特許第5974107号(P5974107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5974107金属ワイヤを一定の張力で供給するための積極的供給装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974107
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】金属ワイヤを一定の張力で供給するための積極的供給装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 59/04 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   B65H59/04
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-539417(P2014-539417)
(86)(22)【出願日】2012年10月29日
(65)【公表番号】特表2014-534140(P2014-534140A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】IB2012002180
(87)【国際公開番号】WO2013064879
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2014年9月17日
(31)【優先権主張番号】MI2011A001983
(32)【優先日】2011年11月2日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513122107
【氏名又は名称】ビティエッセエッレ インターナショナル ソチエタ ペル アチオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100175237
【弁理士】
【氏名又は名称】加納 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(72)【発明者】
【氏名】バレア チツイアノ
【審査官】 田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−105328(JP,A)
【文献】 特表2009−501116(JP,A)
【文献】 特開昭64−034873(JP,A)
【文献】 特開平06−310353(JP,A)
【文献】 特開2001−328766(JP,A)
【文献】 特開2006−225051(JP,A)
【文献】 米国特許第05092534(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 59/04,59/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応するスプールから繰り出す金属ワイヤの供給装置(1)であって、ワイヤ制動部材(12)を有する本体(2)を備え、ワイヤが、所望の張力で巻線機等の加工機械に供給され、前記張力は、本体(2)に取り付けられた張力センサ(25)によって測定され、アクチュエータ(16、17)によって駆動される少なくとも1個の回転部材(14、15)が、本体(2)に取り付けられ、回転部材の周囲にはワイヤが回転の一部分又は数回転分巻き付き、回転部材(14、15)を回転させるアクチュエータ(16、17)によって発生された駆動トルクによって定まる張力で、ワイヤを加工機械に供給するため、前記張力は、調節され即ち大きく又は小さくされ、少なくとも所定の及び/又はプログラム可能な基準値の範囲内で一定に維持され、アクチュエータ(16、17)の動かすための制御手段(18)が、張力センサ(25)に接続されて備わっており、制御手段(18)は、張力センサ(25)によって測定された張力に基づいて、アクチュエータ(16、17)によって発生されて回転部材(14、15)にかかる駆動トルクを調節するようになっているマイクロプロセッサータイプのものであることが好ましい制御手段(18)であり、前記張力は、対応するスプールからワイヤが繰り出す際の張力よりも大きい又は小さいことが可能である供給装置(1)において、制御手段(18)は、供給装置(1)によって独立に測定されたワイヤ供給値に関する張力を表すデータを有する記憶装置と協働し、前記ワイヤ供給値は、供給装置(1)によって供給されるワイヤの量及びワイヤ供給速度のうちの少なくとも1つであり、ワイヤの供給張力は、回転部材(14、15)及び対応するアクチュエータ(16、17)に作用することにより、加工機械の作業段階に基づいて変更され、
前記作業段階は、コイルの末端部の周囲にワイヤを巻いて末端部を包む巻き包み段階と、最高巻き付け速度を用いることが要求される作成段階と、金属ワイヤが機械に供給されていない装填段階とを含むことを特徴とする供給装置。
【請求項2】
制御手段(18が、以下の方法:直列バス、同期パルス、アナログ/デジタル接続部材等のうちの少なくとも1つにより、加工機械と接続されており、張力制御、より厳密に言えば、基準値の規定が、加工機械から来る信号に基づいて行われ、前記信号は、作業段階ごとに異なる金属ワイヤの張力を有する機械の異なる作業段階に関連していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
プログラム可能な所定時間内になされる張力の調節が、測定された金属ワイヤの張力を、少なくとも所定の値の範囲に至らせない時は何時でも作動される警報手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
回転部材(14、15)を回転させるためのアクチュエータ(16、17)が、高いトルクを発生させることのできるモータであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
アクチュエータ(16、17)が、可逆回転タイプのものであり、1つの方向又は反対の方向のいずれにも回転できることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
金属ワイヤが相次いで協働する複数の回転部材(14、15)及び対応するアクチュエータ(16、17)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
張力センサ(25)を接触する前に、ワイヤが協働する補償部材(20)を備え、補償部材(20)は、本体(2)に蝶番で取り付けられた可動の補償アームであり、補償部材(20)には、弾性部材(41)が連結され、弾性部材(41)は、一端において供給装置(1)の本体(2)に連結され、もう一方の端において制御手段(18)の制御及び指令を受けるアクチュエータ(48)によって駆動される誘導されて移動可能な部材(46)に連結されており、この制御は、機械の作業段階と供給装置(1)の出口において、張力センサ(25)によって測定されたワイヤの張力とのいずれか一方によって設定された値に基づき、制御手段(18)によって行われることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
弾性部材(41)が、互いに異なる弾性特性を持つ複数のばね部分を備えているばねであることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
補償アーム(20)の位置が、プログラム可能で、前記位置は、所定の角域内で指定されることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項10】
補償アーム(20)の位置が、機械の作業段階に基づいてプログラム可能であり、前記位置は、ワイヤの作業張力とは無関係であることが好ましいことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立形式の請求項の公知要件事項部に記載のワイヤ供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々な形を有し、種々な材料からなり、最終製品の一部を形成するか又は(温度により自己接着するワイヤを用いて形成される「空中コイル(coils in air)」として知られるコイルの場合のように)製造段階中だけ使用されることがある物理的支持体に金属ワイヤを巻かなければならない多数の工業的プロセス(電動モータの製造、コイルの形成、等)が、知られている。
【0003】
これらのプロセスでは、最終製品の一定性及び品質を確保するために、張力の制御は根本的なものである。例えば、適正な張力制御が、高品質の方形コイルの形成を、金属ワイヤを支持体に、支持体に存在する角(かど)の付近でも、正確に付着させ、所謂「柔らかいコイル」として知られる事態を防止することにより、保証する。
【0004】
コイルにかかる張力はまた、例えば、ワイヤの伸びを引き起こし、ワイヤの断面を減少させ、その結果、最終製品の比抵抗ρ、したがって、インピーダンスの低下を引き起こすことがある(例えば、ρ×ワイヤの長さ=抵抗)。
【0005】
張力の制御は、コイル製造の初期段階の間、特に重要であり、初期段階では、末端部の周囲にワイヤを巻いて末端部を包み(巻き包み段階)、次いで、これらの末端部には、ワイヤを溶接して、ワイヤを末端部にしっかりと固着させ、ワイヤが外れるのを防止する。さらに自動機械によって行われる巻き付け過程中、2つの別個のコイルの連続する巻き付けは、既に仕上がったコイル、より正確にはワイヤが巻き付けられた支持体を取り出す段階と、新しいコイルの巻き付けと準備を開始するため、新しい支持体を装填する段階とを含んでいる。この操作は、(オペレーターにより)手動で行うこともでき、又は一般的にはワイヤを切断し、既にワイヤが巻き付けられた支持体が固定されたアームを機械的に動かすことにより、自動的に行うこともできる(本明細書で以下に装填段階と称する段階)。この装填段階中では、例えば次の製造段階の開始に関する問題を引き起こすことのあるワイヤの緩みが生じないよう、ワイヤの張力を制御することが重要である。
【0006】
張力をかける通常の範囲は、ワイヤの直径に応じて、5〜4000cN(センチニュートン)と様々であり、明らかに、ワイヤの直径が小さいほど、作業張力は低く、巻き付け段階中の張力制御の重要性が大きくなる。
【0007】
前記の制御をすることのできる特に金属ワイヤ用のいろいろな種類の供給装置(又は単に供給手段)が、公知である。
【0008】
斯かる供給装置の第1の種類は、全面的に機械で作動する供給手段を備えており、この供給手段には、ワイヤブレーキ(一般にフェルトパッド式のもの)が固定された本体があり、その目的は、スプールから来るワイヤを安定化させ、通常ワイヤに付着しているパラフィンを取り除いてスプールから来るワイヤをきれいにし、きれいにしたワイヤを張力部材に供給することである。この張力部材は、一般に、一端において供給手段の本体に蝶番で取り付けられ、静止位置に戻すためにばねの力を受ける可動のアームからなっている。このアームの目的は、ワイヤの繰り出し中、ワイヤの張力を一定に維持し、プロセスの実施により要求された時に(支持体の交替段階において)、確実にワイヤの弛みを取ることである。
【0009】
これらの供給手段は、いろいろな欠点を露呈する。先ず、金属ワイヤの張力は、一般的に、張力アームと協働する1個以上のばねにより調節されるので、この張力調節装置は、全過程の間、手動で調節をし、場所ごとに制御しなければならない。この点で、この張力調節装置は、「開ループシステム」であり、開ループシステムは、過程中に生じるエラー(スプールから来る金属ワイヤの入口張力の変化、ばねのうちの1つの損傷又は較正不良(decalibration)、入口ワイヤブレーキ内の埃の堆積等)を修正することができない。
【0010】
加えて、前記の種類の供給手段では、ただ1つの作業張力が設定されるので、巻き包み段階のため、作成段階のため及び装填段階のための異なる張力を設定する可能性がない。
【0011】
この設定された張力は、巻き付け速度にもよるが、このことは、部分的に、やはり巻き付け速度の関数である摩擦張力の結果だからであり、この理由で、機械の加速及び減速の段階で、大きな張力の変動が生じる。
【0012】
これらの張力の変動は、最終製品の品質に悪影響を与え、巻かれた金属ワイヤの抵抗値及びインピーダンスの変動も引き起こす。
【0013】
さらに、金属ワイヤにかかる張力は、可動のアームに作用するばねの効力によって生じるので、一般的な金属ワイヤが処理機械に供給される際の張力の範囲全体を満足させることのできる単一の装置を得ることは不可能である。そのため、あらゆる種類の金属ワイヤを扱うことができるためには、幾つかの供給装置が必要であるか又は供給装置の一部(例えばばね)を機械的に改造しなければならないかの何れかである。
【0014】
完全に機械的な供給装置とは対照的に、回転プーリが固定された電動モータを有する電気機械的な供給装置又は供給手段も知られており、回転プーリには、スプールから来る金属ワイヤが、フェルトパッド製のワイヤブレーキを通過した後、機械的供給手段の可動のメカニカルアームと類似の可動のメカニカルアームに達する前に、少なくとも1回転巻き付く。
【0015】
可動のメカニカルアームに作用するばねが、電子制御ユニットと共に存在し、電子制御ユニットは、モータの作動の制御に加え、このメカニカルアームの位置を測定することができる。メカニカルアームの位置に応じて、この電子制御ユニットは、モータの速度を、したがって、ワイヤの供給速度を、実際には、加速及び制動のためのコマンドとしてメカニカルアーム自体を用いて、上昇又は低下させる。
【0016】
これらの供給手段も、それらが、可動のメカニカルアームを使用してワイヤに張力をかけ、最終製品の実際の制御なしに「開ループ」の状態で作動するので、先に述べた厳密に機械的な供給装置の限界を露呈する。さらに、電子制動装置が知られており、電子制動装置は、可動の巻き取りメカニカルアームに加えて、供給手段の出口に配置されたロードセル(又は他の同等の張力測定部材)を備え、供給装置制御ユニットが、測定された張力値を用いて一般的に補償アームの上流の予備制動装置を調節する。斯かる解決策が、例えばヨーロッパ特許第0424770号に開示されている。
【0017】
この解決策が、先に述べた装置のある問題は解決するとしても、この解決策はなお、いろいろな限界を露呈する。例えば、ワイヤの張力は、回転制動部材に作用することにより発生し制御されるため、この装置は閉ループとして作動するが、この回転制動部材は、ワイヤを制動することができるだけで、そのためワイヤの張力を強めることができるだけなので、この装置は、スプールから繰り出す際の張力よりも低い張力でワイヤを供給することができない。
さらに、ワイヤを処理する処理機械の速度が上昇すると、摩擦のために、処理機械へのワイヤの入力張力も大きくなる。そのため、特に作業張力が一般的に非常に小さい直径の小さい金属ワイヤ(毛細ワイヤ)に関しては、この種の供給装置を用いる場合、ワイヤの破断を防止し、毛細ワイヤの所望の最小作業張力を確保するためには、供給速度は一般に低くなければならない。実際、この解決策では、入力張力は、常に出力張力よりも小さくなくてはならない。
【0018】
他の先行特許である米国特許第5421534号が、前記種類の他の供給装置を開示しており、この供給装置では、回転部材が、ワイヤの移動中ワイヤを供給し、制動する。記述された解決策は、ヨーロッパ特許第424770号の対象である装置の欠点と類似の欠点を有し、ヨーロッパ特許第424770号の装置よりも複雑である。さらに、米国特許第5421534号は、補償アームの使用を開示していない。
【0019】
フランス特許第2 655 888号、ドイツ特許第10 2004 020465号及び米国特許第5421534号は、本願請求項1の公知要件事項部の対象を構成する装置に対応する装置を開示している。しかしながら、これら公知の解決策は、金属ワイヤ供給装置において、金属ワイヤの供給中にワイヤのパラメーター(供給されるワイヤの量と速度)を測定することにより、この金属ワイヤの供給を、制御された一定の張力下で、完全に自動的な態様で行うことのできる供給装置を開示していない。言い換えれば、前記先行特許におけるワイヤの供給は、前記ワイヤのパラメーターに関して自動的供給装置によってなされた測定を通じて自動的供給装置の作動により行われていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、供給の閉ループ制御により、金属ワイヤの張力を測定しながら、金属ワイヤの張力を、場合によりプログラム可能な所定の値で(金属ワイヤの張力を減少又は増加させることにより)均一にしながら、金属ワイヤを供給することのできる装置を提供することである。このようにして、本発明の供給装置は、金属ワイヤを制動することができるだけでなく、対応する出どころのスプールから金属ワイヤが繰り出す際の張力よりも小さい(大きくないというだけではない)張力で、金属ワイヤを供給することができる。
【0021】
本発明の他の目的は、ワイヤが受ける全過程に関して、単一のワイヤ供給張力を設定することができる又は機械の異なる作業段階(巻き包み段階、作成段階、装填段階)において異なる張力を得るため、全て全面的に自動的態様で又は機械と接続させることにより、異なる張力を設定することができる装置を提供することである。
【0022】
本発明の更なる目的は、最上の性能を示しながら、既に市場に出ている処理機械に作用することもでき、したがって、処理機械とのいかなる種類の特定の接続もなしに、処理機械のいろいろな作業段階に対応する作業特性に基づいてワイヤに作用するが、必ずしも処理機械に接続されることなく、処理機械から指令信号を受信することがない装置を提供することである。
【0023】
本発明の他の目的は、処理機械の速度変化に対して及び処理機械の(例えば、種々なワイヤ作業段階に基づく)様々な張力設定に対して即座に応答することができ、そのため、作業過程の切り替え段階(巻き包み張力から作成張力への移行、速度傾斜等)中に、供給制御を最適にすることができるという意味で非常に動的な装置を提供することである。
【0024】
本発明の他の目的は、完全に制御下のワイヤ張力を有しながら、特に、毛細ワイヤなどの特定の性質の金属ワイヤに関して、機械の速度を上昇させることのできる装置を提供することである。
【0025】
本発明のさらに別の目的は、全ての範囲の金属ワイヤ及びそれらの金属ワイヤが受ける全ての範囲の作業張力に関して作動することのできる単一の装置を提供することである。
【0026】
本発明の他の目的は、低速でも大きな張力でワイヤを供給することのできる装置を提供することである。
【0027】
本発明の更なる目的は、処理機械に供給される金属ワイヤの量を、絶対的な精度で測定することのできる装置を提供することである。
【0028】
本発明の他の目的は、張力の変化又は張力の不存在として検知されるあらゆるワイヤの破損を監視することのできる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
これらの目的及び当業者には明らかになるであろう他の目的は、添付の特許請求の範囲に記載の供給装置によって達成される。
【0030】
本発明は、非限定の例示として提示されている添付図面から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明による供給装置の正面図である。
図2図1の供給装置を右から見た図であるが、より平明にするために、幾つかの部品が除かれている。
図3図1の供給装置を左から見た図であるが、より平明にするために、幾つかの部品が除かれている。
図4図1の線4−4に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
前記図面を参照すると、金属ワイヤ供給装置が、全体を符号1で示され、前面3と側面4及び5を有する本体又はケーシング2を備えている。これらの側面は、カバー部材によって閉じられているが、本体2の内部が分かるように、カバー部材は、図2及び図3には示していない。
【0033】
前面3には又は前面3に取り付けられて前面から突出した、(図1を参照すると、本体2の下部から始まる)平行な支持体7及び8があり、支持体7及び8は、それぞれの支持体に固定されたピンを中心にして自由に回転することのできる同様な溝付きローラ9又は10を担持している。各ローラ9、10は、セラミック材料からなっているのが好ましく、各ローラ9、10の目的は、スプール(図示せず)から本発明の供給装置1へ及び本発明の供給装置から処理機械(やはり図示せず)へのワイヤの軌跡を規定することである。これらの軌跡は、それぞれF及びWで示されている。ローラがセラミック材料からなっている(又は同等の低摩擦係数材料からなっている)のは、ワイヤとローラとの間の摩擦を最小限にして、接触中にワイヤが損傷する可能性を最小限にするためである。
【0034】
本体2は、ワイヤがローラ9からの出口でワイヤが協働するワイヤブレーキ12を備えており、ワイヤブレーキは、本発明の供給装置に入るワイヤを安定化させ、(先のワイヤ引き出し段階によってもたらされる)パラフィン残留物を除去するため、普通のフェルト(図示せず)を用いてワイヤを清掃する役割を有している。ワイヤブレーキ12を出ると、このワイヤは、第2のプーリ15に移行する前に、ワイヤが(回転の一部分又は数回転分)周囲に巻き付く第1のプーリ14に行き着く。これらのプーリは何れも、それぞれ、本体2に取り付けられた電動モータ16及び17によって駆動され、電動モータは、その作動が、やはり前記本体に取り付けられた制御ユニット18によって制御され管理される。
【0035】
この本体には、緩み取り又は補償用可動アーム20が、連結されており、可動アーム20は、自由端21に、(やはりセラミック等からなる)ローラ22を経由するのが好ましいワイヤのための通路を有しており、この通路には、プーリ15を離れる(そして本体2の開口部2Aを通過する)ワイヤが到達する。この可動アーム20は、本体2の内側の本体2の前面3の後ろにある。
【0036】
ローラ22(又は同等の固定された通路部材)から、ワイヤは、開口部2Aを通過し、次いで、やはり制御ユニット18に接続された張力センサー25、例えばロードセル、に移行し、ワイヤは、張力センサーから出てローラ10に移行し、処理機械に供給される(矢印W)。
【0037】
制御ユニット18は、張力センサー25を介してワイヤの張力を測定し、それぞれの電動モータ16及び17に作用することによりプーリ14及び15の回転速度を修正することができ、したがって、ワイヤの張力を制御して、場合により(例えば、処理機械内でワイヤが受けるいろいろな作業段階に基づいて)プログラム可能で制御ユニット18において設定される所定の値にならすことができ、制御ユニット18は、マイクロプロセッサータイプでよく、1以上の張力値、例えば上記の作業段階に対応する張力値が表にまとめられた記憶装置を有する(又は斯かる記憶装置と協働する)ことができる。
【0038】
前記の予め設定した張力値は、スプールからワイヤが繰り出す際の張力よりも大きく又は小さくすることができる。
【0039】
本体2はまた、制御ユニット18によって制御されるディスプレイ33を担持しており、ディスプレイ33により本発明の供給装置の作動状態(測定した張力、設定した張力、供給速度等)が表示される。作業パラメーターも、このディスプレイに表示され、作業パラメーターは、キーボード34により設定することができる。
【0040】
本体2は、本発明の供給装置が電力供給を受けられるようにするコネクタ(図示せず)も備えており、コネクタは、本発明の供給装置の状態(測定した張力、速度、あればアラーム状態)を読み取るため、又は本発明の供給装置の作動(作動張力、作動モード等)をプログラムするため、標準的な又は独占所有権のあるバス(RS485、CANBUS、ETHERNET等)を通じて本発明の供給装置との信号の送受信を可能にする。この本体はまた、作業張力をアナログモードでプログラムするための0〜10直流電圧(Vdc)の入力装置及び処理機械が作業段階にあるかどうかを本発明の供給装置に示すための運転−停止入力装置、及び1個以上のデジタル入力装置であって、これにより、機械の異なる作動段階(巻き包み段階、作成段階、装填段階等)に基づいて、異なる作業張力をプログラムすることのできるデジタル入力装置を備えている。
【0041】
ここで、本発明の供給装置1の作動を、より詳細に説明する。
【0042】
本発明による供給装置1の使用中、制御ユニット18は、張力センサー25を介してワイヤの張力を絶えず測定し、この測定値を基準値(設定値)と比較する。測定した張力と、設定した張力又は設定点との間の差異に基づき、前記の測定した張力値を設定値と等しくするため、制御ユニット18は、公知のP、PI、PD、PID又はFOC(ベクトル制御)制御アルゴリズムに従い、モータ16及び17に作用して、それらのモータを加速又は減速させる。
【0043】
本発明の供給装置1は、あらゆる設定張力を保証することができることが明らかとなろう。この点において、この張力値を保証するために、本発明の供給装置は、完全に機械的なブレーキ(すなわちばね装置)又は電気機械的ブレーキを使用せず、ワイヤが巻き付くプーリ14及び15を駆動する2個のモータ16及び17のトルクだけを使用する。このようにして、本発明の供給装置は、2個のモータ16及び17の速度を制御することにより、スプールからの繰り出し中に存在するワイヤの張力よりも大きな又は小さな出て行くワイヤの張力を保証することができる。したがって、何等の(例えば、ばねを交換することによる)機械的タイプの調節なしに、本発明の供給装置1は、任意の要求される設定張力を保証することができ、そのため、全ての公知の解決策よりも断然広い(ワイヤの直径に、したがって、作業張力に基づく:表1参照)応用範囲を有するという目的を達成することができる。
【0044】
さらに、設定された張力は、単なる数であり、(公知の解決策の場合におけるような)機械的な調節ではないので、本発明の供給装置は、ワイヤが受けることのある種々の作業条件に基づいてこの設定値を変更できることが明らかである。
【0045】
本発明の供給装置1は、処理機械と連携して作動することもでき、完全に自動的に作動することもできる。
【0046】
処理機械と連携する場合には、処理機械と本発明の供給装置との間に信号の送受信がある。こうした信号の送受信により、処理機械は、本発明の供給装置1に、処理機械の作業状態(すなわち、金属ワイヤが受けている作業段階)を信号で知らせ、そのため、本発明の供給装置1は、作業段階に基づいて金属ワイヤの張力を変更することができる。連携は、例えば0〜10Vのアナログ入力装置を介して行うことができ、連携により、処理機械は、リアルタイムに本発明の供給装置1に介入し、いろいろな作業段階に対応する金属ワイヤ作業張力を発生させ、そのため、異なる作業段階のための異なる張力を有するという目的を達成する。
【0047】
代わりに、連携は、例えば制御ユニット18内で又は直列バスを用いてプログラムされた異なる作業張力に対応する本発明の供給装置1のデジタル入力により行うことができる。そのため、異なるデジタル入力(例えば2進コード)をアクティブにすることにより、処理機械は、異なる作業張力を有効にし、そのため、異なる作業段階のための異なる張力を得るという目的を達成する。
【0048】
他の変更形態では、処理機械を、標準的な又は独占所有権のあるフィールドバスを用いて、処理機械がリアルタイムで本発明の供給装置1に介入し、金属ワイヤの作業張力を調節するよう、直列インターフェースによって本発明の供給装置1と接続することができ、こうして、異なる作業段階のための異なる張力を得るという目的を達成する。
【0049】
最後に、処理機械は、本発明の供給装置1の同期入力装置を介して、本発明の供給装置1に接続することができる。この作業の態様では、制御ユニット18は、処理機械からの同期パルス(例えば回転部材の1回転ごとの又は金属ワイヤの支持体への1巻きごとの同期パルス)を受け、その結果、(予め決められたプロファイルに従って)例えば同期パルスごとに金属ワイヤの作業張力を変更する。
【0050】
自動モードでの作動の場合には、本発明の供給装置は、処理機械との直接の連携を持たず、異なる適用条件間(すなわち、異なる金属ワイヤの張力間)の変更は、完全に自動的に行われる。張力センサー25を介して測定した張力を把握することに加え、制御ユニット18はまた、既に述べたように、電動モータ16及び17の速度の制御もするので、瞬間ごとにモータの速度の値を把握する。この速度及びその結果として供給される金属ワイヤの量は、公知の態様で、例えば各モータに接続された又はモータ内部の一般的なホールセンサの又はエンコーダの状態を分析することにより、測定される。1つの実施の形態では、制御ユニット18は、以下の2つのうちの1つの態様で、すなわち、供給される金属ワイヤの量に基づいて張力を評価(及び制御)することにより、又は金属ワイヤ供給速度に基づいて張力を評価(及び制御)することにより、作用する。
【0051】
第1の作業モードでは、制御ユニット18は、例えば各電動モータ16及び17と連携するセンサを用いて、それらのモータの速度を測定するのではなく、(電動モータ16又は17に連結され、金属ワイヤが巻き付くプーリ14又は15の回転の数又は回転の一部分として考えられる)供給される金属ワイヤの量を測定する。制御ユニット18は、制御ユニットが協働する記憶装置にあるデータに基づいて、供給される金属ワイヤの関数として金属ワイヤの張力の変化を把握し、その結果、金属ワイヤの張力を制御する。例えば、制御ユニット18は、プログラムされた作業張力のプロファイルを用いて、金属ワイヤの最初の10mmは、15グラムの張力で供給しなければならず、次の400mmは、100グラムの張力で、その次の10mmは、15グラムの張力で供給しなければならないこと等製造過程の終了までを把握する。
【0052】
そのため、全面的に自動的な態様で、本発明の供給装置1は、単に供給される金属ワイヤの量を測定することにより、作業張力のプロファイル又はシーケンスに従い、金属ワイヤの作業張力を変えることができ、金属ワイヤの供給を、機械のいろいろな作業段階に、より良く適合させることができる。
【0053】
第2の作業モード(金属ワイヤ供給速度の関数としての張力制御)では、制御ユニット18は、各電動モータ16及び17と連携するセンサを用いて、それらの電動モータの速度を測定する。この制御ユニット18は、この測定値を張力と関連付ける記憶されたデータに基づいて、この張力を制御する。制御ユニット18は、異なる作業張力を各速度範囲に関連付ける。例えば、0〜10メートル/分の間の速度に関しては、金属ワイヤは15グラムの張力で供給されるのに対し、速度が10〜100メートル/分の範囲に移行すると、金属ワイヤは100グラムの張力で供給される。明らかに、供給速度と張力の関係は、金属ワイヤの物理的な特徴と、金属ワイヤが受けるプロセスに応じるものである。
【0054】
したがって、金属ワイヤの供給を機械のいろいろな作業段階により良く適合させるため、本発明の供給装置1は、単に各電動モータ16及び17の回転速度を測定することにより、全面的に自動的に金属ワイヤの作業張力を変えることができることが明らかである。実際、金属ワイヤに作用する機械は、通常、少なくとも2つの別個の供給速度、少なくとも巻き包み段階(通常低速で行われる重要なプロセス)及び機械の最高巻き付け速度を用いることが要求される作成段階のための供給速度を用意していることに留意すべきである。
【0055】
したがって、本発明による供給装置は、本発明による供給装置自体と機械との間に「信号の送受信」がある機械との作業及び既に市場に出ている機械との作業の双方に申し分なく適合している。これら双方の場合において、本発明の目的を達成するのに成功し、特に異なる作業条件下で異なる張力が得られることを確実にしている。このことが、各作業段階に関して最適の張力を設定できるようにしており、そのため、製造(ワイヤの巻き付け)の効率、質及び速度に面で機械の有効性を最大限にすることができる。
【0056】
既に述べたように、本発明の供給装置1はまた、本体2に取り付けられたブラケットに固定されたピン40を中心にして自由に回転する補償アーム20を備えている(図2図4参照)。そのため、この補償アーム20は、本体2内で、所定の角域αにわたって張力センサ25に向かって又は張力センサ25から離れるように動くことができる(図2参照)。
【0057】
補償アーム20には、ばね41(図2図4では途切れて示されている)が、取り付けられており、ばね41は、一端において、装置本体2に固定された支持体44に連結され、もう一端において、(アルキメデス)ウォーム47を介してステッピングモータ48によって駆動される可動のキャリッジ46を介して補償アームに連結されている。
【0058】
制御ユニット18に接続された位置センサ(図示せず)が、補償アーム20取り付けられて、角域α内の補償アーム20の位置を測定する。
【0059】
そのため、補償アーム20は、静的でなく動的な態様で、金属ワイヤの摺動に対抗することができる。実際、制御ユニット18は、(ステッピングモータ48に作用することにより)ばね41が連結されたキャリッジ46の位置を変えて、ばね41により補償アーム20にかけられる力を変化させ、補償アーム20を、角域α内の所望の位置に移動させることができる。このようにして、補償アーム20は、金属ワイヤがロードセル又は張力センサ25に対して、常に、特に金属ワイヤが機械に供給されていない段階(装填段階)の間、完璧にピンと張った状態に維持する。そのため、ばね41の力を変られることが、前記張力の値を調節可能にするので、装填段階のための作業設定点を、金属ワイヤが有効に供給される段階に対して差異を設ける目的を達成することができる。
【0060】
補償アーム20はまた、金属ワイヤの蓄えをし、この蓄えから、機械は速度が突然変化する最中に、金属ワイヤを引き出すことができる。この場合には、補償アーム20は、モータが適正な供給速度に達するのを待ちながら、角域α内の第1の位置α1から第2の位置α2へと移動する。したがって、補償アーム20の存在は、各電動モータ16及び17の加速時間によってモータらされる動的限界を克服するので、機械の速度が変化(加速)する間にも、金属ワイヤの張力が制御下に保たれるようにすることができ、そのため、金属ワイヤの張力が、常に所要の設定点で均一にされる。
【0061】
したがって、補償アーム20は、やはり張力センサ25及び制御ユニット18を備えた第2の張力制御ループを構成し、この第2の張力制御ループは、モータ16及び17、張力センサ25並びに制御ユニット18により構成される第1の張力制御ループに加えられる。
【0062】
補償アーム20はまた、機械の減速段階中に、角域α内の第2の作業位置α2から第1の作業位置α1へと移行することで、過剰の金属ワイヤの緩みを取ることができる。したがって、補償アーム20の存在は、モータの減速時間によってモータらされる動的限界を克服するので、この場合にも、機械の速度が変化(減速)する間、金属ワイヤの張力が制御下に保たれるようにすることができ、金属ワイヤの張力を、常に所要の設定点で均一にすることができる。この機能も、第2の張力制御ループの範囲内に属するものである。
【0063】
したがって、補償アーム20の存在は、機械の加速及び減速段階においてだけでなく、方形のコイルを製造する場合等のように、程度の差こそあれ高い吸収の不連続がある全ての条件下でも、本発明の供給装置1が、その動性を高めることができるようにするものである。
【0064】
本発明は、補償アーム20の位置をプログラムすることもでき、このことは、特定の作業条件により良く適合することを可能にし、作業張力とは無関係である。
【0065】
この点で、制御ユニット18は、補償アーム20の位置を把握することにより、ばね41の力を変えて、補償アーム20を所望の位置に移行させることができる。例えば、補償アーム20が、常に角域αの中央にあるようにして、本発明の供給装置が、起こり得る機械の加速及び減速のための金属ワイヤの同一の「蓄え」を確保できるようにする。
【0066】
そのため、本発明の供給装置は、供給段階中であろうと休止中であろうと、加工機械のいかなる作業段階においても、金属ワイヤの張力値を制御し、金属ワイヤの張力値をプログラム可能なこともある所定の値で均一にすることができる。本発明の供給装置は、金属ワイヤの存在及び/又は金属ワイヤの不存在(破損)を、(加工機械との何等のインタフェースなしに)監視することもできる。制御ユニット18は、測定した張力が、特定の作業段階に要求される必要な作業張力の領域における(プログラム可能なことが好ましい)ある範囲内であることを、連続的に確認する。制御ユニット18は、測定値が前記範囲の外側にあり、(プログラム可能なことが好ましい)所定の時間そこに留まっていることを検知すると直ちに、この異常を(例えば、公知の合図手段により視覚的及び/又は聴覚的に)知らせ、警報器を作動させ、警報器により、加工機械又は本発明の供給装置に接続された独立の機械部分が停止される。
【0067】
本発明の種々な特徴を説明してきたが、他の特徴もあり得る。例えば、本発明の供給装置は、適したトルクの単一のモータ16又は17を備えていてもよく、スペースと費用を最適化することができる。
【0068】
本発明の供給装置は、低速でも高いトルクを得るため、本願と同じ出願人名義のヨーロッパ特許第2080724号に記載の発展したモータを備えていてもよい。
【0069】
さらに、加工機械のいろいろな作業段階によって指令される本発明の供給装置の作動状態が変化するので、異なる作業張力をそれらの作業段階と関連付けることができるだけでなく、他の設定、例えばP、PI、PD、PID若しくはFOC(ベクトル制御)の係数、又は破断したワイヤの認識などのいくつかの異なる機能を可能にすること/不能にすること、その他を、上記の作業段階と関連付けることもできる。
【0070】
さらに、単なる単純な1個のばねである代わりに、補償アーム20に対する抗力として用いられるばね41を、(漸進的な圧縮をもたらすばねを構成する)異なる弾性係数の複数のばねを備えていてもよく、各々のばねは、異なる連続した張力の範囲を手掛ける。そのため、単一のばねを用いて、調節がよりきめ細やかでより広い応用範囲が得られる。
【0071】
最後に、本発明の供給装置1は、例えば装填段階中に、金属ワイヤの供給と過剰分の緩み取りができるよう、2つの異なる反対方向の回転を制御することのできる対応するモータ16(又は17)を有する少なくとも1個のプーリ14(又は15)を備えていてもよい。
【0072】
これらの変更態様も、以下の請求項の範囲に属するものと考えるべきである。
図1
図2
図3
図4