特許第5974516号(P5974516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974516
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】5レベル電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/483 20070101AFI20160809BHJP
【FI】
   H02M7/483
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-20986(P2012-20986)
(22)【出願日】2012年2月2日
(65)【公開番号】特開2012-182974(P2012-182974A)
(43)【公開日】2012年9月20日
【審査請求日】2015年1月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-24608(P2011-24608)
(32)【優先日】2011年2月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】谷津 誠
(72)【発明者】
【氏名】大熊 康浩
(72)【発明者】
【氏名】小高 章弘
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−525717(JP,A)
【文献】 特開2010−246189(JP,A)
【文献】 米国特許第04996637(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02110939(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42− 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の直流電源が直列接続され、3つの端子を備えた直流電源回路と、前記直流電源回路と並列接続される、ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチを2N(Nは2以上の整数)個直列接続した第1の半導体スイッチ直列回路と、
前記第1の半導体スイッチ直列回路内部の中間接続点に接続される二つの半導体スイッチの直列接続回路部である第2の半導体スイッチ直列回路と並列接続される、ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチを2個直列接続して構成した第3の半導体スイッチ直列回路と、
前記第3の半導体スイッチ直列回路と並列接続されるコンデンサと、
前記第3の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点と前記第1及び第2の直流電源の直列接続点との間に接続される第1の交流スイッチと、
を備え、前記第2の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点を交流端子とし、前記第2の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点と前記第3の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点との間に第2の交流スイッチを接続したことを特徴とする5レベル電力変換装置。
【請求項2】
前記第2の半導体スイッチ直列回路と直流電源の正極又は負極と間に接続される半導体スイッチとして、複数個の半導体スイッチの直列回路を用いることを特徴とする請求項1に記載の5レベル電力変換装置。
【請求項3】
前記第1の半導体スイッチ直列回路における第2の半導体スイッチ直列回路を構成する半導体スイッチ以外の半導体スイッチは各々個別の制御信号により駆動することを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の5レベル電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体電力変換装置の回路構成技術に関するもので、特に5個の電圧レベルを直接出力する5レベル電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図18に、従来技術としての5レベルインバータ回路の1相分を示す。図18において、直流単電源b11、b12、b21、b22が直列に接続された直流組電源BA2の正極と負極との間には、半導体スイッチ(IGBT)Q1〜Q8の直列回路が接続され、直列回路の中間接続点である半導体スイッチQ4とQ5の接続点が交流出力点Uとなっている。また半導体スイッチQ1とQ2の接続点と半導体スイッチQ5とQ6の接続点との間には、ダイオードD1とD4が直列接続されたダイオード直列アームDA1が接続され、ダイオード直列アームDA1内部の直列接続点は直流単電源b11とb12との接続点に接続される。同様に、半導体スイッチQ2とQ3の接続点と半導体スイッチQ6とQ7の接続点との間には、ダイオードD2とD5が直列接続されたダイオード直列アームDA2が接続され、ダイオード直列アームDA2内部の直列接続点は直流単電源b12とb21の接続点に接続される。半導体スイッチQ3とQ4の接続点と半導体スイッチQ7とQ8の接続点との間には、ダイオードD3とD6が直列接続されたダイオード直列アームDA3が接続され、ダイオード直列アームDA3内部の直列接続点は直流単電源b211とb22の接続点に接続される。
ここで、各直流単電源の電圧をEとし、直流組電源BA2の中間接続点の電位を0とすると、直流組電源BA2の正極の電位は+2E、負極の電位は−2Eとなる。
【0003】
この様な回路構成において、半導体スイッチQ1〜Q4をオンさせ、半導体スイッチQ5〜Q8をオフにすると、交流出力点Uには+2Eの電圧が、半導体スイッチQ2〜Q5をオン、Q6〜Q8及びQ1をオフとすると、交流出力点Uには+1Eの電圧が、各々出力される。また、半導体スイッチQ3〜Q6をオン、Q7、Q8、Q1、Q2をオフとすると、交流出力点Uには零電圧が出力される。半導体スイッチQ4〜Q7をオン、Q1〜Q3及びQ8をオフとすると、交流出力点Uには−1Eの電圧が、半導体スイッチQ5〜Q8をオン、Q1〜Q4をオフとすると、交流出力点Uには−2Eの電圧が、各々出力される。この様に、各半導体スイッチQ1〜Q8のオンオフ動作を調節することにより、交流出力点Uには、5個のレベルの電圧を出力することができる。尚、図18に示す回路の詳細な動作については、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−271042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図18に示す回路においては、直流組電源BA2から交流出力点Uに電圧を出力する時に電流が通過する半導体スイッチの数が最大4直列となる。そのため、半導体スイッチにおける定常オン損失が大きくなり、装置全体の変換効率が低下し、さらに、小形化と低価格化が困難となる問題がある。
【0006】
また、交流出力点Uから出力される電圧及び電流が正負対称な交流波形の場合であっても、直流単電源b11、b12、b21、b22の分担する電力は原理的に等しくならないため、各々独立した直流電源が必要である。そのため、入力となる直流組電源BA2には、独立に電力を供給できる4つの単電源が必要となり、装置を製作する上で大きな制約となる。従って、本発明の課題は、従来に比べ出力電流が通過する半導体スイッチの数を低減させることにより発生損失を低減させ、さらに直流入力電源として2つの単電源で動作可能な5レベル電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、第1の発明においては、第1及び第2の直流電源が直列接続され、3つの端子を備えた直流電源回路と、前記直流電源回路と並列接続される、ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチを2N(Nは2以上の整数)個直列接続した第1の半導体スイッチ直列回路と、前記第1の半導体スイッチ直列回路内部の中間接続点に接続される二つの半導体スイッチの直列接続回路部である第2の半導体スイッチ直列回路と並列接続される、ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチ素子を2個直列接続して構成した第3の半導体スイッチ直列回路と、前記第3の半導体スイッチ直列回路と並列接続されるコンデンサと、前記第3の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点と前記第1及び第2の直流電源の直列接続点との間に接続される第1の交流スイッチと、を備え、前記第2の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点を交流端子とし、前記第2の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点と前記第3の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点との間に第2の交流スイッチを接続する
【0009】
の発明においては、第1の発明における前記第2の半導体スイッチ直列回路と直流電源の正極又は負極と間に接続される半導体スイッチとして、複数個の半導体スイッチの直列回路を用いる。
【0010】
の発明においては、第1〜第の発明で、前記第1の半導体スイッチ直列回路における第2の半導体スイッチ直列回路を構成する半導体スイッチ以外の半導体スイッチは各々個別の制御信号により駆動する。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、第1の主回路構成においては、第1及び第2の直流電源が直列接続され、3つの端子を備えた直流電源回路と、前記直流電源回路と並列接続される、ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチ素子を2N(Nは2以上の整数)個直列接続した第1の半導体スイッチ直列回路と、前記第1の半導体スイッチ直列回路内部の中間接続点に接続される二つの半導体スイッチの直列接続回路部である第2の半導体スイッチ直列回路と並列接続される、ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチを2個直列接続して構成した第3の半導体スイッチ直列回路と、前記第3の半導体スイッチ直列回路と並列接続されるコンデンサと、前記第3の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点と前記第1及び第2の直流電源の直列接続点との間に接続される第1の交流スイッチと、を備え、前記第2の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点を交流端子としている。この結果、2個の直流電源から5レベルの電圧を出力することが可能で、また電流が通過する半導体の素子数を減少させることができる。また、前記第2の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点と前記第3の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点との間に第2の交流スイッチを接続することにより、電流が通過する半導体の素子数をさらに減少させることができる。結果として、装置の高効率化、低価格化、小形化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施例を示す回路図である。
図2図1の交流出力波形例を示す。
図3図1の回路の動作モードを示すモード図である。
図4】本発明の第2の実施例を示す回路図である。
図5図4の回路の動作モードを示すモード図である。
図6】本発明の第3の実施例を示す回路図である。
図7図6の回路の動作モードを示すモード図である。
図8】本発明の第4の実施例を示す回路図である。
図9図8の回路の動作モードを示すモード図である。
図10】本発明の第5の実施例を示す回路図である。
図11図10の交流出力波形例を示す。
図12図10の回路の動作モードを示すモード図である。
図13】本発明の第6の実施例を示す回路図である。
図14】本発明の第7の実施例を示す回路図である。
図15図14の回路の動作モードを示すモード図である。
図16】本発明の第8の実施例を示す回路図である。
図17図16の回路の動作モードを示すモード図である。
図18】従来の5レベルインバータ回路例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の要点は、第1及び第2の直流電源が直列接続され、3つの端子を備えた直流電源回路と、前記直流電源回路と並列接続される、ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチを2N(Nは2以上の整数)個直列接続した第1の半導体スイッチ直列回路と、前記第1の半導体スイッチ直列回路内部の中間接続点に接続される二つの半導体スイッチ素子の直列接続回路部である第2の半導体スイッチ直列回路と並列接続される、ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチを2個直列接続して構成した第3の半導体スイッチ直列回路と、前記第3の半導体スイッチ直列回路と並列接続されるコンデンサと、前記第3の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点と前記第1及び第2の直流電源の直列接続点との間に接続される第1の交流スイッチ(双方向スイッチとも言う)と、を備え、前記第2の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点を交流端子としている点である。
【0020】
第2の要点は、第1及び第2の直流電源が直列接続され、3つの端子を備えた直流電源回路と、前記直流電源回路と並列接続される、ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチを2N(Nは2以上の整数)個直列接続した第1の半導体スイッチ直列回路と、前記第1の半導体スイッチ直列回路内部の中間接続点に接続される二つの半導体スイッチの直列接続回路部である第2の半導体スイッチ直列回路と並列接続される、第1の交流スイッチとダイオードを逆並列接続した半導体スイッチ2個を直列接続した第3の半導体スイッチ直列回路と第2の交流スイッチとの直列回路と、前記第2の半導体スイッチ直列回路に並列接続されるコンデンサとを備え、前記第3の半導体スイッチ直列回路の直列接続点と前記直流電源回路の直列接続点とを接続し、前記第2の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点を交流端子としている点である。
【実施例1】
【0021】
図1に、本発明の第1の実施例を示す。図1は、5レベルインバータの1相分を示す回路図である。この回路を3回路使用すると3相インバータを、2回路使用すると単相インバータを、各々実現することができる。直流組電源BA1は、各々が2Eの電圧を持つ直流単電源b1とb2とが直列に接続された構成で、正極、零極及び負極の3端子を備えている。半導体スイッチとしては、IGBTを適用した例である。この5レベルインバータ回路は、IGBTQ2とQ3とを直列接続した半導体スイッチ直列回路QA1と、IGBTQ5とQ6とを直列接続した半導体スイッチ直列回路QA2と、コンデンサC1とが、並列接続され、直流組電源BA1の正極と半導体スイッチ直列回路QA1の一方の端子との間にはIGBTQ1が、直流組電源BA1の負極と半導体スイッチ直列回路QA1の他方の端子との間にはIGBTQ4が、半導体スイッチ直列回路QA2の内部接続点と直流組電源BA1の零極との間には、逆耐圧を持つ半導体スイッチ(逆阻止形IGBT)QR1とQR2とを逆並列接続した交流スイッチ(双方向スイッチとも言う)SW1が、各々接続され、半導体スイッチ直列回路QA1内部の直列接続点が交流端子Uとなる。
【0022】
この様な回路構成における動作波形例を図2に、動作モードを図3に示す。「モード1」は、IGBTQ1とQ2をオン、IGBTQ4及び交流スイッチSW1のIGBTQR1をオフさせ、交流出力点Uに+2Eの電圧を出力するモードである。この時、出力電流が通過する半導体スイッチは、IGBTQ1とQ2の2個となる。さらにIGBTQ5とQ3をオフ、IGBTQ6をオンにすることで、半導体スイッチに印加される電圧は以下となる。即ち、IGBTQR1に印加される電圧は、直流単電源b1の電圧(+2E)からコンデンサC1の電圧VC1を減算した電圧に、IGBTQ4に印加される電圧は、直流組電源BA1の正極と負極との間の電圧4EからコンデンサC1の電圧VC1を減算した電圧に、IGBTQ5に印加される電圧はコンデンサC1の電圧VC1に、各々クランプされる。この時、コンデンサC1の電圧VC1が1Eに制御されておれば、交流スイッチSW1、IGBTQ3、Q5、Q4のクランプ電圧は、各々1E、1E、1E、3Eとなる。
【0023】
「モード2」は、IGBTQ1、Q3をオン、IGBTQ2、Q4、Q5及び交流スイッチSW1のQR1をオフさせ、交流出力点Uに直流単電源b1の電圧(+2E)からコンデンサC1の電圧VC1を減算した電圧を出力するモードである。この時、出力電流が通過する半導体スイッチは、IGBTQ1とQ3の2個となる。さらにIGBTQ6をオンしておくことで、交流スイッチSW1にかかる電圧は直流単電源b1の電圧(+2E)からコンデンサC1の電圧VC1を減算した電圧に、IGBTQ2とQ5にかかる電圧はコンデンサC1の電圧VC1に、各々クランプされる。また、コンデンサC1の電圧VC1が1Eに制御されておれば、交流出力点Uの電圧は+1Eとなり、交流スイッチSW1、IGBTQ2、Q5、Q4のクランプ電圧は、各々1E、1E、1E、3Eとなる。
【0024】
「モード3」は、交流スイッチSW1及びIGBTQ2とQ6をオンさせ、IGBTQ1、Q3、Q4及びQ5をオフさせ、交流出力点Uに+VC1の電圧を出力するモードである。この時、出力電流が通過する半導体スイッチは、交流スイッチSW1、IGBTQ6とQ2の3個となる。また、コンデンサC1の電圧VC1が+1Eに制御されておれば、交流出力点Uの電圧は+1Eとなり、IGBTQ1、Q3、Q4、Q5のクランプ電圧は、各々1E、1E、2E、1Eとなる。
【0025】
「モード4」は、交流スイッチSW1、IGBTQ3とQ6をオン、IGBTQ1、Q2、Q4、Q5をオフさせ、交流出力点Uに零電圧を出力するモードである。この時、出力電流が通過する半導体スイッチは、交流スイッチSW1、IGBTQ6とQ3の3個となる。また、コンデンサC1の電圧VC1が+1Eに制御されておれば、IGBTQ1、Q2、Q4、Q5のクランプ電圧は、各々1E、1E、2E、1Eとなる。
【0026】
「モード5」は、交流スイッチSW1、IGBTQ5とQ2をオン、IGBTQ1、Q3、Q4、Q6をオフさせ、交流出力点Uに零電圧を出力するモードである。この時、出力電流が通過する半導体スイッチは、交流スイッチSW1、IGBTQ5とQ2の3個となる。また、コンデンサC1の電圧VC1が+1Eに制御されておれば、IGBTQ1、Q3、Q4、Q6のクランプ電圧は、各々2E、1E、1E、1Eとなる。
【0027】
「モード6」は、交流スイッチSW1、IGBTQ3とQ5をオン、IGBTQ1、Q2、Q4及びQ6をオフさせ、交流出力点Uに−VC1の電圧が出力されるモードである。この時、出力電流が通過する半導体スイッチは、交流スイッチSW1、IGBTQ5とQ3の3個となる。また、コンデンサC1の電圧VC1が+1Eに制御されておれば、交流出力点Uの電圧は−1Eとなり、IGBTQ1、Q2、Q4、Q6のクランプ電圧は、各々2E、1E、1E、1Eとなる。
【0028】
「モード7」は、IGBTQ2とQ4をオン、IGBTQ1、Q3、Q6及び交流スイッチSW1のQR2をオフさせると交流出力点Uに−2E+VC1の電圧が出力されるモードである。この時、出力電流が通過する半導体スイッチはIGBTQ4とQ2の2個となる。さらに、IGBTQ5をオンしておくことで、交流スイッチSW1に印加される電圧は、直流単電源b2の電圧(−2E)にコンデンサC1の電圧VC1を加算した電圧に、IGBTQ3とQ6に印加される電圧はコンデンサC1の電圧VC1にクランプされる。また、コンデンサC1の電圧VC1が1Eに制御されておれば、交流出力点Uの電圧は−1Eとなり、交流スイッチSW1、IGBTQ1、Q3、Q6のクランプ電圧は、各々1E、3E、1E、1Eとなる。
【0029】
「モード8」は、IGBTQ3とQ4をオン、Q1及び交流スイッチSW1のQR2をオフさせ、交流出力点Uに−2Eの電圧を出力するモードである。この時、出力電流が通過する半導体スイッチはIGBTQ3とQ4の2個となる。さらに、IGBTQ2とQ6をオフ、IGBTQ5をオンにすることで、交流スイッチSW1に印加される電圧は、直流単電源b2の電圧(−2E)にコンデンサC1の電圧VC1を加算した電圧に、IGBTQ1に印加される電圧は、直流組電源BA1の正極と負極間の電圧(4E)からコンデンサC1の電圧VC1を減算した電圧に、IGBTQ6に印加される電圧はVC1に、各々クランプされる。この時、コンデンサC1の電圧VC1が1Eに制御されておれば、交流スイッチSW1、IGBTQ1、Q2、Q6のクランプ電圧は、各々1E、3E、1E、1Eとなる。
【0030】
上記の「モード1」〜「モード8」により、交流出力点Uには+2E、+1E、0、−1E、−2Eの5レベルの電圧が出力可能になる。ここで、「モード2」と「モード3」は共に+1Eの出力となっているが、「モード2」においては交流出力点Uからの交流出力電流iの向きが正の時を考えるとコンデンサC1は充電されることになり、逆に「モード3」においてコンデンサC1は放電されることになる。同様に交流出力点Uに−1Eを出力している時の「モード6」と「モード7」についても同じ関係となっている。そのため、交流出力点Uに+1Eの電圧を出力する時には「モード2」又は「モード3」、−1Eを出力する時には「モード6」又は「モード7」を任意に選択することにより、コンデンサC1の電圧VC1の調整が可能になり、VC1を常に1E近辺に制御する事ができる。
【実施例2】
【0031】
図4に、本発明の第2の実施例の回路図を、図5にその動作モードを示す。第1の実施例との相違点は、IGBTQ2とQ3とを直列接続した半導体スイッチ直列回路QA1内部の直列接続点と、IGBTQ5とQ6とを直列接続した半導体スイッチ直列回路QA2内部の直列接続点との間に、逆耐圧を持つIGBTQR3とQR4とを逆並列接続した交流スイッチSW2が追加接続されている点である。その動作は、「モード1」〜「モード8」の全モードにおいて、IGBTQ1〜Q6及び交流スイッチSW1の動作は第1の実施例の回路(図1)と同じである。また、追加した交流スイッチSW2のIGBTQR3とQR4の動作は、各々QR3は「モード1」〜「モード3」の各モードにおいてオフ、「モード4」〜「モード8」の各モードにおいてオンさせ、QR4は「モード1」〜「モード5」の各モードにおいてオン、「モード5」〜「モード8」の各モードにおいてオフさせる。
【0032】
これらの動作により、「モード4」及び「モード5」の交流出力点Uの零電圧出力時において、SW2はオン状態となっているため、出力電流が通過する半導体は、どちらのモードでも交流スイッチSW1とSW2の2個だけとなり、第1の実施例(図1)の3個と比べ少なくなる。その結果、通流損失が減少し装置の高効率化が可能となる。
【実施例3】
【0033】
図6に、本発明の第3の実施例を、図7にその動作モードを示す。第2の実施例(図4)との相違点は、IGBTQ1がQ1aとQ1bとの直列回路に、IGBTQ4がQ4aとQ4bとの直列回路に、各々変更されている点である。ここで、変更された各IGBTの動作は、以下となる。「モード1」と「モード2」の時、IGBTQ1aとQ1bは両方共オン、IGBTQ4aとQ4bは両方共オフとする。「モード3」と「モード4」の時、IGBTQ1aとQ1bの片方だけオン、IGBTQ4aとQ4bは両方共オフとする。「モード5」と「モード6」の時は、IGBTQ1aとQ1bの両方共オフ、IGBTQ4aとQ4bの片方だけオンさせる。「モード7」と「モード8」の時はIGBTQ1aとQ1bは両方共オフ、IGBTQ4aとQ4bは両方共オンとする。
【0034】
このような動作とすることで、IGBTQ1a、Q1b、Q4a及びQ4bは、各々第2の実施例(図4)におけるIGBTQ1とQ4に原理的に必要とされる耐圧3Eに対し、半分程度の耐圧を備えた半導体スイッチに置換えることが可能となる。その場合、各モード間の遷移動作において低い耐圧の半導体素子による個別のスイッチングとなるため、スイッチング損失が低減され、低損失化が可能となる。例えば、数kV以上の高耐圧IGBTは、低耐圧のIGBTに比べて、IGBTのスイッチング特性や定常損失特性が極端に悪化する。この課題を解決するため、本実施例の技術を用いることで特性の優れた低耐圧の素子が適用可能となり、装置を低損失化することができる。
【実施例4】
【0035】
図8に本発明の第4の実施例を、図9にその動作モードを示す。第2の実施例(図4)との相違点は、IGBTQ1がQ1a、Q1b及びQ1cの直列回路に、IGBTQ4がIGBTQ4a、Q4b及びQ4cの直列回路に、各々変更されている点である。ここで、変更された各IGBTの動作は以下となる。「モード1」と「モード2」の時、IGBTQ1a〜Q1cは全てオン、IGBTQ4a〜Q4cは全てオフとする。「モード3」と「モード4」の時、IGBTQ1a〜Q1cのうち1つだけオフ、IGBTQ4a〜Q4cのうち1つだけオンとする。「モード5」と「モード6」の時、IGBTQ1a〜Q1cうち1つだけオン、IGBTQ4a〜Q4cのうち1つだけオフとする。「モード7」と「モード8」の時、IGBTQ1a〜Q1cは全てオフ、IGBTQ4a〜Q4cは全てオンとする。
【0036】
このような動作とすることで、IGBTQ1a〜Q1c、Q4a〜Q4cは、各々図4におけるIGBTQ1とQ4に原理的に必要とされる耐圧3Eに対し1/3となり、1Eに耐えるIGBTに置換えることが可能となる。従って、図8における全ての半導体スイッチ(IGBT)には原理的に印加される電圧1Eに耐える半導体が適用可能になる。特に数kV以上の高電圧出力の装置を構成する場合、入手が容易で高性能かつ低価格の低耐圧IGBTの適用が可能となり、装置の高効率化と低価格化に寄与することができる。
【実施例5】
【0037】
図10に本発明の第5の実施例を、図11に動作波形を、図12にその動作モードを示す。この回路を3回路使用すると3相インバータを、2回路使用すると単相インバータを、各々実現することができる。直流組電源BA1は、各々が2Eの電圧を持つ直流単電源b1とb2とが直列に接続された構成で、正極、零極及び負極の3端子を備えている。半導体スイッチとしては、IGBTを適用した例である。この5レベルインバータ回路は、3つの端子を備えた直流組電源BA1と、前記直流組電源BA1と並列接続される、ダイオードを逆並列接続したIGBTQ1〜Q4を4個直列接続した第1の半導体スイッチ直列回路と、前記第1の半導体スイッチ直列回路内部の中間接続点に接続される二つのIGBTQ2、Q3の直列接続回路部である第2の半導体スイッチ直列回路QA1と並列接続される、逆阻止形IGBTQR1とQR2とを逆並列接続して構成した第1の交流スイッチSW1と逆阻止形IGBTQR3とQR4とを逆並列接続して構成した第2の交流スイッチSW2及びダイオードを逆並列接続したIGBTQ5、Q6を直列接続した第3の半導体スイッチ直列回路QA2と、前記第2の半導体スイッチ直列回路に並列接続されるコンデンサC1と、を備え、前記第3の半導体スイッチ直列回路QA2の直列接続点と前記直流組電源の直列接続点(零点)とを接続し、前記第2の半導体スイッチ直列回路QA1内部の直列接続点を交流端子Uとする。
【0038】
次に、図11図12に基づいて、動作モードを説明する。「モード1」の状態は、IGBTQ1、Q2をオン、IGBTQ4及び交流スイッチSW1のIGBTQR1と交流スイッチSW2のIGBTQR3をオフさせるモードで、交流出力点Uには+2Eの電圧が出力される。この時出力電流が通過する半導体スイッチはIGBTQ1、Q2の2個となる。さらに、この時IGBTQ5とQ3をオフ、IGBTQ6をオンしておくことで、IGBTQR3に印加される電圧は直流単電源b1の電圧(2E)からコンデンサC1の電圧VC1を減算した電圧にクランプされ、IGBTQ4にかかる電圧は(直流組電源BA1の正極−負極間電圧)4EからコンデンサC1の電圧VC1を減算した電圧に、さらにIGBTQ3に印加される電圧はコンデンサC1の電圧VC1に、各々クランプされる。また、IGBTQ5と交流スイッチSW1の直列回路は、直流単電源b1の電圧(+2E)にクランプされる。この時、コンデンサC1の電圧VC1が1Eに制御され、交流スイッチSW1とIGBTQ5の直列回路において各々が等しい電圧に分圧しておれば、交流スイッチSW1、SW2、IGBTQ3、Q5、Q4のクランプ電圧は、各々1E、1E、1E、1E、3Eとなる。
【0039】
「モード2」の状態は、IGBTQ1、Q3をオン、IGBTQ2、Q4、Q5及び交流スイッチSW1のQR1と交流スイッチSW2のQR3をオフさせるモードで、交流出力点Uには直流単電源b1の電圧(2E)からコンデンサC1の電圧VC1を減算した電圧が出力される。この時出力電流が通過する半導体スイッチはIGBTQ1、Q3の2個となる。さらにこの時IGBTQ6をオンしておくことで、交流スイッチSW2にかかる電圧は直流単電源b1の電圧(2E)からコンデンサC1の電圧VC1を減算した電圧に、IGBTQ2にかかる電圧はVC1に、各々クランプされる。また、IGBTQ5と交流スイッチSW1の直列回路は直流単電源b1の電圧(2E)にクランプされる。この時、コンデンサC1の電圧VC1が1Eに制御され、交流スイッチSW1とIGBTQ5の直列回路において各々が等しい電圧に分圧しておれば、交流出力点Uの電圧は+1Eとなり、交流スイッチSW1、SW2、IGBTQ2、Q5、Q4のクランプ電圧は、各々1E、1E、1E、E、3Eとなる。
【0040】
「モード3」の状態は、交流スイッチSW1、SW2、IGBTQ2、Q6をオン、IGBTQ1、Q3、Q4、及びQ5をオフさせるモードで、交流出力点UにはコンデンサC1の電圧VC1が出力される。この時出力電流が通過する半導体スイッチは交流スイッチSW2、IGBTQ6、Q2の3個となる。この時、コンデンサC1の電圧VC1が+1Eに制御されておれば、交流出力点Uの電圧は+1Eとなり、IGBTQ1、Q3、Q4、Q5のクランプ電圧は、各々1E、1E、2E、1Eとなる。
【0041】
「モード4」の状態は、交流スイッチSW1、SW2、IGBTQ3、Q6をオン、Q1、Q2、Q4、Q5をオフさせるモードで、交流出力点Uには零電圧が出力される。この時出力電流が通過する半導体スイッチは交流スイッチSW2、IGBTQ6、Q3の3個となる。この時、コンデンサC1の電圧VC1が+1Eに制御されておれば、IGBTQ1、Q2、Q4、Q5のクランプ電圧は、各々1E、1E、2E、1Eとなる。
【0042】
「モード5」の状態として、SW1、SW2、Q5、Q2をオンさせ、IGBTQ1、Q3、Q4、Q6をオフさせると交流出力点Uには零電圧が出力され、この時出力電流が通過する半導体スイッチは交流スイッチSW1、IGBTQ5、Q2の3個となる。この時、コンデンサC1の電圧VC1が+1Eに制御されておれば、IGBTQ1、Q3、Q4、Q6のクランプ電圧は、各々2E、1E、1E、1Eとなる。
【0043】
「モード6」の状態は、交流スイッチSW1、SW2、IGBTQ3、Q5をオン、IGBTQ1、Q2、Q4、及びQ6をオフさせるモードで、交流出力点Uには−VC1の電圧が出力される。この時出力電流が通過する半導体スイッチは交流スイッチSW1、IGBTQ5、Q3の3個となる。この時、コンデンサC1の電圧VC1が+1Eに制御されておれば、交流出力点Uの電圧は−1Eとなり、IGBTQ1、Q2、Q4、Q6のクランプ電圧は、各々2E、1E、1E、1Eとなる。
【0044】
「モード7」の状態は、IGBTQ2、Q4をオン、IGBTQ1、Q3、Q6及び交流スイッチSW1のQR2とSW2のQR4をオフさせるモードで、交流出力点Uには直流単電源b2の電圧(−2E)にVC1を加算した電圧が出力され、この時出力電流が通過する半導体スイッチはIGBTQ4、Q2の2個となる。さらにこの時IGBTQ5をオンしておくことで、交流スイッチSW1にかかる電圧は直流単電源b2の電圧(−2E)にコンデンサC1の電圧VC1を加算した電圧に、IGBTQ3にかかる電圧はコンデンサC1の電圧VC1に、各々クランプされる。また、IGBTQ6と交流スイッチSW2の直列回路は+2E(直流単電源b2の電圧)にクランプされる。この時、コンデンサC1の電圧VC1が1Eに制御され、交流スイッチSW2とIGBTQ6の直列回路において各々が等しい電圧に分圧していれば、交流出力点Uの電圧は−1Eとなり、交流スイッチSW1、SW2、IGBTQ1、Q3、Q6のクランプ電圧は、各々1E、1E、3E、1E、1Eとなる。
【0045】
「モード8」の状態は、IGBTQ3、Q4をオン、IGBTQ1、交流スイッチSW1のIGBTQR2及び交流スイッチSW2のIGBTQR4をオフさせるモードで、交流出力点Uには−2Eの電圧が出力される。この時出力電流が通過する半導体スイッチはIGBTQ3、Q4の2個となる。さらにこの時IGBTQ2、Q6をオフ、IGBTQ5をオンしておくことで、交流スイッチSW1にかかる電圧は−2E(直流単電源b2の電圧)にコンデンサC1の電圧VC1を加算した電圧にクランプされる。IGBTQ1にかかる電圧は直流組電源BA1の正極と負極との間の電圧(4E)からコンデンサC1の電圧VC1を減算した電圧に、さらにIGBTQ6にかかる電圧はコンデンサC1の電圧VC1に、各々クランプされる。また、IGBTQ6と交流スイッチSW2の直列回路は+2E(直流単電源b2の電圧)にクランプされる。この時、コンデンサC1の電圧VC1が1Eに制御され、交流スイッチSW2とIGBTQ6の直列回路において各々が等しい電圧に分圧しておれば、交流スイッチSW1、SW2、IGBTQ1、Q2、Q6のクランプ電圧は、各々1E、1E、3E、1E、1Eとなる。
【0046】
上記の「モード1」〜「モード8」により交流出力点Uには+2E、+1E、0、−1E、−2Eの5レベルの出力電圧が可能になる。ここで、「モード2」と「モード3」は共に+1Eの出力となっているが、「モード2」においては交流出力点Uからの交流出力電流iの向きが正の時を考えるとコンデンサC1は充電されることになり、逆に「モード3」においてコンデンサC1は放電されることになる。同様に交流出力点Uが−1E出力時の「モード6」と「モード7」についても同じ関係となっている。そのため、交流出力点Uに+1Eの電圧を出力する時には「モード2」又は「モード3」、−1Eの電圧を出力する時には「モード6」又は「モード7」を任意に選択することにより、コンデンサC1の電圧VC1の調整が可能になり、VC1を常に1E近辺に制御する事が可能になる。
【実施例6】
【0047】
図13に本発明の第6の実施例を示す。図10に示す第5の実施例との相違点は、交流スイッチSW1及びSW2の構成の違いである。第5の実施例は、逆耐圧を持つ半導体スイッチQR1とQR2又はQR3とQR4による逆並列接続による構成である。これに対して、第6の実施例は、交流スイッチSW1は逆阻止能力のない通常のIGBTQS1とQS2を逆直列接続した構成で、交流スイッチSW2は逆阻止能力のない通常のIGBTQS3とQS4を逆直列接続した構成である。ここで、5レベルの交流を出力するための実施例5のIGBTQR1〜QR4のオンオフ動作と実施例6のIGBTQS1〜QS4のオンオフ動作は全く同じであるので、詳細な回路動作の説明は省略する。
【実施例7】
【0048】
図14に第7の実施例を、図15にその動作モードを示す。図10に示す第5の実施例との相違点は、IGBTQ1がIGBTQ1aとQ1bとの直列回路に、IGBTQ4がIGBTQ4aとQ4bとの直列接続に、各々変更されている点である。ここで、変更された各半導体スイッチの動作を図15に基づいて説明する。「モード1」と「モード2」では、IGBTQ1aとQ1bは両方オンで、IGBTQ4aとQ4bは両方オフさせる。「モード3」と「モード4」では、IGBTQ1aとQ1bの片方だけオンで、IGBTQ4aとQ4bは両方オフさせる。「モード5」と「モード6」ではIGBTQ1aとQ1bの両方オフで、IGBTQ4aとQ4bの片方だけオンさせる。「モード7」と「モード8」では、IGBTQ1aとQ1bは両方オフで、IGBTQ4aとQ4bは両方オンさせる。このような動作モードとすることにより、IGBTQ1a、Q1b、Q4a及びQ4bは、各々図10におけるIGBTQ1とQ4に必要とされる原理的な最低耐圧3Eに対し半分程度の耐圧の半導体スイッチ(IGBT)に置換えることが可能となる。この場合、モード間の遷移において低い耐圧の半導体素子による個別のスイッチングとなるため、スイッチング損失の低減が可能で、低損失化が可能となる。例えば数kV以上の高耐圧IGBTを用いる場合、ある耐圧以上のIGBTになるとIGBTのスイッチング特性や定常損失特性が極端に悪化する場合がある。そのような場合にはこの技術を用いることで、特性の優れた低耐圧の半導体素子の適用が可能となり、低損失化に寄与することが可能となる。
【実施例8】
【0049】
図16に第8の実施例を、図17にその動作モードを示す。図10の第5の実施例との相違点は、IGBTQ1がIGBTQ1a〜Q1cの3直列回路に、IGBTQ4がIGBTQ4a〜Q4cの3直列接続に、各々変更されている点である。
ここで、置換えた各半導体スイッチの動作図17に基づいて説明する。「モード1」と「モード2」の時は、IGBTQ1a〜Q1cは全部オン、IGBTQ4a〜Q4cは全部オフさせる。「モード3」と「モード4」の時は、IGBTQ1a〜Q1cのうち1つだけオフで、IGBTQ4a〜Q4cのうち1つだけオンさせる。「モード5」と「モード6」の時は、IGBTQ1a〜Q1cうち1つだけオンで、IGBTQ4a〜Q4cのうち1つだけオフさせる。「モード7」と「モード8」の時は、IGBTQ1a〜Q1cは全部オフで、IGBTQ4a〜Q4cは全部オンさせる。このような動作とすることでIGBTQ1a〜Q1c、及びIGBTQ4a〜Q4cは、各々図1におけるIGBTQ1とQ4に必要とされる原理的な最低耐圧3Eに対し1/3となり、1Eの電圧に耐える半導体スイッチに置換えることが可能となる。その場合、図16における全ての半導体スイッチに原理的な最低耐圧1Eに耐える半導体スイッチの適用が可能となり、モード間の遷移において低い耐圧の半導体素子による個別のスイッチングとなるため、スイッチング損失の低減による低損失化が可能となる。特に数kV以上の高電圧出力の装置を構成する場合、入手が容易で高性能かつ低価格の低耐圧IGBTの適用が可能となり、特に装置の低価格化に寄与することが可能になる。
【0050】
尚、上記実施例には交流スイッチとして、逆阻止形IGBTを逆並列接続した時の実施例と、逆耐圧のない半導体スイッチとダイオードを組合せた構成例の一部を示したが、他にも種々の回路構成が実現できる。
また、本実施例では、直流から交流を作り出すインバータ回路での実施例を説明したが、交流から直流を作り出すコンバータにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、高圧大容量の装置を構成する時の回路技術であり、電動機駆動用インバータ、系統連系用変換装置、直流電源装置などへの適用が可能である。
【符号の説明】
【0052】
BA1、BA2・・・直流組電源 D1〜D6・・・ダイオード
DA1〜DA3・・・ダイオード直列アーム
b1、b2、b11、b12、b21、b22・・・直流単電源
Q1〜Q8、Q1a〜Q1c、Q4a〜Q4c、QS1〜QS4・・・IGBT
QR1〜QR4・・・逆阻止形IGBT SW1、SW2・・・交流スイッチ
C1・・・コンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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