特許第5974517号(P5974517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5974517-弁開閉時期制御装置 図000002
  • 特許5974517-弁開閉時期制御装置 図000003
  • 特許5974517-弁開閉時期制御装置 図000004
  • 特許5974517-弁開閉時期制御装置 図000005
  • 特許5974517-弁開閉時期制御装置 図000006
  • 特許5974517-弁開閉時期制御装置 図000007
  • 特許5974517-弁開閉時期制御装置 図000008
  • 特許5974517-弁開閉時期制御装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974517
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】弁開閉時期制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/356 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   F01L1/356 E
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-21125(P2012-21125)
(22)【出願日】2012年2月2日
(65)【公開番号】特開2013-160094(P2013-160094A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】藤脇 賢二
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 憲治
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 秀行
【審査官】 山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−324612(JP,A)
【文献】 特開2003−328708(JP,A)
【文献】 特開平11−002109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランクシャフトと同期回転する駆動側回転部材と、
前記駆動側回転部材と同軸上に配置され前記内燃機関の弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転部材とを備え、
作動油の供給により前記駆動側回転部材と前記従動側回転部材と相対回転位相を遅角方向に変位させる遅角室と、作動油の供給により前記相対回転位相を進角方向に変位させる進角室とが形成され、
前記駆動側回転部材と前記従動側回転部材との一方の回転部材に出退自在に支持される出退部材と、他方の回転部材に形成され前記出退部材が嵌合する嵌合凹部と、前記出退部材を嵌合凹部方向に付勢するスプリングとを備えて前記相対回転位相を拘束または所定位相範囲内にて規制する出退機構が構成されると共に、
前記出退部材が、前記嵌合凹部方向とは反対方向に作動油の油圧を受ける複数の受圧面を有しており、
前記進角室に作動油を供給する進角油路および前記遅角室に作動油を供給する遅角油路が形成され、
前記進角油路および前記遅角油路の一方に作動油が供給される際に、前記進角油路および前記遅角油路のうち作動油が供給される油路からの作動油を複数の前記受圧面の1つに供給する独立解除油路と、前記遅角室および前記進角室のうち作動油が供給された油室からの作動油を複数の前記受圧面の他の1つに供給する連通解除油路とが形成されている弁開閉時期制御装置。
【請求項2】
前記進角室に作動油を供給する前記進角油路と、前記遅角室に作動油を供給する前記遅角油路とが前記従動側回転部材の内部に形成され、この従動側回転部材の内部において前記進角油路と前記遅角油路との一方の油路に供給される作動油を前記独立解除油路に供給する分岐部が形成されている請求項1記載の弁開閉時期制御装置。
【請求項3】
前記受圧面の1つに作用する油圧により前記出退部材に対し前記嵌合凹部方向とは反対方向に作用する操作力が前記スプリングの付勢力より小さく設定されると共に、合計2つの前記受圧面に作用する油圧により前記出退部材に対し前記嵌合凹部方向とは反対方向に作用する操作力が前記スプリングの付勢力より大きく設定されている請求項1又は2記載の弁開閉時期制御装置。
【請求項4】
複数の前記受圧面として、前記出退部材の突出端の第1受圧面と、前記出退部材の中間部の第2受圧面とが形成され、前記第1受圧面に前記連通解除油路からの作動油の油圧を作用させ、前記第2受圧面に前記独立解除油路からの作動油の油圧を作用させる請求1〜3のいずれか一項に記載の弁開閉時期制御装置。
【請求項5】
複数の前記受圧面として、前記出退部材の中間部に第3受圧面が形成され、前記連通解除油路が連通する油室と反対側の油室から作動油が供給される際に、前記第3受圧面に対して油圧を作用させる操作油路が形成されている請求項4記載の弁開閉時期制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁開閉時期制御装置に関し、詳しくは、内燃機関のクランクシャフトと同期回転する駆動側回転部材と、駆動側回転部材と同軸上に配置され内燃機関の弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転部材とが、夫々の相対回転位相が変更自在となるように備えられ、相対回転位相を拘束または所定位相範囲内で規制する機構を備えた構成に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された弁開閉時期制御装置として特許文献1には、駆動側回転部材(文献ではハウジング)の内部に従動側回転部材(文献ではベーンロータ)を相対回転自在に嵌め込んだ構成が示されている。この特許文献1では、駆動側回転部材に形成された複数の仕切壁の中間位置に対して、従動側回転部材に形成された複数の羽根部を配置することで羽根部を挟む位置に進角室と遅角室とを形成し、羽根部の1つにロック機構を備えている。このロック機構は、羽根部に形成されたピン孔に進退自在に収容されたロック部材と、ハウジングのフロントカバーに形成されたロック孔と、ロック部材(文献ではロックピン)をロック孔に嵌合する方向に付勢するスプリングとで構成されている。
【0003】
この特許文献1では、ロックピンの先端部分に進角室からの作動油を供給することによりロックピンのロックを解除する解除油路と、ロックピンの内端部に形成された大径部に遅角室からの作動油を供給することによりロックピンのロックを解除する解除油路とが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003‐328708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来からの弁開閉時期制御装置では、内燃機関の停止時にロック機構をロック状態に設定しておき、内燃機関の始動時には、駆動側回転部材と従動側回転部材との相対回転位相を決まった位相に維持するように構成されている。このような弁開閉時期制御装置で内燃機関が始動した後には、ロック機構のロックを解除して、良好な燃費となる相対回転位相に移行する制御が行われる。
【0006】
また、内燃機関の始動の後に相対回転位相を変更する場合には、ロック機構のロック部材等の嵌合を解除する方向に作動油を供給してロック状態を解除した後に、進角室あるいは遅角室に作動油を供給する相対回転位相を予め設定された位相に設定する制御が行われている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されるように、進角室に供給される作動油を解除油路からロック部材に供給してロックを解除する作動を行うものでは、進角室に作動油が充満して圧力が上昇することで解除油路の作動油圧も上昇する。このような理由から、駆動側回転部材と従動側回転部材との相対回転位相を変化させる力が上昇した後に、ロック部材を抜き出す作動油の圧力が上昇することもあり、ロック部材に対して剪断方向に強い力が作用してロック部材の抜き出し、すなわちロック状態の解除が不能となることもあり改善の余地があった。
【0008】
一方、駆動側回転部材と従動側回転部材との相対回転位相を変化させる力が上昇する前に、ロック部材を抜き出す作動油の圧力が上昇する場合、ロック部材によるロックが解除されてから相対回転位相が変更されることになる。しかし、相対回転位相の変更の際に進角室が容積拡大すると、ロック部材に作用する作動油の圧力が減少して、再びロック状態になることもあり、改善の余地があった。
【0009】
本発明の目的は、相対回転位相が拘束または所定位相範囲内で規制された状態から相対回転位相の変更を確実に行う弁開閉時期制御装置を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴は、内燃機関のクランクシャフトと同期回転する駆動側回転部材と、前記駆動側回転部材と同軸上に配置され前記内燃機関の弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転部材とを備え、作動油の供給により前記駆動側回転部材と前記従動側回転部材と相対回転位相を遅角方向に変位させる遅角室と、作動油の供給により前記相対回転位相を進角方向に変位させる進角室とが形成され、前記駆動側回転部材と前記従動側回転部材との一方の回転部材に出退自在に支持される出退部材と、他方の回転部材に形成され前記出退部材が嵌合する嵌合凹部と、前記出退部材を嵌合凹部方向に付勢するスプリングとを備えて前記相対回転位相を拘束または所定位相範囲内にて規制する出退機構が構成されると共に、前記出退部材が、前記嵌合凹部方向とは反対方向に作動油の油圧を受ける複数の受圧面を有しており、
前記進角室に作動油を供給する進角油路および前記遅角室に作動油を供給する遅角油路が形成され、前記進角油路および前記遅角油路の一方に作動油が供給される際に、前記進角油路および前記遅角油路のうち作動油が供給される油路からの作動油を複数の前記受圧面の1つに供給する独立解除油路と、前記遅角室および前記進角室のうち作動油が供給された油室からの作動油を複数の前記受圧面の他の1つに供給する連通解除油路とが形成されている点にある。
【0011】
この構成によると、拘束又は規制された状態において進角室と遅角室との一方の油室に作動油が供給される際には、出退部材の1つの受圧面に対して独立解除油路から作動油を供給して出退部材の嵌合凹部から抜き出す方向の変位を補う方向に予圧を作用させることか可能となる。この状態に達した後に進角室と遅角室との一方の油室からの作動油が他の1つの受圧面に供給されることにより出退部材を嵌合凹部から抜き出す方向に操作して嵌合凹部からの抜き出しが実現する。つまり、油室に供給される作動油の圧力が上昇した際には、既に作動油の圧力が抜き出し方向に作用している出退部材に対して抜き出し方向に圧力を作用させるため、駆動側回転部材と従動側回転部材との相対回転位相が変化に伴い出退部材に剪断方向に外力が強く作用する以前に出退部材を嵌合凹部から抜き出すことが可能となり、出退機構の嵌合解除が不能に陥ることはない。
また、この構成では、独立解除油路から受圧面に供給される作動油の圧力で出退部材を嵌合凹部から抜き出すように構成することも可能であり、このように構成したものでは、駆動側回転部材と従動側回転部材との相対回転位相が変化する以前に出退部材の嵌合凹部からの抜き出しを行い、この抜き出しの後には油室に供給される作動油により出退部材を嵌合凹部から抜き出した状態に維持して相対回転位相が変化する場合にも出退部材が、他方の回転部材に接触する不都合を解消して円滑な相対回転を実現する。
このように、相対回転位相が拘束または所定位相範囲内で規制された状態から相対回転位相の変更を行う場合には出退部材を迅速に抜き出す作動を行い、相対回転位相の変更を確実に行う弁開閉時期制御装置が構成された。
【0012】
本発明は、前記進角室に作動油を供給する前記進角油路と、前記遅角室に作動油を供給する前記遅角油路とが前記従動側回転部材の内部に形成され、この従動側回転部材の内部において前記進角油路と前記遅角油路との一方の油路に供給される作動油を前記独立解除油路に供給する分岐部が形成されても良い。
【0013】
これによると、進角油路と遅角油路との一方に供給される作動油が、従動回転部材の内部の分岐部で分岐され、独立解除油路に供給されるため独立解除油路に作動油を供給するための油路を外部に形成することや、制御弁のポートの数を増大させる必要がなく、油路系が単純化する。
【0014】
本発明は、前記受圧面の1つに作用する油圧により前記出退部材に対し前記嵌合凹部方向と反対方向に作用する操作力が前記スプリングの付勢力より小さく設定されると共に、合計2つの前記受圧面に作用する油圧により前記出退部材に対し前記嵌合凹部方向と反対方向に作用する操作力が前記スプリングの付勢力より大きく設定されても良い。
【0015】
これによると、受圧面の1つに嵌合凹部方向と反対方向に予圧を与えて出退部材の抜き出しを容易にした後に、油圧室に充填された作動油が受圧面の他の1に圧力を作用(合計2つの受圧面に圧力を作用)させることで出退部材を抜き出し方向に作動させて嵌合凹部からの抜き出しが可能となる。この構成では、出退部材を嵌合凹部から抜き出す方向に作動させる際には、油室に作動油が充填した状態に達しているので、油室に作動油が充填される以前に出退部材が嵌合凹部から抜き出される構成と比較して、相対回転位相が変動する不都合を招くことがない。
【0016】
本発明は、複数の前記受圧面として、前記出退部材の突出端の第1受圧面と、前記出退部材の中間部の第2受圧面とが形成され、前記第1受圧面に前記連通解除油路からの作動油の油圧を作用させ、前記第2受圧面に前記独立解除油路からの作動油の油圧を作用させても良い。
【0017】
これによると、例えば、出退部材の突出端の端面を利用して第1受圧面を形成し、出退部材の中間部に段状となる第2受圧面を形成する等の形状の設定により、第1受圧面に連通解除油路からの作動油を供給して嵌合凹部から抜き出す方向に油圧を作用させ、第2受圧面に独立解除油路からの作動油を供給して嵌合凹部から抜き出す方向に更に油圧を作用させることが可能となる。
【0018】
本発明は、複数の前記受圧面として、前記出退部材の中間部に第3受圧面が形成され、前記連通解除油路が連通する油室と反対側の油室から作動油が供給される際に、前記第3受圧面に対して油圧を作用させる操作油路が形成されても良い。
【0019】
これによると、一方の油室に作動油が供給された場合には、第1受圧面と第2油圧面とに作動油を供給して油圧によって出退部材の嵌合凹部から抜き出す方向への操作が実現し、他方の油室に作動油が供給される際には、操作油路からの作動油が第3受圧面に供給され、この油圧により出退部材を嵌合凹部から抜き出す方向に操作することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態の弁開閉時期制御装置の縦断側面図である。
図2図1のII−II線断面図である。
図3】第1実施形態のロックピンの作動を連続的に示す断面図である。
図4】第2実施形態の弁開閉時期制御装置の縦断側面図である。
図5図4のV−V線断面図である。
図6】第2実施形態のロックピンの作動を連続的に示す断面図である。
図7】第3実施形態の弁開閉時期制御装置の縦断正面図である。
図8】第3実施形態のロックピンの作動を連続的に示す断面図である
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態の基本構成〕
図1及び図2に示すように、内燃機関としてのエンジン100のクランクシャフト101とタイミングチェーン102を介して同期回転する駆動側回転部材としての外部ロータ10を備え、エンジン100の燃焼室の吸気弁又は排気弁を開閉するためのカムシャフト1と同軸で一体回転する従動側回転部材としての内部ロータ20を備え、外部ロータ10と内部ロータ20との回転位相を制御する油圧制御系を備えて弁開閉時期制御装置が構成されている。
【0022】
この弁開閉時期制御装置は、外部ロータ10と内部ロータ20とがカムシャフト1の回転軸芯Xと同軸芯で相対回転自在に配置され、作動油の給排により外部ロータ10と内部ロータ20との相対回転位相を変化させ、カムシャフト1の回転により開閉制御される弁(吸気弁又は排気弁)の開閉時期(タイミング)の変更を実現する。また、この弁開閉時期制御装置では、相対回転位相を最遅角でロックし(拘束し)、油圧によりロック解除が可能なロック機構L(出退機構の一例)を備えており、これらの構成を以下に説明する。
【0023】
〔弁開閉時期制御装置の構成〕
弁開閉時期制御装置は、前述した外部ロータ10と内部ロータ20とを前部位置のフロントプレート2と、これと反対側(エンジン側)のリヤプレート3とで挟み込み、外部ロータ10とフロントプレート2とリヤプレート3とを一体化するように連結ボルト4で連結して構成されている。
【0024】
リヤプレート3の外周位置にはタイミングチェーンが巻回するスプロケット3Sが一体的に形成され、フロントプレート2と内部ロータ20との間には、内部ロータ20を進角方向に付勢するトーションスプリング5が備えられている。内部ロータ20をカムシャフト1に連結固定する固定ボルト6が、回転軸芯Xと同軸芯で配置され、この固定ボルト6の外周側に後述する進角油路25の一部が形成されている。
【0025】
図2に示すように、外部ロータ10は円筒形の外殻部11から内部に向けて複数の突出部12が突設され、内部ロータ20は円柱形の本体部分21から外方に向けて複数の仕切突起22が放射状に突設されている。また、外部ロータ10の複数の突出部12の中間に形成される油室(空間)に仕切突起22を嵌め込むように外部ロータ10と内部ロータ20とが配置されている。
【0026】
このような構成から、複数の突出部12の中間位置に形成される油室(空間)を仕切突起22が仕切る形態となり、外部ロータ10と内部ロータ20とは、油室内で仕切突起22が移動し得る角度だけ相対回転自在となる。外部ロータ10は、前述したタイミングチェーンにより図2にSで示す方向に回転駆動される。仕切突起22を基準にして一方側には、作動油が供給されることにより相対回転位相が進角方向S1に変化させる進角室R1が形成される。仕切突起22を基準にして他方側には、作動油が供給されることにより相対回転位相が遅角方向S2に変化させる遅角室R2が形成される。また、突出部12の突出端には内部ロータ20の本体部分21の外周に接触する外部シール13が備えられ、仕切突起22の突出端には外部ロータ10の外殻部11の内面に接触する内部シール23が備えられている。
【0027】
相対回転位相が最遅角と最進角との間の中央近傍を中間位相と称しており、トーションスプリング5は、相対回転位相が最遅角にある状態から相対回転位相を中間位相に達するまで付勢力を作用させるように付勢力が作用する範囲が設定されている。尚、トーションスプリング5の付勢力が作用する範囲は中間位相を超えるものであっても良く、中間位相に達しないものであっても良い。
【0028】
この弁開閉時期制御装置には、進角室R1に連通する進角油路25と、遅角室R2に連通する遅角油路26とが形成されている。進角油路25と遅角油路26とはカムシャフト1の内部に連通しており、このカムシャフト1の外面のジョイントJから電磁弁Vに接続している。エンジン100で駆動される油圧ポンプPからの作動油を電磁弁Vに供給する油路が形成され、電磁弁Vは、進角油路25と遅角油路26との一方の油路を選択して作動油を供給し、他方の油路の排油を行う。電磁弁Vはエンジン100の回転を制御するECUによって制御される。
【0029】
〔ロック機構〕
ロック機構Lは、内部ロータ20に形成された複数の仕切突起22の一つに対して、回転軸芯Xと平行姿勢の軸芯に沿って出退自在に備えた出退部材としてのロックピン31と、このロックピン31が嵌合するようにリヤプレート3に形成した嵌合凹部32と、ロックピン31を嵌合凹部方向に付勢するロックスプリング33とを備えて構成されている。
【0030】
このロック機構Lは、相対回転位相を最遅角にロックする(拘束する)ため嵌合凹部32の位置が設定され、エンジン100の停止時に相対回転位相を最遅角にロックするために使用される。このように相対回転位相を最遅角にロックした状態でエンジン100を始動する場合には吸排気時の負荷が軽減されるためセルモータに供給される電力も少なくて済む。このような理由から、例えば、アイドルストップ制御のようにエンジン100の停止と起動とを頻繁に行う車両では、エンジン100の停止時に相対回転位相を最遅角に設定する制御が行われる。
【0031】
また、弁開閉時期制御装置の相対回転位相を最遅角に設定した状態でエンジン100を始動する場合には、ECUの制御によりクランキングを開始した後に、エンジン始動(点火によりエンジン100が稼動する状態)に円滑に移行するためにロック機構Lのロックを解除して相対回転位相を進角方向S1に移行させる制御が行われる。このような要請から進角方向S1に変化させるために進角室R1に作動油が供給される際には、適切なタイミングでロックピン31を嵌合凹部32から確実に抜き出す作動が行われる。
【0032】
図3に示すように、ロックピン31は、先端側の嵌合部31Aと、これより大径となるピン本体31Bとを一体形成し、ピン本体31Bにロックスプリング33を収容するスプリング空間31Cが形成されている。これに対応して仕切突起22にはロックピン31を収容するために形成された収容孔部28には、嵌合部31Aが挿通する第1孔部28Aと、ピン本体31Bが挿通する第2孔部28Bとが形成されている。
【0033】
嵌合部31Aの先端部分には第1受圧面T1が形成され、嵌合部31Aとピン本体31Bとの境界部分にリング状の第2受圧面T2が形成されている。この第1受圧面T1と第2受圧面T2とは、ロックピン31に対して嵌合凹部方向と反対方向に作動油の油圧を作用させる位置に形成されている。
【0034】
嵌合凹部32には、進角室R1からの作動油の油圧を第1受圧面T1に作用させるための連通解除油路35が接続している。収容孔部28には、第2受圧面T2に作動の圧力を作用させる独立解除油路36が接続している。前述したように進角油路25がカムシャフト1の内部から内部ロータ20に亘って形成されている。この進角油路25の中間部分に分岐部Dを形成し、この分岐部Dで分岐した作動油が独立解除油路36に供給される。つまり、独立解除油路36は、進角室R1に作動油を供給する進角油路25とは別個に形成された油路として構成されている。
【0035】
また、エンジン100の始動時のように低速回転状態で油圧ポンプPから供給される作動油の油圧によってもロックピン31を嵌合凹部32から抜き出せるように、第1受圧面T1と第2受圧面T2とを併せた受圧面積の値が設定されている。エンジン100が増速し油圧ポンプPから供給される作動油の油圧が上昇した状況では第2受圧面T2に作用する作動油の油圧だけでもロックピン31を嵌合凹部32から抜き出せるように第2受圧面T2の受圧面積の値が設定されている。つまり、進角室R1に作動油の油圧が作用すると、第1受圧面T1及び第2受圧面T2に油圧が作用するが、第2受圧面T2だけに油圧が作用してもロックピン31が嵌合凹部32から抜け出せるように第2受圧面T2の受圧面積を設定してある。
【0036】
このロック機構Lでは、第1孔部28Aと嵌合部31Aとの間で作動油が多少リークしても、第2孔部28Bとピン本体31Bとの間で作動油のリークが抑制される精度を有していれば第1受圧面T1と第2受圧面T2とに作用する油圧によりロックピン31の抜き出しが可能である。このような理由から、第2孔部28Bとピン本体31Bとの嵌合精度を高く設定し、第1孔部28Aの内径を嵌合部31Aの外径より設定値だけ大きく設定するように精度で加工されている。このような構成から、第1孔部28Aの軸芯とピン本体31Bとの軸芯とを高い精度で一致させる加工を行わずに済み、加工を容易にしている。
【0037】
〔ロック機構の作動形態〕
この第1実施形態の構成において、ロック機構Lはロック状態では図3(a)に示す状態にある。ロック機構Lのロック状態を解除して相対回転位相を進角方向S1に変化させる場合には、ECUが電磁弁Vを制御することにより進角油路25から進角室R1に作動油が供給される。進角油路25に供給された作動油は分岐部Dから独立解除油路36に送られ、この作動油の油圧が予圧として第2受圧面T2に作用する。前述したように第2受圧面T2に作用する油圧だけでもロックピン31を嵌合凹部32から抜くことができる。しかし、この直後に進角油路25から第1受圧面T1に対して作動油の油圧が作用することで、図3(b)の状態から図3(c)の状態へとより迅速にロックピン31の抜き出しが行われる(ロック機構Lのロックが解除される)。
【0038】
つまり、独立解除油路36には進角油路25の分岐部Dで分岐した作動油が供給されるので、独立解除油路36から第2受圧面T2に供給される作動油の油圧は、進角室R1の圧力の影響を受けることが殆どなく、第2受圧面T2に作用する油圧を短時間のうちに上昇させる。
【0039】
また、進角油路25から供給される作動油が進角室R1に充満した後に連通解除油路35に供給される作動油の油圧が上昇する。これにより、既に第2受圧面T2に作用している油圧と、連通解除油路35から第1受圧面T1に作用する油圧とによりロックピン31が嵌合凹部32から確実に抜き出され、ロック機構Lのロックが解除されるのである。
【0040】
〔第1実施形態の作用・効果〕
このように作動油が進角室R1に充満した直後にロック機構Lのロックが解除されるので、外部ロータ10と内部ロータ20とを相対回転させる力が低い状態でロック機構Lのロック解除が可能となり、例えば、強い剪断力の作用によりロックピン31が抜き出し不能に陥ることがなく、ロック解除を確実に行える。前述した加工精度の設定により、第1孔部28Aと嵌合部31Aとが密嵌合していないので、ロックピン31が嵌合凹部32から抜き出される際には第1孔部28Aと嵌合部31Aとの間の摺動抵抗が小さく、迅速な抜き出しを実現する。
【0041】
更に、ロック機構Lのロックが解除される時点で進角室R1に作動油が充満しているため、外部ロータ10と内部ロータ20とが相対回転し難い状態にあり、カムシャフト1から作用する外力によって相対回転位相が乱れる不都合を招くこともない。そして、進角室R1に供給される作動油の油圧により相対回転位相が進角方向S1の方向に変化し、この進角方向S1への変化をトーションスプリング5の付勢力がサポートして一層迅速な変化が実現する。
【0042】
特に、本発明の弁開閉時期制御装置では、ロックピン31の挿抜を制御するための専用の弁を必要としないので、油路系が単純化し、部品点数の増大も抑制して製造が容易でコストの低減も実現する。
【0043】
因みに、この第1実施形態では、相対回転位相を必要とする位相に設定する場合には、ECUが電磁弁Vを制御することにより進角油路25と遅角油路26との一方を選択して作動油を供給する。ロック状態に移行する場合には、遅角油路26にのみ作動油を供給する制御が行われ、相対回転位相が最遅角に達した時点でロックスプリング33の付勢力によりロックピン31の嵌合部31Aが嵌合凹部32に嵌合してロック状態に達する。
【0044】
〔第2実施形態〕
この第2実施形態では、弁開閉時期制御装置の基本的な構成は第1実施形態と共通するが、出退機構としてのロック機構Lの構成が異なり、油路の構成が異なっている。
【0045】
図4図6に示すように、ロック機構Lのロックピン31(出退部材の一例)は、ピン本体31Bの後端側(嵌合凹部32と反対の端部側)に大径部を形成することで、第3受圧面T3を形成している。この構成からロックピン31には嵌合部31Aの先端の第1受圧面T1と、ピン本体31Bの中間部分の第2受圧面T2と、後端側の第3受圧面T3とが形成される。
【0046】
これに対応してロックピン31を収容する収容孔部28には、嵌合部31Aが挿通する第1孔部28Aと、ピン本体31Bが挿通する第2孔部28Bと、大径部が挿通する第3孔部28Cとが形成される。
【0047】
嵌合凹部32には、進角室R1からの作動油の油圧を第1受圧面T1に作用させるための連通解除油路35が接続される。収容孔部28には、第2受圧面T2に作動油の圧力を作用させる独立解除油路36が接続される。進角油路25がカムシャフト1の内部から内部ロータ20に亘って形成され、この進角油路25の中間部分に分岐部Dを形成し、この分岐部Dで分岐した作動油が独立解除油路36に供給される。更に、収容孔部28において第3受圧面T3に対して遅角室R2からの作動油の油圧を作用させる操作油路41が接続する。
【0048】
第3受圧面T3は、進角室R2から供給される作動油の油圧によってロックピン31を嵌合凹部32から抜き出す(ロックを解除する)ことが可能な操作力を得るように受圧面積の値が設定されている。尚、この第2実施形態では、第2受圧面T2及び第3受圧面T3の何れかに作動油の油圧が作用することによりロック解除できるが、ロック解除に必要な必要油圧は、第3受圧面T3の必要油圧が第2受圧面T2の必要油圧以上になるように設定されている。これは、エンジン100の始動時の遅角室R2に低油圧が供給される場合(電磁弁VがOFF状態の時)、ロックピン31によるロック状態を維持したいのにも拘わらず、第3受圧面T3に空気圧等が作用して意図しないロック解除が行われることを防止するためである。
【0049】
この第2実施形態でも第1実施形態と同様に、エンジン100の停止時にはECUが電磁弁Vを制御して相対回転位相を最遅角に設定してロック機構Lをロック状態に設定する。この後、エンジン100の始動時には、ECUがクランキングを開始した後に、エンジン始動(点火によりエンジン100が稼動する状態)に円滑に移行するためにロック機構Lのロックを解除して相対回転位相を進角方向S1に移行させる制御が行われる。
【0050】
〔ロック機構の作動形態〕
この第2実施形態の構成から、ロック機構Lはロック状態では図6(a)に示す状態にある。ロック機構Lのロック状態を解除して相対回転位相を進角方向S1に変化させる場合には、ECUが電磁弁Vを制御することにより進角油路25に作動油が供給される。進角油路25に供給された作動油は分岐部Dから独立解除油路36に送られ、この作動油の油圧が第2受圧面T2に作用する。第2受圧面T2に作用する油圧だけでもロックピン31を嵌合凹部32から抜き出すことができる。しかし、この直後に第1受圧面T1及び第2受圧面T2に対して作動油の油圧が作用することで、図6(b)の状態から図6(c)に示す状態へと迅速にロックピン31の抜き出しが行われる(ロック機構Lのロックが解除される)。
【0051】
この後に、相対回転位相を遅角方向S2に変化させる場合には、ECUが電磁弁Vを制御することにより遅角油路26に作動油が供給される。このように作動油が供給されることにより図6(c)に示す如く、ロックピン31の第3受圧面T3に作用する油圧によりロックピン31の第1受圧面T1をリヤプレート3から浮き上がらせる。このように、相対回転位相を進角方向S1と遅角方向S2との何れの方向に変化する場合でも、ロックピン31がリヤプレート3に摺接することによる摺接抵抗を解消して円滑な相対回転を実現する。
【0052】
〔第2実施形態の作用・効果〕
この第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、ロックピン31の抜き出しが不能に陥ることなく、ロック解除を確実に行える。また、ロック機構Lのロックを解除した際に相対回転位相が乱れる不都合を招くこともない。更に、相対回転位相を進角方向S1に変化させる場合には、ロック機構Lは既にロック解除状態にあるので、進角室R1の作動油を操作油路41により第3受圧面T3に供給する程度の簡単な構成でも相対回転位相の進角方向S1の方向への円滑な変化を実現する。
【0053】
〔第2実施形態の変形例〕
ロック機構Lによる中間位相でロックするようにロック位相を設定し、進角室R1からの作動油の油圧を操作油路41により第3受圧面T3に作用させ、遅角室R2に作動油が供給される際に、独立解除油路36から作動油の油圧を第2受圧面T2に作用させ、遅角油路26から作動油の油圧を第1受圧面T1に作用させるように構成しても良い。
【0054】
このように構成することで、エンジン100の始動を中間位相で行い、このエンジン100の始動の直後に相対回転位相を遅角方向S2に変化させる際には、第2受圧面T2に予圧を作用させた後に、第1受圧面T1に作用する油圧により円滑にロックの解除を行える。この後に、相対回転位相を進角方向S1に変化させる場合には進角室R1に供給される作動油の油圧を第3受圧面T3に作用させ、ロックピン31の先端をリヤプレート3から浮き上がらせる状態を維持して円滑な相対回転を実現する。
【0055】
尚、この変形例では、ロック機構Lがロック状態にある場合に、進角室R1に作動油を供給することでロック解除を行うことも可能である。
【0056】
〔第3実施形態〕
この第3実施形態では、弁開閉時期制御装置の基本的な構成は第1実施形態と共通するものであるが、出退機構としてのロック機構L(第1ロック機構L1と第2ロック機構L2との総称)として2本のロックピン31(出退部材の一例)を備えた構成が異なり、油路の構成が異なり、ロック機構Lにより中間位相でロックする(拘束する)点が第1実施形態と異なる。
【0057】
図7図8に示すように、ロック機構Lのロックピン31の形状は第1実施形態と同様に嵌合部31Aとピン本体31Bとスプリング空間31Cとが形成され、嵌合部31Aの先端部分に第1受圧面T1が形成され、嵌合部31Aとピン本体31Bとの境界部分にリング状の第2受圧面T2が形成されている。2つの嵌合凹部32は、リヤプレート3に対して回転軸芯Xを中心とする円弧状に形成されている。
【0058】
2つのロック機構L1、L2のうち、ロックピン31が嵌合凹部32の円弧方向で進角方向S1の端縁に当接するもの(同図で右側のロックピン31)を第1ロック機構L1と称し、ロックピン31が嵌合凹部32の円弧方向で遅角方向S2の端縁に当接するもの(同図で左側のロックピン31)を第2ロック機構L2と称する。つまり、このロック機構Lは、1つのロックピン31だけが嵌合凹部32に嵌合した状態では、外部ロータ10と内部ロータ20との相対回転位相を所定位相範囲内に規制するだけであるが、2つのロックピン31が同時に対応する嵌合凹部32に嵌合した状態で相対回転位相を拘束するように構成されている。
【0059】
第1ロック機構L1が嵌合凹部32に嵌合し、かつ、第2ロック機構L2が嵌合凹部32に嵌合することにより、図8(a)に示すように、外部ロータ10と内部ロータ20との相対回転位相が中間位相にロックされる(拘束される)。このロック状態で第1ロック機構L1のロック解除を行うことで相対回転位相を進角方向S1に変化させ、第2ロック機構L2のロック解除を行うことで相対回転位相を遅角方向S2に変化させることが可能となる。
【0060】
尚、第1ロック機構L1のロック解除を行い、相対回転位相を進角方向S1に変位させた場合には、第2ロック機構L2のロックピン31の嵌合部31Aが嵌合凹部32に嵌り込んだ状態で嵌合凹部32の内部を摺動する。これと同様に、第2ロック機構L2のロック解除を行い、相対回転位相を遅角方向S2に変位させた場合には、第1ロック機構L1のロックピン31の嵌合部31Aが嵌合凹部32に嵌り込んだ状態で嵌合凹部32の内部を摺動する。
【0061】
この第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、ロックピン31の第2受圧面T2に作動油の油圧を作用させた後に、第1受圧面T1に作動油の油圧を作用させる形態でロック解除を行うように構成され、このロック解除を実現する油路系を備えている。
【0062】
つまり、第1ロック機構L1では、隣接する進角室R1に作動油を供給する進角油路25の中間部分の分岐部Dで分岐した作動油の油圧を第2受圧面T2に作用させる独立解除油路36aが形成されている。また、第1ロック機構L1の嵌合凹部32に進角室R1からの作動油の油圧を第1受圧面にT1に作用させるための連通解除油路35aが形成されている。
【0063】
第2ロック機構L2では、隣接する遅角室R2に作動油を供給する遅角油路26の中間部分の分岐部Dで分岐した作動油の油圧を第2受圧面T2に作用させる独立解除油路36bが形成されている。また、第2ロック機構L2の嵌合凹部32に、遅角室R2からの作動油の油圧を第1受圧面にT1に作用させるための連通解除油路35bが形成されている。
【0064】
この第3実施形態の構成から、作動油が供給されない場合に第1ロック機構L1と第2ロック機構L2とは図8(a)に示すがロック状態にある。相対回転位相を中間位相から遅角方向S2に変化させる場合には、ECUが電磁弁Vを制御することにより遅角油路26から遅角室R2に作動油が供給される。これにより分岐部Dから第2ロック機構L2の独立解除油路36bからの作動油の油圧が第2ロック機構L2のロックピン31の第2受圧面T2に作用する。この構成では、第2受圧面T2に作用する油圧だけでもロックピン31を嵌合凹部32から抜くことができる。しかし、この直後に遅角油路26から第1受圧面T1に対して作動油の油圧が作用することで、図8(a)の状態から図8(b)の状態へとより迅速にロックピン31の抜き出しが行われる(ロック機構Lのロックが解除される)。そして、遅角室R2に供給される作動油の油圧により相対回転位相が遅角方向S2に変化する。
【0065】
これとは逆に、相対回転位相を中間位相から進角方向S1に変化させる場合には、ECUが電磁弁Vを制御することにより進角油路25から進角室R1に作動油が供給される。これにより分岐部Dから第1ロック機構L1の独立解除油路36aからの作動油の油圧が第1ロック機構L1のロックピン31の第2受圧面T2に作用する。この構成では第2受圧面T2に作用する油圧だけでもロックピン31を嵌合凹部32から抜くことができる。しかし、この直後に進角油路25から第1受圧面T1に対して作動油の油圧が作用することで、図8(b)の状態から図8(c)の状態へとより迅速にロックピン31の抜き出しが行われる(ロック機構Lのロックが解除される)。そして、進角室R1に供給される作動油の油圧により相対回転位相は進角方向S1に変化する。
【0066】
〔第3実施形態の作用・効果〕
この第3実施形態でも、第1実施形態と同様に、第1孔部28Aの軸芯とピン本体31Bとの軸芯とを高い精度で一致させる加工を行わずに済み、加工を容易にする。ロックピン31が嵌合凹部32から抜き出される際には第1孔部28Aと嵌合部31Aとの間の摺動抵抗が小さく、迅速で確実な抜き出しを実現する。更に、ロックピン31の抜き出しが不能に陥ることなく、ロック解除を確実に行える。また、ロック機構L(第1ロック機構L1と第2ロック機構L2との総称)のロックを解除した際に相対回転位相が乱れる不都合を招くこともない。
【0067】
〔第3実施形態の変形例〕
この第3実施形態では、第1ロック機構L1と第2ロック機構L2との一方のロックピン31にだけ第1受圧面T1と第2受圧面T2とを形成し、他方のロックピン31には第1受圧面T1(第3実施形態に示されるものより大きい受圧面積となる)だけを形成しても良い。
【0068】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0069】
(a)本発明では、ロックピン31が、弁開閉時期制御装置の半径方向に移動することでロック状態と、ロック解除状態とに切り換わる構成であっても良い。
【0070】
(b)第1受圧面T1と第2受圧面T2と位置関係を、第1実施形態のものと逆に設定(作動油の油圧が作用する関係を逆に設定)しても良い。また、第1受圧面T1と第2受圧面T2との形状は第1実施形態に示されるものに限らず任意の形状に設定しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、ロックピンを油圧式に作動させる弁開閉時期制御装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 カムシャフト
10 駆動側回転部材(外部ロータ)
20 従動側回転部材(内部ロータ)
31 出退部材(ロックピン)
32 嵌合凹部
33 スプリング(ロックスプリング)
35 連通解除油路
35a,35b 連通解除油路
36 独立解除油路
36a,36b 独立解除油路
41 操作油路
100 内燃機関(エンジン)
101 クランクシャフト
D 分岐部
R1 進角室
R2 遅角室
T1 受圧面・第1受圧面
T2 受圧面・第2受圧面
T3 受圧面・第3受圧面
L ロック機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8