特許第5974080号(P5974080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5974080車外ミラー調節手段のための自動切り替えクラッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974080
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】車外ミラー調節手段のための自動切り替えクラッチ
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/07 20060101AFI20160809BHJP
   F16D 43/26 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   B60R1/07
   F16D43/26 D
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-506777(P2014-506777)
(86)(22)【出願日】2011年10月19日
(65)【公表番号】特表2014-513003(P2014-513003A)
(43)【公表日】2014年5月29日
(86)【国際出願番号】EP2011068279
(87)【国際公開番号】WO2012146321
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2014年10月16日
(31)【優先権主張番号】202011000988.2
(32)【優先日】2011年4月27日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102011050440.0
(32)【優先日】2011年5月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500020380
【氏名又は名称】メクラ・ラング・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
【氏名又は名称原語表記】MEKRA Lang GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラング・ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ポップ・アルブレヒト
(72)【発明者】
【氏名】フィンケンベルジェ・エルマー
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0021506(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0117729(US,A1)
【文献】 特開昭58−142029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/07
F16D 43/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気作動ユニット(58)および作動要素(56)の間で、回転エネルギを伝達するためのクラッチ装置(90)であって、
前記クラッチ装置(90)は、前記電気作動ユニット(58)から前記作動要素(56)に負荷トルク(MR)を両方向に伝達することを可能にし、所定の閾値トルク(MK)より大きい過負荷トルクが生じた場合に、前記電気作動ユニット(58)および前記作動要素(56)の相対回転を自動的に許容し、
前記クラッチ装置(90)は、前記閾値トルク(MK)を事前に超えていない状態でトルク方向が逆転した場合に、所定の遊び角(φ)にわたって前記負荷トルク(MR)を伝達しない、クラッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクラッチ装置(90)であって、前記遊び角(φ)は、15°から25°までの範囲にある、クラッチ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のクラッチ装置(90)であって、
前記電気作動ユニット(58)によって駆動されるクラッチベル(91)またはクラッチリングと、
前記作動要素(56)に回動可能に結合されたキャリア(92)と、
を備え、
前記キャリア(92)は、前記キャリアの周囲にわたって均等に分布され、半径方向外向きにばね付勢され、前記クラッチベル(91)または前記クラッチリングの内壁(94)に向かって押しつけられた回転要素(97)または摺動要素を備え、
前記クラッチベル(91)の前記内壁(94)は、その周囲にわたって均等に分布された隆起部(95)を備え、
前記隆起部(95)は、前記所定の閾値トルク(MK)よりも大きい過負荷トルクが生じた場合に、前記回転要素(97)または摺動要素を押す、クラッチ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のクラッチ装置(90)であって、前記遊び角(φ)は、2つの隣接する隆起部(95)のそれぞれ対向する側面の距離によって規定される、クラッチ装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のクラッチ装置(90)であって、外向きに開口すると共に前記キャリア(92)の周囲にわたって均等に分布された半径方向の凹部(98)が、前記キャリア(92)に形成され、前記凹部内には、前記回転要素(97)または摺動要素を半径方向外向きに付勢する圧縮ばね(96)が配置され、前記回転要素(97)または摺動要素は、前記凹部(98)内に案内される、クラッチ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のクラッチ装置(90)であって、前記圧縮ばね(96)のばね定数は、前記所定の閾値トルク(MK)より大きい過負荷トルクが前記クラッチ装置(90)にかかった場合にのみ、前記回転要素(97)または摺動要素が前記隆起部(95)によって十分に半径方向内向きに押されて前記隆起部(95)を乗り越えるように、前記駆動されるクラッチベル(91)の内周(94)に形成された前記隆起部(95)に対応して選択される、クラッチ装置。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれかに記載のクラッチ装置(90)であって、前記2つの隆起部(95)の間の前記クラッチベル(91)の内周(94)上で周方向に、前記回転要素(97)を回転させるため、または、前記摺動要素を押すために、前記回転要素(97)の回転トルク(MW)または前記摺動要素の摩擦トルク(MW)は、前記負荷トルク(MR)より小さい、クラッチ装置。
【請求項8】
請求項3ないし7のいずれかに記載のクラッチ装置であって、前記隆起部(95)の数は、前記回転要素(97)または摺動要素の数より多い、クラッチ装置。
【請求項9】
用車用の車外ミラー装置(2)であって、
前記自動車に取り付けられたホルダ(4)と、
ッチ可能に関節式に前記ホルダに結合されたハウジング(6)と、
前記ハウジング(6)内に移動可能に収容された車外ミラー用の保持部材(8)と、
請求項1ないし7のいずれかに記載のクラッチ装置(90)と、
を備え、
前記保持部材(8)は、電気作動ユニット(58)と、前記保持部材(8)に直接的または間接的に接続された駆動スピンドル(56)とによって調節可能であり、前記クラッチ装置(90)は、前記電気作動ユニット(58)および前記駆動スピンドル(56)の間に接続されている、車外ミラー装置。
【請求項10】
請求項9に記載の自動車用の車外ミラー装置(2)であって、
さらに、前記ハウジング(6)に枢動可能に配置されたクランプレバーのカム(28)によって前記保持部材(8)の外壁に向かって負荷をかけることができるクランプ部(20)を備え、
前記クランプ装置は、圧力係止または摩擦係止によって、前記保持部材(8)と、前記車外ミラー装置(2)の前記ハウジング(6)との間の相対運動を防止し、
前記電気作動ユニット(58)は、前記保持部材(8)が前記クランプ装置(20、24、26、28)によってクランプ固定されている場合でも、前記保持部材(8)を調節することが可能であり、前記保持部材(8)を調節するために必要で前記クラッチ装置(90)によって伝達可能な負荷トルク(MR)は、前記クランプ装置(20、24、26、28)によってかけられる前記摩擦トルク(MW)よりも大きく、前記クラッチ装置(90)の前記所定の閾値トルク(MK)よりも小さい、車外ミラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動切り替えクラッチに関し、請求項1の前提部によれば、特に自動車の車外ミラー装置のための自動切り替えクラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
一部の例では、自動車の車外ミラーの角度またはアライメントだけでなく、自動車の車体からの距離も調節する必要がありうる。かかる長さの調節は、例えば、運転手に後方の十分な視界を提供するために、幅広のトレーラーを備えたトラックで必要になる場合がある。幅広のトレーラーを牽引しない場合、外側に突き出している自動車の車外ミラーは、長さの調節によって車体のより近く配置されてよく、それにより、空気力学的な利点があるだけでなく、駐車したり狭い道路を通ったりする時に車外ミラーを損傷するリスクも低減される。
【0003】
公報DE3938961A1から、外部ミラーのテレスコープ式調節が周知である。この例では、外部ミラーは、連続的に調節可能なテレスコープ管に取り付けられており、テレスコープ管は、自動車のキャビン上の保持フレームの2つの平坦な形状によって連結されている。外部ミラーの長さ調節は、テレスコープ管アセンブリの管に動作可能に接続されたねじ切りスピンドルを対応する方向に駆動する位置決めモータによって実行される。
【0004】
ミラーは常に外に露出されているので、テレスコープ管アセンブリは、ほこりまたはちり、凍結、錆びなどによって詰まりが生じ、調節できなくなる場合がある。この時に運転手が電気モータを作動させて車外ミラーを動かすと、調節メカニズムの動きが妨げられるためにモータが損傷されうる。
【0005】
テレスコープ管がそれぞれの調節最終位置に達する前に、運転手が電気モータを止めない場合にも、同じことが当てはまる。
【0006】
さらに、ねじ切りスピンドルおよびテレスコープ管は、テレスコープ管の伸縮中に、ねじ切りスピンドルがテレスコープ管を止め具に向かって駆動した時に、容易にひっかかりうることもわかっている。その後に、テレスコープ管が反対方向に再び移動される時、電気作動ユニットの駆動トルクだけでは、引っかかった部品を外すことができない。
【0007】
様々なクラッチ装置が、従来技術で周知である。実用車のための上述の車外ミラー調節手段の場合、簡単、経済的、維持が容易、かつ、頑丈な解決法が必要とされている。実際、周知のクラッチでは、この目的に適しているものがないことがわかっている。過負荷防止の理由で、切り替え不可能なクラッチは排除されている。外部から制御されるクラッチは、コストがかかりすぎ、実用的でもない。こうした背景の下、従来技術の問題を克服する自動切り替えクラッチが求められている。
【発明の概要】
【0008】
こうした背景から、本発明の課題は、電気位置決めモータを過負荷から保護すると共に、車外ミラーまたは車両に取り付けるために車外ミラーが取り付けられた保持部材の信頼性の高い長さ調節を可能にするクラッチ装置を提供することである。
【0009】
この課題は、請求項1の特徴によってクラッチ装置に関して達成され、請求項の特徴によって車外ミラー装置に関して達成される。
【0010】
本発明に従ったクラッチ装置は、駆動側および被駆動側の間すなわち電気作動ユニットおよび作動要素の間で回転エネルギを伝達するという目的を果たし、作動要素の調節のために必要な負荷トルクを、電気作動ユニットから作動ユニットに両方向の回転方向で伝達することを可能にし、所定の閾値トルクより大きい過負荷トルクが生じた場合に電気作動ユニットおよび作動要素の間の相対回転を自動的に許容する。さらに、クラッチ装置は、トルク方向が逆転した場合、トルク方向の逆転がある時に作動要素の調節に必要な負荷トルクを所定の遊び角にわたって伝達しないように設計される。
【0011】
本発明に従ったクラッチ装置は、車外ミラー、または、車外ミラーが取り付けられモータによって調節可能である保持部材と共に用いられてよく、電気作動ユニットから、車外ミラーに間接的または直接的に接続された作動要素に回転エネルギを伝達するよう機能する。クラッチ装置は、この場合、保持部材の調節に必要な負荷トルクを電気作動ユニットから作動要素に両方向の回転方向で伝達し、所定の閾値トルクよりも大きい過負荷トルク下では電気作動ユニットおよび作動要素の間の相対回転を自動的に許容する。トルク方向が逆転した場合、すなわち、保持部材の移動方向が変化した時、クラッチ装置は、負荷トルクを伝達する前に、電気作動ユニットおよび作動要素の間の相対回転(遊び角によって制限される)を自動的に許容するように、所定のクリアランスまたは遊び角にわたって、保持部材の調節に必要な負荷トルクを伝達しない。
【0012】
したがって、本発明に従ったクラッチは、トルク方向が逆転した場合に、所定の遊び角にわたって調節トルクが伝達されないように構成される。このように、一方で、過負荷防止が保証され、他方では、回転方向が変化した場合に、所定の定格速度まで電気作動ユニットの無負荷始動が可能になる。両方とも、電気作動ユニットの動作および寿命に良い影響を与える。
【0013】
したがって、本発明に従ったクラッチは、自動切り替えクラッチであり、特に、トルクによって切り替えられるクラッチである。本発明に従ったクラッチは、両方向の回転方向に負荷トルクを伝達することができ、過負荷トルクを超えた場合には、駆動入力および駆動出力の間すなわち電気作動ユニットおよび作動要素の間の相対運動を両方向で許容し、過負荷トルクより低くなった場合には、負荷トルクを伝達して両方向に再度結合することが可能であり、過負荷トルクの以前の超過なしにトルク方向が逆転した場合には、方向に関係なく、所定の遊び角にわたって負荷トルクを伝達しないため、遊び角にわたって駆動入力および駆動出力の間で無負荷またはほぼ無負荷(アイドルトルク)の相対回転を可能にする点において、スリップクラッチ、ロッキングメンバクラッチ、または、せん断ピンクラッチなど周知のトルク切り替え型クラッチとは異なる。
【0014】
特に、本発明に従ったクラッチは、両方の回転方向で同じ特性を有する、すなわち、上述のトルクならびに伝達可能な負荷トルクおよび伝達不可能な過負荷トルクが両方向で等しくなるように設計されうる。
【0015】
駆動入力および駆動出力の間で遊び角の範囲内で無負荷またはほぼ無負荷の相対回転が可能であるため、位置決めモータは、方向を変えた後に負荷トルクなしに(すなわち、無負荷で)始動されることが可能であり、長さ調節メカニズムの移動されるべきすべての質量の加速に必要な加速トルクを伝えるだけでよい。このように、位置決めモータは、より迅速に、その定格トルクおよび定格スピードに到達する。
【0016】
無負荷始動により、遊び角の通過後に、加速された質量の運動エネルギの一部が伝達され、作動要素に衝突する形態で、電気作動ユニットおよび作動要素が結合し、その後、電気作動ユニットおよび作動要素は、結合して同期した状態で共に回転して、負荷トルクがクラッチを介して伝送される。通常のトランスミッション技術では望ましくなく、ばねクッション付きでねじりに柔軟なクラッチによってほとんど抑制されるこの効果は、本発明に従ったクラッチ装置においては、例えば、ほこり、凍結などによる保持部材およびハウジングの一時的な詰まりを解消するために、実際に意図される。
【0017】
さらなる態様または別の態様によれば、遊び角は、90°より小さい。遊び角が大きすぎると、駆動入力および駆動出力の間の遊びが大きくなりすぎるため、調節(特に車外ミラーの微調節)ほぼ不可能になる。遊び角は、15°から25°の範囲にあることが好ましい。この好ましい角度の範囲は、一方で、電気作動ユニットの始動に十分な回転角度範囲を許容し、他方では、駆動入力および駆動出力の間の遊びを許容範囲内に保つため、クラッチは、回転方向が変化した場合に比較的迅速に結合され、車外ミラーの調節時のクラッチの応答挙動が満足したものになる。
【0018】
保持部材または車外ミラーを所定の位置に保持/固定するために、本発明のさらなる態様または別の態様に従ったクランプ装置が提供されてよく、クランプ装置は、保持部材と、車外ミラーのガイド部またはハウジングとの相対運動を防止する。さらに、電気作動ユニットは、保持部材が、クランプ装置によってガイド部にクランプ固定されるか、または、同様の装置によって十分に移動可能に固定されている場合でも、保持部材を調節することが可能であり、保持部材を調節するために必要でクラッチ装置によって伝達可能な負荷トルクは、クランプ装置によってかけられる摩擦トルクよりも大きく、クラッチ装置の閾値トルクよりも小さい。
【0019】
保持部材をクランプすることにより、電気作動ユニットおよび保持部材の間の運動学的なつながりが断たれる。したがって、クラッチの遊び(遊び角)は、保持部材と、保持部材がガイドされるハウジングとの間の遊びとして機能する。これは、電気作動ユニットが作動されていない時、または、電気作動ユニットのトルク方向逆転時に、保持部材ひいては車外ミラーがその位置に固定されることを意味する。
【0020】
本発明によると、クラッチ装置は、電気作動ユニットによって駆動されるクラッチベルまたはクラッチリングと、作動要素に回動可能に固定されたキャリアと、を備えてよい。ここで、キャリアは、周囲にわたって均等に分布され、半径方向外向きにばね付勢され、クラッチベルの内壁に向かって押しつけられた回転要素または摺動要素を備えてよく、クラッチベルの内壁は、周囲にわたって均等に分布された好ましくは波形の隆起部すなわち突起を備えてよく、それらの隆起部は、所定の閾値トルクよりも大きい過負荷トルクが生じた場合に、回転要素または摺動要素を半径方向内向きに押す。
【0021】
上述したように、無負荷始動により、クラッチベルの運動エネルギおよび電気作動ユニットの慣性トルクの一部が、衝突の形態で回転要素ひいてはキャリアに付与され、その後、回転要素および突起の間(すなわち、クラッチベルおよびキャリアの間)の噛み合いが起き、伝達されるべきトルクが伝達される。
【0022】
互いに詰まったり挟まったりした駆動および被駆動要素を解放するのに定格負荷トルクが十分でない場合、電気作動ユニットによって伝達されるトルクが、所定の閾値トルクを超え、クラッチは、回転要素が次の対応する突起に当たるまで滑り(latches over)、以下同様に続く。したがって、ほこりの汚染によって保持部材が詰まった場合、クラッチは滑る。クラッチが繰り返し滑ることにより、短い間隔でトルク衝撃が繰り返し発生し、作動要素および作動要素に接続された保持部材に入力されるため、ほこり粒子の詰まりが次第に解消される。
【0023】
遊び角は、2つの隣接する隆起部の間の距離、特に、2つの隣接する隆起部のそれぞれ対向する側面の距離によって規定されうる。
【0024】
外向きに開口すると共にキャリアの周囲にわたって均等に分布された半径方向の凹部が、キャリアに形成されてよく、凹部内には、回転要素または摺動要素を半径方向外向きに付勢する圧縮ばねが配置される。ここで、回転要素または摺動要素は、大部分が凹部内に配置され、その中にガイドされる。このように、トルクは、クラッチベルから回転要素を介してキャリアに伝達されうる。
【0025】
圧縮ばねのばね定数は、所定の閾値トルクより大きい過負荷トルクがクラッチ装置にかかった場合にのみ、回転要素または摺動要素が隆起部によって十分に半径方向内向きに押されて隆起部を乗り越えるように、駆動されるクラッチベルの内周に形成された隆起部に対応して、特に、隆起部の高さに対応して選択される。隆起部の高さは、回転要素および圧縮ばねが共にクラッチベルの隆起部によって半径方向内向きに押された時のばねの収縮距離に対応する。
【0026】
2つの隆起部の間のクラッチベルの内周上で周方向に、回転要素を回転させる、または、摺動要素を押すために、回転要素の回転トルクまたは摺動要素の摩擦トルクは、負荷トルクより小さいことが好ましい。このように、2つのクラッチ部品の相対運動が、遊び角にわたって許容される。
【0027】
隆起部の数は、回転要素または摺動要素の数より多くてよい。このように、係止角度ならびにそれに伴うクラッチベルおよびキャリアの間すなわち電気作動ユニットおよび作動要素の間の遊びが小さく保たれうる。
【0028】
電気作動ユニットは、キャビン内から制御可能であってよく、そうすれば、操作者にとってより快適である。電気作動ユニットによる保持部材の調節は、様々な方法で行われてよい。例えば、作動ユニットは、作動要素としてのスピンドルを駆動してよく、スピンドルは、保持部材に結合されたスライダに形成された台形ねじと係合する。保持部材が管として構成された場合、スピンドルは、保持部材の中に収容されてもよく、それにより、構造を特に小型化することができる。あるいは、保持部材は、スライダに結合されたケーブルによって、または、歯付きラック駆動によって容易に調節されうる。
【0029】
本発明のさらなる態様または別の態様によると、車両に取り付けられたホルダに固定されたハウジング内に、車外ミラー用の保持部材が移動可能に収容される。このように、ハウジングは、プラスチックから一体的に形成されることが好ましいハウジング部を備え、ハウジング部は、単独で保持部材をガイドする。ハウジング部内には、移動可能に収容された保持部材に加えて、モータ駆動調節メカニズム(すなわち、電気作動ユニット)、保持部材に結合された作動要素、および、本発明によるクラッチ装置が収容されてよい。
【0030】
車両に取り付けられた電気作動ユニットの外周部が、第1のハウジング部の内周壁と相補的に構成されてよい。したがって、電気作動ユニットは、調節メカニズム全体および電気作動ユニットがハウジング部の中にシールされるように、車両に取り付けられた第1のハウジング部を閉じてシールする。電気作動ユニットすなわち電気モータのトランスミッションカバーが、この閉鎖またはシール機能を奏しうることが好ましい。このように、単純な構造であるだけでなく、1つの構成要素に2つの機能を統合することができる。
【0031】
ハウジングは、さらに、第2のハウジング部を備えてよく、車両に取り付けられたホルダが、第2のハウジング部を介して第1のハウジング部に結合されうる。したがって、第1のハウジング部は、その主要な機能、すなわち、保持部材および調節メカニズムを単独で収容してガイドする機能に対応して設計されてよく、車両に取り付けられたホルダへの取り付けは、そのために特別に提供されると共にプラスチックから一体的に形成されることが好ましい第2のハウジング部によって実現されうる。このように、例えば、様々な構成の第2のハウジングの内の唯一対応するハウジングを用いれば、車両に取り付けられた様々なホルダに、構造的に同一の第1のハウジング部を取り付けることができる。
【0032】
第1または第2のハウジング部(好ましくは両方のハウジング部)は、ホルダへの取り付けのために、車両に取り付けられた取り付け部を有する。車両に取り付けられたこの取り付け部は、ハウジングの総重量を著しく増大させることなしに、ホルダへのハウジング部の取り付けを局所的に強化する機能を奏する金属板を備えてよい。手動での操作性を改善するために、金属板は、ハウジングの車両側取り付け部においてハウジング部内に成形された金属インサートの形態で一体化されてよい。ハウジングの特性は、金属板または金属インサートの寸法を変えることによって変更して、それぞれ特定の条件に合わせて適合させることができる。したがって、本発明によれば、ハウジングからの力が、安全な手段によって、車両に取り付けられたホルダに導入されうる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
添付の図面を参照しつつ、本発明について詳細に説明する。
【0034】
図1】本発明の一実施形態に従ったクラッチ装置を備えた車外ミラー装置を示す断面図。
【0035】
図2図1の線II−IIに沿った断面図。
【0036】
図3図1の線III−IIIに沿った断面図。
【0037】
図4】車外ミラー装置のスライダを示す正面図。
【0038】
図5】スライダの側面図。
【0039】
図6】スライダの断面図。
【0040】
図7】車外ミラー装置の保持部材の端部を示す図。
【0041】
図8】保持部材の端部の側面図。
【0042】
図9】電気作動ユニットとスピンドルとの間に結合された実施形態のクラッチ装置を示す断面図。
【0043】
図10】保持部材の調節中にクラッチ装置にかかるトルクを示すトルク−時間の図。
【0044】
図11】保持部材の調節中にクラッチ装置にかかるトルクを示すさらなるトルク−時間の図。
【0045】
図12】詰まった保持部材の解放中にクラッチ装置にかかるトルクを示すさらなるトルク−時間の図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、車両に取り付けられたホルダ4と、ハウジング6と、保持部材8とを有する車外ミラー装置2を示す断面図である。保持部材8は、車外ミラー(図示せず)を取り付ける機能を奏する。
【0047】
ハウジング6は、第1のハウジング部10および第2のハウジング部12からなり、第1のハウジング部10だけで保持部材8を支持およびガイドし、第2のハウジング部12は、基本的に、ハウジング6をホルダ4に取り付けるだけの機能を有する。
【0048】
第1のハウジング部10は、ホルダ4と反対側に摺動部14を備えており、その中に、保持部材8が移動可能に収容される。摺動部14は、基本的に、第1のハウジング部10における円筒形の凹部によって形成されており、この凹部には、POM製のグライドストリップ16(図示せず)が提供されている。
【0049】
摺動部14は、半径方向開口部18を備えており、その中に、クランプ要素20が半径方向に移動可能に収容される。クランプ要素20は、保持部材8と相補的に構成され、すなわち、円筒形に凹んで構成されており、保持部材8の外壁に面的に接している(図2参照)。クランプ要素20は、保持部材8と反対側に凹部22を有しており、凹部22は、板ばね24によって付勢される。
【0050】
摺動部14には、さらに、手動で作動可能なクランプレバー26が回動可能に配置されており、旋回軸Kは、保持部材8の中心軸Aに関して半径方向に離間された横軸であり、クランプ要素20の半径方向外側に位置する。クランプレバー26は、旋回軸Kを中心にクランプレバー26を旋回させた時に、板ばね24を押して保持部材8の方向に弾性的に変形させるカム28を備える。クランプ要素20は、板ばね24のばね力によって半径方向内向きに押され、保持部材8の外壁の一部と圧力係止または摩擦係止を形成すると共に、保持部材8をさらに押して摺動部14の円筒形凹部の反対側で摩擦係止を形成する。
【0051】
図2は、旋回軸Kと平行かつ中心軸Aと垂直に走る図1の線II−IIに沿った断面図である。
【0052】
摺動部14は、さらに、凹部30を備えており、(図1に示すように)クランプ状態の時には、クランプレバー26が完全に摺動部14または第1のハウジング部10の中に収容され、その凹部の中に隠される。凹部30は、さらに、クランプレバー26を操作する際に手またはツールでクランプレバー26をグリップできるようなサイズを有する。
【0053】
第1のハウジング部10は、さらに、摺動部14のホルダ側に接すると共に保持部材8の端部34を囲む薄壁中空体部32を備える。図1の線III−IIIに沿った断面図を示す図3からわかるように、中空体32は、内側に突き出し互いに対向する2つのガイドリブ36を備えており、ガイドリブ36は、中心軸Aに平行に伸び、保持部材8の端部34に固定されたスライダ40の対応する長手方向の溝38に摺動可能に係合する。スライダ40が保持部材8に回動可能に固定されるように、ガイドリブ36および溝38の相互作用は、保持部材8が中心軸Aに沿って移動可能であるが中心軸を中心に回転しないことを保証する。車外ミラーまたは保持部材8への任意の外力の印加が、ガイドリブ36によって受け止められる。ガイドリブ36の軸方向の長さは、少なくともハウジング6内での保持部材8の最大変位に対応する。
【0054】
中空体部32は、ガイドリブ36と共に、本発明の意味でガイド部を形成する。したがって、保持部材8は、一方では、摺動部分14およびガイドリブ36でガイドされる。さらに、摺動部14およびガイドリブ36は、曲げモーメントを受ける。摺動部14とスライダ40がガイドリブ36にガイドされる位置との間の長いレバーアームによって、曲げ力が低く保たれうる。
【0055】
図4図5、および、図6は、スライダ40の様々な図を示す。図4は正面図、図5は側面図、図6図4の線VI−VIに沿った断面図である。スライダ40は、基本的に、両側に長手方向の溝38を備えた立方体形状の本体を有し、第3の側には、内側に突き出して互いに対向し軸方向に伸びる2つの突起46を有する円筒形の凹部42を備える。スライダ40が保持部材8の端部34に導入されると、突起46は、保持部材8の端部34に提供された長手方向のスロット48に係合する。このように構成されたスライダ40は、高い剛性を有しており、保持部材8を介して第1のハウジング部分10に導入される曲げモーメントおよびねじりモーメントを伝達しうる。さらに、スライダ40は、カスタマイズされた特性を持つ一体的な部品であり、また、経済的に製造可能である。
【0056】
端部34の外径および凹部42の内径は、圧入を可能にする大きさである。さらに、スライダ40(図示せず)は、対応する伸縮ばねまたは対応する凹部52(図8参照)と弾性的に噛み合うスナップフック50を備える。このように、スライダ40は、保持部材8上に回動可能に固定されると共に、軸方向に移動しないように固定される。
【0057】
台形ねじを有する中央ねじ穴54が、凹部42の底部に構成されており、そのねじ穴は、電気モータ60およびトランスミッション62からなる電気作動ユニット58によって駆動されるスピンドル56と動作可能に結合する。電気作動ユニット58およびスピンドルは、図1に概略的に示されているのみである。ただし、ホルダ側にある電気作動ユニット58の部分(例えば、トランスミッションカバー64など)が、第1のハウジング部10の内周と相補的に構成されているため、完全に第1のハウジング部10の中に配置された調節メカニズムは、外部から隔離され、密閉されていることが好ましいことに注意されたい。
【0058】
スピンドル56が、いずれかの方向に駆動されると、スピンドル56に係合して配置されたスライダ40は、スピンドル56の軸に沿って移動される。その軸は、保持部材8の端部34の中心軸Aと一致し、同時に、保持部材8の移動軸でもあり、スライダ40に固定された保持部材8は軸方向に移動される。ここで、第1のハウジング部10のガイドリブ36は、スライダ40の長手方向の溝38の中で摺動し、保持部材8の外壁は、摺動部14内のグライドストリップ16上を摺動する。保持部材8およびハウジング6の間の振動を最小化するために、クランプレバー26は、ここでは閉じたままである。したがって、クランプ要素20は、保持部材上を常に圧迫し、ばね荷重を維持する。電気モータ60は、保持部材8を操作する時、基本的に、滑り軸受部分14および保持部材8の間の摩擦力を克服しなければならない。ただし、克服すべき摩擦力は、グライドストリップ16によって低減される。車外ミラーおよび/または保持部材8が所望の位置に配置されると、電気作動ユニット58を停止させることができ、クランプレバー26およびクランプ要素20によって機械的に、その所望の位置が固定される。このように、電気作動ユニット58を解除してオフにすることができる。
【0059】
グライドストリップ16が提供されない場合、代わりに、クランプレバー26を保持部材8の操作前に解放して、操作後にクランプしてもよい。
【0060】
さらに、図1からわかるように、第1のハウジング部10は、車両に取り付けられたホルダ4を部分的に収容するよう機能する。このように、ホルダ4は、中心軸Aに垂直に伸びる中空の円筒部分66を備えており、円筒部分66には、ハウジング6が旋回軸Sを中心に旋回可能に固定される。ホルダ4の円筒部分66は、一体的に形成された係止歯形状68を一方の端部に備えており、係止要素70との相互接続下で、第1のハウジング部10の取り付け部72にねじ結合74で取り付けられうる。
【0061】
反対側で、ホルダ4は、第2のハウジング部12を介してハウジング6に結合される。さらに、ホルダ4の円筒部66は、第2のハウジング部12が第1のハウジング部10に結合された時に、取り付け部80内に構成された円筒形の滑り軸受ブッシュ78を収容するよう構成されている。
【0062】
さらに、図1および図3からわかるように、プラスチックのハウジングにおいて、金属インサート82が、第1および/または第2のハウジング部10、12の薄壁取り付け部72、80内に成型されており、その金属インサートは、取り付け部72、80を補強すると共に、ハウジング6からホルダ4に力を印加するよう機能する。
【0063】
さらに、図1からわかるように、第1のハウジング部10の取り付け部72は、係止要素70の外側に一体的に形成された突起86が嵌合する溝84を備える。ホルダ4は、第1のハウジング部10内に成形された金属インサート82に係止要素70を介してねじ止めされる。このように、係止要素70は、第1のハウジング部10に回動可能に固定される。嵌合は、代替的に、溝ばね結合によって達成されてもよい。
【0064】
ホルダ4の円筒結合部66は、ばね(図示せず)によって係止要素70に向かって付勢されており、円筒結合部66は、係止要素70が、それに対応して印加された所定の大きさの旋回トルク下で、ホルダ4の係止歯形状68に対するばね予付勢に逆らって回転し、このようにハウジング6およびホルダ4の間の旋回運動を可能にするように、第1および第2のハウジング部10、12の間に挟まれている。
【0065】
図9は、トランスミッション62およびスピンドル56の間に結合されたクラッチ90の断面図を示す。クラッチ90は、トランスミッション62のトランスミッション段63からクラッチベル91を介してキャリア92にトルクを伝達し、最終的には、キャリア92に回動可能に固定されたスピンドル56に伝達する。トランスミッション段63は、クラッチベル91の外歯93と噛み合う。円筒形または環状のクラッチベル91の内周94には、周囲にわたって均等に分布された突起すなわちカム95があり、突起すなわちカム95は、圧縮バネ96によってキャリア92の半径方向外向きに付勢されたローラ97と相互作用する。この相互作用およびクラッチ90の機能を以下で詳細に説明する。
【0066】
キャリア92は、周囲にわたって均等に分布されると共に外向きに開口した半径方向の凹部98(図9では4つの凹部)を備えており、それらの凹部には、圧縮バネ96が収容されている。これらの圧縮ばね96は、その端部に配置されたローラ97を、クラッチベル91の内周94に向かって半径方向外向きに付勢する。ここで、ローラ97は、大部分が凹部98の中に配置されている。クラッチベル91がトランスミッション段63を介して駆動されると、ローラ97は、突起95の1つに当たるまで、クラッチベル91の突起95の間の内周94で周方向に回転する。突起95は、圧縮ばねのばね力に対向してローラ97を内向きに押そうとする。ばね力は、スピンドル56の正常な駆動下では保持部材の操作によってばねが内向きに収縮しないように選択され、その時、キャリア92のローラおよびクラッチベル91の突起95は、ある種の噛み合いを形成するため、クラッチベル91からキャリア92ひいてはスピンドル56にトルクを伝達する。
【0067】
クラッチベル91の方向が変化すると、キャリア92は、ローラ97が回転方向の次の突起95に当たって上述のように噛み合うまで、停止する。
【0068】
過負荷防止を確実にするために、ローラ97は、所定の閾値トルクMK下では、ラチェットクラッチの原理に従って突起95を乗り越えてクラッチベル91およびキャリア92の間のより大きい相対回転を可能にするほど半径方向内向きに圧縮バネ96に向かって突起95により押されうる。こうして、電気作動ユニット58への損傷が防止される。
【0069】
図10は、時間−トルクの図を示す。保持部材8の移動により、ローラ97は、クラッチベル91の突起95の所にあるため、少なくとも保持部材8と摺動部分14のクランプ要素20との間の摩擦トルクMRに到達することが好ましい決定されたトルクを伝達する。
【0070】
例えば、止め具により、保持部材8が最大伸長位置に達した時、保持部材8ひいてはスピンドル56および/またはキャリア92は、自身がさらに回転することを許容しない。クラッチベル91がさらに駆動されると、クラッチベル91は、相対的に早くクラッチトルクMK(すなわち、クラッチ90を介して伝達可能な最大トルクMK)に到達し、そのトルクは、突起95および圧縮ばね96の相互作用によって決定される。クラッチトルクMKに到達すると、ローラ97は、突起95が通過しうるように、半径方向内向きに偏位する。結果として、ローラ97は、突起95間の内周部分94上で転がる、すなわち、ローラ97は自由に回転する。ローラ97およびクラッチベル91の間の回転摩擦トルクMWは、摩擦トルクMRより低く、すなわち、正常時に伝達されるトルクより低い。所定の回転角度φだけ回転すると、ローラ97は、再び、対応する突起95に当たり、クラッチトルクMKを超えた時に突起を乗り越える。
【0071】
クラッチベル91の回転方向が変化すると、ローラ97は、次の突起まで反対方向に回転する。したがって、方向が変化した時に、突起95の反対側の側面がローラ97に接触するまで、負荷なしに遊び円弧長φにわたって走ることが可能であることを意味する。ここで、クラッチベル91の運動エネルギおよびモータの慣性質量の一部が、衝突Sの形態でローラ97ひいてはキャリア92に付与され、その後、ローラ97および突起95の間(すなわち、クラッチベル91およびキャリア92の間)の噛み合いが確立され、伝達されるべきトルクMRが伝達される。
【0072】
通常のトランスミッション技術では望ましくないこの効果は、本発明による車外ミラー装置では意図的に導入される。すなわち、保持部材の伸長の動き(図10の段階I)がクラッチの動作開始(図10の段階II)まで継続されると、スライダ40とスピンドル56との軽い歪み負荷が生じうる。さらに、保持部材8は、ハウジング6内のほこり汚染によって詰まりうる。この負荷または詰まりは、方向の変化時に、衝突すなわち衝撃の入力によって解消されうる。この詰まりが最初の衝突で解消されず、クラッチトルクMKを超える場合には、クラッチ90が滑る。このように生み出されたキャリア92ひいてはスピンドル56への周期的な衝撃の入力により、ほこり粒子の詰まりが次第に解消される。したがって、保持部材8およびハウジング6の間の詰まりを引き起こすほこり粒子を効果的に解消することができる(図12参照)。
【0073】
遊びを設けることにより、電気モータ60が、定格速度未満の速度までほぼ無負荷で始動できるという利点もある。送り運動の停止に伴って、スピンドル56の静止位置ひいてはキャリア92の静止位置が設定され、それにより、ローラ97は、クラッチベル91の波状の隆起部95の側面の直前で、送りの際の回転方向に対して静止する。したがって、方向が変化した時に、側面の反対側に位置する側面がローラ97に接触するまで、負荷なしに遊び円弧長φにわたって走ることが可能である。
【0074】
このように、クラッチ90は、キャリア92とクラッチベル91との間に大きい遊びφを有する。しかしながら、これは、モータ60と保持部材8との間の運動学的プロセスの連鎖がクランプ要素20のクランプによって断たれるため、本発明による車外ミラー装置2の関連の中では問題ない。したがって、クラッチ90の遊びは、保持部材8とハウジング6との間の遊びとして機能しない。
【0075】
図11は、保持部材8を調節した際のさらなるトルク−時間の図を示す。図は、過負荷時の負荷トルクではなく、回転方向の通常の変更時の負荷トルクを示す。クラッチベル91の内周94にある突起95は、互いに離間されているので、ローラ97が、クラッチベル91の内周94にある反対方向の突起95に当たるまでに、既知の時間が経過する。伝達可能なトルクは、ローラ97がクラッチベル91の内周面94上で回転する時に存在する摩擦トルクMWまで下がる。ローラ97が次の突起95に当たった(それまでは無負荷)時、慣性を条件とする衝撃トルクが、ローラ95に作用するが、迅速に通常の作動トルクに減衰する。
【0076】
以上、自動車用の車外ミラー調節手段、および、その中に構成された自動切り替えクラッチについて説明した。なお、自動切り替えクラッチは、車外ミラー装置のためのものである。
【0077】
もちろん、上述の車外ミラー装置は、請求項の範囲内で変形可能である。
【0078】
例えば、保持部材の調節は、ケーブルまたはラック駆動によって実行されてもよい。
【0079】
さらに、互いに補完的な要素、例えば、スライダと保持部材の端部またはガイドリブとの間の結合が、逆に設計されてもよい。例えば、スライダは、第1のハウジング部分の対応する溝内で摺動する長手方向の突起を備えてもよい。
【0080】
ハウジングの軸方向の長さは、保持部材の必要な移動距離に応じて短くても長くてもよい。
【0081】
さらに、ガイドリブは、金属インサートで強化されてもよい。あるいは、スライダは、すべての側から、すなわち、4つのガイドリブでガイドされてもよい。
【0082】
最大移動距離を制限するために、ガイドリブおよび/または第1のハウジング部に止め具が提供されてもよい。
【0083】
さらに、各ハウジング部の取り付け部の金属インサートは、予想されるねじりモーメントおよび曲げモーメントに応じて、より長くまたはより厚く設計されてもよい。
【0084】
また、一部の状況下では、摺動部のグライドストリップは省略されてもよいし、他の材料がグライドストリップに用いられてもよい。
【0085】
上述のクラッチ装置の場合、隆起部95は、クラッチベル91の内周94に配置されて、半径方向外向きにばね付勢された回転要素97と協働する。用途および利用可能な設置スペースに応じて、隆起部95は、内側のクラッチ部品(キャリア92)に提供されて、外側のクラッチ部品(クラッチベル91)の半径方向内向きに予付勢された回転要素97と協働してもよい。
【0086】
本発明によるクラッチ装置は、必ずしも上述の車外ミラー装置と共に利用される必要はなく、この技術領域外の外部ミラー装置およびシステムに伝達可能な独立した機械要素であると考えられる。ただし、本発明のクラッチ装置の効果は、遊び経路によってモータの無負荷始動を可能にし、衝突様の衝撃入力によってスライダとスピンドルとの間の任意の張力を解放するかまたはほこり汚染を解放し、単純かつ頑丈な解決法を提供することから、モータによって調節可能な車外ミラーの場合に特に有用である。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図10
図11
図12