(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
屋外に設置する機器に装着するソレノイドには、周辺雰囲気の温度変化によって磁極やコイルの周囲に結露することを想定して結露対策を施しているものがある。以下に、ソレノイド本体部にロック機構を設けたソレノイドの従来技術の一例について説明する。
【0003】
図8は、従来技術に係るソレノイドを示す断面図である。
図8において、50はソレノイド、51は摺動部材、52はシャフト、53は可動磁極、53aは通路、54は案内部材、55はばね受、56は固定磁極、57はばね、58はコイル、59はケースである。
【0004】
図8は、特開2003−197421公報で開示されたソレノイドである。ソレノイド50は、
図8に示すように、ケース59の内部に設けたコイル58に通電すると可動磁極53が固定磁極56に吸着される。可動磁極53が吸着されることによって、可動磁極52の先端部に嵌合したシャフト52が摺動し、さらにシャフト52の先端部に接続された摺動部材51が摺動する。摺動部材51は、先端側が案内部材54の開口部に挿入されており、案内部材54に案内されながらこの開口部から突出してロック機構のラッチを動かす。また、コイル58への通電を停止すると、ばね受55側に押しつけられた状態になったばね57の復元力によって摺動部材51を元の位置に押し戻す。摺動部材51が押し戻されるのに連れて、シャフト52と可動磁極53も元の位置まで押し戻される。
【0005】
また、ソレノイド50は、可動磁極53の周側面に中心軸方向に延びる溝状の通路53aを形成している。通路53aは、可動磁極53のケース59の外部に出ている部分まで連続して形成されている。したがって、ケース59の内部は通路53aによって外部空間と連通しており、ケース59の内部と周辺の雰囲気との温度差によってケース59の内部に結露しても、通路53aを介して外部に結露水を排出できる。さらに、結露水がコイルの熱で水蒸気となっても、その水蒸気を通路53aから排出できるので、結露に伴う動作不良の発生を防止することが可能となる。
【0006】
ところで、例えば駐車場などの屋外に設置される機器において、風雨が激しいとき雨水が案内部材54の開口部から摺動部材に付着することがある。また、部品などの洗浄工程で使用する機器では、ソレノイドを装着した機構のところまで洗浄液の液滴やミストが飛来して、摺動部材に付着することがある。このようにして摺動部材に水や薬液が付着すると、ばねの復元力によって摺動部材が元の位置まで押し戻されるときに、水がシャフトや可動磁極、固定磁極などに付着し、付着した水により摺動部材の錆による動作不良やコイルの絶縁不良の原因となるが、
図8で開示したソレノイドでは、ソレノイド内に浸入した液体に対しては特段の対策がなく、この点については解決されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、摺動部材に水や薬液などの液体が付着しても、可動磁極、固定磁極やシャフト、コイルなどの部品を液体から防護でき、さらに防塵もできる構造を有するソレノイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、摺動可能に設けられた摺動部材と、前記摺動部材を突出させた開口部が形成された案内部材と、前記摺動部材の周側面に設けられた少なくとも1つの環状体と、を備えたことを特徴とするソレノイドである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記環状体は、前記摺動部材が先端側に摺動する前又は/及び後の状態において、前記案内部材に密着して前記開口部を閉鎖するように設けられていることを特徴とするソレノイドである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記環状体は、弾性体によって形成されていることを特徴とするソレノイドである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記環状体は、前記摺動部材と一体に形成されていることを特徴とするソレノイドである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記案内部材と列設されると共に、前記摺動部材を挿通可能とする開口部が形成された保護板材を有し、前記環状体は、前記保護板材の前記開口部をバーリング加工して形成されていることを特徴とするソレノイドである。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記案内部材と列設されると共に、前記摺動部材を挿通可能とする開口部が形成された少なくとも2枚の保護板材を有し、前記環状体は、隣り合う2枚の前記保護板材の前記開口部の周縁によって狭持されていることを特徴とするソレノイドである。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載の発明において、前記案内部材又は/及び前記保護板材は、前記開口部の周縁部分が前記環状体と背向する側に突出する凸部に形成されていることを特徴とするソレノイド。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載の発明において、前記保護板材の少なくとも1枚は前記案内部材であることを特徴とすることを特徴とするソレノイドである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、摺動部材の環状体よりも先端側の部分に付着した雨滴などの液体は、摺動部材の基端側に移動してゆくと、環状体のところで滴下する、又は、環状体に移動を阻止されてそこに留まる。したがって、可動磁極、固定磁極などの磁性部品、コイルなどを液体や薬液から防護でき、可動磁極などに錆が発生することを防止できる。さらに、可動磁極、固定磁極などの磁性部品、コイルの防塵もできる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、環状体が開口部を閉止するので、摺動部材の環状体よりも基端側の部分や可動磁極、固定磁極などの磁性部品、コイルなどを液体や薬液からさらに確実に防護できる。くわえて、防塵性も高まる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、環状体が弾性体であると案内部材に対する密着性が高まるので、可動磁極、固定磁極などの磁性部品、コイルなどを液体や薬液から防護でき、さらに防塵もできる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、案内部材の開口部から浸入した雨滴などの液体の移動を基端側にある環状体によって阻止できるので、可動磁極などが液体に濡れることがない。また、摺動部材の一部を環状体とするので、ゴムなどの弾性体を環状体に利用する場合よりも機械油や薬剤などの影響を受けにくく、さらに可動磁極が摺動したときの衝撃で環状体が位置ずれすることもない。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、保護板材にバーリング加工した開口部を形成するので、環状体を非常に簡単に、かつ、安価に形成できる上に、環状体用の材料を別途用意する必要がない。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、少なくとも2枚の保護板によって雨滴などを防護できる上に、環状体を隣り合う2枚の保護板材の開口部の周縁で狭持するので、環状体を所定位置に保持させておくことが簡単に実現できる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、案内部材又は/及び保護板材の凸部の裏側の凹部によって環状体を所定位置に強固に保持することができ、液体や薬液からさらに確実に防護できる。くわえて、防塵性も高まる。また、ソレノイドの組立時には、環状体を部の裏側の凹部に置いた状態で組立作業を行えるので、環状体の位置決めが容易になる。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、保護板材の少なくとも1枚を案内部材とするので、保護板材と案内部材との合計枚数を必要最小限にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドの部分断面図であり、(a)は非通電状態、(b)は通電状態を示す。
図1において、10はソレノイド、20は摺動部材、20aは周回溝、21及び22はOリング、30は案内部材、30aは前面部、30bは上面部、30cはスリット、34はフレーム、34aは上面部、34bは後面部、34cは下面部、35はフロントフレーム、36はコイル、37は可動磁極、38はガイドピン、39は開口部である。なお、
図1では、摺動部材20、Oリング21及び22並びに案内部材30のみを断面で表している。また、
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドを示す図であり、(a)は右側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【0027】
この実施の形態に係るソレノイド10は、いわゆるオープンフレーム型の直動型ソレノイドである。
図1(a)に示すように、摺動部材20は、基端側が可動磁極37に接続され、先端側が案内部材30の前面部30aに形成した開口部39から突出した状態で設けられている。可動磁極37は、基端側がコイル36の貫通孔に挿入された状態で設けられている。また、コイル36に通電すると、可動磁極37はこの貫通孔内を摺動して、貫通孔の基端側に設けた図示していない固定磁極に吸着される。コイル36への通電を停止すると、ガイドピン38とフロントフレーム35によって押し縮められていたばねの復元力によってガイドピン38が摺動部材20の先端側向かって摺動し、これに連れて摺動部材20及び可動磁極37も同方向に摺動する。以下に、各部品の形状、構造等についてさらに詳しく説明する。
【0028】
摺動部材20は、全体が略棒状で、かつ、中心軸に直交する方向の断面が略円形状に形成されており、
図1(a)及び
図2(a)に示すように、可動磁極37の中心軸に沿って延在している。また、摺動部材20は、基端側の端部及びその近傍部分に図示していない孔が垂直方向に貫通しており、さらにこの部分が可動磁極37の先端側に形成した孔に挿入されている。くわえて、可動磁極37の周側面には、この孔に対応する上下2カ所に図示しないガイドピン用穴が形成されており、この孔と可動磁極37の2カ所のガイドピン用穴とをガイドピン38が貫通しており、摺動部材20と可動磁極37とはガイドピン38によって接続されている。
【0029】
以上の構成において、コイル36に通電すると、
図1(b)に示すように、可動磁極37がフロントフレーム35側に摺動する。可動磁極37に接続された摺動部材20も同じ方向に摺動して、前面部30aの開口部39から突出している部分が相対的に短くなる。コイル36が非通電となると、
図1(a)に示すように、ばねの復元力によって可動磁極37がフロントフレーム35側から押し戻される。摺動部材20も同じ方向に摺動して、前面部30aの開口部39から突出している部分が相対的に長くなる。
【0030】
また、摺動部材20には、Oリング21及び22が設けられている。Oリング21は案内部材30の前面部30aよりも先端側に、Oリング22は案内部材30の前面部30aよりも基端側に、それぞれ摺動部材20の周側面を取り巻くように設けられている。Oリング22は、コイル36への通電停止時に、摺動部材20の基端側の開口部39の周縁に密着する部位に設けられている。また、Oリング22は、摺動部材20の基端側の周側面に形成した周回溝20aに入り込むように設けられており、案内部材30の前面部30aの開口部39の周縁に密着しているときには、摺動部材20の周側面と開口部39との間隙を摺動部材20の基端側から閉鎖する。
【0031】
そして、コイル36への非通電時には、
図1(a)に示すように、Oリング22が摺動部材20の周側面と開口部39との間隙を摺動部材20の基端側から覆うようにして開口部39を閉鎖する。また、コイル36への通電時には、
図1(b)に示すように、Oリング21が摺動部材20の周側面と開口部39との間隙を摺動部材20の先端側から覆うようにして開口部39を閉鎖する。
【0032】
したがって、コイル36への非通電時は、Oリング22が開口部39を摺動部材20の基端側から閉鎖しているので、雨滴が前面部30aの開口部39から基端側に向かって飛び込むことを防止する。さらに、摺動部材20の先端側の周側面に付着した雨水が基端側に移動しても、Oリング22のところに留まってそれ以上の移動を防止する。コイル36への通電時は、Oリング21が開口部39を摺動部材20の先端側から閉鎖しているので、雨滴が前面部30aの開口部39内に飛び込むことを防止する。さらに、摺動部材20の先端側の周側面に付着した雨水が基端側に移動しても、Oリング21のところで滴下する、又は、Oリング21のところに留まってそれ以上の移動を防止する。また、Oリングは非常に広く普及した部品であるので、環状体を極めて低コストで設けることができる。
【0033】
案内部材30は、矩形金属板を折曲加工して形成されており、摺動部材20及び可動磁極37の中心軸に対して直交する前面部30aと、これらの中心軸に平行である上面部30bとで構成されている。前面部30aは、中央に形成された開口部39で摺動部材20の摺動を案内するものであるが、Oリング21及び22と共に雨滴などから可動磁極37などを防護する機能も併せ持っている。上面部30bは、
図2(b)に示すように、フレーム34の上面部34aにねじによって固定されている。
【0034】
また、案内部材30の上面部30bには、可動磁極37の中心軸に沿って延びるスリット30cが形成されている。スリット30cは、
図1に示すように、ガイドピン38の上側先端部が挿入されており、ガイドピン38の摺動範囲を規制することによって摺動部材20及び可動磁極37の摺動範囲を規制する機能を持つ。さらに、ガイドピン38の摺動を案内することによって摺動部材20及び可動磁極37の摺動を案内する機能も併せ持つ。フレーム34とフロントフレーム35とは、コイル36への通電時に、図示していない固定磁極及び可動磁極37と共に磁気回路を構成する。
【0035】
したがって、これらのフレーム34及びフロントフレーム35は、コイル36を囲む6方向のうち4方向から取り囲んでいるが、側面側の2方向は開放されているので、コイルの周囲に結露水が貯まることはない。
【0036】
また、図示していないが、フレーム34の上面部34aと下面部34cとの先端部には、フロントフレーム35をかしめて固定するための切欠きが形成されている。可動磁極37は、コイル36に通電することによって摺動部材20を直接摺動させるものである。
【0037】
なお、摺動部材20と可動磁極37との間にシャフトを設け、シャフトを介在させて摺動させるようにしてもよい。
【0038】
ばねは、ガイドピン38とフロントフレーム35との間に押し縮められた状態で設けられており、コイル36への通電を停止したときに復元力によってガイドピン38を押圧し、摺動部材20をOリング22が前面部30aに当接するところまで押し出す。
【0039】
さらに、この第1の実施の形態に係るソレノイドの使用状態について説明する。
図3は、摺動部材と環状体の状態を示す部分拡大右側面図であり、(a)は非通電状態(b)は通電後に摺動部材の摺動が完了した状態を示す。
【0040】
図3(a)に示すように、コイル36へ通電していないときには、Oリング22が案内部材30の前面部30aの開口部39の周縁に密着しており、摺動部材20の周側面と開口部39との間隙を摺動部材20の基端側から閉鎖する。また、コイル36への通電時は、
図3(b)に示すように、可動磁極37が固定磁極に吸着されて、Oリング21が摺動部材20の周側面と開口部39との間隙を覆うように密着する。したがって、コイル36への非通電時には、雨滴が摺動部材20の周側面と開口部39との間隙に当たっても、この間隙から可動磁極37側にさらに移動することはなく、この間隙に留まるか、前面部30aから滴下する。また、コイル36へ通電したときには、
図3(b)に示すように、Oリング21が摺動部材20の周側面と開口部39との間隙を覆うように密着する。さらに、雨滴が摺動部材20の周側面と開口部39との間隙付近に当たっても、この間隙に雨水が浸入することはない。くわえて、万一付着水がOリング22よりもさらに可動磁極37側に浸入することがあっても、摺動部材20の周側面と可動磁極37の周側面とに段差があるので、付着水はこの段差から滴下するか、この段差に留まる。したがって、可動磁極37の基端側、ひいては固定磁極やコイルまで到達することを防止できる。
【0041】
以上のように、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイド10は、摺動部材20に設けたOリング21又は22よりも先端側の部分に付着した雨滴が摺動部材20の基端側に移動してゆくと、Oリング21又は22のところで滴下する、又は、Oリング21又は22に移動を阻止されてそこに留まる。したがって、可動磁極37や図示していない固定磁極が液体に濡れることがなく、可動磁極37などに錆が発生することを防止できる。また、コイル36への通電時、非通電時のいずれにおいても、Oリング21又は22が案内部材30の前面部30aの開口部39と摺動部材20との間隙を閉鎖しているので、Oリング21又は22よりも基端側の部分や可動磁極37などが雨滴などの液体に濡れることを確実に防止できる。くわえて、環状体を弾性体であるOリングとしているので、案内部材30の前面部30aに対する密着性が高まり、前面部30aの開口部39から雨滴が浸入することを確実に防止できる。さらに、Oリング21及び22は、雨滴だけでなく塵埃の浸入も阻止するので、防塵にも効果がある。
【0042】
また、ガイドピン38を摺動部材20及び可動磁極37から抜き取ると摺動部材20取り外すことができ、Oリング21及び22の交換も簡単にできるので、メンテナンス作業が非常に簡便に行える。
【0043】
なお、摺動部材20は、先端側に例えばロック機構に接続するために、中心軸に直交する方向に貫通孔を形成する、あるいは、ラッチ用の傾斜面などを形成してもよい。さらに、中心軸に直交する方向の断面を矩形状など他の形状に形成してもよい。
【0044】
また、摺部材20の周側面を取り巻くように設ける環状体は、Oリング以外のもの、例えば機械油や洗浄剤などによって環状体が劣化する可能性がある場合には金属で形成したリングやフランジを用いてもよい。金属のリングやフランジは、Oリングよりもコスト面で不利であるが、機械油や洗浄剤などによって環状体が劣化しにくいことに加えて、必要となる大きさ及び形状に形成することが容易であるという利点がある。
【0045】
さらに、ソレノイド10を装着する機器の使用場所などによっては、Oリング21とOリング22とのいずれかを省略してもよい。
【0046】
続けて、本発明の第2の実施の形態に係るソレノイドについて説明する。
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るソレノイドを示す図であり、(a)は右側面図、(b)は部分断面図、(c)は部分拡大右側面図である。
図4において、31は防護ケース、31aは前面部、31bは上面部、31cは後面部、31dは下面部、31eはフランジ部であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。なお、
図4(b)では、摺動部材20、案内部材30及び防護ケース31のみを断面で表している。
【0047】
この実施の形態に係るソレノイド10は、
図4(a)に示すように、第1の実施の形態に係るソレノイド10の案内部材30及びフレーム34の周囲を囲むように防護ケース31を設けたものである。防護ケース31は、前面部31a、上面部31b、後面部31c及び下面部31dの4つの部分で案内部材30やフレーム34などを囲むことによって、可動磁極37などに雨滴が当たらないようにしている。また、
図4(b)に示すように、前面部31aには開口部が形成してあり、摺動部材20の先端側が挿入されている。また、この開口部の周縁には、バーリング加工によってフランジ部31eが形成されている。フランジ部31eは、先端側の摺動に必要かつ十分な径に形成されており、摺動部材20の先端部に向かって突出している。
【0048】
したがって、
図4(c)に示すように、雨滴がフランジ部31eに当たっても摺動部材20の周側面とフランジ部31eとの間隙からの浸入は少ない。また、摺動部材20が可動磁極37側に摺動するときに、摺動部材20の先端側に付着している付着水は、フランジ部31eによって先端側の周側面から削ぎ落されるように排除されるので、可動磁極37などが雨滴に濡れることを確実に防止できる。以上のように、環状体を摺動部材20に装着して摺動部材20と共に動く構成ではなく、所定位置に固定されている構成であっても液体の浸入を防ぐことが可能である。
【0049】
さらに、フランジ部31eの形成は、前面部31aを成形する金属板に対してバーリング加工を行うだけでよく、別途用意した材料を加工して装着する必要がないので、非常に安価に形成することができる。さらに、上面部31b、後面部31c及び下面部31dの折曲加工も簡単な加工で済むので、防護ケースを筐体の一部で形成することができ、防護ケース31を設けてもソレノイドの製造コストを大きく上昇させることがない。
【0050】
なお、防護ケース31は、ソレノイド10を装着する機器の使用場所などによっては、案内部材30及びフレーム34の左右側方の一方又は両方をさらに覆う構成にしてもよい。
【0051】
続けて、本発明の第3の実施の形態に係るソレノイドについて説明する。
図5は、本発明の第3の実施の形態に係るソレノイドを示す図であり、(a)は右側面図、(b)は部分断面図である。
図5において、32は防護ケース、32aは前面部、32bは上面部、32cは後面部、32dは下面部、32eは凸部、42はOリングであり、その他の符号は
図1と同じものを示す。なお、
図5(b)では、摺動部材20、案内部材30、防護ケース32及びOリング42のみを断面で表している。
【0052】
この実施の形態に係るソレノイド10は、
図5(a)に示すように、第2の実施の形態に係るソレノイド10の防護ケース31と同様に、前面部32a、上面部32b、後面部32c及び下面部32dを備えた防護ケース32を設けている。防護ケース32は、案内部材30の前面部30aの開口部39の周縁に対応する部分を摺動部材20の先端部に向かって膨出した凸部32eとして形成されている。さらに、可動磁極37側から見て凹部となる部分にOリング42を挿入し、前面部30aと前面部32aとによってOリング42を狭持している。
【0053】
したがって、
図5(b)に示すように、摺動部材20の先端側の周側面に対して、防護ケース32の前面部32aの開口部、Oリング42、及び、前面部30aの開口部39が極めて近接、又は、接しているので、先端側とこれらとの間隙からほとんど浸入することない。さらに、防塵にも効果がある。
【0054】
なお、防護ケース32の前面部32aの開口部、Oリング42、及び、前面部30aの開口部は、先端側の周側面の全周に渡って当接する径とすることが望ましい。これは、摺動部材20が可動磁極37側に摺動するときに、先端側の周側面に付着している付着水が防護ケース32の前面部32aの開口部、Oリング42、及び、前面部30aの開口部39によって先端側の周側面から削ぎ落されるように排除されるためである。
【0055】
また、前面部32aに凸部32eを形成することに代えて、前面部30aに凸部を形成してもよい。すなわち、前面部32aは凸部32eがない平坦な面とし、前面部30aに凸部32eとは反対側に突出する凸部を形成し、前面部32a側から見て凹部となる部分にOリング42を挿入してもよい。また、前面部32aと前面部30aとの両方に凸部を形成し、これらの凸部の裏側にある凹部にOリング42を挿入してもよい。
【0056】
続けて、本発明の第4の実施の形態に係るソレノイドについて説明する。
図6は、本発明の第4の実施の形態に係るソレノイドを示す図であり、(a)は右側面図、(b)は部分断面図である。
図6において、33は防護ケース、33aは前面部、33bは上面部、33cは後面部、33dは下面部、33eは防護板、33fは凸部、43はOリングであり、その他の符号は
図1と同じものを示す。なお、
図6(b)では、摺動部材20、案内部材30、防護ケース33及びOリング43のみを断面で表している。
【0057】
この実施の形態に係るソレノイド10は、
図6(a)に示すように、第3の実施の形態に係るソレノイド10の防護ケース32と同様に、前面部33a、上面部33b、後面部33c及び下面部33dを備えた防護ケース33を設け、さらにOリング43を設けている。防護ケース33の前面側は、前面部33aに加えてこれとほぼ同じ大きさ及び形状の防護板33eを取り付けている。防護板33eは、第3の実施の形態における前面部32aと同様に、案内部材30の前面部30aの開口部39の周縁に対応する部分を摺動部材20の先端部に向かって膨出した凸部33fとして形成されている。さらに、可動磁極37側から見て凹部となる部分にOリング43を挿入し、防護板33eと前面部33aとによってOリング43を狭持している。
【0058】
したがって、
図6(b)に示すように、摺動部材20の先端側の周側面に対して、防護板33eの開口部、Oリング42、及び前面部33aの開口部の開口部が極めて近接、又は、接しているので、先端側とこれらとの間隙からほとんど浸入することない。さらに、防塵にも効果がある。なお、防護ケース33の防護板33eの開口部、前面部33aの開口部、Oリング42、及び、前面部30aの開口部39は、第3の実施の形態に係るソレノイド10と同じ理由により、先端側の周側面の全周に渡って当接する径とすることが望ましい。
【0059】
なお、Oリング43を狭持している2枚の保護板材に隣接してさらに1枚又は複数枚の保護板材を設けてもよい。もちろん、この保護板材にも摺動部材20を挿入するための開口部を形成する必要がある。くわえて、保護板材が3枚以上ある場合にはOリングを2つ以上設けてもよい。
【0060】
また、防護板33eに凸部33fを形成することに代えて、前面部33aに凸部を形成してもよい。すなわち、防護板33eは凸部33fがない平坦な面とし、前面部33aに凸部33fとは反対側に突出する凸部を形成し、防護板33e側から見て凹部となる部分にOリング43を挿入してもよい。また、防護板33eと前面部33aとの両方に凸部を形成し、これらの凸部の裏側にある凹部にOリング43を挿入してもよい。
【0061】
さらに、本発明の第5及び第6の実施の形態に係るソレノイドについて説明する。
図7は、本発明の第5及び第6の実施の形態に係るソレノイドを示す図であり、(a)は第5の実施の形態に係るソレノイドの部分断面図、(b)は第6の実施の形態に係るソレノイドの部分断面図である。
図7(b)において、23は摺動部材、23aは先端側、23bは基端側、23cはフランジであり、その他の符号は
図1と同じものを示す。なお、
図7(a)では、摺動部材23、Oリング22、案内部材30及び防護ケース31のみを断面で表し、
図7(b)では、摺動部材20、Oリング21及び案内部材30のみを断面で表している。
【0062】
本発明の第5の実施の形態に係るソレノイド10は、
図7(a)に示すように、第2の実施の形態に係るソレノイド10が防護ケース31にフランジ部31eを設けているのに対して、第2の実施の形態に係るソレノイド10のOリング22を付加した構成としている。
【0063】
したがって、このように構成することによって、摺動部材20の周側面とフランジ部31eとの間隙から微量の液体が浸入しても、Oリング22よりも先端側に留まるので、浸入する液体からさらに強固に防護することができる。
【0064】
また、本発明の第6の実施の形態に係るソレノイド10は、
図7(b)に示すように、摺動部材23の基端側23bにOリング22を設けることに代えてフランジ23cを設けたものである。すなわち、摺動部材23の母材を切削加工する際に周側面を一周するように部分的に肉を残すことによってフランジ23cを形成している。
【0065】
したがって、フランジ23cは金属製であるので、Oリングなどを環状体に利用する場合よりも機械油や薬剤などの影響を受けにくく、さらに可動磁極37が摺動したときの衝撃で環状体が位置ずれすることもない。
【0066】
なお、これとは逆に、先端側23aにOリング21に代わるフランジを設けてもよい。
【0067】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、案内部材の開口部の周縁をバーリング加工してフランジ部としてもよい。また、可動磁極は、摺動部材と一体に形成しても良い。さらに、防護ケースを基板などソレノイドが装着される機器の他の部品の収納ケースを兼ねるものとしてもよい。くわえて、案内部材を防護ケースのようにフレームを4方向から囲むような構造にしてもよい。くわえて、防護ケースを円筒形状など他の形状にしてもよい。また、第1の実施の形態に係るソレノイドから第4の実施の形態に係るソレノイドの構成を組み合わせるなど、様々な形状や構成を採用することが可能である。くわえて、本発明の各実施に係るソレノイドは、駐車場などの屋外に設置される機器だけでなく、例えば食材や機械部品などの洗浄工程で使用する機器や洗車機器などの水や薬液が摺動部材に付着する可能性がある各種の機器にも適用してもよい。