特許第5974476号(P5974476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974476
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】障害物警報装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20160809BHJP
   B60R 1/00 20060101ALI20160809BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20160809BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20160809BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   B60R1/00 A
   B60R21/00 628D
   B60R21/00 621C
   B60R21/00 626G
   H04N7/18 J
   G06T1/00 330B
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-282206(P2011-282206)
(22)【出願日】2011年12月22日
(65)【公開番号】特開2013-131177(P2013-131177A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年11月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 哲也
(72)【発明者】
【氏名】角屋 明
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭吾
【審査官】 島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−247621(JP,A)
【文献】 特開2008−308011(JP,A)
【文献】 米国特許第05646614(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60R 1/00
B60R 21/00
G06T 1/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後方の情景を撮影した撮影画像を取得する撮影画像取得部と、
前記撮影画像に基づいて前記車両のモニタに表示される注目撮影画像を生成する注目撮影画像生成部と、
前記注目撮影画像の外側の外側領域に物体が存在するか否かを判定する物体存在判定部と、
前記外側領域の物体の移動方向を判定する移動方向判定部と、
前記注目撮影画像のうち、前記車両の後方の情景の少なくとも一部を非表示にするマスク領域を設定するマスク領域設定部と、
車内から前記車両の後方を見てリアピラーにより死角となる領域を含んで区分けした複数の領域に対応する複数の障害物存在エリアを前記マスク領域に生成する障害物存在エリア生成部と、
前記移動方向判定部により前記外側領域の物体が前記注目撮影画像の中央側に移動すると判定された場合に、前記物体が存在する領域に対応する障害物存在エリアを強調表示させる表示を行う明示画像出力部と、
を備え、
前記マスク領域は、前記注目撮影画像の外側領域の物体が位置する部分よりも、前記注目撮影画像面の上方に配置され
前記複数の障害物存在エリアは、前記リアピラーにより死角となる領域に対応するエリアと、前記死角となる領域よりも車両の外側となる前記外側領域に対応するエリアとを少なくとも有して構成され、前記外側領域に物体が存在すると判定された場合に表示される障害物警報装置。
【請求項2】
前記マスク領域に、前記障害物存在エリアと共に、前記車両を後方から視認した場合の少なくとも前記車両の一部の自車イメージ画像が重畳される請求項1に記載の障害物警報装置。
【請求項3】
前記明示画像出力部は、前記強調表示として前記障害物存在エリアを彩色させる表示を行う請求項1又は2に記載の障害物警報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に接近する障害物の存在を乗員に明示する障害物警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の周囲には運転者の位置から視認できない死角があり、運転者は車両の運転にあたり当該車両の周囲に細心の注意を払う必要がある。特に、車両を後退して駐車させる場合には、駐車自体に苦手意識を持っているユーザも多く、精神的疲労も少なくない。そこで、従来、車両の周囲の障害物を監視する技術が利用されてきた(例えば特許文献1及び2)。
【0003】
特許文献1に記載の車両の障害物警報装置は、横移動障害物検出手段と、横移動方向検出手段と、横移動情報提供手段とを備えて構成される。横移動障害物検出手段は車両前方において進行方向を横切る方向に移動する障害物を検出する。横移動方向検出手段は横移動障害物検出手段により検出された障害物の横移動方向を検出する。横移動情報提供手段は横移動方向検出手段により検出された障害物の横移動方向に関する情報をドライバーに提供する。この際、横移動情報提供手段は表示部に横移動方向検出手段により検出された横移動方向を表わす矢印をディスプレイに表示する。
【0004】
特許文献2に記載の車両周囲監視装置は、撮像手段と、障害物検出手段と、表示手段とを備えて構成される。撮像手段は自車両の一部を含む車両周囲を撮像する。障害物検出手段は車両周囲に位置する障害物を検出し、検出した障害物と自車両との距離を算出する。表示手段は撮像手段によって撮像された撮像画像と障害物検出手段によって算出された距離を示す障害物表示画像とを1つの画面に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−115660号公報
【特許文献2】特開2009−217740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載の技術のように車両の周囲の障害物を検出し、当該障害物を明示する情報(矢印等)を画面表示することで運転者に車両の周囲の障害物の存在を報知することが可能である。しかしながら、車両に搭載されるディスプレイ(表示手段)の画面サイズは大きいものではない。このため、ディスプレイに表示される車両の周囲の状況を示す画像上に矢印等を表示すると、車両の周囲の状況が見難くなったり障害物を把握できなくなったりする可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、車両の周囲の状況を見難くすることなく、車両に接近する障害物の存在を運転者に明示することが可能な障害物警報装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る障害物警報装置の特徴構成は、
車両の後方の情景を撮影した撮影画像を取得する撮影画像取得部と、
前記撮影画像に基づいて前記車両のモニタに表示される注目撮影画像を生成する注目撮影画像生成部と、
前記注目撮影画像の外側の外側領域に物体が存在するか否かを判定する物体存在判定部と、
前記外側領域の物体の移動方向を判定する移動方向判定部と、
前記注目撮影画像のうち、前記車両の後方の情景の少なくとも一部を非表示にするマスク領域を設定するマスク領域設定部と、
車内から前記車両の後方を見てリアピラーにより死角となる領域を含んで区分けした複数の領域に対応する複数の障害物存在エリアを前記マスク領域に生成する障害物存在エリア生成部と、
前記移動方向判定部により前記外側領域の物体が前記注目撮影画像の中央側に移動すると判定された場合に、前記物体が存在する領域に対応する障害物存在エリアを強調表示させる表示を行う明示画像出力部と、
を備え、
前記マスク領域は、前記注目撮影画像の外側領域の物体が位置する部分よりも、前記注目撮影画像面の上方に配置され
前記複数の障害物存在エリアは、前記リアピラーにより死角となる領域に対応するエリアと、前記死角となる領域よりも車両の外側となる前記外側領域に対応するエリアとを少なくとも有して構成され、前記外側領域に物体が存在すると判定された場合に表示される点にある。
【0009】
このような特徴構成とすれば、車両に備えられるモニタの画面内に物体が映っていなくても、車両に接近する物体が撮影範囲内に入った時点で、車両の周囲の状況を表示しつつ、乗員に車両に接近する物体の存在及び方向を明示することができる。したがって、モニタの画面サイズが小さい場合でも、車両に接近する物体を見逃すことがなくなる。また、障害物存在エリアは強調表示して表示されるので、乗員が直感的にわかり易くなる。したがって、車両の周囲の物体を見逃すことなく、車両に接近する物体の存在を乗員に明示することが可能となる。
【0010】
また、このような構成とすれば、障害物存在エリアがマスク領域内に表示された場合に、車両に物体が接近していることを明示することができる。したがって、障害物存在エリアが強調表示されるまでにおいても、物体の接近を明示することができる。
【0011】
また、このような構成とすれば、外側領域に存在する物体の動きも示すことができる。したがって、車両の乗員に対して車両の近傍に達する前に物体の接近に関して注意を喚起することができる。
【0012】
また、前記マスク領域に、前記障害物存在エリアと共に、前記車両を後方から視認した場合の少なくとも前記車両の一部の自車イメージ画像が重畳されると好適である。
【0013】
このような構成とすれば、障害物存在エリアに自車イメージ画像を重畳して表示するので、強調表示された障害物存在エリアに対応する領域を直感的に認識し易い。したがって、車両に接近する物体の存在を適切に明示することができる。
【0016】
また、前記明示画像出力部は、前記強調表示として前記障害物存在エリアを彩色させる表示を行うと好適である。
【0017】
このような構成とすれば、物体が存在する領域に対応する障害物存在エリアが彩色されるので、車両の乗員に対して物体の接近をより直感的に明示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】障害物警報装置の構成を模式的に示したブロック図である。
図2】障害物警報装置の処理の一例を示した図である。
図3】合成画像の一例を示した図である。
図4】合成画像の一例を示した図である。
図5】障害物警報装置の処理を模式的に示した図である。
図6】その他の実施形態に係る合成画像の一例を示した図である。
図7】その他の実施形態に係る合成画像の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明に係る障害物警報装置100は、車両に接近する物体がある場合に当該車両の運転者に物体が接近していることを明示する機能を備えている。以下、図面を用いて説明する。
【0020】
図1は、障害物警報装置100の構成を模式的に示したブロック図である。図1に示されるように、障害物警報装置100は、撮影画像取得部11、注目撮影画像生成部12、外側領域生成部13、物体存在判定部14、移動方向判定部15、明示画像出力部16、明示画像格納部17、合成画像生成部18、マスク領域設定部19、障害物存在エリア生成部20の各機能部を備えて構成される。各機能部はCPUを中核部材として車両1の運転者に物体7の接近を明示する種々の処理を行うための上述の機能部がハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0021】
撮影画像取得部11は、車両1の後方の情景を撮影した撮影画像Gを取得する。ここで、車両1にはカメラ5が備えられる。本実施形態におけるカメラ5は、CCD(charge coupled device)やCIS(CMOS image sensor)などの撮像素子を内蔵するとともに、撮影した情報を動画情報として出力するデジタルカメラにより構成される。このようなカメラ5は、図2(a)に示されるように、車両1の外側後部に備えられるライセンスプレートの近傍、或いは車両1の外側後部に備えられるエンブレムの近傍等に、車両1の後方に向けてやや俯角を有して配設される。また、カメラ5は広角レンズ(図示せず)を備えて構成される。これにより、車両1の後方を略180度に亘って、車両1の周囲の情景を撮影することができる。このような撮影範囲は、図2(a)の「広視野角」として示される。このカメラ5は、リアルタイムで動画を撮影画像Gとして出力する性能を有する。このような撮影画像Gは、撮影画像取得部11に伝達される。
【0022】
このような撮影画像Gの一例が図2(b)に示される。図2(b)の全幅は、図2(a)の広視野角に対応する。ここで、撮影画像Gは、図2(a)に示されるような車両1から後方を見て左側にいる物体7が、図2(b)に示されるように撮影画像G内の右側にいるように鏡像処理が行われる。これは、モニタ50に車両1の後方の情景を表示する際、車両1の運転者が撮影画像Gに含まれる物体7が車両1の左側にいるのか右側にいるのかを感覚的に理解し易くするためである。
【0023】
図1に戻り、注目撮影画像生成部12は、撮影画像Gに基づいて注目撮影画像を生成する。本実施形態では、撮影画像Gの撮影範囲は広視野角である。このため、注目撮影画像生成部12は、撮影画像Gの中央部分である狭視野領域Nを注目撮影画像として生成する。撮影画像Gは上述の撮影画像取得部11から伝達される。本実施形態では、注目撮影画像は、図2(b)に示される撮影画像Gの横方向の中央部分が相当する。このような狭視野領域Nは、図1(a)の「狭視野角」のような例えば車両1の後方120〜130度程度の領域とすると好適である。また、狭視野領域Nは車両1が後退する際の進行可能範囲に近いので、撮影画像Gのうち特に注目すべき領域であることから「注目撮影画像」と称される。このような注目撮影画像は、後述するモニタ50に表示される表示画像に対応する(図2(c)参照)。なお、本実施形態では、「注目撮影画像」は「狭視野領域」の画像であるとして説明する。
【0024】
外側領域生成部13は、注目撮影画像の外側の外側領域Oを生成する。すなわち、撮影画像Gのうち狭視野領域Nの外側の外側領域Oを生成する。上述のように、撮影画像Gの横方向の中央部分に注目撮影画像生成部12により狭視野領域Nが生成される。外側領域生成部13はこのような狭視野領域Nの横方向の外側に、図2(b)のような外側領域Oを生成する。外側領域生成部13により生成された外側領域Oは、後述する物体存在判定部14に伝達される。
【0025】
物体存在判定部14は、外側領域Oに物体7が存在するか否かを判定する。外側領域Oは、外側領域生成部13から伝達される。物体7が存在するか否かの判定は、例えばパターンマッチング等の公知の画像認識処理を用いて行うことが可能である。もちろん、パターンマッチング以外の処理により、外側領域Oに物体7が存在するか否かを判定することは可能である。物体存在判定部14の判定結果は、後述する移動方向判定部15に伝達される。
【0026】
移動方向判定部15は、外側領域Oの物体7の移動方向を判定する。このような移動方向の判定は、物体存在判定部14により、外側領域Oに物体7が存在すると判定された場合に行われる。特に本実施形態では、移動方向判定部15により、外側領域Oの物体7が狭視野領域Nの側に移動するか否かが判定される。狭視野領域Nの側に移動するとは、車両1の後方において、車両1の幅方向外側から、車両1の真後ろの方向に移動することを示す。このような判定は、例えば現在の撮影画像Gにおける物体7の位置と所定時間前の撮影画像Gにおける物体7の位置とを比較して行うことも可能であるし、オプティカルフローを用いるなどの公知の手法を用いて行うことができる。このような移動方向の判定結果は、後述する明示画像出力部16に伝達される。
【0027】
マスク領域設定部19は、注目撮影画像のうち、車両1の後方の情景の少なくとも一部を非表示にするマスク領域Mを設定する。本実施形態では、マスク領域Mは図2(c)に示されるように、画面上部、すなわち、注目撮影画像内の上側部分に設定される。このマスク領域Mは、注目撮影画像の横方向両側に亘って形成される。マスク領域M内は、車両1の上方の情景が見えないように、例えば黒色で彩色される。もちろん、他の色で彩色しても良い。
【0028】
障害物存在エリア生成部20は、車内から車両1の後方を見てリアピラーにより死角となる領域を含んで区分けした複数の領域に対応する複数の障害物存在エリアBをマスク領域Mに生成する。リアピラーとは、車両1が有する複数の窓の間に配置される柱に相当するピラーのうち、後部座席の斜め後ろ側に配置される柱が相当する。車内から車両1の後方を見ると、リアピラーにより車両後方の視界が遮られる領域が生じる。このような領域が上述の死角に相当する。障害物存在エリア生成部20は、このような死角を一つの領域とし、当該領域を含む複数の障害物存在エリアb1−b5からなる障害物存在エリアBをマスク領域Mに生成する。
【0029】
本実施形態では、障害物存在エリアBは、外側領域Oに対応する領域も含まれる。具体的には、障害物存在エリアBは、車両1を後方から見て車両1の左側後方の障害物存在エリアb1、左リアピラーによる死角に対応する障害物存在エリアb2、リアバンパーによる死角に対応する障害物存在エリアb3、右リアピラーによる死角に対応する障害物存在エリアb4、車両1の右側後方の障害物存在エリアb5から構成される。左側後方の障害物存在エリアb1、及び右側後方の障害物存在エリアb5が、上述の外側領域Oに対応する領域に相当する。
【0030】
また、マスク領域Mには、障害物存在エリアBと共に、車両1を後方から視認した場合の少なくとも車両1の一部の自車イメージ画像CIが重畳される。この自車イメージ画像CIは、上述の障害物存在エリアBの夫々の領域b1−b5と対応するように重畳される。本実施形態では、自車イメージ画像CIは、リアバンパーを斜め上から見た場合のイメージ画像を含んで重畳される。これにより、各障害物存在エリアb1−b5と車両1との位置関係を直感的にイメージし易くなる。このような自車イメージ画像CIの重畳は、上述の障害物存在エリア生成部20が行っても良いし、他の機能部が行うように構成しても良い。
【0031】
明示画像出力部16は、移動方向判定部15により外側領域Oの物体7が注目撮影画像の中央側に移動すると判定された場合に、障害物存在エリアBのうち物体7が存在する領域に対応する障害物存在エリアを強調表示させる表示を行う。本実施形態では、このような強調表示として、彩色が用いられる。また、本実施形態では、注目撮影画像は、狭視野領域Nの画像に相当する。したがって、明示画像出力部16は、外側領域Oの物体7が狭視野領域Nの中央側に移動する場合に、物体7が存在する領域に対応する障害物存在エリアを彩色させる。
【0032】
具体的には、移動方向判定部15により、車両1の左側後方において物体7が狭視野領域Nの中央側に移動する場合には障害物存在エリアb1を彩色し、車両1の右側後方において物体7が狭視野領域Nの中央側に移動する場合には障害物存在エリアb5を彩色する。また、車両1の左リアピラーによる死角において物体7が狭視野領域Nの中央側に移動する場合には障害物存在エリアb2を彩色し、車両1の右リアピラーによる死角において物体7が狭視野領域Nの中央側に移動する場合には障害物存在エリアb4を彩色する。更には、車両1のリアバンパーによる死角において物体7が狭視野領域Nの中央側に移動する場合には障害物存在エリアb3を彩色する。これにより、車両1の乗員が物体7が存在する領域を直感的に認識することが可能となる。
【0033】
このような障害物存在エリアBを彩色する画像は、図2(d)に示されるように明示画像として明示画像格納部17に格納されている。図2(c)には、図2(b)に示されるような撮影画像G、すなわち右側の外側領域Oに物体7がいる場合に車両1のモニタ50に表示される画像が示される。
【0034】
また、物体7が外側領域Oにおいて狭視野領域Nの中央側に移動する場合には当該物体7が、狭視野領域Nの中央側に移動することを明示するために、対応する障害物存在エリアの彩色と共に、指標Sを重畳することも可能である。指標Sは、物体7の狭視野領域Nの中央側への移動が検知されてから狭視野領域Nに進入するまで表示すると好適である。また、狭視野領域Nまでの距離に応じて指標Sの数を次第に増加する形態とすると、更に物体7が近づいてきていることを明示することが可能である。このような指標Sは、例えば、注目撮影画像(狭視野領域N)の中央側に突出する凸部を有する矢印形状に構成すると好適である。これにより、物体7の移動方向を直感的に認識することが可能となる。更には、この指標Sは、車両1の後方の情景が認識できなくなることを防止するために、所定の透明度を有するように構成することも可能である。このような指標Sも、図2(d)に示されるように明示画像として明示画像格納部17に格納しておくと好適である。
【0035】
ここで、指標Sは直前に表示された指標Sよりも、後に表示される指標Sの方が大きなサイズで構成すると好適である。係る場合、指標Sが複数表示されている場合には、最後に重畳された指標Sが最もサイズが大きく、最初に重畳された指標Sが最もサイズが小さくなる。なお、夫々の指標Sは、互いに相似する形状でサイズの大小を設定しても良いし、指標Sの縦又は横の何れか一方の長さを変更してサイズの大小を設定しても良い。
【0036】
明示画像出力部16は、このような表示を行う。ここで、本実施形態では、図2(c)に示されるように、障害物存在エリアB、自車イメージ画像CI、及び指標Sは狭視野領域Nである注目撮影画像に合成してモニタ50に表示される。そこで、合成画像生成部18は、注目撮影画像に障害物存在エリアB、自車イメージ画像CI、及び指標Sを合成した合成画像を生成する。これにより、図2(c)に示されるような画像が生成される。
【0037】
このように障害物存在エリアBの彩色や、自車イメージ画像CIの重畳、及び指標Sを表示することにより、車両1の乗員に対して当該車両1に物体7が接近していることを視覚的に明示することができる。
【0038】
このような障害物存在エリアBが彩色される一連の画像の一例が、図3及び図4に示される。図3(a)に示されるように、外側領域Oにいる物体7が狭視野領域Nの中央側に移動していることが検出されると、物体7が狭視野領域Nに進入するまで障害物存在エリアb5が彩色されると共に、指標Sが増えていく様子が示される(図3(b)−(d))。図4(a)に示されるように、物体7が右側の外側領域Oから狭視野領域Nに進入すると、指標Sの重畳が終了する。物体7が、右側後方のリアピラーによる死角に進入すると、図4(b)に示されるように、障害物存在エリアb4が彩色される。また、物体7が、リアバンパーによる死角に進入すると、図4(c)に示されるように、障害物存在エリアb3が彩色される。
【0039】
ここで、図4(d)及び図4(e)では、物体7が移動しても、対応する障害物存在エリアb2及び障害物存在エリアb1が彩色されていない。これは、物体7が狭視野領域Nの中央側への移動ではなく、物体7が狭視野領域Nから外側領域Oへの移動、すなわち車両1から遠ざかる方向への移動であるので特に車両1の乗員に注意を喚起する必要が無いからである。もちろん、係る場合も、対応する障害物存在エリアを彩色するように構成することも当然に可能である。
【0040】
ここで、図4(a)−(e)において、物体7が車両1の真後ろ(図4(c))にいる場合に最も大きく示されているが、これは、上述のように狭視野領域Nに係る注目撮影画像は広視野角の撮影画像Gから切り出しているからである。したがって、車両1の後方を物体7が車両1のリアバンパーと平行に移動する場合であっても、車両1の真後ろにいる状態が最も大きく表示され、車両1の側方に位置する程、小さく表示される。このような表示は、画像処理により物体7の大きさが一様になるように行うことも当然に可能である。
【0041】
次に、障害物警報装置100が、障害物存在エリアBを彩色した合成画像をモニタ50に表示する一連の処理について、図5の模式図を用いて説明する。まず、撮影画像取得部11が、車両1のカメラ5により撮影された撮影画像Gを取得する(ステップ#1)。
【0042】
次に、注目撮影画像生成部12が、取得された撮影画像Gの中央部分を注目撮影画像として生成する(ステップ#2)。一方、外側領域生成部13が、取得された撮影画像Gの横方向両側部分を外側領域Oとして生成する(ステップ#3)。このように生成された外側領域Oに物体7が存在しているか否か、物体存在判定部14により判定される(ステップ#4)。
【0043】
外側領域Oに物体7が存在していると判定されると、移動方向判定部15により当該物体7の移動方向が判定される(ステップ#5)。物体7の移動方向が、外側領域Oから注目撮影画像に対応する狭視野領域Nの側へのものである場合、明示画像出力部16により明示画像が出力される(ステップ#6)。この明示画像は、明示画像格納部17に格納されている明示画像を参照して出力される。
【0044】
合成画像生成部18は、ステップ#2において生成された注目撮影画像に、ステップ#6で出力された明示画像を重畳して合成画像を生成する(ステップ#7)。生成された合成画像は、モニタ50に表示される(ステップ#8)。このように物体7が存在する領域に対応する障害物存在エリアBを彩色することにより車両1の乗員に車両1の周囲に物体7が存在することを明示することが可能であると共に、車両1に接近する物体7の方向を明示することが可能となる。したがって、車両1の周囲の状況を把握させることができると共に、障害物が接近していることを明示することが可能となる。
【0045】
このように本発明に係る障害物警報装置100によれば、車両1に備えられるモニタ50の画面内に物体7が映っていなくても、車両1に接近する物体7が撮影範囲内に入った時点で、車両1の周囲の状況を表示しつつ、乗員に車両1に接近する物体7の存在及び方向を明示することができる。したがって、モニタ50の画面サイズが小さい場合でも、車両1に接近する物体7を見逃すことがなくなる。また、障害物存在エリアBは彩色して表示されるので、乗員が直感的にわかり易くなる。したがって、車両1の周囲の物体7を見逃すことなく、車両1に接近する物体7の存在を乗員に明示することが可能となる。
【0046】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、マスク領域Mに、障害物存在エリアBと共に、車両1を後方から視認した場合の少なくとも車両1の一部の自車イメージ画像CIが重畳されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。マスク領域Mに、自車イメージ画像CIを表示せずに、障害物存在エリアBのみを表示することも当然に可能である。係る場合でも、車両1に接近する物体7の存在を乗員に明示することは当然に可能である。
【0047】
上記実施形態では、障害物存在エリアBが、マスク領域Mに重畳して表示されるとして説明した。障害物存在エリアBは、常時マスク領域Mに表示させるよう構成することも可能であるし、車両1の周囲に物体7が存在すると判定された場合にのみ表示される構成とすることも当然に可能である。
【0048】
上記実施形態では、障害物存在エリアBは、外側領域Oに対応する領域も含まれるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。障害物存在エリアBは、狭視野領域Nのみに対応する領域とすることも当然に可能である。
【0049】
上記実施形態では、障害物存在エリアBと共に、指標Sが表示されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。指標Sを表示せず、障害物存在エリアBのみを表示することも当然に可能である。
【0050】
上記実施形態では、明示画像出力部16は、移動方向判定部15により外側領域Oの物体7が注目撮影画像の中央側に移動すると判定された場合に、物体7が存在する領域に対応する障害物存在エリアBを彩色させる表示を行うとして説明した。例えばこのような彩色として、乗員の目に留まり易いように、赤色や黄色で彩色すると好適である。もちろん、他の色で彩色することも当然に可能である。
【0051】
上記実施形態では、物体7が右側の外側領域Oから注目撮影画像の中央側に移動する場合の例を挙げて説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。もちろん、物体7が左側の外側領域Oから注目撮影画像の中央側に移動する場合にも適用することは当然に可能である。更には、物体7が左右両側の外側領域Oから注目撮影画像の中央側に移動する場合にも適用することも当然に可能である。
【0052】
このような場合における障害物存在エリアBが彩色される一連の画像の一例が、図6及び図7に示される。図6(a)に示されるように、右側の外側領域Oにいる物体7が狭視野領域Nの中央側に移動していることが検出されると、物体7が狭視野領域Nに進入するまで障害物存在エリアb5が彩色されると共に、指標Sが増えていく様子が示される(図6(b)−(c))。ここで、図6(c)に示されるように、左側の外側領域Oからも狭視野領域Nの中央側に移動する物体7が検出されると、図7(a)に示されるように、右側の外側領域Oから狭視野領域Nの中央側への移動を示す指標Sの数が増加すると共に、左側の外側領域Oから狭視野領域Nの中央側への移動を示す指標Sも表示され、物体7が狭視野領域Nに進入するまで障害物存在エリアb1が彩色される。
【0053】
左右両側の外側領域Oの物体7が、更に狭視野領域Nの中央側に移動し、物体7が右側の外側領域Oから狭視野領域Nに進入すると、図7(b)に示されるように、当該物体7の移動を示す指標Sの重畳が終了する。一方、左側の物体7の移動を示す指標Sの重畳は継続して行なわれる。その後、狭視野領域Nに進入した物体7が、右側後方のリアピラーによる死角に進入すると、図7(c)に示されるように、障害物存在エリアb4が彩色される。一方、左側の外側領域Oにいる物体7の移動を示す指標Sの重畳は継続して行われる。
【0054】
更に、右側後方のリアピラーによる死角に進入した物体7が、狭視野領域Nの中央側に移動し、リアバンパーによる死角に進入すると、図7(d)に示されるように、障害物存在エリアb3が彩色される。また、左側の外側領域Oにいる物体7が狭視野領域Nに進入すると、当該物体7の移動を示す指標Sの重畳が終了する。以降、上記実施形態と同様に、処理が行われる。このように、左右両側の外側領域Oから狭視野領域Nの中央側に物体7が移動する場合であっても、車両1の乗員に適切に物体7の接近を明示することが可能である。
【0055】
上記実施形態では、強調表示として彩色が施されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。他の強調表示として、例えば対象となる障害物存在エリアを点滅させることも当然に可能である。更には、他の強調表示を施すことも当然に可能である。
【0056】
本発明は、車両に接近する障害物の存在を乗員に明示する障害物警報装置に関する。
【符号の説明】
【0057】
1:車両
7:物体
11:撮影画像取得部
12:注目撮影画像生成部
14:物体存在判定部
15:移動方向判定部と、
16:明示画像出力部
19:マスク領域設定部
20:障害物存在エリア生成部
100:障害物警報装置
B(b1−b5):障害物存在エリア
G:撮影画像
CI:自車イメージ画像
M:マスク領域
O:外側領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7