(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る遊技機の好ましい実施形態について、各図を参照して説明する。
【0016】
[遊技機]
取手部材を装着可能な手掛孔を備える遊技機には、スロットマシンやパロットなど様々な種類があるが、本実施形態では、本発明をスロットマシンに適用した場合について説明する。
【0017】
本実施形態のスロットマシン1は、複数のリールを回転させることによって遊技媒体であるメダルを獲得できる回胴式遊技機として構成されており、当該スロットマシン1を人力により運搬可能とするために、筐体1bの側壁10に手掛孔11が穿設されるとともに、断面L字状の取手部材20が手掛孔11に装着される構成となっている。
以下、本実施形態に係るスロットマシン1について
図1、
図2を参照しながら詳述する。
【0018】
これらの図に示すように、本実施形態のスロットマシン1は、回動可能に軸支された複数のリール41a,41b,41cが内蔵され、正面側が開口した筐体1bと、筐体1bの正面側を開閉可能に覆う前扉1aとで構成され、内部には、マイクロコンピュータ等で構成された主制御部9、及び必要な機械,装置等が収納されている。
【0019】
前扉1aは、
図2に示すように、スロットマシン1の筐体1bにヒンジ等を介して開閉可能に取り付けられる扉体で、この前扉1aに遊技操作に係る複数の操作手段が設けられて、スロットマシン1の正面部を構成している。
【0020】
操作手段としては、メダルが投入されるメダル投入口2と、装置内部にクレジットとして貯留されたメダルをゲームに投じるベットボタン2aと、各リール41a,41b,41cの回転を始動させるスタートレバー3と、回転している各リール41a,41b,41cを停止させる3つの停止ボタン5a,5b,5cなどが設けられている。
さらに、前扉1aには、各リール41a,41b,41cに表示された図柄を視認可能とする表示窓6が、各操作手段の上側に設けられている。また、前扉1a上部には、効果音、音声等が出力されるスピーカ8が設けられている。
【0021】
筐体1bの中央には、リール41a,41b,41cと、各リール41a,41b,41cを回転させる図示しないモータ及び回転位置を検出するセンサ等を備えるドラムユニット4が設けられる。
また、筐体1bの下部には、メダルの貯留・払出しを行うメダル払出装置7が設けられる。メダル払出装置7には、メダルを貯留するホッパー7aが設けられ、メダル投入口2より投入されたメダルは、メダルセレクタ2bにより検出されるとともに、ホッパー7aに誘導されるようになっている。
【0022】
主制御部9は、メインCPU、メインROM、メインRAMなどが一体化された制御用チップの搭載された主基板、これを収容する基板ケース等から構成され、上記の各操作手段からの信号やメダルセレクタ2bからの信号に基づき、ドラムユニット4、メダル払出装置7などの各装置を制御することで、以下のようなスロットマシン遊技を進行させる。
【0023】
具体的には、遊技者によりメダル投入口2からメダルが投入されると、メダルがメダルセレクタ2bにより検出され、検出信号が主制御部9に入力される。また、ベットボタン2aが操作された場合は、その操作信号が主制御部9に入力される。主制御部9は、これらの信号の入力の有無からゲーム可能なメダル数を監視するとともに、スタートレバー3の操作を監視する。
ゲーム可能なメダル数となったときに、スタートレバー3が操作されると、主制御部9は、ドラムユニット4を駆動して、各リール41a,41b,41cを回転させる制御を行う。
【0024】
さらに、主制御部9は、スタートレバー3が操作されたときに、ボーナス役、小役、再遊技役、ハズレの複数の抽選対象の中から今回ゲームの当選対象を抽選する内部抽選を行い、各停止ボタン5a,5b,5cが押下操作されたタイミングに基づき、抽選結果に応じた図柄の組合せで停止するよう、回転している各リール41a,41b,41cの停止制御を行う。
【0025】
また、主制御部9は、各リール41a,41b,41cに停止表示される図柄の組合せを判定し、所定の図柄の組合せのときには、メダル払出装置7に対して所定数のメダルを払い出す制御を行い、メダルをメダル払出口7bから払い出す。
【0026】
このような内容で遊技が進行するスロットマシン1においては、当該スロットマシン1を運搬容易とするために、筐体1bの左右の側壁10の略中央に貫通孔である手掛孔11が穿設されている。
ただし、手掛孔11は、貫通孔であるため、スロットマシン1の内部と外部が当該手掛孔11を介して連通した状態となっている。このため、その手掛孔11を通して長尺状の部材を挿入し、スロットマシン1の内部装置に不正にアクセスする不正行為が起こり得た。
【0027】
そこで、手掛孔11を閉塞するとともに、手掛孔11に指を挿入可能とするために、その指を覆う形状に形成された取手部材20を手掛孔11に装着している。
これにより、手掛孔11が取手部材20により閉塞されるので、不正部材の侵入を阻止することができ、スロットマシン1の内部装置への不正なアクセスを防止できる。また、運搬者は、その取手部材20に指を差し入れることで筐体1bを持ち上げて運搬することができるようになっている。
このような機能を備えた本実施形態の取手部材20の構成について、
図3(i)〜(v)を参照しつつ、以下に説明する。
【0028】
[取手部材]
取手部材20は、スロットマシン1の筐体1bの左右側壁10の略中央に穿設された手掛孔11に装着される、縦方向断面がL字状の合成樹脂製の射出成形品である。
取手部材20は、スロットマシン1を運搬する運搬者が指を差し入れる部分となっている。このため、取手部材20は、親指以外の四本の指の略全体を覆うような大きさで、それら四本の指を挿入可能な形状に形成されている。
【0029】
取手部材20は、
図3(i)〜(v)に示すように、それら四本の指を挿入可能に穿設された矩形状の開口21と、開口21の縁部に周設されたフランジ状の鍔部22と、一の側面に開口21が形成された中空で直方体状の第一カバー部23と、この第一カバー部23の上部231の上面232から上方に突設された中空で直方体状の第二カバー部24とを備えている。
【0030】
第二カバー部24の中空内部と第一カバー部23の中空内部と開口21は、連通しており、開口21から挿入された四本の指のうち、各指の先端から第一関節まで(又は各指の先端から第二関節まで)が第二カバー部24の中空内部に挿入され、各指の第一関節から第二関節まで(又は各指の第二関節から第三関節まで)が第一カバー部23の中空内部に位置するようになっている。
【0031】
開口21の縁部に周設された鍔部22のうち、開口21の下方に位置する下鍔部221の裏面には、第一カバー部23の下部234に沿って突設した係止部25が形成されている。
また、係止部25の先端には、下方向へ向かって鉤状に屈曲した鉤状部251が形成されている。
なお、係止部25は、
図3(iv)においては、下鍔部221の裏面に二つ形成されているが、二つに限るものではなく、一又は二以上形成することができる。
【0032】
このような構成を備えた取手部材20は、射出成形により製造することができる。
次に、取手部材20を射出成形する際に使用される取手部材成形装置30の構成について、
図4、
図5を参照して説明する。
【0033】
[取手部材成形装置]
これらの図に示すように、取手部材成形装置30は、取手部材20の形状がキャビティ434として形成された金型40と、取手部材20の材料を金型40に射出注入するための射出ユニット31と、金型40を型締めしたり型開きしたりするための型締めユニット32とにより構成されている。
【0034】
射出ユニット31は、取手部材20の材料がペレット状(粒状)に加工された状態で投入されるホッパー311と、螺旋状に形成された羽根を回転させて材料を移動させながら当該材料を加熱溶融するためのスクリュー312と、このスクリュー312の羽根を回転させるためのモータ313と、スクリュー312の回転によって移動してきた溶融した材料を金型40に射出するシリンダ314とを備えている。
型締めユニット32は、当該型締めユニット32に固定された金型40の移動側43を移動させるためのクロスヘッド321と、金型40のキャビティ434から成形品を押出すエジェクタピン435をその押出し方向に移動させるためのエジェクタ機構322とを備えている。
【0035】
金型40は、射出ユニット31のシリンダ314の先端付近に配置された固定盤315に固定される固定側41と、型締めユニット32の移動盤323に固定される移動側43と、これら固定側41と移動側43との間に位置する中プレート側42とに分けられる。
固定側41は、固定盤315に固定される固定側取付板411と、この固定側取付板411に取り付けられる固定側プレート412と、この固定側プレート412に突設されるとともに、取手部材20における第一カバー部23の内部形状を成形するための型板である肉厚板状の第一内部型板413と、射出ユニット31から射出された材料をキャビティ434へ導くためのスプルー414とを有して構成されている。
【0036】
中プレート側42は、当該中プレート側42を構成する各種部品を支持するための中プレート421と、取手部材20における第二カバー部24の内部形状を成形するための型板である第二内部型板422と、型締めや型開きの際、第二内部型板422を所定の方向に移動させる移動機構423と、取手部材20における鍔部22の表面形状を成形するための型板である中プレート型板424と、移動側43の第一スライドコア438を固定するための第一突部425と、移動側43の第二スライドコア439を固定するための第二突部426と、移動側43の第一スライドコア438を移動させるためのアンギュラピン427とを備えて構成されている。
【0037】
移動側43は、移動盤323に取り付けられて当該移動側43を固定する移動側取付板431と、この移動側取付板431に対しスペーサ437を介して取り付けられる移動側プレート432と、取手部材20の第一カバー部23及び第二カバー部24の外面形状を成形するための移動側型板433と、この移動側型板433に形成されたキャビティ434から取手部材20を含む成形品を押出して取り外すためのエジェクタピン435と、このエジェクタピン435をその押出し方向に移動させるためのエジェクタプレート436と、このエジェクタプレート436の移動スペースを確保するためのスペーサ437と、取手部材20の係止部25の下面形状をアンダーカットとして成形するための第一スライドコア438と、取手部材20の開口21の上方に位置する上鍔部222の裏面の形状と取手部材20の第一カバー部23の上面232の形状とこの上鍔部222に対向する第二カバー部24の上鍔部222側外面の形状をアンダーカットとして成形するための第二スライドコア439とを備えて構成されている。
【0038】
このような構成を備えることにより、取手部材成形装置30は、取手部材20を射出成形可能となっている。
以下、取手部材の成形の手順について、
図4〜
図10を参照して説明する。
【0039】
[取手部材の成形の手順]
前提として、取手部材成形装置30の金型40は、
図5に示すように、各型板(第一内部型板413、第二内部型板422、中プレート型板424、移動側型板433、第一スライドコア438、第二スライドコア439)が組み合わされてキャビティ434が形成された型締め状態となっているものとする。
【0040】
取手部材20の材料が、ペレット状に加工された状態で、射出ユニット31のホッパー311に投入され、スクリュー312の回転によってシリンダ314の先端部へ移動する際、加熱により溶融され、このシリンダ314の先端から金型40に射出される。
金型40のスプルー414の注入口415に射出注入された、溶融した取手部材20の材料が、スプルー414からキャビティ434へ進入し、キャビティ434内に充填される。
充填が完了すると、スプルー414及びキャビティ434に充填された材料が冷却される。そして、冷却が完了すると、金型40が型開きされる。
【0041】
型開きは、次の手順で行われる。
型締めユニット32のクロスロッド321が駆動して、移動盤323に固定されている金型40の移動側43と中プレート側42が、固定側41から離間する方向に移動する(
図5、
図6参照)。
このとき、キャビティ434内で成形された取手部材20から離間する方向に、固定側41の第一内部型板413が抜き取られる。
なお、この第一内部型板413の移動は、当該第一内部型板413において、第二内部型板422と接する面がテーパ状に形成されており、当該第一内部型板413が先細りの形状に形成されているために可能となっているものである。
【0042】
また、第一内部型板413の移動に伴って、第二内部型板422が、取手部材20の第一カバー部23の下部234に向かう方向に移動する。この移動は、移動機構423が第二内部型板422をその第一カバー部23の下部234に向かう方向に押圧しており、その押圧方向に第一内部型板413が存在しなくなったことで起こるものである。
なお、上記の説明は、金型40を型開きする場合における第二内部型板422の移動を説明したものであるが、金型40を型締めする際には、移動機構423が第二内部型板422を押圧方向とは反対の方向(後退方向)へ第二内部型板422を引くことにより、当該第二内部型板422を
図5に示す位置に配置させることができる。
【0043】
次いで、型締めユニット32のクロスロッド321が駆動して、金型40の中プレート側42の移動が停止するとともに、移動側43が、中プレート側42から離間する方向に移動する(
図7参照)。
このとき、キャビティ434内で成形された取手部材20から離間する方向に、第二内部型板422が抜き取られる。このように、第二内部型板422が取手部材20の内部から抜き取り可能となっている理由は、次による。
まず、第二内部型板422の形状について、説明する。第二内部型板422は、
図8に示すように、取手部材20の第二カバー部24の内部形状を成形するために、当該第二カバー24の内部形状と同一の外部形状に形成された折り返し部441と、この折り返し部441を第二カバー部24の内部に対して挿抜可能とするために、その挿抜方向に駆動する移動機構423に接続された移動機構連結部442と、この移動機構連結部442と折り返し部441とを接続するための接続部443とを有したコの字状に形成されている。
【0044】
次に、上記理由を説明するのに必要な取手部材20及び第二内部型板422の各部名称について定義する。
取手部材20をスロットマシン1の筐体1bの手掛孔11に装着した状態を想定し、この状態における取手部材20の開口21の上下方向の高さを開口高さL1とする。また、取手部材20における第一カバー部23の上部231の下面233から第二カバー部24の上部241の下面242までの高さを第二カバー部高さL2とする。さらに、
図8に示すように取手部材20の内部から抜き取る前の第二内部型板422の折り返し部441において取手部材20の第二カバー部24の奥側内面243に接する面の上下方向の長さを、折り返し部長さL3とする。
【0045】
このとき、それら定義した開口高さL1、第二カバー部高さL2、折り返し部長さL3には、以下に説明する式1〜式3の関係が成立する。
まず、第二内部型板422の折り返し部441を取手部材20の開口21から抜き取り可能とするためには、第二内部型板422の折り返し部長さL3が開口高さL1よりも短いことが必要となる。よって、式1が成立する。
L1>L3 ・・・(式1)
【0046】
また、折り返し部441は、取手部材20の第二カバー部24の内部形状を成形するものであるため、少なくとも第二カバー部高さL2以上の長さが必要である。また、折り返し部441の長さが第二カバー部高さL2のみであると移動機構連結部442に接続することができない。このため、折り返し部長さL3は、第二カバー部高さL2に接続部443の厚みを加えた長さとする必要がある。
よって、折り返し部長さL3は、第二カバー部高さL2との関係では、式2が成立する。
L3>L2 ・・・(式2)
【0047】
そして、式1と式2とを用いることにより、開口高さL1と第二カバー部高さL2との関係である式3が導かれる。
L1>L2 ・・・(式3)
この式3が示すように、本実施形態の取手部材20においては、開口高さL1が第二カバー部高さL2よりも長くなるように成形される。これにより、第二内部型板422の折り返し部441が取手部材20の内部から抜き取り可能となっている。
【0048】
型締めユニット32のクロスヘッド321が駆動して金型40の移動側43と中プレート側42が離間すると、中プレート側42の第一突部425が移動側43の第一スライドコア438から離間するとともに、中プレート側42の第二突部426が移動側43の第二スライドコア439から離間する(
図7参照)。これにより、第一突部425が第一スライドコア438に当接してこの第一スライドコア438の動きを制限していた状態が解除されるとともに、第二突部426が第二スライドコア439に当接してこの第二スライドコア439の動きを制限していた状態が解除される。
また、中プレート側42のアンギュラピン427が中プレート421に支持されており、かつ、そのアンギュラピン427の先端がキャビティ434から離れる方向に傾斜した状態で中プレート421に取り付けられているため、移動側43が中プレート側42から離間することで、第一スライドコア438がそのアンギュラピン427の傾斜方向に応じてキャビティ434から離れる方向にスライドする。これにより、第一スライドコア438は、キャビティ434に成形された取手部材20の係止部25から離間する方向へ移動する。また、第一スライドコア438の移動に伴って、第二スライドコア439が、キャビティ434に成形された取手部材20の第一カバー部23の上部231から離間する方向へ移動する。
【0049】
金型40の移動側43が中プレート側42から十分に離間すると、型締めユニット32のエジェクタ機構322が駆動して、
図9に示すように、エジェクタプレート436及びエジェクタピン435が成形品の方へ移動し、エジェクタピン435の先端に当接している成形品がキャビティ434から押し出される。
そして、成形品がキャビティ434から離間すると、
図10に示すように、自由落下する。これにより、成形品を金型40から取り出すことができる。
以上、説明した手順を実行することにより、取手部材成形装置30を使用して、取手部材20を射出成形することができる。
【0050】
なお、取手部材20は、射出成形ではなく、ブロー成形により製造することも可能である。
ただし、ブロー成形により製造した場合は、製品の成形厚さにバラツキが生じるため、重量物を支える取手には向かない。
また、ブロー成形は、一般的な射出成形と比較して成形サイクルが長くなるため、必ずしも大量成形には向かず、コスト高になる。
さらに、ブロー成形された製品を金型から取り出す際に、弾性変形を伴う抜き取り工程が必要となり、人手又はロボット等に依存せざるを得ないため、製造コストが高くなる。
よって、取手部材20は、射出成形により製造する方が望ましい。
【0051】
また、射出成形により一体成形された取手部材20は、スロットマシン1の筐体1bの側壁10に穿設された手掛孔11に対して、次の手順で装着される。
まず、スロットマシン1の手掛孔11に対して、取手部材20の第二カバー部24の上部241を挿入する(
図11(i))。
次に、筐体1bの外面における手掛孔11の周縁に形成された周縁凹部12の上部段差部分に、取手部材20の上鍔部222の上端部を当接させる(
図11(ii))。
そして、その当接部分を軸として取手部材20を回動させながら、当該取手部材20の第一カバー部23を手掛孔11に挿入する。そうすると、下鍔部221の裏面に形成された係止部25の端部が手掛孔11の下側縁部13に到達する。
ここで、さらに下鍔部221を手掛孔11の方へ押し込むと、係止部25が弾性変形して、手掛孔11の下側縁部13に乗り上げるとともに、係止部25の鉤状部251が手掛孔11の下側縁部13における筐体1bの内側に達すると当該内側に係止する(
図11(iii))。
これにより、手掛孔11に対する取手部材20の装着が完了する。
【0052】
このように、手掛孔11に対する取手部材20の装着は、当該取手部材20の上鍔部222を手掛孔11の周縁凹部12に当接させながら下鍔部221を押し込むだけでよく、ワンタッチの作業で済むので作業性がよく、作業負担が非常に小さい。
【0053】
また、手掛孔11に対して取手部材20が装着された状態においては、取手部材20の上鍔部222の裏面が手掛孔11の上側縁部14における筐体1bの外面側に接触し、取手部材20の第二カバー部24における上鍔部222に対向する面が手掛孔11の上側縁部14における筐体1bの内面側に接触しているので、それら取手部材20の上鍔部222と第二カバー部24とにより手掛孔11の上側縁部14を挟持した状態となっている。さらに、取手部材20の下鍔部221の裏面の端部が手掛孔11の下側縁部13における筐体1bの外面側に接触し、取手部材20の係止部25の鉤状部251が手掛孔11の下側縁部13における筐体1bの内面側に接触しているので、それら取手部材20の下鍔部221の裏面端部と係止部25の鉤状部251とにより手掛孔11の下側縁部13を挟持した状態となっている。
このため、取手部材20を手掛孔11から脱抜する方向、例えば、取手部材20を筐体1bの外方へ引き抜く方向や、筐体1bの内部へ押し込む方向へ、当該取手部材20を動かそうとしても、取手部材20の上述した部分が手掛孔11の上側縁部14又は下側縁部13に当接するので、取手部材20は、手掛孔11から脱抜不能となっている。
【0054】
さらに、スロットマシン1を運搬するに際しては、取手部材20に指を差し入れたときに、その指から手の平にかけてコの字状に曲げることができるので、この状態で手掛孔11の上側縁部14をしっかり掴みながら、スロットマシン1を持ち上げて運搬することができる。
しかも、取手部材20が手掛孔11に装着された状態においては、取手部材20の鍔部22が手掛孔11の周縁凹部12に収容された状態となるが、手掛孔11の周縁凹部12の深さと取手部材20の鍔部22の厚みとを同一とすることにより、取手部材20の鍔部22の表面と筐体1bの外側面が同一面となり、ここに段差や隙間が形成されないことから、それら手掛孔11の周縁凹部12と取手部材20の鍔部22との間に不正工具を挿入させようとする行為を防止できる。
【0055】
また、取手部材20が手掛孔11に装着された状態においては、手掛孔11の上側縁部14や下側縁部13と取手部材20との間が略密着した状態となっている。また、手掛孔11の左右の縁部においても、取手部材20との間が略密着した状態となっている。ここで、それら手掛孔11の縁部と取手部材20との間隙を、筐体1bの外部から内部に向かう方向に辿ってみると、何度も折れ曲がった、いわゆるラビリンス構造となっている。このため、仮に、取手部材20の鍔部22と手掛孔11の周縁凹部13との間に薄板状あるいは針金状の不正部材が挿入されたとしても、ラビリンス構造内を通して、その不正部材を筐体1bの内部に到達させることは困難である。これにより、その不正部材を使用してスロットマシン1の内部装置にアクセスする不正行為を防止できる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の取手部材及び遊技機によれば、開口高さが第二カバー部高さよりも長いことから、当該取手部材を射出成型するに際して、第二カバー部の内部形状を成形する型板を開口から抜き取ることができる。これにより、射出成形法を用いて取手部材を一体成形することができる。
また、取手部材の全体を一体成形可能としたので、取手部材の部品点数を一点のみとすることができる。よって、取手部材の管理負担を軽減できる。
さらに、スロットマシンの筐体の手掛孔に対しては、取手部材を押し込むだけでよく、ワンタッチで装着できるので、作業性がよく、作業者の負担を軽減できる。
【0057】
そして、取手部材を一体成形可能としたことから、金型の数を一つにすることができる。よって、製造コストを低減できる。
しかも、手掛孔に装着された取手部材は、係止部により手掛孔の下側縁部に係止されるため、脱抜困難となっている。これにより、手掛孔が取手部材により完全に閉塞されるので、手掛孔を介してスロットマシンの内部装置にアクセスしようとする不正行為を防止できる。
【0058】
以上、本発明の取手部材及び遊技機の好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る取手部材及び遊技機は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、
図5等に示す金型40は、取手部材20を一つのみ形成可能とするものであるが、一つのみに限るものではなく、複数の取手部材20を成形可能な金型40を用意して、取手部材20を一度に複数個成形するようにしてもよい。
また、金型40においては、スプルー414やランナー内に充填された材料を所定の温度で維持するための加温機構(ホットランナー)を設けることもできる。
【0059】
さらに、上述した実施形態においては、取手部材20における係止部25の形状を、下鍔部221の裏面から直交方向に延設した先端鉤状の形状としたが、係止部25の形状は、この形状に限るものではなく、例えば、
図12に係止部25aとして示すように、第一カバー部23の下部234の底面235から斜め下方向に、かつ下鍔部221に向かう方向に延設された板ばね状に形成することもできる。
係止部25aをこのような形状に形成することにより、この係止部25aが形成された取手部材20aを遊技機1の筐体1bの手掛孔11に対し容易に装着することができる。この装着の手順を、
図13に示す。例えば、手掛孔11に対して、取手部材20aの第二カバー部24の上部241を挿入し(
図13(i))、筐体1bの外面における手掛孔11の周縁に形成された周縁凹部12の上部段差部分に、取手部材20aの上鍔部222の上端部を当接させて、その当接部分を軸として取手部材20aを回動させながら、当該取手部材20aの第一カバー部23を手掛孔11に挿入する(
図13(ii))。そうすると、第一カバー部23の下部234の底面235に形成された係止部25aが手掛孔11の下側縁部13に乗り上げる。このとき、係止部25aは、板ばねとして機能し、手掛孔11の下側縁部13からの抗力を受けて、第一カバー部23の下部234の底面235に近づく方向に弾性変形しながら、その手掛孔11の下側縁部13に乗り上げる。そして、さらに下鍔部221を手掛孔11の方へ押し込むと、係止部25aの先端252が手掛孔11の下側縁部13における筐体1bの内側に達し、この時点で、係止部25aに対する手掛孔11の下側縁部13からの抗力が解除されて係止部25aが元の形状に復帰し、当該係止部25aの先端252が手掛孔11の下側縁部13における筐体1bの内側に係止する。これにより、手掛孔11に対する取手部材20aの装着が完了する。
【0060】
このように、
図12、
図13に示した形状で取手部材20aの係止部25aを形成した場合でも、手掛孔11への装着をワンタッチの作業で行えるので、作業負担が非常に小さい。
また、
図12、
図13に示す取手部材20aにおいても、開口高さL1が第二カバー部高さL2よりも高くなっている(
図12(v)参照)。このため、当該取手部材20aは、例えば、
図5に示したコの字状の第二内部型板422等を備える金型40を用いて成形することができる。