特許第5974207号(P5974207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974207
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】筐体の水密機構、内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   A61B1/00 300A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-524167(P2016-524167)
(86)(22)【出願日】2015年8月20日
(86)【国際出願番号】JP2015073384
(87)【国際公開番号】WO2016027857
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2016年4月15日
(31)【優先権主張番号】特願2014-169772(P2014-169772)
(32)【優先日】2014年8月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】岡田 武
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012-47884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の周囲を規定する第1縁部を有するケース部材と、
前記開口部を覆うように配置され、前記第1縁部と対向する第2縁部を有し、前記開口部を貫通する方向に対して傾いた着脱方向に前記ケース部材に固定されるための蓋部材と、
前記第1縁部と前記第2縁部との間に介在され、前記蓋部材が前記ケース部材に固定される際に前記着脱方向に圧縮されて前記第1縁部と前記第2縁部との間の隙間を塞ぐための環状の弾性部材と、
前記弾性部材に形成され、前記弾性部材が前記着脱方向に圧縮される際に、前記第1縁部と前記第2縁部との間の隙間が狭くなる側に配置される第1部分と、
前記弾性部材に形成され、前記弾性部材が前記着脱方向に圧縮される際に、前記第1縁部と前記第2縁部との間の隙間が広がる側に配置され、前記第1部分の前記着脱方向の寸法よりも大きい前記着脱方向の寸法を有する第2部分と、
を備える筐体の水密機構。
【請求項2】
前記第1部分は、前記着脱方向の前記ケース部材に近づく方向側に位置し、前記第2部分は、前記着脱方向の前記ケース部材から遠ざかる方向側に位置する請求項1に記載の筐体の水密機構。
【請求項3】
前記ケース部材及び前記蓋部材の内部に挿通されるケーブル部材と、
前記ケーブル部材が前記着脱方向に沿って延出されるように前記ケーブル部材を前記蓋部材に対して固定し、前記蓋部材を前記ケース部材に対して押さえる固定部と、
を備える請求項2に記載の筐体の水密機構を有する内視鏡。
【請求項4】
前記第2部分は、
前記着脱方向と交差する方向で前記蓋部材に沿う方向に延びた本体部と、
前記蓋部材に沿う方向に延びるとともに前記本体部に対して斜めになった傾斜部と、
を有し、
前記傾斜部を横切る方向の寸法は、前記第1部分の前記着脱方向の寸法よりも大きく、前記本体部の前記着脱方向の寸法よりも小さい請求項3に記載の内視鏡。
【請求項5】
開口部の周囲を規定する第1縁部を有するケース部材と、
前記開口部を覆うように配置され、前記第1縁部と対向する第2縁部を有し、前記開口部を貫通する方向に対して傾いた着脱方向に前記ケース部材に固定されるための蓋部材と、
前記第1縁部と前記第2縁部との間に介在され、前記蓋部材が前記ケース部材に固定される際に前記着脱方向に圧縮されて前記第1縁部と前記第2縁部との間の隙間を塞ぐための環状の弾性部材と、
前記弾性部材に形成され、前記弾性部材が前記着脱方向に圧縮される際に、前記第1縁部と前記第2縁部との間の隙間が狭くなる側に配置される第1部分と、
前記弾性部材に形成され、前記弾性部材が前記着脱方向に圧縮される際に、前記第1縁部と前記第2縁部との間の隙間が広がる側に配置され、前記第1部分の硬度よりも大きい硬度を有する第2部分と、
を備える筐体の水密機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔内に挿入される導入装置等に用いられる筐体の水密機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に内視鏡のような孔内への導入装置は、例えば被検体内の病変部を観察、処置等するために被検体内に挿入される可撓性を有する挿入部と、この挿入部を所定の方向に湾曲させるための操作を行なう操作部(筐体)とを有する。
【0003】
操作部の防水ケースは、ケース本体と、カバー部材と、環状のリップパッキンと、を有している。ケース本体に対してカバー部材を組付ける際の装着方向は、ケース本体の開口部と正対する方向に対して斜めとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−47884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような導入装置は、洗浄して繰り返し使用されることを想定している。上記した操作部(筐体)では、パッキン等を利用して、防水性(水密性)を確保することが一般的である。従来技術では、カバー部材の装着方向によらずにパッキンの厚みや硬度が決められていたため、パッキンに対する圧力が相対的に小さい部分では水密が十分に取れないおそれがあった。そして、操作部の防水性を向上することは、操作部内への浸水による故障を防止できる点で、導入装置の信頼性の向上にもつながる。
【0006】
本発明の目的は、信頼性を向上した筐体の水密機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の一つの形態に係る筐体の水密機構は、開口部の周囲を規定する第1縁部を有するケース部材と、前記開口部を覆うように配置され、前記第1縁部と対向する第2縁部を有し、前記開口部を貫通する方向に対して傾いた着脱方向に前記ケース部材に固定されるための蓋部材と、前記第1縁部と前記第2縁部との間に介在され、前記蓋部材が前記ケース部材に固定される際に前記着脱方向に圧縮されて前記第1縁部と前記第2縁部との間の隙間を塞ぐための環状の弾性部材と、前記弾性部材に形成され、前記弾性部材が前記着脱方向に圧縮される際に、前記第1縁部と前記第2縁部との間の隙間が狭くなる側に配置される第1部分と、前記弾性部材に形成され、前記弾性部材が前記着脱方向に圧縮される際に、前記第1縁部と前記第2縁部との間の隙間が広がる側に配置され、前記第1部分の前記着脱方向の寸法よりも大きい前記着脱方向の寸法を有する第2部分と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、信頼性を向上した筐体の水密機構を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態の内視鏡装置の全体構成を示した斜視図である。
図2図2は、図1に示す内視鏡装置の内視鏡の操作部のケース部材および蓋部材を示した斜視図である。
図3図3は、図2に示す操作部の蓋部材の内側を示す正面図である。
図4図4は、図3に示すF4−F4線に沿った断面図である。
図5図5は、図3に示すF5−F5線に沿った断面図である。
図6図6は、図3に示すF6−F6線に沿った断面図である。
図7図7は、図3に示すF7−F7線に沿った断面図である。
図8図8は、図2に示す内視鏡の操作部周辺を中心軸を通る平面で切断して示した断面図である。
図9図9は、図8に示す操作部のケース部材に蓋部材を取り付ける工程を示した断面図である。
図10図10は、図9に示す蓋部材を取り付ける工程において、弾性部材の第1部分周りを拡大して示した断面図である。
図11図11は、図9に示す蓋部材を取り付ける工程において、弾性部材の第2部分周りを拡大して示した断面図である。
図12図12は、第2実施形態の内視鏡装置の操作部において、ケース部材に蓋部材を取り付ける工程を示した断面図である。
図13図13は、図12に示す蓋部材を取り付ける工程において、弾性部材の第2部分周りを拡大して示した断面図である。
図14図14は、図12に示す蓋部材を取り付ける工程において、弾性部材の第1部分周りを拡大して示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
図1は本発明の内視鏡装置の全体構成図を示す。図1に示すように、内視鏡装置11は、内視鏡12と、制御装置13と、光源装置14と、画像撮影装置15と、送気・送水・吸引装置16と、キーボード17と、モニタ18と、を有する。
【0011】
光源装置14は、制御装置13の制御下で、内視鏡12の後述する先端硬質部21にある照明レンズに光を供給する。送気・送水・吸引装置16は、制御装置13の制御下で、内視鏡12の先端硬質部21にあるノズルに対して送気・送水を行ったり、ノズルを介して生体内から液体や組織等を吸引したりする。画像撮影装置15は、制御装置13の制御下で、内視鏡12の先端硬質部21の対物レンズを通して撮影された被検体の画像を画像処理してモニタ18に表示する。
【0012】
図1に示すように、内視鏡12は、ユニバーサルコード22と、操作部23と、操作部23に隣接して操作部23と一体的に設けられたグリップ部24と、グリップ部24から延びて孔内(被検体)に挿入される挿入部25と、を有する。ユニバーサルコード22は、可撓性を備えるケーブル22aと、ケーブル22aの急な折れ曲がりや座屈を防止する折れ止め22bを有する。操作部23は、水密構造を適用した筐体の一例である。
【0013】
内視鏡12は、ユニバーサルコード22を介して制御装置13、光源装置14、画像撮影装置15、及び送気・送水・吸引装置16に接続されている。
【0014】
挿入部25は、細長く可撓性を有する軟性部26と、この軟性部26の先端に設けられた湾曲部27と、この湾曲部27の先端に設けられた先端硬質部21と、を備えている。
【0015】
軟性部26および湾曲部27の内部には、湾曲部27を図1に示すU方向及びD方向に湾曲させるための1対の第1ワイヤと、湾曲部27をU方向及びD方向と直交するR方向及びL方向に湾曲させるための1対の第2ワイヤと、が挿通されている。湾曲部27の内部は、挿入部25の長手軸方向Lに沿って並んだ複数の湾曲駒が収納されている。先端硬質部21には、対物レンズと、処置具挿通チャンネルと、照明レンズと、先端硬質部21の先端面を洗浄する水や空気を供給したり、生体内の液体や組織等を吸引したりできるノズルと、が設けられている。
【0016】
図1から図3図8に示すように、操作部23は、例えば合成樹脂材料等によって内部空間を有するように形成されたケース部材31と、ケース部材31に回転可能に取り付けられたUDノブ32およびRLノブ33と、ケース部材31に設けられた開口部34を覆う蓋部材35と、ケース部材31と蓋部材35との間に介在される環状の弾性部材36と、ケース部材31内に収められた金属製で板状のフレーム37と、フレーム37からアーム状に突出した金属製の支持部38と、支持部38に取り付けられた円筒状で金属製の固定部41と、固定部41の周囲に設けられた第1ねじ部42(雄ねじ)と、先端硬質部21のノズルに送気・送水を行う第1ボタン43と、ノズルを介して先端硬質部21で吸引を行う第2ボタン44と、を有する。固定部41は、ケース部材31から突出しており、蓋部材35に設けられた孔部35Aを貫通するように設けられる。
【0017】
図8に示すように、ユニバーサルコード22の折れ止め22bは、蓋部材35の着脱方向Yに沿って延びている。ユニバーサルコード22の折れ止め22bの端部には、第1ねじ部42と係合する第2ねじ部45(雌ねじ)と、固定部41に固定された際に蓋部材35に当接する当接部46と、が設けられている。ユニバーサルコード22の折れ止め22bは、固定部41に固定されることで蓋部材35を押さえることができ、蓋部材35の固定具を兼ねている。ユニバーサルコード22は、ケーブル部材の一例である。
【0018】
図9に示すように、ケース部材31および蓋部材35は、例えば合成樹脂材料によって形成されている。ケース部材31は、開口部34の周囲を規定する第1縁部51を有している。蓋部材35は、本体部分52と、本体部分52からケース部材31に向けて突出した第2縁部53と、本体部分52に設けられた孔部35Aと、孔部35Aの周囲に設けられ当接部46が当接される受け部54と、を有している。図3に示すように、第2縁部53は、環状をなしており、蓋部材35が開口部34を覆った状態で第1縁部51と対向する。図9に示すように、蓋部材35は、開口部34を貫通する方向に対して傾いた着脱方向Yに沿って開口部34を覆ったり開口部34から外れたりすることができる。フレーム37は、例えば金属材料によって板状に形成されている。
【0019】
図9に示すように、弾性部材36は、蓋部材35の第2縁部53と一体的に成型される。弾性部材36は、第1縁部51と第2縁部53との間に介在されている。弾性部材36は、蓋部材35が開口部34を覆った際に着脱方向Yに圧縮されて第1縁部51と第2縁部53との間の隙間を塞ぐことができる。弾性部材36は、例えばシリコンゴムで構成されている。弾性部材36は、第2縁部53に固定された土台部分55と、土台部分55から半円形に突出して第1縁部51と接触することが可能な接触部56と、を有している。
【0020】
図3に示すように、弾性部材36は、着脱方向Yにおいてケース部材31に近づく方向側(図9において左側)に位置する第1部分61と、着脱方向Yにおいてケース部材31から遠ざかる方向側(図9において右側)に位置する第2部分62と、第1部分61と第2部分62とを連結するとともに短辺を構成する第3部分63と、第1部分61と第2部分62とを連結するとともに長辺を構成する第4部分64と、を有する。このため、弾性部材36は、略多角形の環状をなしているともいえる。さらに、第2部分62は、ケース部材31の着脱方向Yと交差する方向で蓋部材35に沿う方向Aに延びる本体部62Aと、蓋部材35に沿う方向で本体部62Aに対して斜めになった傾斜部62Bと、を含んでいる。
【0021】
図6に示すように、第2部分62の本体部62Aは、例えば、着脱方向YにおいてT2の寸法を有する。図7に示すように、第2部分62の傾斜部62Bは、例えば、傾斜部62Bを横切る方向においてT3の高さ寸法を有する。図4に示すように第1部分61は、着脱方向YにおいてT1の寸法を有する。図5に示すように、第3部分63は、例えば、Tの高さ寸法を有する。同様に、第4部分64についても図示省略したが、第4部分64は、例えば、Tの高さ寸法を有する。本実施形態では、T=T1<T3<T2である。より具体的には、寸法Tは、例えば1.8mm〜2.0mmであり、寸法T3は、例えば2.1mm〜2.2mmであり、寸法T2は、例えば2.3mm〜2.4mmである。
【0022】
なお、第2部分62の本体部の寸法T2、および傾斜部62Bの寸法T3は、第1部分61の寸法T1よりも大きく、且つ第1部分61の寸法T1の2倍以下の範囲で適宜に設定することができる。また、上記第1部分61から第4部分64の寸法は、これらにかかる力の大きさと向き(角度)からシミュレーションをすることで計算することができる。
【0023】
続いて、図8から図11を参照して、蓋部材35をケース部材31に固定する際の作業工程について説明する。図8に示すように、ケース部材31の開口部34に対して蓋部材35を覆い、蓋部材35の孔部35Aの内側に固定部41を通しておく。続いて、図示しないケーブル22aを固定部41に対して固定した後、固定部41の第1ねじ部42に対して折れ止め22bの第2ねじ部45を固定する。このとき、折れ止め22bをその中心軸回りに回転させて、操作部23側の固定部41に対して折れ止め22bを固定していくと、図8に示すように、折れ止め22bは、開口部34を貫通する方向に対して傾いた着脱方向Yに沿って操作部23に近づく。そして折れ止め22bの当接部46が蓋部材35の受け部54に当接し、図9に示すように、蓋部材35が折れ止め22bとともに着脱方向Yに沿って押し込まれる。このとき、図8に示すように、蓋部材35の移動方向(着脱方向Y)のベクトルの成分には、開口部34を貫通するD1方向の成分と、D1方向と交差(略直交)する方向D2の成分と、の両方が含まれている。
【0024】
図10に、弾性部材36の第1部分61の周辺において、弾性部材36が着脱方向Yに圧縮される(折れ止め22bで押し込まれる)直前の第1状態S1を2点鎖線で示し、弾性部材36が着脱方向Yに圧縮された(折れ止め22bで押し込まれた)第2状態S2を実線で示す。第1部分61の周辺では、蓋部材35が第1状態S1から第2状態S2に移動する際に、第1縁部51と第2縁部53との間の隙間が狭くなる。このため、第1部分61は、第1縁部51に対して十分な接触圧力を発揮することができる。
【0025】
図11に、弾性部材36の第2部分62の周辺において、弾性部材36が着脱方向Yに圧縮される(折れ止め22bで押し込まれる)直前の第1状態S1を2点鎖線で示し、弾性部材36が着脱方向Yに圧縮された(折れ止め22bで押し込まれた)第2状態S2を実線で示す。第2部分62の周辺では、蓋部材35が第1状態S1から第2状態S2に移動する際に、第1縁部51と第2縁部53との間の隙間が広がる。しかしながら、第2部分62の本体部62Aの着脱方向における寸法T2は、第2部分62の寸法T1に比べて大きく設定されている。このため、第2部分62は、第1縁部51に対して十分な接触圧力を発揮することができる。
【0026】
図3を参照して、第2部分62の傾斜部62Bについて説明する。蓋部材35が着脱方向Yに沿って第1状態S1から第2状態S2に移動する距離をXとしたときに、第2部分62の傾斜部62Bを横切る方向(傾斜部62Bのなした線分の法線方向)の移動距離は、Xsinαとなる。このため、蓋部材35が着脱方向Yに移動する距離に比べて、第2部分62の傾斜部62Bを横切る方向の移動距離は小さくなる。また、第2部分62の傾斜部62Bの周辺では、蓋部材35が第1状態S1から第2状態S2に移動する際に、第1縁部51と第2縁部53との間の隙間が広がることになる。しかしながら、傾斜部62B周辺の隙間の広がりの程度は、本体部62A周辺の広がりの程度に比して小さい。このため、傾斜部62Bを横切る方向における傾斜部62Bの寸法T3は、第1部分61の寸法T1よりも大きく、且つ、第2部分62の本体部62Aの寸法T2に比べて小さく設定されている。これによって、傾斜部62Bにおいて十分な接触圧力が確保される。同様に、弾性部材36の第3部分63および第4部分64においても十分な接触圧力が確保される。
【0027】
第1実施形態によれば、筐体の水密機構は、開口部34の周囲を規定する第1縁部51を有するケース部材31と、開口部34を覆うように配置され、第1縁部51と対向する第2縁部53を有し、開口部34を貫通する方向に対して傾いた着脱方向Yにケース部材31に固定されるための蓋部材35と、第1縁部51と第2縁部53との間に介在され、蓋部材35がケース部材31に固定される際に着脱方向Yに圧縮されて第1縁部51と第2縁部53との間の隙間を塞ぐための環状の弾性部材36と、弾性部材36に形成され、弾性部材36が着脱方向Yに圧縮される際に、第1縁部51と第2縁部53との間の隙間が狭くなる側に配置される第1部分61と、弾性部材36に形成され、弾性部材36が着脱方向Yに圧縮される際に、第1縁部51と第2縁部53との間の隙間が広がる側に配置され、第1部分61の着脱方向Yの寸法よりも大きい着脱方向Yの寸法を有する第2部分62と、を備える。
【0028】
この構成によれば、第1状態S1から第2状態S2に移動する際に第1縁部51と第2縁部53との間の隙間が広がる第2部分62において、弾性部材36の接触圧力が低下して、この部分から浸水してしまうことを防止できる。これによって、筐体の水密性(防水性)を向上して浸水に起因する故障を防止することができ、これが適用される導入装置等の信頼性を向上できる。
【0029】
第1部分61は、前記着脱方向Yのケース部材31に近づく方向側に位置し、第2部分62は、着脱方向Yのケース部材31から遠ざかる方向側に位置する。この構成によれば、接触圧力が低下しやすい着脱方向Yのケース部材31から遠ざかる方向側にある弾性部材36において、シール切れを防止して当該部分からの浸水を防止できる。
【0030】
筐体の水密機構は、ケース部材31及び蓋部材35の内部に挿通されるケーブル部材と、前記ケーブル部材が着脱方向Yに沿って延出されるように前記ケーブル部材を蓋部材35に対して固定し、蓋部材35をケース部材31に対して押さえる固定部41と、を備える。この構成によれば、ケーブル部材によって蓋部材35を固定できるため、蓋部材35を固定するための固定具が別途に不要となり部品点数を削減できる。また、蓋部材35を固定するためのねじを通すための孔も不要とすることができ、当該孔から浸水してしまう危険性もない。
【0031】
第2部分62は、着脱方向Yと交差する方向で蓋部材35に沿う方向Aに延びた本体部62Aと、蓋部材35に沿う方向に延びるとともに本体部62Aに対して斜めになった傾斜部62Bと、を有し、傾斜部62Bを横切る方向の寸法は、第1部分61の着脱方向Yの寸法よりも大きく、本体部62Aの着脱方向Yの寸法よりも小さい。蓋部材35が第1状態S1から第2状態S2に移動する際には、着脱方向Yの移動量に比して傾斜部62Bを横切る方向の移動量は小さくなる。この構成によれば、傾斜部62Bにおいて傾斜部62Bを横切る方向における寸法を適切な範囲内で設定することができ、傾斜部62Bにおいてシール切れ(浸水)を生じてしまうことを防止することができる。
【0032】
[変形例]
続いて、第1実施形態の変形例について説明する。この変形例では、第1実施形態とは異なり、第1部分61と第2部分62との間で着脱方向Yにおける寸法および断面積は同じである。しかしながら本変形例では、第1部分61と第2部分62との間で弾性部材36(ゴム)の硬度を互いに異なる値にしている。
【0033】
すなわち、弾性部材36が着脱方向Yに圧縮される際に、第1縁部51と第2縁部53との間の隙間が狭くなる側の第1部分61では、第2部分62よりも硬度(硬さ)を小さくしている。具体的には、第1部分61の硬度は、ISO 7619、JIS K 6253等の規格に対応した一般ゴム(中硬さ)用のタイプAデュロメータで測定した硬度で、例えば50度に調整される。弾性部材36が着脱方向Yに圧縮される際に、第1縁部51と第2縁部53との間の隙間が広がる側の第2部分62では、第1部分61よりも硬度(硬さ)を大きくしている。具体的には、第1部分61の硬度は、上記タイプAデュロメータで測定した硬度で、例えば60度に調整される。
【0034】
本変形例によれば、第2部分62の硬度を第1部分61の硬度よりも大きくしている。このため、弾性部材36の第2部分62の周りにおいて、浸水を生ずることを防止することができる。これによって、筐体の水密構造が適用される導入装置等の信頼性を向上できる。
【0035】
[第2の実施形態]
図13から図14を参照して、第2実施形態の内視鏡装置について説明する。第2実施形態の内視鏡装置11は、ケース部材31の形状および蓋部材35の形状が第1の実施形態のものと異なっているが、他の部分は第1実施形態と共通している。このため、主として第1実施形態と異なる部分について説明し、第1実施形態と共通する部分については図示或いは説明を省略する。
【0036】
ケース部材31および蓋部材35は、例えば合成樹脂材料によって形成されている。ケース部材31は、開口部34の周囲を規定する第1縁部51を有している。第1縁部51は、蓋部材35のある方向に向かって突出している。
【0037】
蓋部材35は、本体部分52と、本体部分52からケース部材31に向けて突出した第2縁部53と、本体部分52に設けられた孔部35Aと、孔部35Aの周囲に設けられ当接部46が当接される受け部54と、を有している。第2縁部53は、環状をなしており、蓋部材35が開口部34を覆った状態で第1縁部51と対向する。蓋部材35が開口部34を覆った状態で、第2縁部53は、第1縁部51の外側に位置している。蓋部材35は、着脱方向Yに沿って開口部34を覆ったり開口部34から外れたりすることができる。孔部35Aの内側にケース部材31の内側方向から延びる固定部41が通される。フレーム37は、例えば金属板金によって形成されている。
【0038】
弾性部材36は、第1実施形態と同様に、環状をなしている。本実施形態において、弾性部材36は、ケース部材31の第1縁部51と一体的に成型されている。弾性部材36は、例えばシリコンゴムで構成されている。弾性部材36は、第1縁部51に固定された土台部分55と、土台部分55から半円形に突出して第2縁部53と当接することが可能な接触部56と、を有している。
【0039】
弾性部材36は、着脱方向Yにおいてケース部材31から遠ざかる方向側(図13において右側)に位置する第1部分61と、着脱方向Yにおいてケース部材31に近づく方向側(図13において左側)に位置する第2部分62と、第1部分61と第2部分62とを連結するとともに短辺を構成する第3部分63と、第1部分61と第2部分62とを連結するとともに長辺を構成する第4部分64と、を有する。第2部分62は、ケース部材31の着脱方向Yと交差する方向に延びる本体部62Aと、本体部62Aおよび着脱方向Yに対して斜めになった傾斜部62Bと、を有している。
【0040】
第1実施形態と同様に、第2部分62の本体部62Aは、例えば、着脱方向YにおいてT2の寸法を有する。第2部分62の傾斜部62Bは、例えば、傾斜部62Bを横切る方向においてT3の高さ寸法を有する。第1部分61は、着脱方向YにおいてT1の寸法を有する。第3部分63は、例えば、Tの高さ寸法を有する。第4部分64は、例えば、Tの高さ寸法を有する。本実施形態では、T=T1<T3<T2である。より具体的には、寸法Tは1.8mm〜2.0mmであり、寸法T3は2.1mm〜2.2mmであり、寸法T2は、2.3mm〜2.4mmである。なお、第2部分62の本体部62Aの寸法T2、および傾斜部62Bの寸法T3は、第1部分61の寸法T1よりも大きく、且つ第1部分61の寸法T1の2倍以下の範囲で適宜に設定することができる。
【0041】
続いて、図13から図14を参照して、蓋部材35でケース部材31の開口部34(第1縁部51)を覆う際の作業工程について説明する。まず予め、蓋部材35の孔部35Aの内側に固定部41を通しておく。続いて、図示しないケーブル22aを固定部41に対して固定した後、固定部41の第1ねじ部42に対して折れ止め22bの第2ねじ部45を固定する。このとき、折れ止め22bを回転させて操作部23側の固定部41に固定していくと、図13に示すように、折れ止め22bは、開口部34を貫通する方向D1に対して傾いた着脱方向Yに沿って操作部23に近づく。そして折れ止め22bの当接部46が蓋部材35の受け部54に当接し、折れ止め22bとともに蓋部材35が着脱方向Yに沿って押し込まれる。このとき、図13に示すように、蓋部材35の移動方向(着脱方向Y)のベクトルの成分には、開口部34を貫通する方向D1の成分と、方向D1と交差(略直交)する方向の成分D2と、の両方が含まれている。
【0042】
図14に、弾性部材36の第2部分62の周辺において、弾性部材36が着脱方向Yに圧縮される(折れ止め22bで押し込まれる)直前の第1状態S1を2点鎖線で示し、弾性部材36が着脱方向Yに圧縮された(折れ止め22bで押し込まれた)第2状態S2を実線で示す。第2部分62の周辺では、蓋部材35が第1状態S1から第2状態S2に移動する際に、第1縁部51と第2縁部53との間の隙間が広がる。しかしながら、第2部分62の本体部62Aの着脱方向Yにおける寸法T2は、第1部分61の寸法T1に比べて大きく設定されている。このため、第2部分62は、第2縁部53に対して十分な接触圧力を発揮することができる。第2部分62の傾斜部62Bにおいても同様である。
【0043】
図15に、弾性部材36の第1部分61の周辺において、弾性部材36が着脱方向Yに圧縮される(折れ止め22bで押し込まれる)直前の第1状態S1を2点鎖線で示し、弾性部材36が着脱方向Yに圧縮された(折れ止め22bで押し込まれた)第2状態S2を実線で示す。第1部分61の周辺では、蓋部材35が第1状態S1から第2状態S2に移動する際に、第1縁部51と第2縁部53との間の隙間が狭くなる。このため、第1部分61は、第2縁部53に対して十分な接触圧力を発揮することができる。
【0044】
第2実施形態によれば、ケース部材31側に弾性部材36が固定される場合であっても、第1状態S1から第2状態S2に移動する際に第1縁部51と第2縁部53との間の隙間が広がる第2部分62において、浸水を生じることを防止して筐体の水密機構を適用した導入装置の信頼性を向上できる。
【0045】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変形実施することができる。また、上記各実施形態の内視鏡装置を組み合わせて一つの内視鏡装置を構成することもできる。
【0046】
上記各実施形態では筐体の水密機構の一例として内視鏡12の操作部23を例に説明した。このような操作部23を有する内視鏡12の他の例には、光源装置及び先端硬質部の照明レンズ等を含む照明光学系が存在しないものや、画像撮影装置、モニタ及び先端硬質部の対物レンズ等を含む観察光学系が存在しないものが含まれる。
【符号の説明】
【0047】
11…内視鏡装置、12…内視鏡、31…ケース部材、34…開口部、35…蓋部材、35A…孔部、36…弾性部材、41…固定部、51…第1縁部、53…第2縁部、61…第1部分、62…第2部分、62A…本体部、62B…傾斜部、S1…第1状態、S2…第2状態、Y…着脱方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14