特許第5974200号(P5974200)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5974200
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】超音波観測装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   A61B8/08
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-501479(P2016-501479)
(86)(22)【出願日】2015年9月7日
(86)【国際出願番号】JP2015075328
【審査請求日】2016年1月13日
(31)【優先権主張番号】特願2014-211786(P2014-211786)
(32)【優先日】2014年10月16日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】中辻 知宏
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003-61959(JP,A)
【文献】 特開2007-330764(JP,A)
【文献】 特開2011-194228(JP,A)
【文献】 特開2012-55687(JP,A)
【文献】 特開2012-210507(JP,A)
【文献】 特開2013-81764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の関心領域に輝度の時間的変化を解析する際の第2の関心領域を設定し、前記第2の関心領域内における輝度の時間的変化を計算することができる超音波観測装置であって、
超音波の送受信方向を第1の方向、及び、第2の方向に変更することによって、超音波ビームの2次元走査が可能な超音波探触子と、
前記超音波探触子による前記超音波ビームの送受信方向を制御する送受信部と、
前記超音波ビームを前記第1の方向、及び、前記第2の方向に走査した結果からBモード画像のボリュームデータを生成する画像処理部と、
前記第1の関心領域が明瞭に描出されている際の画像を基準画像として設定する入力部と、
前記基準画像を記憶する基準画像記憶部と、
前記ボリュームデータのうち、前記入力部で設定された前記基準画像と類似する画像が常に表示されるよう走査平面を補正する第1の位置補正部と、
前記第1の位置補正部によって補正された走査平面のみにおいて前記超音波ビームを送受信し、得られた動画を記憶する動画記憶部と、
前記第1の関心領域に設定された前記第2の関心領域内における造影輝度の時間的変化を計算するTIC解析部と、
前記動画記憶部に記憶された前記走査平面上の前記第1の関心領域の移動に同期して、TIC解析を行う際の前記第2の関心領域の位置を自動で補正する第2の位置補正部と、
前記超音波探触子に設けられ、前記超音波探触子の位置及び向きを検出するセンサと、
前記センサから得られた前記超音波探触子の位置及び向きの情報を記憶する位置情報記憶部と、を備え、
前記第1の位置補正部は、前記位置情報記憶部から読み出した前記超音波探触子の位置及び向きの情報に基づいて、前記基準画像記憶部で記憶した前記基準画像が常に表示されるように、前記走査平面を自動で補正し、
前記第2の位置補正部は、前記位置情報記憶部から読み出した前記超音波探触子の位置及び向きの情報に基づいて、前記第2の関心領域の位置を自動で補正し、
前記送受信部は、さらに前記超音波ビームの出力を制御し、前記ボリュームデータ取得時の超音波ビーム出力よりも、前記造影輝度の時間的変化データ取得時の超音波ビーム出力の方が大きくなるよう出力を制御することを特徴とする超音波観測装置。
【請求項2】
前記第1の位置補正部は、前記ボリュームデータに対して、前記記憶部で記憶した基準画像との相関値を演算し、
前記送受信部は、前記相関値が最も大きくなるように前記走査平面を前記第2の方向へ移動させることを特徴とする請求項1に記載の超音波観測装置。
【請求項3】
前記第2の位置補正部は、前記第1の関心領域の輪郭抽出を行うことで、前記第1の関心領域の移動に同期して前記第2の関心領域の位置を自動で補正することを特徴とする請求項1に記載の超音波観測装置。
【請求項4】
前記センサは、ジャイロセンサまたは磁気センサであることを特徴とする請求項に記載の超音波観測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波観測装置に関し、特に、関心領域内における輝度の時間的変化を計算することができる超音波観測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検体に対して超音波を送受信することにより、被検体内部の音響特性を表す超音波画像を生成し、被検体の検査や診断に利用する超音波観測装置が医療分野等において広く用いられるようになっている。
【0003】
医療分野等において用いられる超音波観測装置は、被検体に対して超音波を送受信可能な超音波探触子を備え、被検体の断面像であるBモード画像を生成する。Bモード画像は、超音波ビームを所定の走査平面上において走査することによって得られる。
【0004】
例えば、特許第4801229号公報には、処置具を用いた処置の様子を走査平面上から逸れることなく、良好に観測し続けることができるように、Bモード画像のボリュームデータを取得した後、全走査平面で相関を取ることにより、常に最適な(最も相関が高い)走査平面を表示する超音波観測装置が開示されている。
【0005】
また、このような超音波観測装置は、超音波造影剤を用いた客観的な診断方法として、TIC(Time Intensity Curve)解析が存在する。このTIC解析は、走査平面上の関心領域にTIC解析用の関心領域(ROI)を設定し、そのROI内における造影輝度の時間的変化を計算するものである。
【0006】
例えば、特開2011−254963号公報には、造影剤が投与された被検体の所定部位を含む2次元領域または3次元領域を被走査領域として、少なくとも1つの解析領域に関する輝度時間曲線を生成した後、解析領域に関する造影剤の停滞時間を解析し、停滞時間に応じて異なる色相を割り当てて表示する超音波診断装置が開示されている。
【0007】
しかしながら、従来のTIC解析では、手振れ等によりプローブの位置または向きがずれると、設定したROI外に走査平面上の関心領域がずれてしまうため、関心領域における造影輝度の時間的変化を正確に把握(評価)することができないという課題があった。
【0008】
特許第4801229号公報の技術では、走査平面のずれを補正することができるが、各々の走査平面上における関心領域のずれは補正することができない。一方、特開2011−254963号公報の技術では、3次元超音波イメージングを利用すると、単一面ではなく、組織の体積を撮像するため、2次元イメージング画像のずれを克服することができる。
【0009】
しかし、TIC解析するためには、各症例で取得したボリュームデータ(動画)を保存しておく必要あり、データ容量が大きくなってしまうという課題があった。
【0010】
そこで、本発明は、TIC解析の際のデータ容量を抑えつつ、関心領域に対してプローブがずれても正確に造影輝度の時間的変化を把握することができる超音波観測装置を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様の超音波観測装置は、第1の関心領域に輝度の時間的変化を解析する際の第2の関心領域を設定し、前記第2の関心領域内における輝度の時間的変化を計算することができる超音波観測装置であって、超音波の送受信方向を第1の方向、及び、第2の方向に変更することによって、超音波ビームの2次元走査が可能な超音波探触子と、前記超音波探触子による前記超音波ビームの送受信方向を制御する送受信部と、前記超音波ビームを前記第1の方向、及び、前記第2の方向に走査した結果からBモード画像のボリュームデータを生成する画像処理部と、前記第1の関心領域が明瞭に描出されている際の画像を基準画像として設定する入力部と、前記基準画像を記憶する基準画像記憶部と、前記ボリュームデータのうち、前記入力部で設定された前記基準画像と類似する画像が常に表示されるよう走査平面を補正する第1の位置補正部と、前記第1の位置補正部によって補正された走査平面のみにおいて前記超音波ビームを送受信し、得られた動画を記憶する動画記憶部と、前記第1の関心領域に設定された前記第2の関心領域内における造影輝度の時間的変化を計算するTIC解析部と、前記動画記憶部に記憶された前記走査平面上の前記第1の関心領域の移動に同期して、TIC解析を行う際の前記第2の関心領域の位置を自動で補正する第2の位置補正部と、前記超音波探触子に設けられ、前記超音波探触子の位置及び向きを検出するセンサと、前記センサから得られた前記超音波探触子の位置及び向きの情報を記憶する位置情報記憶部と、を備え、前記第1の位置補正部は、前記位置情報記憶部から読み出した前記超音波探触子の位置及び向きの情報に基づいて、前記基準画像記憶部で記憶した前記基準画像が常に表示されるように、前記走査平面を自動で補正し、前記第2の位置補正部は、前記位置情報記憶部から読み出した前記超音波探触子の位置及び向きの情報に基づいて、前記第2の関心領域の位置を自動で補正し、前記送受信部は、さらに前記超音波ビームの出力を制御し、前記ボリュームデータ取得時の超音波ビーム出力よりも、前記造影輝度の時間的変化データ取得時の超音波ビーム出力の方が大きくなるよう出力を制御する
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る超音波観測装置の全体構成を示すブロック図である。
図2】TIC解析を行わない場合の処理の流れの例を説明するためのフローチャートである。
図3】TIC解析を行う場合の処理の流れの例を説明するためのフローチャートである。
図4】ステップS4及びS15の走査平面の最適化の処理の流れの例を説明するためのフローチャートである。
図5】第2の実施形態に係る超音波観測装置の全体構成を示すブロック図である。
図6A】TIC解析用のROIの位置の自動補正について説明するための図である。
図6B】TIC解析用のROIの位置の自動補正について説明するための図である。
図6C】TIC解析用のROIの位置の自動補正について説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
まず、図1を用いて第1の実施形態の超音波観測装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波観測装置の全体構成を示すブロック図である。図1に示す超音波観測装置1は、超音波を用いて検体を観察する装置である。
【0015】
超音波観測装置1は、検体へ超音波パルスを出力するとともに、検体で反射された超音波エコーを受信する超音波探触子2と、超音波探触子2との間で電気信号の送受信を行う送受信部3と、超音波エコーを変換した電気的なエコー信号に対して所定の演算を施す演算部4と、超音波エコーを変換した電気的なエコー信号に対応する画像データの生成を行う画像処理部5と、キーボード、マウス、タッチパネル等のインターフェースを用いて実現され、各種情報の入力を受け付ける入力部6と、液晶または有機EL等からなる表示パネルを用いて実現され、画像処理部5が生成した画像を含む各種情報を表示する表示部7と、検体から取得した画像及び動画を含む各種情報を記憶する記憶部8と、超音波観測装置1の全体の動作制御を行う制御部9と、を備えて構成されている。
【0016】
超音波探触子2は、2次元に配列された超音波振動子により、送受方向を第1の方向、及び、第2の方向に変更することで、超音波ビームの2次元走査が可能に構成されている。超音波探触子2は、送受信部3から受信した電気的なパルス信号を超音波パルスに変換するとともに、外部の検体で反射された超音波エコーを再度電気的なエコー信号に変換する。
【0017】
送受信部3は、超音波探触子2と電気的に接続され、パルス信号を超音波探触子2に送信するとともに、超音波探触子2からエコー信号を受信する。具体的には、送受信部3は、予め設定された波形及び送信タイミングに基づいてパルス信号を生成し、この生成したパルス信号を超音波探触子2に送信する。また、送受信部3は、受信したエコー信号に増幅、及び、フィルタリング等の処理を施した後、A/D変換することにより、デジタル信号を生成して制御部9に出力する。
【0018】
入力部6は、TIC(Time Intensity Curve)解析を行うために、関心領域が明瞭に描出されている際の画像を基準画像として設定する基準画像指示部10を有する。ここで、基準画像は、関心領域の大きさ、輪郭の明瞭さ等に応じてユーザによって予め作成されるものである。なお、基準画像の設定は、基準画像指示部10に限定されるものではなく、例えば、基準画像設定ボタンを設けても良いし、図示しない動画記録ボタンと連動させても良い。
【0019】
画像処理部5は、エコー信号の振幅を輝度に変換して表示するBモード画像データを生成するBモード画像データ生成部17と、検体に流入した造影剤から反射した信号を用いて、造影画像データを生成する造影画像データ生成部18とを有する。
【0020】
Bモード画像データ生成部17で生成されるデータは、ボリュームデータである。なお、ボリュームデータを取得する際の超音波パワー(MI値)は、造影剤の破壊を最小限に抑えられるように制御しても良い。
【0021】
記憶部8は、検体に造影剤を投与し、検体に流入した造影剤からの信号を用いて取得した造影画像データ(動画)を記憶する動画記憶部15と、基準画像指示部10で設定された基準画像を記憶する基準画像記憶部16とを有する。
【0022】
動画記憶部15では、データ容量を抑えるため、関心領域が表示されているボリュームデータの任意の平面の動画を保存する。Bモード画像データ生成部17で生成されるBモード画像のボリュームデータは、動画記憶部15に保存せずに、走査平面の位置を補正する演算のためのみに使用される。
【0023】
演算部4は、TIC解析を行うTIC解析部11と、TIC解析を行う際の関心領域の移動に対して、走査平面のずれを補正する第1位置補正部12と、走査平面上の関心領域の輪郭抽出を行うことで、走査平面上の関心領域の移動に同期してTIC解析用のROIの位置を自動で補正する第2位置補正部13と、Bモード画像データ生成部17により生成されたBモード画像のボリュームデータと、基準画像記憶部16に記憶された基準画像との相関値を演算する相関演算部14とを有する。
【0024】
第1位置補正部12では、取得したボリュームデータと基準画像との相関を取り、相関値が最も大きくなる走査平面を表示部7に表示させるため、送受信部3の第2の方向へ走査平面を移動させる。より具体的には、第1位置補正部12は、常に入力部6で設定された基準画像と類似する画像が表示されるように走査平面を補正する。最適な走査平面の決定方法については後述する。
【0025】
取得したボリュームデータと基準画像との相関の演算方法としては、生成したBモード画像に対して、基準画像をテンプレートとしてパターンマッチングと呼ばれる画像処理を行い、Bモード画像中のエコーパターンと基準画像との類似度を算出する。この画像処理は、例えば、関心領域の輪郭によるパターンマッチング、あるいは、画像上に表示される隣接する臓器によるパターンマッチングであっても良い。Bモード画像中のエコーパターンと基準画像との類似度が高いほど、相関値は高くなる。なお、パターンマッチングは、周知の技術であるため、詳細は省略する。
【0026】
なお、ボリュームデータを取得する際、造影剤の破壊を最小限に抑えるために超音波パワー(MI値)を抑えていた場合は、最適な平面(最も相関が大きくなる走査平面)に対して、通常Bモード画像及び造影モード画像を取得する際と同じ超音波パワーで照射する。
【0027】
第2位置補正部13では、第1位置補正部12で決定した走査平面画像上の関心領域をテンプレートとし、上述したパターンマッチング処理を用いることで関心領域の移動に同期してTIC解析用のROIの位置を自動で補正する。
【0028】
次に、このように構成された超音波観測装置1の動作について説明する。まず、TIC解析を行わない場合の動作について説明する。図2は、TIC解析を行わない場合の処理の流れの例を説明するためのフローチャートである。
【0029】
入力部6からのフリーズ解除の操作が入力されると、超音波探触子2より超音波エコーが送受信され、測定が開始される。まず、造影モードに切り替えられ(ステップS1)、入力部6から動画記録開始の操作が入力されると、通常動画の記録が開始される(ステップS2)。
【0030】
超音波探触子2より受信した超音波エコーからBモード画像のボリュームデータが画像処理部5により生成される(ステップS3)。なお、ボリュームデータを取得する際の超音波パワー(MI値)は、造影剤の破壊を最小限に抑えられるよう、壊れない程度に制御してもよい。
【0031】
次に、第1位置補正部12にて、走査平面の最適化が実行される(ステップS4)。このステップS4の処理では、ボリュームデータと基準画像との相関を取り、最も相関の高い走査平面を最適な走査平面とし、その走査平面の画像を表示し続ける。
【0032】
最適な走査平面にて造影モード用に走査される(ステップS5)。すなわち、ステップS5の処理では、最適な走査平面のみにおいて、Bモード画像、及び、造影モード画像を取得するための超音波エコーが送信されることになる。次に、画像処理部5により、超音波エコーからBモード画像、造影画像が生成される(ステップS6)。
【0033】
次に、入力部6から動画記録終了の操作があったか否かが判定される(ステップS7)。動画記録終了の操作がないと判定された場合(ステップS7:NO)、ステップS4に戻り、同様の処理を繰り返す。一方、動画記録終了の操作があったと判定された場合(ステップS7:YES)、動画記録が終了して、動画が保存され(ステップS9)、処理を終了する。
【0034】
次に、TIC解析を行う場合の動作について説明する。図3は、TIC解析を行う場合の処理の流れの例を説明するためのフローチャートである。
【0035】
入力部6からのフリーズ解除の操作が入力されると、超音波探触子2より超音波エコーが送受信され、測定が開始される。まず、造影モードに切り替えられ(ステップS11)、基準画像の設定が行われる(ステップS12)。TIC解析を行う場合、造影輝度の時間的変化を知りたい関心領域が明瞭に表示される画像を基準画像指示部10にて予め設定する。なお、ステップS12の処理は、ステップS13の動画記録に連動されてもよい。この設定された基準画像は、基準画像記憶部16に記憶される。
【0036】
入力部6から動画記録開始の操作が入力されると、動画の記録が開始される(ステップS13)。超音波探触子2より受信した超音波エコーからBモード画像のボリュームデータが画像処理部5により生成される(ステップS14)。なお、ボリュームデータを取得する際の超音波パワー(MI値)は、造影剤の破壊を最小限に抑えられるよう、壊れない程度に制御してもよい。
【0037】
第1位置補正部12にて、走査平面の最適化を実行する(ステップS15)。ステップS15の処理では、ボリュームデータと基準画像との相関を取り、最も相関の高い走査平面を最適な走査平面とし、その走査平面の画像を表示し続ける。
【0038】
最適な走査平面のみにおいて、Bモード画像、造影画像を取得するための超音波エコーを送信する(ステップS16)。送信する超音波エコーは、通常Bモード画像、及び、造影モード画像を取得する際と同じ超音波パワー(MI値)で照射する。
【0039】
画像処理部5により、超音波エコーからBモード画像、造影画像が生成される(ステップS17)。入力部6から動画記録終了の操作があったか否かが判定される(ステップS18)。動画記録終了の操作がないと判定された場合(ステップS18:NO)、ステップS15に戻り、同様の処理を繰り返す。一方、動画記録終了の操作があったと判定された場合(ステップS18:YES)、動画記録が終了して、動画が保存される(ステップS19)。
【0040】
次に、TIC解析を行う場合、記録しておいた動画を呼び出し(ステップS20)、読み出した動画から関心領域にTIC解析用のROIを設定する(ステップS21)。入力部6からTIC解析開始の操作が入力されると、TIC解析が開始され、第2位置補正部13により、TIC解析用のROIの位置ずれが自動で補正される(ステップS22)。
【0041】
ステップS22の処理では、走査平面上の関心領域の輪郭抽出を行うことで、関心領域の移動に同期してTIC解析用のROIの位置が自動で補正される。最後に、TIC解析用のROI内における造影輝度の時間的変化を算出し、算出した造影輝度の時間的変化を例えばグラフ等で表示し(ステップS23)、処理を終了する。
【0042】
ここで、ステップS4及びS15の走査平面の最適化の処理について、図4を用いて説明する。図4は、ステップS4及びS15の走査平面の最適化の処理の流れの例を説明するためのフローチャートである。
【0043】
まず、走査平面を超音波探触子2の第2の方向の走査範囲の一端(N=1)に設定する(ステップS31)。次に、第1の方向に走査し(ステップS32)、Bモード画像データ生成部17によりBモード画像が生成される(ステップS33)。次に、相関演算部14により、生成されたBモード画像と基準画像記憶部16に記憶された基準画像との相関値が算出される(ステップS34)。
【0044】
次に、第2の方向が全位置(N=Nmax)で走査したか否かが判定される(ステップS35)。第2の方向が全位置(N=Nmax)で走査していないと判定された場合(ステップS35:NO)、走査平面を超音波探触子2の第2の方向の他端側に所定値(N=N+1)だけ移動させて設定する(ステップS36)。そして、ステップS32に戻り、同様の処理を繰り返すことで、Bモード画像と基準画像との相関値を算出する。
【0045】
これらの処理を第2の方向に関して全位置(N=Nmax)で走査完了するまで繰り返す。第2の方向が全位置(N=Nmax)で走査したと判定された場合(ステップS35:YES)、第1位置補正部12により、算出した相関値の中から最大となった位置に走査平面を移動する(ステップS37)。ステップS37の処理が終了して、最適な走査平面が決定すると、図2のステップS5または図3のステップS16に戻り、最適な走査平面での走査が行われる。
【0046】
以上の処理により、拍動、手振れ等による関心領域がTIC解析を行いたい関心領域からずれた場合でも、関心領域のずれに応じてTIC解析を行いたい関心領域を自動的に補正することができる。また、Bモード画像データ生成部17で生成されるBモード画像のボリュームデータは、動画記憶部15に保存せずに、走査平面の位置を補正するためのみに使用される。この結果、超音波観測装置1は、データ容量を抑えつつ、拍動、手振れ等による関心領域のずれを3次元的に補正し、正確に関心領域内の観察及びTIC解析演算結果を把握することができる。
【0047】
よって、本実施形態の超音波観測装置によれば、TIC解析の際のデータ容量を抑えつつ、関心領域に対してプローブがずれても正確に造影輝度の時間的変化を把握することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0049】
図5は、第2の実施形態に係る超音波観測装置の全体構成を示すブロック図である。なお、図5において、図1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
図5に示すように、超音波観測装置1aは、図1の超音波観測装置1の超音波探触子2、演算部4、及び、記憶部8に代わり、それぞれ超音波探触子2a、演算部4a、及び、記憶部8aを用いて構成されている。
【0051】
超音波探触子2aは、図1の超音波探触子2に対して、信号変換部21、及び、センサ部22を追加して構成されている。また、演算部4aは、図1の演算部4に対して、第1位置補正部12、及び、第2位置補正部13に代わり、それぞれ第1位置補正部12a、及び、第2位置補正部13aを有するとともに、図1の相関演算部14が削除されて構成されている。さらに、記憶部8aは、図1の記憶部8に対して、位置情報記憶部23が追加されて構成されている。
【0052】
信号変換部21は、送受信部3から受信した電気的なパルス信号を超音波パルスに変換するとともに、外部の検体で反射された超音波エコーを再度電気的なエコー信号に変換する。
【0053】
センサ部22は、例えば、ジャイロセンサ、磁気センサ等で構成され、超音波探触子2aの位置及び向きの情報を検出する。センサ部22により検出された超音波探触子2aの位置及び向きの情報は、制御部9を介して記憶部8aに入力される。
【0054】
記憶部8aの位置情報記憶部23は、基準画像取得時の位置情報を記憶するとともに、センサ部22により検出された超音波探触子2aの位置及び向きの情報を随時記憶する。
【0055】
第1位置補正部12aは、TIC解析を行う際の関心領域の移動に対して、走査平面のずれを補正する。このとき、第1位置補正部12aは、位置情報記憶部23に記憶されている超音波探触子2aの位置及び向きの情報に基づいて、走査平面を移動させる。
【0056】
また、第2位置補正部13aは、走査平面上の関心領域の移動に同期して、TIC解析用のROIの位置を自動で補正する。このとき、第2位置補正部13aは、位置情報記憶部23に記憶されている超音波探触子2aの位置及び向きの情報に基づいて、走査平面上のROI位置を自動で補正する。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0057】
次に、このように構成された超音波観測装置1aの動作について説明する。TIC解析を行わない場合、及び、TIC解析を行う場合の処理は、図2図4と略同様であり、異なる処理のみ説明する。
【0058】
第2の実施形態では、図2のステップS4及び図3のステップS15の走査平面の最適の処理が第1の実施形態と異なる。第2実施形態では、超音波探触子2aに設けられたセンサ部22により超音波探触子2aの位置及び方向を取得する。そして、第1位置補正部12aにより、取得した超音波探触子2の位置及び方向から、基準画像がどの方向にどれだけ動いたかを検知することで、その検知情報を基にボリュームデータから走査平面を補正し、基準画像を表示し続ける。
【0059】
また、第2の実施形態では、図3のステップS22のTIC解析用のROIの自動補正の処理が第1の実施形態と異なる。第2の実施形態では、超音波探触子2aに設けられたセンサ部22が検知した位置及び向きの情報が位置情報記憶部23から読み出され、第2位置補正部13aにより、読み出された位置及び向きの情報に基づいて、TIC解析用のROIの位置が自動で補正される。その他の処理は、図2図4と同様である。
【0060】
ここで、TIC解析用のROIの位置の自動補正について図6A図6Cを用いて説明する。図6A図6Cは、TIC解析用のROIの位置の自動補正について説明するための図である。
【0061】
まず、図6Aに示すように、走査平面上の関心領域にTIC解析用のROIが設定される。手振れ等によりプローブの位置または向きがずれると、図6Bに示すように、関心領域がTIC解析用のROI外にずれてしまう。
【0062】
この場合、第2位置補正部13aは、センサ部22により検知され、位置情報記憶部23に記憶されている超音波探触子2aの位置及び向きの情報に基づいて、図6Cに示すように、TIC解析用のROIの位置を自動で補正する。
【0063】
このように、本実施形態の超音波観測装置1aは、走査平面の最適化、及び、TIC解析用のROIの位置の自動補正の手法が第1の実施形態と異なる。本実施形態の超音波観測装置1aは、超音波探触子2aにセンサ部22を設け、超音波探触子2aの位置及び向きの情報を取得し、これらの情報に基づいて、走査平面の最適化、及び、TIC解析用のROIの位置を自動に補正するようにしている。
【0064】
その他の構成及び動作は第1の実施形態と同様である。そのため、本実施形態の超音波観測装置1aは、第1の実施形態と同様に、TIC解析の際のデータ容量を抑えつつ、関心領域に対してプローブがずれても正確に造影輝度の時間的変化を把握することができる。
【0065】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
【0066】
表示部7は、画像処理部5が生成した画像を含む各種情報を表示する。表示部7に表示する画像は、観察しているライブ画像とし、基準画像と最も相関値が大きくなる際の画像(TIC解析用の動画)は、装置内に保存(例えば、動画記憶部15に記憶)し、TIC解析を行う際に読み出して使用する。その他の構成は、第1または第2の実施形態と同様である。
【0067】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
【0068】
表示部7は、画像処理部5で生成した画像を含む各種情報を表示する。表示部7に表示する画像は、相関演算部14において演算された、基準画像と最も相関値が大きくなる際の画像(TIC解析用の動画)とする。なお、表示部7は、基準画像と最も相関値が大きくなる際の画像と、観察しているライブ画像とを同時に表示するようにしても良い。このとき、相関演算部14にて基準画像と最も相関値が大きくなる際の画像のみをTIC解析用の動画として装置内に保存する。その他の構成は、第1または第2の実施形態と同様である。
【0069】
なお、第3の実施形態及び第4の実施形態では、相関演算用にBモード画像データ生成部17で生成されるBモード画像のボリュームデータを、基準画像と最も相関値が大きくなる際の画像、及び/又は、観察しているライブ画像と、表示部7に同時に表示しても良い。
【0070】
なお、本明細書における各フローチャート中の各ステップは、その性質に反しない限り、実行順序を変更し、複数同時に実行し、あるいは実行毎に異なった順序で実行してもよい。
【0071】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【0072】
本出願は、2014年10月16日に日本国に出願された特願2014−211786号公報を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲、図面に引用されたものとする。
【要約】
超音波観測装置1は、超音波の送受信方向を第1及び第2の方向に変更することで、超音波ビームの2次元走査が可能な超音波探触子2と、超音波ビームの送受信方向を制御する送受信部3と、超音波ビームを第1及び第2の方向に走査した結果からBモード画像のボリュームデータを生成する画像処理部5と、第1の関心領域が明瞭に描出されている際の画像を基準画像として設定する入力部6と、基準画像を記憶する記憶部8と、常に入力部6で設定された基準画像と類似する画像が表示されるよう走査平面を補正する演算部4とを備え、演算部4は、走査平面上の第1の関心領域の移動に同期して、輝度の時間的変化を解析する際の第2の関心領域の位置を自動で補正する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C