特許第5974166号(P5974166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5974166-水系アルミニウムろう付組成物 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974166
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】水系アルミニウムろう付組成物
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   B23K35/363 G
【請求項の数】8
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2015-511226(P2015-511226)
(86)(22)【出願日】2014年4月2日
(86)【国際出願番号】JP2014059742
(87)【国際公開番号】WO2014168057
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2015年5月19日
(31)【優先権主張番号】特願2013-81066(P2013-81066)
(32)【優先日】2013年4月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】312016056
【氏名又は名称】ハリマ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】太田 康夫
(72)【発明者】
【氏名】朴 錦玉
【審査官】 田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−257790(JP,A)
【文献】 特開平06−285682(JP,A)
【文献】 特開平07−150079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダ樹脂を含有し、
前記バインダ樹脂は、
水性ポリウレタン樹脂であり、
400℃加熱環境下における残存率が60質量%以下であり、
520℃加熱環境下における残存率が1.0質量%以下であり、
前記水性ポリウレタン樹脂は、少なくともポリイソシアネートとポリオールとを反応させることにより得られ、
前記ポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートを含有すると共に、前記ポリオールが、脂肪族ポリオールを含有し、
前記脂肪族ポリイソシアネートおよび前記脂肪族ポリオールの総量が、前記ポリイソシアネートおよび前記ポリオールの総量100質量部に対して、61質量部以上であり、
前記脂肪族ポリオールは、脂肪族ポリエーテルポリオールを含有せず、脂肪族ポリエステルポリオールおよび/または脂肪族ポリカーボネートポリオールを含有することを特徴とする、水系アルミニウムろう付組成物。
【請求項2】
さらに、フラックスを含有し、
前記水系アルミニウムろう付組成物100質量部に対して、
前記バインダ樹脂の配合割合が、0.03質量部以上15質量部以下であり、
前記フラックスの配合割合が、10質量部以上75質量部以下である、請求項1に記載の水系アルミニウムろう付組成物。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステルポリオールおよび前記脂肪族ポリカーボネートポリオールの総量が、前記ポリオール100質量部に対して、20質量部以上である、請求項に記載の水系アルミニウムろう付組成物。
【請求項4】
前記脂肪族ポリオールは、脂肪族ポリエーテルポリオールおよび脂肪族ポリエステルポリオールを含有せず、脂肪族ポリカーボネートポリオールを含有する、請求項に記載の水系アルミニウムろう付組成物。
【請求項5】
前記脂肪族ポリイソシアネートが、脂環式ポリイソシアネートを含有する、請求項に記載の水系アルミニウムろう付組成物。
【請求項6】
前記脂環式ポリイソシアネートの含有量が、前記ポリイソシアネートの総量100質量部に対して、40質量部以上である、請求項に記載の水系アルミニウムろう付組成物。
【請求項7】
前記ポリオールが、さらに、カルボキシ基含有ポリオールを含有する、請求項に記載の水系アルミニウムろう付組成物。
【請求項8】
略閉鎖空間において、アルミニウムおよび/またはその合金のろう付に用いられる、請求項1に記載の水系アルミニウムろう付組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系アルミニウムろう付組成物、詳しくは、アルミニウムおよび/またはその合金同士のろう付に用いられる水系アルミニウムろう付組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用熱交換器(エバポレータ、コンデンサなど)や、家庭用熱交換器(給湯器、空調機械など)においては、例えば、アルミニウムまたはその合金同士をろう付(接合)してなる部材などが用いられている。
【0003】
具体的には、例えば、車両用熱交換器は、アルミニウムまたはその合金からなるチューブ、フィン、サイドプレート、タンク部などがろう付により接合され、形成されている。
【0004】
このようなろう付においては、通常、フラックスおよびバインダ樹脂、さらに、必要によりろう材などを含有するろう付組成物が用いられており、具体的には、例えば、水溶性アクリル樹脂や水溶性ポリウレタン樹脂などの水溶性有機樹脂を乾燥重量として1.0〜20重量%、さらに、硬化剤および界面活性剤の少なくとも一種を含む水溶液に、全体の乾燥重量の1〜60重量%のフラックスを分散させて得られるアルミニウム材ろう付用フラックス組成物が、提案されている(下記特許文献1(実施例1〜2)参照)。
【0005】
このようなアルミニウム材ろう付用フラックス組成物は、通常、各種部品のろう付部分に塗布され、各種部品が組み付けられた後、加熱される。これによって、バインダ樹脂が熱分解され、各種部品がろう付(接合)される。
【0006】
なお、バインダ樹脂が十分に熱分解されない場合には、分解ガス中に、不完全分解物(炭素−炭素結合を有する化合物など)が混入する。しかし、ろう付される部品同士の間隔が広く、その間が開放された状態(開放空間)である場合、分解ガスは大気解放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−285682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、例えば、車両用熱交換器は、近年の高性能化および軽量化に伴い、部品が複雑化および薄肉化している。そのため、各部品の間隔が狭くなり、ろう付する箇所がほぼ閉塞された状態(略閉鎖空間)となる場合がある。
【0009】
そして、このような略閉鎖空間におけるろう付では、バインダ樹脂の熱分解により生じる分解ガスが、略閉鎖空間に滞留する場合がある。そのため、分解ガスに含まれる不完全分解物によって、ろう付する部品の表面が黒色化されて外観不良となるおそれがある。
【0010】
また、近年のろう付においては、開放空間および略閉鎖空間のいずれの環境下においても、ろう付性の向上が要求されている。
【0011】
さらに、ろう付に用いられる組成物は、保管期間が比較的長い場合があるため、優れた保管安定性が要求される。
【0012】
そこで、本発明の目的は、ろう付後も外観を良好に維持できるとともに、ろう付性に優れ、保管安定性にも優れる水系アルミニウムろう付組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の水系アルミニウムろう付組成物は、バインダ樹脂を含有し、前記バインダ樹脂は、水性ポリウレタン樹脂であり、400℃加熱環境下における残存率が60質量%以下であり、520℃加熱環境下における残存率が1.0質量%以下であることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の水系アルミニウムろう付組成物は、さらに、フラックスを含有し、前記水系アルミニウムろう付組成物100質量部に対して、前記バインダ樹脂の配合割合が、0.03質量部以上15質量部以下であり、前記フラックスの配合割合が、10質量部以上75質量部以下であることが好適である。
【0015】
また、本発明の水系アルミニウムろう付組成物では、前記水性ポリウレタン樹脂は、少なくともポリイソシアネートとポリオールとを反応させることにより得られ、前記ポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートを含有するか、および/または、前記ポリオールが、脂肪族ポリオールを含有し、前記脂肪族ポリイソシアネートおよび前記脂肪族ポリオールの総量が、前記ポリイソシアネートおよび前記ポリオールの総量100質量部に対して、61質量部以上であることが好適である。
【0016】
また、本発明の水系アルミニウムろう付組成物では、前記脂肪族ポリオールは、脂肪族ポリエーテルポリオール、脂肪族ポリエステルポリオールおよび脂肪族ポリカーボネートポリオールからなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好適である。
【0017】
また、本発明の水系アルミニウムろう付組成物では、前記脂肪族ポリエーテルポリオール、前記脂肪族ポリエステルポリオールおよび前記脂肪族ポリカーボネートポリオールの総量が、前記ポリオール100質量部に対して、20質量部以上であることが好適である。
【0018】
また、本発明の水系アルミニウムろう付組成物では、前記脂肪族ポリオールは、脂肪族ポリエーテルポリオールを含有せず、脂肪族ポリエステルポリオールおよび/または脂肪族ポリカーボネートポリオールを含有することが好適である。
【0019】
また、本発明の水系アルミニウムろう付組成物では、前記脂肪族ポリオールは、脂肪族ポリエーテルポリオールおよび脂肪族ポリエステルポリオールを含有せず、脂肪族ポリカーボネートポリオールを含有することが好適である。
【0020】
また、本発明の水系アルミニウムろう付組成物では、前記脂肪族ポリイソシアネートが、脂環式ポリイソシアネートを含有することが好適である。
【0021】
また、本発明の水系アルミニウムろう付組成物では、前記脂環式ポリイソシアネートの含有量が、前記ポリイソシアネートの総量100質量部に対して、40質量部以上であることが好適である。
【0022】
また、本発明の水系アルミニウムろう付組成物では、前記ポリオールが、さらに、カルボキシ基含有ポリオールを含有することが好適である。
【0023】
また、本発明の水系アルミニウムろう付組成物では、略閉鎖空間において、アルミニウムおよび/またはその合金のろう付に用いられることが好適である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の水系アルミニウムろう付組成物は、400℃加熱環境下における残存率が60質量%以下であり、520℃加熱環境下における残存率が1.0質量%以下であるバインダ樹脂を含有しているため、加熱によりバインダ樹脂を良好に熱分解させることができる。そのため、ろう付の際に、分解ガス中への不完全分解物の混入を抑制することができ、ろう付する部品の表面の黒色化などを抑制して、外観を良好に維持することができ、さらには、ろう付性、保管安定性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1Aは、本発明の水系アルミニウムろう付組成物が用いられるインナーフィンチューブの一実施形態を示す概略構成図であって、インナーフィンチューブの概略断面図を示し、図1Bは、本発明の水系アルミニウムろう付組成物が用いられるインナーフィンチューブの一実施形態を示す概略構成図であって、インナーフィンチューブの分解斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の水系アルミニウムろう付組成物は、バインダ樹脂、フラックスおよび水性溶剤を含有している。
【0027】
上記水系アルミニウムろう付組成物において、バインダ樹脂は、アルミニウムおよびその合金(以下、これらをまとめて、アルミニウム材と称する場合がある。)に後述するフラックスを付着させるために用いられている。
【0028】
上記バインダ樹脂として、具体的には、400℃加熱環境下における残存率が60質量%以下であり、520℃加熱環境下における残存率が1.0質量%以下である樹脂が選択される。
【0029】
上記バインダ樹脂について、「400℃加熱環境下における残存率」とは、示差熱天秤の測定において、窒素雰囲気下、30℃から昇温速度20℃/minで加熱して、400℃に至った時のバインダ樹脂の残存割合(質量%)をいう。また、「520℃加熱環境下における残存率」とは、示差熱天秤の測定において、窒素雰囲気下、30℃から昇温速度20℃/minで加熱して、520℃に至った時のバインダ樹脂の残存割合(質量%)をいう。いずれの場合も、残存割合とは、加熱前のバインダ樹脂の固形分総量に対する質量割合を示している。
【0030】
400℃加熱環境下における残存率は、60質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、10質量%以下、さらに好ましくは、5質量%以下である。
【0031】
520℃加熱環境下における残存率は、1.0質量%以下、好ましくは、0.7質量%以下、より好ましくは、0.5質量%以下、さらに好ましくは、0.1質量%以下、とりわけ好ましくは、測定限界値以下(0質量%)である。
【0032】
バインダ樹脂の400℃加熱環境下における残存率、および、520℃加熱環境下における残存率の両方が上記範囲であれば、加熱によりバインダ樹脂を良好に熱分解させることができる。なお、以下の記載において、「400℃加熱環境下における残存率」と「520℃加熱環境下における残存率」の両方の特性を併せて、「熱分解特性」と称する場合がある。
【0033】
そのため、熱分解における不完全分解物の生成を抑制することができ、ろう付部分の黒色化などを抑制して、外観を良好に維持することができ、さらには、ろう付性および保管安定性の向上を図ることができる。
【0034】
上記バインダ樹脂としては、熱分解特性が上記条件を満たす水性樹脂、具体的には、水性ポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0035】
ここで、上記水性樹脂とは、当該樹脂が水溶性であるか、または水分散性が良好であることを意味するものである。上記水系アルミニウムろう付組成物に適用される水性樹脂は、水溶性であっても、エマルジョンであっても良い。
【0036】
上記水系アルミニウムろう付組成物において、バインダ樹脂として、上記水性樹脂を用いることにより、有機溶剤の使用を減らすことができ、結果として、使用時の引火や爆発の危険性といった労働安全衛生上の問題を解決することができる。
【0037】
とりわけ、上記バインダ樹脂として、水性ポリウレタン樹脂を用いれば、簡易かつ確実に熱分解特性を調整できるため、より簡易に外観を良好に維持することができ、さらには、ろう付性および保管安定性の向上を図ることができる。
【0038】
水性ポリウレタン樹脂は、少なくともポリイソシアネートとポリオールとを反応させることにより得ることができ、より具体的には、例えば、ポリイソシアネートおよびポリオールを反応させることにより得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤とを反応させるプレポリマー法や、例えば、ポリイソシアネート、ポリオールなどの原料を一度に反応させるワンショット法などにより得ることができる。分散性および製造容易性の観点から、水性ポリウレタン樹脂は、好ましくは、プレポリマー法により得られる。
【0039】
ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0040】
本発明において、脂肪族ポリイソシアネートは、分子中に芳香環を含有しないポリイソシアネートであって、例えば、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0041】
また、脂肪族ポリイソシアネートは、脂環式ポリイソシアネートを含んでいる。
【0042】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロジイソシアネート)、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート(別名:メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート))、ノルボルナンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0043】
これら脂肪族ポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0044】
本発明において、芳香族ポリイソシアネートは、分子中に芳香環を1つ以上含有するポリイソシアネートであって、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)、フェニレンジイソシアネート(m−、p−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−、2,4’−または2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、4,4’−トルイジンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0045】
また、芳香族ポリイソシアネートは、芳香脂肪族ポリイソシアネートを含んでいる。
【0046】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)などの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0047】
これら芳香族ポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0048】
これらポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。ポリイソシアネートとして、好ましくは、少なくとも脂肪族ポリイソシアネートを含有することが挙げられ、より好ましくは、脂環式ポリイソシアネートを含有することが挙げられ、さらに好ましくは、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネートが挙げられ、とりわけ好ましくは、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。
【0049】
このようなポリイソシアネートが用いられていれば、水性ポリウレタン樹脂の熱分解特性を上記範囲に調整することができるため、外観を良好に維持することができ、さらには、ろう付性および保管安定性の向上を図ることができる。
【0050】
また、ポリイソシアネートとして、脂環式ポリイソシアネートが用いられる場合、その含有量は、ポリイソシアネートの総量100質量部に対して、例えば、40質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、55質量部以上、さらに好ましくは、70質量部以上、とりわけ好ましくは、100質量部(すなわち、ポリイソシアネートとして、脂環式ポリイソシアネートのみを用いる。)である。
【0051】
脂環式ポリイソシアネートの含有量が上記範囲であれば、とりわけ熱分解特性に優れる水性ポリウレタン樹脂を得ることができ、外観を良好に維持することができ、さらには、ろう付性および保管安定性の向上を図ることができる。
【0052】
ポリオールとしては、脂肪族ポリオール、芳香族ポリオールが挙げられる。
【0053】
本発明において、脂肪族ポリオールは、分子中に芳香環を含有しないポリオールであって、脂肪族高分子量ポリオール、脂肪族低分子量ポリオールが挙げられる。
【0054】
脂肪族高分子量ポリオールは、分子中に芳香環を含有せず、水酸基を2つ以上有する数平均分子量500以上10000以下の化合物であって、例えば、脂肪族ポリエーテルポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリカーボネートポリオール、脂肪族ポリウレタンポリオールなどが挙げられる。
【0055】
脂肪族ポリエーテルポリオールは、分子中に芳香環を含有しないポリエーテルポリオールであって、例えば、脂肪族低分子量ポリオール(後述)を開始剤として、これにアルキレンオキサイドを開環付加重合させることにより、脂肪族ポリアルキレンオキサイドとして得ることができる。
【0056】
脂肪族ポリエーテルポリオールとして、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンポリオール(例えば、ポリエチレングリコールなど)、ポリオキシプロピレンポリオール(例えば、ポリプロピレングリコールなど)、ポリオキシエチレン−プロピレンポリオール(例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体など)などや、さらに、例えば、テトラヒドロフランの開環重合により得られるポリテトラメチレンエーテルグリコールなどの脂肪族ポリエーテルジオールなどが挙げられる。
【0057】
脂肪族ポリエステルポリオールは、分子中に芳香環を含有しないポリエステルポリオールであって、例えば、脂肪族低分子量ポリオール(後述)と、脂肪族多価カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体との脱水縮合反応などにより得ることができる。
【0058】
脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フマル酸、マレイン酸など)、脂環式ジカルボン酸(例えば、ダイマー酸など)、3価以上のポリカルボン酸(例えば、トリマー酸など)、さらに、これらの無水物、酸ハロゲン化物、低分子量アルキルエステルなどが挙げられる。
【0059】
脂肪族ポリエステルポリオールとして、具体的には、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリジエチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール、ポリ(3−メチルペンチレンアジペート)ジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール、ポリブチレンセバケートジオールなどの脂肪族ポリエステルジオールが挙げられる。
【0060】
脂肪族ポリカーボネートポリオールは、分子中に芳香環を含有しないポリカーボネートポリオールであって、例えば、脂肪族低分子量ポリオール(後述)と、低分子カーボネート化合物(例えば、アルキル基の炭素数1〜6のジアルキルカーボネート、炭素数2〜6のアルキレン基を有するアルキレンカーボネートなど)とを、脱アルコール反応および縮合させることによって、得ることができる。
【0061】
脂肪族ポリカーボネートポリオールとして、具体的には、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリ(ヘキサメチレン/ペンタメチレン)カーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオールなどの脂肪族ポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0062】
脂肪族ポリウレタンポリオールは、分子中に芳香環を含有しないポリウレタンポリオールであって、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネートと、上記した脂肪族ポリエーテルポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリカーボネートポリオールなどの脂肪族ポリオールとを、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基に対する脂肪族ポリオールの水酸基の当量比(水酸基/イソシアネート基)が1を超過する割合で反応させることにより、得ることができる。
【0063】
脂肪族低分子量ポリオールは、分子中に芳香環を含有せず、水酸基を2つ以上有する数平均分子量500未満の化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,18−オクタデカンジオールなどのC2−22アルカンジオール、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオールなどのアルケンジオールなどの脂肪族2価アルコール、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAまたはそのC2−4アルキレンオキサイド付加体などの脂環族2価アルコール、例えば、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)ペンタン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールなどの脂肪族3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール、D−マンニットなどの4価以上の多価アルコールなどが挙げられる。
【0064】
これら脂肪族ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0065】
本発明において、芳香族ポリオールは、分子中に芳香環を1つ以上含有するポリオールであって、芳香族高分子量ポリオール、芳香族低分子量ポリオールが挙げられる。
【0066】
芳香族高分子量ポリオールは、分子中に芳香環を1つ以上含有するとともに、水酸基を2つ以上有する数平均分子量500以上10000以下の化合物であって、例えば、芳香族ポリエーテルポリオール、芳香族ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0067】
芳香族ポリエーテルポリオールは、分子中に芳香環を含有するポリエーテルポリオールであって、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド付加物など、ビスフェノール骨格を有するポリオール、さらに、例えば、レゾルシンのエチレンオキサイド付加物、レゾルシンのプロピレンオキサイド付加物、レゾルシンのエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ポリエーテルジオールなどが挙げられる。
【0068】
芳香族ポリエステルポリオールは、分子中に芳香環を含有するポリエステルポリオールであって、例えば、芳香族低分子量ポリオール(後述)と、芳香族多価カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体との脱水縮合反応などにより得ることができる。
【0069】
また、芳香族ポリエステルポリオールの製造においては、芳香族低分子量ポリオールと芳香族多価カルボン酸とのいずれか一方が、脂肪族化合物(脂肪族低分子量ポリオールまたは脂肪族多価カルボン酸)であってもよく、また、芳香族化合物(芳香族低分子量ポリオールまたは芳香族多価カルボン酸)と、脂肪族化合物(脂肪族低分子量ポリオールまたは脂肪族多価カルボン酸)とが併用されていてもよい。
【0070】
芳香族多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸およびフタル酸など)、3価以上のポリカルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸など)、さらに、これらの無水物、酸ハロゲン化物、低分子量アルキルエステルなどが挙げられる。
【0071】
芳香族ポリエステルポリオールとして、具体的には、ポリエチレンテレフタレートジオール、ポリブチレンテレフタレートジオール、ポリエチレンイソフタレートジオール、ポリブチレンイソフタレートジオール、ポリ(3−メチルペンチレンテレフタレート)ジオール、およびポリネオペンチレンテレフタレートジオールなどの芳香族ポリエステルジオールなどが挙げられる。
【0072】
芳香族低分子量ポリオールは、分子中に芳香環を1つ以上含有するとともに、水酸基を2つ以上有する数平均分子量500未満の化合物であって、例えば、レゾルシン、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、これらビスフェノール類のC2−4アルキレンオキサイド付加体などの芳香族2価アルコールなどが挙げられる。
【0073】
これら芳香族ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0074】
また、これらポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0075】
ポリオールとして、好ましくは、少なくとも脂肪族ポリオールを含有することが挙げられ、より好ましくは、脂肪族高分子量ポリオールと脂肪族低分子量ポリオールとの併用が挙げられる。
【0076】
脂肪族高分子量ポリオールと脂肪族低分子量ポリオールとを併用する場合、脂肪族高分子ポリオールの含有量(総量)は、ポリオールの総量100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、35質量部以上、より好ましくは、55質量部以上であり、例えば、95質量部以下、好ましくは、90質量部以下、より好ましくは、85質量部以下である。一方、脂肪族低分子ポリオールの含有量(総量)は、ポリオールの総量100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、15質量部以上であり、例えば、80質量部以下、好ましくは、65質量部以下、より好ましくは、45質量部以下である。
【0077】
また、脂肪族ポリオールとして、好ましくは、脂肪族ポリエーテルポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリカーボネートポリオールが挙げられ、より好ましくは、2官能の脂肪族ポリオール、すなわち、脂肪族ポリエーテルジオール、脂肪族ポリエステルジオール、脂肪族ポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0078】
上記の脂肪族ポリオールが用いられていれば、水性ポリウレタン樹脂の熱分解特性を上記範囲に調整することができるため、外観を良好に維持することができ、さらには、ろう付性および保管安定性の向上を図ることができる。
【0079】
このような場合、脂肪族ポリエーテルポリオール、脂肪族ポリエステルポリオールおよび脂肪族ポリカーボネートポリオールの含有量(総量)は、ポリオールの総量100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、35質量部以上、より好ましくは、55質量部以上であり、例えば、100質量部(すなわち、ポリオールとして、脂肪族ポリエーテルポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリカーボネートポリオールのみを用いる。)以下、好ましくは、85質量部以下である。
【0080】
上記ポリオールの含有量が上記範囲であれば、とりわけ熱分解特性に優れる水性ポリウレタン樹脂を得ることができ、外観を良好に維持することができ、さらには、ろう付性および保管安定性の向上を図ることができる。
【0081】
また、脂肪族ポリオールとして、より好ましくは、脂肪族ポリエーテルポリオールを含有せず、脂肪族ポリエステルポリオールおよび/または脂肪族ポリカーボネートポリオールを含有することが挙げられ、さらに好ましくは、2官能の脂肪族ポリオール、すなわち、脂肪族ポリエーテルポリオールを含有せず、脂肪族ポリエステルジオールおよび/または脂肪族ポリカーボネートジオールを含有することが挙げられる。
【0082】
このような場合、脂肪族ポリエステルポリオールおよび脂肪族ポリカーボネートポリオールの含有量(総量)は、ポリオールの総量100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、70質量部以上、より好ましくは、80質量部以上であり、例えば、100質量部(すなわち、ポリオールとして、脂肪族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリカーボネートポリオールのみを用いる。)以下、好ましくは、85質量部以下である。
【0083】
脂肪族ポリオールが、脂肪族ポリエーテルポリオール(脂肪族ポリアルキレンオキサイド)を含有せず、脂肪族ポリエステルポリオールおよび/または脂肪族ポリカーボネートポリオールを含有し、また、それらが上記割合で用いられていれば、水性ポリウレタン樹脂の熱分解特性を上記範囲に調整することができるため、外観を良好に維持することができ、さらには、ろう付性および保管安定性の向上を図ることができる。
【0084】
また、脂肪族ポリオールとして、さらに好ましくは、脂肪族ポリエーテルポリオールおよび脂肪族ポリエステルポリオールを含有せず、脂肪族ポリカーボネートポリオールを含有することが挙げられ、とりわけ好ましくは、2官能の脂肪族ポリオール、すなわち、脂肪族ポリエーテルポリオールおよび脂肪族ポリエステルポリオールを含有せず、脂肪族ポリカーボネートジオールを含有することが挙げられる。
【0085】
このような場合、脂肪族ポリカーボネートポリオールの含有量(総量)は、ポリオールの総量100質量部に対して、例えば、35質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、70質量部以上であり、例えば、100質量部(すなわち、ポリオールとして、脂肪族ポリカーボネートポリオールのみを用いる。)以下、好ましくは、85質量部以下である。
【0086】
脂肪族ポリオールが、脂肪族ポリエーテルポリオール(脂肪族ポリアルキレンオキサイド)および脂肪族ポリエステルポリオールを含有せず、脂肪族ポリカーボネートポリオールを含有し、また、それらが上記割合で用いられていれば、水性ポリウレタン樹脂の熱分解特性を上記範囲に調整することができるため、外観を良好に維持することができ、さらには、ろう付性および保管安定性の向上を図ることができる。
【0087】
また、ポリオールは、好ましくは、さらに、親水基含有ポリオールを含有する。
【0088】
親水基含有ポリオールは、親水基として、例えば、カルボキシ基、スルホ基などのイオン性基(アニオン性基またはカチオン性基)などを含有するポリオールであって、例えば、カルボキシ基含有ポリオール、スルホ基含有ポリオールなどが挙げられ、好ましくは、カルボキシ基含有ポリオールが挙げられる。
【0089】
なお、本発明において、分子中に芳香環を含有しないカルボキシ基含有ポリオールであって、数平均分子量が500未満の化合物は、上記した脂肪族低分子量ポリオールに分類される。一方、分子中に芳香環を1つ以上含有するカルボキシ基含有ポリオールであって、数平均分子量が500未満の化合物は、上記した芳香族低分子量ポリオールに分類される。
【0090】
カルボキシ基含有ポリオールとしては、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2−ジメチロールブタン酸(DMBA)、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシル脂肪族カルボン酸などが挙げられる。
【0091】
これらカルボキシ基含有ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。カルボキシ基含有ポリオールとして、好ましくは、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)が挙げられる。
【0092】
カルボキシ含有ポリオールの含有量は、ポリオールの総量100質量部に対して、例えば、2質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、7質量部以上であり、例えば、25質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、15質量部以下である。
【0093】
ポリオールが、上記割合でカルボキシ基含有ポリオールを含有していれば、簡易に水性ポリウレタン樹脂を得ることができるため、製造効率の向上を図ることができる。
【0094】
そして、上記のポリイソシアネートおよび上記のポリオール(好ましくは、親水基含有ポリオールを含む。)を反応させることにより、イソシアネート基末端プレポリマーを得ることができる。
【0095】
この反応において、好ましくは、ポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートを含有するか、および/または、ポリオールが、脂肪族ポリオールを含有する。すなわち、好ましくは、ポリイソシアネートとポリオールとの少なくともいずれか一方が、脂肪族化合物を含有し、より好ましくは、ポリイソシアネートとポリオールとの両方が、脂肪族化合物を含有する。
【0096】
また、ポリイソシアネートとポリオールとの配合では、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂肪族ポリオールの総量が、ポリイソシアネートおよびポリオールの総量100質量部に対して、例えば、61質量部以上、好ましくは、65質量部以上、より好ましくは、75質量部以上、とりわけ好ましくは、100質量部(すなわち、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂肪族ポリオールのみを用いる。)となるように調整される。
【0097】
脂肪族ポリイソシアネートおよび脂肪族ポリオールの総量が上記範囲であれば、得られる水性ポリウレタン樹脂を用いることにより、外観を良好に維持することができ、さらには、ろう付性および保管安定性の向上を図ることができる。
【0098】
また、この反応におけるポリイソシアネートとポリオールとの配合割合は、ポリオール中の水酸基に対する、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)において、1を越える割合、好ましくは、1.1〜10の割合である。
【0099】
反応方法は、特に制限されず、バルク重合、溶液重合などの公知の重合方法が採用される。
【0100】
バルク重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を配合して、反応温度75〜85℃で、1〜20時間程度反応させる。また、溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下、有機溶媒に、上記成分を配合して、反応温度20〜80℃で、0.5〜20時間程度反応させる。
【0101】
有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富む溶媒であれば、特に制限されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0102】
また、上記重合では、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの反応触媒を添加してもよい。また、この方法では、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから未反応ポリイソシアネートを、例えば、蒸留や抽出などの公知の方法により、除去することもできる。
【0103】
また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーにおいて、親水基としてカルボキシ基などのイオン性基(アニオン性基またはカチオン性基)が含まれている場合には、好ましくは、中和剤を添加して、イオン性基の塩を形成させる。
【0104】
例えば、アニオン性基が含まれている場合には、中和剤としては、慣用の塩基、例えば、有機塩基(例えば、第3級アミン類(トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリC1−4アルキルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン、モルホリンなどの複素環式アミンなど))、例えば、無機塩基(アンモニア、アルカリ金属水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど))などが挙げられる。これらの塩基は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0105】
中和剤は、アニオン性基1当量あたり、0.4〜1.2当量、好ましくは、0.6〜1当量の割合で添加する。
【0106】
このようにして得られるイソシアネート基末端プレポリマーは、例えば、その分子末端に、2つ以上の遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーであって、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、1.5〜3.0、好ましくは、1.9〜2.5である。また、その数平均分子量(標準ポリスチレンを検量線とするGPC測定による数平均分子量)が、例えば、1000〜30000、好ましくは、1500〜20000である。
【0107】
次いで、この方法では、上記により得られたイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを、例えば、水(分散媒)中で分散させて反応させる。
【0108】
鎖伸長剤としては、水(分散媒としての水を含む。)が挙げられる。
【0109】
また、必要により、鎖伸長剤として、任意成分として、ポリアミン、アミノアルコール、尿素などを用いることもできる。
【0110】
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ヒドラジン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、N−(2−アミノエチル)イソプロパノールアミンなどのジアミン類、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのトリアミン類、テトラアミン類およびペンタアミン類などが挙げられる。
【0111】
これら鎖伸長剤は、単独使用または併用することができ、好ましくは、ポリアミンが挙げられる。
【0112】
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させるには、例えば、まず、水をイソシアネート基末端プレポリマー中に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、必要により任意成分(ポリアミンなど)を添加し、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長する。
【0113】
イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させるには、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、水20〜500質量部の割合において、攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマー中に水を添加する。
【0114】
任意成分が併用される場合には、任意成分を、イソシアネート基末端プレポリマーが水分散された水中に、攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基(アミノ基)の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.4以下、好ましくは、0.35以下の割合となるように、滴下する。
【0115】
その後、さらに撹拌しつつ、例えば、常温にて反応を完結させる。これによって、水性ポリウレタン樹脂を、水分散液(固形分濃度が、例えば、10〜60質量%、好ましくは、15〜50質量%の水分散液、さらに好ましくは、20〜45質量%の水分散液)として得ることができる。
【0116】
なお、上記とは逆に、水にイソシアネート基末端プレポリマーを添加することにより、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、必要により任意成分を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長することもできる。
【0117】
また、イソシアネート基末端プレポリマーが溶液重合により得られている場合には、反応終了後、有機溶媒を、例えば、減圧下において、適宜の温度で加熱することにより、除去してもよい。
【0118】
これにより、水性ポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0119】
また、水性ポリウレタン樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲において、例えば、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、防カビ剤、防錆剤、艶消し剤、難燃剤、揺変剤、粘着付与剤、増粘剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、反応遅延剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、染料、無機顔料、有機顔料、体質顔料、硬化剤、タック防止剤、充填剤などの添加剤を、適宜配合することができる。各種の添加剤の配合割合は、その目的および用途により適宜選択される。
【0120】
水系アルミニウムろう付組成物において、フラックスとしては、特に制限されないが、例えば、非反応性フラックス、反応性フラックスなどが挙げられる。
【0121】
非反応性フラックスとしては、例えば、フッ化アルミン酸カリウム、フッ化アルミン酸カリウム−セシウム錯体、フッ化アルミン酸カリウム−リチウム錯体、フッ化カリウム、フッ化アルミニウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウムなど、さらには、フッ化アルミン酸セシウムなどの非反応性セシウム系フラックスなどが挙げられる。
【0122】
反応性フラックスとしては、例えば、亜鉛置換フラックス(例えば、フッ化亜鉛酸カリウム、フッ化亜鉛酸セシウムなど)、さらには、これらのフッ化物系フラックスなどが挙げられる。
【0123】
なお、これらフラックスには、必要により、公知の添加剤が、適宜の割合で配合される。
【0124】
このようなフラックスは、市販品としても入手可能であり、具体的には、Solvay社製のNocolok Flux(フッ化アルミン酸カリウム)、Nocolok Cs Flux(セシウム系フラックス)、Nocolok Sil Flux(フッ化物系フラックス粉末とSi粉末の混合物)などが挙げられる。
【0125】
これらフラックスは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0126】
上記水系アルミニウムろう付組成物において、水性溶剤としては、例えば、水、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールなどのアルコール溶剤、例えば、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル溶剤などが挙げられる。
【0127】
これら水性溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0128】
水性溶剤として、好ましくは、水が挙げられる。
【0129】
そして、水系アルミニウムろう付組成物は、上記各成分を公知の方法で配合することにより得ることができる。
【0130】
水系アルミニウムろう付組成物において、バインダ樹脂の配合割合は、水系アルミニウムろう付組成物100質量部に対して、例えば、0.03質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、より好ましくは、0.6質量部以上、さらに好ましくは、1.2質量部以上、とくに好ましくは、2.5質量部以上であり、例えば、15質量部以下、好ましくは、14質量部以下、より好ましくは、9質量部以下である。
【0131】
また、フラックスの配合割合は、水系アルミニウムろう付組成物100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、25質量部以上、より好ましくは、28質量部以上であり、例えば、75質量部以下、好ましくは、70質量部以下、さらに好ましくは、40質量部以下である。
【0132】
また、水性溶剤の配合割合は、例えば、水系アルミニウムろう付組成物からバインダ樹脂およびフラックスを除いた残部である(但し、下記するように、その残部にはろう材を適宜含有させることができる)。
【0133】
なお、水系アルミニウムろう付組成物が、後述するように略閉鎖空間において用いられる場合、バインダ樹脂の配合割合は、例えば、1.2質量部以下であってもよく、また、0.6質量部以下であってもよく、さらには、0.5質量部以下であってもよく、例えば、0質量部を超過し、また、0.01質量部以上であってもよく、さらには、0.03質量部以上であってもよい。
【0134】
また、水系アルミニウムろう付組成物は、必要により、さらに、ろう材を含有することができる。
【0135】
ろう材としては、特に制限されないが、例えば、金属ケイ素粉末、ケイ素−アルミニウム合金、さらには、これらにマグネシウム、銅、ゲルマニウムなどの添加元素が添加された合金などが挙げられる。
【0136】
これらろう材は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0137】
なお、ろう材の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0138】
このようにして得られる水系アルミニウムろう付組成物は、例えば、アルミニウム材(アルミニウムおよび/またはその合金)に塗布され、加熱されることにより、アルミニウム材同士のろう付に用いられる。
【0139】
ろう付雰囲気としては、例えば、ヘリウム雰囲気、アルゴン雰囲気、窒素雰囲気などの不活性ガス雰囲気が挙げられ、好ましくは、窒素雰囲気が挙げられる。
【0140】
また、ろう付雰囲気における酸素濃度は、例えば、200ppm以下、好ましくは、150ppm以下、より好ましくは、100ppm以下である。
【0141】
また、ろう付温度は、通常、例えば、580℃以上、好ましくは、590℃以上であり、例えば、640℃以下、好ましくは、630℃以下である。
【0142】
そして、このような水系アルミニウムろう付組成物は、上記したように、400℃加熱環境下における残存率が60質量%以下(好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、10質量%以下、さらに好ましくは、5質量%以下)であり、520℃加熱環境下における残存率が1.0質量%以下(好ましくは、0.7質量%以下、より好ましくは、0.5質量%以下、さらに好ましくは、0.1質量%以下、とりわけ好ましくは、測定限界値以下(0質量%))であるバインダ樹脂を含有しているため、加熱によりバインダ樹脂を良好に熱分解させることができる。
【0143】
そのため、ろう付の際に、分解ガス中への不完全分解物の混入を抑制することができ、例えば、略閉鎖空間におけるろう付に用いられる場合にも、ろう付する部品の表面の黒色化などを抑制して、外観を良好に維持することができる。
【0144】
さらには、本発明の水系アルミニウムろう付組成物は、バインダ樹脂の熱分解性に優れるため、ろう付性にも優れ、略閉鎖空間のみならず、開放空間においても、アルミニウム材を良好にろう付することができる。
【0145】
具体的には、このような水系アルミニウムろう付組成物は、アルミニウム材のろう付に用いられ、好ましくは、熱交換器におけるインナーフィンチューブのろう付において、好適に用いられる。
【0146】
すなわち、例えば、車両用熱交換器などにおいては、熱交換効率の向上の観点から、部品の小型化、複雑化が進んでおり、例えば、コンデンサのチューブとして、押出チューブよりもアルミニウム量が低減されたインナーフィンチューブが用いられている。
【0147】
以下において、インナーフィンチューブについて、詳述する。
【0148】
図1に示されるように、インナーフィンチューブ1は、インナーフィン部2およびチューブ部3を備えている。
【0149】
インナーフィン部2は、平板状のアルミニウム材からなり、図1Aに示されるように、連続略コ字状(葛折状)に折り曲げた波板形状に、形成されている。
【0150】
チューブ部3は、図1Bに示されるように、ろう材をクラッドした可撓性のアルミニウム材からなり、シート状に形成されている。
【0151】
なお、図1Bに示す場合に代えて、インナーフィン部2として、ろう材をクラッドしたアルミニウム材を用い、チューブ部3として、ろう材がクラッドされていないアルミニウム材を用いてもよい。
【0152】
また、インナーフィンチューブ1は、図1Aに示されるように、インナーフィン部2で区画された空間として、断面が矩形の通路4を備えている。通路4は、冷媒を流通させるための空間であって、例えば、1辺の幅が1mm程度の微細空間として区画されている。
【0153】
このようなインナーフィンチューブ1は、図1Bに示されるように、インナーフィン部2にチューブ部3が巻きつけられ、それらの接触部分5においてろう付されることにより、製造される。
【0154】
そして、このようなインナーフィンチューブの製造において、上記した水系アルミニウムろう付組成物を用いれば、良好なろう付性を確保することができ、さらには、ろう付部分の黒色化などを抑制して、外観を良好に維持することができる。
【0155】
すなわち、インナーフィンチューブにおいて、各部品(図1におけるインナーフィン部2およびチューブ部3など)は、複雑化および薄肉化されているため、その部品間が狭く、組み付け後には、部品間(通路4内など)がほぼ閉塞状態(略閉鎖空間)となる。
【0156】
そして、このような略閉鎖空間におけるろう付では、バインダ樹脂の熱分解により生じる分解ガスが、部品間の略閉鎖空間に滞留する場合がある。そのため、分解ガス中に不完全分解物などが含有される場合、不完全分解物によってろう付する部品の表面が黒色化されるなど、外観不良を生じるおそれがある。
【0157】
この点、上記の水系アルミニウムろう付組成物は、400℃加熱環境下における残存率が60質量%以下であり、520℃加熱環境下における残存率が1.0質量%以下であるバインダ樹脂を含有しているため、加熱によりバインダ樹脂を良好に熱分解させることができる。そのため、不完全分解物の生成を抑制することができ、ろう付する部品の表面の黒色化などを抑制して、外観を良好に維持することができ、さらには、ろう付性および保管安定性にも優れる。
【0158】
そのため、上記した水系アルミニウムろう付組成物を用いれば、ろう付する部品の表面の黒色化などを抑制して、外観を良好に維持することができ、さらには、優れたろう付性を発揮し、アルミニウム材を良好にろう付することができる。
【実施例】
【0159】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下に示す実施例の数値は、実施形態において記載される対応する数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
(製造実施例1)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリアルキレンカーボネートジオール(1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから得られる脂肪族ポリカーボネートポリオール、数平均分子量:約1,000、水酸基価約110mgKOH/g)139.5部、ジメチロールプロピオン酸13.6部、1,6−ヘキサンジオール9.5部、ネオペンチルグリコール8.3部およびメチルエチルケトン93.7部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、イソホロンジイソシアネート106.4部を添加し、70℃にて加熱混合した。その後、この混合物を60℃に冷却し、トリエチルアミン10.2部を添加した。更に30℃まで冷却した381部のこの溶液に、メチルエチルケトン124.5部、トリエチルアミン3.7部を加え、643.7部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分29%の水性ポリウレタン樹脂Aを得た。
(製造実施例2)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリアルキレンカーボネートジオール(1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから得られる脂肪族ポリカーボネートポリオール、数平均分子量:約1,000、水酸基価約110mgKOH/g)149.7部、ジメチロールプロピオン酸14.5部、1,6−ヘキサンジオール10.2部、ネオペンチルグリコール8.9部およびメチルエチルケトン100.4部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、ヘキサメチレンジイソシアネート86.1部を添加し、70℃にて加熱混合した。その後、この混合物を60℃に冷却し、トリエチルアミン11.0部を添加した。更に30℃まで冷却した381部のこの溶液に、メチルエチルケトン124.5部、トリエチルアミン3.7部を加え、643.7部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分28%の水性ポリウレタン樹脂Bを得た。
(製造実施例3)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリアルキレンカーボネートジオール(1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから得られる脂肪族ポリカーボネートポリオール、数平均分子量:約1,000、水酸基価約110mgKOH/g)132.8部、ジメチロールプロピオン酸12.9部、1,6−ヘキサンジオール9.1部、ネオペンチルグリコール7.9部およびメチルエチルケトン89.2部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート119.4部を添加し、70℃にて加熱混合した。その後、この混合物を60℃に冷却し、トリエチルアミン9.7部を添加した。更に30℃まで冷却した381部のこの溶液に、メチルエチルケトン124.5部、トリエチルアミン3.7部を加え、643.7部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分30%の水性ポリウレタン樹脂Cを得た。
(製造実施例4)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリエステルジオール(エチレングリコールとアジピン酸とからなる脂肪族ポリエステルジオール、重量平均分子量:1,000、水酸基価110mgKOH/g)90.0部、ジメチロールプロピオン酸12.0部、1,6−ヘキサンジオール9.5部、ネオペンチルグリコール8.3部およびメチルエチルケトン93.3部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、イソホロンジイソシアネート91.9部を添加し、70℃にて加熱混合した。その後、この混合物を60℃に冷却し、トリエチルアミン9.0部を添加した。更に30℃まで冷却した314部のこの溶液に、トリエチルアミン4.5部を加え、463.0部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分30%の水性ポリウレタン樹脂Dを得た。
(製造実施例5)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリエーテルポリオール(ポリプロピレングリコール−プロピレンオキシド(脂肪族ポリエーテルポリオール)、平均分子量:1,000、水酸基価110mgKOH/g)90.0部、ジメチロールプロピオン酸12.0部、1,6−ヘキサンジオール9.5部、ネオペンチルグリコール8.3部およびメチルエチルケトン93.3部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、イソホロンジイソシアネート91.9部を添加し、70℃にて加熱混合した。その後、この混合物を60℃に冷却し、トリエチルアミン9.0部を添加した。更に30℃まで冷却した314部のこの溶液に、トリエチルアミン4.5部を加え、463.0部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分30%の水性ポリウレタン樹脂Eを得た。
(製造実施例6)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリエーテルポリオール(ポリプロピレングリコール−プロピレンオキシド(脂肪族ポリエーテルポリオール)、平均分子量:1,000、水酸基価110mgKOH/g)90.0部、ジメチロールプロピオン酸10.5部、1,6−ヘキサンジオール9.5部、ネオペンチルグリコール8.3部およびメチルエチルケトン93.3部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、ヘキサメチレンジイソシアネート67.3部を添加し、70℃にて加熱混合した。その後、この混合物を50℃に冷却し、トリエチルアミン9.0部を添加した。更に30℃まで冷却した288部のこの溶液に、トリエチルアミン4.5部を加え、463部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分28%の水性ポリウレタン樹脂Fを得た。
(製造実施例7)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリエーテルポリオール(ビスフェノールAとプロレンオキシドよりなる芳香族ポリエーテルポリオール、数平均分子量:1,000、水酸基価約110mgKOH/g)50.5部、ジメチロールプロピオン酸8.5部、1,6−ヘキサンジオール11.5部、ネオペンチルグリコール10.5部およびメチルエチルケトン93.3部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、ヘキサメチレンジイソシアネート64.0部を添加し、70℃にて加熱混合した。その後、この混合物を50℃に冷却し、トリエチルアミン9.0部を添加した。更に30℃まで冷却した247部のこの溶液に、トリエチルアミン4.5部を加え、463部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分23%の水性ポリウレタン樹脂Pを得た。
(製造実施例8)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリエーテルポリオール(ビスフェノールAとプロレンオキシドよりなる芳香族ポリエーテルポリオール、数平均分子量:1,000、水酸基価約110mgKOH/g)24.3部、ジメチロールプロピオン酸7.0部、1,6−ヘキサンジオール13.5部、ネオペンチルグリコール13.0部およびメチルエチルケトン93.3部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、ヘキサメチレンジイソシアネート64.7部を添加し、70℃にて加熱混合した。その後、この混合物を50℃に冷却し、トリエチルアミン9.0部を添加した。更に30℃まで冷却した225部のこの溶液に、トリエチルアミン4.5部を加え、463部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分21%の水性ポリウレタン樹脂Qを得た。
(製造実施例9)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリエーテルポリオール(ポリプロピレングリコール−プロピレンオキシド(脂肪族ポリエーテルポリオール)、平均分子量:1,000、水酸基価110mgKOH/g)45.0部、ポリエーテルポリオール(ビスフェノールAとプロピレンオキシドよりなる芳香族ポリエーテルポリオール、数平均分子量:1,000、水酸基価約110mgKOH/g)45.0部、ジメチロールプロピオン酸12.0部、1,6−ヘキサンジオール9.5部、ネオペンチルグリコール8.3部およびメチルエチルケトン93.3部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、イソホロンジイソシアネート91.9部を添加し、70℃にて加熱混合した。その後、この混合物を60℃に冷却し、トリエチルアミン9.0部を添加した。更に30℃まで冷却した314部のこの溶液に、トリエチルアミン4.5部を加え、464.0部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分31%の水性ポリウレタン樹脂Tを得た。
(製造実施例10)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリアルキレンカーボネートジオール(1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから得られる脂肪族ポリカーボネートポリオール、数平均分子量:約1,000、水酸基価約110mgKOH/g)144.2部、ジメチロールプロピオン酸14.0部、1,6−ヘキサンジオール9.9部、ネオペンチルグリコール8.6部およびメチルエチルケトン96.8部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、イソホロンジイソシアネート55.0部、ヘキサメチレンジイソシアネート41.5部を添加し、70℃にて加熱混合した。その後、この混合物を60℃に冷却し、トリエチルアミン10.6部を添加した。更に30℃まで冷却した381部のこの溶液に、メチルエチルケトン124.5部、トリエチルアミン3.7部を加え、683.7部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分31%の水性ポリウレタン樹脂Rを得た。
(製造実施例11)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリアルキレンカーボネートジオール(1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから得られる脂肪族ポリカーボネートポリオール、数平均分子量:約1,000、水酸基価約110mgKOH/g)47.8部、ポリエステルジオール(エチレングリコールとアジピン酸とからなる脂肪族ポリエステルジオール、重量平均分子量:1,000、水酸基価110mgKOH/g)48.3部、ジメチロールプロピオン酸12.7部、1,6−ヘキサンジオール9.7部、ネオペンチルグリコール7.3部およびメチルエチルケトン81.9部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、イソホロンジイソシアネート92.6部を添加し、70℃にて加熱混合した。その後、この混合物を60℃に冷却し、トリエチルアミン9.7部を添加した。更に30℃まで冷却した310部のこの溶液に、メチルエチルケトン54.4部、トリエチルアミン2.0部を加え、494部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分30%の水性ポリウレタン樹脂Sを得た。
(製造実施例12)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリエーテルポリオール(ポリプロピレングリコール−プロピレンオキシド(脂肪族ポリエーテルポリオール)、平均分子量:1,000、水酸基価110mgKOH/g)63.3部、ジメチロールプロピオン酸9.9部、1,6−ヘキサンジオール20.1部、ネオペンチルグリコール19.5部およびメチルエチルケトン100.1部を加え、50℃に加熱し撹拌した。均一混合後、ポリメリックMDI(NCO含有量 30.5〜32.0%)34.3部、ヘキサメチレンジイソシアネート20.2部を添加し、を添加し、55℃にて加熱混合した。その後、この混合物を50℃に冷却し、トリエチルアミン9.7部を添加した。更に30℃まで冷却した277部のこの溶液に、トリエチルアミン4.3部を加え、447部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分27%の水性ポリウレタン樹脂Vを得た。
(製造実施例13)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリエーテルポリオール(ポリプロピレングリコール−プロピレンオキシド(脂肪族ポリエーテルポリオール)、平均分子量:1,000、水酸基価110mgKOH/g)42.2部、ポリエーテルポリオール(ビスフェノールAとプロピレンオキシドよりなるポリエーテルポリオール、数平均分子量:1,000、水酸基価約110mgKOH/g)42.2部、ジメチロールプロピオン酸11.3部、1,6−ヘキサンジオール8.9部、ネオペンチルグリコール7.8部およびメチルエチルケトン87.6部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、ヘキサメチレンジイソシアネート65.3部を添加し、70℃にて加熱混合した。その後、この混合物を60℃に冷却し、トリエチルアミン8.4部を添加した。更に30℃まで冷却した274部のこの溶液に、トリエチルアミン4.2部を加え、509部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分26%の水性ポリウレタン樹脂Uを得た。
(製造比較例1)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリアルキレンカーボネートジオール(1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから得られる脂肪族ポリカーボネートポリオール、数平均分子量:約1,000、水酸基価約110mgKOH/g)58.8部、ジメチロールプロピオン酸13.2部、1,6−ヘキサンジオール33.8部、ネオペンチルグリコール33.8部およびメチルエチルケトン137.2部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、ポリメリックMDI(NCO含有量 30.5〜32.0%)94.1部を添加し、60℃にて加熱混合した。その後、この混合物を50℃に冷却し、トリエチルアミン9.6部を添加した。更に30℃まで冷却した381部のこの溶液に、メチルエチルケトン124.5部、トリエチルアミン3.7部を加え、684部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分24%の水性ポリウレタン樹脂Gを得た。
(製造比較例2)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリアルキレンカーボネートジオール(1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから得られる脂肪族ポリカーボネートポリオール、数平均分子量:約1,000、水酸基価約110mgKOH/g)43.1部、ジメチロールプロピオン酸10.8部、1,6−ヘキサンジオール21.5部、ネオペンチルグリコール21.5部およびメチルエチルケトン100.4部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、トルエンジイソシアネート107.7部を添加し、60℃にて加熱混合した。その後、この混合物を50℃に冷却し、トリエチルアミン10.9部を添加した。更に30℃まで冷却した316部のこの溶液に、メチルエチルケトン103.2部、トリエチルアミン3.1部を加え、567部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分25%の水性ポリウレタン樹脂Hを得た。
(製造比較例3)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリエーテルポリオール(ビスフェノールAとプロピレンオキシドよりなる芳香族ポリエーテルポリオール、数平均分子量:1,000、水酸基価約110mgKOH/g)90.0部、ジメチロールプロピオン酸12.0部、1,6−ヘキサンジオール9.5部、ネオペンチルグリコール8.3部およびメチルエチルケトン93.3部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、イソホロンジイソシアネート91.9部を添加し、70℃にて加熱混合した。その後、この混合物を50℃に冷却し、トリエチルアミン9.0部を添加した。更に30℃まで冷却した314部のこの溶液に、トリエチルアミン4.5部を加え、463部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分31%の水性ポリウレタン樹脂Iを得た。
(製造比較例4)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリエステルジオール(アジピン酸、テレフタル酸および3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる芳香族ポリエステルジオール、数平均分子量:2,000、水酸基価約56.1mgKOH/g)90.0部、ジメチロールプロピオン酸12.0部、1,6−ヘキサンジオール9.5部、ネオペンチルグリコール8.3部およびメチルエチルケトン93.3部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、イソホロンジイソシアネート80.0部を添加し、70℃にて加熱混合した。その後、この混合物を50℃に冷却し、トリエチルアミン9.0部を添加した。更に30℃まで冷却した302部のこの溶液に、トリエチルアミン4.5部を加え、463部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分30%の水性ポリウレタン樹脂Jを得た。
(製造比較例5)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリエステルジオール(エチレングリコールとアジピン酸とからなる脂肪族ポリエステルジオール、重量平均分子量:1,000、水酸基価110mgKOH/g)35.0部、ジメチロールプロピオン酸9.0部、1,6−ヘキサンジオール24.0部、ネオペンチルグリコール24.0部およびメチルエチルケトン93.3部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、ポリメリックMDI(NCO含有量 30.5〜32.0%)60.3部を添加し、60℃にて加熱混合した。その後、この混合物を50℃に冷却し、トリエチルアミン9.0部を添加した。更に30℃まで冷却した255部のこの溶液に、トリエチルアミン4.5部を加え、463部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分24%の水性ポリウレタン樹脂Kを得た。
(製造比較例6)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリエーテルポリオール(ポリプロピレングリコール−プロピレンオキシド(脂肪族ポリエーテルポリオール)、平均分子量:1,000、水酸基価110mgKOH/g)35.0部、ジメチロールプロピオン酸9.0部、1,6−ヘキサンジオール24.0部、ネオペンチルグリコール24.0部およびメチルエチルケトン93.3部を加え、50℃に加熱し撹拌した。均一混合後、ポリメリックMDI(NCO含有量 30.5〜32.0%)60.3部を添加し、55℃にて加熱混合した。その後、この混合物を50℃に冷却し、トリエチルアミン9.0部を添加した。更に30℃まで冷却した255部のこの溶液に、トリエチルアミン4.5部を加え、463部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分24%の水性ポリウレタン樹脂Lを得た。
(製造比較例7)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリエーテルポリオール(ビスフェノールAとプロレンオキシドよりなる芳香族ポリエーテルポリオール、数平均分子量:1,000、水酸基価約110mgKOH/g)92.7部、ジメチロールプロピオン酸9.0部、1,6−ヘキサンジオール11.5部、ネオペンチルグリコール9.3部およびメチルエチルケトン93.3部を加え、50℃に加熱し撹拌した。均一混合後、ポリメリックMDI(NCO含有量 30.5〜32.0%)46.1部を添加し、55℃にて加熱混合した。その後、この混合物を50℃に冷却し、トリエチルアミン9.0部を添加した。更に30℃まで冷却した268部のこの溶液に、トリエチルアミン4.5部を加え、463部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分26%の水性ポリウレタン樹脂Mを得た。
(製造比較例8)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリエステルジオール(アジピン酸、テレフタル酸および3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる芳香族ポリエステルジオール、数平均分子量:2,000、水酸基価約56.1mgKOH/g)90.0部、ジメチロールプロピオン酸8.0部、1,6−ヘキサンジオール11.5部、ネオペンチルグリコール9.3部およびメチルエチルケトン93.3部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、ポリメリックMDI(NCO含有量 30.5〜32.0%)23.2部を添加し、60℃にて加熱混合した。その後、この混合物を50℃に冷却し、トリエチルアミン9.0部を添加した。更に30℃まで冷却した244部のこの溶液に、トリエチルアミン4.5部を加え、463部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分23%の水性ポリウレタン樹脂Nを得た。
(製造比較例9)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリエーテルポリオール(ビスフェノールAとプロレンオキシドよりなるポリエーテルポリオール、数平均分子量:1,000、水酸基価約110mgKOH/g)62.5部、ジメチロールプロピオン酸9.0部、1,6−ヘキサンジオール10.5部、ネオペンチルグリコール10.3部およびメチルエチルケトン93.3部を加え、55℃に加熱し撹拌した。均一混合後、ヘキサメチレンジイソシアネート65.1部を添加し、70℃にて加熱混合した。その後、この混合物を50℃に冷却し、トリエチルアミン9.0部を添加した。更に30℃まで冷却した260部のこの溶液に、トリエチルアミン4.5部を加え、463部の水中に激しく撹拌しながら分散させた。全てを添加した後、この混合物を40℃で30分間以上撹拌し(反応によるイソシアネート基の完全消費のために、この混合物をNCOがIR分光法によってもはや検出されなくなるまで40℃で撹拌した)、その後にメチルエチルケトンを減圧蒸留によって除去し、不揮発分25%の水性ポリウレタン樹脂Oを得た。
【0160】
各製造実施例および各製造比較例における配合処方を、表1および表2に示す。
【0161】
【表1】
【0162】
【表2】
【0163】
(実施例1)
製造実施例1で得られた水性ポリウレタン樹脂Aを固形分換算で6.3部(固形分換算で1.8部)、フッ化アルミン酸カリウム系フラックス35部、および、水58.7部を配合し、固形分濃度が36%の水系アルミニウムろう付組成物を得た。
(実施例2〜20
実施例1と同様に、表に示す配合割合(質量部)にて、製造実施例1〜4、10、11で得られた水性ポリウレタン樹脂および表中に示されるフラックスを用い、これらを水に分散した水系アルミニウムろう付組成物を調製した。
(比較例1〜16
実施例1と同様に、表に示す配合割合(質量部)にて、製造実施例5−9、製造比較例1〜9で得られた水性ポリウレタン樹脂および表中に示されるフラックスを用い、これらを水に分散した水系アルミニウムろう付組成物を調製した。
【0164】
評価
<熱分解特性>
各バインダ樹脂を大気乾燥後に窒素雰囲気下にて、示差熱天秤(Thermo plus TG8120 リガク社製)を用いて、昇温速度20℃/分で、30℃から520℃まで加熱し、また、520℃で10分間保持することにより、バインダ樹脂の熱重量変化を測定した。その結果を、表3〜6に示す。
【0165】
また、評価基準を下記する。
○:400℃加熱環境下における残存率が60質量%以下であり、520℃加熱環境下における残存率が0.7質量%以下
△:400℃加熱環境下における残存率が60質量%以下であり、520℃加熱環境下における残存率が0.7質量%を超過し、1.0質量%以下
×:400℃加熱環境下における残存率が60質量%を超過、および/または、520℃加熱環境下における残存率が1.0質量%を超過
<開放空間におけるろう付性>
各実施例および各比較例の水系アルミニウムろう付組成物が塗布されたアルミニウム部材(JIS−A1050、60mm×25mm×1.0mm、塗布量:固形分換算で10g/m)を水平材とした。また、マンガン1.2%および亜鉛2.5%を含むアルミニウム合金にケイ素−アルミニウム合金(ろう材)をクラッドしたブレージングシートを垂直材(55mm×25mm×0.2mm)とした。
【0166】
そして、まず、水系アルミニウムろう付組成物を介して、垂直材を水平材に逆T字型に組み付け、ステンレスワイヤーで固定し、ろう付評価用の試験片を作成した。
【0167】
次いで、雰囲気式箱型電気炉(ノリタケTCF社製、A(V)−BC−M)を用いて、試験片を窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)にて605℃で加熱し、ろう付した。そして、そのろう付性について評価した。その結果を、表3〜6に示す。
【0168】
また、評価基準を下記する。
○:片側20mm以上の完全なフィレットが形成され、十分な接合強度が得られていた。
△:片側10mm以上で20mm未満のフィレットが形成され、接合強度が弱いものであった。
×:フィレットが10mm未満もしくは形成されず、ろう付が不完全で接合されていなかった。
<開放空間におけるろう付後の外観>
35mm×35mmのアルミニウム板(JIS−A1050)に、各実施例および各比較例の水系アルミニウムろう付組成物(0.03g)を刷毛にて塗布し、試験片を得た。
【0169】
次いで、試験片を大気乾燥させた後、雰囲気式箱型電気炉(ノリタケTCF社製、A(V)−BC−M)を用いて、試験片を窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)にて30℃から605℃まで約10分で昇温加熱した。加熱後の試験片の外観を観察し、評価した。その結果を、表3〜6に示す。
【0170】
また、評価基準を下記する。
○:バインダ樹脂に由来する黒色化が全く見られなかった。
△:バインダ樹脂に由来する黒色化が試験片の一部に見られた。
×:バインダ樹脂に由来する黒色化が試験片全体に明らかに見られた。
<略閉鎖空間におけるろう付性>
各実施例および各比較例の水系アルミニウムろう付組成物が塗布されたアルミニウム部材(JIS−A1050、60mm×25mm×1.0mm、塗布量:固形分換算で10g/m)を水平材とした。また、マンガン1.2%および亜鉛2.5%を含むアルミニウム合金にケイ素−アルミニウム合金(ろう材)をクラッドしたブレージングシートを垂直材(55mm×25mm×0.2mm)とした。
【0171】
そして、まず、水系アルミニウムろう付組成物を介して、垂直材を水平材に逆T字型に組み付け、ステンレスワイヤーで固定し、ろう付評価用の試験片を作成した。
【0172】
次いで、内径10.5cm、高さ5.5cmのSUS製カップにより蓋をして、雰囲気式箱型電気炉(ノリタケTCF社製、A(V)−BC−M)を用いて、試験片を窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)にて605℃で加熱し、ろう付した。そして、そのろう付性について評価した。その結果を、表3〜6に示す。
【0173】
また、評価基準を下記する。
○:片側20mm以上の完全なフィレットが形成され、十分な接合強度が得られていた。
△:片側10mm以上で20mm未満のフィレットが形成され、接合強度が弱いものであった。
×:フィレットが10mm未満もしくは形成されず、ろう付が不完全で接合されていなかった。
<略閉鎖空間におけるろう付後の外観>
35mm×35mmのアルミニウム板(JIS−A1050)に、各実施例および各比較例の水系アルミニウムろう付組成物(0.03g)を刷毛にて塗布し、試験片を得た。
【0174】
次いで、試験片を大気乾燥させた後、内径5cm、高さ5.5cmのSUS製カップにより蓋をして、雰囲気式箱型電気炉(ノリタケTCF社製、A(V)−BC−M)に挿入し、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)にて30℃から605℃まで約10分で昇温加熱した。加熱後の試験片の外観を観察し、評価した。その結果を、表3〜6に示す。
【0175】
また、評価基準を下記する。
○:バインダ樹脂に由来する黒色化が全く見られなかった。
△:バインダ樹脂に由来する黒色化が試験片の一部に見られた。
×:バインダ樹脂に由来する黒色化が試験片全体に明らかに見られた。
<保管安定性>
各実施例および各比較例において得られた水系アルミニウムろう付組成物を、200ccのガラス瓶に150g入れて、23℃にて2ヶ月間静置保存し、初期状態からの変化を目視観察して、次の基準で優劣を評価した。
【0176】
また、評価基準を下記する。
○:成分の分離や析出が見られず、50回の転倒により分散が可能である。
△:成分の分離や析出が見られず、50回の転倒により分散ができないが、機械的な撹拌(ホモミキサー(特殊機化工業社製、TK ROBOMICS)で1400rpmにて1分間攪拌)で分散が可能である。
×:成分の分離や析出が見られ、かつ、機械的な撹拌(ホモミキサー(特殊機化工業社製、TK ROBOMICS)で1400rpmにて1分間攪拌)でも分散が困難である。
<総合判定>
各評価結果から、下記の通り総合判定した。判定基準を下記する。
○:全ての評価が○であった。
△:各評価にて×が無く、かつ、1つでも△があった。
×:各評価にて1つでも×があった。
【0177】
【表3】
【0178】
【表4】
【0179】
【表5】
【0180】
【表6】
【0181】
表中の水性溶剤の詳細を下記する。
・水溶性アルコール:3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明の水系アルミニウムろう付組成物は、車両用熱交換器(エバポレータ、コンデンサなど)や、家庭用熱交換器(給湯器、空調機械など)において、アルミニウムまたはその合金同士をろう付(接合)するために、好適に用いられる。
【符号の説明】
【0183】
1 インナーフィンチューブ
2 インナーフィン部
3 チューブ部
4 通路
5 接触部分
図1