固体−液体界面に干渉パターンを生成する共振器の断面図。
【0012】
図1b】液体中に存在する気泡の詳細図。
【0013】
図1c】圧力振幅最大の領域に集まった気泡の詳細図。
【0014】
図1d】圧力振幅最大の領域に集まった小さい気泡と、駆動されて圧力振幅最小の領域に集まったより大きい気泡の詳細図。
【0015】
図1e】汚染された表面を横切って、洗浄された経路を残した気泡を示す図。
【0016】
図2】液体内に干渉パターンを生成する2つの共振器の断面図。
【0017】
図3】液体内に干渉パターンを生成する2つの共振器の概略図。
【0018】
図4a】回転する基板に近接した気泡注入マシンおよび共振器の組み合わせを示す概略図。
【0019】
図4b図4aの気泡マシンの右前図。
【0020】
図4c図4bの線IVcにおける気泡マシンの断面図。
【0021】
図5】平行移動する基板に近接した気泡注入マシンおよび共振器の組み合わせを示す概略図。
【0022】
図6】固体の構造要素を備え、液体中および固体−液体界面に干渉パターンを生成する共振器の断面図。
【0023】
図7】幾何学的構造が固体要素の内部空間に一体化された平坦な共振器の断面図。
【0024】
図8】幾何学的構造が固体要素の内部空間に一体化された平坦な共振器の断面図。
【0025】
図9a】幾何学的構造が固体要素の内部空間に一体化され、液体中および固体−液体界面に干渉パターンを生成する平坦な共振器の断面図。
【0026】
図9b】液体で満たされた幾何学的構造において、入射音波が反射および透過される様子を示す詳細な断面図。
【0027】
図10】固体の構造要素を備えた共振器と、物品および共振器の間に結合層が配置され、背面に固体境界が配置された様子とを示す詳細な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
音場に対する液体中の気泡の動的反応は、通例、体積振動および並進運動を含む。任意の開始位置を仮定すると、音場内の気泡が、圧力振幅最大または圧力振幅最小の位置のいずれかに向かって移動するのを観察できる。比較的弱い音場では、共振未満で駆動された気泡(印加された超音波場の駆動周波数が気泡の基本共振周波数(Minnaertの式によって計算される)未満であることを意味する)が、圧力振幅最大の位置に向かい、共振以上で駆動された気泡が、圧力振幅最小の位置に向かう。
【0029】
通常の条件下では、気泡は、駆動された位置にとどまる。基礎となるメカニズムは、Bjerknes(1906)が最初に発見して記載した一次Bjerknes力に基づく。より高い強度の音場において、共振サイズ未満の気泡に対する一次Bjerknes力の逆転が観察されることがあり、これらの気泡は、Doinikov(2001)によって示されたように圧力振幅最小位置の周辺で往復しうる。したがって、液体中および固体−液体界面に圧力最小および圧力最大の領域を明確に作れば、気泡が(一時的に)集合する領域または気泡が移動する領域を作り出すことができる。
【0030】
さらに、これらの気泡の一部は、体積振動に加えて、表面モードまたは表面の不安定性さえも示す。これらの不安定性は、増大して最終的に気泡を破壊する場合がある。気泡の崩壊に加えて、気泡の体積は、他の気泡との合体、整流拡散、または、溶解の影響を連続的に受ける。これらの作用の閾値は、通例、周波数専用の相図(frequency dedicated phase diagram)に示され、その相図は、表面不安定性、並進運動安定性、整流拡散、および、溶解のパラメトリック領域を示す。さらに、平坦な剛壁の存在が、気泡の並進動力学に影響する。気泡および壁の間の相互作用によって、気泡は、通例、壁に向かって移動する。
【0031】
半導体ウエハ洗浄における音響キャビテーションの核生成では、しばしば、核生成の開始を達成するために、液体の適切な前処理および音圧の上昇が必要である。さらに、この核生成では、核生成密度が限られるため、サイズ分布に関連して、ごく一部のみが洗浄活性を有することになる。通例、音圧の上昇は、気泡振動をより激しいレジーム(過渡的キャビテーション)に駆動するため、通常は損傷を引き起こす。したがって、超音波洗浄処理は、微視的効果(気泡活動の結果)ではなく核生成に対して調整されることが多く、これは、基板上に存在する損傷を受けやすい構造などへの任意の構造的損傷を避けるために必要である。
【0032】
設計されたサウンドスケープに暴露される液体への気泡注入によって、洗浄特性を高めた気泡を提供することができる。これらの気泡は、サイズ分布および内容物(気体、蒸気、化学物質)が調整されうる。液体に干渉パターンを導入するために、構造化された共振器が提供されており、その結果、圧力振幅最小および圧力振動最大の明確な領域が、固体−液体界面に生成される。さらに、固体−液体界面上に圧力振幅最大および最小の領域を生成することは、共振器および基板の間の距離には依存しない。特定の気泡の注入に併せて、多くの気泡が固体−液体界面に存在し活性を有しているため、処理時間が改善し、均一性の最適化が可能になる。これらの気泡の導入は、気泡発生の閾値未満で動作することを可能にするため、印加電力に関して動作ウィンドウ(operating window)を大幅に拡大させ、ひいては、粒子除去効率(PRE)損傷ウィンドウ(従来技術では、常に、高い程度の粒子除去がかなりの基板損傷に結び付く)も拡大させる。
【0033】
図1aに示すように、圧電性結晶(110)が、構造化された固体要素(100)上に接着されている。それらが組み合わさって共振器を形成する。この共振器は、共振周波数で電気的に駆動され、共振周波数は、共振器の構造共振の1つに対応しており、通例、10KHzから10MHzの間にある。固体要素は、共振器が基板(130)に近接して配置されると共にギャップが液体(170)で満たされた時に、特定の音響干渉パターン(120)を生成するよう構成される。かかる構造の典型的な例は、一連の三角溝(140)であり、各三角形の底辺および高さの典型的な寸法は、500マイクロメートルから10cmの間である。基板と共振器との間のギャップは、通例、約100ミクロンから約10mmであり、0.2mmから10mmが好ましく、0.2mmから3mmがより好ましい。
【0034】
結果として得られる音響干渉パターン(120)は、液体内と、基板(130)の固体−液体界面とに、圧力振幅最大および最小の交互領域を形成する。かかる圧力最大領域(150)と、メカニズムの進行を、図1b〜図1dに示す。気泡(101)が、生成された音場に注入されると、そのサイズに応じて、圧力振幅最大領域および最小領域に振り分けられる。比較的弱い音場では、共振未満で駆動された気泡(印加された超音波場の駆動周波数が気泡の基本共振周波数(Minnaertの式によって計算される)未満であることを意味する)が、圧力振幅最大領域(102)に向かって移動する。気泡は、通例、圧力振幅最小領域(103)に向かって移動し始める臨界サイズ(Minnaertの式によって与えられる)に達するまで、圧力最大領域内で合体によって成長する。
【0035】
さらに、10-3バールから103バールの範囲の音圧で動作すると、(選択された動作周波数と共に)気泡活動を管理することが可能になることがわかった。なお、気泡活動は、気泡が、大量の気泡の崩壊にもつながる表面モード、表面不安定性、体積振動を引き起こすことを可能にするため、音響流、せん断応力を引き起こし、もしくは、1または複数の気体成分で液体−固体界面をリッチ化しうる。かかる活動の一例が図1eに示されており、印加された音場内で活性を有する気泡(104)が、干渉パターン内で移動し、軌道(105)をたどることで、せん断応力の局所的発生により基板から粒子状汚染物質(106)を除去しうる。
【0036】
本発明による装置は、好ましい実施形態において、半導体ウエハを処理するための枚葉式ウエハウェット処理ステーションである。
【0037】
液体内および液体−固体界面に近接場干渉パターンを作り出すことは、気泡の配置および活性化で中心的な役割を果たす。かかる干渉パターンを作り出す別の方法が図2に示されており、その方法は、2つの独立した共振器の組み合わせに基づいている。第1の共振器は、固体要素(210)上に接着された圧電性結晶(230)からなり、同様に固体要素(200)上に接着された圧電性結晶(220)からなる第2の共振器に隣接して、1から45度の間の選択された角度で配置される。各共振器は、選択された動作周波数で液体に音波を放出し、放出された音波は再結合して、圧力振幅最小領域および最大領域(250)を備えた特定の干渉パターン(240)を生成する。
【0038】
変形例が図3に示されており、変形例では、圧電性結晶(310)によって駆動される2つのロッド(300)が互いに隣り合って配置されており、各ロッドの放出音波(330)が再結合して、特有の干渉パターンを形成する。
【0039】
液体内の気泡のその場での不均一核生成に加えて、液体内に直接気泡を注入することが特に有益であり、それにより、キャビテーション閾値(通例、1バール未満)未満の音圧で動作することが可能になる。さらに、気泡のサイズ分布および気泡の内容物を、対象とする用途向けに、より容易に調整できる。音場へのかかる直接的な気泡注入の例を図4a〜図4cおよび図5に示す。
【0040】
図4aは、圧電性結晶(410)が取り付けられ、一連の三角溝(440)を有する構造化された固体要素(400)の一例である。気泡注入装置(480)が、溝に隣接して配置される。気泡を含む流れ(F)が、最大および最小圧力振幅の領域に平行に、あるいは、最大60度の角度で、注入されることが好ましい。気泡流が移動して影響を与えうる典型的な長さ(L)は、最大5cmである。この例において、基板(w)が共振器の下で回転(R)し、共振器は、基板全体を処理するために平行移動(T)しうる。
【0041】
図4bは、図4aの気泡マシン(480)の構造例を示す。この右前斜視図では、本体ハウジング(420)が示されており、1つの流入口(430)が設けられている。この流入口(430)は、約1mmから約20mmまでの内径を有し、外部の媒体供給ユニットに接続されており、図4cに示すように、加圧されたガス化媒体を気泡マシンの内部チャンバ(441)に供給する。注入口(450)、(421)が、傾斜した表面上に配置されている。5つの注入口が図示されているが、100mm2あたり約1から約30個まで様々な数の注入口が設けられてよく、100mm2あたり約16個が好ましい。注入口(450)は、約50μmから約500μmまでの直径を有するが、100から350μmの間が好ましく、内部チャンバ(441)と、気泡マシンが浸漬される周囲媒体(460)との間で媒体の圧力降下を引き起こすよう設計される。この周囲媒体(460)は、供給される媒体とは異なりうる。圧力降下は、供給された媒体に溶解した気体が脱気し始める範囲で選択されうる。脱気の結果として、多くの小さい気泡が生成され、周囲媒体(460)に注入される。
【0042】
本体ハウジング(420)、(401)の浸漬深さは、注入口(450)、(421)が周囲媒体(460)に浸漬されるように選択され、タンク内に浸漬するために約0.5mmから約350mmの間、または、2つの平行板の間に浸漬するために約0.3mmから約10mmの間に設定されることが好ましい。あるいは、本体ハウジング(420)、(401)は、周囲媒体(460)の中に完全に浸漬されてもよい。
【0043】
別の設計が図5に示されており、その設計では、構造化された固体要素(500)が、一連の三角溝(540)および内蔵型気泡注入装置(580)を有する。処理液流入口(502)および処理液流出口(503)により、基板(W)が共振器の上または下で直線的に(M)または移動する間に、基板(W)の濡れおよび脱濡れが可能になる。気泡注入装置(580)は、内蔵型である点を除けば、装置(480)について述べた通りであってよい。
【0044】
図6は、圧電性結晶(610)に結合された固体要素(600)の別の構造を示す。三角溝は、曲面(640)に置き換えられており、その曲面は、形状に応じて、液体内および固体−液体界面に干渉パターンを生成する。
【0045】
さらに、図7および図8に示すように、平坦な共振器が必要な場合、幾何学的構造が、圧電性結晶(710および810)に結合された固体要素(700および800)内の共振器の内部空間(構造化された空間)に一体化されてもよい。かかる空間の断面形状は、円形開口部(720)から、楕円形構造、三角形構造(820)まで様々であってよい。これらの空間は、発射された音波の方向を変えるように特定の音響インピーダンスを有する液体で満たされてよい。
【0046】
音波の経路の一例が、図9aに図示されており、さらに詳細に図9bに示されている。電気的に駆動された圧電性結晶(910)が、固体要素(900)内に音波(930)を発射する。異なる音響インピーダンスを有する領域(920)を音波が通る時、各界面で部分的に反射(R)され、部分的に透過(T)される。空間(920)内に存在する流体(921)の音響インピーダンスに応じて、入射波の屈折角度は、スネルの法則および透過係数によって計算できる。音波のこの部分の軌道(904)は、最終的に共振器および基板(960)の間の液体(970)内に入り、特有の干渉パターン(950)の生成を可能にする。
【0047】
図10は、圧電性結晶1010および固体要素(1000)の組み合わせで構成され、結合液(1070)内に配置された共振器を示す。この結合液は、音響透過性の薄膜(1060)によって処理液(1090)から隔てられている。特定の干渉パターン(1050)が、両方の液体空間(結合空間および処理空間)内に確立されうる。基板(1030)を透過する音波を反射または吸収するために、基板(1030)の背面に、さらなる固体境界(1080)が配置されてよい。
【0048】
本発明によると、蒸着およびエッチング速度の向上、選択性の向上、および、リンス効率の向上が可能である。本明細書に開示した原理に従って構築された本発明の実施形態は、基板の近くに短寿命の酸化種を生成してその濃度を高くすることができる。これは、従来技術とは対照的であり、従来技術では、通例、表面での気泡の活動が制限されている(面積あたり活性のある気泡の量が少ない)ため処理時間が長く不均一性の問題が生じ、そして、洗浄に関するプロセスウィンドウが小さい、具体的には、損傷を引き起こすウィンドウに対して洗浄ウィンドウが小さい。本発明は、さらに、距離の最適化(ウエハ−変換器)のための従来技術、および、キャビテーション開始閾値を超えるために必要な高電力での動作のための従来技術の必要性を低減する。
【0049】
本明細書に示された上述の説明および具体的な実施形態は、単に本発明およびその原理の例示であり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者によって変形および追加が容易になさうるため、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることを理解されたい。
本発明は、たとえば、以下のような態様で実現することもできる。

適用例1:
物品の表面を流体で処理するための装置であって、
物品を所定の向きに配置するよう構成されたホルダと、
前記物品に隣接する流体媒体を振動させるために配置された超音波またはメガソニックエネルギ源と、
前記液体に予め溶解された気体が気泡の形態で溶液から出てくるように、処理流体の圧力を低下させた後に前記超音波またはメガソニックエネルギ源の近くに前記処理流体を放出するよう構成された処理流体生成器と、を備え、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源は、前記処理流体および前記物品の界面に圧力振幅最小および最大の領域を含む前記処理流体の干渉パターンを生成するよう構成されている、装置。

適用例2:
適用例1の装置であって、
前記処理流体生成器は、
流入口を設けられた本体ハウジングと、
前記本体に設けられた複数の注入口または注入スリットと、
前記流入口に結合された外部の液体媒体供給ユニットと、を備える、装置。

適用例3:
適用例1の装置であって、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源は、約0.1mmから約10mmの幅wを有するギャップが形成されるように、前記物品が占めるべき空間に隣接して配置された共振器を備える、装置。

適用例4:
適用例1の装置であって、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源は、前記超音波またはメガソニックエネルギを方向付けて前記干渉パターンを生成する一連の三角溝を有する共振器を備える、装置。

適用例5:
適用例1の装置であって、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源は、モノリシックの本体上に取り付けられた複数の圧電素子を有すると共に、前記ホルダに載置された物品に対して斜めに向くように配置された共振器を備える、装置。

適用例6:
適用例1の装置であって、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源は、前記処理流体とインピーダンスの異なる液体を含む少なくとも1つの内部空間を有する共振器を備える、装置。

適用例7:
適用例1の装置であって、
前記装置は、半導体ウエハを処理するための枚葉式ウエハウェット処理ステーションである、装置。

適用例8:
物品の表面を流体で処理するための装置であって、
所定の向きに前記物品を配置するよう構成されたホルダと、
前記物品に隣接する流体媒体を振動させるために配置された超音波またはメガソニックエネルギ源と、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源の近くに、処理液体中に分散した気泡を含む処理流体を放出するように構成された処理流体生成器と、を備え、
前記気泡は1バール未満の音圧で生成され、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源は、前記処理流体および前記物品の界面に圧力振幅最小および最大の領域を含む前記処理流体の干渉パターンを生成するよう構成されている、装置。

適用例9:
適用例8の装置であって、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源は、前記超音波またはメガソニックエネルギを方向付けて前記干渉パターンを生成する一連の三角溝を有する共振器を備える、装置。

適用例10:
適用例8の装置であって、
前記超音波またはメガソニックエネルギ源は、モノリシックの本体上に取り付けられた複数の圧電素子を有すると共に、前記ホルダに載置された物品に対して斜めに向くように配置された共振器を備える、装置。

適用例11:
適用例8の装置であって、
前記装置は、半導体ウエハを処理するための枚葉式ウエハウェット処理ステーションである、装置。

適用例12:
物品の表面を流体で処理するための方法であって、
処理装置で処理される物品を所定の向きに配置する工程と、
前記物品に隣接する流体媒体を振動させるために超音波またはメガソニックエネルギを供給する工程と、
処理液体中に分散した気泡を含む処理流体を前記物品の表面の近くに供給する工程であって、前記気泡は1バール未満の音圧で生成される、工程と、を備え、
前記超音波またはメガソニックエネルギは、前記処理流体および前記物品の界面に圧力振幅最小および最大の領域を含む前記処理流体の干渉パターンを生成するように供給される、方法。

適用例13:
適用例12の方法であって、
前記処理装置は、半導体ウエハを処理するための枚葉式ウエハウェット処理ステーションである、方法。

適用例14:
適用例12の方法であって、
前記超音波またはメガソニックエネルギは、処理される前記物品の表面に対して斜めになった一連の傾斜面を有する共振器によって供給され、前記共振器の前記傾斜面は、前記共振器によって生成された音波を互いに干渉させる、方法。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10