(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガラス転移温度が2℃超〜80℃未満、数平均分子量が17,000超〜250,000以下、水酸基価が2〜100(mgKOH/g)の(メタ)アクリル系共重合体(A)と、ポリイソシアネート化合物(B)と、金属のケイ酸塩もしくは炭酸塩からなるメディアン径が0.1μm〜20μmの無機系粒子(C)とを含有し、前記(A)〜(C)の合計100重量%中、前記無機系粒子(C)を5〜30重量%含有する、太陽電池裏面保護シート用易接着剤。
(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度が10℃以上〜70℃以下、数平均分子量が25,000以上〜250,000以下である、請求項1記載の太陽電池裏面保護シート用易接着剤。
無機系粒子(C)が、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト及びハイドロタルサイトからなる群より選ばれる、請求項1または2記載の太陽電池裏面保護シート用易接着剤。
(メタ)アクリル系共重合体(A)中の水酸基1個に対して、イソシアネート基が0.1〜5個の範囲でポリイソシアネート化合物(B)を含有する、請求項1〜3いずれか1項に記載の太陽電池裏面保護シート用易接着剤。
(メタ)アクリル系共重合体(A)が、側鎖5〜500個当たり1個の炭素−炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系共重合体(A1)である、請求項1〜4いずれか1項に記載の太陽電池裏面保護シート用易接着剤。
前記(メタ)アクリル系共重合体(A1)が、下記アクリル系共重合体(A1−1)〜(A1−4)からなる群より選ばれる共重合体である、請求項5記載の太陽電池裏面保護シート用易接着剤。
(メタ)アクリル系共重合体(A1−1):グリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a1)と、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a2)と、グリシジル基も水酸基もカルボキシル基も有さない(メタ)アクリル系モノマー(a4)とを構成単位とする共重合体中の側鎖のグリシジル基に、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a3)を反応させてなる(メタ)アクリル系共重合体、
(メタ)アクリル系共重合体(A1−2):カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a3)と、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a2)と、グリシジル基も水酸基もカルボキシル基も有さない(メタ)アクリル系モノマー(a4)とを構成単位とする共重合体中のカルボキシル基に、グリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a1)を反応させてなる(メタ)アクリル系共重合体、
(メタ)アクリル系共重合体(A1−3):水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a2)と、水酸基を有さない(メタ)アクリル系モノマー(a6)とを構成単位とする共重合体中の水酸基の一部に、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a5)を反応させてなる(メタ)アクリル系共重合体、
(メタ)アクリル系共重合体(A1−4):無水マレイン酸と、水酸基を有するアクリル系モノマー(a2)と、水酸基を有さないアクリル系モノマー(a6)とを構成単位とする共重合体中の酸無水物基に、水酸基を有するアクリル系モノマー(a2)を反応させてなる(メタ)アクリル系共重合体。
請求項1〜7いずれか1項に記載の太陽電池裏面保護シート用易接着剤によって形成される硬化処理前の易接着剤層と、プラスチックフィルムとを具備する太陽電池裏面保護シート。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識の高まりから環境汚染がなくクリーンなエネルギー源として太陽電池が注目され、有用なエネルギー資源としての太陽エネルギー利用の面から鋭意研究され実用化が進んでいる。
太陽電池素子には様々な形態があり、その代表的なものとして、結晶シリコン太陽電池素子、多結晶シリコン太陽電池素子、非晶質シリコン太陽電池素子、銅インジウムセレナイド太陽電池素子、化合物半導体太陽電池素子等が知られている。この中でも多結晶シリコン太陽電池素子や、非晶質シリコン太陽電池素子、化合物半導体太陽電池素子は、比較的低コストであり、大面積化が可能であるため、各方面で活発に研究開発が行われている。また、これらの太陽電池素子の中でも、導体金属基板上にシリコンを積層し、更にその上に透明導電層を形成した非晶質シリコン太陽電池素子に代表される薄膜太陽電池素子は軽量であり、また耐衝撃性やフレキシブル性に富んでいるので、太陽電池における将来の形態として有望視されている。
【0003】
太陽電池モジュールのうち、単純なものは、太陽電池素子の両面に封止剤、ガラス板を、順に積層した構成形態を呈する。ガラス板は、透明性、耐候性、耐擦傷性に優れることから、太陽の受光面側の保護材として、現在も一般的に用いられている。しかし、透明性を必要としない非受光面側においては、コストや安全性、加工性の面から、ガラス板以外の様々な太陽電池裏面保護シート(以下「裏面保護シート」とも称する)が提案され(例えば、特許文献1)、ガラス板から裏面保護シートに置き換わりつつある。また、封止剤は、透明性が高く、耐湿性が優れているエチレン−酢酸ビニル共重合体(Ethylene-Vinyl Acetate copolymer、以下「EVA」と称する)が通常用いられている。
【0004】
裏面保護シートとしては、(i)ポリエステルフィルム等の単層フィルムや、(ii)ポリエステルフィルム等に金属酸化物や非金属酸化物の蒸着層を設けたものや、(iii)ポリエステルフィルム、フッ素系フィルム、オレフィンフィルム、アルミニウム箔などのフィルムを積層した多層フィルムなどが挙げられる。
多層構造の裏面保護シートは、その多層構造により、さまざまな性能を付与することができる。例えば、ポリエステルフィルムを用いることで絶縁性を、アルミニウム箔を用いることで水蒸気バリア性を付与することができる(特許文献2〜4参照)。
どのような裏面保護シートを用いるかは、太陽電池モジュールが用いられる製品・用途によって、適宜選択され得る。
【0005】
裏面保護シートに求められる種々の性能の中で、封止剤との接着性および接着耐久性は基本的且つ重要な要求性能である。封止剤との接着性が不十分であると、裏面保護シートが剥がれ、太陽電池を水分や外的要因から保護することができなくなり、太陽電池の出力劣化を招くことになる。
【0006】
封止剤との接着性を確保する方法として、(1)裏面保護シートの封止剤と接する面に易接着処理を施す方法や、(2)裏面保護シートの封止剤と接する面に、封止剤との接着性の高いフィルムを使用する方法が挙げられる。
【0007】
上記(1)の方法としては、さらにコロナ処理などの表面処理や、易接着剤を塗布する易接着コート処理がある。
しかし、前者のコロナ処理などの表面処理は、初期の接着性は確保されるが、接着耐久性に劣ることが問題となっている。
後者の易接着コート処理の場合に用いられる易接着剤が特許文献1、5、6に開示されている。
【0008】
特許文献5には、オキサゾリン基含有ポリマー、尿素樹脂、メラミン樹脂およびエポキシ樹脂からなる群より選ばれる架橋剤と、ガラス転移点が20〜100℃のポリエステル樹脂またはアクリル樹脂から選ばれる架橋剤以外の樹脂成分とを含有する塗液が開示されている(同文献の請求項2、3参照)。より具体的には、エポキシ樹脂とアクリル樹脂とを含有する塗液を用いる例が記載されている(同文献の実施例5参照)。
また、特許文献5の段落番号0063には、ブロッキング防止等の目的にために、前記塗液に、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛等の添加が開示されている。
【0009】
特許文献6には、ポリエステルフィルム上に、ポリエステル系樹脂およびポリエステルポリウレタン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂がアルキル化メラミンやポリイソシアネートの架橋剤により架橋されている接着改善層を裏面保護シートの封止剤と接する面に設ける構成が開示されている。
【0010】
上記(2)の方法(裏面保護シートの封止剤と接する面に、封止剤との接着性の高いフィルムを使用する方法)としては、例えば、特許文献7にはポリブチレンテレフタレート(PBT)を使用する方法が記載されている。
【0011】
特許文献8には、太陽電池モジュールを構成する充填材(封止剤)と貼り合わされる面に、下記一般式(I)で表わされるモノマーを含有するモノマー成分を重合させてなるアクリル系ポリマーを含有するアクリル系接着剤からなる接着剤層が形成されている太陽電池モジュール用バックシートが開示されている。
<化1> CH
2=C(R
1)−CO−OZ ・・・式(I)
式(I)中のR
1は、水素原子またはメチル基、Zは炭素数4〜25の炭化水素基を示す。
同文献の段落番号0053には、前記アクリル系接着剤に添加し得る一般的な添加剤の一種として、コロイド状シリカ、アルミナゾルなどの無機微粒子や、チタン白が例示されている。
なお、特許文献1にも特許文献8と類似した内容が開示されており、特許文献1の段落番号0068にも無機微粒子等が例示されている。
【0012】
また、特許文献9には、フッ素系共重合体、アクリル系共重合体、又はポリウレタン系共重合体(重合体a)と、光硬化のためのエチレン性不飽和基を1個以上有する重合性モノマー及び/又はオリゴマー(モノマーb)、及び/又は分子内に1個以上のエチレン性不飽和基と2個以上のイソシアネート基を含有する化合物(ポリイソシアネートc)とからなるプライマー層を有する太陽電池素子の裏面保護シートが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。また、本明細書において「〜」を用いて特定される数値範囲は、特にことわらない限り「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。また、本明細書において「フィルム」や「シート」は、厚みによって区別されないものとする。換言すると、本明細書の「シート」は、厚みの薄いフィルム状のものも含まれ、本明細書の「フィルム」は、厚みのあるシート状のものも含まれるものとする。
【0026】
図1は、本発明に係る太陽電池用モジュールの模式的断面図である。太陽電池用モジュールは、太陽電池表面保護材(I)、受光面側の封止剤(II)、太陽電池セル(III)、非受光面側の封止剤(IV)、太陽電池裏面保護シート(V)を少なくとも有する。太陽電池セル(III)の受光面側は、受光面側の封止剤(II)を介して太陽電池表面保護材(I)によって保護されている。一方、太陽電池セル(III)の非受光面側は、非受光面側の封止剤(IV)を介して太陽電池裏面保護シート(V)によって保護されている。非受光面側の太陽電池裏面保護シート(V)と接する表層には、太陽電池裏面保護シート用易接着剤(以下、「易接着剤」とも称する)からなる易接着剤層が積層されている。
【0027】
なお、本発明の太陽電池裏面保護シート用易接着剤によって形成される易接着剤層(D’)は、太陽電池モジュール100を形成するときの加熱圧着工程を利用して架橋反応する。本発明中において、加熱圧着工程前の易接着剤層を易接着剤層(D’)、加熱圧着工程後の架橋した易接着剤層を易接着剤層(D)として区別する。同様に、加熱圧着工程前の太陽電池裏面保護シートを太陽電池裏面保護シート(V’)、加熱圧着工程後のものを太陽電池裏面保護シート(V)として区別する。
【0028】
本発明の太陽電池裏面保護シート用易接着剤に含まれる(メタ)アクリル系共重合体(A)について説明する。
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、ガラス転移温度が2℃超〜80℃未満、数平均分子量が17,000越〜250,000以下であり、水酸基を有する。
【0029】
(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度が80℃を越える場合には、易接着剤の塗膜が硬くなり、封止剤への接着力が低下する。2℃以下の場合には、易接着剤の塗膜の表面にタックが生じるため、太陽電池裏面保護シートを製造後にロール状にした場合、ブロッキングを起こしやすくなる。(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度は、10℃以上〜70℃以下であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましい。
なお、ここでのガラス転位温度とは、(メタ)アクリル系共重合体(A)を乾燥させて固形分100%にした樹脂について、示差走査熱量分析(DSC)によって計測したガラス転位温度のことを示す。例えば、ガラス転移温度は、試料約10mgを秤量したサンプルを入れたアルミニウムパンと、試料を入れていないアルミニウムパンとをDSC装置にセットし、これを窒素気流中で、液体窒素を用いて−50℃まで急冷処理し、その後、20℃/分で150℃まで昇温し、DSC曲線をプロットする。このDSC曲線の低温側のベースライン(試験片に転移および反応を生じない温度領域のDSC曲線部分)を高温側に延長した直線と、ガラス転移の段階状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点から、補外ガラス転移開始温度(Tig)を求め、これをガラス転移温度として求めることができる。本発明の上記の方法により測定した値を記載している。
【0030】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の数平均分子量が250,000を越える場合には、封止剤への接着力が低下し、17,000以下の場合には、易接着剤の塗膜の耐湿熱性が低下し、湿熱試験後に封止剤への接着力が低下する。(メタ)アクリル系共重合体(A)の数平均分子量は、20,000以上〜250,000以下であることが好ましく、25,000以上〜250,000以下であることが好ましく、25,000以上〜150,000以下であることがより好ましく、さらには30,000以上〜100,000以下であることがより好ましく、30,000以上〜75,000以下であることがより好ましく、30,000以上〜50,000以下であることが特に好ましい。
なお、上記の数平均分子量は、(メタ)アクリル系共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の値である。例えば、カラム(昭和電工(株)製KF−805L、KF−803L及びKF−802)の温度を40℃として、溶離液としてTHFを用い、流速を0.2ml/minとし、検出をRI、試料濃度を0.02%とし、標準試料としてポリスチレンを用いて行ったものである。本発明の数平均分子量は、上記の方法により測定した値を記載している。
【0031】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の水酸基価は、固形分換算で2〜100mgKOH/gであることが好ましく、2〜50mgKOH/gであることがより好ましく、さらには2〜30mgKOH/gであることがより好ましい。(メタ)アクリル系共重合体(A)の水酸基価が100mgKOH/gを越える場合には、易接着剤の塗膜の架橋が密になり、プラスチックフィルム(E)への接着力が低下するおそれがある。一方、2mgKOH/g未満の場合には、易接着剤の塗膜の架橋が疎になり、塗膜の耐湿熱性が低下し、湿熱試験後に封止剤への接着力が低下するおそれがある。
【0032】
このような(メタ)アクリル系共重合体(A)は、種々のモノマーを重合することによって得ることができる。モノマーとしては、例えば、アルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、グリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマーなどの他に、酢酸ビニル、無水マレイン酸、ビニルエーテル、プロピオン酸ビニル、スチレン等が挙げられる。
【0033】
アルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0034】
水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0035】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸などが挙げられる。
【0036】
グリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルなどが例示できる。
【0037】
上記のモノマーの重合には、通常のラジカル重合を用いることができる。反応方法に何ら制限はなく、溶液重合、塊状重合、乳化重合などの公知の重合法で行うことができるが、反応のコントロールが容易であることや直接次の操作に移れることから溶液重合が好ましい。
溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、セロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチルなど、本発明で樹脂が溶解するものであれば何ら制限は無く、単独でも、複数の溶媒を混合しても良い。また、重合反応の際に使用される重合開始剤もベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤など公知のものを用いることができ、特に制限は無い。
【0038】
本発明で用いる(メタ)アクリル系共重合体(A)は、側鎖に炭素−炭素二重結合を有することが好ましく、具体的には側鎖5〜500個当たり1個の炭素−炭素二重結合を有することが好ましく、側鎖5〜300個あたり1個であることがより好ましい。側鎖に炭素−炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系共重合体(A1)を用いることによって、太陽電池モジュールを作成する際に易接着剤層と封止剤をより強固に接着することができる。
炭素−炭素二重結合を有する側鎖の割合が、これよりも大きくなると、易接着剤の架橋反応が過剰になり、接着力が低下するおそれがある。一方、これよりも割合が小さくなると、炭素−炭素二重結合を有する側鎖の効果が期待できない。
なお、(メタ)アクリル系共重合体(A)として、側鎖に炭素−炭素二重結合を有しない(メタ)アクリル系共重合体(A2)を用いる場合には、炭素−炭素二重結合、例えば(メタ)アクリロイル基を有する化合物(Ac)を併用することによって、易接着剤層と封止剤をより強固に接着することができる。
【0039】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物(Ac)としては、分子中に少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイル基を有していればどのようなものでも良く、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールの(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどのエポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらの中でも、反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基を有する化合物(Ac)は分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましく、さらには分子中に3個以上有することが好ましい。
また、(メタ)アクリロイル基を有する化合物(Ac)としては、側鎖に炭素−炭素二重結合を有しない(メタ)アクリル系共重合体(A2)とポリイソシアネート化合物(B)との架橋を阻害しない程度にヒドロキシル基や他の官能基を含んでいても良い。
【0040】
太陽電池セル(III)の受光面側に位置する封止剤層(II)及び非受光面側に位置する封止剤層(IV)は、特に限定されず、公知の材料を好適に適用できる。好適な材料として、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)や、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリオレフィンなどが挙げられる。このうち、コストの点からEVAが主に用いられる。封止剤層(II)、(IV)は、シート(フィルム状のものも含む)のものが簡便であるが、ペースト状のものなどでもよい。
【0041】
受光面側に位置する封止剤層(II)及び非受光面側に位置する封止剤層(IV)には、有機過酸化物が含まれていてもよい。有機過酸化物を含有させることによって、封止剤層(II)及び(IV)で太陽電池セル(III)を挟み、加熱する際、ラジカル反応により封止剤層(II)を架橋させたり、封止剤層(II)と封止剤層(IV)とを架橋させたり、封止剤層(IV)を架橋させたりすることを高効率に行うことができる。
さらに、本発明の易接着剤に炭素−炭素二重結合が含まれている場合、非受光面側の封止剤層(IV)中に有機過酸化物を含有させることによって、加熱封止の際、硬化処理前の易接着剤層(D’)中の炭素−炭素二重結合にも有機過酸化物が作用し、非受光面側の封止剤層(IV)と硬化処理前の易接着剤層(D’)とを架橋させたり、硬化処理前の易接着剤層(D’)を架橋させたりするものと考察される。
従って、本発明において、炭素−炭素二重結合とは、ラジカル反応活性で、互いに重合し得る炭素−炭素二重結合部位(C=C)のことを指し、ベンゼン環、ピリジン環のような反応不活性な炭素−炭素二重結合はこれに該当しない。中でも、(メタ)アクリロイル基のように反応性の高い炭素−炭素二重結合を有することが好ましい。なお、本明細書における「硬化処理前」とは、封止剤(IV)と太陽電池裏面保護シート(V)とを重ね合わせた後に、これらを接合するための処理をいう。
【0042】
次に、(メタ)アクリル系共重合体(A)が側鎖に側鎖に炭素−炭素二重結合を有する場合について説明する。炭素−炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系共重合体(A1)としては、例えば下記(メタ)アクリル系共重合体(A1−1)〜(A1−4)を挙げることができる。
(メタ)アクリル系共重合体(A1−1)は、グリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a1)と、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a2)と、グリシジル基も水酸基もカルボキシル基も有さない(メタ)アクリル系モノマー(a4)とを構成単位とする共重合体中の側鎖のグリシジル基に、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a3)を反応させてなる(メタ)アクリル系共重合体である。
即ち、グリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a1)と、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a2)と、グリシジル基も水酸基もカルボキシル基も有さない(メタ)アクリル系モノマー(a4)とを構成単位とする共重合体を得、次いで、前記共重合対中の側鎖のグリシジル基の全部に又は一部に、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a3)を反応させることによって、グリシジル基を起点とし、炭素−炭素二重結合の側鎖を導入することができる。
【0043】
(メタ)アクリル系共重合体(A1−2)は、カルボキシル基を基点とし、炭素−炭素二重結合の側鎖を導入してなる共重合体である。即ち、(メタ)アクリル系共重合体(A2)は、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a3)と、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a2)と、グリシジル基も水酸基もカルボキシル基も有さない(メタ)アクリル系モノマー(a4)とを構成単位とする共重合体中のカルボキシル基に、グリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a1)を反応させてなる(メタ)アクリル系共重合体である。
前記メタ)アクリル系共重合体(A1)の場合と同様に、炭素−炭素二重結合の側鎖を導入する際、カルボキシル基の全部に又は一部にグリシジル基を反応させることができる。
【0044】
(メタ)アクリル系共重合体(A1−3)は、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a2)と、水酸基を有さない(メタ)アクリル系モノマー(a6)とを構成単位とする共重合体中の水酸基の一部に、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a5)を反応させてなる(メタ)アクリル系共重合体である。
【0045】
(メタ)アクリル系共重合体(A1−4)は、無水マレイン酸と、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a2)と、水酸基を有さない(メタ)アクリル系モノマー(a6)とを構成単位とする共重合体中の酸無水物基に、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a2)を反応させてなる(メタ)アクリル系共重合体である。
【0046】
グリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a1)としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルなどが例示できる。
【0047】
水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a2)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが例示できる。この水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a2)由来の水酸基は、後述するポリイソシアネート化合物(B)と反応し、硬化処理前の易接着剤層(D’)の硬化物である易接着剤層(D)を形成する機能を担う。
また、本発明では、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a2)以外のモノマーを、水酸基を有さない(メタ)アクリル系モノマー(a6)として定義する。
【0048】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a3)としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸などが挙げられる。
【0049】
上記のグリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a1)、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a2)、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a3)以外のモノマーを、グリシジル基も水酸基もカルボキシル基も有さない(メタ)アクリル系モノマー(a4)として定義する。
グリシジル基も水酸基もカルボキシル基も有さない(メタ)アクリル系モノマー(a4)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a5)としては、2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレートなどが例示でき、これらの製品としては昭和電工(株)製のカレンズAOI、カレンズMOIなどがある。
【0051】
(メタ)アクリル系モノマー(a1)〜(a6)の他に、酢酸ビニル、ビニルエーテル、プロピオン酸ビニル、スチレン等も(メタ)アクリル系共重合体(A1)〜(A4)の形成に適宜使用することができる。
【0052】
ところで、上述の(メタ)アクリル系モノマー(a1)〜(a6)は、
CH
2=CR
1−CO−OR
2という一般式で表すことができる。
式中、R
1は、水素原子、もしくはメチル基を示す。
R
2は、カルボキシル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基、イソシアナトアルキル基などの、各モノマー特有の官能基を有する1価の置換基を示す。
(メタ)アクリル系モノマー(a1)〜(a6)の場合は、CH
2=CR
1の重合によって形成される主鎖に対し、R
2の部位を側鎖と捉え、一つの側鎖をとして数える。
また、スチレンや無水マレイン酸のような、上記一般式で表されないようなモノマーに関しては、重合の際に炭素−炭素結合を形成して共重合体の主鎖となる部分以外の部位を側鎖と呼び、一つのモノマーにつき、一つの側鎖を有するとして数える。
例えば、仮に無水マレイン酸を2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させると、無水マレイン酸の無水環が開環してカルボキシル基とエステル結合部位が生じることになるが、このような場合も、これらをまとめて一つの側鎖として数えることとする。
【0053】
側鎖を上記のように定義すると、炭素−炭素二重結合を有する側鎖の、全側鎖に占める割合は次のように計算できる。
例えば、MMA(メチルメタクリレート、分子量100)/n−BMA(n−ブチルメタクリレート、分子量142)/HEMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレート、分子量130)/GMA(グリシジルメタクリレート、分子量142)=18/78/2/2(重量比)で共重合した共重合体を構成するモノマーのモル比は、MMA/n−BMA/HEMA/GMA=23.7/72.4/2/1.9となる。モル比はモノマーの個数の比に等しく、さらには上記の側鎖の定義から、それぞれのモノマーが一つの側鎖を有すると数えられるので、モル比は、側鎖の個数の比に等しい。従って、この共重合体は全側鎖100個あたり1.9個のグリシジル基を有する。
次いで、前記共重合体中のグリシジル基を等モル量のアクリル酸で変性してなる(メタ)アクリル系共重合体(A)は、全側鎖100個あたり1.9個のグリシジル基が同数の炭素−炭素二重結合に変じた側鎖を有することとなる。すなわち、(メタ)アクリル系共重合体(A)は、全側鎖53個あたり1個の割合で炭素−炭素二重結合を有するということができる。
【0054】
(メタ)アクリル系共重合体(A1−1)の形成の第一段階:(メタ)アクリル系モノマー(a1)(a2)(a4)を重合する段階、(メタ)アクリル系共重合体(A1−2)の形成の第一段階:(メタ)アクリル系モノマー(a3)(a2)(a4)を重合する段階、(メタ)アクリル系共重合体(A1−3)の形成の第一段階:(メタ)アクリル系モノマー(a2)(a6)を重合する段階、(メタ)アクリル系共重合体(A1−4)の形成の第一段階:無水マレイン酸と(メタ)アクリル系モノマー(a2)(a6)を重合する段階は、通常のラジカル重合反応により行うことができる。反応方法に何ら制限はなく、溶液重合、塊状重合、乳化重合などの公知の重合法で行うことができるが、反応のコントロールが容易であることや直接次の操作に移れることから溶液重合が好ましい。
溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、セロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチルなど、本発明の樹脂が溶解するものであれば何ら制限は無く、単独でも、複数の溶媒を混合しても良い。また、重合反応の際に使用される重合開始剤もベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤など公知のものを用いることができ、特に制限は無い。また、(メタ)アクリル系共重合体(A1−1)〜(A1−4)それぞれの場合において、例えば(メタ)アクリル系モノマー(a2)として、1種類のみを用いてもよいし、複数種類の化合物を併用してもよい。(メタ)アクリル系モノマー(a1)、(a3)〜(a6)についても同様である。
【0055】
次に、ポリイソシアネート化合物(B)について説明する。
ポリイソシアネート化合物(B)は、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a2)由来の(メタ)アクリル系共重合体(A)中の水酸基と反応し、共重合体同士を架橋させることで、易接着剤層に耐湿熱性を付与すると共に、裏面保護シートを構成するプラスチックフィルム(E)や非受光面側の封止剤層(IV)であるEVAとの密着性を向上させることができる。そのため、ポリイソシアネート化合物(B)は、一分子中に2つ以上のイソシアネート基を有することが重要であり、例えば、芳香族ポリイソシアネート、鎖式脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物(B)は、1種類でも2種類以上の化合物を併用してもよい。
【0056】
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレ
ンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0057】
鎖式脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0058】
脂環族ポリイソシアネートとしては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0059】
また、上記ポリイソシアネートに加え、上記ポリイソシアネートとトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、上記ポリイソシアネートのビュレット体やイソシアヌレート体、更には上記ポリイソシアネートと公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体等が挙げられる。
【0060】
これらポリイソシアネート化合物(B)の中でも、意匠性の観点から、低黄変型の脂肪族または脂環族のポリイソシアネートが好ましく、耐湿熱性の観点からは、イソシアヌレート体が好ましい。より具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート体、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)のイソシアヌレート体が好ましい。
【0061】
さらに、これらポリイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基のほぼ全量とブロック化剤とを反応させることで、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B1)を得ることができる。本発明における太陽電池裏面保護シート用易接着剤を塗布して得られる硬化処理前の易接着剤層(D’)は、封止剤層(IV)と貼り合わせて太陽電池モジュールを製造するまでは未架橋にあることが好ましく、そのため、ポリイソシアネート化合物(B)は、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B1)であることが好ましい。
【0062】
ブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフェノール類、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、t−ペンタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコールなどのアルコール類、3,5−ジメチルピラゾール、1,2−ピラゾール等のピラゾール類、1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール類、エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール等のハロゲン置換アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピルラクタム等のラクタム類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、マロン酸メチル、マロン酸エチル等の活性メチレン化合物類が挙げられる。その他にもアミン類、イミド類、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール類等も挙げられる。ブロック化剤は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0063】
これらのブロック剤の中でも、ブロック剤の解離温度が80℃〜150℃のものが好ましい。解離温度が80℃未満であると、易接着剤を塗布し、溶剤を揮散させる際に、硬化反応が進んで、充填剤との密着性が低下してしまう恐れがある。解離温度が150℃を超えると、太陽電池モジュールを構成する際の真空熱圧着の工程で、硬化反応が充分に進行せず、充填剤との密着性が低下してしまう。
【0064】
解離温度が80℃〜150℃のブロック剤としては、メチルエチルケトンオキシム(解離温度:140℃、以下同様)、3,5−ジメチルピラゾール(120℃)、ジイソプロピルアミン(120℃)などが例示できる。
【0065】
本発明の易接着剤におけるポリイソシアネート化合物(B)の量は、(メタ)アクリル系共重合体(A)に水酸基1個に対して、イソシアネート基が0.1〜5個の範囲で存在するような量であることが好ましく、さらには0.5〜4個の範囲であることがより好ましい。0.1個より少ないと、架橋密度が低すぎて、耐湿熱性が十分でなく、5個より多いと、過剰のイソシアネートが湿熱試験中に空気中の水分と反応して、塗膜が硬くなり、裏面保護シートを構成するプラスチックフィルム(E)や非受光面側の封止剤層(IV)であるEVAとの接着力低下の原因となる。
【0066】
本発明の易接着剤は、金属のケイ酸塩もしくは炭酸塩からなる無機系粒子(C)を含有することが重要である。前記無機系粒子(C)のメディアン径は0.1μm〜20μmであることが重要であり、0.1μ〜10μであることがより好ましい。前記無機系粒子(C)が小さすぎると、添加による耐久性向上の十分な効果が得られないおそれがあり、前記無機系粒子(C)が大きすぎると、易接着剤と封止剤との接着を妨げ、接着力が低下するおそれがある。なお、本発明でいう、「メディアン径」とは、レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)によって粒子の粒度分布を測定し、粒子径の小さいものから順に粒子量を積算し、全体量を100%としたとき、粒子量の積算値が50%となるときの粒子径のことを指す。
【0067】
また、前記無機系粒子(C)の含有量は、前記(A)〜(C)の合計100重量%中、5〜30重量%であることが重要であり、10〜20重量%であることがより好ましい。前記無機系粒子(C)の含有量が少なすぎると、接着耐久性向上の効果を期待できない。一方、前記無機系粒子(C)の含有量が多すぎると、易接着剤中の樹脂成分が少なくなり、易接着剤と封止剤間の接着力が低下する。
【0068】
このような金属のケイ酸塩もしくは炭酸塩からなる無機系粒子(C)としては、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、鉄、リチウム、チタンなどの金属のケイ酸塩や炭酸塩が挙げられ、マグネシウムやアルミニウムなどの金属のケイ酸塩や炭酸塩が好適である。
例えば、マグネシウムの含水ケイ酸塩であるタルク、アルミニウムの含水ケイ酸塩であるカオリナイトやゼオライト、マグネシウムとアルミニウムの含水ケイ酸塩であるモンモリロナイト、主にマグネシウムとアルミニウムの含水炭酸塩であるハイドロタルサイト、カルシウムとマグネシウムの炭酸塩であるドロマイト等が挙げられ、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイトが好ましく、タルク、ハイドロタルサイトがより好ましい。無機系粒子(C)は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0069】
本発明の易接着剤は、前記(A)〜(C)の合計100重量部に対して、後述する有機系粒子、および/又は前記(C)以外の無機系粒子(C’)を0〜25重量部含有することができ、これらの粒子と前記(C)の無機系粒子は合計で5〜30重量部であることが好ましい。これらの粒子を含有することによって、硬化処理前の易接着剤層(D’)表面のタックをより低減する効果を期待できる。上記各種粒子が30重量部より多くなると、硬化処理前の易接着剤層(D’)と封止剤との密着を阻害し、接着力の低下を招くおそれがある。
【0070】
特に、有機系粒子においては、融点もしくは軟化点が150℃以上のものを好ましく用いることができる。有機系粒子の融点もしくは軟化点が150℃よりも低いと、太陽電池モジュールを構成する際の真空熱圧着の工程で粒子が軟化し、封止剤との接着を妨げる恐れがある。
【0071】
有機系粒子の具体例としては、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン(登録商標)樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、シリコン樹脂、メタクリレート樹脂、アクリレート樹脂などのポリマー粒子、あるいは、セルロースパウダー、ニトロセルロースパウダー、木粉、古紙粉、籾殻粉、澱粉などが挙げられる。有機系粒子は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0072】
前記ポリマー粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、ソープフリー重合法、シード重合法、マイクロサスペンジョン重合法などの重合法により得ることができる。また、前記有機系粒子は、その特性を損なわない程度に不純物を含んでいてもよい。また、粒子の形状は、粉末状、粒状、顆粒状、平板状、繊維状など、どのような形状であってもよい。
【0073】
前期(C)以外の無機系粒子(C’)の具体例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、ケイ素、アンチモン、チタンなどの金属の酸化物、水酸化物、硫酸塩などを含有する無機系粒子が挙げられる。さらに詳細な具体例としては、シリカゲル、酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、鉛酸化物、ホワイトカーボン、ガラス繊維、ガラス粉末、ガラスビーズ、クレー、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化チタン、リトポン、硫酸アルミニウム、二硫化モリブデン、砂鉄、カーボンブラックなどを含有する無機系粒子が挙げられる。無機系粒子(C’)は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0074】
また、無機系粒子(C)および(C)以外の無機系粒子(C’)は、その特性を損なわない程度に不純物を含んでいてもよい。また、粒子の形状は、粉末状、粒状、顆粒状、平板状、繊維状など、どのような形状であってもよい。
【0075】
また、本発明における易接着剤には、必要に応じて、本発明による効果を妨げない範囲で、架橋促進剤を添加してもよい。架橋促進剤は(メタ)アクリル系共重合体(A)の水酸基とポリイソシアネート化合物(B)のイソシアネートによるウレタン結合反応を促進する触媒としての役割を果たす。架橋促進剤としては、スズ化合物、金属塩、塩基などが挙げられ、具体的にはオクチル酸スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、塩化スズ、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、トリエチルアミン、トリエチレンジアミンなどが挙げられる。これらは、単独または組み合わせて用いることができる。
【0076】
また、本発明における易接着剤には、必要に応じて、本発明による効果を妨げない範囲で、充填剤、チクソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、硬化剤、増粘剤、顔料分散剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤を添加してもよい。
【0077】
本発明に用いられる易接着剤には、溶剤が含まれる。
溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル等のアルコール類、
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、
テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、
ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、
ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族類、
酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、などの内から樹脂組成物の組成に応じ適当なものを使用できるが、沸点が50℃〜200℃のものを好ましく用いることができる。沸点が50℃よりも低いと、易接着剤を塗布する際に溶剤が揮発しやすく、固形分が高くなって均一な膜厚で塗布することが難しくなる。沸点が200℃よりも高いと、溶剤を乾燥しづらくなる。なお、溶剤は2種以上用いてもよい。
【0078】
本発明の易接着剤は、プラスチックフィルム(E)に塗工して易接着剤層(D’)を形成することで、封止剤との接着性が良好な太陽電池保護シート(V’)を作製することができる。
【0079】
本発明の易接着剤を、プラスチックフィルム(E)に塗工する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、コンマコーティング、グラビアコーティング、リバースコーティング、ロールコーティング、リップコーティング、スプレーコーティングなどが例示できる。これらの方法で易接着剤を塗布し、加熱乾燥により溶剤を揮散させることで、硬化処理前の易接着剤層(D’)を形成することができる。
形成される硬化処理前の易接着剤層(D’)の厚みは、0.01〜30μmであることが好ましく、0.1〜10μmであることがより好ましい。
【0080】
プラスチックフィルム(E)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロペンタジエンなどのオレフィンフィルム、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体フィルムなどのフッ素系フィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルムを用いることができる。フィルム剛性、コストの観点からポリエステル系樹脂フィルムであることが好ましく、この中でもポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。プラスチックフィルム(E)は、1層または2層以上の複層構造でも構わない。さらには、プラスチックフィルム(E)としては、金属酸化物や非金属無機酸化物を蒸着した蒸着フィルムを用いることもできる。
【0081】
蒸着される金属酸化物もしくは非金属無機酸化物としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウムなどの酸化物が使用できる。また、アルカリ金属、アルカリ土類金属のフッ化物なども使用することができ、これらは単独もしくは組み合わせて使用することができる。
これらの金属酸化物もしくは非金属無機酸化物は、従来公知の真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどのPVD方式や、プラズマCVD、マイクロウェーブCVDなどのCVD方式を用いて蒸着することができる。
【0082】
プラスチックフィルム(E)は、無色であってもよいし、顔料もしくは染料などの着色成分が含有されていても良い。着色成分を含有させる方法としては、例えば、フィルムの製膜時にあらかじめ着色成分を練りこんでおく方法、無色透明フィルム基材上に着色成分を印刷する方法等がある。また、着色フィルムと無色透明フィルムとを貼り合わせて使用してもよい。
【0083】
太陽電池裏面保護シート(V’)は、プラスチックフィルム(E)の易接着剤層(D’)が形成されていない側の表面に、金属箔(F)や耐候性樹脂層(G)などのフィルム層やコート層が単層または複数層設けられていても良い。
【0084】
金属箔(F)としては、アルミニウム箔、鉄箔、亜鉛合板などを使用することができ、これらの中でも、耐腐食性の観点から、アルミニウム箔が好ましい。厚みは10μmから100μmであることが好ましく、更に好ましくは20μmから50μmであることが好ましい。金属箔(F)の積層には、従来公知の種々の接着剤を用いることができる。
【0085】
耐候性樹脂層(G)としては、ポリフッ化ビニリデンフィルムやポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルムを従来公知の種々の接着剤を用いて積層したものや、旭硝子(株)のルミフロンのような高耐候性塗料を塗工して形成したコート層などを使用することができる。
【0086】
次に太陽電池モジュールについて説明する。
太陽電池モジュール100は、太陽電池セル(III)に対し、太陽電池セルの受光面側に位置する太陽電池表面保護材(I)を太陽電池セルの受光面側に位置する硬化処理前の封止剤(II)を介して積層し、硬化処理前の太陽電池裏面保護シート(V’)を太陽電池セルの非受光面側に位置する硬化処理前の封止剤(IV)を介して積層し、減圧下で高温加熱圧着することによって得ることができる。
【0087】
太陽電池表面保護材(I)としては、特に限定されないが、好適な例として、ガラス板、ポリカーボネートやポリアクリレートのプラスチック板などを好適に用いることができる。透明性、耐候性、強靭性などの点からは、ガラス板が好ましい。さらには、ガラス板の中でも透明性の高い白板ガラスが好ましい。
【0088】
封止剤層(II)、(IV)として使用される封止剤には、耐候性向上のための紫外線吸収剤、光安定剤や、封止剤自身を架橋させるための有機過酸化物などの添加剤が含まれていても良い。
【0089】
本発明の易接着剤層(D’)が炭素−炭素二重結合を有する場合、太陽電池モジュールを形成するときの高温加熱圧着工程において、炭素−炭素二重結合が架橋することにより封止剤層(IV)との接着力向上効果を奏する。封止剤層(IV)の中に有機過酸化物が含まれていると、この架橋反応が促進されるため、炭素−炭素二重結合の効果が最大限に発揮される。従って、易接着剤層(D’)が炭素−炭素二重結合を有する場合には、非受光面側に位置する封止剤層(IV)は、有機過酸化物を含有することが好ましい。
【0090】
太陽電池セル(III)としては、結晶シリコン、アモルファスシリコン、銅インジウムセレナイドに代表される化合物半導体などの光電変換層に電極を設けたもの、さらにはそれらをガラス等の基板上に積層したもの等が例示できる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、部は重量部を、%は重量%をそれぞれ示す。表1に(メタ)アクリル系共重合体の物性を示す。
【0092】
<(メタ)アクリル樹脂A1溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート18部、n−ブチルメタクリレート78部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、グリシジルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行うことにより、数平均分子量が41,000、水酸基価が9.2(mgKOH/g)、Tgが35℃、固形分50%のアクリル樹脂A1溶液を得た。
【0093】
なお、数平均分子量、ガラス転移温度、酸価、水酸基価は、下記に記述するようにして測定した。また、炭素−炭素二重結合含有側鎖の割合は、共重合に用いたモノマー中のグリシジルメタクリレートの量を基準に求めた理論値である。
【0094】
<数平均分子量(Mn)の測定>
Mnの測定はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、数平均分子量(Mn)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0095】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ガラス転移温度の測定は、前述した示差走査熱量測定(DSC)法により求めた。
なお、Tg測定用の試料は、上記のアクリル樹脂溶液を150℃で約15分、加熱し、乾固させたものを用いた。
【0096】
<酸価(AV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(樹脂の溶液:約50%)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。酸価は次式により求めた。酸価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
酸価(mgKOH/g)={(5.611×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100
)
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0097】
<水酸基価(OHV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(樹脂の溶液:約50%)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。
水酸基価は次式により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
水酸基価(mgKOH/g)
=[{(b−a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0098】
<(メタ)アクリル樹脂A2〜A11、A28〜A30溶液>
(メタ)アクリル樹脂A1溶液の合成において、使用したモノマーの組成とアゾビスイソブチロニトリルの量を表1のように変えたこと以外は、(メタ)アクリル樹脂A1溶液と同様にして(メタ)アクリル樹脂A2〜A11、A28〜A30溶液を合成した。得られた(メタ)アクリル樹脂のTg、数平均分子量、OH価を表1に示す。
【0099】
なお、表1中の略語は、以下のものを示す。
MMA:メチルメタクリレート
EMA:エチルメタクリレート
BMA:n−ブチルメタクリレート
2EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
tBA:t−ブチルアクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
【0100】
【表1】
【0101】
<ポリイソシアネート化合物B溶液>
3,5−ジメチルピラゾールでブロックされた、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体を、酢酸エチルで75%に希釈し、ポリイソシアネート化合物(B)溶液を得た。
【0102】
<易接着剤溶液の調整>
(メタ)アクリル樹脂(A)溶液、(メタ)アクリロイル基含有化合物(Ac)、ポリイソシアネート化合物(B)溶液、無機系粒子(C)、前記(C)以外の無機系粒子(C’)、触媒としてジオクチル錫ジラウレートを表2に示す組成にて混合し、易接着剤溶液1〜23を得た。
【0103】
無機系粒子(C)、(C)以外の無機系粒子(C’)のメディアン径は、易接着剤溶液中に分散したものを、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて粒度分布を測定し、粒子径の小さいものから順に粒子量を積算し、全体量を100%としたとき、粒子量の積算値が50%となるときの粒子径の値を用いた
【0104】
<接着力評価用シートの作成>
ポリエステルフィルム(東レ(株)製、ルミラーX10s、厚み50μm)のコロナ処理面に、易接着剤溶液1をグラビアコーターによって塗布し、溶剤を乾燥させ、塗布量:3g/平方メートルの易接着剤層を設け、接着力評価用シート1を作成した。
【0105】
接着力評価用シート1と同様にして、易接着剤溶液2〜23を用いて、接着力評価用シート2〜23を作成した。
【0106】
<接着力評価用サンプルの作成>
接着力評価用シート1を15cm四方に切断し、シート1の易接着剤塗布面に酢酸ビニル−エチレン共重合体フィルム(サンビック(株)製、スタンダードキュアタイプ、以下EVAフィルム)を重ね、さらにその上に、接着力評価用シート1を15cm四方に切断したものを、EVAフィルムと易接着剤塗布面が接するように積層した。その後、この積層体を真空ラミネーターに入れ、1Torr程度に真空排気して、プレス圧力0.1MPaで、150℃30分間加熱後、さらに150℃で30分間加熱し、15cm角の接着力評価用サンプル1を作製した。
【0107】
接着力評価用サンプル1と同様にして、接着力評価用シート2〜23を用いて、接着力評価用サンプル2〜23を作製した。
【0108】
[実施例1]
接着力評価用サンプル1を用い、後述する方法で、易接着剤層のEVAフィルムへの接着性、耐湿熱試験後(1000時間後、2000時間後、3000時間後)の接着性の評価を行った。
【0109】
<接着性測定>
接着力評価用サンプル1をカッターで15mm幅に切り、接着力評価用シート1に形成された易接着剤層と封止剤層であるEVAフィルムとの間の接着力を測定した。測定には、引っ張り試験機を用い、荷重速度100mm/minでT型剥離試験を行った。得られた測定値に対して、以下のように評価した。
◎:50N/15mm以上
○:30N/15mm以上〜50N/15mm未満
△:10N/15mm以上〜30N/15mm未満
×:10N/15mm未満
【0110】
<耐湿熱試験後接着性>
接着力評価用サンプル1を、温度85℃、相対湿度85%RHの環境条件で1000時
間、2000時間、3000時間静置した後、上記の接着性測定と同様にして、耐湿熱試
験後接着性の評価を行った。
【0111】
[実施例2〜13、34〜36]、[比較例1〜10]
実施例1と同様にして、接着力評価用サンプル2〜23を用い、易接着剤層のEVAフィルムへの接着性、耐湿熱試験後接着性の評価を行った。以上の結果を表2〜4に示す。
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】
【0115】
なお、表2中の製品名は、以下のものを示す。
アロニックス M−215:イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(東亞合成(株)製
)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート((株)日本触媒製)
アロニックス M−402:ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアク
リレート(ペンタアクリレート含有量30〜4
0%、東亞合成(株)製)
LMS−400、PKP−80、SP−40:タルク(富士タルク工業(株)製)
DHT−4A:ハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製)
SATINTONE W:カオリナイト(林化成(株)製)
クニピアF:モンモリロナイト(クニミネ工業(株)製)
JR−1000:酸化チタン(テイカ(株)製)
NIPGEL AZ−200:シリカ(東ソー・シリカ(株)製)
【0116】
表2〜4に示されるように、実施例1〜13、34〜36は、易接着剤中に無機粒子(C)を含むことにより、比較例1に比して耐湿熱試験後の接着力が向上している。特に実施例11〜13は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物(Ac)を含むので、易接着剤層と封止剤をより強固に接着することができる。
【0117】
これに対して、比較例2は、無機粒子(C)の含有量が多すぎるために、易接着剤と封止剤との接着を阻害するため、初期から接着力が低下する。
比較例3は、OH価が0であるために架橋反応が起こらず、耐湿熱試験後接着性に劣る。
比較例4は、アクリル系共重合体の数平均分子量が低すぎて耐湿熱試験後接着性に劣る。
比較例5は、(メタ)アクリル系共重合体(A)のTgが低すぎて凝集力が小さいために接着性に劣り、比較例6は(メタ)アクリル系共重合体(A)のTgが高すぎて易接着剤層(D’)が硬くなるために接着性に劣る。
【0118】
比較例7は、アクリル系共重合体のOH価が100より大きいために架橋が過剰になって接着性に劣る。
比較例8、9は、無機粒子(C)以外の無機粒子(C’)を使用しているため、耐湿熱性向上の十分な効果が得られない。
比較例10は、無機粒子(C)のメディアン径が大きく、易接着剤と封止剤の間の接着を妨げるため、初期から接着性に劣る。
【0119】
<(メタ)アクリル樹脂A12溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート18部、n−ブチルメタクリレート78部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、グリシジルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行った。
その後、ハイドロキノンを0.03部、ジメチルベンジルアミンを0.8部、アクリル酸を1部添加し、100℃で15時間加熱撹拌した。酸価が2以下であることを確認し、数平均分子量が39,000、水酸基価が17.2(mgKOH/g)、Tgが30℃、炭素−炭素二重結合含有側鎖の割合が1/53、固形分50%のアクリル樹脂A12溶液を得た。
【0120】
<(メタ)アクリル樹脂A13、14、18〜22、24〜27溶液>
(メタ)アクリル樹脂A12溶液の合成において、使用したモノマーの組成とアゾビスイソブチロニトリルの量を表5のように変えたこと以外は、(メタ)アクリル樹脂A13溶液と同様にして(メタ)アクリル樹脂A13、14、18〜22、24〜27溶液を合成した。得られた(メタ)アクリル樹脂のTg、数平均分子量、OH価を表3に示す。
【0121】
<(メタ)アクリル樹脂A15溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート18部、n−ブチルメタクリレート78部、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート4部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行った。
その後、ハイドロキノンを0.03部、ジブチルスズジラウレートを0.03部添加し、2−イソシアナトエチルメタクリレート:1.7部をメチルエチルケトン1.7部に溶解したものを、40℃で撹拌しながら2時間かけて滴下した。IRでイソシアネートピーク(2260cm
-1)が消失したことを確認し、数平均分子量が37,000、水酸基価が8.6(mgKOH/g)、Tgが30℃、炭素−炭素二重結合含有側鎖の割合が1/49、固形分50%のアクリル樹脂A15溶液を得た。
【0122】
<(メタ)アクリル樹脂A16、A23、A31〜33溶液>
(メタ)アクリル樹脂A15溶液の合成において、使用したモノマーの組成とアゾビスイソブチロニトリルの量を表3のように変えたこと以外は、(メタ)アクリル樹脂A15溶液と同様にして(メタ)アクリル樹脂A16、A23、A31〜33溶液を合成した。得られた(メタ)アクリル樹脂のTg、数平均分子量、OH価を表5に示す。
【0123】
<(メタ)アクリル樹脂A17溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート18部、n−ブチルメタクリレート78部、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート2部、無水マレイン酸2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行った。 その後、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを2.65部、トリエチルアミンを0.5部添加し、110℃で7時間加熱撹拌することで、数平均分子量が36,000、水酸基価が8.5(mgKOH/g)、Tgが30℃、炭素−炭素二重結合含有側鎖の割合が1/37、固形分50%のアクリル樹脂A17溶液を得た。
【0124】
【表5】
【0125】
なお、表5中の略語は、以下のものを示す。
MMA:メチルメタクリレート
BMA:n−ブチルメタクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
2EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
GMA:グリシジルメタクレレート
MAH:無水マレイン酸
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
AA:アクリル酸
MOI:カレンズMOI(昭和電工(株)製、2−イソシアナトエチルメタ クリレート)
【0126】
<易接着剤溶液24〜53、57〜59の調整>
(メタ)アクリル樹脂(A)溶液、ポリイソシアネート化合物(B)溶液、無機系粒子(C)、前記(C)以外の無機系粒子(C’)、触媒としてジオクチル錫ジラウレートを表6〜8に示す組成にて混合し、易接着剤溶液24〜53、57〜59を得た。
【0127】
接着力評価用シート1と同様にして、易接着剤溶液24〜53、57〜59を用いて、接着力評価用シート24〜53、57〜59を作成した。
【0128】
接着力評価用サンプル1と同様にして、接着力評価用シート24〜53、57〜59を用いて、接着力評価用サンプル24〜53、57〜59を作製した。
【0129】
[実施例14〜33、34〜36]、[比較例11〜20]
実施例1と同様にして、接着力評価用サンプル24〜53、57〜59を用い、易接着剤層のEVAフィルムへの接着性、耐湿熱試験後接着性の評価を行った。以上の結果を表6〜8に示す。
【0130】
【表6】
【0131】
【表7】
【0132】
【表8】
【0133】
表6〜8に示されるように、実施例14〜33、34〜36は、易接着剤中に無機粒子(C)を含むことにより、比較例11に比して耐湿熱試験後の接着力が向上している。
【0134】
これに対して、比較例12は、無機粒子(C)の含有量が多すぎるために、易接着剤と封止剤との接着を阻害するため、初期から接着力が低下する。
比較例13は、OH価が0であるために架橋反応が起こらず、耐湿熱試験後接着性に劣る。
比較例14は、アクリル系共重合体の数平均分子量が低すぎて耐湿熱試験後接着性に劣る。
比較例15は、(メタ)アクリル系共重合体(A)のTgが低すぎて凝
集力が小さいために接着性に劣り、比較例16は(メタ)アクリル系共重合体(A)のTgが高すぎて易接着剤層(D’)が硬くなるために接着性に劣る。
比較例17は、アクリル系共重合体のOH価が100より大きいために架橋が過剰になって接着性に劣る。
【0135】
比較例18、19は、無機粒子(C)以外の無機粒子(C’)を使用しているため、耐湿熱性向上の十分な効果が得られない。
比較例20は、無機粒子(C)のメディアン径が大きく、易接着剤と封止剤の間の接着を妨げるため、比較例12と比して初期から接着性に劣り、また、十分な湿熱性向上の効果も得られない。