特許第5974183号(P5974183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974183
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】超音波プローブ及び超音波処置装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/32 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   A61B17/32 510
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-537864(P2015-537864)
(86)(22)【出願日】2014年10月30日
(86)【国際出願番号】JP2014078927
(87)【国際公開番号】WO2015064702
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2015年7月30日
(31)【優先権主張番号】特願2013-228791(P2013-228791)
(32)【優先日】2013年11月1日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】銅 庸高
【審査官】 吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−070279(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0270891(US,A1)
【文献】 特開2009−160404(JP,A)
【文献】 特表2007−531563(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/196640(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/024550(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端方向から先端方向へ縦振動を含む超音波振動を伝達する超音波プローブであって、
断面重心を連続的に通る長手軸を有し、先端が前記縦振動の節位置又は前記節位置の近傍に位置するプローブ本体部と、
前記プローブ本体部より先端方向側を構成する先端処置部と、
前記長手軸に垂直な第1の垂直方向へ前記長手軸に対して湾曲する状態で前記先端処置部に設けられ、重心が前記長手軸より第1の垂直方向側に位置するプローブ湾曲部と、
前記先端処置部から前記プローブ本体部の基端までに渡って前記第1の垂直方向を向く状態で延設される第1の外表面と、
前記先端処置部から前記プローブ本体部の前記基端までに渡って前記第1の垂直方向とは反対方向の第2の垂直方向を向く状態で延設される第2の外表面と、
を具備し、
前記先端処置部から前記プローブ本体部の前記基端までに渡って前記長手軸から前記第2の外表面までの距離が一定であるとともに、前記先端処置部から前記プローブ本体部の前記先端までに渡って、前記長手軸から前記第2の外表面までの距離に比べて、前記長手軸から前記第1の外表面までの距離が小さくなり、前記先端処置部から前記プローブ本体部の前記先端までに渡って断面重心が前記プローブ本体部の前記断面重心より第2の垂直方向側に連続的に位置する状態から、前記プローブ湾曲部が前記長手軸に対して前記第1の垂直方向側に湾曲する
超音波プローブ。
【請求項2】
前記プローブ湾曲部より基端方向側に位置する前記縦振動の腹位置の中で最も前記先端方向側の腹位置を基準腹位置とした場合に、前記プローブ本体部の前記先端は、前記基準腹位置より前記先端方向側で、かつ、前記縦振動の腹位置とは異なる位置に位置し、
前記超音波プローブは、前記プローブ本体部の前記先端に設けられ、前記プローブ本体部の前記長手軸に垂直な断面である第1の断面形状の第1の断面積に比べて、前記第1の外表面及び前記第2の外表面を通る前記長手軸に垂直な断面である第2の断面形状の第2の断面積を小さくする断面変化部をさらに備え、
前記断面変化部での前記第1の断面形状から前記第2の断面形状への変化によって、前記第2の断面形状での断面重心は、前記長手軸よりも前記第2の垂直方向側に連続的に位置する、
請求項1の超音波プローブ。
【請求項3】
前記長手軸に垂直で、かつ、前記第1の垂直方向及び前記第2の垂直方向に垂直な方向を第3の垂直方向及び第4の垂直方向とした場合に、前記第2の断面形状での前記断面重心は、前記第3の垂直方向及び前記第4の垂直方向について前記長手軸と略一致する位置に位置する、請求項2の超音波プローブ。
【請求項4】
前記第1の外表面及び前記第2の外表面を通る前記第2の断面形状は、前記プローブ本体部の前記第1の断面形状と比べて、前記長手軸より前記第1の垂直方向側の部位で断面積が減少する、請求項3の超音波プローブ。
【請求項5】
前記長手軸を通り、かつ、前記第3の垂直方向及び前記第4の垂直方向に垂直な基準面を規定した場合に、前記第2の断面形状は、前記基準面を中央面として面対称である、請求項4の超音波プローブ。
【請求項6】
前記断面変化部は、前記縦振動の前記節位置の1つである断面変化節位置に位置し、
前記断面変化節位置は、前記長手軸に沿う方向について前記基準腹位置と前記先端処置部の基端との間に位置する、
請求項2の超音波プローブ。
【請求項7】
前記断面変化節位置は、前記縦振動の前記節位置の中で最も前記先端方向側に位置する最先端節位置である、請求項6の超音波プローブ。
【請求項8】
前記超音波振動が前記プローブ本体部を介して前記先端処置部に伝達された状態において、前記プローブ湾曲部の湾曲に起因して発生し、振動方向が前記第1の垂直方向及び前記第2の垂直方向に平行な第1の横振動、及び、前記断面変化部での前記第1の断面形状から前記第2の断面形状への変化に起因して発生し、振動方向が前記第1の横振動と同一である第2の横振動が、干渉によって互いに対して打消し合う、請求項2の超音波プローブ。
【請求項9】
前記第2の横振動は、前記第1の横振動に対して逆位相である、請求項8の超音波プローブ。
【請求項10】
請求項1の前記超音波プローブと、
前記超音波プローブより基端方向側に設けられ、電流が供給されることにより、前記超音波プローブに伝達される前記超音波振動を発生する振動発生部と、
を具備する超音波処置装置。
【請求項11】
前記超音波振動を発生させる前記電流の前記振動発生部への供給状態、及び、前記先端処置部への高周波電流の供給状態を制御するエネルギー制御部をさらに具備する、請求項10の超音波処置装置。
【請求項12】
前記長手軸に垂直で、かつ、前記第1の垂直方向及び前記第2の垂直方向に垂直な方向を第3の垂直方向及び第4の垂直方向とした場合に、前記超音波プローブの前記先端処置部に対して開閉可能で、開閉方向が前記第3の垂直方向及び前記第4の垂直方向に対して平行であるジョーをさらに具備する、請求項10の超音波処置装置。
【請求項13】
前記超音波振動を発生させる前記電流の前記振動発生部への供給状態、及び、前記先端処置部及び前記ジョーへの高周波電流の供給状態を制御するエネルギー制御部をさらに具備する、請求項12の超音波処置装置。
【請求項14】
前記第1の外表面及び前記第2の外表面のそれぞれは、前記プローブ本体部と前記先端処置部との間で連続する、請求項1の超音波プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動を伝達する超音波プローブ、及び、その超音波プローブを備える超音波処置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基端方向から先端方向へ超音波振動を伝達する超音波プローブを備える超音波処置装置が、開示されている。この超音波処置装置では、超音波プローブは、長手軸を軸中心として長手軸に沿って延設されるプローブ本体部と、プローブ本体部より先端方向側に設けられる先端処置部と、を備える。また、超音波処置装置には、先端処置部に対して開閉可能なジョーが、設けられている。超音波プローブでは、プローブ本体部を介して先端処置部に超音波振動が伝達されることにより、振動方向が長手軸に平行な縦振動が発生する。縦振動を用いて、ジョーと先端処置部との間で把持された生体組織等の処置対象が処置される。ここで、長手軸に垂直で、かつ、ジョーの開閉方向に垂直な方向の一方を、第1の垂直方向とする。先端処置部には、長手軸に沿った真直ぐな状態から第1の垂直方向へ長手軸に対して湾曲するプローブ湾曲部が、設けられている。プローブ湾曲部を設けることにより、処置時における術者の視認性が確保されるとともに、術者が処置対象を把持可能な位置まで先端処置部を到達させ易くなる。すなわち、プローブ湾曲部を設けることにより、処置において術者が超音波プローブを使用し易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2011−500161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1では、プローブ湾曲部において、超音波プローブが長手軸に沿った真直ぐな状態から第1の垂直方向へ長手軸に対して湾曲する。このため、プローブ湾曲部の重心は、長手軸より第1の垂直方向側に位置している。重心が長手軸より第1の垂直方向側に位置するプローブ湾曲部が設けられるため、先処置部に超音波振動が伝達された状態では、処置で用いられる縦振動に加えて、振動方向が第1の垂直方向に平行な横振動等の不正振動が発生してしまう。前述の横振動を含む不正振動の影響が大きくなることにより、超音波プローブでの超音波振動の安定性が低下してしまう。これにより、超音波プローブでの超音波振動の伝達性が低下してしまうとともに、超音波振動を用いた処置での処置性能が低下してしまう。
【0005】
本発明は前記課題に着目してなされたものであり、術者が使用し易く、超音波振動の安定性が確保される超音波プローブを提供することにある。また、その超音波プローブを備える超音波処置装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のある態様は、基端方向から先端方向へ縦振動を含む超音波振動を伝達する超音波プローブであって、断面重心を連続的に通る長手軸を有し、先端が前記縦振動の節位置又は前記節位置の近傍に位置するプローブ本体部と、前記プローブ本体部より先端方向側を構成する先端処置部と、前記長手軸に垂直な第1の垂直方向へ前記長手軸に対して湾曲する状態で前記先端処置部に設けられ、重心が前記長手軸より第1の垂直方向側に位置するプローブ湾曲部と、前記先端処置部から前記プローブ本体部の基端までに渡って前記第1の垂直方向を向く状態で延設される第1の外表面と、前記先端処置部から前記プローブ本体部の前記基端までに渡って前記第1の垂直方向とは反対方向の第2の垂直方向を向く状態で延設される第2の外表面と、を備え、前記先端処置部から前記プローブ本体部の前記基端までに渡って前記長手軸から前記第2の外表面までの距離が一定であるとともに、前記先端処置部から前記プローブ本体部の前記先端までに渡って、前記長手軸から前記第2の外表面までの距離に比べて、前記長手軸から前記第1の外表面までの距離が小さくなり、前記先端処置部から前記プローブ本体部の前記先端までに渡って断面重心が前記プローブ本体部の前記断面重心より第2の垂直方向側に連続的に位置する状態から、前記プローブ湾曲部が前記長手軸に対して前記第1の垂直方向側に湾曲する
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、術者が使用し易く、超音波振動の安定性が確保される超音波プローブを提供することができる。また、その超音波プローブを備える超音波処置装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る超音波処置装置の構成を示す概略図である。
図2】第1の実施形態に係る振動子ユニットの構成を概略的に示す断面図である。
図3】第1の実施形態に係る超音波プローブの先端部、シースの先端部及びジョーの構成を概略的に示す斜視図である。
図4】第1の実施形態に係る超音波プローブの構成を概略的に示す斜視図である。
図5】第1の実施形態に係る超音波プローブの構成をジョーの開閉方向に垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図6】第1の実施形態に係る超音波プローブのプローブ本体部の長手軸に垂直な断面での第1の断面形状を概略的に示す断面図である。
図7】第1の実施形態に係る超音波プローブのプローブ中継部の長手軸に垂直な断面での第2の断面形状を概略的に示す断面図である。
図8】第1の実施形態に係る超音波プローブが超音波振動を伝達する状態で縦振動とは別に発生する不正振動について説明する概略図である。
図9】第1の変形例に係る超音波プローブのプローブ中継部の長手軸に垂直な断面での第2の断面形状を概略的に示す断面図である。
図10】第2の変形例に係る超音波プローブのプローブ中継部の長手軸に垂直な断面での第2の断面形状を概略的に示す断面図である。
図11】第3の変形例に係る超音波プローブのプローブ中継部の長手軸に垂直な断面での第2の断面形状を概略的に示す断面図である。
図12】第4の変形例に係る超音波プローブのプローブ中継部の長手軸に垂直な断面での第2の断面形状を概略的に示す断面図である。
図13】第5の変形例に係る超音波プローブのプローブ中継部の長手軸に垂直な断面での第2の断面形状を概略的に示す断面図である。
図14】第6の変形例に係る超音波プローブのプローブ本体部の長手軸に垂直な断面での第1の断面形状を概略的に示す断面図である。
図15】第6の変形例に係る超音波プローブのプローブ中継部の長手軸に垂直な断面での第2の断面形状を概略的に示す断面図である。
図16】第7の変形例に係る超音波プローブの構成をジョーの開閉方向に垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図17】第8の変形例に係る超音波処置装置を概略的に示す斜視図である。
図18】第8の変形例に係る超音波プローブを第3の垂直方向及び第4の垂直方向に垂直な断面で概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、図1乃至図8を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の超音波処置装置1の構成を示す図である。図1に示すように、超音波処置装置1を通る、長手軸Cを規定する。長手軸Cに平行な方向の一方が先端方向(図1の矢印C1の方向)であり、先端方向とは反対方向が基端方向(図1の矢印C2の方向)である。そして、先端方向及び基端方向が、長手軸Cに平行な軸平行方向となる。本実施形態では、超音波処置装置1は、超音波振動を用いて生体組織等を凝固と同時に切開する処置を行う超音波凝固切開処置装置である。
【0011】
超音波処置装置1は、振動子ユニット2と、保持ユニット3と、を備える。保持ユニット3は、長手軸Cに沿って延設される筒状ケース部5と、筒状ケース部5と一体に形成される固定ハンドル6と、筒状ケース部5に対して回動可能に取付けられる可動ハンドル7と、を備える。筒状ケース部5への取付け位置を中心として可動ハンドル7が回動することにより、可動ハンドル7が固定ハンドル6に対して開動作又は閉動作を行う。また、保持ユニット3は、筒状ケース部5の先端方向側に取付けられる回転操作ノブ8を備える。回転操作ノブ8は、筒状ケース部5に対して長手軸Cを中心として回転可能である。また、固定ハンドル6には、エネルギー操作入力部であるエネルギー操作入力ボタン9が取付けられている。
【0012】
超音波処置装置1は、長手軸Cに沿って延設されるシース10を備える。シース10が先端方向側から回転操作ノブ8の内部及び筒状ケース部5の内部に挿入されることにより、シース10が保持ユニット3に取付けられる。シース10の先端部には、ジョー11が回動可能に取付けられている。可動ハンドル7は、筒状ケース部5の内部でシース10の可動筒状部(図示しない)に接続されている。可動筒状部の先端は、ジョー11に接続されている。固定ハンドル6に対して可動ハンドル7を開閉することにより、可動筒状部が長手軸Cに沿って移動する。これにより、ジョー11が、シース10への取付け位置を中心として回動する。また、シース10及びジョー11は、回転操作ノブ8と一体に、筒状ケース部5に対して長手軸Cを中心として、回転可能である。
【0013】
振動子ユニット2は、長手軸Cに沿って延設される振動子ケース12を備える。振動子ケース12が基端方向側から筒状ケース部5の内部に挿入されることにより、振動子ユニット2が保持ユニット3に取付けられる。振動子ケース12は、筒状ケース部5の内部において、シース10に連結されている。振動子ケース12は、回転操作ノブ8と一体に、筒状ケース部5に対して長手軸Cを中心として、回転可能である。また、振動子ユニット2には、ケーブル13の一端が接続されている。ケーブル13の他端は、制御ユニット15に接続されている。制御ユニット15は、電流供給部16及びエネルギー制御部18を備える。ここで、制御ユニット15は、例えば電源装置であり、電流供給部16は、例えば電源装置に設けられる電源及びアンプ回路から形成されている。また、エネルギー制御部18は、CPU(Central Processing Unit)又はASIC(application specific integrated circuit)、及び、メモリ等の記憶部から形成されている。
【0014】
図2は、振動子ユニット2の構成を示す図である。図2に示すように、振動子ユニット2では、振動子ケース12の内部に、電流が供給されることにより超音波振動を発生する超音波発生部である超音波振動子21が、設けられている。超音波振動子21は、電流を振動に変換する複数の(本実施形態では4つの)圧電素子22A〜22Dを備える。超音波振動子21は、長手軸Cに沿って延設されるホーン部材23に装着されている。超音波振動子21で発生した超音波振動は、ホーン部材23に伝達される。ホーン部材23には、断面積変化部26が形成されている。断面積変化部26では、先端方向に向かうにつれて、長手軸Cに垂直な断面積が小さくなる。このため、断面積変化部26では、超音波振動の振幅が拡大される。ホーン部材23の先端部には、雌ネジ部27が設けられている。
【0015】
ホーン部材23の先端方向側には、超音波プローブ31が延設されている。本実施形態では、超音波プローブ31は、柱状(中肉)に形成されている。また、長手軸Cは、超音波プローブ31を通過する。超音波プローブ31の基端部には、雄ネジ部32が設けられている。雄ネジ部32が雌ネジ部27に螺合することにより、ホーン部材23の先端方向側に超音波プローブ31が接続される。ホーン部材23は、筒状ケース部5の内部まで延設され、筒状ケース部5の内部で、ホーン部材23に超音波プローブ31が接続されている。超音波プローブ31は、筒状ケース部5の内部から、回転操作ノブ8の内部及びシース10の内部を通って延設されている。そして、図1に示すように、シース10の先端から先端方向に向かって突出する状態で、超音波プローブ31はシース10に挿通されている。なお、超音波振動子21、ホーン部材23及び超音波プローブ31は、回転操作ノブ8と一体に筒状ケース部5に対して、長手軸Cを中心として回転可能である。
【0016】
超音波振動子21には、電気配線25A,25Bの一端が接続されている。電気配線25A,25Bは、ケーブル13の内部を通って、他端が制御ユニット15の電流供給部16に接続されている。電流供給部16から電気配線25A,25Bを介して超音波振動子21に電流(交流電流)が供給されることにより、超音波プローブ31より基端方向側に位置する超音波振動子21で、超音波振動が発生する。そして、発生した超音波振動は、ホーン部材23を介して超音波プローブ31に伝達される。そして、超音波プローブ31において基端方向から先端方向へ超音波振動が伝達される。超音波プローブ31において超音波振動が伝達される状態では、振動方向が長手軸Cに平行な縦振動が発生する。ここで、ホーン部材23の基端(超音波振動子21の基端)及び超音波プローブ31の先端は、縦振動の腹位置となる。
【0017】
エネルギー制御部18は、エネルギー操作入力ボタン9でのエネルギー操作の入力に基づいて、電流供給部16からの電流の供給状態を制御している。固定ハンドル6の内部には、スイッチ(図示しない)が設けられている。エネルギー操作入力ボタン9が押圧され、エネルギー操作が入力されることにより、スイッチが閉じられる。スイッチは、エネルギー制御部18に電気的に接続されている。スイッチが閉じられることにより、電気信号がエネルギー制御部18に伝達され、エネルギー操作の入力が検出される。エネルギー操作の入力が検出されることにより、電流供給部16から超音波振動子21に電流が供給され、超音波振動子21で超音波振動が発生する。
【0018】
図3は、超音波プローブ31の先端部、シース10の先端部及びジョー11の構成を示す図である。図3に示すように、超音波プローブ31は、シース10の先端から先端方向へ突出する先端処置部33を備える。先端処置部33では、伝達された超音波振動を用いて、生体組織等の処置対象の処置が行われる。ジョー11がシース10に対して回動することにより、ジョー11が先端処置部33に対して開動作又は閉動作を行う。ジョー11の開閉方向は、長手軸Cに対して交差する(垂直である)。
【0019】
図4及び図5は、超音波プローブ31の構成を示す図である。図4は、斜視図であり、図5は、ジョー11の開閉方向に垂直な断面を示す断面図である。図3乃至図5に示すように、超音波プローブ31は、長手軸Cを軸中心として長手軸Cに沿って延設されるプローブ本体部35を備える。プローブ本体部35では、基端方向から先端方向へ長手軸Cに沿って超音波振動が伝達される。
【0020】
ここで、長手軸Cに垂直なある1つの方向を第1の垂直方向(図3及び図4の矢印B1の方向)とし、第1の垂直方向とは反対方向を第2の垂直方向(図3及び図4の矢印B2の方向)とする。そして、長手軸Cに垂直で、かつ、第1の垂直方向及び第2の垂直方向に垂直な方向の一方を第3の垂直方向(図3及び図4の矢印B3の方向)とし、第3の垂直方向とは反対方向を第4の垂直方向(図3及び図4の矢印B4の方向)とする。本実施形態では、第1の垂直方向及び第2の垂直方向は、ジョー11の開閉方向に対して垂直であり、第3の垂直方向及び第4の垂直方向は、ジョー11の開閉方向に対して平行である。
【0021】
また、長手軸Cを通り、かつ、第1の垂直方向及び第2の垂直方向に垂直な第1の基準面P1を規定するとともに、長手軸Cを通り、かつ、第3の垂直方向及び第4の垂直方向(すなわち、ジョー11の開閉方向)に垂直な第2の基準面P2を規定する。プローブ本体部35は、第1の基準面P1を中央面として面対称であるとともに、第2の基準面P2を中央面として面対称である。なお、図5は、第2の基準面P2で切断した断面を示している。
【0022】
超音波プローブ31では、プローブ本体部35より先端方向側に先端処置部33が位置している。先端処置部33には、プローブ湾曲部37が、設けられている。プローブ湾曲部37は、長手軸Cに沿った真直ぐな状態から第1の垂直方向へ長手軸Cに対して湾曲している。プローブ湾曲部37によって、超音波プローブ31の先端が形成されている。プローブ湾曲部37が長手軸Cに対して第1の垂直方向へ湾曲するため、プローブ湾曲部37は、第1の基準面P1を中央面として非面対称に、形成されている。そして、プローブ湾曲部37の湾曲部重心(重心)GBは、長手軸Cより第1の垂直方向側に位置している。なお、ジョー11も、先端処置部33のプローブ湾曲部37に対応する位置で、第1の垂直方向へ湾曲している。ジョー11は、プローブ湾曲部37に対応する形状に湾曲している。
【0023】
長手軸Cに平行な軸平行方向についてプローブ本体部35と先端処置部33との間には、プローブ中継部38が連続している。プローブ中継部38は、長手軸Cに沿って延設されている。プローブ中継部38と先端処置部33との間の第1の境界位置Z1が、プローブ中継部38の先端となり、プローブ本体部35とプローブ中継部38との第2の境界位置(境界位置)Z2が、プローブ中継部38の基端となる。第2の境界位置Z2には、超音波プローブ31の長手軸Cに垂直な断面積が変化する断面変化部41が、設けられている。
【0024】
図6は、プローブ本体部35の長手軸Cに垂直な断面での第1の断面形状を示す図であり、図7は、プローブ中継部38の長手軸Cに垂直な断面での第2の断面形状を示す図である。図6に示すように、プローブ本体部35の第1の断面形状は、長手軸Cを中心とする円形状に形成されている。したがって、プローブ本体部35の第1の断面形状は、第1の基準面P1を中央面として面対称であるとともに、第2の基準面P2を中央面として面対称である。このため、第1の断面形状では、プローブ本体部35の断面重心Gd1が長手軸C上に位置している。なお、第1の断面形状は、基準寸法R0となる半径を有するとともに、第1の断面積S1を有する。
【0025】
図7に示すように、プローブ中継部38の第2の断面形状では、円弧曲面42及び中継面43によって、外周面が形成されている。円弧曲面42は、第1の断面形状の半径と同一の基準寸法R0だけ長手軸Cから離れた円弧状に形成されている。中継面43は、平面状に形成され、長手軸Cより第1の垂直方向側(図7の矢印B1の方向側)に位置している。また、本実施形態では、中継面43は、第3の垂直方向及び第4の垂直方向に対して平行である。中継面43では、長手軸Cからの距離が、基準寸法R0より小さくなる。前述のように中継面43が設けられることにより、プローブ中継部38の第2の断面形状は、プローブ本体部35の第1の断面形状と比べて、長手軸Cより第1の垂直方向側の部位で断面積が減少する。したがって、第2の断面形状の第2の断面積S2は、第1の断面形状の第1の断面積S1に比べて、小さくなる。
【0026】
前述のように中継面43を設けることにより、プローブ中継部38の第2の断面形状は、第1の基準面P1を中央面として非面対称となる。そして、第2の断面形状では、プローブ中継部38の断面重心Gd2が、長手軸Cより第2の垂直方向側に連続的に位置している。ただし、第2の断面形状は、第2の基準面P2を中央面として面対称となる。このため、第2の断面形状では、プローブ中継部38の断面重心Gd2が、第3の垂直方向及び第4の垂直方向について長手軸Cに対してずれていない。すなわち、第2の断面形状では、プローブ中継部38の断面重心Gd2が、第3の垂直方向及び第4の垂直方向について長手軸Cと位置が略一致している。ここで、略一致するとは、第3の垂直方向及び第4の垂直方向についてプローブ中継部38の断面重心Gd2が長手軸Cと位置が完全に一致していることを、意味するわけではない。すなわち、第3の垂直方向及び第4の垂直方向についてプローブ中継部38の断面重心Gd2が長手軸Cに対して実質的にずれていないとみなせる程度の位置の微差は、許容される。
【0027】
前述のように、第2の断面形状でのプローブ中継部38の断面重心Gd2は、第1の断面形状でのプローブ本体部35の断面重心Gd1に対して、第2の垂直方向へのみ、ずれて位置している。すなわち、プローブ本体部35とプローブ中継部38との第2の境界位置(境界位置)B2に設けられる断面変化部41では、長手軸Cに垂直な断面での断面重心(Gd1,Gd2)が、第2の垂直方向へのみ、変化する。
【0028】
図5に示すように、超音波プローブ31では、プローブ湾曲部37の先端(超音波プローブ31の先端)が、縦振動の腹位置A1となる。腹位置A1は、縦振動の腹位置の中で最も先端方向側に位置する最先端腹位置である。また、本実施形態では、プローブ本体部35とプローブ中継部38との第2の境界位置Z2は、縦振動の節位置N1に位置している。したがって、断面変化部41は、縦振動の腹位置とは異なる節位置(断面変化節位置)N1に位置している。
【0029】
ここで、プローブ湾曲部37より基端方向側に位置する縦振動の腹位置の中で最も先端方向側に位置する腹位置A2を、基準腹位置とする。断面変化節位置である節位置N1は、腹位置(最先端腹位置)A1と腹位置(基準腹位置)A2との間に位置している。そして、節位置N1は、長手軸Cに平行な軸平行方向について腹位置A2と先端処置部33の基端との間に、位置している。前述のような構成にすることにより、プローブ中継部38とプローブ本体部35との第2の境界位置Z2は、腹位置(基準腹位置)A2より先端方向側に位置している。また、節位置N1は、縦振動の節位置の中で最も先端方向側に位置する最先端節位置である。なお、超音波プローブ31は、超音波振動子21からホーン部材23を通して超音波振動が伝達されることにより、前述の腹位置(A1,A2)及び節位置(N1)が規定される所定の周波数で縦振動する。すなわち、超音波プローブ31は、腹位置A1,A2を含む腹位置及び節位置N1を含む節位置のそれぞれが軸平行方向について所定の位置に定まる所定の周波数で縦振動する。
【0030】
また、超音波処置装置1では、プローブ中継部38は、シース10の内部に位置している。したがって、腹位置(基準腹位置)A2及び節位置(断面変化節位置)N1は、シース10の内部に位置している。
【0031】
次に、本実施形態の超音波処置装置1及び超音波プローブ31の作用及び効果について、説明する。超音波処置装置1を用いて生体組織等の処置対象の処置を行う際には、ジョー11、超音波プローブ31及びシース10を体腔内に挿入する。そして、ジョー11が先端処置部33に対して開いた状態で、ジョー11と先端処置部33との間で処置対象を把持可能な位置に、先端処置部33を配置する。ここで、先端処置部33には、長手軸Cに対して第1の垂直方向へ湾曲するプローブ湾曲部37が、設けられている。このため、ジョー11と先端処置部33との間で処置対象を把持可能な位置まで、先端処置部33を到達させ易い。
【0032】
そして、ジョー11と先端処置部33との間に処置対象が位置する状態で、可動ハンドル7を固定ハンドル6に対して閉じる。これにより、ジョー11が先端処置部33に対して閉動作を行い、ジョー11と先端処置部33との間で処置対象が把持される。先端処置部33にプローブ湾曲部37が設けられることにより、ジョー11と先端処置部33との間で処置対象が把持される処置時において、術者の視認性が確保される。
【0033】
ジョー11は、先端処置部33のプローブ湾曲部37に対応する位置で、第1の垂直方向へ湾曲している。そして、ジョー11は、プローブ湾曲部37に対応する形状に湾曲している。このため、ジョー11と先端処置部33との間で処置対象が把持される処置時において、術者の視認性が向上する。
【0034】
そして、エネルギー操作入力ボタン9でエネルギー操作が入力されることにより、電流供給部16から超音波振動子21に電流が供給され、超音波振動子21で超音波振動が発生する。発生した超音波振動は、ホーン部材23を介して超音波プローブ31に伝達される。そして、超音波プローブ31において基端方向から先端方向へ先端処置部33まで超音波振動が伝達され、超音波プローブ31は振動方向が長手軸Cに平行な縦振動を行う。ジョー11と先端処置部33との間で処置対象が把持された状態で先端処置部33が縦振動することにより、先端処置部33と処置対象との間に摩擦熱が発生する。摩擦熱によって、処置対象が凝固と同時に切開される。
【0035】
なお、前述の超音波振動を用いた処置に加えて、高周波電流を用いた処置が超音波処置装置1によって行われてもよい。高周波電流を用いた処置では、ジョー11及び先端処置部33を電極として、把持された処置対象が処置される。
【0036】
図8は、超音波プローブ31が超音波振動を伝達する状態で縦振動とは別に発生する不正振動について説明する図である。超音波プローブ31の先端処置部33には、長手軸Cより第1の垂直方向側に湾曲部重心(重心)GBが位置するプローブ湾曲部37が設けられている。このため、図8に示すように、プローブ本体部35を介してプローブ中継部38及び先端処置部33に超音波振動が伝達されることにより、処置に用いられる縦振動とは別に、第1の横振動(v1)が不正振動として発生する。第1の横振動は、プローブ湾曲部37の湾曲に起因して発生し、振動方向が第1の垂直方向及び第2の垂直方向に平行である。
【0037】
また、第2の境界位置(境界位置)Z2に設けられる断面変化部41では、長手軸Cに垂直な断面での断面重心(Gd1,Gd2)が、変化する。ここで、超音波プローブ31が超音波振動を伝達する状態において、縦振動の腹位置(例えばA1,A2)とは異なる位置では、超音波振動による応力が発生する。断面変化部41が位置する節位置N1は、縦振動の腹位置とは異なる位置であり、超音波振動による応力が発生する。したがって、断面変化部41では、超音波振動による応力が作用する位置で、長手軸Cに垂直な断面での断面重心(Gd1,Gd2)が変化する。このため、図8に示すように、プローブ本体部35を介してプローブ中継部38及び先端処置部33に超音波振動が伝達されることにより、縦振動及び第1の横振動とは別に、第2の横振動(v2)が不正振動として発生する。
【0038】
なお、図8では、第1の横振動をv1で示し、第2の横振動をv2で示している。そして、第1の横振動(v1)及び第2の横振動(v2)が干渉し合った状態をv0で示している。また、図8では、超音波プローブ31の先端を基準とした基端方向への距離を、Sで示している。また、tは、時間を示し、…→t1→t2→t3→t4→t1→t2→…の順に状態(振動状態)が変化する。
【0039】
プローブ中継部38の断面重心Gd2は、第3の垂直方向及び第4の垂直方向について長手軸Cに対してずれてなく、第2の垂直方向へのみ長手軸Cに対してずれている。このため、第2の横振動の振動方向は、第1の垂直方向及び第2の垂直方向に平行となり、第1の横振動と一致する。そして、第2の横振動の周波数は、第1の横振動の周波数と同一になる。
【0040】
また、腹位置(基準腹位置)A2は、プローブ湾曲部37より基端方向側に位置する腹位置の中で最も先端方向側の腹位置であり、断面変化部41が設けられる節位置N1は、腹位置A2より先端方向側に位置している。すなわち、超音波プローブ31では、腹位置A2より先端方向側の断面変化部41で、プローブ中継部38の断面重心Gd2が第2の垂直方向へのみ長手軸Cに対してずれる。このため、第1の横振動及び第2の横振動が干渉によって互いに対して打消し合う状態に、第2の横振動が発生する。
【0041】
第1の横振動及び第2の横振動が干渉によって打消し合うことにより、第1の横振動及び第2の横振動等の不正振動の縦振動への影響が軽減される。不正振動の影響が小さくなるため、超音波プローブ31での超音波振動の安定性が確保される。これにより、超音波プローブ31において超音波振動が適切に伝達され、前述した凝固と同時に切開する処置等の超音波振動を用いた処置での処置性能が確保される。
【0042】
また、断面変化部41が設けられる節位置N1は、腹位置(最先端腹位置)A1と縦振動の半波長だけ腹位置A1から基端方向へ離れた腹位置(基準腹位置)A2との間に、位置している。すなわち、超音波振動の節位置の中で最も先端方向側の節位置N1に、断面変化部41が位置している。節位置N1でプローブ中継部38の断面重心Gd2が第2の垂直方向へ長手軸Cに対してずれるため、第2の横振動は、第1の横振動に対して逆位相となる。このため、第1の横振動の振幅と第2の横振動の振幅とを同一にすることにより、第1の横振動及び第2の横振動が実質的に発生しない状態となる。これにより、第1の横振動及び第2の横振動の縦振動への影響がなくなり、不正振動の縦振動への影響がさらに小さくなる。したがって、超音波プローブ31での超音波振動の安定性がさらに確実に確保される。
【0043】
なお、第2の横振動の振幅は、プローブ中継部38の断面重心Gd2の長手軸Cからの第2の垂直方向への距離に対応して、変化する。したがって、プローブ中継部38の第2の断面形状に対応して、第2の横振動の振幅は変化する。このため、節位置N1に断面変化部41が位置する(第2の横振動が第1の横振動に対して逆位相となる)本実施形態では、第1の横振動の振幅と第2の横振動の振幅とが同一となる状態に、第2の断面形状が形成されることが好ましい。
【0044】
前述のように、本実施形態では、術者が使用し易く、超音波振動の安定性が確保される超音波プローブ31を提供することができる。また、その超音波プローブ31を備える超音波処置装置1を提供することができる。
【0045】
(変形例)
なお、第1の実施形態では、処置においてエネルギーとして超音波振動のみが設けられているが、これに限るものではない。例えば、処置において、超音波振動に加えて高周波電流が用いられてもよい。この場合、エネルギー制御部18は、電流供給部16から超音波振動子21への超音波振動を発生させる電流の供給状態を制御するとともに、制御ユニット15からの高周波電流の出力状態を制御する。制御ユニット15から高周波電流が出力されることにより、先端処置部33及びジョー11の導電部(図示しない)が電極として機能する。先端処置部33とジョー11との間で処置対象を把持した状態で先端処置部33及びジョー11に高周波電流が出力されることにより、処置対象に高周波電流が流れる。高周波電流によって、処置対象が変成され、処置対象の凝固性が向上する。
【0046】
また、第1の実施形態では、プローブ中継部38の第2の断面形状の中継面43は、第3の垂直方向及び第4の垂直方向に対して平行な平面状に形成されるが、これに限るものではない。例えば、第1の変形例として図9に示すように、及び、第2の変形例として図10に示すように、中継面43が曲面状に形成されてもよい。第1の変形例のプローブ中継部38の第2の断面形状の中継面43では、第3の垂直方向及び第4の垂直方向について長手軸から離れた位置ほど、第2の垂直方向側に位置している。一方、第2の変形例のプローブ中継部38の第2の断面形状の中継面43では、第3の垂直方向及び第4の垂直方向について長手軸から離れた位置ほど、第1の垂直方向側に位置している。
【0047】
また、第3の変形例として図11に示すように、中継面43が、底平面51及び側平面52A,52Bから形成されてもよい。本変形例では、底平面51の第3の垂直方向側の端と円弧曲面42との間に側平面52Aが連続し、底平面51の第4の垂直方向側の端と円弧曲面42との間に側平面52Bが連続している。また、第4の変形例として図12に示すように、中継面43が、傾斜平面53A,53Bから形成されてもよい。傾斜平面53Aでは、第3の垂直方向へ向かうにつれて、第1の垂直方向側に位置している。傾斜平面53Bでは、第4の垂直方向へ向かうにつれて、第1の垂直方向側に位置している。
【0048】
前述の第1の変形例乃至第4の変形例では、第1の実施形態と同様に、プローブ中継部38の第2の断面形状において、長手軸Cより第1の垂直方向側に、中継面43が設けられている。中継面43を設けることにより、プローブ中継部38の第2の断面形状は、プローブ本体部35の第1の断面形状と比べて、長手軸Cより第1の垂直方向側の部位で断面積が減少する。これにより、第2の断面形状では、プローブ中継部38の断面重心Gd2が、長手軸Cより第2の垂直方向側に位置する。また、前述の第1の変形例乃至第4の変形例では、第1の実施形態と同様に、プローブ中継部38の第2の断面形状は、第2の基準面P2を中央面として面対称となる。このため、第2の断面形状では、プローブ中継部38の断面重心Gd2が、第3の垂直方向及び第4の垂直方向について長手軸Cに対してずれていない。
【0049】
また、第5の変形例として図13に示すように、プローブ中継部38の第2の断面形状が、第2の基準面P2を中央面として非面対称であってもよい。本変形例でも、中継面43によって、プローブ中継部38の第2の断面形状は、プローブ本体部35の第1の断面形状と比べて、長手軸Cより第1の垂直方向側の部位で断面積が減少する。これにより、第2の断面形状では、プローブ中継部38の断面重心Gd2が、長手軸Cより第2の垂直方向側に位置する。また、本変形例では、第2の断面形状が第2の基準面P2を中央面として非面対称であるが、第2の断面形状でのプローブ中継部38の断面重心Gd2が、第3の垂直方向及び第4の垂直方向について長手軸Cに対してずれていない。すなわち、プローブ中継部38の断面重心Gd2が、第3の垂直方向及び第4の垂直方向について長手軸Cに対してずれない形状に、プローブ中継部38の第2の断面形状が形成される。
【0050】
また、第1の実施形態では、プローブ本体部35の第1の断面形状が円形状であるが、これに限るものではない。例えば、第6の変形例として図14及び図15に示すように、プローブ本体部35の第1の断面形状が、長手軸Cを中心とする正方形状に形成されてもよい。本変形例でも、プローブ本体部35の第1の断面形状は、第1の基準面P1を中央面として面対称であるとともに、第2の基準面P2を中央面として面対称である。このため、第1の断面形状では、プローブ本体部35の断面重心Gd1が長手軸C上に位置している。
【0051】
また、本変形例でも第1の実施形態と同様に、プローブ中継部38の第2の断面形状において、長手軸Cより第1の垂直方向側に、中継面43が設けられ、プローブ中継部38の第2の断面形状は、プローブ本体部35の第1の断面形状と比べて、長手軸Cより第1の垂直方向側の部位で断面積が減少する。これにより、第2の断面形状では、プローブ中継部38の断面重心Gd2が、長手軸Cより第2の垂直方向側に位置する。また、本変形例でも第1の実施形態と同様に、第2の断面形状では、プローブ中継部38の断面重心Gd2が、第3の垂直方向及び第4の垂直方向について長手軸Cに対してずれていない。
【0052】
また、第1の実施形態では、断面変化部41が節位置(最先端節位置)N1に位置するが、これに限るものではない。例えば、第7の変形例として図16に示すように、節位置N1より基端方向側に断面変化部41が設けられてもよい。したがって、本変形例では、プローブ本体部35とプローブ中継部38との第2の境界位置(境界位置)Z2が、節位置N1より基端方向側に位置している。ただし、本変形例でも第1の実施形態と同様に、腹位置(基準腹位置)A2より先端方向側に位置している。なお、前述したように、腹位置(基準腹位置)A2は、プローブ湾曲部37より基端方向側に位置する腹位置の中で最も先端方向側の腹位置である。
【0053】
前述のような構成にすることにより、本変形例でも第1の実施形態と同様に、腹位置A2より先端方向側の断面変化部41で、プローブ中継部38の断面重心Gd2が第2の垂直方向へのみ長手軸Cに対してずれる。このため、超音波プローブ31が超音波振動を伝達する状態において、第1の横振動及び第2の横振動が干渉によって互いに対して打消し合う状態に、第2の横振動が発生する。第1の横振動及び第2の横振動が干渉によって打消し合うことにより、第1の横振動及び第2の横振動等の不正振動の縦振動への影響が軽減される。
【0054】
なお、本変形例では、断面変化部41が節位置(最先端節位置)N1に設けられていないため、第2の横振動は第1の横振動に対して逆位相ではない。ただし、断面変化部41が腹位置(基準腹位置)A2より先端方向側に位置するため、第1の横振動及び第2の横振動が干渉によって打消し合う状態に、第2の横振動が発生する。
【0055】
また、節位置N1を含む縦振動の節位置では、節位置以外の位置と比較して、超音波振動による応力が大きくなる。そして、腹位置(基準腹位置)A2と先端処置部33の基端との間では、長手軸Cに平行な軸平行方向について節位置N1からの距離が近いほど、超音波振動による応力が大きくなる。ここで、長手軸Cに垂直な断面での断面重心(Gd1,Gd2)が変化する断面変化部41において作用する超音波振動による応力の大きさに対応して、第2の横振動の振幅は変化する。すなわち、断面積変化部41で作用する超音波振動による応力が大きくなるほど、第2の横振動の振幅が大きくなる。したがって、軸平行方向について節位置N1から断面変化部41までの距離が近いほど、第2の横振動の振幅が大きくなる。
【0056】
また、第1の実施形態の超音波処置装置1では、先端処置部33とジョー11との間で把持される処置対象が超音波振動を用いて処置されるが、これに限るものではない。例えば、第8の変形例として図17及び図18に示すように、超音波処置装置1にジョーが設けられなくてもよい。本変形例の超音波処置装置1では、超音波プローブ31の先端処置部33に超音波振動及び高周波電流が伝達され、先端処置部33を生体組織等の処置対象に接触させた状態で、超音波振動及び高周波電流を用いて処置対象が処置される。本変形例でも、超音波振動子21への電流の供給状態、及び、先端処置部33への高周波電流の供給状態は、エネルギー制御部18によって制御される。
【0057】
本変形例でも第1の実施形態と同様に、超音波処置装置1に、保持ユニット3、振動子ケース12、シース10及び超音波プローブ31が設けられている。そして、振動子ケース12の内部には、超音波振動子21及びホーン部材23が設けられ、超音波振動子21で発生した超音波振動が、ホーン部材23を介して超音波プローブ31に伝達される。また、超音波プローブ31の先端処置部33は、シース10の先端から先端方向(図17の矢印C1の方向)へ突出する状態で、設けられている。ただし、本実施形態では、保持ユニット3に、固定ハンドル6、可動ハンドル7及び回転操作ノブ8は、設けられていない。そして、筒状ケース部5に、エネルギー操作入力部であるエネルギー操作入力ボタン9が、取付けられている。
【0058】
本変形例でも、先端処置部33にプローブ湾曲部37が設けられ、プローブ湾曲部37の湾曲部重心GBは長手軸Cより第1の垂直方向側(図18の矢印B1の方向側)に位置している。本実施形態では、プローブ湾曲部37は、フック状(L字状)に形成されている。そして、長手軸Cに平行な軸平行方向についてプローブ本体部35と先端処置部33との間に、プローブ中継部38が連続している。プローブ中継部38とプローブ本体部38との第2の境界位置Z2は、腹位置(基準腹位置)A2より先端方向側で、かつ、縦振動の腹位置とは異なる位置に位置している。
【0059】
プローブ本体部35とプローブ中継部38との第2の境界位置Z2には、プローブ本体部35の第1の断面形状の第1の断面積S1に比べて、プローブ中継部38の第2の断面形状の第2の断面積S2を小さくする断面変化部41が、設けられている。本変形例でも第1の実施形態と同様に、断面変化部41での第1の断面形状から第2の断面形状への変化によって、プローブ中継部38の第2の断面形状での断面重心Gd2は、長手軸Cより第2の垂直方向側で、かつ、第3の垂直方向及び第4の垂直方向について長手軸Cに対してずれていない位置に位置する。前述のような構成にすることにより、第1の横振動及び第2の横振動が干渉によって打消し合う状態に、第2の横振動が発生する。
【0060】
前述の実施形態及び変形例では、超音波プローブ(31)の先端処置部(33)は、長手軸(C)に沿った真直ぐな状態から第1の垂直方向(B1)へ長手軸に対して湾曲するプローブ湾曲部(37)を備え、プローブ湾曲部(37)の湾曲部重心(GB)は長手軸(C)より第1の垂直方向(B1)側に位置する。また、プローブ中継部(38)は、軸平行方向(C1,C2)についてプローブ本体部(35)と先端処置部(33)との間に長手軸(C)に沿って連続し、プローブ中継部(38)とプローブ本体部(35)との境界位置(Z2)は、基準腹位置(A2)より先端方向(C1)側で、かつ、縦振動の腹位置(A1,A2)とは異なる位置に位置している。プローブ本体部(35)とプローブ中継部(38)との境界位置(Z2)には、プローブ本体部(35)の第1の断面形状の第1の断面積(S1)に比べて、プローブ中継部(38)の第2の断面形状の第2の断面積(S2)を小さくする断面変化部(41)が、設けられている。そして、断面変化部(41)での第1の断面形状から第2の断面形状への変化によって、プローブ中継部(38)の第2の断面形状での断面重心(Gd2)は、長手軸(C)より第2の垂直方向(B2)側に連続的に位置している。
【0061】
以上、本発明の実施形態等について説明したが、本発明は前述の実施形態等に限るものではなく、発明の趣旨を逸脱することなく種々の変形ができることは、もちろんである。
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