【実施例1】
【0010】
実施例1では、投写型映像表示装置の設置状態や映像を投写する映像投写面(以下、投写面)の方向に応じて、ユーザ(操作者)の操作を検出するセンシングエリアを好適に設定することについて説明する。
【0011】
図1は、本発明に係る投写型映像表示装置の一例を示す構成図である。投写型映像表示装置1(以下、表示装置)は、ユーザの操作を検出する検出機能部10と、投写面に映像を表示する表示機能部20を備える。検出機能部10は、2個のセンサ11,12、2個の操作検出部13,14、通信部15、制御部16を有する。表示機能部20は、映像投写部21、設置状態検出部22、通信部23、制御部24を有する。ここに検出機能部10と表示機能部20は、独立した装置で構成しても良い。また、各構成要素11〜16、21〜24は、必要に応じて1または複数の構成要素にまとめて構成してもよい。例えば、要素13〜16は、1または複数の中央処理装置(CPU)でその処理を行うことができる。さらに、検出機能部10と表示機能部20の要素のいくつかを外部に配置し、ネットワークやユニバーサルシリアルバス(USB)で接続する構成でも良い。
【0012】
検出機能部10において、センサ11及び12は、ユーザの存在、特に手の動きを検出するものであって、例えば焦電型センサを用いる。センサには、焦電型検出素子の他にレンズ、回路基板等を含む。センサを複数個(2個)用いることで、複数の検出領域(センシングエリア)を設定し、使用する領域を切り替えることができる。センサとしては、他に、サーモパイル型センサ、カメラ、測距センサ、超音波センサ、静電容量センサ、光検出センサ等を用いることができる。
【0013】
操作検出部13及び14は、それぞれセンサ11,12の検出信号から、ユーザの動きを検出するもので、回路基板やソフトウェア等で構成される。通信部15は、表示機能部20との間で検出結果等のデータを送受信するインタフェースであり、ネットワーク接続やUSB接続、超音波ユニット、赤外線通信装置、可視光通信装置、無線通信装置等で構成される。制御部16は、センサ11,12、操作検出部13,14、通信部15を制御するもので、回路基板やソフトウェア等で構成される。特に、センサ11,12によるセンシングエリアを切り替える制御を行う。
【0014】
表示機能部20において、映像投写部(以下、投写部)21は、光源、映像表示素子(例えば液晶パネル)、投写レンズ等で構成され、図示しない映像装置から供給される映像信号を投写面(スクリーン、机上など)に投写して表示する。設置状態検出部22は、表示装置1(表示機能部20)が設置されている状態や投写面の方向を検出するものであり、センサとして重力センサ、ジャイロセンサ、加速度センサ、磁気センサ、高度センサ、傾斜センサ等を用いることができる。
【0015】
通信部23は、検出機能部10との間で設置状態などのデータを送受信するインタフェースであり、ネットワーク接続やUSB接続、超音波ユニット、赤外線通信装置、可視光通信装置、無線通信装置等で構成される。また通信部23には、図示しない映像装置から映像信号が入力する。制御部24は、投写部21、設置状態検出部22、通信部23を制御するもので、回路基板やソフトウェア等で構成される。特に、ユーザ操作の検出データに基づいて、投写部21の表示する映像を制御する。
【0016】
検出機能部10は通信部15を介して表示機能部20に検出結果データ31を出力する。このデータ31には、ユーザ操作の種類、操作の方向、操作の速度、操作の位置、操作の大きさ等の情報が含まれる。一方表示機能部20は通信部23を介して検出機能部10に設置状態データ32を出力する。このデータ32には、表示装置1(表示機能部20)の設置状態や投写面の方向の情報が含まれる。
【0017】
図2は、投写型映像表示装置の使用形態の例を示す図である。ここに投写型映像表示装置1は、スクリーンや机上等の映像投写面2に対して近距離から投写するプロジェクタ(超短投写モデル)を例とし、投写面2に向かって見た様子を示す。表示装置(プロジェクタ)1を使用すると、投写面2が鉛直面、水平面のいずれであっても映像を投写することが可能であり、設置の向きを90度回転させればよい。
【0018】
図2(a)は、壁やスクリーン等の鉛直な投写面2に映像を投写する使用形態で、表示装置1は投写面2の下方に設置し、投写方向は上方向(鉛直斜め方向)となる。ユーザ3は投写映像200の正面に立って映像の手前に手をかざし、例えば手を左から右へ動かすような操作を行うことで、映像(スライド)はP1からP2に移動する。
図2(b)は、机の天板等の水平な投写面2に映像を投写する使用形態で、表示装置1は投写面2の前方に設置し、投写方向は手前方向(水平斜め方向)となる。ユーザ3は投写映像200を上から覗き込める位置に立って映像の上方に手をかざし、例えば手を左から右へ動かすような操作を行うことで、映像はP1からP2に移動する。
【0019】
このようなユーザ3の操作は、表示装置1に組み込まれた検出機能部10にて検出する。本例では、センサ11,12は投写部21の近傍に配置している。検出機能部10の検出結果は表示機能部20に送られ、ユーザの操作と連動してスライドのページ送りやページ戻しの制御を行ったり、映像を切り替えたりすることができる。ユーザの操作はセンサ11,12を用いて検出するが、ここでは焦電型センサを用いた検出方法について説明する。
【0020】
図3は、焦電型センサによるユーザの操作の検出原理を説明する図である。焦電型センサ300は人の存在を検知する人感センサ等に多く採用されており、焦電検出素子の前を人体や体の一部等の赤外線を放射する物体が通過すると、電圧を発生するものである。以下では、内部に2個の検出素子300a,300bを有する焦電型センサ300を例に説明する。
【0021】
図3(a)は、素子300a,300bが左右(X方向)に並んでいて、その前で左から右へスワイプ動作を行った場合、素子300a,300bの検出信号波形を示す。信号波形が両極性パルスとなるのは、各素子がデュアル素子構成としているからである。素子300aによる検出タイミングが、素子300bによる検出タイミングより所定時間早いことから、左から右へのスワイプ動作が行われたと判断することができる。
【0022】
また
図3(b)は、素子300a,300bが左右に並んでいて、その前で右から左へのスワイプ動作を行った場合、素子300a,300bの検出信号波形を示す。素子300bによる検出タイミングが、素子300aによる検出タイミングより所定時間早いことから、右から左へのスワイプ動作が行われたと判断することができる。
なお、焦電型センサからの出力は、電圧でなく電流であっても良い。また、センサから出力される信号波形は、素子の構造により
図3に示す波形と異なる形状であっても良い。
【0023】
焦電型センサの検出素子は、単体でも赤外線を検出して電圧を発生することができるが、素子単体では検出範囲(センシングエリア)の指向特性が固定される。そのため、フレネルレンズを組み合わせてエリアを修正し、所望のセンシングエリアを形成するようにした。以下、フレネルレンズを組み込んだ焦電型センサのセンシングエリアについて説明する。
【0024】
図4は、1個の焦電型センサによるセンシングエリアを示す図である。(a)はセンサ300を正面(Z方向)から見た図、(b)は上面(Y方向)から見た図、(c)は側面(X方向)から見た図である。
【0025】
焦電型センサ300の検出素子300a,300bによるセンシングエリアをそれぞれ400a,400bで示す。センサ300にフレネルレンズ310を組み合わせると、各素子を起点としてセンシングエリアを絞り込むことができる。ここでは、所望の角度で放射状(四角錐状)に広がるセンシングエリアを形成している。またセンシングエリア400a,400bは、素子を並べた方向(X方向)に2つに分離し、両者間に検出不感帯が存在する。各素子のセンシングエリアを人体や体の一部が横切ると、対応する素子に検出信号が発生する。その際、不感帯を設けることで、移動体の動きの方向をより正確に検出することができる。また、フレネルレンズ310の形状を変えることで、
図4(d)に示すように、素子とセンシングエリアのX方向の位置関係を反転させることも可能である。
【0026】
図5は、2個の焦電型センサによるセンシングエリアを示す図である。本実施例では、
図4に示した焦電型センサ300を2個組み合わせ、2個の焦電型センサ11,12として上下方向(Y方向)に並べて配置している。(a)はセンサ11,12を正面(Z方向)から見た図、(b)は上面(Y方向)から見た図、(c)は側面(X方向)から見た図である。各センサ11,12によるセンシングエリアをそれぞれ401,402とし、両者はY方向に隣接するように形成している。またそれぞれのエリアはX方向に配置した2個の検出素子により、401aと401b、402aと402bに分離している。その結果、センシングエリアは左右方向(X方向)と上下方向(Y方向)に分離された4個のエリアを有している。
【0027】
図6は、投写面とセンシングエリアの位置関係を示す図である。(a)(b)は、鉛直投写面の場合、(c)(d)は、水平投写面の場合である。
【0028】
投写面2に対して操作を行うユーザ3を検出するためには、
図5に示した2個のセンサ11,12を使用し、センサ11は投写面2から遠いエリア、センサ12は投写面2に近いエリアをカバーするように配置する。具体的には側面図(b)(d)に示すように、センサ11によるセンシングエリア401a,401bは、その中心軸401cが投写面2と略平行になるように形成し、センサ12によるセンシングエリア402a,402bは、その中心軸402cが投写面2に斜めに交差するように、好ましくは投写映像200の中心付近で交わるように形成する。ユーザ3の手がセンシングエリア401a,401bまたは402a,402bを左右に横切るように操作すると、センサ11または12の各素子に検出信号が発生して、ユーザの操作を検出することができる。
【0029】
図7は、投写面とユーザの位置関係を示す図である。(a)は鉛直投写面の場合、(b)は水平投写面の場合である。
【0030】
(a)の鉛直投写面に対してユーザ3が操作する場合は、ユーザ3の体の軸3cと投写面2はほぼ平行な位置関係になる。操作を行うユーザ3は、投写面2から少し離れた位置に立つことが多い。なぜなら、ユーザ3の体が投写面2に近くに存在すると、後方にいる他のユーザから投写面2の投写映像200が見えにくくなり、これを回避するため、意識的に投写面2から離れて立つためである。その結果、投写面2から手先3aまでの距離dは遠くなる傾向にある。
【0031】
(b)の水平投写面に対してユーザ3が操作する場合は、ユーザ3の体の軸3cと投写面2はほぼ垂直な位置関係になる。そのとき操作を行うユーザ3は、ユーザの体で投写映像200が遮られることを意識しなくてよいので、その結果、投写面2から手先3aまでの距離dは近くなる傾向にある。
【0032】
このように投写面2が鉛直な場合と水平な場合とでは、投写面2に対するユーザ3の体の方向3cや、投写面から手先3aまでの距離dが異なる。したがって、ユーザ3の操作を正しく検出するためには、投写面の方向に応じてセンシングエリアを適切に設定することが必要になる。
【0033】
図8は、投写面の方向に応じたセンシングエリアの設定を示す図である。(a)は鉛直投写面の場合、(b)は水平投写面の場合である。
【0034】
(a)の鉛直投写面の場合は、
図7(a)で説明したように投写面2からユーザの手先3aまでの距離dは遠くなるので、遠いエリアにおいてユーザ3の手の動きを検出できるようにする。すなわち、
図6(b)におけるセンサ11によるセンシングエリア401a,401bを有効にする。さらに、ユーザ3の手先3aが投写面2に近づく場合もあるので、センサ12によるセンシングエリア402a,402bも有効にする。
【0035】
(b)の水平投写面の場合は、
図7(b)で説明したように投写面2からユーザの手先3aまでの距離dは近くなるので、近いエリアにおいてユーザ3の手の動きを検出できるようにする。すなわち、
図6(d)におけるセンサ12によるセンシングエリア402a,402bを有効にする。このとき、ユーザ3の体の軸3cと投写面2はほぼ垂直な位置関係になり、ユーザの手先3a以外の部分(ここではユーザの腕など)がセンサ11のセンシングエリア401a,401b内に入る場合がある。センサ11で検出されるユーザの手先3a以外の部分の動きを検出信号に加えると、ユーザ操作を誤って検出する恐れがある。よって、センサ11によるセンシングエリア401a,401bについては検出を無効にするよう設定する。このように、投写面2の方向に応じて使用するセンシングエリアを選択して設定する。
【0036】
各センサ11,12による検出の有効/無効を切り替えるには、
図1においてセンサ11,12と操作検出部13,14との電気的接続をON/OFFする、あるいは、操作検出部13,14における検出処理動作をON/OFFする。これらのON/OFF切り替えは、制御部16により行われる。検出処理を無効にすることで、検出機能部10における無駄な消費電力を抑える効果もある。
【0037】
投写面2の方向が鉛直であるか水平であるかの判定は、例えば設置状態検出部22においてジャイロセンサや重力センサを用いて重力方向を検出し、表示装置1の設置状態(投写方向)から判定する。あるいは、照度センサを用いて表示装置1の背面(
図8(a)では下側、
図8(b)では右側)の照度を測定し、照度の高低から表示装置1の投写方向を判定しても良い。その他、加速度センサ、磁気センサ、高度センサ、傾斜センサ等を利用することもできる。あるいは、ユーザがリモコンやボタン、スイッチ等の操作を通じて、投写面の方向を入力しても良い。このようにして得られた表示装置1の設置状態のデータ32は、検出機能部10の制御部16へ送られ、操作検出部13,14を制御することでセンシングエリアを選択して設定する。
【0038】
ここで、投写面2の方向が鉛直でも水平でもなく、中間の角度に傾斜して設置されている場合も考えられる。その場合には、傾斜角度が鉛直か水平のいずれに近いかで判定しても良い。あるいは、2つのセンサ11,12のカバーするそれぞれのセンシングエリアの角度範囲に基づき、傾斜角度に対していずれのセンサを使用するかを予め定めておいて、これを適用しても良い。なお、設置状態検出部22からの検出信号が変動するような場合は、表示装置1が移動中や設置作業中であることが考えられる。このような場合は、ユーザの操作は行われていないとみなし、両方のセンサ11,12による検出を無効にする。
【0039】
図9は、センシングエリアの設定処理を示すフローチャートである。
まず、S1001では設置状態検出部22により投写面の方向を判定する。判定方法は前記した通り、ジャイロセンサ等を用いて表示装置1の設置状態(投写方向)から判定する。投写面の方向が鉛直である場合はS1002に、水平である場合はS1003に進む。その際、斜め方向の場合もあるので、傾斜角度の閾値を設けて、閾値と比較することで鉛直または水平に振り分ける。ただし、投写面の方向が変動している場合はユーザ操作はないものとしてS1004に進む。
【0040】
S1002では、制御部16はセンサ11,12による検出をいずれも有効となるよう設定する。S1003では、センサ11による検出を無効、センサ12による検出を有効となるよう設定する。S1004では、センサ11,12による検出をいずれも無効となるよう設定する。この設定は、制御部16が操作検出部13,14を制御することで切り替える。
図9ではS1001〜S1004の処理で終了としているが、実際にはこのフローを繰り返して実行することで、投写面の方向が途中で変更された場合にも対応できる。
【0041】
以下、本実施例のいくつかの変形例を説明する。
上記実施例では、投写面2が鉛直である場合には、表示装置1を投写面2の下方に設置して映像を上方に投写する形態とした。これに対し、投写面2が鉛直である場合であって、表示装置1を天井や壁から吊るして映像を下方に投写する使用形態(天吊り設置)も可能である。このような場合には、センシングエリアの形状を修正するのが好ましい。
【0042】
図10は、天吊り設置におけるセンシングエリアの修正を説明する図である。表示装置1はユーザ3の頭上方向に設置され、これから鉛直の投写面2に向けて映像が投写される。(a)は、前記
図8(a)と同じようにセンシングエリアを設けた場合、(b)はセンシングエリアを修正して設けた場合である。
【0043】
(a)の場合、表示装置1を天吊り設置することで、投写面2の近くに立つユーザ3の足3dがセンサ11のセンシングエリア401a,401b内に入ることがある。センサ11がユーザの足3dに反応すると、誤検出となる。これを回避するために、センサ11のセンシングエリアの形状を修正し、(b)に示すようなエリア401a’,401b’とする。すなわち、エリア401a,401bのユーザ側の境界401dを投写面2に近づけて、投写面2に略平行な境界401d’とする。これにより、ユーザ3の足3dを検出する恐れがなくなる。なお、このエリア修正は、表示装置1の設置状態(天吊り設置)に応じて、
図12で後述するようにセンサ11の取り付け姿勢等を変更すればよい。
【0044】
また、前記したようにセンサ11,12はそれぞれ2個の検出素子を有しており、2個の検出素子の検出タイミングがいずれが早いかによりユーザの操作方向(左→右、または右→左)を判定している。ただし、ユーザの操作方向が同方向であっても、センサの設置場所により検出タイミングが反転する場合があり、その例を示す。
【0045】
図11は、センサの設置場所と検出タイミングの関係を示す図である。
(a)は焦電型センサ11,12の正面図で、
図5(a)に示したように4個の検出素子ごとのセンシングエリア401a,401b,402a,402bを有している。そのうちセンサ12のセンシングエリア402a,402bが投写面2(投写映像200)側に形成されるように、センサを設置するものとする。
【0046】
(b)は、鉛直の投写面2の下方にセンサ11,12を設置した場合で、ユーザ3から見て左側にセンシングエリア401b,402b、右側にセンシングエリア401a,402aが形成される。この状態で例えばユーザ3が左から右へスワイプ動作を行うと、センシングエリア401b,402bの素子が先にユーザの動きに反応する。
【0047】
(c)は、水平の投写面2の前方にセンサ11,12を設置した場合で、ユーザ3から見て左側にセンシングエリア401a,402a、右側にセンシングエリア401b,402bが形成される。この状態でユーザ3が左から右へスワイプ動作を行うと、センシングエリア401a,402aの素子が先にユーザの動きに反応する。よって、(b)と(c)のセンサ設置ではユーザ操作に対するセンサ内の2つの素子の検出タイミングが反転する。
【0048】
(d)は、鉛直の投写面2の上方にセンサ11,12を設置した場合で、ユーザ3から見て左側にセンシングエリア401a,402a、右側にセンシングエリア401b,402bが形成される。この状態でユーザ3が左から右へスワイプ動作を行うと、センシングエリア401a,402aの素子が先にユーザの動きに反応し、(c)の設置と同じ検出タイミングになる。
【0049】
このように、センサの設置に応じて、ユーザ操作に対するセンサの検出タイミングが反転してしまう。これを回避するため、表示装置1の設置形態に応じて、操作検出部13,14で行うタイミング判定処理を反転させることで、ユーザが行った操作方向を正しく検出できる。
【0050】
また、さらなる変形例として、センサに可動機構を設けてセンシングエリアを調整することもできる。
図12は、センサに可動機構を設けてセンシングエリアを調整する例を示す図である。(a)では、センサ300を載せた支持台500を傾斜させ、可動レンズ510を介して形成されるセンシングエリア400の方向を変えている。(b)では、可動レンズ510の形状を変えて、センシングエリア400の角度幅を変えている。(c)では、可動遮蔽板520の開閉により、センシングエリア400の角度幅を変えている。(d)は、レーザ530をラインスキャンさせるセンサの場合で、レーザを反射させる角度可変ミラー540の傾斜角度を変えて、センシングエリアの方向を変えている。また、(a)〜(d)に示した方法を組み合わせても良い。
【0051】
上記説明では、2個の検出素子を有する焦電型センサを2個使用したが、1個の検出素子を有するセンサを4個使用したり、4個の検出素子を有するセンサを1個使用することでもよい。あるいは、検出素子の合計数が4より多くなるようにセンサを構成し、より多くのセンシングエリアを設ければ、ユーザの細かい操作を検出できるようになる。また
図12のようにセンサに可動機構を設けることで、1個のセンサで複数通りのセンシングエリアを実現し、センサの数を削減することができる。
【0052】
センサは、焦電型センサの代わりに、各素子において絶対温度の検出が可能なサーモパイル型センサを使用できる。あるいはカメラを使用し、カメラ画像の上方がセンサ11のセンシングエリア相当、下方がセンサ12のセンシングエリア相当となるように撮影を行い、上方と下方の画像をそれぞれ解析してユーザの操作を検出しても良い。あるいは、光を照射して物体までの距離を取得するTime-Of-Flight方式、Structured Light方式等のセンサを使用しても良い。あるいは、測距センサ、超音波センサ、静電容量センサ、光検出センサ等を使用しても良い。
【0053】
本実施例によれば、投写面が鉛直か水平かに応じたセンシングエリアの設定を行い、投写面が水平の場合は、鉛直の場合よりもセンシングエリアが狭くなるようにする。これにより、投写面が鉛直、水平のいずれの場合もユーザの操作を正確に検出することが可能となり、投写型映像表示装置に対するユーザの操作性が向上する。
【実施例2】
【0054】
実施例2では、投写面の方向に応じてセンサの用途を変更することで、ユーザの操作をより的確に検出する方法について説明する。
【0055】
図13は、投写面の方向に応じてセンサの用途を変更する一例を示す図である。(a)は鉛直投写面の場合、(b)は水平投写面の場合である。
【0056】
(a)の鉛直投写面の場合は、実施例1(
図8)と同様と、センサ11によるセンシングエリア401a,401bと、センサ12によるセンシングエリア402a,402bの両方を有効とし、両方のエリアでユーザ3の手の動きを検出する。
【0057】
(b)の水平投写面の場合は、センサ11によるセンシングエリア401a,401bも有効とし、ユーザ3の体を検出するようにする。またセンサ12によるセンシングエリア402a,402bではユーザ3の手の動きを検出する。センサ11によりユーザ3の体を検出することで、新たにユーザ3の在/不在を検知することができる。操作検出部13では、ある一定時間以上センサ11から検出信号がなければ(あるいは信号が小さければ)、表示装置1(または投写面2)の前にユーザが居ないと判定する。この検出結果(ユーザ不在)は表示機能部20へ伝えられる。ユーザが不在のときは映像を投写し続ける必要はないので、制御部24は投写部21に対し映像の投写を中止させ、あるいは表示装置1の電源を切る等の処理を行う。これにより、無駄な電力消費を抑えることができる。
【0058】
図14は、センサ用途に関するユーザ設定画面の一例を示す図である。ユーザ設定画面600は例えば投写部21により投写面2に表示し、ユーザがリモコンやボタン、スイッチ等を介して設定する。ユーザ設定画面600には、壁やスクリーンに映像を投写するときの設定画面601と、机上に映像を投写するときの設定画面602を表示する。
設定画面601では、鉛直投写面の場合にユーザの手を検出するエリアを選択する。ここでは、投写面から近いエリアでのみ操作を受け付けるか、あるいは離れたエリアでも操作を受け付けるかを選択する。
【0059】
設定画面602では、水平投写面の場合にユーザの不在検知を行うか否かを選択する。その際、不在を検知してから表示装置(プロジェクタ)1本体の電源を切るまでの時間を設定できるようにしても良い。
このようなユーザ設定画面を設けることで、ユーザの体やユーザの使い方に合わせて表示装置を動作させることができる。
【0060】
図15は、センシングエリアの設定処理を示すフローチャートである。
まず、S1101では設置状態検出部22により投写面の方向を判定する。投写面の方向が鉛直である場合はS1102に、水平である場合はS1103に、投写面の方向が変動している場合はS1104に進む。
【0061】
S1102では、センサ11,12による検出をいずれも有効にして、S1105に進み、センサ11,12で手を検出するよう設定する。
S1103では、センサ11,12による検出をいずれも有効にして、S1106に進み、センサ11で体を検出、センサ12で手を検出するよう設定する。
S1104では、センサ11,12による検出をいずれも無効に設定する。以上のフローを繰り返して実行することで、投写面の方向が途中で変更された場合にも対応できる。
【0062】
本実施例によれば、投写面が鉛直か水平かに応じてセンサの用途を変更することにより、投写面の方向に応じたユーザの操作をより的確に検出でき、投写型映像表示装置に対するユーザの操作性と使い勝手が向上する。
【実施例3】
【0063】
実施例3では、投写面の方向だけでなく、ユーザの位置に応じてセンシングエリアを設定することで、ユーザの操作をより正確に検出する方法について説明する。
【0064】
図16は、ユーザの位置に応じてセンシングエリアを設定する例を示す図である。
(a)はユーザの位置を示す上面図で、投写面2が水平で、2人のユーザ3,3’が表示装置1の正面ではなく、両側面に立っている場合である。(b)はこの場合のセンシングエリアを示す側面図で、2個のセンサ11,12を有効にし、両方のセンシングエリア401a,401b,402a,402bでユーザの手を検出するよう設定する。
【0065】
投写面が水平の場合、前記実施例1(
図8(b))では、ユーザが表示装置1の正面に立っている場合を想定し、センサ12によるセンシングエリア402a,402bのみを有効とし、センサ11によるセンシングエリア401a,401bを無効とした。これに対し本実施例ではユーザの位置を考慮する。(a)のようにユーザ3,3’は表示装置1の両側面に立っているので、ユーザの手以外の体がセンサ11のセンシングエリア401a,401bに入ることがなく、センサ11により手の検出を行うことができる。この場合、センサ11も手の検出のために用いることで、センシングエリアを拡大することができ、結果的にユーザの操作の検出精度が向上する。なお、ユーザが一人の場合でも同様である。
【0066】
ユーザが表示装置1の正面に居るか否かについては、センサ11の検出信号から判定できる。ユーザが正面にいるときは、センサ11の検出信号が常に大きくなり、正面にいないときは、センサ11の検出信号は小さくなる。あるいは、検出信号が大きい期間と検出信号が小さい期間の割合からも、ユーザが正面に居るか否かを判定できる。
なお、投写面が鉛直の場合にはユーザの位置はほぼ固定されるので、センシングエリアは実施例1と同様に設定する。
【0067】
図17は、センシングエリアの設定処理を示すフローチャートである。
まず、S1201では設置状態検出部22により投写面の方向を判定する。投写面の方向が鉛直である場合はS1202に、水平である場合はS1203に、投写面の方向が変動している場合はS1204に進む。
【0068】
S1202では、センサ11,12による検出をいずれも有効にして、S1205に進み、センサ11,12で手を検出するよう設定する。
【0069】
S1203では、センサ11,12による検出をいずれも有効にして、S1206に進み、センサ11は常に動きを検出しているか否かを判定する。常に動きを検出している場合はユーザが正面にいると判定してS1207に進み、センサ12で手を検出するよう設定する。センサ11が常に動きを検出しない場合はユーザは正面にいないと判定してS1205に進み、センサ11,12で手を検出するよう設定する。
【0070】
S1204では、センサ11,12による検出をいずれも無効に設定する。以上のフローを繰り返して実行することで、投写面の方向が途中で変更された場合にも対応できる。
【0071】
本実施例によれば、投写面が水平の場合にユーザの配置に応じてセンシングエリアの設定を行うことで、センシングエリアを拡大しユーザの操作をより正確に検出することができる。
【0072】
上記した各実施例は、本発明の説明のための例示であって、本発明は上記した各実施例に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることや、ある実施例の構成に他の実施例の構成を追加することも可能である。