(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、従来の排出風の処理装置では、室外機の排熱エアーの風圧を利用し、水道水を含浸した繊維体を透過させることで、排熱エアーを冷却するようにしている。このため、繊維体を透過する排熱エアーは、繊維の流路抵抗により極端に流速を減ずる。排熱エアーの流速が減ずると、水道水の気化が抑制されると共に室外機のファンの負荷が増大する。すなわち、従来の排出風の処理装置では、室外機に負荷がかかり電力消費が増大すると共に、排熱エアーの冷却が効率良く行われない問題があった。
【0005】
本発明は、室外機のファンへの負荷を抑制しつつ、室外機の排熱エアーを効率良く冷却することができる排熱エアー冷却装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の排熱エアー冷却装置は、空気調和機の室外機に併設され、室内機から流下した凝縮水により室外機の排熱エアーを冷却する排熱エアー冷却装置であって、室外機の吹出し口の前方に配設され、含浸した凝縮水の気化熱により排熱エアーを冷却するための板状の冷却体と、
冷却体の上方に配設され、凝縮水を受けて冷却体に導く凝縮水導入部と、を備え、冷却体は、排熱エアーの流れに沿う
水平姿勢に配設さ
れ、凝縮水導入部は、凝縮水を冷却体に導くドレンパンと、ドレンパン上に敷設された吸水パッドと、を有していることを特徴とする。
【0007】
ところで、室内機からの凝縮水は、エバポレーターに結露したものであり、室外機の排熱エアーに比して十分に低温となっている。
この構成によれば、室内機からの凝縮水を冷却体に導いて冷却体に含浸させる一方、室外機の排熱エアーを冷却体に沿うように通過(通気)させると、排熱エアーは、凝縮水との伝熱(熱交換)により冷却されると共に、凝縮水の気化熱により冷却される。したがって、室外機の排熱エアーを効率良く冷却することができると共に、本来、屋外(雨水管)に廃棄されていた凝縮水を排熱エアー冷却のために有効利用することができる。また、冷却体は、排熱エアーの流れに沿った姿勢で配設されているため、空気抵抗が小さく、排熱エアーの流速を大きく減ずることがない。したがって、冷却体への通気により、室外機のファンへの負荷が増大するのを十分に抑制することができる。よって、消費電力を増加させることなく、ヒートアイランド現象の解消に寄与することができる。なお、この排熱エアー冷却装置は、既設の室外機は元より、新設の室外機にも併設可能である。また、冷却体は、排熱エアーの流れに沿う形状であれば、羽根板状は元より、円筒状、正面視渦巻の筒状、正面視格子の筒状等であってもよい。
一方、冷却体を水平姿勢とすることで、導入した凝縮水の無用な液だれが抑制され、凝縮水を冷却体に十分に含浸保持させることができる。また、室外機の前方において、複数枚の冷却体をスペース効率良く設置することができる。なお、冷却体は、完全な水平姿勢でなくとも、保水機能を発揮できる限り、ほぼ水平姿勢であればよい。
加えて、ドレンパンを設けることで、室内機から流下した凝縮水をドレンパン上に敷設された吸水パッドにより一時貯留することができる。
【0008】
この場合、冷却体
は、相互に間隔を存して配設された複数のもので構成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、排熱エアーと冷却体との接触面積が増え、排熱エアーの冷却効率を向上させることができる。また、相互に間隔を存して冷却体を配設しているため通気スペースを十分に確保することができる。これにより空気抵抗を大幅には増大させることなく、複数の冷却体を設置することでき
る。
【0010】
この場合、各冷却体は、ネット状のベース体と、ベース体に支持され、凝縮水を含浸する吸収体と、を有していることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、単純な構造で冷却体を構成することができる。また、冷却体全体に対し、吸収体の体積比率を高めることができ、凝縮水を十分に含浸させることができる。さらに、吸収体の表裏両面から凝縮水を気化させることができる。さらにまた、ネット状のベース体により、冷却体を排熱エアーの流れ等に合わせて簡単に微小変形させることができる。冷却体に凝縮水を含浸させると、重力により、吸収体のベース体から外れた部分が窪み、飽和状態になった凝縮水を、下位の冷却体に円滑に流下させることができる。なお、吸収体は、織布、不織布、スポンジ等であることが好ましい。
【0014】
また、吸水パッドには、ドレンパンからはみ出すと共に、最上位の冷却体に凝縮水を液だれさせる滴下部が、形成されていることが好ましい。
【0015】
さらに、滴下部は、複数の突起部位で構成されていることが好ましい。
【0016】
これらの構成によれ
ば、冷却体に対し、凝縮水を平面内において任意の位置に滴下することができる。したがって、滴下部を複数、分散して配置すれば、冷却体に対し凝縮水を均一に滴下することができる。
【0017】
また、各冷却体は、中心部に向って下り傾斜の導水勾配を有していることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、吸収体が吸収しきれなかった凝縮水(飽和凝縮水)は、導入勾配に沿って冷却体の中心部に集まり、この中心部から下位の冷却体に滴下される。したがって、自然流下により凝縮水を、複数枚の冷却体に円滑に且つ無駄なく供給することができる。
【0019】
同様に、上下に隣接する2つの冷却体において、下側の冷却体に対し上側の冷却体が、吹出し口側後方にセットバックして配設され、各冷却体は前下がりの導水勾配を有していることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、複数枚の冷却体が階段状に配設されることになるため、吸収体により吸収しきれなかった凝縮水を、勾配に従って、前端から下位の冷却体に円滑に滴下、供給することができる。また、上位の冷却体からの縁から滴下する凝縮水は、排熱エアーの風圧で斜め前方に滴下することとなるが、階段状に形成されていれば、凝縮水を下位の冷却体で確実に受けることができる。
【0021】
一方、冷却体を支持する支持フレームを、更に備え、支持フレームは、室外機に掛け止めされる掛止め部を有していることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、支持フレームにより、装置全体をユニット化することができる。また、掛止め部により、装置全体を室外機に固定し、その前方に安定に設置することができる。
【0023】
また、冷却体の外側に配設され、排熱エアーを前方にガイドするガイド板を、更に備えることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、ガイド板により、排熱エアーの流れをガイドすることで、冷却体に対し排熱エアーを効率良く通気させることができる。これにより、排気エアーを効率良く冷却することができる。また、排熱エアーの冷却に際し、風の影響等を排除することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る排熱エアー冷却装置について説明をする。この排熱エアー冷却装置は、空気調和機(ルームエアコン)の室外機に併設され、室内機から流下した凝縮水により室外機から排出される排熱エアーを冷却するものである。夏季の冷房運転時に、室外機の排熱エアーを冷却することにより、大気中に放出される排熱エアーの熱量が抑制され、ヒートアイランド現象が緩和される。以下、排熱エアー冷却装置について、ルームエアコンの室外機に設置した場合について説明するが、その前に、ルームエアコンにつき、冷凍サイクルを加味して簡単に説明する。
*「冷凍サイクル」は、熱力学の用語です。
【0029】
図1に示すように、ルームエアコン100は、いわゆるヒートポンプであり、室内機101により室内のエアーから熱を吸収し(吸熱)、室外機102によりこの熱を大気中に排熱する。この動作を、熱を運ぶ冷媒を介して連続的に行うことで、冷房運転が行われる。具体的には、室外機102から室内機101に供給された低温・高圧の液化した冷媒は、室内機101のエキスパンションバルブ104により膨張気化され、更に低温の冷媒ガスとなってエバポレーター105に供給される。エバポレーター105には、室内機ファン106により室内エアーが送風(通気)され、エバポレーター105により室内エアーと冷媒ガスとの間で熱交換が行われる。この熱交換により室内エアーが冷却される(室内冷房)一方、昇温した冷媒ガスは室内機101から室外機102に送られる。一方、エバポレーター105の表面には、室内エアーが冷やされる(凝縮)ことで結露が生じ、この凝縮水は、エバポレーター105の下方に設けたパン107で受けられ、凝縮水配管108(フレキシブルホース)を介して、室外に排水される。
【0030】
室外機102では、冷媒ガスがコンプレッサー110により圧縮され、高温・高圧の液体(冷媒)となってコンデンサー111に送られる。コンデンサー111には、室外機ファン112により外気エアーが送風(通気)され、コンデンサー111により外気エアーと冷媒との間で熱交換が行われる。この熱交換により降温し、低温・高圧となった冷媒は、レシーバー113を介して室内機101に送られる。また、熱交換により昇温した外気エアーは、排熱エアーとして大気中に放出される。排熱エアーにより放出される熱(排熱)は、ヒートアイランド現象の原因の1つとされている。そこで、本実施形態では、排熱エアー冷却装置1により(
図2参照)、凝縮水配管108から排水される凝縮水を利用して排熱エアーを冷却し、大気中に放出される熱量を抑えるようにしている。
【0031】
図2は、集合住宅の居室S1に設置したルームエアコン100を表している。居室S1には、室内機101が設置され、居室S1に面するベランダS2には、室外機102が設置されている。また、室外機102には、排熱エアー冷却装置1が添設されている。室内機101と室外機102との間には、外壁S3を貫通して冷媒往管114および冷媒返管115が接続され、また室内機101から外壁S3を貫通して配管された凝縮水配管108が、排熱エアー冷却装置1に接続されている。室外機102の前面には、内蔵する室外機ファン112の排熱エアーを送風する吹出し口116が設けられ、この吹出し口116に臨むように排熱エアー冷却装置1が設置されている。
【0032】
そして、室内機101により居室S1の室内エアーが冷やされ、居室S1から奪った熱は室外機102に運ばれる。室外機102に運ばれた熱は、排熱エアー冷却装置1により冷やされて大気中に放熱される。一方、ベランダS2は、隣家との間の仕切り壁S4と手摺壁S5とで囲まれており、排熱エアー冷却装置1で冷やされた排熱エアーは、この半開放のベランダS2に放出されることになる。
【0033】
図2および
図3に示すように、排熱エアー冷却装置1は、上端部を室外機102に掛け止めされ下端部を床面に設置した支持フレーム2と、吹出し口116の前方に設置され、支持フレーム2に支持された複数枚の冷却体3と、室外機102の上側に配設され、支持フレーム2に支持された凝縮水導入部4と、支持フレーム2の両サイドに設けられ、排熱エアーを前方にガイドする一対のガイド板5と、を備えている。凝縮水導入部4には、凝縮水配管108が接続され、凝縮水配管108を介して室内機101から流下した凝縮水は、凝縮水導入部4から複数枚の冷却体3に供給される。
【0034】
凝縮水導入部4は、室外機102の上面に載置するように設けられており、凝縮水配管108(フレキシブルホース)から凝縮水を受けるドレンパン11と、ドレンパン11上に敷設された吸水パッド12と、を有している。ドレンパン11は、スチールやステンレス、或いは樹脂等で構成され、底板13の四周に立上げ部14を有して矩形皿状に形成されている。前側の立上げ部14には、底面と面一となるように、その中央に広く切欠き部15が設けられている。また、後側の立上げ部14には、その中央に配管支持片16が上向きに突設されており、この配管支持片16に、凝縮水配管108の下流端がバンド固定されている。詳細は後述するが、ドレンパン11は支持フレーム2の一部を兼ねており、ドレンパン11の前部下面には、支持フレーム2の前掛止め部34が取り付けられ、後端には、支持フレーム2の後掛止め部35が取り付けられている(
図3(b)参照)。
【0035】
吸水パッド12は、吸水性の高い織布、不織布、スポンジ等で構成され、ドレンパン11の底面全域に敷設されるパッド本体17と、ドレンパン11の切欠き部15からはみ出して下方に垂れ下がる垂下部18と、で一体に形成されている。垂下部18の下端部は鋸刃状に形成され、冷却体3に凝縮水を液だれさせる複数の滴下部18aが形成されている。吸水パッド12上に流下した凝縮水は、濡れ広がるようにしてこれに吸収され、吸水パッド12に一時貯留される。吸水パッド12に一時貯留された凝縮水は、やがて飽和状態になり、複数の滴下部18aから冷却体3上に滴下する。
【0036】
各冷却体3は羽根板状に形成されており、複数枚(実施形態のものは3枚)の冷却体3は、室外機102の吹出し口116に面して上下方向に等間隔に配設されている(
図2参照)。そして、各冷却体3は、室外機102から送風される排熱エアーの流れに沿うように、水平姿勢で配設されている。すなわち、複数枚の冷却体3は、吹出し口116の上段、中段および下段に位置するように、それぞれ後部の両サイドで支持フレーム2に水平に取り付けられている。
【0037】
図4に示すように、各冷却体3は、ネット状のベース体21と、ベース体21に支持された吸収体22とを有している。ベース体21は、スチールやステンレスの棒材25を格子状に組んだ(溶接)ベース体本体24と、スチールやステンレスのチャンネル材で構成され、ベース体本体24の両サイドに設けた一対の取付板26と、を有している。ベース体本体24と一対の取付板26とは、溶接等で一体化されており、各冷却体3は、一対の取付板26の部分で支持フレーム2に取り付けられている(実施形態のものは、ねじ止め)。また、本実施形態のベース体21は、側面視逆「へ」字状に僅かに屈曲形成され、吸収体22もこれに倣って僅かに屈曲変形している。これにより、吸収体22により吸収しきれなかった凝縮水は、僅かな導水勾配に従って屈曲部分に流れ、ここから直下の冷却体3上に流下する。
【0038】
なお、ベース体本体24の各碁盤の目となる部分で、含浸した凝縮水の重さで吸収体22が凹状に変形する場合には、この部分から凝縮水の液だれが期待できるため、ベース体21をあえて屈曲させなくてもよい。また、ベース体本体24は、各種の金網やパンチングメタルで構成してもよい。但し、この場合には、一対の取付板26に代えて、金網等を支持する枠状の取付部材とすることが、好ましい。さらに、取付板26を省略し、ベース体本体24を支持フレーム2に直接溶接するようにしてもよい。
【0039】
吸収体22は、上記の吸水パッド12同様に、吸水性の高い織布、不織布、スポンジ等で構成されている。吸収体22は、ベース体21上に敷設する構成であってもよいし、ベース体21を包む構成であってもよい。いずれかにあっても、ベース体21に吸収体22の折返し部分を、挟持具等で固定しておくことが好ましい。また、ベース体本体24を金網とし、これを表裏の吸収体22(例えば不織布)で、サンドイッチして接着し、一体化したものであってもよい。
【0040】
図2および
図3に示すように、支持フレーム2は、上記のドレンパン11を含み、室外機102の上部に掛け止めされる上部フレーム部31(掛止め部)と、上部フレーム部31の前端部から床面まで鉛直に延び、複数枚の冷却体3を支持する主フレーム部32と、を備えている。上部フレーム部31は、ドレンパン11と共に室外機102の上面に載置され、この状態で前後左右に不動となるように、室外機102の上部に掛け止めされている。主フレーム部32は、上部フレーム部31と直角を為すように、上端部で上部フレーム部31の前端部に連結され、且つ下端部でベランダS2の床面に着座している。
【0041】
ドレンパン11は、支持フレーム2(上部フレーム部31)の一部を兼ねており、上部フレーム部31は、このドレンパン11と、ドレンパン11の前部下面に固定した左右一対の前掛止め部34と、ドレンパン11の後端に固定した左右一対の後掛止め部35と、を有している。各前掛止め部34は、「L」字状に形成され、溶接等により、ドレンパン11の底板13に固定されている。また、各後掛止め部35は、「L」字状に形成された第1掛止め片36と、逆「L」字状に形成された第2掛止め片37と、第1掛止め片36および第2掛止め片37を連結する調整ねじ部38と、を有している。
【0042】
第1掛止め片36は、前後方向に延在する延設片の部分に、調整ねじ部38の雄ねじが嵌合する長孔45(図示省略)が形成され、上向き片の部分で、ドレンパン11の後側の立上げ部14に溶接等により固定されている。第2掛止め片37は、前後方向に延在する延設片の部分に調整ねじ部(の雄ねじ)38が固定され、下向き片の部分で、室外機102の後角部に掛け止めされている。そして、第1掛止め片36と第2掛止め片37とは、相互の延設片の部分で前後方向にオーバーラップして配設され、このオーバーラップ寸法が、室外機102の前後の厚みに対応するように、調整ねじ部38により調整されるようになっている。
【0043】
本実施形態では、上部フレーム部31から室外機102を保護するためのプロテクターとなる断面「L」字のゴムパッド39が用意されており、このゴムパッド39を、室外機102の前後の角部にそれぞれ一対ずつ宛がい、その上に一対の前掛止め部34および一対の後掛止め部35がそれぞれ位置するように、ドレンパン11をセットする。ドレンパン11をセットしたら、一対の前掛止め部34が室外機102の前角部に当接するように、ドレンパン11を後方にずらし、続いて各後掛止め部35の第2掛止め片37を引き寄せて、一対の前掛止め部34と一対の第2掛止め片37とにより、室外機102の上端部を前後から挟み込むようにする。ここで、調整ねじ部38(実施形態では、蝶ナット等の雌ねじ)を締めつけ、前掛止め部34と第2掛止め片37とを連結固定し、上部フレーム部31(ドレンパン11を含む)を室外機102の上端部に不動となるように掛止め固定する。
【0044】
一方、主フレーム部32は、複数の冷却体3が取り付けられる左右一対の冷却体フレーム部41と、各冷却体フレーム部41の下部に対し、上下方向にオーバーラップ状態で添設した左右一対の自立フレーム部42と、各冷却体フレーム部41に対し各自立フレーム部42を高さ調整可能に連結する左右一対の連結ねじ部43と、を有している。一対の冷却体フレーム部41の離間寸法は、冷却体3の幅(左右方向の寸法)に対応しており、各冷却体3は、左右一対の冷却体フレーム部41に挟み込まれた状態で、一対の冷却体フレーム部41にねじ止め等により、固定されている。
【0045】
各冷却体フレーム部41は、例えばスチールやステンレスのLアングルで構成され、その上端部が上部フレーム部31(ドレンパン11)の前端部に固定されている。より具体的には、各冷却体フレーム部41の上端部は、ドレンパン11の立上げ部14(側板部)の前端部に外側からねじ止め、或いは溶接等により固定されている。また、各冷却体フレーム部41の下部には、上下方向に延在する長孔45が形成されている。そして、この長孔45には、連結ねじ部43の雄ねじが挿入されるようになっている。
【0046】
同様に、各自立フレーム部42は、スチールやステンレスのLアングルで構成され、冷却体フレーム部41の内側に添設されている。各自立フレーム部42の上部には、連結ねじ部43(の雄ねじ)が固定され、下端部には、「L」字状の着床部46が固定されている。連結ねじ部43は、溶接等で自立フレーム部42に固定された雄ねじと、雄ねじに螺合する蝶ナット等の雌ねじとから成り、自立フレーム部42に固定した雄ねじを冷却体フレーム部41の長孔45に挿通し、これに蝶ナットを螺合している。
【0047】
したがって、蝶ナットを緩め、冷却体フレーム部41に対し自立フレーム部42を上下にスライドさせて、主フレーム部32を室外機102の高さに合わせて高さを調整する。続いて、蝶ナットを締め付けることで、主フレーム部32の高さ調整が完了する。なお、主フレーム部32は、Lアングルの他、パイプ(角パイプ或いは丸パイプ)等で構成することも可能である。また、着床部46に敷きゴム等の滑り止めを設けてもよい。また、冷却体フレーム部41を逆「U」状に形成し(自立フレーム部42も追加)、冷却体3を片側2か所で支持するようにしてもよい。
【0048】
一対のガイド板5は、吹出し口116から吹き出される排熱エアーを前方にガイドするものであり、複数の冷却体3の左右外側に配設されている。また、各ガイド板5は、アクリル等の矩形の樹脂板で構成され、冷却体フレーム部41にねじ止め等で固定されている。この状態で、各ガイド板5は、室外機102の前面近傍位置から冷却体3を越えた前方位置までの幅と、冷却体フレーム部41に略対応する高さとを有している。この場合、各ガイド板5は、冷却体フレーム部41の外側に固定してもよいし、冷却体フレーム部41と複数枚の冷却体3の側端との間に挟み込むようにして、冷却体フレーム部41に固定してもよい。また、冷却体3とガイド板5とを、共締めで冷却体フレーム部41に固定することが好ましい。
【0049】
このように、一対のガイド板5を、複数枚の冷却体3の外側に配置することにより、排熱エアーを前方に円滑に導き得るようになっている。したがって、風等の影響が排除され、排熱エアーが各冷却体3の表面(および裏面)を円滑に吹き抜けるため、含浸している凝縮水の気化を促進することができる。
【0050】
次に、
図1、
図2および
図3を参照して、ルームエアコン100の冷房運転と、これに伴う排熱エアー冷却装置1の冷却機能とについて説明をする。
ルームエアコン100の運転を開始すると、先ず室外機102が駆動し、室外機102において低温・高圧の冷媒が準備される。続いて、室内機101が駆動し、ルームエアコン100の冷凍サイクルが起動する。室内機101では、エバポレーター105に結露が生じ、凝縮水(結露水)は、凝縮水配管108を介して、凝縮水導入部4(ドレンパン11)に流下する。ドレンパン11上に流下した凝縮水は、吸水パッド12に吸収され、やがて液だれする形で滴下部18aから最上位の冷却体3上に流下する。最上位の冷却体3では、流下した凝縮水が、濡れ広がるようにして全域に行き渡り、やがて飽和して、屈曲部分や碁盤の目部分から、直下の冷却体3上に流下する。このようにして、凝縮水は、順次複数枚の冷却体3に行き渡り、それぞれ吸収体22に含浸される。
【0051】
一方、室外機102の駆動に伴って、吹出し口116から排熱エアーの送風が行われる。排熱エアーは、各冷却体3の表裏をなぞるように前方に吹き抜け、各冷却体3に含浸された凝縮水を気化させる。すなわち、各冷却体3への凝縮水の供給と、各冷却体3における凝縮水を気化とが連続して行われ、複数枚の冷却体3に沿って吹き抜ける排熱エアーは、凝縮水との間の熱交換や凝縮水の気化熱により冷却される。このようにして、冷却された排熱エアーは、大気中に放出される。実施形態のものは、ベランダS2に放出されるため、その一部は、室外機102の吸込み口(図示省略)から吸い込まれる。
【0052】
次に、
図5を参照して、排熱エアー冷却装置1を用いた場合の排熱エアー温度および風速等の測定結果について説明する。この測定では、室内設定温度を20℃とし、室外機102の吸込み口に流入する直前位置での外気エアーAの温度と、室外機102の吹出し口116から吹き出された直後位置での冷却前排熱エアーBの温度と、冷却体3を通過した直後位置での冷却後排熱エアーCの温度と、をそれぞれ経時的に測定した(
図5(a))。また、冷却体3を通過した直後位置において、排熱エアーの風速および風量を、排熱エアー冷却装置1がある場合とない場合とでそれぞれ測定した(
図5(b))。
【0053】
図5(a)に示すように、外気エアーAは、外気温を反映したものであり、室外機102の運転開始から120分から300分の間の気温変動の少ない時間帯において、32℃強であった。また、冷却前排熱エアーBは、120分から300分の間の時間帯において、39℃弱であった。一方、冷却後排熱エアーCは、120分から300分の間の時間帯において、35℃弱であった。もっとも、運転開始から60分までの時間帯では、冷却前排熱エアーBと冷却後排熱エアーCとの温度差は、あまり認められないことから、全体として排熱エアーが3℃〜4℃低下(冷却)するものと推定される。
【0054】
図5(b)は、排熱エアー冷却装置1の無い「設置前」と、排熱エアー冷却装置1の有る「設置後」と、でそれぞれ風速と風量を30分間隔で7回測定したものである。測定結果の最大値と最小値とを削除して平均化すると、「設置前」では、風速:2.62m/min、風量:0.694m
3/minであった。これに対し、「設置後」では、風速:2.51m/min、風量:0.665m
3/minであった。結果、風速の減少は、0.11m/minであり、風量の減少は、0.029m
3/minであった。すなわち、風量に約4.2%のロスが生じたが、冷却体3による流路抵抗が極めて小さいことが確認された。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、室外機102の排熱エアーを、複数枚の冷却体3に沿うように通過(通気)させるようにしているため、排熱エアーを、凝縮水との伝熱(熱交換)により冷却され得ると共に、凝縮水の気化熱により効率良く冷却することができる。また、室内機101の凝縮水を冷却体3に導くようにしているため、別途給水設備等を必要とすることなく、排熱エアーを冷却することができる。すなわち、凝縮水を有効利用することができる。また、冷却体3は、排熱エアーの流れに沿った姿勢で配設されているため、空気抵抗が小さく、室外機ファン112への負荷を軽減することができる。したがって、消費電力を増加させることなく、ヒートアイランド現象の解消に寄与することができる。
【0056】
次に、
図6を参照して、排熱エアー冷却装置1の第2実施形態につき、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、第1実施形態と異なり、複数の冷却体3が階段状に配設されている。すなわち、上下に隣接する2つの冷却体3において、下側の冷却体3に対し上側の冷却体3が吹出し口116側後方にセットバックして配設されている。また、各冷却体3は、幾分前下がりの導入勾配を有している。さらに、階段状の複数の冷却体3を適切に支持すべく、主フレーム部32が斜めに傾斜するように配設されている。
【0057】
このような構成では、最上位の冷却体3(吸収体22)において、凝縮水が飽和状態になると、凝縮水は、導水勾配に沿って冷却体3の前端から直下の冷却体3上に流下する。またその際、排熱エアーの風圧により、凝縮水が前方に流されても、直下の冷却体3で受けることになる。このようにして、全ての冷却体3に凝縮水が供給される。したがって、第1実施形態と同様に、排熱エアーとの間の熱交換や凝縮水の気化熱により、排熱エアーを効率良く冷却することができる。
【0058】
次に、
図7を参照して、排熱エアー冷却装置1の第3実施形態につき、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。第3実施形態の排熱エアー冷却装置1は、室外機102に組み込んだものである。この排熱エアー冷却装置1では、室外機102の吹出し口116に位置して、直径の異なる円筒状の複数の冷却体3を備えている。複数の冷却体3は、吹出し口116と同心上にされた大径の冷却体3、中径の冷却体3および小径の冷却体3から成り、それぞれ径方向において等間隔に(3重に)配設されている。この場合、最も大径の冷却体3が、吹出し口116より小径に形成され、各冷却体3において、その内周面および外周面に、排熱エアーが吹き吹けるようになっている。なお、冷却体3の数は任意である。
【0059】
この場合も、各冷却体3は、ネット状で円筒形状のベース体21と、ベース体21に支持された吸収体22と、を有している。吸収体22は、例えば内周側吸収体と外周側吸収体とから成り(図示省略)、ベース体21を挟み込むにしてこれに支持されている。この場合、面ファスナー等により、内周側吸収体と外周側吸収体とを貼り合わせることが好ましい。
【0060】
このように構成された複数の冷却体3は、室外機102側において、十字状のフレーム51に片持ちでねじ止め或いは溶接により取り付けられている。そして、このフレーム51が、室外機102の前面パネル102aに内側から固定されている。また、大径の冷却体3の外側には、吹出し口116と同心上に、円筒状のガイド板5が設けられている。ガイド板5は、吹出し口116より大径に形成され、複数の冷却体3の前方位置まで延在している。そして、ガイド板5は、固定具等により、室外機102の前面パネル102aに固定されている。なお、フレーム51を、前面パネル102aの外側に固定するようにしてもよい。かかる場合には、ガイド板5もフレーム51に固定することが好ましい。
【0061】
凝縮水導入部4は、上流端を凝縮水配管108に接続して分配パイプ53と、各冷却体3の頂部に添設した3本の散水パイプ54と、を有している。分配パイプ53は、室外機102の内部に配管されており、下流端において3分岐され、3本の散水パイプ54に接続されている。各散水パイプ54は、フレーム51を貫通し、各冷却体3の頂部に沿って前方に延在しており、その周面には、複数の小穴が分散して形成されている。凝縮水配管108から流下した凝縮水は、分配パイプ53を介して、3本の散水パイプ54に流れ、各冷却体3の吸収体22に吸収される。
【0062】
この場合、3つの冷却体3は径が異なるため、凝縮水の吸収量も異なることとなる。このため、分配パイプ53において、3本の散水パイプ54への供給流量を調整することが好ましい。しかし、流量が最も過剰となる小径の冷却体3では、液だれした分が中径の冷却体3に移動し、中径の冷却体3の液だれした分は、大径の冷却体3に移動することとなり、流量調整を行わなくても、3つの冷却体3に対し、凝縮水を十分に行き渡らせることができる。このように、第3実施形態においても、排熱エアーとの間の熱交換や凝縮水の気化熱により、排熱エアーを効率良く冷却することができる。なお、複数の冷却体3の一部或いは全部を、室外機102に内蔵する形態としてもよい。