特許第5974138号(P5974138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5974138
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/02 20060101AFI20160809BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   E04H1/02
   E04H9/02 331A
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-97706(P2015-97706)
(22)【出願日】2015年5月12日
【審査請求日】2015年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】515126695
【氏名又は名称】鳥巣 元太
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】鳥巣 元太
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−090337(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第02710078(DE,A1)
【文献】 特開昭62−001950(JP,A)
【文献】 特開2014−092016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/00−1/04
E04H 9/02
E04B 1/34、1/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜地に建設された建物であって、
前記傾斜地の斜面下側に確保された平坦地あるいは前記斜面途中に構築された基礎と、前記基礎上に設けられた土台と、前記土台上に設けられ前記土台上からその側方へ張り出されたプラットフォームと、前記プラットフォームの中央部を上下方向に貫通する開口部の内周に沿う環状に構築された建物本体とを有し、
前記土台が、枠状部と前記枠状部からその中心軸線方向に延出する複数本の柱状の延出部とを含む構成か、あるいは全体が筒状に形成された構成のいずれかを有することにより、前記土台を上下方向に貫通する内側空間が確保され、
前記プラットフォームは前記開口部を前記土台の前記内側空間に連通させて前記開口部周囲の内周部を前記土台の前記枠状部上に、あるいは筒状に形成された前記土台の上に、設置して設けられ
前記土台と前記プラットフォームとの間に免震装置が設けられ、
前記プラットフォームをその下側で前記基礎上方に支持しているのは前記土台のみである
ことを特徴とする建物。
【請求項2】
前記基礎と前記土台との間に免震装置が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記プラットフォームの前記傾斜地の斜面上側の端部に、前記傾斜地を形成する地山と前記プラットフォームとの間に架設するブリッジを有し、前記ブリッジは、前記地山に設けられたブリッジ受け部の上面上にスライド移動自在に載置される先端部を有し、しかも前記プラットフォームに回転自在または昇降自在に設けられて、前記先端部が前記ブリッジ受け部上面に対して昇降自在とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の建物。
【請求項4】
給水管、排水管、給気管、排気管、熱媒流体管、冷媒流体管から選択される1以上の配管が環状の前記建物本体からその内周側を上下に貫通する内側孔へ引き出され、前記建物本体の前記内側孔及び前記土台の前記内側空間の一方又は両方に、前記配管が接続され該配管を介して前記建物本体内へ送給される流体又は前記配管から流入する流体の浄化処理又は加熱又は冷却を行なう流体処理装置が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の建物。
【請求項5】
前記基礎と前記プラットフォームとの間に、前記傾斜地から前記建物本体の内側孔又は前記土台の前記内側空間に引き込む配管又は電気ケーブルを通すための挿通空間が確保されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の建物。
【請求項6】
前記プラットフォームは、複数の梁材によって組み立てられ、梁連結部材を用いた前記梁材同士の連結によって3以上の前記梁材に取り囲まれた囲繞領域が複数画成され、前記梁連結部材は前記梁材同士の連結及び連結解除が可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜地に建設して住宅、店舗等に用いることができる建物に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国の国土は山がちで平地が少ない。また、山地が海岸線近くまで迫り住宅建設に適する平地が少ない地域も多く、このような地域では住宅建設用地の確保が容易でない。このため、傾斜地の宅地活用が、住宅建設用地確保の有効対策になり得ると考えられる。
【0003】
また、平成23年3月11日の東日本大震災では、海岸線から続く標高10m以下の平地に立地する戸建住宅の多くが地震により発生した津波により甚大な被害を受けた。傾斜地の宅地利用は、津波被害を受けにくい充分な標高が確保された所への住宅建設促進の一助となる。特に山地が海岸線から数km以内に迫る地域では、平地からの距離が近い傾斜地への住宅建設により平地との一体的な市街地形成が可能となる等の利点がある。
【0004】
勾配1/100以上1/20以下の傾斜地(以下、本明細書において緩傾斜地とも言う)への戸建の住宅建築物の建設は、切り工によって平坦造成した敷地に構築した基礎上に、居住空間を内部に有する上部構造物を構築する(以下、傾斜地第1建設手法とも言う)ことが従来から広く行なわれている。また、平坦造成無しで緩傾斜地にその地表からの突出寸法が互いに異なる複数の基礎を構築し、これら基礎上に上部構造物を構築する(以下、傾斜地第2建設手法とも言う)ことも広く行なわれている。
【0005】
傾斜地第2建設手法にて緩傾斜地に複数構築する基礎は、緩傾斜地下側の基礎ほど地表からの突出寸法が大きくなるように構築する。このため、緩傾斜地下側に行くほど、上部構造物最下階の水平に構築された床と緩傾斜地地表との間の距離が大きくなる(例えば特許文献1の図3等参照)。
【0006】
また、勾配が1/20を超える傾斜地(以下、本明細書において急傾斜地とも言う)への戸建住宅建築物の建設では、地山斜面上側に確保された地山平坦部に構築した基礎上に設置した梁に地山平坦部の地山斜面側の端から張り出す張出部を確保し、この梁の張出部をその下方の地山に構築した基礎から上方へ立ち上げた支柱によって支持して下部構造物を構築する手法(以下、傾斜地第3建設手法とも言う。例えば特許文献2の図1図4図8等参照)が知られている。下部構造物は梁と基礎と支柱とを有する。この手法においては、下部構造物の梁(以下、土台梁とも言う)上に上部構造物を構築する。
【0007】
傾斜地第1建設手法は、傾斜地の地形や環境保全等による制約が大きく、造成可能な用地の確保が難しいといった問題がある。このため、用地確保を容易にする点で、既述の傾斜地第2建設手法、及び傾斜地第3建設手法の活用が検討される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−193206号公報
【特許文献2】特開2002−275811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、傾斜地は、上下に積層する複数の地層が地表に露呈していたり、地表に露呈していなくても地表近くに複数の地層が存在する構成であることが多い。傾斜地表層の地震エネルギーに対する揺れ挙動は、傾斜地表層やその付近に存在する地層の構成、向きや、地山内部構造等に起因して、場所によって異なる。
【0010】
このため、傾斜地第2建設手法及び傾斜地第3建設手法では、強い地震波の作用時に、傾斜地地山における基礎構築箇所間の揺れ挙動の違いが住宅建築物に破損等の影響を与える可能性がある。また、基礎を傾斜地のより広範囲に構築すると、地山における各基礎構築箇所の揺れ挙動の違いが住宅建築物に影響を与えるリスクが増大する傾向があるため、このことが住宅建築物の建築面積を大きくすることの障害になっていた。
【0011】
なお、傾斜地第3建設手法は、土台梁の張出部の安定支持のため、土台梁の張出部の1以上の箇所を支柱で支持する必要がある。このため、傾斜地第3建設手法では、複数本配列設置した土台梁の張出部支持のために、土台梁の設置本数と同等以上の数の基礎及び支柱を必要とし、これらの施工に手間が掛るといった問題もある。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、傾斜地に建設する建物について、地震波の作用による破損等の影響を受けるリスクを増大させることなく、上部構造物(建物本体)の床面積増大を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る建物は、傾斜地に建設された建物であって、前記傾斜地の斜面下側に確保された平坦地あるいは前記斜面途中に構築された基礎と、前記基礎上に設けられた土台と、前記土台上に設けられ前記土台上からその側方へ張り出されたプラットフォームと、前記プラットフォームの中央部を上下方向に貫通する開口部の内周に沿う環状に構築された建物本体とを有し、前記土台が、枠状部と前記枠状部からその中心軸線方向に延出する複数本の柱状の延出部とを含む構成か、あるいは全体が筒状に形成された構成のいずれかを有することにより、前記土台を上下方向に貫通する内側空間が確保され、前記プラットフォームは前記開口部を前記土台の前記内側空間に連通させて前記開口部周囲の内周部を前記土台の前記枠状部上に、あるいは筒状に形成された前記土台の上に、設置して設けられ、前記土台と前記プラットフォームとの間に免震装置が設けられ、前記プラットフォームをその下側で前記基礎上方に支持しているのは前記土台のみであることを特徴とする。
本発明に係る建物では、前記基礎と前記土台との間に免震装置が設けられていてもよい。
本発明に係る建物では、前記プラットフォームの前記傾斜地の斜面上側の端部に、前記傾斜地を形成する地山と前記プラットフォームとの間に架設するブリッジを有し、前記ブリッジは、前記地山に設けられたブリッジ受け部の上面上にスライド移動自在に載置される先端部を有し、しかも前記プラットフォームに回転自在または昇降自在に設けられて、前記先端部が前記ブリッジ受け部上面に対して昇降自在とされていてもよい。
本発明に係る建物では、給水管、排水管、給気管、排気管、熱媒流体管、冷媒流体管から選択される1以上の配管が環状の前記建物本体からその内周側を上下に貫通する内側孔へ引き出され、前記建物本体の前記内側孔及び前記土台の前記内側空間の一方又は両方に、前記配管が接続され該配管を介して前記建物本体内へ送給される流体又は前記配管から流入する流体の浄化処理又は加熱又は冷却を行なう流体処理装置が設けられていてもよい。
本発明に係る建物では、前記基礎と前記プラットフォームとの間に、前記傾斜地から前記建物本体の内側孔又は前記土台の前記内側空間に引き込む配管又は電気ケーブルを通すための挿通空間が確保されていてもよい。
本発明に係る建物では、前記プラットフォームは、複数の梁材によって組み立てられ、梁連結部材を用いた前記梁材同士の連結によって3以上の前記梁材に取り囲まれた囲繞領域が複数画成され、前記梁連結部材は前記梁材同士の連結及び連結解除が可能であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る建物の建物本体は、地盤の建物本体最下階床面積に比べて面積が小さい限られた領域に設けられた基礎に支持される。これにより、本発明では、傾斜地の地層の構成等に起因する揺れ挙動の場所依存性の影響を低減できるので、基礎構築箇所間の揺れ挙動の違いによる建物の破損等を防ぐことができる。また、建物本体が基礎上のプラットフォーム上に設けられた構造のため、地震波の作用による破損等の影響を受けるリスクを増大させることなく、上部構造物(建物本体)の床面積を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る建物の斜視分解図である。
図2図1の建物のA−A’断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るプラットフォームを構成する梁材の組立例を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係るプラットフォームの囲繞領域のバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜4を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る建物100は住宅に用いられるものである(以下、住宅建築物とも言う。)、図1、2に示す住宅建築物100は、傾斜地10に建設されている。住宅建築物100は、基礎110と、土台120と、プラットフォーム130と、建物本体140(住宅本体)と、を有する。基礎110と、土台120と、プラットフォーム130と、建物本体140と、は、この順に下から上へと積み重ねられるように設けられている。また、住宅建築物100は土台120とプラットフォーム130との間に介在設置された免震装置150を含む。
【0018】
(基礎)
図2に示すように、基礎110は、傾斜地10の斜面11の途中に構築されている。基礎110は、鉄筋コンクリート製である。基礎110の下部は、傾斜地10に埋設固定されている。また、図1図2に例示した基礎110は、上下方向の中心軸線を以て延在する筒状に形成されている。図1図2に例示した基礎110は、より具体的には断面四角枠状で上下方向に延在する角筒状に形成されている。
【0019】
なお、本実施形態では、基礎110を斜面11の途中に設けているが、基礎110の構築される場所はこれに限られない。例えば、斜面11の下側に自然又は人工的に形成された平坦地に基礎110を構築してもよい。
【0020】
基礎110の上部内側には、コンクリート床111が形成されている。
図1図2に例示したコンクリート床111は、筒状の基礎110内側を埋め込む地山上に形成されている。
【0021】
(土台)
基礎110上には、土台120が設けられている。図示例の土台120は、鉄筋コンクリート製である。
【0022】
土台120は、枠状部121と、枠状部121からその片面側へ延出する延出部122と、を含む。延出部122は、枠状部121から枠状部121の取り囲む中心軸線方向に延出している。図1図2に例示した枠状部121は、四角枠状に形成されている。
【0023】
延出部122は、複数本の柱状の構造体である。延出部122は、枠状部121の4つの角部から、1本ずつ延出している。土台120は、4本の延出部122を、それぞれ基礎110の四隅の角部上に立てるようにして載置し、これら延出部122上の枠状部121の中心軸線が上下方向に延在するようにして基礎110上に設けられている。また、各延出部122は、例えば、現場内コンクリートや締結金具等の固定手段を用いて、基礎110に固定されている。なお、延出部の長さは、3〜5mである。
【0024】
土台120の複数本(図示例では4本)の延出部122は、枠状部121の内側領域の仮想延長を取り囲むように配置されている。土台120の枠状部121及び延出部122によって取り囲まれた内側空間123は、土台120を上下方向に貫通している。
【0025】
土台120の構築には、プレキャスト工法、コンクリートの現場打ち等、種々公知の方法を用いることができる。
プレキャスト工法では、複数のコンクリート部材を一体化して組み立てられる構造の土台120を採用し、基礎110上に搬入した複数のコンクリート部材を一体化して土台120を組み立ててもよい。
【0026】
図1図2に例示した基礎110内側のコンクリート床111は、基礎110上端面から若干下側へずれた位置に上面を有する。基礎110上端面は水平方向に延在形成されている。基礎110上端部内側には、基礎110上端から窪んでコンクリート床111上面を底面とする凹形空間が確保されている。この凹形空間は、土台120の内側空間123の仮想延長上に位置し内側空間123と連通している。
図1図2に例示した住宅建築物100は、土台120の内側空間123と基礎110上端部の凹形空間とで構成される下側内部空間を有する。
下側内部空間は、住宅建築物100の設計や、住人の生活様式に応じ、多目的に利用することが可能である。例えば、設備機器、収納什器、自動車用品、農業及び園芸用品用具庫などを置くスペースとして用いることができる。
なお、コンクリート床111は、その上面が基礎110上端面と面一になるように形成したり、基礎110上にその上端面を覆うスラブ状に形成しても良い。これら形態のコンクリート床111の場合、下側内部空間は土台120の内側空間123と一致する。
【0027】
図1図2に示すように、図示例の住宅建築物100は、土台120周方向(内側空間123中心軸線回り方向)において互いに隣り合う2本の延出部122間の領域(空間。以下、延出部間領域とも言う)の間に設けられた土留め板125を含む。土留め板125は、傾斜地10地山の土砂や降雨等によって傾斜地10斜面を流下する流水や傾斜地10地山内の地下水の土台内側空間123への流入を防ぐ役割を果たす。土留め板125は、延出部間領域の下端(基礎110上端面)から上方へ延在するように配置される。また、土留め板125は、その外周部を延出部間領域の両側の延出部122及び基礎110上端面に直接当接させるか、延出部122及び基礎110上端面との間にシール材を挟み込んで、延出部122及び基礎110との間に防水性を確保して設けられる。
【0028】
土留め板125は、必ずしも延出部間領域全体を塞ぐ必要は無い。例えば図1図2の住宅建築物100では、土留め板125の上端は土台枠状部121から下方へずれた所に位置し、当該土留め板125の上端と土台枠状部121との間に空間126が確保されている。土留め板125上端の延出部間領域下端からの高さは、基礎110及び土台120の周囲の傾斜地10地山の高さに鑑みて、傾斜地10地山からの土砂や降水等により傾斜地10斜面を流下する流水の土台内側空間123への流入を阻止するべく適宜設定される。
【0029】
土留め板125上端と土台枠状部121との間の空間126は、土台120側面に開口する開口部として機能する。以下、空間126を土台側部開口部とも言う。
土台側部開口部126は土台内側空間123と連通している。土台側部開口部126は下側内部空間の換気、採光等に利用できる。
なお、後述するように、プラットフォーム130は、土台120の外側に張り出すように設けられている。このため、土台側部開口部126から雨や雪が土台内側空間123に入ることを防ぐことができる。
【0030】
図1図2に例示した住宅建築物100において、土台120の4本の延出部122は、内側空間123中心軸線(本明細書においては、土台120の中心軸線としても扱う)を介して傾斜地10斜面の低い側(以下、斜面下側)に2本、高い側(以下、斜面上側)に2本が配置されている。なお、図1図2において、土台120中心軸線を介して傾斜地10斜面の低い側の2本の延出部122に符号122a,122bを付し、高い側の2本の延出部122に符号122c,122dを付している。
【0031】
図1図2に例示した住宅建築物100では、4箇所の延出部間領域のそれぞれに土留め板125が設けられている。但し、土台120の斜面下側の2本の延出部122a,122b間に設けられた土留め板125(図中、符号125dを付記する)の上端は、土台120の斜面上側の2本の延出部122c,122d間に設けられた土留め板125(図中、符号125cを付記する)の上端に比べて、基礎110上端面からの高さが低い位置にある。また、傾斜地10斜面上側の延出部122cと斜面下側の延出部122bとの間、傾斜地10斜面上側の延出部122dと斜面下側の延出部122aとの間にそれぞれ設けられた土留め壁125a、125bの上端の基礎110上端面からの高さは、傾斜地10斜面上側の土留め壁125c上端と斜面下側の土留め壁125d上端との中間の高さとなっている。
なお、基礎110の傾斜地10斜面下側の側面に接する傾斜地10地山の上端が基礎110上端面よりも下方に位置する場合は、傾斜地10斜面下側の土留め壁125dを省略できる。
【0032】
(プラットフォーム)
図1に示すように、プラットフォーム130は、真っ直ぐに延在する棒状の梁材132同士の連結によって組み上げて構築され、土台120中心軸線に垂直の仮想平面上に延在するように設けられた骨組構造体である。図1図2に例示した住宅建築物100のプラットフォーム130は、土台120上からその側方へ張り出されている。ここで、プラットフォーム130が土台120上から張り出す「側方」とは、土台120中心軸線に垂直の方向において土台120上の領域から外側の方向を指す。
【0033】
図1図2に例示した住宅建築物100のプラットフォーム130は、土台120中心軸線に垂直の仮想平面上に縦横に配置された梁材132同士の連結によって、前記仮想平面に沿って延在するマトリックス状に構築されている。
本明細書において、梁材132の先端部同士を連結した連結部を梁連結部と言う。図1図2に例示した住宅建築物100のプラットフォーム130は、例えば図3に示すように、平面視十字形をなすように配置された4本の梁材132のそれぞれの先端部を梁連結部材133を用いて連結、一体化した梁連結部を有する。また、プラットフォーム130は、図3に例示された梁連結部以外に、3本の梁材132のそれぞれの先端部を梁連結部材133を用いて平面視T字形をなすように連結、一体化した梁連結部や、2本の梁材132のそれぞれの先端部を梁連結部材133を用いて平面視L字形をなすように連結、一体化した梁連結部も有している。
【0034】
図3に例示した梁連結部材133は、L字板133aと、ボルト−ナット133bとの組み合わせであるため、梁材132同士の連結及び連結解除が可能である。これにより、プラットフォーム130の組立及び解体が容易となり、住宅建築物100の移築も容易となる。
【0035】
このようにして、複数の梁材132を連結した結果、梁材132によって取り囲まれた囲繞領域134が複数画成される。図1に例示した住宅建築物100のプラットフォーム130は、3×3のマトリックス状に9つの囲繞領域134が画成された、全体として平面視長方形状に構築されている。3×3のマトリックスの中央の囲繞領域134は、プラットフォーム130の中央部を上下方向に貫通する開口部131として機能する。
【0036】
なお、プラットフォームは、上記の形状に限られるものではない。プラットフォームは、例えば、図4(a)に示すように、図1に例示したプラットフォーム130外周の四辺のそれぞれの中央部のプラットフォーム130外側に、3本の梁材132を用いて1つずつ囲繞領域134を設けた形状であってもよい。これにより、建物本体140にテラスを設けるなどして、より広い居住空間を活用できる。また、例えば、図4(b)に示すように、3×3のマトリックス状の枠の隅を形成する2本の梁材132を、1本の梁材132で代替した形状であってもよい。これにより、プラットフォーム130の端部の強度を向上させることや、プラットフォーム130の質量をプラットフォーム中央により集中させてプラットフォーム130を該プラットフォームに作用する揺動力に対して安定化させることが可能となる。
【0037】
図1図2に示すように、プラットフォーム130は、その平面視中央部の開口部131をその下方の土台内側空間123に連通させ、開口部131を取り囲む内周部を土台120上に配置して土台120の上に設けられる。プラットフォーム130の開口部131の平面視サイズは土台内側空間123の土台内側空間123に比べて小さい。プラットフォーム130は、その開口部131が土台内側空間123と概ね同軸となるようにして土台120上に設けられている。プラットフォーム130の開口部131周囲の内周部は、土台120の枠状部121上に設置される。
【0038】
プラットフォーム130は、その平面視において開口部131から外側に張り出す8本の梁材132a〜132hの開口部131側の端部が枠状部121上に位置するように、土台120の上に設けられている。梁材132a〜132h(具体的にはその開口部131側の端部)は、それぞれ土台120(図示例では枠状部121)上に設けられた免震装置150a〜150hを土台120との間に挟み込んでいる。プラットフォーム130は、免震装置150を介して土台120上に支持されている。また、プラットフォーム130は免震装置150を介して土台120に連結されている。図1に示す住宅建築物100において、免震装置150(150a〜150h)は、プラットフォーム130の開口部131から外側に張り出す8本の梁材132a〜132hに対応させて、土台120上の8箇所に設けられている。
【0039】
図1に示す住宅建築物100において、プラットフォーム130の開口部131は、具体的には、免震装置150(150a〜150h)によってプラットフォーム130と土台120との間に確保された隙間を介して土台内側空間123と連通されている。
【0040】
(建物本体)
建物本体140(上部構造物)は、プラットフォーム130上にその開口部131の内周に沿う環状に構築されている。
建物本体140は、その内周側を上下に貫通する内側孔141をプラットフォーム130の開口部131の概ね同軸上に開口部131と連通させて構築されている。
図2に示すように、建物本体140の内側孔141は、プラットフォーム130の開口部131を介して、土台120の内側空間123と基礎110上端部の凹形空間とで構成される下側内部空間に連通している。
【0041】
図1図2に例示した住宅建築物100は、建物本体140上に設けられた太陽光発電パネル142を含む。また、住宅建築物100は、太陽光発電パネル142を支持して、太陽光発電パネル142の建物本体140に対する向きを変更するパネル向き変更機構を建物本体140上に有する。
図1図2に例示したパネル向き変更機構は、建物本体140上に内側孔141中心軸線を中心とするリング状に設けられたレール143と、このレール143の複数箇所にレール143延在方向(リング状のレール143の平面視周方向)に移動自在に支持された架台144とを有する。太陽光発電パネル142は架台144に支持されている。架台144は、水平方向の回転軸を介して太陽光発電パネル142を傾斜角度可変に支持している。また、パネル向き変更機構は、レール143全周にわたって形成された溝内にレール143に対してその延在方向に移動自在に収納された無端条体と、この無端条体をレール143延在方向に送り移動するモータ145とを有する。架台144は無端条体に取り付けられている。このため、パネル向き変更機構は、モータ145の駆動力によって無端条体を移動することで、架台144に支持された太陽光発電パネル142の向きを変更できる。
【0042】
図1図2に例示した住宅建築物100は、太陽光発電パネル142で発電した電力を、下側内部空間に設けた蓄電池(図示略)に、内側孔141に引き通した配線を介して蓄えることができる。
【0043】
なお、太陽光発電パネル142を設けずに、内側孔141上を覆う屋根を別途設けても良く、また、内側孔141が上空に開口していてもよい。
内側孔141を上空開口させた構成は、降雪が内側孔141を介して下側内部空間に落下する。その結果、特に雪国では、建物本体140の屋根への積雪による荷重を軽減できる。
【0044】
図1図2に示す住宅建築物100は、プラットフォーム130の傾斜地10側の端部に取り付けられて、傾斜地10を形成する地山12(地盤)とプラットフォーム130との間に架設されたブリッジ160を有する。
地山12には、ブリッジ受け部161が設けられている。図1図2において、ブリッジ受け部161は、具体的には、傾斜地10の地山12の傾斜地10斜面よりも上側に確保された平坦面12a(例えば道路を含む平坦地)の傾斜地10斜面側の端部に構築されたブロック状のコンクリート体である。
【0045】
図1図2に示すブリッジ160は、プラットフォーム130の傾斜地10側端部と地山12のブリッジ受け部161上面との間隔方向を長手方向とする長板状に形成されている。ブリッジ160は、プラットフォーム130の傾斜地10側端部からブリッジ受け部161に向かって延出し、その先端部をブリッジ受け部161上面上に載置して設けられている。また、住宅建築物100は、上下方向において、ブリッジ160上面のプラットフォーム130側の端がブリッジ受け部161上面と概ね同じ高さに位置するように構築される。住宅建築物100は、ブリッジ受け部161上面との間に架設されたブリッジ160の上面が水平あるいは僅かに傾斜(例えば水平に対して5度以内の傾斜)するようにプラットフォーム130の高さを設定して構築される。
【0046】
ブリッジ160の先端部は,ブリッジ受け部161上面上にスライド移動自在に載置されている。ブリッジ受け部161は、その上面上におけるどの方向にも、該上面上に載置されたブリッジ160先端部の自由なスライド移動を許容する。図1図2のブリッジ受け部161の上面は水平方向に延在形成されている。
また、図1図2に示す住宅建築物100のブリッジ160の先端部とは反対の基端部は、プラットフォーム130の傾斜地10側端部に回転軸163を介して取り付けられている。ブリッジ160は、プラットフォーム130に対して、回転軸163を介して、土台120中心軸線に直交する仮想平面に平行かつプラットフォーム130とブリッジ受け部161上面との間隔方向に垂直な回転軸線を以て回転自在に軸支されている。このため、ブリッジ160先端部はブリッジ受け部161上面上にて昇降自在になっている。
【0047】
したがって、ブリッジ160の先端部は,ブリッジ受け部161に対して水平方向及び上下方向に移動自在である。このため、ブリッジ160は、地震や強風等の外力によって住宅建築物100と傾斜地10の地山12との間に相対変位が生じたときに、住宅建築物100と地山12との間の相対変位に応じてブリッジ受け部161に対して相対変位し、破壊を回避できる。また、仮にブリッジ160がプラットフォーム130及びブリッジ受け部161に固定されている構成では、住宅建築物100と傾斜地10の地山12との間の相対変位によってブリッジ160からプラットフォーム130に引っ張り、剪断、曲げ等の力が強く作用する可能性があるのに対し、本実施形態のようにブリッジ160がブリッジ受け部161に対して移動自在である構成であれば、住宅建築物100と傾斜地10の地山12との間の相対変位に伴いブリッジ160からプラットフォーム130に作用する力は小さく、この力による住宅建築物100の変形、破損等の心配は無い。
また、ブリッジ160は、住宅建築物100と傾斜地10の地山12との間の相対変位が生じたときに、その先端部がブリッジ受け部161上面上に位置する限り、プラットフォーム130とブリッジ受け部161との間に架設された状態(以下、架設状態とも言う)を保つことができる。
【0048】
回転軸163周りに回転自在のブリッジ160は、回転軸163周りに回転させることにより、その先端部を回転軸163上方あるいは回転軸163から建物本体140側に配置した状態(以下、格納状態とも言う)とすることも可能である。これにより、例えば、傾斜地10の地山12のブリッジ受け部161が設けられている平坦面12aのさらに上側の傾斜地斜面にて土石流や雪崩等の危険が生じたときに、架設状態のブリッジ160を格納状態にしてブリッジ160の損傷や破壊を回避することが可能である。
なお、ブリッジ160は、回転軸163を中心とする回転によって、架設状態と格納状態とを自在に切り換えることができる。架設状態から格納状態にしたブリッジ160は、回転軸163を中心とする回転によって再び架設状態とすることができる。
【0049】
本実施形態では、ブリッジ160は、プラットフォーム130に回転自在に設けられていたが、この形態に限られない。住宅建築物は、例えば、ブリッジ160基端部を、プラットフォーム130の傾斜地10側端部に設けたガイド部材によって上下動自在に支持し、ブリッジ160全体をプラットフォーム130に対して昇降自在に支持した構成も採用可能である。
【0050】
図1図2に示すように、住宅建築物100は、土台120上からその側方へ張り出させて設けられたプラットフォーム130上に建物本体140が設けられる構成のため、プラットフォーム130上における建物本体140の建築範囲を、地盤(図1図2においては傾斜地10地山)における基礎110上端面の平面視サイズ(より具体的には、平面視において基礎110上端面外周によって取り囲まれた領域)に比べて大きく(広く)確保できる。住宅建築物100の建物本体140のプラットフォーム130上における建築範囲は、プラットフォーム130延在方向におけるプラットフォーム130の開口部131からの距離が、免震装置150に支持されたプラットフォーム130内周部に比べて格段に遠い所にまで及んでいる。
【0051】
住宅建築物100の建物本体140は、地盤(図1図2においては傾斜地10地山)において、プラットフォーム130上の建物本体140の建築面積に比べて面積が小さい限られた領域に設けられた基礎110に支持される。これにより、住宅建築物100は、傾斜地10の地層の構成等に起因する揺れ挙動の場所依存性の影響を低減できるので、基礎110構築箇所間の揺れ挙動の違いによる建物本体140の破損等を防ぐことができる。また、建物本体140が基礎110上のプラットフォーム130上に設けられた構造の住宅建築物100は、地震波の作用による破損等の影響を受けるリスクを増大させることなく、建物本体140の建築面積を増大させることができる。
【0052】
従来の住宅は、地盤面に密着して建てられるため、地盤や地表面の湿気が建築物内部に入り込みやすいという問題を抱えていた。これに対して、住宅建築物100は、基礎110が構築された地盤(本実施形態では傾斜地地山12)から、土台120及びプラットフォーム130を介して地盤から上方に離隔した位置に建物本体140が設けられる構成により、地盤からの湿気が建物本体140に入り込むことを回避できる。また、住宅建築物100は、土台側部開口部126を有する構成の場合、土台内側空間123及び建物本体140の内側孔141が吹き抜けとなった通気性に優れた構造を有するため、地盤からの湿気が建物本体140に入り込むことをより確実に防ぐことができる。
【0053】
図2に示すように、土台120の斜面上側の2本の延出部122c,122d間に設けられた土台側部開口部126は、住宅建築物100に外部から電気、ガス、水等を供給するために、配管181及び電気ケーブル182を下側内部空間へ導くための挿通空間180として機能させることができる。
図1図2に例示した住宅建築物100においては、土台120とプラットフォーム130との間に互いに間隔をあけて複数設置された免震装置150間の空間も、住宅建築物100の外部から下側内部空間へ引き込まれる配管181及び電気ケーブル182を通すための挿通空間180として用いることができる。
【0054】
図1図22に示すように、建物本体140は、プラットフォーム130上に設けられた床材146を含む。
プラットフォーム130の建物本体140下側に位置する部分には、住宅建築物100に外部から引き込まれる配管181及び電気ケーブル182をプラットフォーム130に支持するための支持具135が設けられている。図2では、傾斜地地山12の平坦面12aから住宅建築物100の下側内部空間に引き込んだ配管181及び電気ケーブル182をプラットフォーム130下側の支持具135に支持している。
支持具135は、挿通空間180を経由して引き回された配管181及び電気ケーブル182を、プラットフォーム130の下面に沿わせるように支持する。これにより、配管181及び電気ケーブル182のプラットフォーム130下側に沿わせた部分を、傾斜地10斜面での落石等から保護することができる。
【0055】
支持具135は、配管181及び電気ケーブル182を出来るだけ広範囲にわたってプラットフォーム130下側に沿わせるように配置するべく、プラットフォーム130に複数設けることが好ましい。これにより、配管181及び電気ケーブル182の、プラットフォーム130から下方へ大きく弛んだ部分を少なくできる。配管181及び電気ケーブル182の、プラットフォーム130から下方へ大きく弛んだ部分は、強風、地震波等によって大きく揺動して損傷しやすくなる。このため、支持具135を複数設け配管181及び電気ケーブル182の弛みを小さくすることは、配管181及び電気ケーブル182の損傷防止の点で有効である。
なお、図2では、土台側部開口部126に住宅建築物100の外部から下側内部空間へ引き込まれる配管181及び電気ケーブル182を通した構成を例示したが、配管181及び電気ケーブル182の外部露出を少なくして、配管181及び電気ケーブル182を傾斜地10斜面の落石等から保護する点では、配管181及び電気ケーブル182を免震装置150間の空間に通した構成の方が有利である。
【0056】
図示例では、挿通空間180を経由した配管181及び電気ケーブル182は、下側内部空間に設置された装置172に接続される。装置172は、建物本体140への流体供給用の配管171の分岐部を筐体に収納した分岐設備や、分電盤を備える。装置172は、例えば、蓄電池や、ガスや水用のタンクを備えていてもよい。装置172は、例えば、自家発電機構を備えていてもよい。
【0057】
配管181又は電気ケーブル182に接続された装置172が蓄電池等を備えることにより、地震により電気等の供給が停止しても、一時的に建物本体140内で生活を持続することができる。
【0058】
本実施形態では、配管181及び電気ケーブル182を、挿通空間180を経由させてプラットフォーム130に沿わせて延在させ、引き回しているが、これに限らず、配管181及び電気ケーブル182は、地面を這わせて住宅建築物100の下側内部空間に導いてもよい。
【0059】
図1図2に示すように、住宅建築物100は、建物本体140へのガス、水道水等の供給あるいは建物本体140からの排水、排気等のための配管171を、建物本体140からその内側孔141へ集中的に引き出した構成を採用している。また、住宅建築物100は、建物本体140の内側孔141及び土台120の内側空間123の両方に、配管171を介して建物本体140内へ送給あるいは建物本体140内から排出される流体の浄化処理又は加熱又は冷却を行なう流体処理装置170を設置している。建物本体140からその内側孔141へ引き出された配管171の端部は、それぞれ流体処理装置170に接続されている。
【0060】
配管171は、例えば、給水管、排水管、給気管、排気管、熱媒流体管、冷媒流体管である。配管171を介して、水、ガス等の流体が、建物本体140内へ送給され、又は、配管171から、流体が流入する。
【0061】
図示例では、配管171は、環状の建物本体140内部から内側孔141へ引き出されて、下側内部空間に設置した流体処理装置170へと接続されている。図示例では、配管171は、建物本体140の内側孔141及び土台120の内側空間123の両方に接続されているが、どちらか一方であってもよい。
【0062】
流体処理装置170は、例えば空気清浄器であり、建物本体140屋内の空気(流体)の浄化処理を行う。図示例では、室内用の空気清浄器170aを建物本体140の内側孔141に設けている。
【0063】
流体処理装置170は、例えばコンプレッサーであり、冷暖房装置に流入する熱媒流体又は冷媒流体を加熱し又は冷却するために設けられる。図示例では、室内用のコンプレッサー170bを建物本体140の内側孔141に設けているとともに、下側内部空間用のコンプレッサー170cを下側内部空間に設けている。
【0064】
通常、このような流体処理装置は、住宅建築物の外壁に接して設置されるため、建築物外壁の有効活用が一部妨げられていた。本発明の住宅建築物100では、流体処理装置170を建物本体140の内側孔141及び土台120の内側空間123の一方又は両方に設けるため、住宅建築物100の外壁全面を自由に活用することができる。
【0065】
下側内部空間には、給湯器170dが設けられる。給湯器170dは、外部から供給される水を加熱して給湯する装置である。給湯器170dは、例えば、外部から供給される電力、またガスの燃焼により発生する熱を用いて、水を加熱してもよい。給湯器170dは、例えば、冷暖房装置等の稼働により発生した排熱を利用して、水を加熱してもよい。
【0066】
住宅建築物100に外部から電気、ガス、水等を供給するために、配管181及び電気ケーブル182が設けられる。上述のとおり、住宅建築物100内の配管171は、建物本体140の内側孔141又は土台120の内側空間123に設けられている。このため、配管181及び電気ケーブル182は、発電所、ガスタンク、浄水場等から、傾斜地10を経由して、建物本体140の内側孔141又は土台120の内側空間123に引き込まれる必要がある。
【0067】
住宅建築物100は、配管181及び電気ケーブル182を通すための、挿通空間180を有する。挿通空間180は、基礎110とプラットフォーム130との間に、確保されている。本実施形態では、配管181及び電気ケーブル182は、地面を這わせずに、中空に吊り下げるようにして、地山12から住宅建築物100へと引き回される。図示例では、土台120の斜面上側の2本の延出部122c,122d間に設けられた土台側部開口部126を、挿通空間180として用いている。
【0068】
従来の戸建住宅建築物の1階床下のスペースは狭く、かつ、基礎ほぼ閉塞されている。このため、竣工後に1階床下に配管等の増設を行うことや、維持管理を行うことは困難であった。建物本体140では、下側内部空間を利用して、自由に配管171を設けることが可能である。このため、竣工後であっても、配管等の増設や維持管理を容易に行うことができる。
【0069】
建物本体140と下側内部空間との間の往来は、建物本体140に設けられたスライド式の梯子や縄梯子(図示略)によって行うことができる。往来を行わないときは、建物本体140に梯子等を収納しておく。これにより、土台側部開口部126を通って下側内部空間から建物本体140に外部から不審者が侵入することを防ぐことができる。
防犯を確実に行うため、土台側部開口部126をネットや鉄条網(図示略)で覆ってもよい。これにより、前述の通気の効果をほぼ妨げることなく、外部からの侵入をより困難にすることができる。
【0070】
なお、建物本体140と下側内部空間との間の往来のために、土台内側空間123に恒常的に階段やエレベーター(図示略)を設置してもよい。この場合、防犯のため、土台側部開口部126を設ける代わりに、土留め板125で延出部122の間をすべて覆った上で、土留め板125のいずれかに施錠可能なドア等の出入口を設けるのが望ましい。
【0071】
建物本体140は開口部131の内周に沿う環状に構築されているため、建物本体140を回廊状に設計して、同じ階の隣接する部屋を互いに出入りして、開口部131の周りを一周できるようにすることが可能である。
【0072】
住宅内での高齢者の生活を援助するために、介助、介護、清掃を行うロボットや、トロリーレール等を使用する住宅内移動装置の導入が考えられるが、従来の住宅においては、廊下が狭くて屈曲している、段差がある、等の問題があり、これらの導入が困難であった。本実施形態の建物本体140では、同じ階の部屋が回廊状に設計されているため、ロボットや住宅内移動装置の導入が容易であり、高齢者の生活を援助することができる。
【0073】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。同様に、本発明の用途は住宅に限定されるものではなく、店舗・医院・事務所・各種の作業場・宿泊所・高齢者居住施設等々、多様な用途にも供され得るものである。
【0074】
免震装置150は、基礎110と土台120との間に設けられてもよい。また、免震装置150は、基礎110と土台120との間及び土台120とプラットフォーム130の両方に設けられてもよい。例えば、基礎110と土台120との間に設けた免震装置150に、水平面内の振動を吸収させるとともに、土台120とプラットフォーム130との間に設けた免震装置150に、鉛直方向の振動を吸収させる構成であってもよい。これにより、土台120が地盤の横揺れに追随することを抑制しつつ、プラットフォーム130を縦揺れからも絶縁することができる。なお、必要がない状況においては、免震装置150を省略することを妨げない。
【0075】
上述の実施形態では、土台120は枠状部121と枠状部121からその中心軸線方向に延出する複数本の柱状の延出部122とを有する構成としているが、土台120の構成はこれに限られない。土台120は、例えば、角筒状、円筒状等の筒状に形成されていても良い。
【符号の説明】
【0076】
100…建物、110…基礎、120…土台、121…枠状部、122…延出部、123…内側空間、130…プラットフォーム、131…開口部、132…梁材、133…梁連結部材、134…囲繞領域、140…建物本体、141…内側孔、150…免震装置、160…ブリッジ、161…ブリッジ受け部、170…流体処理装置、171…配管、180…挿通空間、181…配管、182…電気ケーブル、10…傾斜地、11…斜面、12…地山
【要約】
【課題】傾斜地に建設して住宅、店舗等に用いられる建物について、地震波の作用による破損等の影響を受けるリスクを増大させることなく、建物本体の床面積増大を可能とする。
【解決手段】傾斜地10の斜面11途中に構築された基礎110と、基礎110上に設けられた土台120と、土台120上に設けられ前記土台上からその側方へ張り出されたプラットフォーム130と、プラットフォーム130の中央部を上下方向に貫通する開口部131の内周に沿う環状に構築された建物本体140とを有し、土台120を上下方向に貫通する内側空間123が確保され、プラットフォーム130は開口部131を土台120の内側空間123に連通させて開口部131周囲の内周部を土台120の枠状部121上に設置し、土台120から上下方向に垂直の方向に張り出させて設けられていることを特徴とする建物100。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4