(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974225
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】エネルギー発生機
(51)【国際特許分類】
F16H 33/20 20060101AFI20160809BHJP
F16H 21/20 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
F16H33/20
F16H21/20 A
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-542279(P2014-542279)
(86)(22)【出願日】2011年12月2日
(65)【公表番号】特表2014-533814(P2014-533814A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】UA2011000122
(87)【国際公開番号】WO2013074052
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2014年9月5日
(31)【優先権主張番号】201113627
(32)【優先日】2011年11月18日
(33)【優先権主張国】UA
(73)【特許権者】
【識別番号】514123532
【氏名又は名称】リミテッド ライアビリティー カンパニー“ウクレイニアン ニューエナジー グループ”(“ユーエヌジー”リミテッド)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】トルブヤノフ,ユリー バレンティノヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ミロシニシェンコ,ドミトロ エフゲノヴィチ
【審査官】
稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0318256(US,A1)
【文献】
ロシア国特許出願公開第02076241(RU,A)
【文献】
ロシア国特許出願公開第02354873(RU,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02241785(EP,A1)
【文献】
特公昭46−009761(JP,B1)
【文献】
特開昭58−118368(JP,A)
【文献】
特開昭48−007371(JP,A)
【文献】
実公昭46−030499(JP,Y1)
【文献】
ソ連国特許発明第01307137(SU,A)
【文献】
ソ連国特許発明第00089256(SU,A)
【文献】
ソ連国特許発明第00892061(SU,A)
【文献】
米国特許第05890400(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0066042(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0103728(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0160845(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0183524(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0220385(US,A1)
【文献】
英国特許出願公開第02422644(GB,A)
【文献】
独国特許出願公開第10003367(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第10143280(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第19838271(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102004055171(DE,A1)
【文献】
特許第106238(JP,C2)
【文献】
特開2005−170210(JP,A)
【文献】
特開2001−073927(JP,A)
【文献】
特開2000−064944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H19/00−31/00
33/08,33/20
35/10
37/00−37/16
F03G 3/00, 3/06− 3/08
7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー発生機であって、回転可能な駆動シャフトが取り付けられたハウジング;前記駆動シャフトに堅固に据え付けられた主ホイールを介して、追加負荷を具備するホイールの形に作られた不平衡質量の要素に回転を伝達する駆動シャフトの機構を含む主ユニット;前記主ユニット、および動作モーメントの伝達を可能にする作動ノードを含む末端コンシューマとの間の運動連鎖を備えるエネルギー発生機であって、シャフトの回転動力伝達機構が、主ホイールに運動学的に接続された、少なくとも2つのスレーブ偏心ホイールを備え、前記スレーブ偏心ホイールの各々が、前記駆動シャフトの車軸と平行に配置された、追加の動かないスレーブ車軸上で回転可能に固定され、前記スレーブ偏心ホイールの各々の両端で、前記両端の間を接続要素に堅固に接続され、中心が前記駆動シャフト上で自由に動かせるように固定されたバランスビームが、この各スレーブ車軸の所で、追加の接続リンクを具備し、前記追加の接続リンクは、一方の端部が前記スレーブ車軸上に固定され、かつ他方の端部が、作動媒体を注入するための注入弁、およびレシーバを介して末端コンシューマに接続された排出弁を含む、可変容積を有する作動チャンバの移動可能要素に接続されるということを特徴とするエネルギー発生機。
【請求項2】
前記シャフトの回転動力伝達機構の前記スレーブ偏心ホイールは、類似の直径を有して作られるということを特徴とする、請求項1に記載のエネルギー発生機。
【請求項3】
前記バランスビームは、前記スレーブ車軸に固定される端点が、前記駆動シャフトに前記バランスビームを固定するポイントから等距離にある幾何形状、すなわち:円もしくは正多角形(正方形、正三角形)として、または十字型の形状の形で作られるということを特徴とする、請求項1または2に記載のエネルギー発生機。
【請求項4】
前記不平衡質量の前記要素への前記シャフトの回転動力伝達機構は、摩擦もしくはホイール、またはベルト、またはチェーン、または前記主ホイールから前記スレーブ偏心ホイールへのウォーム回転動力伝達機構に基づき行われるということを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のエネルギー発生機。
【請求項5】
負荷は、前記スレーブ偏心ホイールの表面上に堅固に固定されるということを特徴とする、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載のエネルギー発生機。
【請求項6】
各スレーブ偏心ホイールが、放射状のレールを具備し、前記放射状のレールの内側に負荷が配置され、追加で取り付けられた負荷用のローカル駆動デバイスの影響下で、前記レールに沿って前記負荷が放射状に移動することができるということを特徴とする、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載のエネルギー発生機。
【請求項7】
前記放射状のレールは、直線状に、または前記スレーブ偏心ホイールの回転軸と一致する中心を有する円弧の形状もしくは螺旋に形成されるということを特徴とする、請求項6に記載のエネルギー発生機。
【請求項8】
前記負荷用の前記ローカル駆動デバイスは、機械式(ばねまたはレバー)、電気式(電磁石または回転子の形で)、または電子式、または水圧式、または空気圧式の形で設計されてもよいということを特徴とする、請求項6または7に記載のエネルギー発生機。
【請求項9】
前記シャフトの回転動力伝達機構は、前記駆動シャフトの軸に沿って連続的に結合された追加の主ホイールを備え、前記スレーブ偏心ホイールの各々に運動学的に関連づけられるということを特徴とする、請求項1〜8のうちいずれか一項に記載のエネルギー発生機。
【請求項10】
各後続の運動学的スレーブ偏心ホイールが、先行するスレーブホイールと接続されるように、前記同じ主ホイールに運動学的に関連づけられた追加のスレーブ偏心ホイールを備え、この場合、前記スレーブ偏心ホイールが配置される軸がすべて、中心が前記駆動シャフトに自由に動かせるように固定された前記同じバランスビームに順次、堅固に固定されるということを特徴とする、請求項1〜9のうちいずれか一項に記載のエネルギー発生機。
【請求項11】
各スレーブ軸上に、第1の作動チャンバの反対側に固定された追加の作動チャンバを備え、したがって、作動対を形成するということを特徴とする、請求項1〜10のうちいずれか一項に記載のエネルギー発生機。
【請求項12】
各スレーブ軸上に順次配置された追加の作動チャンバまたは1対の作動チャンバを備えるということを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のエネルギー発生機。
【請求項13】
可変容積を有する作動チャンバとして、シリンダ−ピストン対、またはベローズ組立体、または柔軟壁(隔壁)を有する閉チャンバ、または空気圧チャンバ(空気ばね)が使用されるということを特徴とする、請求項1〜12のうちいずれか一項に記載のエネルギー発生機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工学の分野に関し、回転運動動力デバイス(エネルギー発生機)のユニットに、詳細にはエネルギー貯蔵/変換の慣性システムに関連し、さまざまな機械および機構を駆動するために使用されることができる。
【背景技術】
【0002】
モータにより消費される電気エネルギーを節約するために、回転物体が発生する慣性力を使用する慣性エネルギー変換器の設計が十分に発達した。
【0003】
公知のものの1つが、1つの平面内で回転する不平衡負荷が往復運動を実行し、これらの負荷の慣性力から連続した一方向の作用を提供する構造物を構成する慣性駆動デバイスIDD−4(ロシア特許第2076241号明細書、1997年)である。このデバイスは、負荷をその直径の比が1:2で互いに内接した、滑ることなく互いに反射する円の幾何学的特性を使用する。このデバイスの主な欠点が、非常に正確な設計解を必要とし、速度特性が非常に制限される遊星動力伝達機構(最もエネルギー負荷の高い機械式動力伝達機構)をデバイスの設計で使用することである。デバイスを駆動するエンジンの動力は、遊星動力伝達機構の回転のためだけに費やされるので、デバイスにより消費される電気エネルギーの節約は、実際には非常に少ない。
【0004】
内部空間が水銀で充填された長方形セクションの、構造が類似する、2つの中空リングの形に慣性機構が作られた設計の慣性動力伝達機構(ロシア特許第2354873号明細書、2009年)もまた公知である。リングの内側で水銀を高速で移動させるポンプが、リングの広がった部分に固定される。水銀が移動するとき、異なる値の、反対方向に動作する慣性力FおよびF1が発生する。決して平衡していない、異なる方向に作用するこれらの力は、1対の力を生み出し、デバイスのスレーブシャフトの回転を引き起こす。
【0005】
このような技術的解決策の欠点が、慣性動力伝達機構が、回転を一方向だけに伝達することであり、これにより、慣性機構の有用な仕事量すべての使用量が低減され、デバイスのそれぞれの効率因子が低減され、デバイス全体の有効性が低下する。さらに、デバイスは、ポンプ動作のために追加のエネルギーコストを必要とする。
【0006】
この他に、公知のように、水銀は、第一級の危険物クラスであり、低温でさえ容易に蒸発し、水銀の蒸気および化合物には毒性が非常にあるので、偏心重量として(大きな比重を有する)水銀を使用することで、このようなデバイスの環境危険性が増大することになる。
【0007】
特許請求されるデバイスに最も近いのが、詳細には、発電機を回転させるための動力駆動であり、この発電機の作用は、機械的振動源により発生させられた交番する回転モーメントが加えられる、回転可能な作動ユニットを備える間欠運動機構を使用することに基づく(ロシア特許第2377458号明細書、2009年)。
【0008】
モータにより自由に回転させられ、かつ事前設定された振動数で作動ユニットに軸方向に据え付けられた、不平衡質量の要素の形をした遠心振動装置が、機械的振動源として使用される。この場合、モータ、および不平衡質量の要素が、作動ユニットに据え付けられ、オーバーランニングクラッチが、間欠運動機構で使用される。
【0009】
この動力駆動では、不平衡質量(偏心重量)の回転要素の慣性の遠心力が、この動力駆動の出力動力送達シャフトに対する追加動力源として使用される。
【0010】
このような技術的解決策の欠陥は以下の通りである:
−デバイスの中に運動パターンの変換を連結する運動連鎖の存在が数回見いだされ、このため、回転運動エネルギーが、回転から往復運動に変化し、さらに、再度回転に変化し、回転は、次に、電気エネルギーに変化し、これにより、動力伝達機構ノードで摩擦力に打ち勝つための損失を考慮すると、デバイス全体の効率因子が低減される;
−デバイスの出力シャフトが、高スピンモーメント、およびマルチプライヤをさらに適用する必要がある低回転速度を伴う回転運動を与えられ、これにより、次に、動力損失がさらにもたらされ、デバイス性能が低下する;
−共通回転プラットフォーム上に機械的振動源(遠心力発生装置)を配置することにより、機械的振動源の慣性質量が増大するようになり、これにより、次に、駆動の効率因子が低減し、より強力で重い遠心力発生装置を使用できなくなる;
−特許請求されるデバイスでは、慣性(遠心力)発生装置は、一方向だけ(プラットフォームの後退運動ではなく、前進運動だけ)の回転を伝達し、これにより、発生した有用な仕事量の使用量が低減され、デバイスのそれぞれの効率因子が低減され、デバイス全体の有効性が低下する。回転を両方向に伝達するために第2のオーバーランニングクラッチを取り付けることが構造的に可能であるが、機械的動力伝達機構をもう1つ追加することにより構造を著しく複雑にする。この他に、オーバーランニングクラッチを使用することにより、動作源および効率因子が全体的に低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】ロシア特許第2076241号明細書、1997年
【特許文献2】ロシア特許第2354873号明細書、2009年
【特許文献3】ロシア特許第2377458号明細書、2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
提案される技術的解決策の目的は、デバイスの運動方式を簡素化し、かつエネルギー損失を低減または除去して、デバイスの構造ユニット内の摩擦力に打ち勝つことにより、技術的能力を同時に拡大して、デバイスの効率因子を、デバイスの効率および信頼性を、ならびにその結果として、エネルギーを発生させる可能性を増大させることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために、回転可能な駆動シャフトが取り付けられたハウジング;駆動シャフトに堅固に据え付けられた主ホイールを介して、追加負荷を具備するホイールの形に作られた不平衡質量の要素に回転を伝達する駆動シャフトの機構を含む主ユニット;主ユニット、および特許請求される技術的解決策による動作モーメントの伝達を可能にする作動ノードを含む末端コンシューマとの間の運動連鎖を備えるデバイスにおいて、シャフトの回転動力伝達機構が、主ホイールに運動学的に接続された、少なくとも2つのスレーブ偏心ホイールを備え、スレーブ偏心ホイールの各々が、駆動シャフトの車軸と平行に配置された、追加の動かないスレーブ車軸上で回転可能に固定され、スレーブ偏心ホイールの各々の両端で、両端の間を接続要素に堅固に接続され、中心が駆動シャフトに自由に動かせるように固定されたバランスビームが、この各スレーブ車軸の所で、追加の接続リンクを具備し、追加の接続リンクは、一方の端部が
スレーブ車軸に固定され、かつ他方の端部が、作動媒体を注入するための注入弁、およびレシーバを介して末端コンシューマに接続された排出弁を含む、可変容積を有する作動チャンバの移動可能要素に接続される。
【0014】
したがって、特許請求される設計では:
−
シャフトの回転動力伝達機構のスレーブ偏心ホイールが、類似の直径を有して作られる;
−バランスビームは、スレーブ車軸に固定される端点が、駆動シャフトにバランスビームを固定するポイントから等距離にある幾何形状:円もしくは正多角形(正方形、正三角形)として、または十字型、たとえば:+、×、
【0015】
【数1】
【0016】
の形状で作られてもよい;
−不平衡質量の要素へのシャフト
の回転動力伝達機構は、摩擦もしくはホイール、またはベルト、またはチェーン、または主ホイールからスレーブホイールへのウォーム回転動力伝達機構に基づき作られることができる;
−負荷は、スレーブ偏心ホイールの表面に堅固に固定されてもよい、または各
スレーブ偏心ホイールが有してもよい放射状のレールの内側に配置されてもよく、負荷のために追加で取り付けられたローカル駆動デバイスの影響下で、偏心ホイールがレールに沿って放射状に移動することができる;
−放射状のレールは、直線に、または
スレーブ偏心ホイールの回転軸と中心が一致する円弧の形状もしくは螺旋に形成されてもよい;
−負荷用のローカル駆動デバイスは、機械式(ばねまたはレバー)、または電気式(電磁石または回転子の形で)、または電子式、または水圧式、または空気圧式の形で設計されてもよい;
−シャフト伝達回転機構は、駆動シャフトの軸に沿って連続的に結合された追加の主ホイールを備えてもよく、スレーブ偏心ホイールが追加の主ホイールの各々に運動学的に関連づけられる;
−デバイスは、各後続の運動学的スレーブ
偏心ホイールが、先行するスレーブ
偏心ホイールと接続されるように、同じ主ホイールに運動学的に関連づけられた追加の偏心ホイールスレーブを備えてもよく、この場合、スレーブホイールが配置される軸がすべて、中心が駆動シャフトに自由に動かせるように固定された同じバランスビームに順次、堅固に固定される;
−デバイスは、各スレーブ軸上に、第1の作動チャンバに対向して固定され、したがって、作動対を形成する、追加の作動チャンバを備えてもよい;
−デバイスは、各スレーブ車軸上に順次配置された追加の作動チャンバまたは1対の作動チャンバを備えてもよい;
−可変容積を有する作動チャンバとして、シリンダ−ピストン対、またはベローズ組立体、または柔軟壁(隔壁)を有する閉チャンバ、または空気圧チャンバ(空気ばね)を使用することができる。
【0017】
したがって、特許請求される構造では、駆動シャフトを介して主モータから放射状の加速が与えられる回転偏心体(ホイール)の遠心力の影響下で発生する機械的振動のエネルギーは、損失を伴って回転エネルギーに変化するのではなく、デバイスの作動ノードに、接続ユニットを介して、可変容積を有するチャンバに直接伝達され、チャンバでは、機械的エネルギーが、さらに変換されることなく、コンシューマが使用する準備ができている、圧縮された媒体のエネルギーに変化する。このような方法で受け取られた、圧縮された媒体のエネルギー容量は、デバイスの効率因子
を著しく増大
させる。
【0018】
主モータ(駆動シャフト)、および可変容積を有する作動チャンバとの間に直接の逆方向の機械的接続がないために、デバイスで消費されるエネルギーは、一様に加速された偏心体の相互作用から遠心力が発生する、事前設定された回転速度を駆動シャフトにより達成するためだけに、すなわち、偏心体の始動慣性およびベアリング内の摩擦力に打ち勝つためだけに費やされる。その結果、デバイスの効率因子は、全体として実質的に増大し、デバイスの効率を増大させる。
【0019】
等しい肩を有するバランスビームは、主ホイールおよびスレーブ偏心ホイールの一定の運動学的連結を保証し、偏心体に提供される負荷の運動を、半径が駆動シャフトおよびスレーブ軸との間の距離に等しい駆動シャフトの回転軸に対する円弧に沿って制限する。バランスビームは、事前設定された運動範囲の両端に等しい前記円弧の方向だけに偏心体の作動力(有用な仕事量)を伝達することができるようにする。すなわち、バランスビームの助けを借りて、対角線上に配置された、可変容積を有するチャンバ内で、有用な仕事量が順次もたらされる。したがって、特許請求されるデバイスでは、偏心体からバランスビームに伝達される作動力が各方向(上/下)で作動している。
【0020】
バランスビームおよび偏心体からなる、提供される運動方式では、偏心体の回転が作動して達成される有用な仕事量は、得られた閉ループシステムの内力を犠牲にしてのみ実現される。さらに、回転する偏心体は、駆動シャフトとの逆方向の運動学的連結を有せず、デバイスのハウジングに接続されないスレーブ軸上で有用な仕事量が達成されるので、この種の運動は、動力をさらに消費する必要がない、支えられていない運動である。
【0021】
バランスビームが存在することにより、デバイスの全体方式は、2つのスレーブ軸上の安定した平衡
スレーブ偏心ホイール、およびさらには可変容積を有する対角線上で平衡したチャンバに応答して、デバイスが動作する任意の現在の瞬間に駆動シャフト軸に対して自己平衡することができるようになる。
【0022】
特許請求されるデバイスでは、負荷の運動が、偏心体の外周に沿って、およびバランスビーム運動(調節可能な位相の運動、180°排除)および可変容積を有する、対角線上で作動するチャンバにより事前に定められた前記円弧に沿って、いくらかの自由度を得たので、デバイスの滑らかな動作がもたらされ、無駄な動きが完全に排除されるようになり、無駄な動きが完全に排除されることにより、次に、デバイスの効率因子が増大する。
【0023】
スレーブ偏心ホイールを提供することができ、かつ内側に負荷が配置される、特許請求される異なる構成の放射状のレールが、(外周に沿った、およびバランスビーム運動による、事前に定められた前記円弧に沿った
スレーブ偏心ホイール運動と共に)ローカルの駆動デバイスの影響下で負荷がレールに沿って放射状に移動することをさらに保証する。
【0024】
さらに、その結果、特許請求される異なる構成の放射状のレールは、回転速度が増大したときに、偏心体の中心位置が、すなわち、回転軸からの距離が動的に変化することを保証し、回転速度が低減したときに、回転軸に接近することを保証する。
【0025】
特許請求される異なる構成の放射状のレールは、主ホイールの回転を変更できない状態で、バランスビームの偏向角を動力学で変更することができるようにし、偏向角は、次に、デバイスの動力、可変容積を有するチャンバ内の可動要素のストローク範囲、およびそれぞれ、作り出された作動媒体の数量指数を滑らかに調節するために、デバイス全体の動作を停止する必要をなくする。特許請求される異なる構成の放射状のレールは、デバイスの効率因子を増大させ、作動環境を改善する。
【0026】
特許請求されるデバイスでは、関係のある平行なスレーブホイール上で同じ主ホイールに運動学的に連結され、かつそれぞれ同じバランスビームに順次堅固に固定されたスレーブホイールをいくつか取り付けることができるので、偏心体が配置されたスレーブ軸の各々にユニットを接続することにより連結された、可変容積を有するチャンバの作動対をいくつか使用することができるようになる。
【0027】
作動チャンバは、次に、後続のあらゆる作動チャンバ内で、作動媒体の圧力および消費が可変のエネルギーを同じデバイス内で発生させることができるようにする。作動チャンバはそれぞれ、デバイスの技術的能力、およびデバイスの効率を増大させる。
【0028】
したがって、デバイスの前記特徴は、本発明の目的を達成するために不可欠であり、十分である。
【0029】
デバイスのバージョンを示す以下のグラフィック画像により、特許請求されるデバイスの動作原理について説明する:
−シャフト
の回転動力伝達機構が、2つの偏心スレーブホイールにそれぞれ関連づけられた2つの主歯車を備える;
−作動ノードが、可変容積を有する2対の作動チャンバを備える(デバイス方式を最も正確に理解するために、チャンバの一方を図示せず)。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】前面のハウジングカバーが取り除かれた、デバイスの概略図(前面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
特許請求されるデバイスは、ハウジング1を備え、駆動シャフト2が、ベアリングに取り付けられる。シャフト2に主ギア3が固定され、主ギア3と共に、2つのスレーブ偏心ギア4.1および4.2がそれぞれ負荷5.1および5.2を有する。ギア4.1および4.2は、バランスビーム7の端部の両側で堅固に固定された、駆動シャフト2に平衡に配置されたそれぞれスレーブ軸6.1および6.2上のベアリングに取り付けられる。バランスビーム7の中心は、シャフト2上のベアリングに自由に動かせるように固定される。スレーブ軸6.1および6.2上に、それぞれ接続ユニット8.1および8.2が取り付けられ、接続ユニット8.1および8.2の各々が、このバージョンでは、接続ユニット8.1および8.2の両端により、それぞれ可変容積9.1および9.2を有するチャンバの一方の可動要素、およびそれぞれ可変容積10.1および10.2を有する反対側に配置されたチャンバの一方の可動要素に接続される。
【0032】
このバージョンでは、デバイスは、追加の類推の主ギア11を備え、主ギア11には、それぞれ接続ユニット8.1および8.2の反対側で、それぞれ駆動シャフト2およびスレーブ軸6.1および6.2に類推的に固定された2つの偏心ギア12.1および12.2が接続される。
【0033】
デバイスシャフトの異なる動作速度でデバイスが動作している間、不要な不平衡振動が発生する可能性を回避するために、可変容積を有する4つのチャンバ(偏心体当たり2つの部屋(camera)を備える技術的解決策が好ましい。
【0034】
特許請求されるデバイスは、以下のように動作する。
【0035】
主動力源、たとえば、電気モータ、内燃機関、風力発電機、水力発電機などの作動力が、駆動シャフト2に供給され、駆動シャフト2は、所定の回転速度まで加速され、主ギア3を駆動する。次に、ギア3は、2つのスレーブ偏心ギア4.1および4.2を駆動し、スレーブ偏心ギア4.1および4.2は、それぞれスレーブ軸6.1および6.2に対して固定されたベアリングで自由に回転する。
【0036】
歯車(主およびスレーブ、この場合、これらのギアすべてが同一直径を有するとき)のギア比1:1が、これらのギアの回転軸に対してこれらのギアが1回転するごとの間に、同等の周期的な空間的場所を偏心体に提供する。ギア比を変更する必要がある場合、
スレーブ偏心ホイールの同期が同等であることを条件として、計算された、避けがたいギア比の(より大きな/より小さな)歪を備え、類推の作動力を伝達するように計算された異なる直径を有するスレーブおよび主の歯車が作られる。
【0037】
負荷5.1および5.2は、回転するとき、慣性の遠心力を受け、遠心力の影響下で、それぞれスレーブ軸6.1および6.2上で偏心体4.1および4.2の力が増大し、バランスビーム7は、その初期位置から外れた往復運動を開始する。
【0038】
遠心力の方向が周期的に変化するために、偏心体4.1および4.2と同期したバランスビーム7は、振動運動を行う。振動振幅が常に与えられ、負荷5.1および5.2の質量中心から最も外れた地点までの距離の2倍に等しく、この距離は、計算により決定される。
【0039】
バランスビームのずれが端点に達成したとき、偏心体4.1および4.2の作動力は、瞬時に伝達される、すなわち、駆動シャフトに対するモーメント値が一定である。負荷の遠心力がバランスビームの方向と最大限一致するとき、偏心体4.1および4.2の方向だけが、バランスビームが端点にずれた所で180°にわたって変化する、すなわち、位相が滑らかに変化し、有用な作動力を両方向に、効果的に取ることができるようになる。
【0040】
運動連鎖「バランスビーム7−スレーブ軸6.1および6.2−接続ユニット8.1および8.2−可変容積を有するチャンバの可動要素9.1、9.2、10.1、10.2」により、バランスビームの任意の方向の振動運動が、可変容積を有するすべてのチャンバの可動要素を駆動する。この場合、バランスビームが時計方向にずれる所で、対角線上に反対側の2つのチャンバ9.1および10.2内の作動媒体圧縮の工程が、およびバランスビームが反時計方向にずれる所で、対角線上に反対側の2つのチャンバ10.1および9.2内の作動媒体の充填工程が、同時に発生する。すなわち、有用な仕事量が、可変容積を有するすべての対のチャンバ内で順次達成されるとき、バランスビーム7の任意の方向の振動運動が作動している。
【0041】
圧縮された作動媒体は、可変容積を有するチャンバの排気弁(図示せず)を通して末端コンシューマに過大に渡される。特許請求されるデバイスの、設定された出力動作パラメータ、および動作の条件(環境条件を含む)に応じて、作動媒体として、液体、ガス、気体を使用してもよい。
【0042】
作動チャンバの排気弁は、レシーバを通して末端コンシューマに接続されてもよく、レシーバでは、圧縮された媒体のエネルギーは、(電気エネルギーとは対照的に)無損失で長期間蓄積され、貯蔵され、必要であれば、たとえば送電線の形をとる追加の輸送路を使用することなく長距離にわたり伝送されることができる。さらに、特許請求されるデバイスの末端コンシューマによる電力消費を増大させる必要がある場合を含み、圧縮された媒体のエネルギーを使用することができる。このことは、公知のデバイスと比較して、特許請求されるデバイスをより効率的にする。
【0043】
特許請求される構造の他の利点が、追加機能を実現する、すなわち、さまざまな処理デバイス、システム、および施設で真空を生み出し、維持し、空気および過熱蒸気ガスの混合物を貯蔵所の中に押し出し、貯蔵所の中に真空を生み出す、特許請求される構造の能力である。さらに、特許請求される構造を、構造的にさらに変形する必要がなく、可変容積を有するチャンバの入力弁および排気弁の機能を交換することで十分である。したがって、入力弁および排気弁の各々が、「逆方向」に動作する。特許請求されるデバイスを使用すれば、媒体を真空にする工程はまた、簡素で経済的になる。デバイスにこのような追加機能が存在することにより、デバイスの技術的能力が拡張され、デバイスが一般的になる。
【0044】
特許請求されるデバイスの動作中に力を分配する方式が、
図6に示されており、
図6では、以下の文字指定を使用する:
X、Y、Z−座標軸;
R−スレーブ偏心ギア4.1(または4.2)が移動する経路の半径、すなわち、駆動シャフト2の回転中心から、スレーブ軸6.1および6.2の各々の回転中心までの距離;
Ω−バランスビームの変動が、Rに等しい半径を有する駆動シャフト2に対して振動運動を達成する角速度;
ω−スレーブ偏心ギアの回転の角速度(負荷5.1および5.2の回転の角振動数);
r−負荷5.1および5.2の質量中心の回転半径;
F
mot−駆動モータから負荷に加えられる力であり、この力の作用の下で、負荷は振動数ωで回転する;
F
c−f−逆の力;
F
c−遠心力;
F
X−遠心力の動径成分;
M
r−負荷抵抗モーメント;
φ−FcおよびFの間の角度。
【0045】
駆動モータが動作する結果として、角速度が駆動シャフト2に伝達される。このとき、シャフトに堅固に固定された主ギア3が、同じ速度で回転する。主ギアおよびスレーブギアの各々のギア比が1:1であるので(図示する例では、主ギアおよびスレーブギアの直径が、互いに等しいと仮定する)、負荷5.1および5.2が固定されたスレーブギアの回転の角速度ω
は駆動シャフト2に伝達される角速度に等しい。偏心体(スレーブギア)の回転により以下の値の遠心力が生み出される:
F
Uc=m・ω
2・r、
ここで:
m−各負荷の質量であ
る;
r−負荷の質量中心までの距離であ
る。
【0046】
遠心力F
cの動径成分F
Xは、対称的に配置された第2の偏心体により生み出される類似の力により平衡しているので、デバイスの動作に影響を及ぼさない。同時に半径rの経路に対する、遠心力F
cの接線(半径Rの経路に対する)および半径方向の成分の瞬時値が、力Fであり、Fは、直線Sに沿って、偏心の軸に加えられ、偏心の軸から、可変容積を有するチャンバに加えられ、以下に等しい:
F=2・m・ω
2・r・cosωt、
ここで:
図2は、負荷の数を示し;
t−回転の時間。
【0047】
(rおよびSに沿った)負荷の動径速度の瞬時値は、以下に等しい:
V=ω・r・cosωt。
【0048】
したがって、Z軸を中心にした主ギアの角回転速度Ωは、角速度ωよりかなり小さく、したがって、無視されてもよい。
【0049】
軸Zに対して力Fにより生み出されるモーメント(イグザート(exert)モーメント)は、以下に等しい:
M=F・R、
ここで、R−軸Zから負荷回転軸までの距離、
【0050】
具体的には、回転運動の場合、容量は以下に等しい:
P=M・ω
b、ここで、ω
b=φ/t、
ここで:
ω
b−バランスビーム回転の角速度;
φ−バランスビームの回転角度であ
る;
t−バランスビームが1回変動する時間であ
る。
【0051】
特許請求されるデバイスでは、偏心体のサイズおよび重量は、バランスビーム7が駆動シャフト2の定格速度で所定の値だけずれて、所定の振幅の振動運動を行うように設計され、接続ユニット8.1および8.2を介して、力Fに等しい偏心体の作動力を、可変容積を有するチャンバに伝達する。その間、可変容積を有するチャンバ内の可動要素は、バランスビーム振動7の所与の振幅に等しい距離にわたって移動する。
【0052】
すなわち、特許請求されるデバイスでは、可変容積を有するチャンバ内で高い(過大な)圧力で圧縮された作動媒体を発生させるために、力Fだけが使用される。したがって、チャンバ内の作動媒体の圧力を増大させるためにデバイスが直接消費する駆動モータエネルギーは、増大しない。
【0053】
したがって、特許請求される技術的解決策により、安価で、環境に優しいエネルギー源、すなわち圧縮された媒体を受け取り、蓄積し、貯蔵し、輸送し(詳細には、密封された容器で)、どんな距離でも運ぶことができるようになる。エネルギー源を作り出す(発生させる)コストは、デバイス全体で消費されるいずれかのエネルギーを節約するために容積を損失することなく、低減される。