【実施例】
【0011】
図1〜
図5は、この発明の実施例を示すものである。
図1・
図2において、1は車両、2はエンジンルーム、3は車室である。車両1は、前部のエンジンルーム2にエンジン4を横置きに搭載し、エンジン4に変速機5を連結している。変速機5の変速機ケース6は、
図3に示すように、ケース本体7と、ケース本体7のエンジン4と対向する側のクラッチハウジング8と、ケース本体7のエンジン4から離間する側のケースカバー9とから形成される。
ケース本体7には、
図5に示すように、インプットシャフト10およびカウンタシャフト11と変速ギヤ12とを内蔵している。クラッチハウジング8には、クラッチを内蔵している。ケース本体7には、後側下方であってクラッチハウジング8と対向する側に、ケース側ギヤケース部13を設けている。クラッチハウジング8には、
図3に示すように、後側下方であってケース本体7と対向する側にクラッチ側ギヤケース部14を設けている。ケース側ギヤケース部13およびクラッチ側ギヤケース部14は、結合されてファイナルギヤ15を内蔵する。
変速機5は、エンジン4の動力をインプットシャフト10およびカウンタシャフト11の間の変速ギヤ12により回転数やトルクを変換し、ファイナルギヤ15に出力する。ファイナルギヤ15に伝達された動力は、ドライブシャフト16により車輪17を駆動して車両1を走行させる。
【0012】
前記変速機ケース6は、
図3に示すように、ケース本体7の後側の上面壁18であってケース側ギヤケース部13の前側が連結する部分に、上下方向に延びる一部円筒形状のシフトケース部19を設けている。シフトケース部19は、上面壁18に繋がる上端に短円筒状の取付部20を備え、この取付部20内に開口するケース空間21を備えている。ケース空間21は、変速機ケース6内部の変速機空間22に連通している。
前記変速機ケース6は、シフトケース部19のケース空間21を閉鎖するように取付部20に取り付けられるコントロールケース23を備えている。コントロールケース23は、
図4に示すように、取付部20に取り付けられる円環板状のカバー部24と、このカバー部24の中央から円筒状に延びる軸用ボス部25と、このカバー部24の外周から軸用ボス部25と平行に延びる支持部26とを備えている。コントロールケース23は、カバー部24をシフトケース部19の取付部20に当接させて取付ねじ27を締め付けることで、シフトケース部19に取り付けられる。
変速機ケース6は、
図4に示すように、コントロールケース23の軸用ボス部25の軸心の下方延長上に位置するケース本体7に、筒状の軸支持部28を設けている。変速機ケース6は、シフトアンドセレクトシャフト29の下端を軸支持部28に挿入し、上部を軸用ボス部25に貫通して外部に突出させている。これにより、シフトアンドセレクトシャフト29は、軸線Cを鉛直方向に延ばした状態で、軸線方向への移動と軸線回りの回転が可能に変速機ケース6に配置している。
【0013】
前記シフトアンドセレクトシャフト29は、
図4に示すように、コントロールケース23のうち、軸用ボス部25を貫通して変速機ケース6の上面壁18より上方に突出した上端に、シフトアンドセレクトシャフト29の周方向に延びる溝部30を有する断面コ字形状の係合部材31を取り付けている。係合部材31には、
図3に示すように、L字形状のセレクトレバー32を取り付けている。
セレクトレバー32は、L字形状の略水平に延びた一側端を、コントロールケース23のカバー部24の外周に立設した支持部26の上端に、揺動ピン33により揺動自在に支持している。セレクトレバー
32は、L字形状の中間の折り曲げ部分に係合ピン34を突設し、この係合ピン
34をシフトアンドセレクトシャフト29の上端に取り付けた係合部材31の溝部30に係合している。さらに、セレクトレバー32は、L字形状の下方に延びた他側端を、
図1・
図2に示すように、セレクトケーブル35で車室3に配置したレンジ
位置切り換え装置36の操作レバーと連結している。シフトアンドセレクトシャフト29は、レンジ
位置切り換え装置36のセレクト操作に応じてセレクトレバー32により軸線方向に移動し、セレクト動作する。
また、前記シフトアンドセレクトシャフト29は、上端にシフトレバー37を設けている。シフトレバー37は、一端部を係合部材31に一体に連結し、半径方向外側に延びた他端部をシフトケーブル38でレンジ
位置切り換え装置36の操作レバーと連結している。シフトアンドセレクトシャフト29は、レンジ
位置切り換え装置36のシフト操作に応じてシフトレバー32により軸線回りに回動し、シフト動作する。
なお、シフトアンドセレクトシャフト29は、
図4に示すように、シフトケース部19のケース空間21に位置する中間にシフトアンドセレクトレバー39を固設している。シフトアンドセレクトレバー39は、
図5に示すように、シフトアンドセレクトシャフト29の軸線方向へのセレクト動作で複数のシフトヨーク40のいずれか一つに選択的に係合し、シフトアンドセレクトシャフト29の軸線回りのシフト動作でシフトヨーク40を介して複数のシフトシャフト41のいずれか一つをシフト動作させ、変速ギヤ12の噛合状態を切り換える。
【0014】
前記変速機5の変速機ケース6には、ブリーザ装置42を設けている。ブリーザ装置42は、
図4に示すように、コントロールケース23のカバー部24の外周に立設した支持部26を、シフトアンドセレクトシャフト29の軸線方向に長い柱形状に形成している。柱形状の支持部26の内部には、空洞部43を形成している。柱形状の支持部26には、空洞部43をケース空間21を介して変速機ケース6の変速機空間22に連通する吸入口44と、外部のエンジンルーム2に連通する排出口45とを形成している。これにより、ブリーザ装置42は、空洞部43を、変速機ケース6の内部と外部とに連通する吸入口44および排出口45を有するブリーザ室としている。
このように、変速機5のブリーザ装置42は、セレクトレバー32が揺動自在に支持される柱形状に形成した支持部26を利用することで、ブリーザ室としての空洞部43を変速機ケース6の外部に配置できる。そのため、このブリーザ装置42は、変速機ケース6の内部でオイルが流入し難い位置を探して、変速機ケース6の内部にブリーザ室用の空間を予め設ける必要が無くなる。
これによって、このブリーザ装置42は、ブリーザ室の配置位置を考慮することなく、変速機ケース6の内部に配置される部品(例えば、インプットシャフト10、変速ギヤ12など)を変速機ケース6内に配置でき、変速機ケース6内部に配置される部品のレイアウトの自由度を向上させることができる。
また、この変速機5のブリーザ装置42は、変速機ケース6の上面壁18に取り付けた支持部26の内部にブリーザ室としての空洞部43を形成することで、部品点数を増加させることなく、ブリーザ室を変速機5の中で最も高い位置に配置できる。
これによって、このブリーザ装置42は、
図5に示すように、鉛直方向にて変速機ケース6内部の底面部46に貯留するオイルの油面高さ位置Lから、ブリーザ室としての空洞部43までの距離を、最大限に拡大できる。そのため、ブリーザ装置42は、変速機ケース6内のオイルがブリーザ室としての空洞部43に到達し難くすることができ、オイルが吸入口44からブリーザ室としての空洞部43を経由して、排出口45から噴き出すのを防止できる。
さらに、この変速機5のブリーザ装置42は、
図5に示すように、変速機ケース6の外部に取り付いた支持部26の内部に空洞部43を形成して、空洞部43をブリーザ室としている。このため、このブリーザ装置42は、車両1の前方からエンジンルーム2に流入して変速機ケース6の上面壁18に沿って流れる冷却風にブリーザ室を形成する支持部26を晒すことができ、ブリーザ室を冷却できる。
これによって、このブリーザ装置42は、変速機ケース6内部からブリーザ室である空洞部43内に流れ込んだオイルミストを含んだ空気を冷却でき、この冷却によって空気とオイル分とに分離させて、オイル分のみを排出口45からケース空間21を介して変速機ケース6内部の変速機空間22へと自由落下させて流し込むことができ、オイル分が変速機ケース6の外部に排出されるのを抑制できる。
【0015】
この変速機5のブリーザ装置42は、
図4に示すように、支持部26の空洞部43の長さ方向をシフトアンドセレクトシャフト29の軸線Cに沿って形成するとともに、その上端に排出口45を形成し、その下端に吸入口44を形成している。
これにより、このブリーザ装置42は、ブリーザ室としての空洞部43をシフトアンドセレクトシャフト29の軸線Cに沿って鉛直方向に延ばして、その上端に排出口45を形成したため、ブリーザ室としての空洞部43の底面部47から排出口45までの距離を拡大させることができる。
また、このブリーザ装置42は、空洞部43によるブリーザ室を鉛直方向に延ばすことができ、変速機ケース6内部のオイルがその底面部47の吸入口44を介してブリーザ室としての空洞部43内に浸入したとしても、空洞部43上端の排出口45に達する前にオイルを車両1の下方に自由落下させることができ、オイルが変速機ケース6の外部に噴き出すのを防止できる。
さらに、このブリーザ装置42は、ブリーザ室としての空洞部43を鉛直方向に延ばしたため、空洞部43のうち車両1の前方からエンジンルーム2内の変速機ケース6の上方に流れ込む冷却風と接触する面積を増加させることができ、空洞部43を形成する支持部26に吹きかける冷却風の風量を増加させることができる。
これによって、この変速機5のブリーザ装置42は、変速機ケース6内部で膨張してオイルミストを含んだ空気がブリーザ室としての空洞部43に流入したとしても、冷却風で空洞部43内を流れる空気を冷やして、排出口45に達するまでに、空気内に含まれるオイルミストをオイル分に凝縮することができる。