(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974368
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】表面実装機の部品保持ヘッド
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
H05K13/04 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-207372(P2012-207372)
(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-63837(P2014-63837A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】500548884
【氏名又は名称】ハンファテクウィン株式会社
【氏名又は名称原語表記】HANWHA TECHWIN CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100082164
【弁理士】
【氏名又は名称】小堀 益
(74)【代理人】
【識別番号】100105577
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 隆人
(74)【代理人】
【識別番号】100182707
【弁理士】
【氏名又は名称】小原 博生
(72)【発明者】
【氏名】谷崎 昌裕
【審査官】
大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−150638(JP,A)
【文献】
特開2010−219306(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0196046(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K3/30,13/00−13/08
B25J1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド本体にスピンドルがその軸線周りのT方向に回転可能かつ軸線方向に沿ったZ方向に移動可能に装着され、前記スピンドルの下端に部品を保持する保持具が装着され、前記スピンドルの上端面を押圧具で押圧して当該スピンドルをZ方向に移動させる表面実装機の部品保持ヘッドにおいて、
前記押圧具は、前記スピンドルの上端面を押圧するときに、当該上端面のT方向回転中心を挟むように配置される、複数の回転押圧部材を有することを特徴とする表面実装機の吸着ヘッド。
【請求項2】
前記複数の回転押圧部材のうち少なくとも2つの回転押圧部材は、前記上端面のT方向回転中心に対して対称となるように配置されている請求項1に記載の表面実装機の吸着ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップ等の部品を基板上に実装する表面実装機において、部品を保持する保持具を有する部品保持ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装機は、ノズル等の保持具を有する部品保持ヘッドにより、部品を部品供給部からピックアップし保持してプリント基板上に移送し、プリント基板上の所定位置に実装するように構成されている。
【0003】
かかる部品保持ヘッドとしては、そのヘッド本体に複数のスピンドルがそれぞれ軸線周りのT方向に回転可能かつ軸線方向に沿ったZ方向に移動可能に装着され、スピンドルの下端にノズル等の保持具が装着された構成を有するものが知られている(例えば特許文献1)。また、スピンドルをZ方向に移動させるZ方向移動機構としては、サーボモータとボールねじを利用した機構のほかに、スピンドルの上端面を押圧する押圧具を利用した機構が知られている。
【0004】
図7は、押圧具を利用した従来のZ方向移動機構を有する部品保持ヘッドを示す概念図である。
図7に示す部品保持ヘッドはロータリー式の部品保持ヘッドで、そのヘッド本体に複数のスピンドル300を有し、各スピンドル300はヘッド本体の垂直中心軸周りのR方向に回転可能に取り付けられている。押圧具301が1箇所に配置され、この押圧具301をZ方向に移動させることで、スピンドル300をZ方向に移動させる。押圧具301は、スピンドルの上端面300aに接触する回転押圧部材(ローラ)301aを有する。
【0005】
上述のようにスピンドル300は、R方向、Z方向及びT方向に回転又は移動する。これらの回転又は移動の動作は、従来、単独(シリアル)で行うことが多かったが、近年、実装効率の向上のため、上記各方向の回転又は移動を同時並行(パラレル)で行うことが求められている。例えば、スピンドルをT方向に回転させながらZ方向に移動(下降)させるということである。しかしこの場合、
図8に示すように、押圧具301の回転押圧部材301aには、スピンドルの上端面300aのT方向回転中心を挟む一端と他端において逆方向の回転力が作用し、回転押圧部材301aの回転を妨げる。その結果、大きな摩擦力が発生し、回転押圧部材301aが摩耗したり損傷したりするという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−164394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、スピンドルの上端面を押圧具で押圧して当該スピンドルをZ方向に移動させる表面実装機の部品保持ヘッドにおいて、押圧具による押圧時に大きな摩擦力が発生することを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ヘッド本体にスピンドルがその軸線周りのT方向に回転可能かつ軸線方向に沿ったZ方向に移動可能に装着され、前記スピンドルの下端に部品を保持する保持具が装着され、前記スピンドルの上端面を押圧具で押圧して当該スピンドルをZ方向に移動させる表面実装機の部品保持ヘッドにおいて、前記押圧具は、前記スピンドルの上端面を押圧するときに、当該上端面のT方向回転中心を挟むように配置される、複数の回転押圧部材を有することを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記複数の回転押圧部材のうち少なくとも2つの回転押圧部材は、前記上端面のT方向回転中心に対して対称となるように配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スピンドルの上端面を押圧して当該スピンドルをZ方向に移動させる押圧具が複数の回転押圧部材を有し、この複数の回転押圧部材が、前記スピンドルの上端面のT方向回転中心を挟むように配置されるので、スピンドルをT方向に回転させながらZ方向に移動(下降)させる動作を行ったとしても、前記複数の回転押圧部材がそれぞれT方向の回転に追従する。したがって、大きな摩擦力が発生することはなく、押圧具の摩耗や損傷を防止できる。
【0011】
また、スピンドルがR方向に回転する動作を伴っていたとしても、本発明の押圧具は、上述のとおり複数の回転押圧部材を有するので、
図8に示したように一つの回転押圧部材のみを有する場合に比べ、摩擦力を低減できる。
【0012】
以上のとおり、本発明によれば、押圧具での摩擦力の発生を抑えつつ、R方向、Z方向及びT方向の回転又は移動の動作を同時並行(パラレル)で行う、すなわちオーバーラップさせることができる。これにより、表面実装機の動作時間を短縮でき、実装効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の部品保持ヘッドを有する部品保持ユニットを表面実装機本体に装着するときの状態を示す全体構成図である。
【
図5】本発明による押圧具の一例を示す概念図である。
【
図7】押圧具を利用した従来のZ方向移動機構を有する部品保持ヘッドを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づき説明する。
【0015】
図1は、本発明の部品保持ヘッドを有する部品保持ユニットを表面実装機本体に装着するときの状態を示す全体構成図である。
【0016】
部品保持ユニット100は、表面実装機本体200のヘッドプレート210に着脱可能に装着される。
【0017】
本実施例において本発明の部品保持ヘッドは、部品保持ユニット100のユニット本体110に取り付けられている。具体的には、部品保持ユニット100のユニット本体110に、本発明の部品保持ヘッドのヘッド本体120が垂直軸周りのR方向に回転可能に取り付けられている。
【0018】
ユニット本体110の上部に、部品保持ユニット100の電源線及び信号線を集約させたコネクタ111が設けられており、このコネクタ111を表面実装機本体200の電源・信号供給部220に接続することで、部品保持ユニット100に電源及び信号が供給される。
【0019】
ヘッドプレート210には、2本の位置決めピン211が水平方向に並んで設けられており、また、表面実装機本体200の上部には、エア供給源に通じるエアカプラ230が複数配置されている。このエアカプラ230に部品保持ユニット100のエア配管(図示せず)を接続することで、部品保持ユニット100にエアが供給される。
【0020】
部品保持ユニット100をヘッドプレート210に装着するときは、部品保持ユニット100を2本の位置決めピン211に引っ掛けて位置決めした上で、部品保持ユニット100をヘッドプレート210に向けてスライドさせる。そうすると、コネクタ111が電源・信号供給部220に自動的に接続される。その後、固定用ボルトで部品保持ユニット100をヘッドプレート210に固定し、エアカプラ230に部品保持ユニット100のエア配管を接続する。このエア配管の接続にはフレキシブルチューブを用いると便利である。
【0021】
一方、部品保持ユニット100をヘッドプレート210から取り外すときは、上記の固定ボルトを取り外す。このとき、その固定ボルトはボルトホルダ112により保持され、落下しないでユニット本体110側に取り付いた状態を維持する。その後、エアカプラ230から部品保持ユニット100のエア配管を取り外し、部品保持ユニット100を2本の位置決めピン211に引っ掛けた状態で、ヘッドプレート210から離れる方向にスライドさせる。これにより、コネクタ111は電源・信号供給部220から外れる。
【0022】
このようにして、部品保持ユニット100は、表面実装機本体200のヘッドプレート210に着脱され、適宜、部品保持ユニット100の交換が行われる。
【0023】
次に、部品保持ユニット100の構成を説明する。
図2は部品保持ユニット100の正面図、
図3はそのA−A断面図、
図4はB−B断面図である。
【0024】
ユニット本体110にロータリー式のヘッド本体120が垂直軸周りのR方向に回転可能に取り付けられている。このヘッド本体120には複数のスピンドル121がそれぞれ軸線周りのT方向に回転可能かつ軸線方向に沿ったZ方向に移動可能に装着されている。各スピンドル121はヘッド本体120の周方向に等間隔で配置され、各スピンドル121の下端には部品を吸着保持する保持具としてノズル122が装着されている。また、スピンドル121の上端面を押圧してそのスピンドル121を軸線方向に沿ったZ方向に移動させる押圧具113がユニット本体110の1箇所に配置されている。更に、ユニット本体110には、ヘッド本体120をR方向に回転させるRサーボモータ114と、各スピンドル121をT方向に回転させるTサーボモータ115と、押圧具113をZ方向に移動させるZサーボモータ116とが配置されている。
【0025】
図3を参照すると、Rサーボモータ114のモータ軸114aに固定されたギア114bは、ヘッド本体120の回転軸となる中空状の垂直軸120aに固定されたギア120bに噛み合っている。したがって、Rサーボモータ114の駆動により、ヘッド本体120がR方向に回転する。一般的に、Rサーボモータ114側のギア114bとヘッド本体120側のギア120bとのギア比は、ヘッド本体120側が減速されるように設定され、本実施例ではギア比を8としている。
【0026】
ヘッド本体120側のギア120bの上面に遮光部材123が上方に突出するように固定されている。すなわち、遮光部材123は、ヘッド本体120とともに同じ回転速度で回転する。この遮光部材123の回転経路上に光センサ117が配置されている。光センサ117はユニット本体110に固定されている。光センサ117は遮光部材123が到来すると遮光されて反応する。なお、これらの光センサ117及び遮光部材123は、説明は省略するが、部品保持ユニット100のR方向の原点位置調整の際に使用する。
【0027】
一方、Tサーボモータ115のモータ軸115aに固定されたギア115bは、各スピンドル121に固定されたギア121aの全てに噛み合っている。したがって、Tサーボモータ115の駆動により、各スピンドル121がT方向に回転する。一般的に、Tサーボモータ115側のギア115bとスピンドル121側のギア121aとのギア比は、スピンドル121側が増速されるか、等速となるように設定され、本実施例ではギア比(増速比)を4:1としている。
【0028】
なお、Tサーボモータ115のモータ軸115aは、上述したヘッド本体120の垂直軸120a内に挿入されている。また、モータ軸115a内には、ノズル122に負圧あるいは微正圧を供給するためのエア通路115cが設けられている。
【0029】
図4を参照して、Zサーボモータ116のモータ軸116aは、ボールねじ機構のねじ軸を構成し、このねじ軸(モータ軸116a)にナット116bが装着されている。そして、このナット116bに押圧具113が連結されている。したがって、Zサーボモータ116の駆動により、ナット116bとともに押圧具113がZ方向に移動する。また、モータ軸116aの上部にはナット116bの上限位置を規定する上限ストッパー116cが設けられている。この上限ストッパー116cにより、押圧具113の上限位置も規定される。
【0030】
また、Zサーボモータ116内又はその制御部内にZサーボモータのトルク値を検出するトルクセンサが設けられており、このトルクセンサで検出したトルク値が所定値以上となったことにより、ナット116bが上限ストッパー116cに突き当たり、押圧具113が上限位置に到達したことを検知するようにしている。
【0031】
以上の構成において、部品保持ユニット100を有する表面実装機は、部品保持ユニット100のユニット本体110に保持されたヘッド本体120(部品保持ヘッド)のノズル122により、部品を部品供給部からピックアップし保持してプリント基板上に移送し、プリント基板上の所定位置に実装する。
【0032】
上記ピックアップ時及び実装時においては、
図3に示すように、押圧具113がNo.1のスピンドル121−1の上端面を押圧して、そのスピンドル121−1をZ方向に移動(下降)させる。
【0033】
図5は、本発明による押圧具の一例を示す概念図である。
図5に示す押圧具113は、回転押圧部材として一対のローラ113a,113bを有する。これらのローラ113a,113bは、押圧具113がスピンドル121の上端面121aを押圧するときに、当該上端面121aに接触する部材である。本例において、ローラ113aとローラ113bとは、上端面121aのT方向回転中心を挟むように一直線上に配置され、かつ上端面121aのT方向回転中心に対して対称となるように配置されている。
【0034】
したがって、
図6に示すように、スピンドル121をT方向に回転させながらZ方向に移動(下降)させる場合であっても、ローラ113aとローラ113bとが互いに独立に回転し、スピンドル121の上端面121aのT方向回転に無理なく追従するので、大きな摩擦力が発生することはない。また、スピンドルが更にR方向に回転する動作を伴っていたとしても、
図8に示したように一つの回転押圧部材のみを有する場合に比べ、摩擦力を低減できる。
【0035】
このように、
図5に示す押圧具113によれば、押圧具113での摩擦力の発生を抑えつつ、R方向、Z方向及びT方向の回転又は移動の動作をオーバーラップさせることができる。これにより、表面実装機の動作時間を短縮でき、実装効率を向上させることができる。更に、
図5の例では、ローラ113a及びローラ113bを上端面121aのT方向回転中心に対して対称となるように配置しているので、Z方向の押圧力をより安定して付加できる。
【0036】
なお、
図5の例では、回転押圧部材をローラにより構成したが、回転押圧部材は、スピンドル121の上端面121aに接触して回転可能なものであれば特に限定されず、例えばボールベアリングにより構成することもできる。
【0037】
また、
図5の例では、回転押圧部材を2つ設けたが、3つ以上設けてもよい。この場合、少なくとも2つの回転押圧部材が、スピンドルの上端面のT方向回転中心を挟むように配置されていればよいが、全ての回転押圧部材が、スピンドルの上端面のT方向回転中心を挟むように配置されていることが好ましい。また、回転押圧部材を3つ以上設ける場合、少なくとも2つの回転押圧部材が、スピンドルの上端面のT方向回転中心に対して対称となるように配置されていることが好ましく、全ての回転押圧部材が上記T方向回転中心に対して対称に配置されていることがより好ましい。
【0038】
更に、
図1〜4に示した実施例では、ロータリー式の部品保持ヘッドに本発明を適用したが、スピンドルが並列に並んだピアノヘッド式の部品保持ヘッドにも本発明は適用可能である。この場合、スピンドルはR方向には回転しないが、T方向及びZ方向の動作は伴うので、本発明を有効に適用できる。
【符号の説明】
【0039】
100 吸着ヘッドユニット
110 ヘッド本体
111 コネクタ
112 ボルトホルダ
113 押圧具
113a,113b ローラ(回転押圧部材)
114 Rサーボモータ
114a モータ軸
114b ギア
115 Tサーボモータ
115a モータ軸
115b ギア
115c エア通路
116 Zサーボモータ
116a モータ軸(ねじ軸)
116b ナット
116c 上限ストッパー
117 光センサ
120 ロータリーヘッド
120a 垂直軸
120b ギア
121 スピンドル
121−1 No.1スピンドル
121a ギア
122 ノズル(保持具)
123 遮光部材(回転部材)
200 表面実装機本体
210 ヘッドプレート
211 位置決めピン
220 電源・信号供給部
230 エアカプラ