(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正極及び負極が電解液とともに封入された蓄電ケースと、前記蓄電ケースの内圧上昇時に前記蓄電ケース内部の高圧ガスを逃がすための防爆弁とを具備した蓄電ユニットを複数並置してなる蓄電ユニット群と、
前記防爆弁のそれぞれに接続された複数の導管と前記導管のそれぞれに接続された1つの主導管からなる配管と、
前記高圧ガスを難燃化するための難燃剤を封入した容器とを備える蓄電モジュールであって、
前記容器は、前記配管と接続され、
内部に前記高圧ガスを流入するためのガス流入口と前記高圧ガスを流通させるための迷路状のガス流通経路とを具備し、
前記蓄電デバイスの少なくとも1つの前記防爆弁の開弁時に前記高圧ガスの圧力により前記ガス流入口を開くことにより、前記高圧ガスと前記難燃剤とを前記ガス流通経路内で接触させることを特徴とする蓄電モジュール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、蓄電デバイスを構成する蓄電ユニットの内部で発生する高圧の可燃性ガスを難燃剤に導くための経路や可燃性ガスを難燃剤に接触させるためのスペースを蓄電ユニットの内部に設けると、蓄電ユニットの構成が複雑となるために、可燃性ガスと難燃剤との接触効率が低下し、十分な難燃化効果が得られなくなる。この問題は蓄電デバイスを構成する蓄電ユニットを複数組み合わせた蓄電モジュールについても同様である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、蓄電ユニットの内部で発生する高圧ガスを難燃剤と効率よく接触させることで高圧ガスに含まれる可燃性ガスを確実に難燃化することを主たる技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る蓄電デバイスは、正極及び負極が電解液とともに封入された蓄電ケースと、蓄電ケースの内圧上昇時に蓄電ケース内部の高圧ガスを逃がすための防爆弁とを具備した蓄電ユニットと、高圧ガスに含まれる可燃性ガスを難燃化するための難燃剤を封入するための容器とを備えており、この容器は蓄電ケースと着脱が可能なカートリッジ式容器であって、その内部に高圧ガスを流入させるためのガス流入口又は内部の難燃剤を噴射するためのガス噴射口を有し、防爆弁の開弁時に高圧ガスの圧力によりガス流入口又はガス噴射口を開くことにより、高圧ガスと難燃剤とを蓄電ユニットの外部で接触させることを特徴とする。蓄電ユニットの外部とは、具体的には、蓄電ユニットの防爆弁よりも外側を指す。
【0008】
このような構成により、蓄電ユニットの内部で発生する高圧ガスと難燃剤とを効率よく接触させて高圧ガスに含まれる可燃性ガスを確実に難燃化することができる。
【0009】
ここで、「難燃剤」とは、可燃性のガスを難燃化するための物質をいう。本明細書において、難燃剤は、特に断らない限り、気体、液体及び固体等、その性状を問わない。難燃剤の種類も特に限定されないが、一例として、臭素化合物などのハロゲン化合物やリン化合物等の有機系のものや、アンチモン化合物や金属水酸化物等の無機系のものを挙げることができる。但し、難燃剤を噴射する場合は、ガス、粉体、霧状の液体など噴射に適した性状であることが好ましい。
【0010】
なお、本件発明者らは、先に高圧ガスを吸収するガス吸収材をカートリッジに封入した蓄電デバイス等を開発している。ガス吸収材は、ガスを吸収することが目的であって、主に多孔質性の粒状物からなり、ガスを吸収して留まるものである。そのため、吸収するだけでは可燃性の高圧ガスを吸収したガス吸収材自体が発火や燃焼する可能性も否定できない。この意味において、ガス吸収材はガスを難燃化することを目的とする難燃剤とは本質的に異なるものである。
【0011】
本発明に係る蓄電デバイスにおいて、カートリッジ式容器は、内部に高圧ガスを流通させるための迷路状のガス流通経路を具備していてもよい。このような構成により、高圧ガスを流通させる流通経路を長くして高圧ガスと難燃剤との接触させる機会を増やすことができ、高圧ガスと難燃剤との接触効率を向上させることができる。
【0012】
本発明に係る蓄電デバイスにおいて、カートリッジ式容器は、ガス流入口より導入した高圧ガスを外部に排出するための1つ又は複数のガス流出口とを具備することが好ましい。このような構成により、蓄電ユニットの防爆弁から放出される高圧ガスがカートリッジ式容器の内部に滞留することを抑えて、カートリッジ式容器の内部を流通させることができる。
【0013】
本発明に係る蓄電デバイスにおいて、カートリッジ式容器は、内部に高圧ガスを流通させるための単純なガス流通経路と、難燃剤を収容する収容領域とを具備し、ガス流通経路中に絞り部を有し、絞り部に単純なガス流通経路と収容領域とを連通する小さな開口部を有することが好ましい。
【0014】
このような構成により、防爆弁の開弁時に蓄電ユニットの内部で発生した高圧ガスが絞り部を流通することによって小さな開口部から難燃剤を噴射させ、その高圧ガスに難燃剤を接触させることができる。
【0015】
本発明に係る蓄電デバイスにおいて、小さな開口部は、熱融解フィルムで隙間無く覆われていてもよい。このような構成により、高圧ガスがガス流通経路を流通する前では難燃剤がガス流通経路に進入することを抑えて高圧ガスが流通する経路を確保することができ、高圧ガスがガス流通経路を流通する際には小さな開口部の熱融解性フィルムをその高圧ガスで除去することができる。
【0016】
本発明に係る蓄電デバイスにおいて、難燃剤は常温常圧において液体であって、単純な流通経路の壁面は難燃剤を染み込ませることの可能な部材で構成されていることが好ましい。このような構成により、単純な流通経路を流通させる高圧ガスと難燃剤との接触効率を向上させることができる。
【0017】
本発明に係る蓄電デバイスにおいて、カートリッジ式容器は外部から収容領域に向かって連通する逆止弁を有することが好ましい。このような構成により、収容領域内の圧力の低下を抑えて小さな開口部から難燃剤を噴射させることができる。
【0018】
本発明に係る蓄電デバイスにおいて、小さな開口部はカートリッジ式容器の下方に設けられ、収容領域の内部には、小さな開口部に難燃剤を導くための傾斜板が設けられていることが好ましい。このような構成により、小さな開口部から空気が噴射されることを抑えて難燃剤を噴射し易くすることができる。
【0019】
本発明に係る蓄電デバイスにおいて、カートリッジ式容器は、難燃剤が高圧充填され、高圧ガスの圧力により難燃剤を噴射口から噴射開始させるように構成されていてもよい。
【0020】
このような構成により、防爆弁の開弁時に蓄電ユニットの内部で発生した高圧ガスの圧力によって難燃剤を噴射させて高圧ガスを難燃剤に接触させることができる。
【0021】
本発明に係る蓄電モジュールは、正極及び負極が電解液とともに封入された蓄電ケースと、蓄電ケースの内圧上昇時に蓄電ケース内部の高圧ガスを逃がすための防爆弁とを具備した蓄電ユニットを複数並置してなる蓄電ユニット群と、防爆弁のそれぞれに接続された複数の導管と導管のそれぞれに接続された1つの主導管からなる配管と、高圧ガスを難燃化するための難燃剤を封入した容器とを備えており、この容器は、
前記配管と接続され、内部に高圧ガスを流入するためのガス流入口と高圧ガスを流通させるための迷路状のガス流通経路とを具備し、蓄電デバイスを構成する蓄電ユニットの少なくとも1つの防爆弁の開弁時に高圧ガスの圧力によりガス流入口を開くことにより、高圧ガスと難燃剤とをガス流通経路内で接触させることを特徴とする。
【0022】
このような構成により、各蓄電ユニットの内部で発生した高圧ガスを配管でまとめて効率よく難燃化することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、蓄電ユニットの内部で発生する高圧ガスをカートリッジ式容器内部の難燃剤と接触させて難燃化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、各実施形態はいずれも例示であり、本発明の限定的な解釈を与えるものではない。各実施形態において、同一又は同種の部材には同一の符号を用いる場合がある。図中の矢印は主にガスの流れる方向を示す。
【0026】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の蓄電デバイスを示し、蓄電ユニットの正面図とカートリッジの内部構造を表した断面図を示している。
【0027】
図1に示すように、第1の実施形態の蓄電デバイス20は、主に蓄電ユニット1と、カートリッジ10とで構成される。蓄電ユニット1とカートリッジ10とは気密を保持した状態で図示しない連結部材により連結される。
【0028】
蓄電ユニット1は、蓄電ケース1a内に図示しない蓄電要素が封入され、正極及び負極端子2、2と、防爆弁3とを有する。この図の例では、端子2及び防爆弁3は、蓄電ケース1aの上面部に設けられている。
【0029】
カートリッジ10はガス流入口としてのガス流入弁12とガス流出口としてのガス流出弁13とを有する容器であり、ガス流入弁12はカートリッジ10の下面中央部に、ガス流出弁13はカートリッジ10の上面両端部にそれぞれ配置されている。防爆弁3とガス流入弁12とは気密を保持した状態で隙間無く連結されている。
【0030】
カートリッジ10は内部に仕切体16及びフィルター17が設けられ、難燃剤14が封入されている。消化剤として用いられる炭酸水素ナトリウムを主成分とするような粒状或いは粉体の難燃剤を使用する場合は、カートリッジ10内にそのまま封入することが可能である。炭酸カリウム溶液、ハロゲン化溶液、リン酸エステル溶液などのような液体の場合には、例えばセラミックスフェルト等の不燃性のフェルト、綿やガラス繊維等の多孔体に担持させてその担持体15を封入する。或いは、高圧ガス発生時は高温状態となるため、熱融解性のカプセルをカートリッジ10内に封入してそのカプセル内に難燃剤を閉じ込めておいてもよい。
カートリッジ10は内部に仕切体16及びフィルター17が設けられ、難燃剤14が封入されている。消化剤として用いられる炭酸水素ナトリウムを主成分とするような粒状或いは粉体の難燃剤を使用する場合は、カートリッジ10内にそのまま封入することが可能であるが、炭酸カリウム溶液、ハロゲン化溶液、リン酸エステル溶液などのような液体の場合には、例えばセラミックスフェルト等の不燃性のフェルト、綿やガラス繊維等の多孔体に担持させてその担持体を封入する。或いは、高圧ガス発生時は高温状態となるため、熱融解性のカプセルをカートリッジ10内に封入してそのカプセル内に難燃剤を閉じ込めておいてもよい。
【0031】
難燃剤14又は難燃剤を担持した担持体15は、目詰まりが生じない程度の量を充填することが好ましい。フィルター17は、主にガスを通過させて難燃剤又は難燃剤を担持した担持体を通過させないもので構成される。多孔体やフィルターは、高温のガスにより溶融したり軟化したりして目詰まりを起こさないものが好ましい。
【0032】
図1に示すように、仕切体16はカートリッジ10の内部に迷路状の流通経路R1を形成する。このような構成によると、単純な流通経路よりもガスと難燃剤との接触面積が増大し、接触時間を長くするため、より確実に高圧ガスを難燃化することが可能となる。
【0033】
本実施形態の蓄電デバイス20は、蓄電ユニット1の内部で発生した高圧ガスを防爆弁3及びガス流入弁12を介してカートリッジ10内に流入させ、その内部で難燃化して外部環境に排出することができる。カートリッジ10は着脱による交換も容易であるため、蓄電デバイス20の仕様によってカートリッジ10を交換するだけで難燃剤の種類や量を容易に変更することができる利点がある。
【0034】
図2は、第1の実施形態の変形例を示している。
図2(a)及び
図2(b)は、いずれもカートリッジの変形例を示す断面図である。
図2(a)に示すカートリッジ30は、第1の実施形態で説明したカートリッジ10の内部に更にメッシュ18が設けられている。メッシュ18は容器11の内部を上下2つに区画し、難燃剤14又は難燃剤を担持した担持体15は、メッシュ18から下側に収容されている。メッシュ18は、フィルター17と同様にガスを通過させるが難燃剤やその担持体を通過させないもので構成される。このような構成によると、高圧ガスの流入時に難燃剤又は難燃剤を担持した担持体がガスと共に上方へ移動することを抑え、高圧ガスと難燃剤との接触機会のバラツキを抑えることができる。
【0035】
図2(b)に示すカートリッジ40は、ガス流入弁42とガス流出弁43とを有する容器であり、ガス流入弁42はカートリッジ40の下面中央部に、ガス流出弁43はカートリッジ40の上面両端部にそれぞれ配置されている。カートリッジ40は内部に仕切体46及びフィルター47が設けられ、難燃剤44又は難燃剤を担持した担持体45が封入されている。
【0036】
仕切体47及びフィルター47の配置が
図1を用いて説明した第1の実施形態とやや異なっており、これによりガスの流通経路R1の構成が異なっている。流通経路R1中には難燃剤又は難燃剤を担持した担持体の収容領域がフィルター47で仕切って構成され、難燃剤又は難燃剤を担持した担持体はその収容領域内に保持されている。このようなカートリッジ40を用いても、第1の実施形態で説明したカートリッジ10を用いる場合と同様に、効率よく蓄電ユニットの内部で発生した高圧ガスを難燃化して排出することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態の蓄電デバイスを示し、蓄電ユニットの正面図とカートリッジの内部構造を表した断面図を示している。
【0038】
図3に示すように、蓄電デバイス50は、主に蓄電ユニット51と、カートリッジ40とで構成される。蓄電ユニット51とカートリッジ40とは気密を保持した状態で図示しない連結部材により連結される。
【0039】
本実施形態では、上述した第1の実施形態とは異なり、カートリッジ40が蓄電ユニットの側面部に設けられている。蓄電ユニット51の正極及び負極端子52、52は、蓄電ケース51aの上面部に設けられているのに対して、防爆弁53は蓄電ケース51aの側面部にガス流入弁42と防爆弁53とが対向するように設けられている。
【0040】
このように、蓄電ユニット51とカートリッジ40との位置関係は主に防爆弁の位置関係によって任意に選択することが可能である。
【0041】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態の蓄電モジュールの全体構成を示している。
図4に示すように、蓄電モジュール60は、複数の蓄電ユニット1と難燃剤を封入したカートリッジ40と、消火装置64が配管62により接続されている。配管62は一つの主導管62aと複数の導管62bから構成されている。消火装置64には難燃剤やその他の必要な消火設備が備えられている。
【0042】
このような構成によると、各蓄電ユニット1の内部で発生した高圧ガスを配管62でまとめてカートリッジ40及び消火装置64に送り出すことができる。なお、カートリッジ40に代えて上述した他のカートリッジを用いてもよく、或いは、可燃性ガスの発生量に応じてカートリッジ40を複数用いてもよいし消火装置64を省略してもよい。
【0043】
本実施形態の蓄電モジュール60においては各導管62bの経路中に逆止弁が設けられていてもよい。一つの蓄電ユニット1から高圧ガスが噴出された場合でも、そのガスが他の蓄電ユニット1に流れ込むことを防止でき、温度上昇等の影響を一つの蓄電ユニットにとどめることができるためである。
【0044】
(第4の実施形態)
図5は、第4の実施形態の蓄電デバイスを示している。
図5に示すように、蓄電デバイス70は、主に蓄電ユニット71と、カートリッジ80とで構成される。蓄電ユニット71とカートリッジ80とは気密を保持した状態で図示しない連結部材により連結される。
【0045】
蓄電ユニット71は、蓄電ケース71a内に図示しない蓄電要素が封入され、正極及び負極端子72、72と、防爆弁73とを有する。この図の例では、端子72及び防爆弁73は、蓄電ケース1aの上面部に設けられている。
【0046】
カートリッジ80は、ガス流入弁82とガス流出弁83とを有する容器であり、ガス流入弁82はカートリッジ80の下面右端部付近に、ガス流出弁83はカートリッジ80の上面右端部付近にそれぞれ配置されている。カートリッジ80の上端部には、ガス流出弁83と逆止弁88が設けられている。
【0047】
カートリッジ80は、内部に流通経路R2と難燃剤84を収容する収容領域Sとを形成する。カートリッジ80の材質は、金属やセラミック等を用いることができる。難燃剤84は常温常圧において液体状であり、炭酸カリウム溶液、ハロゲン化溶液、リン酸エステル溶液等を用いることができる。
【0048】
流通経路R2は、経路中の下方に局所的に流路を狭くするように絞った絞り部85を有する。絞り部85は、小さな開口部86を有する。小さな開口部86は、流通経路R2と収容領域Sとを連通している。このような構成において高圧ガスが絞り部85を通過すると、高圧ガスの流速が絞り部85で速くなることで絞り部85の圧力が下がり、小さな開口部86から液体状の難燃剤84を流通経路R2側に流入させることができる。よって、小さな開口部86の大きさは、高圧ガスが絞り部85を流通すると流通経路R2と収容領域Sとの圧力差を生じさせて収容領域Sから流通経路R2に難燃剤を流入させることのできる程度でよい。このとき、逆止弁88から収容領域Sに大気を流入させて内部圧力の低下を抑える。収容領域Sは、小さな開口部86に難燃剤を導くための傾斜板87が設けられている。傾斜板87は、逆止弁88から流入した大気が小さな開口部86から噴射されるのを抑えることができる。
【0049】
流通経路R2の壁面はセラミックフェルト等の難燃剤84を染み込ませることの可能な部材で形成してもよい。或いは、気密性が保持された流通経路の壁面上にさらに難燃剤を染み込ませることの可能な部材を形成してもよい。このようにすると、流通経路R2全体でガスと難燃剤84とを接触させることができ、その接触効率を向上させることができる。小さな開口部86は、熱融解性フィルムで流通経路R2側から隙間無く覆われていてもよい。このようにすると、流通経路R2に高圧ガスの流入前に難燃剤84の流入を防止して高圧ガスが流通する経路を確保でき、高圧ガスが流入した際には高圧ガスの温度で熱融解性フィルムを融解させて除去し、難燃剤84を流通経路R2側に流入させることができる。
【0050】
本実施形態の蓄電デバイス70は、蓄電ユニット71の内部で発生した高圧ガスによって流通経路R2中の絞り部85に設けられた小さな開口部86から液体状の難燃剤84を流通経路R2に流入させてその高圧ガスに難燃剤84を混合させることができ、その高圧ガスを難燃化して排出することができる。
【0051】
図6は、第4の実施形態の蓄電デバイスの変形例を示している。
図6に示すように、蓄電デバイス90は、主に蓄電ユニット91と、カートリッジ100とで構成される。蓄電ユニット91とカートリッジ100とは気密を保持した状態で図示しない連結部材により連結される。
【0052】
蓄電ユニット91は、蓄電ケース91a内に図示しない蓄電要素が封入され、正極及び負極端子92、92と、防爆弁93とを有する。この図の例では、端子92は蓄電ケース1aの上面部に設けられ、防爆弁93は、蓄電ケース91aの側面部下方に設けられている。
【0053】
カートリッジ100は、ガス流入口としてのガス流入弁102とガス流出口としてのガス流出弁103と逆止弁108とを有する容器であり、ガス流入弁102はカートリッジ100の一方の側面部下方付近に、ガス流出弁103はカートリッジ100の他方の側面部下方付近に、逆止弁108は上面部にそれぞれ配置されている。
【0054】
カートリッジ100は、内部に流通経路R2と難燃剤84を収容する収容領域Sとを形成する。カートリッジ100の材質は、金属やセラミック等を用いることができる。難燃剤104は常温常圧において液体状であり、炭酸カリウム溶液、ハロゲン化溶液、リン酸エステル溶液等を用いることができる。
【0055】
流通経路R3は、経路中であって局所的に流路を狭くするように絞った絞り部105を有する。絞り部105は、小さな開口部106を有する。小さな開口部106は、流通経路R3と収容領域とを連通している。蓄電デバイス90のようにしても、上述した蓄電デバイス70と同様に小さな開口部106から液体状の難燃剤104を流通経路R3側に流入させることができる。このとき、逆止弁108は収容領域に大気を流入させて収容領域内の圧力の低下を抑える。
【0056】
このように、蓄電デバイス90とカートリッジ100との位置関係は主に防爆弁の位置によって任意に選択することが可能である。
【0057】
(第5の実施形態)
図7は、第5の実施形態の蓄電デバイスを示している。
図7に示すように、蓄電デバイス110は、主に蓄電ユニット111と、スプレー式カートリッジ120とを有する。蓄電ユニット111とカートリッジ120とは容易に取り付け又は取り外しができる図示しない連結部材により連結される。
【0058】
蓄電ユニット111は、蓄電ケース111a内に図示しない蓄電要素が封入され、正極又は負極の端子112と、蓄電ケース111a内部の高圧ガスを逃がすための防爆弁113とを有する。この図の例では、端子112は蓄電ケース1aの上面両端部に、防爆弁113は蓄電ケース111aの上面部の一方の端部にそれぞれ設けられている。
【0059】
スプレー式カートリッジ120は、噴射口122と噴射を開始させるための部材123とを有する容器であり、内部に難燃剤125を高圧充填している。噴射口122は、カートリッジ120の側面部に設けられている。部材123は、噴射口122と同一面であって噴射口122の上方に回転軸124の周りに回転自在にして配置されている。部材123にガスを所定の圧力以上で下方から噴射すると、部材123が回転軸124の周りで半時計回りに回転し、通常時に閉じている噴射口122が開く機構となっている。
【0060】
スプレー式カートリッジ120の材質は、金属の他、フッ素系樹脂等の高耐食性材料、プラスチックや炭素材料等の軽量材料及びこれらの複合材料を用いることができる。噴射口122の材質は、耐熱性及び耐薬品性の高いものが好ましく、その耐性を有する金属やセラミック等を用いることができる。難燃剤125は、炭酸カリウム溶液、ハロゲン化溶液、リン酸エステル溶液や炭酸ガス等を用いることができる。
【0061】
図8は、噴射口112から難燃剤を噴射させる構成を説明する図である。
図8(a)は、難燃剤を噴射させる前を示し、
図8(b)は、難燃剤を噴射させた直後を示す。
図8(a)に示すように、噴射口122は高圧ガスを放出した際の高圧ガスの軌道に向け、噴射を開始させるための部材123は防爆弁113の上方に配置する。
【0062】
図8(b)に示すように、蓄電ユニット111の内部で発生した高圧ガスが放出領域Fのように防爆弁113から放出されると、部材123はその高圧ガスの圧力により矢印Raのように回転する。部材123が回転すると噴射口122が開く機構となっており、スプレー式カートリッジ120は噴射口122から噴射領域Gのように難燃剤125を噴射する。このようにして、蓄電デバイス110は、難燃剤125を高圧ガスに接触させて高圧ガスを難燃化することができる。
【0063】
本実施形態の蓄電デバイス110は、蓄電ユニット111の内部で発生した高圧ガスの圧力で噴射口122から難燃剤125を噴射させ、その高圧ガスに難燃剤125を接触させ、その高圧ガスを難燃化することができる。次に、スプレー式カートリッジにおいて難燃剤を噴射させるための具体的な構成を説明する。
【0064】
図9は、ガス圧により難燃剤を噴射させる構成の例を示している。
図9(a)は、噴射口から難燃剤を噴射させる前を示す図であり、蓄電ユニットの正面の一部とカートリッジの内部構造を表した断面の一部をそれぞれ示している。
図9(b)は、噴射口から難燃剤を噴射させた直後を示す図である。
【0065】
図9(a)に示すように、スプレー式カートリッジ130は、噴射口132と高圧ガスを受けるための部材133と噴射口132を開くためのスイッチ部材136とを有する容器であり、内部に難燃剤135を高圧充填している。噴射口132は、容器の側面部に設けられている。部材133は、噴射口132と同一面であって噴射口132の上方に回転軸134の周りに回転自在にして配置されている。部材133の一方は外部に突出し、他方はスイッチ部材136の上面と接している。なお、スプレー式カートリッジ130は、上述したスプレー式カートリッジ120と同様にして蓄電ユニット111と容易に取り付け又は取り外しができる図示しない連結部材により連結されている。
【0066】
図9(b)に示すように、蓄電ユニット111の内部で発生した高圧ガスが放出領域Fのように防爆弁113から放出されると、高圧ガスを受けるための部材133はその高圧ガスの圧力により矢印のように回転する。このとき、部材133によりスイッチ部材136が押圧されて噴射口132が開き、スプレー式カートリッジ130は噴射口132から噴射領域Gのように難燃剤135を噴射する。
【0067】
高圧ガスと接触する部分は、セラミック等の耐熱性及び耐薬品性の高い材料を用いることが好ましい。難燃剤噴射の誤作動を防止し、高圧ガスの噴出時に確実に難燃剤を噴射させるために、スイッチ部材136が作動する負荷を2.9〜19.6[N]程とすることが好ましい。高圧ガスを受けるための部材133は、高圧ガスを効率よく受けられる形状であれば様々なものを用いることができる。
【0068】
図10は、誤作動防止機構を説明する図である。
図10(a)は、誤作動防止機構の一例を示す図であり、
図10(b)は、誤作動防止機構の他の例を示す図である。
図10(a)に示すように、防爆弁113と高圧ガスを受けるための部材133との間にストッパー137を配置する。ストッパー137は、防爆弁113と部材133とにそれぞれ接続されている。ストッパー137と防爆弁113とは接着剤で接着される。この接着剤は、高温時に溶解又は軟化するものが好ましく、高圧ガスを噴出時にストッパー137が外れ易くなる。
【0069】
このようにすると、ストッパー137により通常時誤作動で難燃剤を噴射することを防止することができ、高圧ガスの噴出時には防爆弁113とストッパー137とを切り離して難燃剤を噴射させることができる。
【0070】
図10(b)に示すように、熱融解性テープ138で蓄電ユニット111と高圧ガスを受けるための部材133とを接続し、さらにL字状のストッパー139を容器の側面部に部材133を下方から支持するように配置する。蓄電ユニット111の内部で発生した高圧ガスが130[℃]以上であるため、熱融解性テープ138はその130[℃]で融解する材料、例えば、ポリエチレンを用いることができる。このようにしても、通常時誤作動で難燃剤を噴射することを防止することができ、高圧ガスの噴出時には蓄電ユニットと部材133とを切り離して難燃剤を噴射させることができる。