特許第5974230号(P5974230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974230
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】磁気スタンド
(51)【国際特許分類】
   B03C 1/00 20060101AFI20160809BHJP
   B03C 1/02 20060101ALI20160809BHJP
   C12M 1/42 20060101ALI20160809BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20160809BHJP
【FI】
   B03C1/00 A
   B03C1/02 Z
   C12M1/42
   !C12M1/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-156050(P2012-156050)
(22)【出願日】2012年7月12日
(65)【公開番号】特開2014-18692(P2014-18692A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊行
【審査官】 安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−067858(JP,A)
【文献】 特開2000−275256(JP,A)
【文献】 特開2001−327874(JP,A)
【文献】 特表平06−510233(JP,A)
【文献】 国際公開第1990/014891(WO,A1)
【文献】 米国特許第6776174(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0198293(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第3102029(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 1/00
B03C 1/02
C12M 1/42
C12M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(11)を挿入するための保持孔(6)を有すると共に金属よりなる基台(1)と、前記基台(1)に設けられ前記容器(11)の下部に対応して位置し永久磁石又は電磁石からなる磁気手段(3A)と、前記基台(1)の下部に設けられ前記容器(11)の下部を位置決めするための位置決め用凹部(51)と、よりなり、
前記磁気手段(3A)の磁石先端部(3Aa)が前記容器(11)のテーパ部(31)に密着しており、前記磁気手段(3A)は長手方向に着磁している構成の磁気スタンドにおいて、
前記基台(1)に設けられ前記磁気手段(3A)の上段に位置するプランジャ用孔(25)と、前記プランジャ用孔(25)内に設けられ前記容器(11)の側部を付勢するためのプランジャ(12)とを設けたことを特徴とする磁気スタンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気スタンドに関し、特に、基台を金属で形成し、磁気手段の先端部を容器のテーパ部に密着させることにより、容器の冷却及び磁性微粒子の迅速な回収を行うことができるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁性微粒子を担体として用いて化学物質、核酸、抗体、タンパク質などを固定化し、それに特異的に結合するタンパク質、核酸、細胞などの生体物質を溶液中から磁気で分離する方法が用いられている。
この生体物質が結合した磁性微粒子を溶液から分離するために、マイクロチューブや試験管などの容器を配置できる永久磁石を備えたスタンドが用いられている。
特許文献1に記載の構成(図示せず)は、基台に試験管を挿入する複数の半円筒形状の開口溝を設けてこの開口溝に対して垂直に磁石を配置した磁石スタンドである。この基台の材質は清潔に保ちやすく加工性がよいテフロン(登録商標)樹脂が良いとしている。
【0003】
また、図4から図9で示す特許文献2の磁気スタンドは、半円筒形もしくは半円錐形の溝を有する背板、該溝の背面に平行に埋設された永久磁石、および該背板の下部に垂直に配設された底板を備えた磁気スタンドであって、該背板の前面に該溝を挟み込むように、かつ前方に膨らむように横軸方向に配位された向き合った弾性材料よりなる弓状のアームを備えたことを特徴とする磁気スタンドである。このアームと背板は一体成形と加工性の点からナイロン樹脂が良いとしている。
【0004】
すなわち、図4から図9の前述の特許文献2の磁気スタンドの場合、5個のサンプル対応型の磁気スタンドを図示するものである。図4および図5に示すように、背板1に半円筒状溝2が設けられ、その背部に平行になるように磁石埋設用溝3が形成され、底板4には試験管やマイクロチューブの容器の底を固定可能とするための容器固定用孔6を有するように構成されている。
【0005】
次に、上記のような磁気スタンド10をナイロン樹脂を材料として、同一金型で一体成形を行った。成形後に板状のネオジウム磁石3Aを上部より埋め込み、上部を接着剤を流し込み固定した。アーム5は、溝3とアーム5により形成される楕円の短径もしくは円の直径と使用する試験管などの外径とほぼ同一もしくは若干大きめに設計した。アーム5先端の突出部7は容器の外径よりの若干内側にくるように設計され、固定する容器と点で接するように設計した。
【0006】
特に、図6から図8は考えられる好ましいアーム5の形状を示したものである。アーム5の形状は、固定すべきものの形状や大きさにより適宜選択される。図6図7のアーム5先端の突出部は、上述したように、固定する容器の外径が多少変化した場合にも押え力をほぼ一定するためのものである。さらに、強く固定するような場合は、図8のような平面の構造をしたものが適する。このような場合、アーム5の内径は容器の外径より若干小さくなるように設計している。
【0007】
また、図示していない前述の特許文献3の場合、容器を上方から挿通する挿通孔が形成された上板と、前記上板の挿通孔に対応して、前記容器の底部を載置する載置用凹部が形成され、前記上板と一定間隔離間して対峙するように配置された底板と、前記上板と底板を離間させる一対の対峙して配置された側板と、前記上板と底板との間に立設状態で配置された磁石部材を備えた磁気板とを備え、前記側板の一方にスリットが形成され、このスリットを介して、磁気板が上板と底板との間に着脱自在に装着されている磁気スタンドであり、さらに、これらの上板、底板、側板、磁石板の材質は一体成形できる樹脂が好適だとして採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第90/14891号公報
【特許文献2】特許第4,214,253号公報
【特許文献3】特許第4,089,210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の磁気スタンドは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
一般に、生体物質を生理活性が保たれたまま分離させるために、生体物質が溶解している溶液を10℃以下に保った状態で操作する必要があり、磁気スタンドを氷上に置いて使用する必要がある。
しかし、従来の磁気スタンドは樹脂でできているために、氷上に置いても溶液は10℃以下に冷却できず、生理活性を保ったまま操作を行うことに注意が必要であった。
また、従来の半円筒形の溝に容器を設置する磁気スタンドや磁気板が着脱自在な磁気スタンドでは、容器の形状によっては、容器と磁気スタンドが密着しないために溶液が冷却することができず、また、容器と磁石が離れているので磁性微粒子の回収に時間がかかっていた。特に、図9で示す比較例の場合、容器11のテーパ部31と磁気手段3Aの端面との間に隙間Gが発生し、磁力が十分に発揮されていなかった。
そこで本発明は、氷上において使用した際に容器内の溶液が十分に冷却でき、かつ溶液中の磁性微粒子を迅速に分離できる磁気スタンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による磁気スタンドは、容器を挿入するための保持孔を有すると共に金属よりなる基台と、前記基台に設けられ前記容器の下部に対応して位置し永久磁石又は電磁石からなる磁気手段と、前記基台の下部に設けられ前記容器の下部を位置決めするための位置決め用凹部と、よりなり、前記磁気手段の磁石先端部が前記容器のテーパ部に密着しており、前記磁気手段は長手方向に着磁している構成において、また、前記基台に設けられ前記磁気手段の上段に位置するプランジャ用孔と、前記プランジャ用孔内に設けられ前記容器の側部を付勢するためのプランジャとを設けた構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明による磁気スタンドは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、容器を挿入するための複数の保持孔を有すると共に金属よりなる基台と、前記基台に設けられ前記容器の下部に対応して位置し永久磁石又は電磁石からなる磁気手段と、前記基台の下部に設けられ前記容器の下部を位置決めするための位置決め用凹部と、前記基台に設けられ前記磁気手段の上段に位置するプランジャ用孔と、前記プランジャ用孔内に設けられ前記容器の側部を付勢するためのプランジャとよりなり、前記磁気手段の磁石先端部が前記容器のテーパ部に密着していることにより、金属の基台が容器に接触して密着するため、室温が高い場合でも基台を氷上に置くことで容器中の溶液を2〜8℃に冷却保持することができ、生理活性を保ったまま実験操作を行うことができる。
さらに、前記磁気手段は長手方向に着磁されていると共に、前記磁気手段の磁気先端部が前記容器のテーパ部に密着していることにより、溶液中に分散している生体物質が結合した磁性微粒子を迅速に回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による磁気スタンドを示す一部断面つき平面図である。
図2図1の一部断面つきの正面図である。
図3図2の側面の断面図である。
図4】従来の磁気スタンドを示す平面図である。
図5図4の要部の拡大断面図である。
図6図4のアームの他の形態を示す平面図である。
図7図4のアームの他の形態を示す平面図である。
図8図4のアームの他の形態を示す平面図である。
図9図5に容器を設置した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、基台を金属で形成し、磁気手段を容器に密着させることにより、容器の冷却及び磁性粒子の迅速な回収を行うことができる磁気スタンドを提供することを目的とする。
【実施例】
【0014】
以下、図面と共に本発明による磁気スタンドの好適な実施の形態について説明する。
図1から図3において符号1で示されるものは周知の熱伝導性の高い金属、例えば、アルミニウム、銅、鉄、チタン、ニッケル、またはこれらの合金等の何れかからなる基台であり、この基台1の上板部20には、所定間隔でかつ直線状に並設された複数の保持孔6が形成されている。
【0015】
前記基台1の前記上板部20と下板部21との間には正面側が開放された窪み部からなる凹形部22が形成され、この凹形部22の背面22aには前記各保持孔6に対応して断面半円状をなす溝2が各々形成されている。
前記各溝2の底部には前記下板部21が位置し、前記保持孔6と溝2は互いに連通し、かつ、前記下板部21の上面50が凹形部22及び溝2の底部となる。
【0016】
前記上板部20には、その保持孔6及び凹形部22に挿入され溶液が内蔵された容器11が設置され、この容器11の軸方向23に対して直交する方向の孔方向24に沿ってプランジャ用孔25が形成されている。
前記プランジャ用孔25内に挿入又は螺入されたプランジャ12は前記軸方向23に対しても直交する方向に配設され、このプランジャ12の先端12aは前記容器11の側部を付勢した状態で当接され、容器11の保持孔6内における位置決めがなされるように構成されている。
【0017】
前記基台1の前記凹形部22の背面22aの各溝2の裏側には、前記プランジャ用孔25の下方でかつ孔方向24と非平行な方向に磁石手段用孔26が形成され、この磁石手段用孔26内には棒状をなすと共に長手方向Aに沿って長手状の磁気手段4が挿入されて配設されている。
尚、前記磁石手段用孔26が基台1の水平面に対して傾斜しているため、この磁石手段用孔26に挿入された磁気手段3Aの磁石先端部3Aaは前記容器11の下部のテーパ部31に接触して密着している。
前記容器11の下部すなわち先端11aは、前記下板部21の上面50に形成された位置決め用凹部51に入り込む状態で位置決めされている。
【0018】
前記凹形部22の背面22aに形成された前記各溝2の内面2aは前記磁気手段用孔26と連通しており、前記溝2の内面2aは、図3の断面図で示されるように、前記テーパ部31と同様に互いに一致するようにテーパ状に形成されている。
【0019】
従って、前述の磁気スタンド30において、各保持孔6の中に先端部にテーパ部31を有する容器11を挿入すると、この容器11の先端11aが前記下板部21の位置決め用凹部51上に当接して位置決めされ、前記プランジャ12を前進させることによって前記容器11の側部は保持孔6内で一側に付勢され、所定位置に鉛直状に固定される。
【0020】
前述の容器11の固定状態において、この容器11のテーパ部31と磁気手段3Aの磁石先端部3Aaが密着しているため、容器11内の溶液中の磁性微粒子は前記磁気手段4の磁力によって磁気手段4側に引き寄せられ、磁性微粒子の分離が容易となる。
【0021】
前記磁気手段4は、例えば、ネオジウム等の超強力磁石からなる永久磁石又は電磁石からなり、磁力を発生する構成であれば何れの形式も採用することができる。
尚、磁石は多極着磁された磁石でも良く、磁石は外周を鉄などの磁性金属でできたキャップで覆い、磁石の面を容器に向けて埋め込んだ構造でも良く、磁石の着磁方向の長さは、着磁面の直径または一辺の長さと同じ以上の長さが良く、2倍以上の長さがより良い。
磁気手段3Aは磁性微粒子を早く集めるために最も強いネオジム磁石が好ましい。
磁気手段3Aは多極着磁された磁石とすることで、容器内に大きな磁場勾配を発生させることができるので、磁性微粒子を早く集めることができる。
磁気手段3Aは鉄などの磁性金属でできたキャップで覆うことで、容器11内に大きな磁場勾配を発生させることができるので、磁性微粒子を早く集めることができる。
磁気手段3Aは着磁方向に長くするにつれて発生する磁場が強くなり、着磁面の直径又は一辺の長さに対して2倍より長い場合は磁性微粒子の集まる早さの違いは殆んどなくなる。
【0022】
また、前記プランジャ12の代りに保持孔6の上部周囲にゴムの材質で形成されたリングを備えた構造でも良い。
前記保持孔6の上部周囲にゴムの材質で形成されたリングを備えることによって、保持孔6に挿入した容器11が保持される。
【0023】
また、前記容器11の形状に合わせた溝2とすることで、容器11と金属が密着するので、氷上に磁気スタンドを置いた際に容器11内の溶液を良く冷却することができる。
容器内の溶液を冷やせるようにするために、基台1の材質は高い熱伝導率を有する金属が良く、金属の中で熱伝導率が高いアルミニウムや銅、又はこれらの合金が特に好ましい。
【0024】
次に、本発明による磁気スタンド30の実施例について述べる。前記基台1をアルミニウム合金とし、磁石手段3Aを着磁面の直径に対して2.4倍の長さの単極の磁石とした場合、氷上に磁気スタンド30を置いて容器11内の水の温度を測定したところ、10分で2℃まで冷却できた。
比較として市販品の樹脂製で容器と溝の間に隙間がある磁気スタンドで測定をしたところ、1時間経過しても10℃以下にはならなかった。
また、この二つの磁気スタンド30で磁性微粒子の回収される速度を調べたところ、本発明の図1図3の磁気スタンド30の方が市販品のものよりも1.5倍早く回収できた。
【0025】
前述の磁気スタンド30についてその要旨とするところは、次の通りである。
すなわち、容器11を挿入するための複数の保持孔6を有すると共に金属よりなる基台1と、前記基台1に設けられ前記容器11の下部に対応して位置し永久磁石又は電磁石から成る磁気手段3Aと、前記基台1の下部に設けられ前記容器11の下部を位置決めするための位置決め用凹部51と、前記基台1に設けられ前記磁気手段3Aの上段に位置するプランジャ用孔25と、前記プランジャ用孔25内に設けられ前記容器11の側部を付勢するためのプランジャ12とよりなり、前記磁気手段3Aの磁石先端部3Aaが前記容器11のテーパ部31に密着し、前記磁気手段3Aは長手方向に着磁されている構成である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明による磁気スタンドは、磁石手段の磁石先端部が容器の下部のテーパ部に密着することができるため、容器内の溶液中の磁性粒子を従来よりも迅速にかつ効率よく集めて回収することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 基台
2 溝
2a 内面
3 磁石埋設用溝
3A 磁気手段
3Aa 磁石先端部
6 保持孔
11 容器
11a 先端
12 プランジャ
12a 先端
20 上板部
21 下板部
22 凹形部
22a 背面
23 軸方向
24 孔方向
25 プランジャ用孔
26 磁石手段用孔
30 磁気スタンド
31 テーパ部
50 上面
51 位置決め用凹部
A 長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9