特許第5974106号(P5974106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5974106切断性に優れた半導体ウエハー表面保護用粘着フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974106
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】切断性に優れた半導体ウエハー表面保護用粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20160809BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20160809BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20160809BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20160809BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   C09J201/00
   H01L21/304 622J
   H01L21/78 M
   H01L21/68 N
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-536999(P2014-536999)
(86)(22)【出願日】2012年10月22日
(65)【公表番号】特表2015-501353(P2015-501353A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】KR2012008666
(87)【国際公開番号】WO2013065981
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2014年4月17日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0113294
(32)【優先日】2011年11月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509286787
【氏名又は名称】エルジー・ハウシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】キム・チャンスン
(72)【発明者】
【氏名】チョ・ヒョンジュ
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ヂュヨン
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−261482(JP,A)
【文献】 特開2010−195995(JP,A)
【文献】 特開平11−099584(JP,A)
【文献】 特開2011−122100(JP,A)
【文献】 特開2005−307034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 −201/10
H01L21/301
H01L21/304
H01L21/683
B32B 1/00 − 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一側表面に粘着層が形成された半導体ウエハー保護用粘着フィルムであって、前記基材フィルムの引張強度が6kg/mmないし10kg/mm、破断伸び率が180%ないし200%、前記粘着層のゲル含量が80〜99%であることを特徴とする半導体ウエハー表面保護用粘着フィルム。
【請求項2】
前記粘着フィルムは、紫外線照射前の剥離力が紫外線照射後の剥離力より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の半導体ウエハー表面保護用粘着フィルム。
【請求項3】
前記粘着フィルムの紫外線照射前の剥離力は1540mN/10mm(400g/in)ないし4630mN/10mm(1200g/in)で、紫外線照射後の剥離力は77.2mN/10mm(20g/in)ないし772mN/10mm(200g/in)であることを特徴とする、請求項1に記載の半導体ウエハー表面保護用粘着フィルム。
【請求項4】
前記基材フィルムは、ポリビニルクロライドフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリオレフィンフィルム、エチレン―酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン―アルキルアクリレート共重合体フィルムからなる群より選ばれた少なくとも1種の基材フィルムであることを特徴とする、請求項1に記載の半導体ウエハー表面保護用粘着フィルム。
【請求項5】
前記基材フィルムの厚さが50μmないし300μmであることを特徴とする、請求項1に記載の半導体ウエハー表面保護用粘着フィルム。
【請求項6】
基材フィルムを形成する工程;
前記基材フィルムの引張強度を6kg/mmないし10kg/mmに、及び破断伸び率を180%ないし200%に制御する工程;
前記基材フィルムの一側表面にゲル含量が80〜99%である粘着層を形成する工程;及び
前記粘着層を形成した基材フィルムを紫外線(UV)硬化する工程;を含むことを特徴とする半導体ウエハー表面保護用粘着フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記基材フィルムの一側面に粘着層を形成する工程は、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法及びダイコーター法のうちいずれか一つを選択して行われることを特徴とする、請求項6に記載のウエハー表面保護用粘着フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記粘着フィルムは、紫外線照射前の剥離力は1540mN/10mm(400g/in)ないし4630mN/10mm(1200g/in)で、紫外線照射後の剥離力は77.2mN/10mm(20g/in)ないし772mN/10mm(200g/in)であることを特徴とする、請求項6に記載のウエハー表面保護用粘着フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材フィルムの一側表面に粘着層が形成された半導体ウエハー保護用粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハー保護用粘着フィルムは、ウエハー状にフィルムを抉り取るとき、何れの条件でも抵抗なく良好に切断されなければならなく、このような性質を切断性又はカッティング性という。これと関連して、実際にウエハー塗布後にカッティング性が確保されなく、ウエハーが薄くなった場合、反りが多く発生するという問題を有している。韓国公開特許第2003―0061300号には、温度に伴う剛軟度は記載されているが、前記のような問題の解決策は依然として確保していない。
【0003】
通常、ウエハー保護フィルムに使用される粘着剤は、厚さが薄いのでカッティング性にそれほど大きく寄与できないが、基材フィルムとして使用される高分子フィルムはカッティング性に非常に大きく寄与するので、基材フィルムのカッティング性を確保し、ウエハーチップ収率を増大させ得る方案の発明に急がなければならない実情にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第2003―0061300号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ウエハーの研削時に使用される優れたカッティング性と切断性を有する半導体ウエハー表面保護用粘着フィルム及びこれを製造する方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、ウエハーが薄くなった場合にも、反り現象及びウエハーの割れ現象を防止する半導体ウエハー表面保護用粘着フィルム及びこれを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、基材フィルムの一側表面に粘着層が形成された半導体ウエハー保護用粘着フィルムであって、前記基材フィルムの引張強度がkg/mmないし10kg/mm、破断伸び率が180%ないし200%、前記粘着層のゲル含量が80〜99%であることを特徴とする半導体ウエハー表面保護用粘着フィルムを提供する。
【0008】
また、本発明の目的を達成するために、基材フィルムを形成する工程;
前記基材フィルムの引張強度を6kg/mmないし10kg/mmに、及び破断伸び率を180%ないし200%に制御する工程;
前記基材フィルムの一側表面にゲル含量が80〜99%である粘着層を形成する工程;及び
前記粘着層を形成した基材フィルムを紫外線(UV)硬化する工程;を含むことを特徴とする半導体ウエハー表面保護用粘着フィルムの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
基材フィルムの一側表面に接着層が形成されたウエハー保護用粘着フィルムは、カッティング性及び切断性が確保され、高温でも融解などの現象が発生しないので、ウエハー研削時の収率を向上させることができる。
【0010】
また、ウエハー表面保護用粘着フィルムの製造方法において、引張強度と破断伸び率を制御する段階を含むことによって、カッティングに対する抵抗性が減少し、きれいな面を維持するカッティング性を確保することができる。併せて、ウエハーが薄くなった場合、反りの発生を最小化し、ウエハーの割れ現象を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の利点及び特徴、そして、それらを達成する方法は、共に詳細に後述している各実施例を参照すれば明確になるだろう。しかし、本発明は、以下で開示する各実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現可能である。ただ、本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであって、本発明は、請求項の範疇によって定義されるものに過ぎない。明細書全体にわたって同一の参照符号は、同一の構成要素を称する。
【0012】
以下では、本発明について詳細に説明する。
【0013】
(ウエハー表面保護用粘着フィルム)
本発明は、基材フィルムの一側表面に粘着層が形成された半導体ウエハー保護用粘着フィルムを提供する。
【0014】
前記基材フィルムのカッティング性を優秀にするためには、引張強度及び破断伸び率が最適化された範囲内に存在しなければならない。このとき、前記基材フィルムの引張強度が2kg/mmないし10kg/mmで、破断伸び率が50%ないし200%であり得る。前記引張強度が2kg/mmないし10kg/mmである場合は、切断時の抵抗性が低く、非常にきれいなカッティング性が確保される。引張強度が2kg/mm未満である場合は、基材フィルムが柔らかくなったと見なされ、カッティングに対する抵抗性が高くなり得る。また、引張強度が10kg/mmを超える場合は、フィルム自体の剥離時に衝撃を吸収する能力が低くなり、ウエハーが研削時に薄くなりながらカールが発生し得る。
【0015】
破断伸び率も重要な要素であって、その範囲は50%ないし200%にすることができる。破断伸び率が50%未満である場合は、引張強度が大きい場合と一致し、ウエハーが研削時に薄くなりながらカールが発生する可能性が高い。また、破断伸び率が200%を超える場合は、高分子配列がその方向に長く延びていることを暗示するので、カッティングに対する抵抗性が大きくなり得る。
【0016】
前記基材フィルムは、ポリビニルクロライド(PVC)フィルム、ポリウレタンフィルム、ポリオレフィンフィルム、エチレン―酢酸ビニル(EVA)共重合体フィルム、エチレン―アルキルアクリレート共重合体フィルムからなる群より選ばれた少なくとも1種の基材フィルムであることを特徴とすることができる。
【0017】
前記基材フィルムの厚さは、フィルム自体の強度に影響を与え、また、裏面加工時のウエハー破損防止にも影響を与えるので、ウエハーの表面段差、バンプ電極の有無などによって適切な厚さを選択することが望ましい。
【0018】
基材フィルムの厚さは約50μmないし300μmであることが望ましい。特に、基材フィルムの厚さは約100μmないし200μmにすることができる。基材フィルムの厚さが過度に薄くなる場合は、フィルム自体の強度が弱くなると同時に、ウエハー表面上の突起状物に対して粘着フィルムが十分に追従できないので、突起状物に対する密着性が不十分になり、ウエハーの裏面を研削するとき、突起状物に対応するウエハーの裏面にディンプルが発生する場合がある。
【0019】
厚さが過度に厚い場合は、粘着フィルムの製作が困難になり、生産性に影響を及ぼし、製造費用の増加につながる場合がある。
【0020】
本発明の基材フィルムの一側表面に形成された粘着層は、ゲル含量を80%以上にする。具体的に、前記粘着層のゲル含量を80%ないし99%にすることは、高分子の硬度増加によって切断性及びカッティング性を確保できるという点で望ましい。前記粘着層のゲル含量が80%未満である場合は、フィルムが柔らかくなり、カッティング性が低下することによってバー(burr)の発生可能性が大きくなり、フィルムをロール状態で長期間保管するとき、未反応の各成分が表面に突出してブロッキングを誘発し得る。また、前記粘着層のゲル含量が99%を超える場合は、フィルムが硬くなることによって切断性には優れるが、ウエハーの研削時に衝撃を吸収できなく、カールの発生可能性が大きくなることによって収率が低くなるおそれがある。
【0021】
このとき、前記ゲル含量は、下記の数学式1のように、前記粘着層を構成する樹脂組成物を極性溶剤に48時間浸し、110℃で2時間乾燥した後で測定したゲル含量を示す。
【0022】
[数1]
X(ゲル含量)=[1−(Xi−Xs)/Xi]×100(%)
【0023】
ここで、Xiは、初期重さを意味し、Xsは、溶剤に溶かした後、300メッシュの鉄網にろ過して110℃で2時間乾燥した後で鉄網に残った有機物の重さを意味し、Xは、本発明で言及しているゲル含量を意味する。
【0024】
極性に従ってゾル分率が溶けて分離される時間が異なり得るが、約24時間ないし48時間後にはゾル分率が十分に分離され、ゲル分率のみが残るので、本発明に使用される極性溶剤は、極性が少しでも存在する溶剤であれば制限がない。特に望ましい例としては、クロロホルム、エチルアセテート、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミドなどを挙げることができる。
【0025】
本発明に係る半導体ウエハー保護用粘着フィルムの粘着層を形成する樹脂組成物は、半導体ウエハーを加熱する温度条件下で、例えば、約150℃の温度でも粘着剤として十分に機能することが望ましい。ただ、温度が150℃以上の条件下で加熱処理された場合であっても、接着力の上昇により、剥離不良を起こさなく、剥離後に残渣が発生しないことが望ましい。
【0026】
前記樹脂組成物は、シリコン系又はアクリル系樹脂組成物を含むことができる。このとき、アクリル系樹脂組成物が望ましいので、前記アクリル系樹脂組成物としては、紫外線照射型が最も汎用的に使用される。特に、通常、紫外線照射型は、ウエハーが薄膜化されたとき、ウエハーの厚さが延伸後に100μm以下である場合に適用される。
【0027】
前記樹脂組成物は疎水性であることがより望ましく、水溶性である場合は、研削加工時に樹脂組成物の硬化体が膨潤することによって位置ずれを起こし、加工精度が低下するおそれがある。しかし、親水性であっても、その樹脂組成物の硬化体が水によって膨潤或いは一部溶解することがなければ、使用に制限はない。
【0028】
前記粘着層の厚さは3μmないし300μmであることが望ましい。粘着層は、半導体ウエハー保護用粘着フィルムをウエハーの回路形成面(以下、表面という)から剥離した後、半導体ウエハーの表面に糊残渣などによる汚染が生じないことが望ましい。前記粘着層は、特に、半導体ウエハーの回路形成面に半導体ウエハー保護用粘着フィルムを接着した後の加熱工程を経た場合にも、粘着力が過度に大きくならないように、また、半導体ウエハー表面の汚染が増加しないように、反応性官能基を有する架橋剤、過酸化物、放射線などによって高密度で架橋されたことが望ましい。
【0029】
本発明に係る粘着フィルムは、紫外線照射前の剥離力が紫外線照射後の剥離力より大きいことを特徴とする。より具体的に、紫外線照射前の剥離力は400g/inないし1200g/in、紫外線照射後の剥離力は20g/inないし200g/inにすることができる。
【0030】
前記粘着フィルムの紫外線照射前の剥離力が400g/in未満である場合は、初期剥離力が低いので水浸になる可能性が高く、1200g/inを超える場合は、高い初期粘着力及び非常に高いウエハーへの粘着力によって紫外線照射後に残渣が残ったり、柔らかい粘着層によってバーが発生する可能性が高く、研削工程後にウエハーが薄くなりながら反りが発生する可能性が高い。
【0031】
また、前記粘着フィルムの紫外線照射後の剥離力が20g/in未満である場合は、紫外線が照射されたウエハーをハンドリングする途中で自然に着脱が行われ、ウエハー表面が汚染する可能性が高く、200g/inを超える場合は、着脱が容易に行われないのでウエハーが割れる可能性が高い。
【0032】
(ウエハー表面保護用粘着フィルムの製造方法)
本発明は、基材フィルムを形成する工程;前記基材フィルムの引張強度及び破断伸び率を制御する工程;前記基材フィルムの一側表面に粘着層を形成する工程;及び前記粘着層を形成した基材フィルムを紫外線(UV)硬化する工程;を含むことを特徴とする半導体ウエハー表面保護用粘着フィルムの製造方法を提供する。
【0033】
前記基材フィルムを形成する工程は、押出工程、紫外線硬化工程、キャスティング工程、カレンダリング工程、熱硬化工程などを含むことができる。
【0034】
望ましくは、紫外線硬化を通してアクリルフィルムを形成し、押出工程によってエチレン―酢酸ビニル共重合体フィルム及びポリオレフィンフィルムを形成することができ、また、熱硬化工程によってポリウレタンフィルムを形成することができる。さらに、ポリビニルクロライドフィルムは、キャスティング工程やカレンダリング工程によって形成することができる。
【0035】
前記基材フィルムの引張強度及び破断伸び率を制御する工程は、引張強度を2kg/mmないし10kg/mm、破断伸び率を50%ないし200%に制御することを特徴とする。前記方法によって基材フィルムを形成した後、そのフィルムに電磁線(electromagnetic wave)照射やプラズマ処理を行うことによって引張強度及び破断伸び率を制御することができる。また、前記基材フィルムの引張強度及び破断伸び率を制御する工程は、前記基材フィルムに電磁線照射やプラズマ処理を行うことを特徴とすることができる。
【0036】
前記電磁線は、ガンマ線、X線、紫外線、電子線などをいうが、紫外線、電子線であることが望ましい。特に、紫外線は、取り扱いが簡便で、高エネルギーが容易に得られるという点で望ましく、紫外線を発生する光源であればいずれも使用することができる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプなどを光源として使用することができる。また、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、エキシマランプ又はキセノンランプなどを光源として使用することができる。
【0037】
また、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、エキシマランプ又はシンクロトロン放射光なども光源として使用することができる。照射条件はそれぞれのランプに従って異なるが、照射光量は1mJ/cm以上であることが望ましく、より望ましくは200mJ/cmないし10,000mJ/cm、特に望ましくは500mJ/cmないし5,000mJ/cmである。
【0038】
また、使用可能な電子線としては、コッククロフト・ウォルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器から放出されるエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
【0039】
電子線照射装置としては、エリアビーム型電子線照射装置、走査型電子線照射装置などを挙げることができる。照射条件に対しては、加速電圧としては、フィルム厚さや所望の処理深さに応じて適切な加速電圧を選択することが望ましい。加速電圧は50kV以上であることが望ましい。照射線量としては、所望のフィルム物性に応じて適切な照射線量を選択することが望ましい。照射線量は50kGyないし1000kGyであることが望ましい。照射線量が前記の範囲を逸脱する場合は、フィルムが過度に柔らかくなったり硬くなる可能性が大きく、この場合、所望のカッティング性及びカールに制御することが難しくなり、また、過度に多くの量の照射線量がフィルムに加えられる場合は、性能低下をもたらし得る。
【0040】
プラズマ処理としては、特に大気プラズマ処理を実施することが望ましく、ヘリウム、アルゴンなどの希ガス又は窒素、空気などの放電ガスと、必要に応じて、酸素、水素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、水蒸気、メタン、4フッ化メタンなどを1種以上含有する反応ガスを使用してプラズマ処理を行うことができる。
【0041】
また、基材フィルムを形成する工程によって、引張強度及び破断伸び率を制御する工程が変わり得る。例えば、押出工程によって基材フィルムが形成された場合は、高分子鎖の配列で切断性が低下することによって電子ビーム硬化を行わなければならないが、キャスティングを通して形成された基材フィルム、アクリルフィルムやポリビニルクロライドフィルムの場合は、高分子鎖の配列が比較的均一な分布を有するので切断性に優れ、電子ビームによらなくてもカッティング性と切断性を確保することができる。
【0042】
基材フィルムが2層以上で構成される場合は、前記基材フィルムと積層するフィルムとしては、電子線を照射しないフィルムが望ましく、具体的には、ポリエチレン、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―アルキルアクリレート共重合体(アルキル基の炭素数は1〜4である)、エチレン―α―オレフィン共重合体、プロピレン―α―オレフィン共重合体、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ウレタン、液晶及びこれらの混合樹脂から成形された樹脂フィルムを挙げることができる。
【0043】
前記基材フィルムの一側表面に粘着層を形成する工程を含むことができる。前記粘着層の形成方法としては、従来の公知の方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法などを採用することができる。形成された粘着層の乾燥条件には特別な制限がないが、一般的には、80℃ないし200℃の温度範囲で10秒ないし10分間乾燥することが望ましい。より望ましくは、80℃ないし170℃で15秒ないし5分間乾燥する。架橋剤と粘着層との架橋反応を十分に促進させるために、粘着層の乾燥が終了した後、保護粘着フィルムを40℃ないし80℃で5時間ないし300時間にわたって加熱してもよい。
【0044】
前記粘着層は、シリコン系又はアクリル系樹脂組成物を含むことができ、これは、上述した通りである。より具体的に、エチルヘキシルアクリレート(2―EHA:2―ethyl hexylacrylate)、エキルヘキシルメタクリレート(2―EHMA:2―ethyl hexyl methacrylate)、ヒドロキシエチルアクリレート(2―HEA:2―Hydroxy ethyl acrylate)及びアクリル酸モノマーを溶剤下で溶液重合法によって共重合し、ヒドロキシ基を有する樹脂組成物に製造することができる。
【0045】
本発明の半導体ウエハー表面保護用ウエハー粘着フィルムを製造するために、前記粘着層を形成した基材フィルムを紫外線(UV)硬化する工程を含むことができる。
【0046】
すなわち、前記の粘着層を前記基材フィルムに転写コーティングして半導体ウエハー保護フィルムを製造した後、ウエハー研削工程の前にウエハーにラミネートして研削工程を行い、紫外線を照射して剥離力を低下させた後、人為的に保護フィルムを剥ぎ取る工程を通してウエハー研削工程を完成する。
【0047】
より具体的には、前記粘着層を形成する樹脂組成物において、作用基としてアクリル酸を使用した場合は、熱硬化剤としてアジリジン基又はエポキシ基を有している樹脂組成物を使用し、作用基としてヒドロキシル基を使用した場合は、熱硬化剤としてイソシアネート基を有している樹脂組成物を使用して1次熱硬化を実施する。このとき、前記樹脂組成物に光開始剤を投入し、1次熱硬化された状態で未だ反応に参加していない分岐された二重結合の紫外線照射による硬化反応を誘導し、1次熱硬化に比べて低い剥離力を得るようになる。
【0048】
すなわち、紫外線硬化前の剥離力は熱硬化された状態であり、紫外線硬化後の剥離力は、熱硬化された状態の粘着フィルムをウエハーに付着し、紫外線を照射した後の剥離力を測定した値である。この場合、前記粘着フィルムの紫外線照射前の剥離力は400g/inないし1200g/inで、紫外線照射後の剥離力は20g/inないし150g/inであることが望ましい。
【0049】
以下では、本発明を次の実施例によってより詳細に説明する。ただ、下記の実施例は、発明の内容を例示するものに過ぎなく、発明の範囲が実施例によって限定されることはない。
【0050】
(実験例1―基材フィルムの切断性及びカッティング性測定)
【0051】
<実施例及び比較例>
【0052】
下記の表1及び表2のように基材フィルムの種類を変えて、基材フィルムが形成された工程によってそれぞれ異なる形に引張強度及び破断伸び率を制御し、前記基材フィルムの切断性及びカッティング性を測定した。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
<評価方法>
厚さが100μmである前記[表1]及び[表2]の基材フィルムを横/縦5cm×1cmのサイズに準備し、引張試験機において、ジグを用いて試片の上部及び下部をつかみ、ロードセル30kgの荷重下で引張試験を実施した。このとき、横軸は距離を示し、縦軸は力を示すカーブを得た後、このカーブを用いて破断伸び率を測定し、破断時の最大の力を引張強度として測定した。
【0056】
最終カッティング性は、横/縦10cm×10cmのサイズに準備された試片の中央部分に非常に鋭い刀で切り込みを入れ、これを中心に左右に広げたときに何ら抵抗なく容易に破れるフィルムの場合、カッティング性が良好であると判断した。しかし、フィルムは破れるものの、広げるのに手間がかかる場合は、バーの有無を観察した。
【0057】
カールに対する評価時には、基材フィルムに粘着剤を20μm塗布し、厚さが50μmである10cm×10cmのサイズのアルミニウムシートに蒸着した後、100℃で約10分間放置し、常温で取り出してアルミニウムシートが反る程度を評価した。アルミニウムシートにカールが生じ、反る程度が縁部で底から約2mmを超える場合はカールが発生し、約2mm未満の場合はカールが発生しないと見なした。
【0058】
<評価結果>
下記の[表3]及び[表4]で観察したように、基材フィルムの引張強度が2kg/mmないし10kg/mm、破断伸び率が50%ないし200%の範囲を逸脱して過度に大きいか小さい場合、バー及びカールが発生し、カッティング性及び切断性を確保できないことが分かる。また、これは、基材フィルムの材質に応じて異なる様相を示したが、引張強度及び破断伸び率が前記の範囲を逸脱したとき、カッティング性と切断性が低下する傾向は同一であることが分かる。
【0059】
さらに、基材フィルムが形成された方法によって引張強度及び破断伸び率を制御する方法が異なるので、電子ビームを照射しなかったとしても、基材フィルムの引張強度及び破断伸び率を本発明の範囲内にして機械的物性を合わせるだけで、十分にカッティング性及び切断性が維持されることを確認することができた。
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
(実験例2―粘着層のゲル含量及び粘着フィルムの剥離力測定)
【0063】
<実施例及び比較例>
下記の[表5]及び[表6]のように基材フィルムの種類を変えて基材フィルムを形成し、前記の形成された基材フィルムの一側面にコンマコーター法によって粘着層を形成した。前記粘着層はアクリル系樹脂組成物を含むので、前記樹脂組成物は、全体の樹脂組成物100重量部に対してエチルヘキシルアクリレート60重量部、メチルアクリレート20重量部、ヒドロキシエチルアクリレート20重量部の配合で構成される。その後、前記樹脂組成物を溶剤エチルアセテートに混合し、熱開始剤である2,2―アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、Japan)を全体の樹脂組成物に対して0.01重量部投入し、温度を60℃に上昇させた後で8時間反応させ、前記樹脂組成物を分子量が50万である高分子樹脂に重合した。
【0064】
その後、前記ヒドロキシエチルアクリレート100重量部に対して、90重量部のMOI(Methacryloyloxyethyl Isocyanate)を投入し、25℃で24時間変性反応を行い、前記樹脂組成物のヒドロキシル基とMOIのイソシアネート(NCO)を反応させる。その後、光開始剤であるイガキュア651と、HDI(1,6―Hexamethylene diisocyanate)硬化剤を投入して混合し、厚さが38μmの異形PET上にコーティングした後で乾燥し、厚さを20μmにした。その後、製造された粘着層を下記の[表5]及び[表6]の実施例及び比較例の基材フィルムに転写し、40℃で3日の熟成を経て半硬化状態の半導体用ウエハー表面保護用粘着フィルムを製造した。
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】
<評価方法>
前記の[表5]、[表6]のように製造された粘着フィルムを幅1インチ、長さ10cmに切り取ってポリイミド面に2kgのローラーで5回往復して付着し、30分経過後にUTM(Universal Testing Machine)で剥離速度を300mm/minにして紫外線照射前の剥離力を測定した。その後、ポリイミド面に付着した状態で紫外線1500mJ/cmのエネルギーを照射し、同一の方法で紫外線照射後の剥離力を測定した。また、前記各粘着フィルムを紫外線照射前の状態で水が入ったトレーに浸して24時間維持させた後、水浸の発生有無を観察した。一方、水に浸された状態の試片を取り出して常温で24時間放置した後で完全に乾燥し、その後、再び紫外線を照射した後で保護フィルムを剥離し、ポリイミド基材上の残渣の有無を観察した後、その結果を記録した。
【0068】
併せて、ゲル含量は、前記基材フィルムの一側表面に形成された粘着層をエチルアセテートに1日浸した後、300メッシュにろ過して110℃で2時間乾燥させた後、重さ減少程度を通して測定した。
【0069】
<評価結果>
下記の[表7]及び[表8]から分かるように、UV照射前の剥離力が1200g/inを超える場合は、水浸が発生しなかったとしてもUV照射後に残渣が残る結果が得られ、UV照射前剥離力が400g/in未満である場合は、UV照射後に残渣が残らなかったとしても水浸が発生する結果が得られた。併せて、粘着フィルムの紫外線照射後の剥離力は、20g/inないし200g/inの範囲内であることが最も適切であることが分かった。さらに、カッティング性と切断性を確保した基材フィルムに一側表面に形成されている粘着剤層のゲル含量が50%ないし90%の範囲内であることを確認することができた。
【0070】
結果的に、基材フィルムの種類や引張強度及び破断伸び率が本発明で制限する範囲内にある場合、前記基材フィルムの一側面に形成された粘着層を構成する樹脂組成物が一定のゲル含量を維持し、これによって形成された粘着フィルムが紫外線の照射前又は照射後に一定範囲の剥離力を有することによって、ウエハー加工時に研削工程が円滑に行われることが分かった。
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】