【実施例】
【0065】
(実施例−1における軟磁性粒子の小粒径比率p1の測定)
水アトマイズ法を用いてFe
71.4at%Cr
2at%Ni
6at%P
10.8at%C
7.8at%B
2at%なる組成を有する非晶質軟磁性粒子を作製した。
【0066】
このときの軟磁性粒子の粒度分布は、日機装(株)製のマイクロトラック粒度分布測定装置 MT3300EXを用いて個数分布および体積分布で測定した。その結果が
図7(a)(b)に示されている。以下の表1、表2に実施例−1および後述する実施例2で使用した軟磁性粒子の粒度を示す。なお、後述する比較例は実施例−1の粒度と同じものである。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
そして、前記軟磁性粒子、アクリル樹脂(バインダー樹脂)、ステアリン酸亜鉛、及びシランカップリング剤を溶媒(水)中にて混合して泥状のスラリーとした。スラリーは固形成分(水以外である)を80wt%、残りを水(溶媒)とした。アクリル樹脂の配合量は前記固形成分に対して2.0wt%、ステアリン酸亜鉛は固形成分に対して0.3wt%、カップリング剤は軟磁性粒子に対して0.5wt%とした。
【0070】
次に、スラリーを
図6(模式図)に示すスプレードライヤー装置20に入れた。
スプレードライヤーについて説明する。スプレードライヤー装置20内には回転子21が設けられ、装置上部からスラリー19を回転子21に向けて注入する。回転子21は所定の回転数により回転しており、装置内部でスラリー19を遠心力により噴霧する。さらに装置内部に熱風を導入し、これによりスラリー19の溶剤を瞬時に乾燥させる。そして、装置下部から粒状になった混合磁性粉末(造粒粉)10を回収する。
【0071】
本実施例では、回転子21の回転数を4000〜6000rpmの範囲内で調整した。また装置内に導入する熱風温度を130〜170℃の範囲とし、チャンバー下部の温度を80〜90℃の範囲内に制御した。またチャンバー内の圧力を2mmH
2O(約0.02kPa)とした。またチャンバー内をエアー(空気)雰囲気とした。
【0072】
上記により得られた複合磁性粉末は粗大粉末を除去するために目開き212μmのふるいを通し、ふるいを通した後の複合磁性粉末の平均粒径は80μm〜110μmの範囲内であった。
【0073】
図8(a)は、本実施例の複合磁性粉末を、FIB(フォーカスイオンビーム)により切断した断面のSEM写真である。
【0074】
FIBによる切断では、電界によりGaから引き出したGaイオンを細く絞り試料上を走査することにより、特定箇所を切断できる。
【0075】
図8に示すように複合磁性粉末の断面形状は略円形であり、このSEM写真上に、表面近似ラインA、及び中心から表面近似ラインAに向けて1/4、1/2、及び3/4の距離にある前記表面近似ラインAと相似形状の内側ラインD及び中間ラインC、Bを夫々描画した。表面近似ラインAよりも最表面側に外れる軟磁性粒子の数をαとし、表面近似ラインA上を縦断する軟磁性粒子の数をβとしたとき、β/(α+β)が90%以上となっていることを確認した。
【0076】
各ラインの描画について
図8(b)〜
図8(e)を用いて説明する。
まず
図8(b)に示すように、断面周形状にほぼ沿うようにして表面近似ラインAを描画する。このとき、表面近似ラインAを断面の最表面(バインダー樹脂の部分)よりも少し内側の軟磁性粒子の位置に描画する。
【0077】
次に
図8(c)では、断面の中心を求める。中心の測定は目測で行った。
次に
図8(d)では、中心から表面近似ラインAまで通じる直線を描き、さらに前記直線を四等分する。
【0078】
次に
図8(e)では、表面近似ラインAと相似状のラインB〜Dを
図8(d)にて四分割した各位置に描画する。
【0079】
続いて、各ラインA〜D上を縦断する軟磁性粒子の粒径分布を調べた。測定は目視で行った。軟磁性粒子の断面が円形である場合は直径が粒径であり、円形以外の場合は画像解析ソフトを用いて軟磁性粒子の断面積を算出し、その面積に相当する円の直径を粒径とした。なおここでいう粒径とは、
図8(a)に現れる切断面での粒径であり、粒径の算出を各軟磁性粒子の外周にて行わない。そして本実施例では、5種類の複合磁性粉末について各ラインA〜D上における軟磁性粒子の粒径分布を調べた。
【0080】
図9は、5種類の試料の各実験結果を平均した、本実施例の複合磁性粉末の表面近似ラインA上、中間ラインB,C上及び内側ラインD上における軟磁性粒子の粒径比率(存在割合)を示すグラフである。本実施例では、3μm以下を「小粒径」とした。
【0081】
図9に示すように、粒径が3μm以下の小粒径比率p1は、内側ラインD、第1中間ラインC、第2中間ラインB及び表面近似ラインAの順に大きくなることがわかった。
図9に示すように、表面近似ラインA上での小粒径比率p1は、50%を越え、内側ラインD、第1中間ラインC、及び第2中間ラインB上での小粒径比率p1に比べて20%〜30%以上、大きくできることがわかった。
【0082】
また
図9に示すように、表面近似ラインA上では3μmよりも粒径が大きくなると粒径比率は徐々に低下しており、一方、中間ラインB,C及び内側ラインDでの粒径比率は3μm〜15μm程度で最も大きくなっており、表面近似ラインAと、中間ラインB,C及び内側ラインDとでは粒度分布の傾向が異なることがわかった。
【0083】
なお個々の実験結果においても、小粒径比率p1は、表面近似ラインAが一番大きくなったが、誤差を小さくするためランダムに選択した複数の試料を平均化して小粒径比率p1を求めることが好ましい。
【0084】
(実施例−2における軟磁性粒子の小粒径比率p1の測定)
実施例−2には、上記した実施例−1と同じ非晶質軟磁性粒子を用いた。
【0085】
また、実施例−2における軟磁性粒子の粒度分布は実施例−1と同様に日機装(株)製のマイクロトラック粒度分布測定装置MT3300EXを用いて個数分布および体積分布で測定した。
【0086】
図10は実施例−2の粒度分布を示している。
図10(a)の粒度分布は個数分布によるものであり、
図10(b)の粒度分布は体積分布によるものである。
【0087】
ここで実施例−1と実施例−2の違いは、軟磁性粒子に対する粒度調整の有無にある。すなわち、実施例−1では、
図6に示すスプレードライヤー装置により、混合磁性粉末(造粒粉)10を製造する際、軟磁性粒子に対して特に粒度調整を施していないが、実施例−2では、実施例−1の軟磁性粒子に対して、大粒径粒子をカットした粒度調整を施し、前記粒度調整が施された軟磁性粉末を用いて、混合磁性粉末(造粒粉)10を製造した。粒度調整は、日清エンジニアリング(株)製の精密空気分級機TC−15NSを用いて、空気分級法にて行った。空気分級法では遠心力と空気の抗力を利用し、粒径の大きい粒子と小さい粒子とを分級することができる。ここで表2に示す実施例−1のD50である10.57μmの1.5倍以上である16μm以上の粒径を大粒径とし、空気分級法によって16μm以上の軟磁性粒子をカットし、16μmよりも小さい粒径の軟磁性粒子を実施例−2とした。ただし、空気分級法では遠心力と空気の抗力による分級であるため、大粒径粒子のカットとは完全に16μm以上の粒径の軟磁性粒子が除去できるものではない。従って、大粒径粒子のカットとは、完全に16μm以上の粒径の軟磁性粒子が除去された状態を必ずしも意味するものではなく、16μm以上の粒径の軟磁性粒子が多少含まれていても良い。
【0088】
これにより、
図7と
図10および表1、表2に示されるように、実施例−2における大粒径粒子をカットした軟磁性粒子の粒度分布は、実施例−1における粒度調整を施していない軟磁性粒子の粒度分布と異なるものとなる。
【0089】
そして、大粒径粒子をカットした軟磁性粒子を用いて、実施例−1と同様の手法により、混合磁性粉末(造粒粉)を形成した。
【0090】
図11は、実施例−2における複合磁性粉末の断面のSEM写真である。
図11に対し、
図8に示す実施例−1と同様に、表面近似ラインA、中間ラインB、C及び、内側ラインDを夫々、描画した。そして、各ライン上における軟磁性粒子の粒径比率(存在割合)を求めた。その実験結果が
図12に示されている。なお、3μm以下が「小粒径」である。
図12の実験結果は、5種類の試料の平均である。
【0091】
図12に示すように、粒径が3μm以下の小粒径比率p1は、内側ラインD、第1中間ラインC、第2中間ラインB及び表面近似ラインAの順に大きくなることがわかった。また、
図12に示すように、表面近似ラインA上での小粒径比率p1は、内側ラインD、第1中間ラインC、及び第2中間ラインB上での小粒径比率p1に比べて20%以上、大きくできることがわかった。
【0092】
図12に示すように、実施例−2では、各ラインA〜Dにおいて、粒径が27μm以上の存在割合がほぼ0%となっていることがわかった。
【0093】
(実施例−1及び実施例−2における複合磁性粉末の表面の状態について)
図13(a)は、実施例−1における複合磁性粉末の表面でのSEM写真であり、
図13(b)は、実施例−2における複合磁性粉末の表面でのSEM写真である。
【0094】
大粒径粒子をカットする粒度調整を施した実施例−2では、粒度調整を施していない実施例−1に比べて、表面の凹凸が小さくなることがわかった。また実施例−2のほうが、実施例−1に比べて、表面に露出する軟磁性粒子の面積が小さくなった。すなわち
図13(a)に示す実施例−1では、バインダー樹脂からなる表皮層が一部欠落して、軟磁性粒子が表面に露出する箇所が見られたが、
図13(b)に示す実施例−2では、バインダー樹脂からなる表皮層が全体に形成され、軟磁性粒子の表面への露出を効果的に抑えることができた。
【0095】
(比較例における軟磁性粒子の小粒径比率p1の測定)
比較例の実験では上記実施例−1と同じ軟磁性粒子を使用した。よって粒度分布は
図7と同じである。比較例では、軟磁性粒子(97.2wt%)及びアクリル樹脂(バインダー樹脂)(2wt%)、カップリング剤(0.5wt%)、潤滑剤(ステアリング酸亜鉛)(0.3wt%)を有する原料を容器に秤量した。続いて、前記原料を遊星式攪拌・脱泡装置(倉敷紡績製 マゼルスター)にて混合し、次に溶媒を飛ばし、乾燥、固化した。さらに、固化した原料をスクリーン式中砕機(ホソカワミクロン製 フェザミル)により粉砕し、さらに目開き300μmのふるいで分級して複合磁性粉末を得た。
【0096】
図14は、比較例の複合磁性粉末をFIB(フォーカスイオンビーム)により切断した断面のSEM写真である。
図14に示すように複合磁性粉末の断面形状は円形や楕円形と違う異形状となっている。かかる場合でも表面近似ラインAよりも最表面側に外れる軟磁性粒子の数をαとし、表面近似ラインAと重なる軟磁性粒子の数をβとしたとき、β/(α+β)が90%以上となるように表面近似ラインAを特定した。また
図14に示すように、表面近似ラインAを断面周形状にほぼ沿うとともに、できる限り緩やかな線で描画した。また
図14に示すように、中心から表面近似ラインAに向けて1/4、1/2及び3/4の距離に夫々、表面近似ラインAと相似状のラインB〜Dを引いた。
【0097】
続いて、各ラインA〜D上を縦断する軟磁性粒子の粒径分布を調べた。測定は目視で行った。軟磁性粒子の断面が略円形である場合は直径が粒径であり、円形以外の場合は画像解析ソフトを用いて軟磁性粒子の断面積を算出し、その面積に相当する円の直径を粒径とした。なお、ここで言う粒径とは
図14に現れる切断面での粒径であり、粒径の算出を各軟磁性粒子の外周にて行っていない。その実験結果が
図15に示されている。
図15の実験結果は、5種類の試料の平均である。
【0098】
図15に示すように、3μm以下の小粒径比率p1は、中心から1/2の距離にある第1中間ラインC上で最も大きくなった。また
図15に示すように表面近似ラインA上では6〜9μmの粒径比率が最も大きくなっており、小粒径の軟磁性粒子が表面近似ラインA上に凝集している本実施例と異なるものであった。
図14のSEM写真を見てもわかるように、軟磁性粒子の粒径は中心から表面に向けてばらついており(規則性がない)、
図8の実施例のように、複合磁性粉末の中心付近に大きい軟磁性粒子が凝集し、表面側に粒径の小さい軟磁性粒子が凝集する形態とはなっていないことがわかった。
【0099】
(実施例における樹脂の割合及び空隙の割合の測定)
次に実施例の複合磁性粉末を用い、各ラインA〜D上における樹脂の割合、及び空隙の割合を調べた。なお実施例には、実施例−1を用いた。
【0100】
図16(a)は、実験で使用した複合磁性粉末の断面の部分拡大SEM写真である。
図16(b)は
図16(a)の模式図である。
図16(a)にはラインA〜Cの一部が見えている。
図16(a)に示す各ラインA〜C、及び内側ラインDの全長、各ラインA〜D上に位置する軟磁性粒子、バインダー樹脂及び空隙の長さを夫々、画像解析ソフトで測定した。そして各ラインA〜Dの全長に対するバインダー樹脂の合計長さ、及び空隙の合計長さを割って、各ラインA〜Dのバインダー樹脂の割合及び空隙の割合を求めた。
【0101】
ここで
図16(a)(b)に示すaは、空隙の幅、bは、樹脂層の幅、cは、軟磁性粒子の幅を指す。各領域の幅を線と矢印で示した。
【0102】
なお以下に示すバインダー樹脂の割合及び空隙の割合は、5種類の試料の平均である。
図17(a)は、実施例における各ラインA〜D上でのバインダー樹脂の割合を示す実験結果であり、
図17(b)は、実施例における各ラインA〜D上での空隙の割合を示す実験結果である。また
図17(c)は、実施例における各ラインA〜D上でのバインダー樹脂及び空隙の合計割合を示す実験結果である。
【0103】
図17(a)に示すように、バインダー樹脂の割合は、表面近似ラインAが最も大きくなることがわかった。また内側ラインD、第1中間ラインC及び第2中間ラインBでのバインダー樹脂の割合は非常に小さくなることがわかった。このようにバインダー樹脂は複合磁性粉末の表面側に凝集しやすいことがわかった。一方、
図17(b)に示すように、空隙の割合は、内側ラインDが最も大きくなることがわかった。特に内側ラインDでの空隙の割合は、表面近似ラインAに比べてかなり大きくなることがわかった。また第1中間ラインC及び第2中間ラインBでも空隙の割合は、内側ラインDに及ばないものの比較的大きくなった。このように複合磁性粉末の内側に空隙が形成されやすいことがわかった。
【0104】
また
図17(c)に示すように、バインダー樹脂と空隙との合計割合は、内側ラインDで最も大きくなることがわかった。また、表面近似ラインA、第1中間ラインC及び第2中間ラインBでの各合計割合は、ほぼ同じ値となった。
図17(c)は、
図17(a)と
図17(b)との各実験結果を足したものである。よって内側ラインDでは、バインダー樹脂の割合が表面近似ラインAよりも小さくなるが、空隙の割合が表面近似ラインAに比較してかなり大きいために、上記した合計割合が内側ラインDで最も大きくなった。
【0105】
(比較例における樹脂の割合及び空隙の割合の測定)
次に比較例の複合磁性粉末を用い、各ラインA〜D上における樹脂の割合、及び空隙の割合を調べた。樹脂の割合、及び空隙の割合の測定は、上記実施例での測定と同じである。
【0106】
なお以下に示すバインダー樹脂の割合及び空隙の割合は、5種類の試料の平均である。
図18(a)は、比較例における各ラインA〜D上でのバインダー樹脂の割合を示す実験結果であり、
図18(b)は、比較例における各ラインA〜D上での空隙の割合を示す実験結果である。
【0107】
図18(a)に示すように、バインダー樹脂の割合は、各ラインA〜D上でほぼ同じとなった。このように比較例では実施例のように、バインダー樹脂の割合が表面近似ラインAで最も大きくなる結果にならなかった。また
図18(b)に示すように、空隙の割合は、各ラインA〜D上でほぼ同じとなった。このように比較例では実施例のように、空隙の割合が内側ラインDで最も大きくなる結果にならなかった。
【0108】
(実施例−1、実施例−2及び比較例における電気抵抗率の測定)
スプレードライヤー装置を用いて製造された本実施例の複合磁性粉末を金型に充填し、面圧198〜588MPa(1〜6t/cm
2)で加圧成形して外径12mm、内径6mm、厚さ3mmの圧粉磁心を作製した。得られた圧粉磁心を窒素気流雰囲気中、372℃で17分間、熱処理を行った。その後、シリコーン溶液(13.5wt%)に含浸させて、70℃、30分間乾燥させた後、285℃で1分間加熱してコーティング処理を施した。
【0109】
得られた圧粉磁心の電気抵抗率は、スーパーメガオームメーター(DKK−TOA製SM−8213)を用いて電気抵抗を測定し、コアの外径、内径、厚さにより算出した。また、コア密度をコアの外径、内径、厚さ、重量により算出した。
【0110】
続いて、攪拌・脱泡混合−粉砕による比較例の複合磁性粉末から圧粉磁心を作製した。製造条件は上記実施例と同じとした。
【0111】
図19には、実施例−1、実施例−2および比較例におけるコア密度と電気抵抗率との関係が示されている。
【0112】
図19に示すように、実施例−1及び実施例−2ともにコア密度を小さくすることで、電気抵抗率が大きくなることがわかった。コア密度が小さくなれば、それだけコア内部に空隙が多くなり、電気抵抗率が大きくなる。
【0113】
図19に示すように、同じコア密度で評価すると、実施例−2のほうが、実施例−1よりも電気抵抗率が大きくなった。大粒径粒子をカットした実施例−2では、電流パスを形成するのに、実施例−1に比べて、より多くの粒子間での接触が必要となる。また
図13を用いて説明したように、実施例−2のほうが、実施例−1に比べて、複合磁性粉末の表面に露出する粉末面積を小さくできる。以上により、実施例−2のほうが実施例−1に比べて電気抵抗率を高くできる。
【0114】
一方、実施例と比較例との電気抵抗率を比較すると、
図19によると本実施例は比較例に対し同じコア密度であれば数倍〜十倍程度の高い絶縁抵抗を得ることができた。このように実施例において高い電気抵抗率を得ることができるのは、複合磁性粉末の小粒径比率p1が内側よりも表面側で大きくなっているためであると推測される。これにより、比較例と異なって、実施例では、各複合磁性粉末間の接触抵抗が高くなり、また複合磁性粉末の内部に適度な空隙が形成され、複合磁性粉末を圧縮成形したときに前記空隙を残すことができ、このため、圧粉磁心の高電気抵抗率化を図ることができるものと考えられる。
【0115】
また、本実施例では、バインダー樹脂の割合を表面近似ラインA上のほうが内側ラインD上よりも大きくでき、また空隙の割合を内側ラインD上のほうが表面近似ラインA上よりも大きくできたが、これにより複合磁性粉末を圧縮成形したときの各複合磁性粉末間での高絶縁を保ちやすく(接触抵抗を高くでき)、電気抵抗率の高い圧粉磁心を得ることができるものと考えられる。
【0116】
図20は、本実施例の複合磁性粉末を圧縮成形した圧粉磁心の断面のSEM写真である。
【0117】
図20に示すように圧縮成形しても各複合磁性粉末を構成する小粒径の軟磁性粒子が占める表面付近がかすかに残るため(
図20に各複合磁性粉末間の境界線を示す)、圧粉磁心を本実施例の複合磁性粉末を用いて製造したことを推測することが可能であるとわかった。