(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974401
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】電気機械用ステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/18 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
H02K3/18 P
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-535156(P2014-535156)
(86)(22)【出願日】2011年12月23日
(65)【公表番号】特表2014-528690(P2014-528690A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】GB2011052583
(87)【国際公開番号】WO2013054067
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2014年4月14日
(31)【優先権主張番号】1117770.6
(32)【優先日】2011年10月14日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508032310
【氏名又は名称】ダイソン テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】リーバー マーク エドワード
(72)【発明者】
【氏名】グリーサム スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】リー ケネス
【審査官】
安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−129623(JP,A)
【文献】
特開2002−354738(JP,A)
【文献】
特開2003−333783(JP,A)
【文献】
特開2000−166131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/00−3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータであって、
ボビンに巻かれたコイルを有し、前記コイルは、複数の層をなして巻かれ、前記層の各々は、前記ボビンの両端部の間に延びる複数の巻き部を含み、最外層の巻き部ピッチは、下層の巻き部ピッチよりも大きく、前記最外層のすぐ下の層の巻き部ピッチは、下層の巻き部ピッチよりも大きい、ステータ。
【請求項2】
ステータであって、
ボビンに巻かれたコイルを有し、前記コイルは、複数の層をなして巻かれ、前記層の各々は、前記ボビンの両端部の間に延びる複数の巻き部を含み、最外層の巻き部ピッチは、下層の巻き部ピッチよりも大きく、前記最外層及び前記最外層のすぐ下の層は、同じ巻き部ピッチを有する、ステータ。
【請求項3】
ステータであって、
ボビンに巻かれたコイルを有し、前記コイルは、複数の層をなして巻かれ、前記層の各々は、前記ボビンの両端部の間に延びる複数の巻き部を含み、最外層の巻き部ピッチは、下層の巻き部ピッチよりも大きく、前記最外層の巻き部及び前記最外層のすぐ下の層の巻き部は、交差パターンを形成する、ステータ。
【請求項4】
前記巻き部は、前記ボビンの上部と底部のところで交差し、前記ボビンの側部のところで互いに横に位置する、請求項3に記載のステータ。
【請求項5】
前記コイルの最初の巻き部の始まり及び前記コイルの最後の巻き部の終わりは、前記ボビンの同じ端部にある、請求項1〜4のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項6】
前記ステータは、C字形コアを含み、前記C字形コアは、背部と、前記背部の両端部から延びる一対のアームと、を有し、前記ボビンは、前記一対のアームの一方に設けられ、 前記ステータは、前記一対のアームの他方に設けられる更なるボビンを有し、更なるコイルが、前記更なるボビンに複数の層をなして巻かれ、前記層の各々は、前記更なるボビンの両端部の間に延びる複数の巻き部を有し、前記最外層の巻き部ピッチは、下層の巻き部ピッチよりも大きい、請求項1〜5のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項7】
ロータと、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のステータと、を有する電気機械。
【請求項8】
電気機械であって、
ロータと、ステータと、を有し、
前記ステータは、前記ロータの周りに配置された複数のステータ要素を有し、前記ステータ要素の各々は、コアと、ボビンと、コイルと、を有し、前記コイルは、前記ボビンに複数の層をなして巻かれ、前記層の各々は、前記ボビンの両端部の間に延びる複数の巻き部を含み、最外層の巻き部ピッチは、下層の巻き部ピッチよりも大きく、前記最外層のすぐ下の層の巻き部ピッチは、下層の巻き部ピッチよりも大きい、電気機械。
【請求項9】
電気機械であって、
ロータと、ステータと、を有し、
前記ステータは、前記ロータの周りに配置された複数のステータ要素を有し、前記ステータ要素の各々は、コアと、ボビンと、コイルと、を有し、前記コイルは、前記ボビンに複数の層をなして巻かれ、前記層の各々は、前記ボビンの両端部の間に延びる複数の巻き部を含み、最外層の巻き部ピッチは、下層の巻き部ピッチよりも大きく、前記最外層及び前記最外層のすぐ下の層は、同じ巻き部ピッチを有する、電気機械。
【請求項10】
電気機械であって、
ロータと、ステータと、を有し、
前記ステータは、前記ロータの周りに配置された複数のステータ要素を有し、前記ステータ要素の各々は、コアと、ボビンと、コイルと、を有し、前記コイルは、前記ボビンに複数の層をなして巻かれ、前記層の各々は、前記ボビンの両端部の間に延びる複数の巻き部を含み、最外層の巻き部ピッチは、下層の巻き部ピッチよりも大きく、前記最外層の巻き部及び前記最外層のすぐ下の層の巻き部は、交差パターンを形成する、電気機械。
【請求項11】
前記ステータ要素の各々は、更なるボビンと、更なるコイルを有し、前記更なるコイルは、前記更なるボビンに複数の層をなして巻かれ、前記層の各々は、前記更なるボビンの両端部の間に延びる複数の巻き部を含み、前記最外層の巻き部ピッチは、下層の巻き部ピッチよりも大きい、請求項8〜10の何れか1項に記載の電気機械。
【請求項12】
前記コアはC字形であり、背部と、前記背部の両端部から延びる一対のアームを有し、前記ボビンは、前記一対のアームの一方に設けられ、前記更なるボビンは、前記一対のアームの他方に設けられる、請求項11に記載の電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械のためのステータ、及び、かかるステータを組込んだ電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ステータのコイルは、ボビンに巻かれる。ボビンの寸法は、所定のワイヤ直径及び巻き部の数(巻き数)について、一般に、コイルの最初の巻き部及び最後の巻き部がボビンの一方の端部に配置されるように定められる。これにより、コイルを張力下に維持しながら、コイルの自由端が電気端子に接続されることを可能にする。
【0003】
同じステータに対して異なるコイル形態を使用する必要がある場合がある。例えば、多くの国の商用電源の電圧及び/又は周波数が異なるので、ワイヤ径及び/又は巻き部の数が異なるコイルが必要とされる。各コイル形態のために、一般に、最初の巻き部及び最後の巻き部がボビンの一方の端部に配置される異なるボビンが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、異なるボビンを準備することは、製造コストを増大させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第1の側面において、ステータであって、ボビンに巻かれたコイルを有し、コイルは、複数の層をなして巻かれ、各層は、ボビンの両端部の間に延びる複数の巻き部を有し、最外層の巻き部ピッチは、下層の巻き部ピッチよりも大きい、ステータを提供する。
【0006】
従って、最外層は、下層よりも少ない巻き部しか有しない。最外層の巻き部は、ボビンの両端部の間に延び、コイルは、張力下に維持される。従って、同じボビンを用いて、張力のロスなしに異なるコイル形態を使用することができる。
【0007】
用語「巻き部ピッチ」は、隣接した巻き部の間の中心間距離を意味すると理解すべきである。最外層は、その長さ方向にわたって、均一な巻き部ピッチを有していてもよいし、不均一な巻き部ピッチを有していてもよい。しかしながら、最外層の巻き部ピッチは、最外層の全長にわたって平均するとき、下層の巻き部ピッチよりも大きい。コイルの最初の巻き部の始まりと、コイルの最後の巻き部の終わりは、ボビンの同じ端部にあるのがよい。特に、最初の巻き部の始まりと、最後の巻き部の終わりは、ボビンの後部にあるのがよい。従って、コイルを回路基板等に接続するための電気端子は、ボビンの同じ端部に配置される。これにより、電気機械内におけるステータの組立てを簡易にする。さらに、ステータが追加のコイルを有する場合、必要であれば、2つのコイルの端部は、適宜接続されてもよい。
【0008】
最外層のすぐ下の層は、下層よりも大きな巻き部ピッチを有する。特に、最外層及びそのすぐ下の層は、同じ巻き部ピッチを有するのがよい。その結果、コイルは、コイル形態と無関係に、コイルの最初の巻き部の始まりと最後の巻き部の終わりがボビンの同じ端部にあるように巻かれる。
【0009】
最外層の巻き部、及び、そのすぐ下の層の巻き部は、交差パターンを形成するのがよい。その結果、最外層の巻き部は、そのすぐ下の層の巻き部を押さえる。従って、最外層の巻き部は、張力下に維持され、2つの層の巻き部はボビンの端部に移動しない。巻き部はボビンの上部及び底部で交差し、さらに巻き部は、ボビンの側部で互いに横に位置する。その結果、比較的高い充填率を実現することができる。
【0010】
ステータは、C字形コアを有し、C字形コアは、背部と、背部の両端部から延びる一対のアームを有するのがよい。ボビンが、アームの一方に設けられ、ステータが、アームの他方に、更なるボビンを有していてもよい。更なるコイルは、更なるボビンに巻かれ、更なるコイルは、複数の層に巻かれ、各層は、更なるボビンの両端部の間に延びる複数の巻き部を含む。最外層は、下層よりも大きな巻き部ピッチを有する。各コイルの最外層の巻き部は、ボビンの両端部の間に延びるので、ステータの各アームの間の磁束漏れを減少させる。
【0011】
第2の側面において、本発明は、ロータと、前記パラグラフに記載のステータとを有する電気機械を提供する。
【0012】
第3の側面において、本発明は、電気機械であって、ロータと、ステータとを有し、ステータは、ロータの周りに配置された複数のステータ要素を含み、ステータ要素の各々は、コアと、ボビンと、コイルを含み、コイルは、ボビンに複数の層をなして巻かれ、層の各々は、ボビンの両端部の間に延びる複数の巻き部を含み、最外層は下層よりも大きな巻き部ピッチを有する、電気機械を提供する。
【0013】
コイルの最外層の巻き部は、ボビンの両端部の間に延びるので、各ステータ要素のコイルは、張力下に維持される。さらに、各ステータ要素の間の磁束漏れを減少させる。
【0014】
各ステータ要素は、更なるボビン及び更なるコイルを備え、更なるコイルは複数の層をなして前記更なるボビンに巻かれ、各層は、更なるボビンの両端部の間に延びる複数の巻き部を含み、最外層は、下層よりも大きい巻き部ピッチを有する。各ステータ要素のコアの周りに更なるコイルを設けることで、磁束漏れを更に減少させる。
【0015】
コアはC字形であるのがよく、背部と、背部の両端部から延びる一対のアームを有する。ボビンは、アームの一方に設けられ、更なるボビンは、アームの他方に設けられる。各ボビンがコアのアーム上に設けられることにより、各アームの間の磁束漏れを減少させる。
【0016】
本発明を容易に理解できるように、添付図面を参照して、本発明の実施形態を例示的に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図3の線Y−Yにおける本発明による電気機械の平面断面図である。
【
図3】
図2の線X−Xにおける本発明による電気機械の側面断面図である。
【
図4】本発明と異なるステータの一部分の平面断面図である。
【
図5】本発明と異なる別のステータの一部分の平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜
図3の電気機械1は、ロータ2と、ステータ3を有する。ロータ2は、シャフト5に支持された4極の永久磁石4を有する。ステータ3は、ロータ2の両側に配置された2つのステータ要素6、7を有する。
【0019】
各ステータ要素6、7は、コア8と、ボビン要素9と、一対のコイル10、11を有する。
【0020】
コア8は、略C字形であり、背部12と、背部12の両端部から延びる2つのアーム13、14を有する。各アーム13、14は、ロータ2に向かって延び且つ自由端部を有し、自由端部は、極面15、16を構成する。
【0021】
ボビン要素9は、ブリッジ壁19によって連結された2つのボビン17、18を有する。各ボビン17、18は、中空管20と、前フランジ21と、後フランジ22を有し、各フランジ21、22は、中空管20の端部から外方に延びる。各ボビン17、18の中空管20は、コア8のアーム13、14を包囲する。この場合、前フランジ21は、極面15、16に近い方であり、後フランジ22は、極面15、16から遠い方である。ブリッジ壁19は、2つのボビン17、18の後フランジ22の間に延び、これらを連結する。
【0022】
各コイル10、11は、それぞれのボビン17、18に巻かれたワイヤを含む。単一のワイヤが、ステータ要素6、7の両方のコイル10、11に用いられるのがよい。変形例として、別個のワイヤが、各コイル10、11に用いられてもよい。各コイル10、11は、複数の層23を含み、各層23は、複数の巻き部を有し、複数の巻き部は、フランジ21、22で境界が定められたボビン17、18の両端部の間を延びる。コイル10、11の最外層23c及び最外層のすぐ下の層23b以外の、コイル10、11の各下層23aは、同じ巻き部ピッチを有する。従って、下層23aは、同じ又はほぼ同じ巻き部の数(巻き数)を有する。実際の巻き部の数は、隣接した層の間でわずかに異なり、これは、巻き部が互いに上に位置する仕方による。
【0023】
最外層のすぐ下の層23bを、以下、簡単のために、隣接層23bという。最外層23c及び隣接層23bの巻き部ピッチは、下層23aの巻き部ピッチよりも大きい。さらに、最外層23cと隣接層23bは、同じ巻き部ピッチを有し、かくして、同じ又はほぼ同じ巻き部の数を有する。分かりやすくするために、
図1〜
図3において、下層23aの巻き部は、陰影なしであり、隣接層23bの巻き部は、全体に陰影が付され、最外層23の巻き部は、部分的に陰影が付されている。
【0024】
最外層23cの巻き部及び隣接層23bの巻き部は一緒に、交差パターンを形成する。特に、
図2に示すように、最外層23cの巻き部は、ボビン17、18の上部及び底部において隣接層23bの巻き部の上を横切る。従って、
図3に示すように、最外層23cの巻き部及び隣接層23bの巻き部は、ボビン17、18の2つの側部に沿って互いに横に位置する。
【0025】
最外層23c及び隣接層23bが比較的大きい巻き部ピッチを採用することによって、同じボビン17、18において、各コイル10、11の異なる形態(例えば、ワイヤ直径及び巻き部の数)を使用することができる。コイル10、11の各層23がボビン17、18の長さ方向に延びているので、コイル10、11の最初の巻き部の始まり及びコイル10、11の最後の巻き部が終わりは、ボビン17、18の端部にある。その結果、各コイル10、11は、採用される形態と関係なしに、張力下に維持される。
【0026】
交差パターンを形成するとき、最外層23cの巻き部は、隣接層23bの巻き部を押さえるように作用する。このとき、最外層23cの巻き部は、最外層23cの巻き部及び隣接層23bの巻き部をボビン17、18の後部に移動させることなしに、張力下に維持される。
【0027】
最外層23cの巻き部及び隣接層23bの巻き部は、ボビン17、18の側部で互いに横に位置する。その結果、2つの層23b、23cの巻き部は、
図1に示すようにボビン17、18の側面に沿って同一平面に位置する。結果的に、各ステータ要素6、7に対して比較的高い充填率を実現することができる。
【0028】
各コイル10、11の巻き部の総数は、ステータ3の電磁気要件によって決まる。
図1〜
図3に示す特定の実施形態では、各コイル10、11は、70の巻き部を有する。しかしながら、コイル10、11の所定のワイヤ直径のために、ボビン17、18は、その長さ方向に最大16の巻き部しか収容することができない。前述のように、最外層23c及び隣接層23bの巻き部の数は、下層23aの巻き部の数よりも少ない。第1から第4の層23a(つまり下層)の各々の巻き部の数は16であり、第5層23b(つまり隣接層)の巻き部の数は3であり、第6層23c(つまり最外層)の巻き部の数は3である。
【0029】
70の巻き部を各ボビン17、18に巻く他の方法が存在する。例えば、
図4は、第1〜第4の層33aの各々の巻き部の数は16であり、第5層33c(つまり最外層)の巻き部の数は6であるステータ30を示す。矢印は、各層33をボビン32上に巻く方向を示す。この構成の問題点は、コイル33の最後の巻き部が、ボビン32の長さに沿う途中で終わることである。従って、コイル33を形成するワイヤを、ボビン32の後部に戻らなければならない。その結果、最外層33の巻き部は、張力下に維持されず、ボビン32の後部に広がって移動する場合がある。このことは、ステータ30の電磁気性能に悪影響を及ぼすであろう。
図5は、この問題を解決した別のステータ40を示す。第1〜第4の層43aの各々の巻き部の数は16であり、第5層43b(つまり隣接層)の巻き部の数は3であり、第6層43c(つまり最外層)の巻き部の数は3である。この場合、コイル43の最後の巻き部がボビン42の後部に位置するので、巻き部は張力下に維持される。しかしながら、
図1〜
図3に示すステータ3に比べると、
図5のステータ40は、以下に説明するように大きなインダクタンスを有する。
【0030】
電気機械1の作動中、磁束は、2つのステータ要素6、7の間、並びに、各ステータ要素6、7の2つのアーム13、14の間から漏れる。この磁束漏れにより、ステータ3のインダクタンスを増大させる。各コイル10、11は、磁束漏れのバリヤとして作用する。その結果、コイル10、11が巻かれるコア8の領域では、磁束漏れが減少する。更に、コア8の特定の部分の巻き部の数が増えると、コア8のこの部分からの磁束漏れが低下する。
【0031】
図5に示すステータ40では、最外層43c及び隣接層43bの巻き部は、ボビン42の長さの5分の1だけ延びる。更に、2つの層43b、43cの巻き部は、ボビン42の後部に位置する。その結果、最外層及び隣接層43b、43cで覆われていない、コア41の各アームの前部からの磁束漏れが増加する。従って、2つのステータ要素の間、及び各ステータ要素の各アームの間で大きな磁束漏れが生じる。対照的に、
図1〜
図3に示すステータ3では、最外層23cの巻き部及び隣接層23bの巻き部は各ボビン17、18の全長にわたって延びる。従って、各コア8の各アーム13、14の間の磁束漏れは減少する。更に、巻き部がボビン17、18の前端部に存在するので、2つのステータ要素6、7の間の磁束漏れは減少する。従って、
図1〜
図3のステータ3は、各コイル10、11の巻き部が張力下に確実に維持され、且つ、インダクタンスが減少するという利点がある。
【0032】
図1〜
図3のステータ3では、最外層23c及び隣接層23bの各々は、下層23aよりも大きい巻き部ピッチを有する。しかしながら、所要の巻き部の数に応じて、隣接層23bは、下層23aと同じ巻き部ピッチを有していてもよい。例えば、各コイル10、11の巻き部の数が85の場合、第1〜第5の層23a、23bの各々の巻き部の数は16であり、最外層23の巻き部の数は5である。もしくは、第1〜第4の層23aの各々の巻き部の数は16であり、隣接層23bの巻き部の数は11であり、最外層23cの巻き部の数は10である。従って、隣接層23bが最外層23cと同じ巻き部ピッチであること又は巻き部の数を有することは必須ではない。
【0033】
最外層23c及び隣接層23bの各々は、均一な巻き部ピッチを有し、このことは、巻き部ピッチが層の長さ方向に変化しないことを意味する。しかしながら、最外層23c及び/又は隣接層23bは、不均一な巻き部ピッチを有していてもよい。詳細には、巻き部ピッチは、ボビン17、18の前端部で小さくすることができる。その結果、ボビン17、18の前端部には、より多くの巻き部が位置し、かくして、ステータ要素6、7の間の磁束漏れを更に減少させることができる。巻き部ピッチは不均一であってもよいが、最外層23c及び/又は隣接層23bの全長にわたる平均巻き部ピッチは、下層23aの巻き部ピッチよりも小さい。
【0034】
図1〜
図3に示すステータ3では、ボビン17、18の同じ側で各コイル10、11の最初の巻き部が始まり、各コイル10、11の最後の巻き部が終わる。各ステータ要素6、7のコイル10、11に別個のワイヤを用いる場合、一方のワイヤの自由端は、単相巻線を形成するために、他方のワイヤの自由端と適宜接続すれる。さらに、コイル10、11を回路基板等に接続するための電気端子(図示せず)は、ボビン17、18の同じ端部に配置されるのがよい。例えば、ボビン17、18の各フランジ21、22は、電気端子を配置するための凹部を含んでいてもよい。これにより、電気機械1内のステータ3の組立が簡素化される。
図1〜
図3に示す実施形態では、コイル10、11は、ボビン17、18上で
図4及び5に示す方向と同じ方向に巻かれている。その結果、各ボビン17、18の後部で、各コイル10、11の最初の巻き部が始まり、最後の巻き部が終わる。これにより、電気端子を一般により大きな空間が存在するボビン17、18の後部に配置できるという利点がもたらされる。しかしながら、場合によっては、コイル10、11は、ボビン17、18の前部で最初の巻き部が始まり最後の巻き部が終わるようにボビン17、18の周りに巻かれてもよい。