(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について詳細に説明する前に用語を定義する。シート、フィルムおよびテープは同義語である。被着体とは、粘着シートを貼り付ける相手方をいう。
【0012】
本発明の再剥離型粘着剤は、ウレタン樹脂(A)と、硬化剤(B)と、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)とを含み、前記有機酸エステルの150℃−10分加熱後の減量が3重量%以下である。本発明の再剥離型粘着剤は、塗工することで粘着剤層を形成し、基材を備えた粘着シートとして使用することが好ましい。なお、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)は、有機酸ジエステルまたは有機酸トリエステルを意味する。
【0013】
本発明においてウレタン樹脂(A)は、水酸基を複数有する樹脂であり、ポリオールおよびポリイソシアネートを反応させて合成できる。ポリオールは、たとえばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール等が好ましい。
【0014】
ポリエステルポリオールは、酸成分とグリコール成分とを反応して得られる。
酸成分は、例えばテレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等が挙げられる。
グリコール成分は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、ポリオール成分としてグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。その他、ポリカプロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等も挙げられる。
ポリエステルポリオールの数平均分子量は500〜5,000が好ましい。数平均分子量が500以上になることで合成時の反応制御がより容易になる、また、数平均分子量が5,000以下になることで反応完了までの時間を短縮しやすくなり、粘着剤層の凝集力を維持し易くなることで再剥離性がより向上する。ポリエステルポリオールは、ウレタン樹脂の合成に使用するポリオールの合計100モル%のうち10〜70モル%が好ましい。
【0015】
ポリエーテルポリオールは、例えばポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールの製造は、低分子量ポリオールを開始剤として用いて環状エーテル化合物を重合させることで得られる。
低分子量ポリオールは、例えばプロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
環状エーテル化合物は、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0016】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量は1,000〜5,000が好ましい。数平均分子量が1,000以上になることで合成時の反応制御がより容易になる、また、数平均分子量が5,000以下になることで反応完了までの時間を短縮しやすくなり、粘着剤層の凝集力を維持し易くなることで再剥離性がより向上する。またポリエーテルポリオールは、通常2つの水酸基を有するが、3つ以上の水酸基を有することもできる。3つ以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールを使用すると粘着剤層の凝集力の調整が容易になる。ポリエーテルポリオールは、ウレタン樹脂(A)の合成に使用するポリオールの合計100モル%のうち30〜90モル%が好ましい。
【0017】
ポリカーボネートポリオールは、例えば、ポリトリメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ3−メチル(ペンタメチレン)カーボネートジオールや、これらの共重合物などの他、エチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,18−オクタデカンジオールなどの多価アルコールと、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートとの脱アルコール反応等で得られるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0018】
本発明においてポリオールは、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールを併用することで剥離力および粘着力をより向上できる。
【0019】
ポリイソシアネートは公知の化合物を使用できる。具体的には、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、および脂環族ポリイソシアネート等が好ましい。
【0020】
芳香族ポリイソシアネートは、例えば1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0021】
脂肪族ポリイソシアネートは、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0022】
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、例えばω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0023】
脂環族ポリイソシアネートは、例えば3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0024】
ウレタン樹脂(A)の合成には適宜触媒を使用できる。触媒の使用により反応時間を短縮できる。前記触媒は、3級アミン系化合物、有機金属系化合物等が好ましい。
【0025】
3級アミン系化合物は、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7(DBU)等が挙げられる。
【0026】
有機金属系化合物は、錫系化合物および非錫系化合物が挙げられる。
錫系化合物は、例えばジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
【0027】
非錫系化合物は、例えばジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン化合物;、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛等の鉛化合物;、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネート等の鉄化合物;、安息香酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルトなどのコバルト系化合物;、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛化合物;、ナフテン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0028】
触媒は、ポリオールとポリイソシアネートの合計100重量部に対して0.01〜1重量部程度使用することが好ましい。
【0029】
本発明では、ウレタン樹脂の合成に使用するポリオールは限定されないところ、エステル結合を有するポリオールを使用すると有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)との相溶性がより向上するため少なくともポリエステルポリオールを使用することが好ましく、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールを併用することがより好ましい。一方、両ポリオールは反応性が相違するため、それぞれのポリオールに適した触媒を併用することが好ましい。
【0030】
ウレタン樹脂(A)の合成は、(1)ポリオール、触媒、ポリイソシアネートを全量フラスコに仕込んで反応させる方法、(2)ポリオール、触媒をフラスコに仕込んでポリイソシアネ−トを滴下しつつ反応させる方法が好ましい。
【0031】
ウレタン樹脂(A)の合成には公知の溶剤を使用できる。具体的には、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレンおよびアセトン等が挙げられる。
【0032】
ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、3万〜40万であることが好ましく、5万〜30万であることがより好ましい。重量平均分子量が3万以上になることで、耐熱性が向上する。また、40万以下になることで再剥離性がより向上する。
【0033】
本発明におけるウレタン樹脂(A)は、水酸基価が10〜40mgKOH/gであることが好ましく、15〜35mgKOH/gが好ましい。ウレタン樹脂(A)の水酸基価が10mgKOH/g以上になると粘着力が向上し、耐熱性および耐湿熱性も向上する。また、水酸基価が35mgKOH/g以下になると凝集力が向上し、粘着力も向上する。なお、水酸基価の測定は、JISK0070に準拠し水酸化カリウムによる滴定法で行った。
【0034】
またウレタン樹脂(A)は、さらに酸価を有していてもよい。好ましくは20〜80mgKOH/gであり、30〜70mgKOH/gがより好ましく、40〜60mgKOH/gがさらに好ましい。なお、酸価の測定は、JISK0070に準拠し、水酸化カリウムによる滴定法で行った。
【0035】
本発明において有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)(以下、エステル(C)ともいう)は、エステル結合を複数有するため極性が高いので、同様に極性が高いウレタン樹脂と相溶性が良好である。さらに、エステル(C)は、粘着剤層に柔軟性を付与し、濡れ性が向上する。そのため、例えばガラス板のような平滑な被着体に粘着シートを貼り付けた際に粘着剤層とガラスの界面に気泡を巻き込みにくい。また、相溶性が良好なので極端な高温や低温で使用されたときに、エステル(C)が粘着剤層からブリードし難いため被着体の汚染を抑制できる。
また、エステル(C)は、150℃で10分間加熱した後の重量減少率が3%以下であるため、加熱で揮発し難いので、塗工時の乾燥オーブン内の汚染を抑制できる。さらに、脂肪酸エステル等とは異なり、揮発汚染を気にせず乾燥温度を高めて再剥離型粘着剤を塗工することができるため、塗工速度を高めることが可能になり、粘着シートの生産性を向上できる。なお、本発明の課題を解決できる範囲内であれば150℃で10分間加熱した後の重量減少率が3%以下という特性を満たさない有機酸エステル(モノエステル、ジエステルまたはトリエステルを含む)を併用できる。
【0036】
エステル(C)は、ジカルボン酸とアルコールとの反応により得られたエステル、またはトリカルボン酸とアルコールとの反応により得られたエステルである。ジカルボン酸およびトリカルボン酸(以下、カルボン酸成分ともいう)は、直鎖または環状の炭化水素基を有することが好ましく、直鎖の炭化水素基がより好ましい。直鎖の炭化水素基を有するエステル(C)を使用すると濡れ性がより向上し、被着体の汚染をより抑制できる。また、カルボン酸成分は、飽和炭化水素基および不飽和炭化水素基が好ましい。これらのカルボン酸成分の中で直鎖かつ飽和炭化水素基からなるものがより好ましい。またカルボン酸成分は、ジカルボン酸とトリカルボン酸が好ましく、ジカルボン酸がより好ましい。
【0037】
カルボン酸成分のうち直鎖の炭化水素基を有するジカルボン酸は、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。同様に直鎖の炭化水素基を有するトリカルボン酸は、例えば1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3−ブタントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,3−ペンタントリカルボン酸、1,2,4−ペンタントリカルボン酸、1,2,5−ペンタントリカルボン酸、1,3,4−ペンタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、2,3,4−ペンタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,1,6−ヘキサントリカルボン酸、1,3,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,6−ヘキサントリカルボン酸、1,3,3−ヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ヘキサントリカルボン酸、2,4,4−ヘキサントリカルボン酸、1,4,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3,4−ヘキサントリカルボン酸、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、2,3,5−ヘキサントリカルボン酸、1,4,8−オクタントリカルボン酸、1,5,10−ノナントリカルボン酸等が挙げられる。
【0038】
同様に分岐鎖状の炭化水素基を有するジカルボン酸は、例えば2−カルボキシメチル−1,3−プロパンジカルボン酸、3−カルボキシメチル−1,5−ペンタンジカルボン酸、3−カルボキシエチル−1,5−ペンタンジカルボン酸、3−カルボキシエチル−1,6−ヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
カルボン酸成分のうち環状の炭化水素基を有するジカルボン酸は、例えば1,2−及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−、1,3−、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、2−メチルイソフタル酸、3−メチルフタル酸、2−メチルテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
同様に環状の炭化水素基を有するトリカルボン酸は、例えば1,2,3−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環トリカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、1,2,5−ナフタレントリカルボン酸などの芳香族トリカルボン酸が挙げられる。
【0039】
アルコールは、カルボン酸成分とエステル結合が可能な公知のアルコールを使用できる。アルコールは、公知のアルコールの中でも炭素数2〜15のアルコールが好ましく、炭素数2〜12のアルコールがより好ましい。炭素数2〜12のアルコールを使用するとエステル(C)とウレタン樹脂(A)との相溶性がより向上するため、濡れ性がさらに向上する。
アルコールは、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、デシルアルコールイソデシルアルコールおよび2-エチルへキシ
ルアルコール等が挙げられる。これらの中でもイソノニルアルコール、イソデシルアルコール、2−エチルへキシルアルコールが好ましい。
【0040】
エステル(C)は公知のエステル化反応を利用して得ることができる。
有機酸ジエステルは、例えばシュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジベンジル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジオクチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸デシルイソオクチル、アジピン酸ジイソオクチル、アジピン酸ジブチルジグリコール、ピメリン酸ジメチル、ピメリン酸ジエチル、スベリン酸ジメチル、スベリン酸ジエチル、アゼライン酸ジメチル、アゼライン酸ジエチル、アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ドデカン二酸ジメチルマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチルフマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル等が挙げられる。
有機酸トリエステルは、例えばトリメリット酸トリス-2-エチルヘキシル、トリメリット酸トリイソデシル等が挙げられる。
また、エステル(C)はエポキシ基などの官能基が含まれていてもよい。具体的な例としてエポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2-エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル
酸ジイソノニル等が挙げられる。
エステル(C)は、単独または2種類以上を併用できる。
【0041】
また、エステル(C)は、その分子量を300〜600であることが好ましく、300〜540がより好ましい。分子量が300〜600になるとエステル(C)は、ウレタン樹脂(A)との相溶性がさらに向上し、耐熱性もより向上する。なお、分子量は、式量である。
【0042】
エステル(C)のなかでも、直鎖の炭化水素基を有するジカルボン酸とアルコールのエステルが好ましく、アジピン酸ジエステル、セバシン酸ジエステルおよびアゼライン酸ジエステルがより好ましい。
【0043】
エステル(C)は、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、0.5〜50重量部用いることが好ましく、1〜40重量部がより好ましく、5〜40重量部がさらに好ましい。エステル(C)を5重量部以上用いると濡れ性および再剥離性がより向上する。また、50重量部以下用いると汚染をより抑制できる。
【0044】
本発明において硬化剤(B)は、ウレタン樹脂(A)と反応可能な官能基を複数有する化合物である。硬化剤(C)は、ポリイソシアネート化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、およびエポキシ化合物等が好ましく、ポリイソシアネート化合物がより好ましい。
【0045】
ポリイソシアネート化合物は、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のポリイソシアネート化合物、ならびにこれらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、またはビュレット体、またはイソシアヌレート体、ならびにこれらのポリイソシアネート化合物と公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、またはポリイソプレンポリオール等とのアダクト体等が挙げられる。これらの中でも3つのイソアネート基を有するポリイソシアネート化合物が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、およびヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体がより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体がさらに好ましい。
【0046】
アジリジン化合物は、例えばN,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−ジフェニルメタン4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等が挙げられる。
【0047】
金属キレート化合物は、金属錯体化合物が好ましい。金属は、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、チタン、亜鉛、コバルト、マンガン、銅、スズ、ジルコニウム等が挙げられる。金属キレート化合物は、例えば第二鉄トリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0048】
エポキシ化合物は、例えばビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンおよび1,3−ビス(N,N’−ジアミングリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0049】
硬化剤(B)は、単独で用いても、2種類以上を組み合わせ用いてもよい。
【0050】
硬化剤(B)は、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、1〜35重量部を用いることが好ましく、3〜25重量部用いることが好ましく、5〜20重量部がより好ましい。硬化剤を5〜20重量部用いることで凝集力、粘着力および再剥離性のバランスを取ることが容易になる。
【0051】
本発明の再剥離型粘着剤は、さらに変質防止剤を含むことができる。変質防止剤により高温雰囲気下での再剥離型粘着剤の変質ないし劣化防止、再剥離性の低下抑制、被着体汚染の低下等を抑制できる。変質防止剤は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が好ましい。
酸化防止剤は、例えばフェノール系化合物、アミン系化合物、硫黄系化合物、リン系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物等が挙げられる。
紫外線吸収剤は、例えばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
光安定剤は、例えばヒンダードアミン系化合物、ヒンダードピペリジン系化合物などが挙げられる。
変質防止剤は、単独で用いても、2種類以上を組み合わせ用いてもよい。
【0052】
変質防止剤は、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して0.01〜10重量部配合することが好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
【0053】
本発明の再剥離型粘着剤は、さらに帯電防止剤を含むことができる。帯電防止剤を含むことで、再剥離の際に発生する静電気に起因した電子機器の故障を抑制できる。
【0054】
帯電防止剤は、例えば無機塩、多価アルコール化合物、イオン性液体等が好ましく、その中でもイオン性液体がより好ましい。なおイオン性液体は、常温溶融塩ともいい、25℃で流動性がある塩である。
無機塩とは、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、塩化アンモニウム、塩素酸カリウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム等が挙げられる。
多価アルコール化合物は、例えば、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
イオン液体は、イミダゾリウムイオンを含むイオン液体は、例えば1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドおよび1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等が挙げられる。ピリジニウムイオンを含むイオン液体は、例えば1−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ヘキシルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−オクチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ヘキシル−4−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ヘキシル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、1−オクチル−4−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−オクチル−4−メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−メチルピリジニウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドおよび1−メチルピリジニウムビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミドなどが挙げられる。アンモニウムイオンを含むイオン液体は、例えばトリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビストリ
フルオロメタンスルホンイミド等が挙げられる。その他、ピロリジニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩等市販のイオン液体を適宜使用できる。
帯電防止剤は、単独で用いても、2種類以上を組み合わせ用いてもよい。
【0055】
帯電防止剤は、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して0.01〜10重量部配合することが好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
【0056】
本発明の再剥離型粘着剤は、さらにシランカップリング剤、着色剤、消泡剤、湿潤・レベリング剤、耐候安定剤、軟化剤、硬化促進剤、硬化遅延剤等の添加剤を含むことができる。
【0057】
本発明の粘着シートは、再剥離型粘着剤から形成した粘着剤層と基材とを備えることが好ましい。
粘着シートを作成する方法は、(1)剥離ライナーに再剥離型粘着剤を塗工して粘着剤層を形成した後、基材を貼り合わせる方法。または、(2)基材に再剥離型粘着剤を塗工して粘着剤層を形成した後、剥離ライナーを貼り合わせる方法等が一般的である。前記(1)の方法で基材の代わりに剥離ライナーを貼り合わせるとキャスト粘着シートが得られる。また前記(2)の方法で、粘着剤層の形成後、基材の反対面に別途粘着剤層を形成すると両面粘着シートが得られる。両面粘着シートを作成する場合、再剥離型粘着剤に加えて他の種類の粘着剤を使用しても良い。なお、粘着剤層は、粘着シートを使用する直前まで剥離ライナーで保護されていることが通常である。本発明の粘着シートは、再剥離用途に使用することが好ましいが、再剥離を必要としない用途(例えば永久粘着用途)に使用することもできる。
【0058】
再剥離型粘着剤の塗工は、例えばロールコーター法、コンマコーター法、リップコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、グラビアコーター法等の公知の方法が使用できる。塗工後は、熱風オーブン、赤外線ヒーター等で乾燥することが一般的である。
【0059】
粘着剤層の厚みは、通常1〜200μm程度であり、5〜100μm程度が好ましく、10〜75μm程度がより好ましい。
【0060】
基材は、不織布、紙、プラスチック、合成紙等、粘着剤の基材として一般的な素材を使用できる。また、基材を両面粘着シートの芯材として使用する場合は、不織布またはプラスチックが好ましい。
プラスチックは、例えばポリエチレンおよびポロプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ナイロン、トリアセチルセルロース、シクロオレフィン、ポリイミドおよびポリアミド等が挙げられる。
また基材は、反射防止(AR)フィルム、偏光板、位相差板など光学部材であっても良い。
基材は、粘着剤層との密着性を高めるため易接着処理を施しても良い。易接着処理は、コロナ放電を行う乾式法、アンカーコート剤を塗工する湿式法等の公知の方法を使用できる。基材の厚さは、一般的に5〜1000μmが程度である。
【0061】
また、基材は、帯電防止層を備えていても良い。帯電防止層は、樹脂と帯電防止剤を含む。帯電防止剤は、上段で説明した帯電防止剤の他に、導電性カーボン粒子、導電性金属粒子および導電性ポリマー等が好ましい、また帯電防止層は、基材に金属を蒸着、スパッタまたはメッキすることで形成することもできる。
【0062】
剥離ライナーは、紙、プラスチック、合成紙等の基材に、剥離剤を塗工して形成した剥離層を有することが一般的である。剥離剤は、例えばシリコーン、アルキド樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の公知の化合物を使用できる。本発明の再剥離型粘着剤は、粘着剤層と剥離ライナーとの間の剥離力が剥離剤の種類に依存し難い。
剥離ライナーの厚さは、一般的に10〜150μm程度である。
【0063】
本発明の粘着シートは、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、モニター等のディスプレイの表面保護用途や、ディスプレイ製造時の表面保護として使用することが好ましい。具体的には、透明電極(酸化インジウムスズ膜)の保護、タッチスクリーン(タッチパネル)やカバーガラスの保護、液晶モジュールの保護などである。これらの中でも、カバーガラスなどガラス面を保護する用途がより好ましい。さらには、本発明の粘着シートは、上記用途に限らず再剥離性が必要・不必要に関係なく幅広い用途に使用できる。
【実施例】
【0064】
以下に、本発明を実施例によって、より具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお以下、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を意味する。
【0065】
(合成例1)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに、窒素雰囲気下、ポリエステルポリオールP−1010(2官能ポリエステルポリオール、水酸基価112、数平均分子量1000、クラレ社製)81重量部、ポリエーテルポリオールG−3000B(3官能ポリエーテルポリオール、水酸基価56、数平均分子量3000、アデカ社製)101重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(住友バイエル社製)19重量部、トルエン134重量部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.05重量部、2−エチルヘキサン酸錫0.02重量部を仕込んだ。フラスコを徐々に昇温し約90℃で2時間反応させた。そして、イソシアネート基の消失を確認しつつ反応を継続し、消失確認後、ただちに冷却して反応を終了させた。次いで不揮発分60%になるようトルエンを加え、粘度3300mPa.s、水酸基価25mgKOH/g、重量平均分子量152000
のウレタン樹脂1溶液を得た。
【0066】
重量平均分子量の測定は、以下の条件でおこなった。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。測定条件は以下の通りである。
装置:SHIMADZU Prominence(島津製作所社製)
カラム:TOSOH TSK−GEL GMHXL(東ソー社製)を3本直列に接続
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.5ml/min
溶媒温度:40℃、試料濃度:0.1wt%、試料注入量:100μl。
【0067】
(合成例2)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに、窒素雰囲気下、ポリエステルポリオールP−2010(2官能ポリエステルポリオール、水酸基価56、数平均分子量2000、クラレ社製)53.6重量部、ポリエーテルポリオールG−3000B 101重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート 19重量部、トルエン 134重量部、ジブチル錫ジラウレート0.05重量部、2−エチルヘキサン酸錫0.02重量部を仕込んだ。フラスコを徐々に昇温し約90℃で2時間反応させた。そして、イソシアネート基の消失をIRで確認しつつ反応を継続し、消失確認後、ただちに冷却して反応を終了させた。次いで不揮発分60%になるようトルエンを加え、粘度4800mPa.s、水酸基価25mgKOH/g、重量平均分子量195000のウレタン樹脂2
溶液を得た。
【0068】
(酸価測定方法)
下記に示すような、JISK0070に準じた中和滴定法により測定した。まずは、試料を三角フラスコに量り取った。次に、アセトン100ml及び指示薬としてフェノールフタレイン溶液を数滴加え、水浴上で試料が完全に溶けるまで十分に振り混ぜた。次に、0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬のうすい紅色が30秒間続いたときを終点とした。そして、次式により酸価を算出した。
(数式1) A=[B×f×5.611/S]/( 不揮発分濃度/ 100)
(ただし、(数式1)中、A:酸価(mgKOH/g)、B:滴定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、f:0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクター(濃度補正係数)、S:試料の質量(g))
【0069】
(水酸基価測定方法)
下記に示すような、JISK0070に準じた中和滴定法により測定した。まず、無水酢酸25gを全量フラスコ100mlに取り、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振り混ぜてアセチル化試薬を作製した。アセチル化試薬は、湿気、二酸化炭素及び酸の蒸気に触れないようにし、褐色瓶に保存した。次に、試料を平底フラスコに量り取り、これにアセチル化試薬5mlを全量ビペットを用いて加えた。次に、フラスコの口に小さな漏斗を置き、温度95〜100℃のグリセリン浴中に底部約1cmを浸して加熱した。フラスコの首がグリセリン浴の熱をうけて温度が上がるのを防ぐために、中に丸い穴をあけた厚紙の円板をフラスコの首の付け根にかぶせた。そして、1時間後、フラスコをグリセリン浴から取り出し、放冷後漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を分解した。さらに、分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後エタノール5mlで漏斗及びフラスコの壁を洗った。フェノールフタレイン溶液数滴を指示薬として加え、0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬のうすい紅色が約30秒間続いたときを終点とした。空試験を上記同様、試料を入れないで行った。そして、次式により水酸基価を算出した。
(数式2)A=((B−C)×f×28.05/S)/( 不揮発分濃度/ 100)+D
(ただし、(数式2)中、A:水酸基価(mgKOH/g)、B:空試験に用いた0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、C:滴定に用いた0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、f:0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクター(濃度補正係数)、S:試料の質量(g)、D:酸価(mgKOH/g))
【0070】
<重量減少率>
有機酸のジエステルまたはトリエステルの揮発性は、以下の手順で測定する。まず、缶蓋つきメンタム缶を秤量(X)し、次いで缶蓋つきメンタム缶に試料を約2g投入し秤量(Y)した。次に、試料の入った金属缶の蓋を開け、150℃で10分間加熱した後、メンタム缶を取り出し、すぐに蓋をして、常温にて放置し冷却後、加熱後の試料が入った缶蓋つきメンタム缶を秤量(Z)した。150℃で10分間加熱した後の重量減少率は下記数式1を使用して算出した。
(数式3) 重量減少率(%)=100−((Z-X)/(Y―X))×100
〇:加熱後の重量減少率3%以下
×:加熱後の重量減少率3%超
【0071】
[実施例1]
得られたウレタン樹脂1溶液中のウレタン樹脂1 100重量部に対して、有機酸エステルとしてアジピン酸ジ2−エチルヘキシルを35重量部、変質防止剤としてイルガノックス1135(BASF社製 ヒンダードフェノール系酸化防止剤)を1.0重量部、ポリイソシアネート化合物としてヘキサメチレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体(不揮発分75重量%の酢酸エチル溶液)を不揮発分換算で12.0重量部、溶剤としてトルエンを20重量部配合し、ディスパーで攪拌することで不揮発分62%の再剥離型粘着剤を得た。
【0072】
[実施例20]
得られたウレタン樹脂2溶液中のウレタン樹脂2 100重量部に対して、有機酸エステルとしてアジピン酸ジイソデシルを35重量部、変質防止剤としてイルガノックス1135を1.0重量部、ポリイソシアネート化合物として上記ヘキサメチレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体を不揮発分換算で12.0重量部、溶剤としてトルエンを20重量部配合し、ディスパーで攪拌することで不揮発分62%の再剥離型粘着剤を得た。
【0073】
[実施例2〜19、21、比較例1〜5]
実施例1の原料・配合量を表1および表2に示した通りに変更した以外は実施例1と同
様に行うことでそれぞれ実施例2〜19、21、比較例1〜7の再剥離型粘着剤を得た。
ただし、実施例6〜12、15、17,18は参考例である。
【0074】
<粘着シートの作成>
得られた再剥離型粘着剤を、乾燥後の厚さが10μmになるよう50μm厚みのPET基材に塗工し、100℃で2分間乾燥した後、剥離ライナーを貼り合わせた。次いで23℃-50%で1週間放置し、粘着シートを得た。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
表中の有機酸エステルを150℃で10分間加熱した後の重量減少率は以下の通りである。
アジピン酸ジ2−エチルヘキシル 0.2重量%
アジピン酸ジイソノニル 0.2重量%
アジピン酸ジイソデシル 0.1重量%
セバシン酸ジ2−エチルヘキシル 0.1重量%
アゼライン酸ジ2−エチルヘキシル 0.1重量%
フタル酸ジ2−エチルヘキシル 0.2重量%
フタル酸ジイソノニル 0.1重量%
フタル酸ジイソデシル 0.1重量%
フタル酸ジウンデシル 0.1重量%
フタル酸ジトリデシル 0.1重量%
エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2-エチルヘキシル 0.1重量%
トリメリット酸トリ2−エチルヘキシル 0.1重量%
ミリスチン酸イソプロピル 15.0重量%
オレイン酸メチル 4.9重量%
オレイン酸イソブチル 0.8重量%
アジピン酸ジイソブチル 18.8重量%
【0079】
得られた粘着シートを用いて、以下の物性評価を行った。
【0080】
<粘着力>
得られた粘着シートを幅25mm・長さ100mmの大きさに準備し試料とした。次いで23℃−50%RH雰囲気下にて、試料から剥離ライナーを剥がし、露出した粘着剤層を25μmPETフィルム(ユニチカ製 エンブレットS−25)に貼りあわせ、2kgのローラーで1往復圧着し、24時間放置後、引張試験機を使用して剥離角度180度、剥離速度0.3m/minの条件で粘着力を測定した。
【0081】
<再剥離性>
得られた粘着シートを幅25mm・長さ100mmの大きさに準備し試料とした。次いで23℃−50%RH雰囲気下にて、試料から剥離ライナーを剥がし、露出した粘着剤層をガラス板に貼りあわせ、2kgのローラーで1往復圧着し、40℃で1週間経時した。さらに23℃−50%RH雰囲気下で、30分間放置した後、引張試験機を使用して剥離角度180度、剥離速度0.3m/minの条件で粘着力を測定した。また、別途、前記同様に経時した試料について粘着シートを手で剥がし再剥離性を評価した。評価基準は以下の通りである。
〇:粘着力が30mN/25mm以内で、かつ手剥がしで粘着シートを簡単に剥離できた。(良好)
△:粘着力が30〜100mN/25mm以内で、かつ手剥がしで粘着シートを比較的簡単に剥離できた。 (実用上問題なし)
×:粘着力が100mN/25mmより高く、かつ手剥がしで粘着シートを簡単に剥がすことができなかった。 (実用不可)
【0082】
<汚染性>
得られた粘着シートを、幅50mm・長さ100mmの大きさに準備し測定試料とした。次いで測定試料から剥離ライナーを剥がし、露出した粘着剤層をガラス板に貼着した後、85℃−95%RH雰囲気下および−30℃雰囲気下でそれぞれ72時間放置した。さらに23℃−50%RH雰囲気下で、30分間放置した後、粘着シートを剥離し、剥離後のガラス板の表面を目視で観察することで被着体汚染性を評価した。評価基準は以下の通りである。
〇:ガラス板に汚染が無かった(良好)
△:ガラス板をわずかに汚染した。 (実用上問題なし)
×:ガラス板を汚染した。 (実用不可)
【0083】
<乾燥オーブン汚染性>
得られた粘着剤を、試験塗工機を使用して乾燥後の厚みが50μmになるように、オーブン長1m、塗工幅200mm、温度130℃、塗工速度0.5m/分で100m塗工した。塗工終了後、乾燥オーブン内を観察するために設けられているガラス窓を観察して曇りの有無により粘着剤の揮発に基づく汚染性を評価した。
○:ガラス窓に曇りが発生しなかった。 (良好)
△:ガラス窓にやや曇りが発生したが、内側が観察できた。 (実用上問題なし)
×:ガラス窓に曇りが発生し、内側を目視できなかった。 (実用不可)
【0084】
<濡れ性>
得られた粘着シートを、幅25mm・長さ200mmの大きさに準備し測定試料とした。次いで測定試料から剥離ライナーを剥がし、粘着シートの両端を手で持ちながら露出した粘着剤層の中心部をガラス板に接触させた後、手を離した。そして前記粘着シートの自重で粘着剤層全体がガラス板に密着するまでの時間を測定することで粘着剤の濡れ性を評価した。粘着シートがガラス板と密着するまでの時間が短いほど濡れ性が高く表面保護用途として実用性が高い。評価基準は以下の通りである。
◎:密着するまで2.5秒未満 (非常に良好)
〇:密着するまで2.5秒以上、3秒未満 (良好)
△:密着するまで3秒以上、4秒未満 (実用上問題なし)
×:密着するまで4秒以上、濡れ広がない(実用不可)
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】
【0088】
表4〜表6の結果から実施例1〜21は、加熱後の重量減少率が低い有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)を使用したため両汚染性評価で良好な結果が得られた。そのため本願発明の粘着剤は、乾燥温度を高く設定した高速塗工が可能になり粘着シートの生産性を向上できた。さらに本願発明の再剥離粘着剤は、被着体汚染性に優れ、濡れ性も良好であった。
前記有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)は、150℃−10分加熱後の減量が3重量%以下である、再剥離型粘着剤により解決される。なお、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)の分子量は、300〜600であることが好ましい。