特許第5974501号(P5974501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974501
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】ターボ機械の可変静翼機構
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/24 20060101AFI20160809BHJP
   F01D 17/16 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   F02B37/24
   F01D17/16 A
   F01D17/16 C
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-15420(P2012-15420)
(22)【出願日】2012年1月27日
(65)【公開番号】特開2013-155640(P2013-155640A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 功
【審査官】 安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−268804(JP,A)
【文献】 特開2008−169721(JP,A)
【文献】 特開2010−090715(JP,A)
【文献】 特開2009−019548(JP,A)
【文献】 特開2009−074542(JP,A)
【文献】 特開2013−011260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F01D 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する流路に環状に整列配置された複数のノズルベーン、および、前記複数のノズルベーンのそれぞれに固定され、前記流路を区画する流路形成壁部に設けられた軸孔に回転自在に軸支された複数の翼軸を有し、前記翼軸の回転に伴って前記ノズルベーンが前記流路内で角度を可変させるターボ機械の可変静翼機構であって、
前記ノズルベーンは、
互いに表裏関係にある第1の面および第2の面と、
前記第1の面および第2の面の対向方向に延在し、当該対向方向の中央から前記第1の面側および第2の面側のいずれかに軸心をずらして前記翼軸が設けられる側面と、
前記第1の面側および第2の面側のうち前記翼軸の軸心が位置する側の前記側面の端部から隆起するとともに、該第1の面側および第2の面側のうち該翼軸の軸心が位置しない側の該側面の端部からは隆起せず、前記流路形成壁部の軸孔を、前記軸孔が前記流路に露出しないように被覆する鍔部と、
を備え、
前記鍔部は、
前記ノズルベーンが最大に閉じられて隣接するノズルベーン間の流路面積が最も小さくなったときに、前記流体の流れ方向の上流側に位置することを特徴とするターボ機械の可変静翼機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機、ガスタービン、蒸気タービン、圧縮機等のターボ機械において、流体の流量を可変制御する可変静翼機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過給機をはじめ、流路内を流体が流通するターボ機械において、流体の流量を可変するための可変静翼機構が広く採用されている。こうした可変静翼機構では、例えば、特許文献1に示されるように、流路に環状に整列配置された複数のノズルベーンそれぞれに翼軸が固定されており、この翼軸が、流路壁面に形成された軸孔に回転自在に軸支されている。そして、翼軸の回転に伴ってノズルベーンが流路内で角度を可変させると、流路面積が可変して流路を流通する流体の流量が制御されることとなる。
【0003】
上記の可変静翼機構において、翼軸を軸支するための軸孔が流路壁面に露出していると、隣接するノズルベーン間を流通する流体の一部が、軸孔から漏れてしまうという問題が生じる。そこで、ノズルベーンの厚さが翼軸の直径に比して薄く、軸孔をノズルベーンの側面(翼軸の固定面)によって完全に塞ぐことができない場合、換言すれば、軸孔の一部が流路に露出してしまう場合等には、ノズルベーンの側面に鍔部を設け、この鍔部を軸孔に対向させて当該軸孔を塞ぐことで、軸孔からの漏れを低減するのが一般的となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−127093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようにノズルベーンに鍔部を設けると、流体をガイドするノズルベーンの第1の面や第2の面から流路中に鍔部が突出することとなり、この突出した鍔部によって流体に圧力損失が生じるおそれがある。こうした圧力損失は、特に、ノズルベーンが全閉状態に近づくほど、換言すれば、流路面積が小さくなるほど大きくなると考えられる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、流体の漏れを低減しながらも、圧力損失をも低減することができるターボ機械の可変静翼機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のターボ機械の可変静翼機構は、流体が流通する流路に環状に整列配置された複数のノズルベーン、および、前記複数のノズルベーンのそれぞれに固定され、前記流路を区画する流路形成壁部に設けられた軸孔に回転自在に軸支された複数の翼軸を有し、前記翼軸の回転に伴って前記ノズルベーンが前記流路内で角度を可変させるターボ機械の可変静翼機構であって、前記ノズルベーンは、互いに表裏関係にある第1の面および第2の面と、前記第1の面および第2の面の対向方向に延在し、当該対向方向の中央から前記第1の面側および第2の面側のいずれかに軸心をずらして前記翼軸が設けられる側面と、前記第1の面側および第2の面側のうち前記翼軸の軸心が位置する側の前記側面の端部から隆起するとともに、該第1の面側および第2の面側のうち該翼軸の軸心が位置しない側の該側面の端部からは隆起せず、前記流路形成壁部の軸孔を、前記軸孔が前記流路に露出しないように被覆する鍔部と、を備え、前記鍔部は、前記ノズルベーンが最大に閉じられて隣接するノズルベーン間の流路面積が最も小さくなったときに、前記流体の流れ方向の上流側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、流体の漏れを低減しながらも、圧力損失をも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】過給機の概略断面図である。
図2】サポートリングの後面図である。
図3】サポートリングに駆動リングが支持された状態を示す図である。
図4】ノズルベーンおよび翼軸の構造を説明する図である。
図5】ノズルベーンによって形成される可変流路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
なお、本発明の可変静翼機構は、一般的にターボ機械とよばれる機械装置に広く適用することが可能であるが、本実施形態では、エンジンから排出される排気ガスのエネルギーによって当該エンジンに供給される空気を過給する過給機に適用される可変静翼機構について説明する。ここでは、まず、過給機の構成について説明し、その後、可変静翼機構について具体的に説明する。
【0012】
図1は、過給機1の概略断面図である。以下では、図に示す矢印F方向を過給機1の前側とし、矢印R方向を過給機1の後側として説明する。図1に示すように、過給機1は、ベアリングハウジング2と、ベアリングハウジング2の前側に締結ボルト3によって連結されるタービンハウジング4と、ベアリングハウジング2の後側に締結ボルト5によって連結されるコンプレッサハウジング6と、を備えている。
【0013】
ベアリングハウジング2には、過給機1の前後方向に貫通する軸受孔2aが形成されており、この軸受孔2aにタービン軸7がベアリングを介して回転自在に支持されている。タービン軸7の前端部にはタービンインペラ8が一体的に連結されており、このタービンインペラ8がタービンハウジング4内に回転自在に収容されている。また、タービン軸7の後端部にはコンプレッサインペラ9が一体的に連結されており、このコンプレッサインペラ9がコンプレッサハウジング6内に回転自在に収容されている。
【0014】
コンプレッサハウジング6には、過給機1の後側に開口するとともに不図示のエアクリーナに接続される吸気口10が形成されている。また、締結ボルト5によってベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング6とが連結された状態では、これら両ハウジング2、6の対向面によって、空気を圧縮して昇圧するディフューザ流路11が形成される。このディフューザ流路11は、タービン軸7(コンプレッサインペラ9)の径方向内側から外側に向けて環状に形成されており、上記の径方向内側において、コンプレッサインペラ9を介して吸気口10に連通している。
【0015】
また、コンプレッサハウジング6には、ディフューザ流路11よりもタービン軸7(コンプレッサインペラ9)の径方向外側に位置する環状のコンプレッサスクロール流路12が設けられている。コンプレッサスクロール流路12は、不図示のエンジンの吸気口と連通するとともに、ディフューザ流路11にも連通している。したがって、コンプレッサインペラ9が回転すると、吸気口10からコンプレッサハウジング6内に流体が吸気されるとともに、当該吸気された流体は、ディフューザ流路11およびコンプレッサスクロール流路12で昇圧されてエンジンの吸気口に導かれることとなる。
【0016】
タービンハウジング4には、過給機1の前側に開口するとともに不図示の排気ガス浄化装置に接続される吐出口13が形成されている。また、締結ボルト3によってベアリングハウジング2とタービンハウジング4とが連結された状態では、これら両ハウジング2、4の対向面間に間隙14が形成される。この間隙14は、後述するノズルベーン50が配置されて流体が流通する可変流路xが構成される部分であり、タービン軸7(タービンインペラ8)の径方向内側から外側に向けて環状に形成されている。
【0017】
また、タービンハウジング4には、間隙14よりもタービン軸7(タービンインペラ8)の径方向外側に位置する環状のタービンスクロール流路15が設けられている。タービンスクロール流路15は、エンジンから排出される排気ガスが導かれる不図示のガス流入口と連通するとともに、上記の間隙14にも連通している。したがって、ガス流入口からタービンスクロール流路15に導かれた排気ガスは、可変流路xおよびタービンインペラ8を介して吐出口13に導かれるとともに、その流通過程においてタービンインペラ8を回転させることとなる。そして、上記のタービンインペラ8の回転力は、タービン軸7を介してコンプレッサインペラ9に伝達されることとなり、コンプレッサインペラ9の回転力によって、上記のとおりに、流体が昇圧されてエンジンの吸気口に導かれることとなる。
【0018】
このとき、タービンハウジング4に導かれる排気ガスの流量が変化すると、タービンインペラ8およびコンプレッサインペラ9の回転量が変化して、昇圧された流体をエンジンの吸気口に安定的に導くことができなくなってしまう。そこで、タービンハウジング4の間隙14には、排気ガスの流量に応じて、タービンインペラ8に導かれる排気ガスの流速を変化させる可変静翼機構20が設けられている。この可変静翼機構20は、エンジンの回転数が低く排気ガスの流量が少ない場合には、可変流路xの開度を小さくしてタービンインペラ8に導かれる排気ガスの流速を向上し、少ない流量でもタービンインペラ8を回転させることができるようにするものである。以下に、可変静翼機構20の構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、可変静翼機構20は、タービンハウジング4側に設けられるシュラウドリング21と、このシュラウドリング21に対向してベアリングハウジング2側に設けられるノズルリング22と、を備えている。これらシュラウドリング21およびノズルリング22は、排気ガスが流通する流路を区画形成する流路形成壁部をなし、これらシュラウドリング21およびノズルリング22間に排気ガスが導かれることとなる。シュラウドリング21は、薄板リング状の本体21aと、この本体21aの内周縁部から吐出口13側に突出する突出部21bと、を有しており、本体21aには、厚さ方向(タービン軸7の軸方向)に貫通する複数の軸孔23が、周方向に等間隔で形成されている。
【0020】
また、ノズルリング22は、シュラウドリング21の本体21aと直径が等しい薄板リング状の本体22aを備えており、シュラウドリング21と所定の間隔を維持して対向配置されている。このノズルリング22は、本体22aの外周近傍において、複数(本実施形態では3つ、図1では1つのみ示す)の連結ピン24が回転自在に挿通されており、この連結ピン24によって、シュラウドリング21との対向間隔が一定に維持されている。
【0021】
なお、ノズルリング22の本体22aには、厚さ方向(タービン軸7の軸方向)に貫通する複数の軸孔25が周方向に等間隔で形成されており、シュラウドリング21に形成された軸孔23と、ノズルリング22に形成された軸孔25とが対向配置されている。また、連結ピン24は、その一端がノズルリング22の後側に突出しており、この突出部位をかしめることで、ノズルリング22の後側にサポートリング30が固定されている。
【0022】
図2は、サポートリング30の後面図である。図1および図2に示すように、サポートリング30は、円筒状の部材で構成されており、薄板状の部材を屈曲させた断面形状をなしている。このサポートリング30は、環状のフランジ部31と、このフランジ部31の内周縁から前側に起立する筒部32と、この筒部32の前側端部から径方向内側に屈曲する平面部33と、を備えており、ベアリングハウジング2とタービンハウジング4との対向面にフランジ部31を挟持した状態で締結ボルト3を締結することで、タービンハウジング4内に保持される。
【0023】
平面部33には、上記した連結ピン24の一端が挿通可能な挿通孔33aが、周方向に等間隔で3カ所設けられており、この挿通孔33aに連結ピン24を挿通させてかしめることにより、当該サポートリング30、シュラウドリング21およびノズルリング22が一体化されることとなる。
【0024】
また、平面部33には、その内周側の端部から径方向外方に向けて切り欠かれた凹部34が、周方向に複数設けられており、この凹部34に支持片35が設けられている。この支持片35は、平面部33から後側に屈曲する支持部35aと、この支持部35aから径方向外方に向けて屈曲するとともに、平面部33から所定距離離間して対面する脱落防止部35bとからなる。この支持片35には、図3に示すように、駆動リング40が回転自在に支持される。
【0025】
図3は、サポートリング30に駆動リング40が支持された状態を示す図である。この図に示すように、駆動リング40は、環状の薄板部材によって構成されており、その内周縁が、サポートリング30の支持片35によって回転自在に支持されている。駆動リング40には、その内周側の端部から径方向外方に向けて切り欠かれた係合凹部41が、周方向に複数形成されており、この係合凹部41に伝達リンク42の一端が係合されている。また、駆動リング40の内周側の端部には、係合凹部41と同様の形状をなす第2係合凹部43が1つ形成されており、この第2係合凹部43に、伝達リンク42と同様の形状をなす駆動用伝達リンク44の一端が係合されている。
【0026】
なお、伝達リンク42の他端側には嵌合孔42aが形成されており、駆動用伝達リンク44の他端側には嵌合孔44aが形成されている。そして、図1に示すように、嵌合孔42aには、ノズルベーン50に固定された翼軸51が挿通した状態で固定されており、また、駆動用伝達リンク44の嵌合孔44aには、駆動軸45の一端が嵌合されている。この駆動軸45は、駆動リング40の後側に延伸しており、その他端には、不図示のシリンダ等のアクチュエータによって駆動する駆動レバー46が一体的に連結されている。
【0027】
したがって、駆動レバー46がアクチュエータによって駆動すると、図1および図3に示すように、駆動軸45が回転するとともに、当該駆動軸45を軸として駆動用伝達リンク44が揺動し、この駆動用伝達リンク44の揺動に伴って、駆動リング40が回転する。このようにして駆動リング40が回転すると、今度は駆動リング40の回転によって伝達リンク42が揺動し、この伝達リンク42の揺動に伴って翼軸51が回転する。そして、翼軸51が回転すると、この翼軸51を軸としてノズルベーン50が揺動し、可変流路xの面積が可変されることとなる。
【0028】
図4は、ノズルベーン50および翼軸51の構造を説明する図であり、図4(a)は斜視図、図4(b)は平面図である。この図に示すように、ノズルベーン50は、互いに表裏関係にある第1の面50aおよび第2の面50bと、第1の面50aおよび第2の面50bの対向方向に延在する側面50c、50dと、を備えて構成される。本実施形態では、ノズルベーン50が間隙14に位置した状態において、第1の面50aがタービンスクロール流路15側に位置し、第2の面50bがタービンインペラ8側に位置している(図1参照)。また、このとき、側面50cが、シュラウドリング21の本体21aに対面するとともに、側面50dが、ノズルリング22の本体22aに対面することとなる。
【0029】
そして、側面50c、50dのそれぞれには、翼軸51が、その軸心を当該側面50c、50dに直交させるように設けられている。このとき、図4(b)に示すように、翼軸51の軸心zは、第1の面50aおよび第2の面50bの対向方向(ノズルベーン50の厚さ方向)の中央cから第1の面50a側にずらして位置している。このようにして設けられた翼軸51は、シュラウドリング21に形成された軸孔23、および、ノズルリング22に形成された軸孔25にそれぞれ回転自在に軸支される(図1参照)。
【0030】
ここで、図4(b)に示すように、翼軸51は、側面50c、50dにおける第1の面50a側の端部から突出している。そのため、翼軸51が軸孔23、25に軸支された状態では、これら軸孔23、25が、排気ガスが流通する流路中に露出してしまう。このように、軸孔23、25が流路中に露出したままになっていると、排気ガスの一部が軸孔23、25に流れ込んでリークしてしまい、圧力損失が生じてしまう。そこで、ノズルベーン50には、側面50c、50dにおける第1の面50a側の端部から隆起する鍔部52が設けられており、この鍔部52によって軸孔23、25を被覆するようにしている。
【0031】
このように、本実施形態のノズルベーン50は、互いに表裏関係にある第1の面50aおよび第2の面50bと、第1の面50aおよび第2の面50bの対向方向に延在するとともに、第1の面50a側に軸心zをずらして翼軸51が設けられる側面50c、50dと、これら側面50c、50dに設けられ、翼軸51の軸心zが位置する第1の面50a側の端部から隆起するとともに軸孔23、25を被覆する鍔部52と、を備えている。そして、鍔部52は、第1の面50a側にのみ設けられていることから、ノズルベーン50が最大に閉じられて隣接するノズルベーン50間の流路面積が最も小さくなったときに、タービンスクロール流路15側、すなわち、排気ガスの流れ方向の上流側に位置することとなる。
【0032】
図5は、ノズルベーン50によって形成される可変流路xを説明する図であり、図5(a)は従来のノズルベーン100を示し、図5(b)は本実施形態のノズルベーン50を示している。なお、従来のノズルベーン100は、本実施形態のノズルベーン50と同様、表裏関係にある第1の面100aおよび第2の面100bと、これら第1の面100aおよび100bの対向方向に延在する側面100c、100dと、を備えており、その形状は本実施形態のノズルベーン50と同じである。ただし、ノズルベーン100は、側面100c、100dに設けられる翼軸101の軸心が、第1の面100a、100bの対向方向の中央に位置しており、第1の面100a側および第2の面100b側の双方に鍔部102が設けられている。
【0033】
エンジンから排出される排気ガスの流量が少ない場合には、隣接するノズルベーン50、100の間隔を小さくして可変流路xを絞り、排気ガスの流速を向上してタービンインペラ8に導く。このとき、図5(a)に示す従来のノズルベーン100においては、隣接するノズルベーン100間に形成される絞られた可変流路xの下流に鍔部102が位置している。そのため、流速を増した排気ガスの一部が鍔部102に衝突して圧力損失が生じ、特に、流路を区画形成する流路形成壁部(シュラウドリング21の本体21aおよびノズルリング22の本体22aの両対向面)近傍において、図5(a)の破線で囲まれた部位の流速低下が顕著となる。
【0034】
これに対して、本実施形態のノズルベーン50によれば、可変流路xが絞られたときに、図5(b)に示すように、可変流路xの下流側において、排気ガスの流れが阻害されることがなく、圧力損失が生じることもない。これにより、排気ガスが、所望の流速を維持したままタービンインペラ8に導かれることとなり、従来に比して、タービン効率を向上することが可能となる。
【0035】
なお、本実施形態においては、第1の面50a側に翼軸51の軸心をずらして設け、鍔部52を第1の面50a側にのみ隆起させる場合について説明したが、翼軸51の軸心位置や鍔部52を設ける位置は第2の面50b側であってもよい。ただし、この場合には、ノズルベーン50が最大に閉じられて隣接するノズルベーン50間の流路面積が最も小さくなったときに、流体の流れ方向の上流側に第2の面50bが位置する必要がある。いずれにしても、側面50c、50dは、第1の面50aおよび第2の面50bの対向方向の中央から第1の面50a側および第2の面50b側のいずれかに軸心をずらした位置に翼軸51が設けられていればよい。そして、この翼軸51の軸心が位置する側の側面50c、50dの端部から鍔部52が隆起し、この鍔部52が、ノズルベーン50が最大に閉じられて流路面積が最も小さくなったときに、流体の流れ方向の上流側に位置すればよい。
【0036】
また、本実施形態においては、側面50c、50dの双方に翼軸51が設けられ、ノズルベーン50が所謂両持ちされる場合について説明したが、側面50c、50dのいずれか一方にのみ翼軸51を設ける所謂片持ちの構造としてもよい。
【0037】
また、本実施形態における可変静翼機構20の構成は一例に過ぎず、ノズルベーン50を可変させるための具体的な構造は上記の構造に限定されるものではない。また、本実施形態においては、タービンハウジング4内に可変静翼機構20を設け、排気ガスが流通する流路面積を可変する場合について説明したが、コンプレッサハウジング6内に可変静翼機構20を設けることとしてもよい。ただし、この場合には、コンプレッサインペラ9側が流体の流れ方向の上流側となり、コンプレッサスクロール流路12側が流体の流れ方向の下流側となる。したがって、この場合には、ノズルベーン50が最大に閉じられて隣接するノズルベーン50間の流路面積が最も小さくなったときに、流体の流れ方向の上流側すなわちコンプレッサインペラ9側に、翼軸51の軸心および鍔部52が位置することとなる。
【0038】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、過給機、ガスタービン、蒸気タービン、圧縮機等のターボ機械において、流体の流量を可変制御する可変静翼機構に利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 …過給機
20 …可変静翼機構
23、25 …軸孔
50 …ノズルベーン
50a …第1の面
50b …第2の面
50c、50d …側面
51 …翼軸
52 …鍔部
x …可変流路
図1
図2
図3
図4
図5