特許第5974417号(P5974417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974417
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】パイプ部材の溶接構造
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/08 20100101AFI20160809BHJP
   F01N 13/18 20100101ALI20160809BHJP
   F01N 13/00 20100101ALI20160809BHJP
   F01N 3/00 20060101ALI20160809BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20160809BHJP
   B23K 9/00 20060101ALI20160809BHJP
   B23K 9/028 20060101ALI20160809BHJP
   B23K 33/00 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   F01N13/08 E
   F01N13/18
   F01N13/00 A
   F01N3/00 F
   F01N3/035 A
   B23K9/00 501C
   B23K9/028 N
   B23K33/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-233811(P2012-233811)
(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公開番号】特開2014-84780(P2014-84780A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000138521
【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】手塚 和志
【審査官】 永田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−63868(JP,A)
【文献】 特開2006−291909(JP,A)
【文献】 特開平2−301610(JP,A)
【文献】 特開2011−208572(JP,A)
【文献】 特開昭61−46371(JP,A)
【文献】 特開2008−221300(JP,A)
【文献】 特開昭58−167082(JP,A)
【文献】 特開昭63−5873(JP,A)
【文献】 実開昭60−194605(JP,U)
【文献】 特開昭59−30486(JP,A)
【文献】 特開2003−42885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00−99/00,
B01D 53/73,53/86−53/96,
B23K 9/00,9/028,33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部材(3)の側壁(3a1)に設けられる取り付け孔(12)に,肉厚がケース部材(3)より薄いパイプ部材(10)を嵌合し,前記取り付け孔(12)の周辺で前記パイプ部材(10)を前記側壁(3a1)に環状の溶接ビード(13)を介して結合する,パイプ部材の溶接構造において,
パイプ部材(10)に,半径方向外方に隆起して軸方向厚み(h)がパイプ部材(10)の肉厚(t)より大となるフランジ状の拡径部(10b)を形成し,この拡径部(10b)を前記側壁(3a1)に外方から当接させて,前記環状の溶接ビード(13)を介して前記パイプ部材(10)と前記側壁(3a1)とを結合させ,前記環状の溶接ビード(13)は,軸方向で前記側壁(3a1)から前記拡径部(10b)の最大外径部を超える位置まで形成されていることを特徴とする,パイプ部材の溶接構造。
【請求項2】
請求項1記載のパイプ部材の溶接構造において,
前記拡径部(10b)の内周に環状の凹部(14)を形成したことを特徴とする,パイプ部材の溶接構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載のパイプ部材の溶接構造において,
ケース部材(3)の側壁(3a1)に,該側壁(3a1)の一般面より隆起していて前記取り付け孔(12)が設けられる平坦な台座(15)を形成し,この台座(15)に前記拡径部(10b)を環状の溶接ビード(13)を介して結合したことを特徴とする,パイプ部材の溶接構造。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のパイプ部材の溶接構造において,
ケース部材は,ディーゼルエンジン(E)の排気浄化装置(F)のケース(3)であり,前記パイプ部材は,該排気浄化装置(F)の上流部の圧力を圧力センサ(11)に伝達する圧力検出パイプ(10)であることを特徴とする,パイプ部材の溶接構造。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のパイプ部材の溶接構造において,
前記パイプ部材(10)は,ケース部材(3)の側壁(3a1)から立ち上がる起立部(10A)と,この起立部(10A)の上端から屈曲して一側方へ延出する延出部(10B)とを有し,前記環状の溶接ビード(13)は,その溶接始点(P1)及び溶接終点(P2)が前記延出部(10B)の直下に来るようにして形成されることを特徴とする,パイプ部材の溶接構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ケース部材の側壁に設けられる取り付け孔に,肉厚がケース部材より薄いパイプ部材を嵌合し,前記取り付け孔の周辺で前記パイプ部材を前記側壁に溶接ビードを介して結合する,パイプ部材の溶接構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝるパイプ部材の溶接構造は,特許文献1に開示されるように,既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−42885号公報
【特許文献2】特開2006−291909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるようなパイプ部材の溶接構造では,パイプ部材は,その肉厚がケース部材より薄く,熱容量が小さいため,パイプ部材のケース部材への溶接時,溶接熱によりパイプ部材内面側へ溶接ビードの溶け込みが生じ,屡々裏ビードが形成される。このような裏ビードの形成は,パイプ部材内の流路を絞ることになって好ましくない。裏ビードを形成しないように溶接を行うには充分な熟練を要するものであり,しかも溶接後,裏ビードの発生の有無を検査することも困難であり,コストの低減と品質の確保が難しい。
【0005】
そのような不都合を解消するために,特許文献2に開示されるように,ケース部材に,肉厚で熱容量が大きいボス部材を溶接し,このボス部材の外端に形成したテーパ状の接続面に,薄肉のパイプ部材の端部に形成したテーパ状の接続端部を嵌合し,その接続端部を上記ボス部材に溶接することが知られている。しかしながら,こうしたものでは,部品点数及び溶接工数が増えることになるから,コストの低減を図ることが困難である。
【0006】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,溶接が容易であると共に,裏ビードによるパイプ部材の流路の絞りを防ぐことができる,構造簡単な前記パイプ部材の溶接構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために,本発明は,ケース部材の側壁に設けられる取り付け孔に,肉厚がケース部材より薄いパイプ部材を嵌合し,前記取り付け孔の周辺で前記パイプ部材を前記側壁に環状の溶接ビードを介して結合する,パイプ部材の溶接構造において,パイプ部材に,半径方向外方に隆起して軸方向厚みがパイプ部材の肉厚より大となるフランジ状の拡径部を形成し,この拡径部を前記側壁に外方から当接させて,前記環状の溶接ビードを介して前記パイプ部材と前記側壁とを結合させ,前記環状の溶接ビードは,軸方向で前記側壁から前記拡径部の最大外径部を超える位置まで形成されていることを第1の特徴とする。尚,前記ケース部材は,後述する本発明の実施形態中の排気浄化装置のケース3に対応し,パイプ部材は圧力検出パイプ10に対応する。
【0008】
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記拡径部の内周に環状の凹部を形成したことを第2の特徴とする。
【0009】
さらに本発明は,第1又は第2の特徴に加えて,ケース部材の側壁に,該側壁の一般面より隆起していて前記取り付け孔が設けられる平坦な台座を形成し,この台座に前記拡径部を溶接ビードを介して結合したことを第3の特徴とする。
【0010】
さらにまた本発明は,第1〜第3の特徴の何れかに加えて,ケース部材は,ディーゼルエンジンの排気浄化装置のケースであり,前記パイプ部材は,該排気浄化装置の上流部の圧力を圧力センサに伝達する圧力検出パイプであることを第4の特徴とする。
【0011】
さらにまた本発明は,第1〜第4の特徴の何れかに加えて,前記パイプ部材は,ケース部材の側壁から立ち上がる起立部と,この起立部の上端から屈曲して一側方へ延出する延出部とを有し,前記環状の溶接ビードは,その溶接始点及び溶接終点が前記延出部の直下に来るようにして形成されることを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の特徴によれば,パイプ部材に,半径方向外方に隆起して軸方向厚みがパイプ部材の肉厚より大となるフランジ状の拡径部を形成し,この拡径部を前記側壁に当接させて,環状の溶接ビードを介して結合したので,拡径部は,熱容量が比較的大となり,ケース部材への溶接時には,拡径部の内周側への溶接ビードの溶け込みが生じ難く,裏ビードが形成され難い。したがって,パイプ部材のケース部材への溶接を熟練を要することなく容易に行うことができると共に,裏ビードによるパイプ部材内の流路の絞りを防ぐことができる。しかも部品の追加も必要とせず,溶接工数の増加もないので,コストの低減を図ることができる。
【0013】
本発明の第2の特徴によれば,拡径部の内周に環状の凹部を形成したので,万一,溶接ビードの拡径部内周側への溶け込みにより,裏ビードが形成されても,その裏ビードは上記凹部に受容され,パイプ部材内の流路を絞ることはない。
【0014】
本発明の第3の特徴によれば,ケース部材の側壁に,該側壁の一般面より隆起していて前記取り付け孔が設けられる平坦な台座を形成し,この台座に前記拡径部を溶接ビードを介して結合したので,ケース部材の側壁の一般面の形状の如何に拘らず,平坦な台座には,パイプ部材のフランジ状の拡径部を全周にわたり確実に当接させ,その全周にわたり環状の溶接ビードを介して確実に結合することができ,結合強度を高めることができる。
【0015】
本発明の第4の特徴によれば,ケース部材は,ディーゼルエンジン用排気浄化装置のケースであり,前記パイプ部材は,排気浄化装置の上流部の圧力を圧力センサに伝達する圧力検出パイプであるので,圧力検出パイプのケースへの溶接を熟練を要することなく容易に行うことができると共に,裏ビードによる圧力検出パイプ内の流路の絞りを防ぐことができ,排気浄化装置の目詰まりの誤検出を防ぐことができる。
【0016】
本発明の第5の特徴によれば,パイプ部材は,ケース部材の側壁から立ち上がる起立部と,この起立部の上端から屈曲して一定方向に延出する延出部とを有し,前記環状の溶接ビードは,その溶接始点及び溶接終点が前記延出部の直下に来るようにして形成されるので,環状の溶接ビードの形成の際,起立部の上端から屈曲して一定方向に延出する延出部に邪魔されることなく,溶接トーチを拡径部の周囲に略一周旋回させることができ,環状の溶接ビードの形成を容易,的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係るディーゼルエンジン用排気浄化装置の側面図。
図2図1の2部拡大断面図。
図3】裏ビードの形成によっても支障を来さないことを示す,図2との対応図。
図4】溶接工程を示す図2の4−4線断面図。
図5】本発明の第2実施形態を示す,図2との対応図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
【0019】
先ず,図1図4に示す本発明の第1実施形態の説明より始める。図1において,ディーゼルエンジンEの排気管1を構成する上流排気管1aと,大気開放側の下流排気管1bとの間に排気浄化装置Fが介装される。この排気浄化装置Fのケース3は,キャップ状の前部ケース3aと,同じくキャップ状の後部ケース3bと,これら前部及び後部ケース3a,3b間を連結する中空円筒状の中央ケース3cとで構成され,中央ケース3cには排ガス中の粒子状物質を捕捉する触媒6が収容,保持される。
【0020】
前部及び後部ケース3a,3bは,それぞれフランジ4a,5a付きの接続管4,5を端壁に備えており,前部ケース3aの接続管4のフランジ4aが上流排気管1aの下流端のフランジ2aと連結され,後部ケース3bの接続管5のフランジ5aが下流排気管1bの上流端のフランジ2bと連結される。
【0021】
前部ケース3aの側壁3a1には,その内部の圧力を検出する圧力検出パイプ10が接続され,この圧力検出パイプ10は,ディーゼルエンジンEに付設される圧力センサ11に接続される。
【0022】
触媒6が,捕捉する粒子状物質による所定の目詰まり状態となると,それに伴ないディーゼルエンジンEの背圧が上昇し,前部ケース3a内の圧力上昇となって現れ,その圧力上昇が圧力検出パイプ10を通して圧力センサ11に伝達されることにより,上記目詰まり状態が検出される。そしてその目詰まり状態の解消のためのメンテナンスが実施されることになる。
【0023】
さて,圧力検出パイプ10を前部ケース3aに接続する溶接構造について,図2により説明する。
【0024】
前部ケース3aの側壁3a1には,それを貫通する取り付け孔12が穿設される。一方,圧力検出パイプ10は,取り付け孔12に嵌挿される端部10aに隣接してフランジ状の拡径部10bが一体に形成される。このフランジ状の拡径部10bは,半径方向外方に隆起すると共に,その内周に環状の凹部14が形成されるように成形される。したがって,このフランジ状の拡径部10bの軸方向厚みhは,圧力検出パイプ10の肉厚tの2倍以上となる。
【0025】
拡径部10bは,前記端部10aを取り付け孔12に嵌挿後,前部ケース3aの側壁3a1に当接するように配置され,その全周にわたり溶接により形成される環状の溶接ビード13を介して側壁3a1と結合される。
【0026】
図2に示すように,環状の溶接ビード13は,軸方向で前記側壁3a1から前記拡径部10bの最大外径部を超える位置まで形成されている。
【0027】
而して,拡径部10bは,その軸方向厚みhが圧力検出パイプ10の肉厚の2倍以上に厚いので,熱容量が比較的大となる。したがって,前部ケース3aの側壁3a1への溶接時には,拡径部10bの内周側への溶接ビード13の溶け込みが生じ難く,裏ビードが形成され難い。また図3に示すように,万一,拡径部10bの内周側に裏ビード13aが形成されても,拡径部10bの内周には,環状の凹部14が存在するため,その裏ビード13aは上記凹部14に受容され,圧力検出パイプ10内の流路を絞るには至らない。
【0028】
かくして,圧力検出パイプ10の前部ケース3aへの溶接は,熟練を要することなく容易に行うことができると共に,裏ビードによる圧力検出パイプ10内の流路の絞りを防ぐことができる。したがって,ディーゼルエンジンEの背圧の上昇を圧力センサ11に常に的確に伝達することができ,触媒6の目詰まりの誤検出を防ぐことができる。しかも,圧力検出パイプ10の前部ケース3aへの溶接に際しては,部品の追加も必要とせず,溶接工数の増加もないので,コストの低減を図ることができる。
【0029】
圧力検出パイプ10は,前部ケース3aの側壁3a1から立ち上がる起立部10Aと,この起立部10Aの上端から屈曲して一側方へ延出して圧力センサ11に達する延出部10Bとを有し,前記環状の溶接ビード13は,その溶接始点P1及び溶接終点P2が前記延出部10Bの直下に来るようにして形成される。望ましくは,図4に示すように,溶接終点P2が,溶接始点P1を僅かに越えるように溶接ビード13は形成されるが,溶接始点P1及び溶接終点P2は前記延出部10Bの直下に配置されることになる。このようにすると,環状の溶接ビード13の形成の際,起立部10Aの上端から屈曲して一定方向に延出する延出部10Bに邪魔されることなく,溶接トーチTを拡径部10bの周囲に一周を僅かに越えて旋回させることができ,環状の溶接ビード13の形成を容易且つ的確に行うことができる。
【0030】
次に,図5に示す本発明の第2実施形態について説明する。
【0031】
この第2実施形態では,前部ケース3aの側壁3a1に,その側壁3a1の一般面より隆起していて取り付け孔12が設けられる平坦な台座15が形成され,この台座15に圧力検出パイプ10の拡径部10bが環状の溶接ビード13を介して結合される。その他の構成は,前実施形態と同様であるので,図5中,前実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して,重複する説明を省略する。
【0032】
この第2実施形態によれば,前部ケース3aの一般外周面が円筒状であるにも拘らず,台座15が平坦であるので,圧力検出パイプ10のフランジ状の拡径部10bを全周にわたり台座15に確実に当接させ,その全周にわたり環状の溶接ビード13を介して確実に結合することができ,結合強度を高めることができる。
【0033】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,本発明は,排気浄化装置Fのケースへの圧力検出パイプ10の溶接に限らず,各種ケース部材にパイプ部材を溶接する構造にも適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
E・・・・・・ディーゼルエンジン
F・・・・・・排気浄化装置
P1・・・・・溶接始点
P2・・・・・溶接終点
h・・・・・・拡径部の軸方向厚み
t・・・・・・パイプ部材(圧力検出パイプ)の肉厚
3・・・・・・ケース部材(排気浄化装置のケース)
10・・・・・パイプ部材(圧力検出パイプ)
10b・・・・拡径部
11・・・・・圧力センサ
12・・・・・取り付け孔
13・・・・・溶接ビード
13a・・・・裏ビード
14・・・・・凹部
15・・・・・台座
図1
図2
図3
図4
図5