特許第5974510号(P5974510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5974510処理装置、WAMシステム及びそれに用いるモードSアドレスの蓄積方法並びにそのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974510
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】処理装置、WAMシステム及びそれに用いるモードSアドレスの蓄積方法並びにそのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/76 20060101AFI20160809BHJP
   G01S 5/06 20060101ALI20160809BHJP
   G01S 13/91 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   G01S13/76
   G01S5/06
   G01S13/91 200
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-19403(P2012-19403)
(22)【出願日】2012年2月1日
(65)【公開番号】特開2013-156233(P2013-156233A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2015年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】南舘 守
(72)【発明者】
【氏名】北島 正明
【審査官】 ▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−175784(JP,A)
【文献】 特開2009−103555(JP,A)
【文献】 特開2009−300146(JP,A)
【文献】 米国特許第05144315(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 − G01S 7/42
G01S 13/00 − G01S 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AM(Wide Area Multilateration)システムに用いられる処理装置であって、
航空機から自発的に送信されかつ当該航空機を特定するためのモードSアドレスを含む捕捉スキッタ信号及び拡張スキッタ信号から前記モードSアドレスを抽出して蓄積する手段と、
前記WAMシステムの覆域に重複する覆域を持つレーダサイトを特定する識別情報を予め登録管理する手段と、
前記レーダサイトから覆域内の全ての航空機に対して送信されるモードS一括質問信号に対する航空機からのモードS一括応答信号を前記識別情報を用いて解読することにより、前記モードS一括応答信号からモードSアドレスを抽出して蓄積する手段と
備える処理装置。
【請求項2】
前記処理装置は、前記モードS一括応答信号から抽出された前記モードSアドレスを蓄積する第1のテーブルと、前記捕捉スキッタ信号及び拡張スキッタ信号から抽出された前記モードSアドレスを蓄積する第2のテーブルと、前記第1及び第2のテーブル各々に同一のモードSアドレスが存在しないように常時監視する手段とをさらに備える請求項1記載の処理装置。
【請求項3】
前記処理装置は、前記第1のテーブルに蓄積されたモードSアドレス、前記WAMシステムの覆域内を航空機が通過する時間を最大として順次削除
前記処理装置は、前記第2のテーブルに蓄積されたモードSアドレス、前記捕捉スキッタ信号の送信レート+所定値後に順次削除する、
請求項2記載の処理装置。
【請求項4】
前記識別情報が、SSR(Secondary Surveillance Radar)のレーダサイトのインタロゲータ識別子[II(Interrogator Identifier)/SI(Surveillance Identifier)]である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項5】
求項1から請求項4のいずれか1項に記載の処理装置を備えるWAM(Wide Area Multilateration)システム。
【請求項6】
WAM(Wide Area Multilateration)システムに用いられ処理装置におけるモードSアドレスの蓄積方法であって、
前記処理装置が、航空機から自発的に送信されかつ当該航空機を特定するためのモードSアドレスを含む捕捉スキッタ信号及び拡張スキッタ信号から前記モードSアドレスを抽出して蓄積すること、
前記処理装置が、前記WAMシステムの覆域に重複する覆域を持つレーダサイトを特定する識別情報を予め登録管理すること、及び
前記処理装置が、前記レーダサイトから覆域内の全ての航空機に対して送信されるモードS一括質問信号に対する航空機からのモードS一括応答信号を前記識別情報を用いて解読することにより、前記モードS一括応答信号からモードSアドレスを抽出して蓄積すること、
を備えるモードSアドレスの蓄積方法。
【請求項7】
前記処理装置、前記モードS一括応答信号から抽出された前記モードSアドレスを蓄積する第1のテーブルと、前記捕捉スキッタ信号及び拡張スキッタ信号から抽出された前記モードSアドレスを蓄積する第2のテーブルとを管理すること及び
前記処理装置が、前記第1及び第2のテーブル各々に同一のモードSアドレスが存在しないように常時監視すること、
をさらに含む請求項6記載のモードSアドレスの蓄積方法。
【請求項8】
前記管理することは、
前記第1のテーブルに蓄積されたモードSアドレス、前記WAMシステムの覆域内を前記航空機が通過する時間を最大として順次削除すること及び
前記第2のテーブルに蓄積されたモードSアドレス、前記捕捉スキッタ信号の送信レート+所定値後に順次削除すること
を含む請求項7記載のモードSアドレスの蓄積方法。
【請求項9】
前記識別情報が、SSR(Secondary Surveillance Radar)のレーダサイトのインタロゲータ識別子[II(Interrogator Identifier)/SI(Surveillance Identifier)]である請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のモードSアドレスの蓄積方法。
【請求項10】
WAM(Wide Area Multilateration)システムに用いられる処理装置におけるモードSアドレスの蓄積方法をコンピュータに行わせるためのプログラムであって、
前記蓄積方法は、
航空機から自発的に送信されかつ当該航空機を特定するためのモードSアドレスを含む捕捉スキッタ信号及び拡張スキッタ信号から前記モードSアドレスを抽出して蓄積すること、
前記WAMシステムの覆域に重複する覆域を持つレーダサイトを特定する識別情報を予め登録管理すると、及び
前記レーダサイトから覆域内の全ての航空機に対して送信されるモードS一括質問信号に対する航空機からのモードS一括応答信号を前記識別情報を用いて解読することにより、前記モードS一括応答信号からモードSアドレスを抽出して蓄積すること、
を備える、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は処理装置、WAMシステム及びそれに用いるモードSアドレスの蓄積方法並びにそのプログラムに関し、特にWAM(Wide Area Multilateration)システムにおけるモードSアドレスの蓄積方式の拡張に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のWAMシステムは、航空機から送信される信号(応答信号)を受信解読する複数(4台以上)の受信局と、受信局から送信された解読信号により航空機の位置を算出する処理装置とから構成されている。
【0003】
このWAMシステムでは、特定の航空機を継続追尾する目的から個別識別応答(以降、Roll Call応答とする)の受信時に、その信号が追尾対象の航空機からの信号であるかどうかを確認する信頼度チェックを行っている。そのため、信頼度チェックを行うには、航空機のモードSアドレス(WAMシステムにおいて航空機を特定する情報)が必要となり、システム覆域内にいる航空機のモードSアドレスを蓄積する必要がある。
【0004】
ここで、Roll Call応答とは、SSR(Secondary Surveillance Radar)のレーダサイトが、航空機を初期捕捉した後に、ここの航空機に対して送信する個別質問に対する応答信号である。
【0005】
本発明に関連するWAMシステムにおけるモードSアドレスの抽出及び蓄積は、航空機から送出される捕捉スキッタ信号及び拡張スキッタ信号を対象としている。捕捉スキッタ信号は、航空機が自発的に送信する信号であり、モードSアドレス等を含んでいる。拡張スキッタ信号は、航空機が自発的に送信する信号であり、モードSアドレス及び航空機位置等を含んでいる。
【0006】
SSRのレーダサイトでは、航空機の初期捕捉を行うために、覆域内の全ての航空機に対してモードS一括質問の信号を送信しており、航空機からはこの信号に対する応答としてモードS一括応答(以降、All Call応答とする)が送信される。
【0007】
このAll Call応答からのモードSアドレスの抽出及び蓄積としては、SSRのレーダサイトに割り振られているインタロゲータ識別子[II(Interrogator Identifier)/SI(Surveillance Identifier)]が必要になるため、All Call応答を破棄している。尚、SSRについては、下記の特許文献1〜3に記載の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−146450号公報
【特許文献2】特開2008−175784号公報
【特許文献3】特開2010−286352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した本発明に関連するWAMシステムでは、特定の航空機を継続追尾する目的からRoll Call応答の受信時に信頼度チェックを行っている。信頼度チェックを行うには、航空機のモードSアドレスが必要となり、システム覆域内にいる航空機のモードSアドレスを蓄積する必要がある。
【0010】
しかしながら、モードSアドレスの蓄積は、航空機から送出される捕捉スキッタ信号及び拡張スキッタ信号のみを対象に行っており、All Call応答からモードSアドレスを抽出するには、各レーダサイトに割当てられているインタロゲータ識別子(II/SI)が必要となるため、インタロゲータ識別子(II/SI)を持たないWAMシステムでは、All Call応答からモードSアドレスを抽出することも、蓄積することもできない。上記の特許部健1〜3は、自サイトID[インタロゲータ識別子(II/SI)]を持つSSRのシステムに関する発明であり、この問題を解決することはできない。
【0011】
そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、All Call応答からモードSアドレスを抽出して蓄積することができ、継続追尾する航空機の検出数を向上させることができる処理装置、WAMシステム及びそれに用いるモードSアドレスの蓄積方法並びにそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による処理装置は、航空機から送信される応答信号を受信解読する複数の受信局と、前記受信局各々から送信された解読信号により前記航空機の位置を算出する処理装置とを含み、前記処理装置が前記航空機から自発的に送信されかつ前記航空機を特定するためのモードSアドレスを含む捕捉スキッタ信号及び拡張スキッタ信号から前記モードSアドレスを抽出して蓄積するWAM(Wide Area Multilateration)システムに用いる処理装置であって、
前記WAMシステムの覆域に重複する覆域を持つレーダサイトを特定する識別情報を予め登録管理する手段と、前記レーダサイトから覆域内の全ての航空機に対して送信されるモードS一括質問信号に対する当該航空機からのモードS一括応答信号を前記識別情報を用いて解読して前記モードSアドレスを抽出蓄積する手段とを備えている。
【0013】
本発明によるWAMシステムは、上記の処理装置を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明によるモードSアドレスの蓄積方法は、航空機から送信される応答信号を受信解読する複数の受信局と、前記受信局各々から送信された解読信号により前記航空機の位置を算出する処理装置とを含み、前記処理装置が前記航空機から自発的に送信されかつ前記航空機を特定するためのモードSアドレスを含む捕捉スキッタ信号及び拡張スキッタ信号から前記モードSアドレスを抽出して蓄積するWAM(Wide Area Multilateration)システムに用いるモードSアドレスの蓄積方法であって、
前記処理装置が、前記WAMシステムの覆域に重複する覆域を持つレーダサイトを特定する識別情報を予め登録管理する処理と、前記レーダサイトから覆域内の全ての航空機に対して送信されるモードS一括質問信号に対する当該航空機からのモードS一括応答信号を前記識別情報を用いて解読して前記モードSアドレスを抽出蓄積する処理とを実行している。
【0015】
本発明によるプログラムは、航空機から送信される応答信号を受信解読する複数の受信局と、前記受信局各々から送信された解読信号により前記航空機の位置を算出する処理装置とを含み、前記処理装置が前記航空機から自発的に送信されかつ前記航空機を特定するためのモードSアドレスを含む捕捉スキッタ信号及び拡張スキッタ信号から前記モードSアドレスを抽出して蓄積するWAM(Wide Area Multilateration)システムに用いる処理装置に実行させるプログラムであって、
前記WAMシステムの覆域に重複する覆域を持つレーダサイトを特定する識別情報を予め登録管理する処理と、前記レーダサイトから覆域内の全ての航空機に対して送信されるモードS一括質問信号に対する当該航空機からのモードS一括応答信号を前記識別情報を用いて解読して前記モードSアドレスを抽出蓄積する処理とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記のような構成及び動作とすることで、All Call応答からモードSアドレスを抽出して蓄積することができ、継続追尾する航空機の検出数を向上させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態による処理装置の構成を示すブロック図である。
図2図1に示す処理装置の処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、本発明によるWAM(Wide Area Multilateration)システムの概要について説明する。
【0019】
本発明は、WAMシステムにおいて、モードS一括応答(以降、All Call応答とする)、捕捉スキッタ信号及び拡張スキッタ信号に含まれるモードSアドレス(WAMシステムにおいて航空機を特定する情報)を蓄積する方式を提供するものである。
【0020】
ここで、捕捉スキッタ信号は、航空機が自発的に送信する信号であり、モードSアドレス等を含んでいる。拡張スキッタ信号は、航空機が自発的に送信する信号であり、モードSアドレス及び航空機位置等を含んでいる。
【0021】
SSR(Secondary Surveillance Radar)のレーダサイトでは、航空機の初期捕捉を行うために、覆域内の全ての航空機に対してモードS一括質問の信号を送信しており、航空機からはこの信号に対する応答としてモードS一括応答(以降、All Call応答とする)が送信される。
【0022】
本発明は、WAMシステムの覆域に重複する覆域を持つレーダサイト(SSRのレーダサイト)のインタロゲータ識別子[II(Interrogator Identifier)/SI(Surveillance Identifier)]1を、事前にWAMシステムに登録することにより、このインタロゲータ識別子(II/SI)を用いて航空機から送出されるAll Call応答を解読し、そこからモードSアドレスの蓄積数を増やし、継続追尾する航空機の検出数を向上させることができる。
【0023】
本発明では、WAMシステムと覆域が重複するレーダサイトのインタロゲータ識別子(II/SI)を予め登録しておくことで、このインタロゲータ識別子(II/SI)を用いてAll Call応答からモードSアドレスを抽出することが可能となり、モードSアドレスを蓄積することが可能となる。
【0024】
つまり、送信機能を持たないWAMシステムでは、自サイトID[インタロゲータ識別子(II/SI)]を持っていないので、航空機が、WAMシステムと覆域の重複しているレーダサイトに対して送信したAll Call応答よりモードSアドレスを抽出することができない。
【0025】
そこで、本発明では、事前にWAMシステムへ、WAMシステムの覆域と重複する覆域を持つレーダサイトの自サイトID[インタロゲータ識別子(II/SI)]を予め登録管理しておくことで、All Call応答からモードSアドレスの抽出が可能となる。
【0026】
図1は本発明の実施の形態による処理装置の構成を示すブロック図である。本発明の実施の形態によるWAMシステムは、航空機から送信される信号(応答信号)を受信解読する複数(4台以上)の受信局と、図1に示す構成を持ちかつ受信局から送信された解読信号により航空機の位置を算出する処理装置とから構成されている。
【0027】
図1において、本発明の実施の形態による処理装置は、II/SI管理部(II/SI CNTRL)2と、モードSアドレス抽出部(All Call Error Correction)5と、PI(Parity Interrogator)判別部(PI JUDGE)6と、II/SI比較部(II/SI COMP)7と、アドレステーブル管理部(WRn CNTRL)a8と、アドレステーブル管理部(WRn CNTRL)b9と、モードSアドレステーブルa10と、モードSアドレス蓄積部(Mode−S ADRS REG)a11と、モードSアドレステーブルb12と、モードSアドレス蓄積部(Mode−S ADRS REG)b13と、モードSアドレス管理部(Timer Reset CNTRL)a14と、モードSアドレス管理部(Timer Reset CNTRL)b15と、アドレス管理部(REG CONT)16と、モードSアドレス抽出部(Roll Call Correction)18と、モードSアドレス比較部(ADR COMP CNTRL)19とから構成されている。
【0028】
II/SI管理部2は、WAMシステムの覆域に重複する覆域を持つレーダサイト(図示せず)のインタロゲータ識別子(II/SI)1を管理する。モードSアドレス抽出部5は、図示せぬ航空機から送出されるAll Call応答3、捕捉スキッタ及び拡張スキッタ4に含まれるモードSアドレスを抽出する。
【0029】
PI判別部6は、入力された信号がAll Call応答3、捕捉スキッタまたは拡張スキッタ 4のいずれかであることを判別する。II/SI比較部7は、All Call応答3内のインタロゲータ識別子(II/SI)とII/SI管理部2で管理されているインタロゲータ識別子(II/SI)1とを比較する。
【0030】
アドレステーブル管理部a8は、All Call応答3のモードSアドレステーブルa10を管理する。モードSアドレス蓄積部a11は、All Call応答3のモードSアドレスを蓄積する。モードSアドレス管理部a14は、モードSアドレステーブルa10内で不要となったモードSアドレスを削除する。
【0031】
アドレステーブル管理部b9は、捕捉スキッタ及び拡張スキッタ4のモードSアドレステーブルb12を管理する。モードSアドレス蓄積部b13は、捕捉スキッタ及び拡張スキッタ4のモードSアドレスを蓄積する。モードSアドレス管理部b15は、モードSアドレステーブルb12内で不要となったモードSアドレスを削除する。
【0032】
アドレス管理部16は、モードSアドレステーブルa10に蓄積されているモードSアドレスとモードSアドレステーブルb12に蓄積されているデータを比較し、同一アドレスがあった場合にモードSアドレステーブルa10からそのアドレスを削除する。
【0033】
モードSアドレス抽出部18は、航空機から送出される個別識別応答(以降、Roll Call応答とする)17からモードSアドレスを抽出する。ここで、Roll Call応答17とは、SSRのレーダサイトが、航空機を初期捕捉した後に、ここの航空機に対して送信する個別質問に対する応答信号である。
【0034】
モードSアドレス比較部19は、Roll Call応答17から抽出されたモードSアドレスと、モードSアドレステーブルa10及びモードSアドレステーブルb12内にある全てのモードSアドレスとの比較を行う。
【0035】
図2図1に示す処理装置の処理動作を示すフローチャートである。これら図1及び図2を参照して本実施の形態によるWAMシステムにおけるAll Call応答3から抽出されたモードSアドレスの蓄積方法について説明する。尚、図2に示す処理動作は、本実施の形態による処理装置のCPU(中央処理装置)(図示せず)がプログラムを実行することでも実現可能である。
【0036】
本実施の形態による処理装置では、WAMシステムの覆域に重複する覆域を持つレーダサイトのインタロゲータ識別子(II/SI)1をII/SI管理部2で管理する(図2ステップS1)。
【0037】
モードSアドレス抽出部5は、All Call応答3、捕捉スキッタ及び拡張スキッタ4に含まれるモードSアドレスを抽出する(図2ステップS2)。
【0038】
PI判別部6は、モードSアドレスの抽出に使用したモードSデータのPIフィールド(Parity Interrogator identifier、ICAO Annex10 Aeronautical Telecommunications volIVを参照)の値を監視する。PI判別部6は、モードSデータがAll Call応答(PI≠0)であるか、または捕捉スキッタ、拡張スキッタ(PI=0)であるかを判別する(図2ステップS3)。
【0039】
II/SI比較部7は、All Call応答と判断されたモードSデータのPIフィールドに含まれるインタロゲータ識別子(II/SI)と、II/SI管理部2で管理されているインタロゲータ識別子(II/SI)1とを比較する(図2ステップS4)。
【0040】
II/SI比較部7で比較した結果、インタロゲータ識別子(II/SI)が一致した場合(図2ステップS5)は、そのモードSデータからモードSアドレス抽出部5にて抽出されたモードSアドレスを真値としてアドレステーブル管理部a8により、モードSアドレステーブルa10のモードSアドレス蓄積部a11に蓄積される(図2ステップS6)。
【0041】
また、II/SI比較部7で比較した結果、インタロゲータ識別子(II/SI)が合致しない場合(図2ステップS5)は、モードSアドレス抽出部5にて抽出されたモードSアドレスを偽値として破棄する(図2ステップS7)。
【0042】
PI判別部6で捕捉スキッタ、拡張スキッタ4と判断されたモードSデータのモードSアドレスは、アドレステーブル管理部b9によりモードSアドレステーブルb12のモードSアドレス蓄積部b13に蓄積される(図2ステップS8)。
【0043】
アドレス管理部16は、All Call応答3のモードSアドレステーブルa10に蓄積されているモードSアドレスを、モードSアドレステーブルb12に蓄積されているモードSアドレスと重複しているものはないかを常時監視する。
【0044】
アドレス管理部16は、モードSアドレステーブルa10及びモードSアドレステーブルb12に同一のモードSアドレスが蓄積されている場合、モードSアドレステーブルa10よりそのモードSアドレスを削除する(図2ステップS9)。
【0045】
モードSアドレステーブルb12に蓄積されず、モードSアドレステーブルa10から削除されないモードSアドレスは、モードSアドレス管理部a14によって、システム覆域内を航空機が通過する時間(パラメータ設定値)(以降、「削除時間パラメータa」とする)を最大とし、モードSアドレステーブルa10から順次、自動削除される(図2ステップS10)。
【0046】
モードSアドレスが削除されたモードSアドレス蓄積部a11は、未使用のモードSアドレス蓄積部a11としてアドレステーブル管理部a8によって管理される。
【0047】
モードSアドレステーブルb12に蓄積されたモードSアドレスは、モードSアドレス管理部b15によって管理され、捕捉スキッタの送信レート+α(=約1.3秒)(パラメータ設定値)(以降、「削除時間パラメータb」とする)後にモードSアドレステーブルb12から順次、自動削除される(図2ステップS11)。
【0048】
モードSアドレスが削除されたモードSアドレス蓄積部b13は、未使用のモードSアドレス蓄積部b13としてアドレステーブル管理部b9によって管理される。
【0049】
All Call応答3、捕捉スキッタ及び拡張スキッタ4から抽出されたモードSアドレスは、モードSアドレステーブルa10及びモードSアドレステーブルb12に、同一のモードSアドレスが存在しないように常時監視され、かつ、削除時間パラメータa及び削除時間パラメータbにより自動で削除される。
【0050】
そのため、モードSアドレステーブルa10及びモードSアドレステーブルb12には、常に必要最小限のモードSアドレスが存在することになる。また、航空機が覆域外に出てしまい、信号が受信できない状況になった場合は、モードSアドレステーブルa10及びモードSアドレステーブルb12から自動で削除されるため、処理対象ではなくなる。
【0051】
本実施の形態による処理装置では、上記の処理を繰返すことにより、モードSアドレスの漏れや無駄を無くし、モードSアドレステーブルa10及びモードSアドレステーブルb12でモードSアドレスが管理される。
【0052】
一方、モードSアドレス抽出部18は、航空機から送出されるRoll Call応答17を解読(デコード)してモードSアドレス(+データ)を抽出し、モードSアドレス比較部19を介してモードSアドレステーブルa10及びモードSアドレステーブルb12内のモードSアドレスと比較し、その比較結果に応じてその後の処理を行う。
【0053】
この際、モードSアドレステーブルa10及びモードSアドレステーブルb12には、必要最小限のモードSアドレスが存在するため、比較処理の回数を低減することができ、処理遅延等を回避することができる。
【0054】
このように、本実施の形態では、WAMシステムの覆域に重複しているレーダサイトのインタロゲータ識別子(II/SI)1を予め登録しておくことで、そのインタロゲータ識別子(II/SI)1を用いてAll Call応答3を解読することができ、その信号に含まれているモードSアドレスを抽出し、蓄積することできる。また、本実施の形態では、航空機の初期捕捉が早くなり、継続補足する航空機の検出数も向上させることができる。
【0055】
さらに、本実施の形態では、モードSアドレステーブルa10及びモードSアドレステーブルb12内に登録されている古いモードSアドレスを、モードSアドレス管理部a14及びモードSアドレス管理部b15の管理により、削除時間パラメータa及び削除時間パラメータbにて自動削除しているため、航空機から送出されるRoll Call応答17受信時のモードSアドレス比較部19を介したモードSアドレステーブルa10及びモードSアドレステーブルb12内のモードSアドレス比較を効率的に処理することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、パッシブ受信システムにおけるモードSアドレスの蓄積方式であり、HMU(Height Monitoring Unit)、ADS−B(Automatic Dependent Surveillance−Broadcast)システムの分野でも利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 インタロゲータ識別子(II/SI)
2 II/SI管理部(II/SI CNTRL)
3 All Call応答
4 捕捉スキッタ、拡張スキッタ
5 モードSアドレス抽出部(All Call Error Correction)
6 PI判別部(PI JUDGE)
7 II/SI比較部(II/SI COMP)
8 アドレステーブル管理部(WRn CNTRL)a
9 アドレステーブル管理部(WRn CNTRL)b
10 モードSアドレステーブルa
11 モードSアドレス蓄積部(Mode−S ADRS REG)a
12 モードSアドレステーブルb
13 モードSアドレス蓄積部(Mode−S ADRS REG)b
14 モードSアドレス管理部(Timer Reset CNTRL)a
15 モードSアドレス管理部(Timer Reset CNTRL)b
16 アドレス管理部(REG CONT)
17 Roll Call応答
18 モードSアドレス抽出部(Roll Call Correction)
19 モードSアドレス比較部(ADR COMP CNTRL)
図1
図2